【文献】
Jianchao Yang, John Wright, Thomas Huang, Yi Ma,Image Super-Resolution as Sparse Representation of Raw Image Patches,2008 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition,米国,IEEE,2008年06月23日,8 pages in total,https://ieeexplore.ieee.org/document/4587647/
【文献】
本橋 直樹, 中村 聡史, 鈴木 俊博,複数の縮小基底辞書を用いたスパースコーディングに基づく学習型超解像の高速化,電子情報通信学会技術研究報告,日本,電子情報通信学会,2015年02月26日,SIS2014-106 (2015-3),pp. 85-90
【文献】
Jianchao Yang, John Wright, Thomas S. Huang, Yi Ma,Image Super-Resolution Via Sparse Representation,IEEE Transactions on Image Processing,米国,IEEE,2010年05月18日,Vol. 19, No. 11, Nov. 2010,pp. 2861-2873,https://ieeexplore.ieee.org/document/5466111/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記辞書作成部が、他の顕微鏡により前記第1解像度よりも高い解像度で取得された複数の高解像度撮影画像を線形和で表すことができる複数の前記高解像度基底画像を集合させて前記高解像度辞書を作成する請求項1に記載の観察装置。
前記辞書作成部が、前記画像取得部により取得される前記低解像度画像と同じ前記標本を撮影して得られた複数の前記高解像度撮影画像を線形和で表すことができる複数の前記高解像度基底画像を集合させて前記高解像度辞書を作成する請求項2または請求項3に記載の観察装置。
前記高解像度基底画像の前記標本または解像度が異なる複数の前記高解像度辞書から使用する該高解像度辞書を選択する辞書選択部を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の観察装置。
前記画像構築部が、前記画像取得部によりタイムラプス撮影にて前記第2解像度かつ所定の時間間隔で前記標本を撮影して得られた複数の前記低解像度画像に基づいて、前記標本の複数の前記高解像度画像を構築する請求項1から請求項6のいずれかに記載の観察装置。
前記画像構築部が、前記画像取得部によりタイリング撮影にて前記標本を複数の撮影範囲に分割して前記第2解像度で撮影して得られた複数の前記低解像度画像に基づいて、前記標本の複数の部分的な前記高解像度画像を構築し、これら複数の部分的な前記高解像度画像を繋ぎ合わせて前記標本の全体的な前記高解像度画像を構築する請求項1から請求項6のいずれかに記載の観察装置。
高解像度画像を取得するための第1解像度および該第1解像度よりも低い第2解像度との比率に応じて、所望の前記高解像度画像を線形結合により構築するための基底となる複数の高解像度基底画像が集合してなる高解像度辞書をダウンサンプリングし、前記高解像度基底画像よりも解像度が低い複数の低解像度基底画像を集合させてなる低解像度辞書を作成する辞書作成工程と、
前記第2解像度かつ所定の時間間隔で標本を撮影して複数の低解像度画像を取得するタイムラプス観察工程と、
該タイムラプス観察工程により取得された複数の前記低解像度画像を展開して前記低解像度辞書の複数の前記低解像度基底画像とそれぞれの係数とで表し、該それぞれの係数は変えずに複数の前記低解像度基底画像を前記高解像度辞書の対応する複数の前記高解像度基底画像に置き換えて、線形結合により前記標本の複数の前記高解像度画像を構築する画像構築工程とを含む観察方法。
高解像度画像を取得するための第1解像度および該第1解像度よりも低い第2解像度との比率に応じて、所望の前記高解像度画像を線形結合により構築するための基底となる複数の高解像度基底画像が集合してなる高解像度辞書をダウンサンプリングし、前記高解像度基底画像よりも解像度が低い複数の低解像度基底画像を集合させてなる低解像度辞書を作成する辞書作成工程と、
標本の撮影範囲を複数に分割して、各撮影範囲を前記第2解像度で撮影して複数の低解像度画像を取得するマップ観察工程と、
該マップ観察工程により取得された複数の前記低解像度画像を展開して前記低解像度辞書の複数の前記低解像度基底画像とそれぞれの係数とで表し、該それぞれの係数は変えずに複数の前記低解像度基底画像を前記高解像度辞書の対応する複数の前記高解像度基底画像に置き換えて、線形結合により前記標本の複数の部分的な前記高解像度画像を構築し、これら複数の部分的な前記高解像度画像を繋ぎ合わせて前記標本の全体的な前記高解像度画像を構築する画像構築工程とを含む観察方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の走査型レーザ顕微鏡においては、画素数を所定の数以下にすることでサンプルの高速な現象を捉えることが可能になるが、画素数を所定の数以下にすると解像度が足りなくなり、高速な現象の詳細を解析することができないという不都合がある。また、カメラは、サンプルの画像を高速に取得することはできるものの、解像度が低いという不都合がある。また、カメラにおいて、画素をずらしながら(ピクセルシフト)撮像した複数の画像を合成することによって高解像化することもできるが、この場合は、複数回撮影しなければならないため、サンプルの高速な現象を捉えることができないという問題がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、高解像度と高速性を両立して標本を観察することができる観察装置および観察方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の第1態様は、高解像度画像を作成するための第1解像度および該第1解像度よりも低い第2解像度を設定する解像度設定部と、該解像度設定部により設定された前記第1解像度と前記第2解像度との比率に応じて、所望の前記高解像度画像を線形結合により構築するための基底となる複数の高解像度基底画像が集合してなる高解像度辞書をダウンサンプリングし、前記高解像度基底画像よりも解像度が低い複数の低解像度基底画像を集合させてなる低解像度辞書を作成する辞書作成部と、前記解像度設定部により設定された前記第2解像度で標本を撮影して低解像度画像を取得する画像取得部と、該画像取得部により取得された前記低解像度画像を展開して表される前記低解像度辞書の複数の前記低解像度基底画像とそれぞれの係数の内、該それぞれの係数は変えずに複数の前記低解像度基底画像を前記高解像度辞書の対応する複数の前記高解像度基底画像に置き換えて、線形結合により前記標本の前記高解像度画像を構築する画像構築部とを備える観察装置である。
【0007】
本態様によれば、高解像度画像は、高解像度辞書を構成する複数の高解像度基底画像の線形和で表現することができ、低解像度画像は、低解像度辞書を構成する複数の低解像度基底画像の線形和で表現することができる。また、低解像度辞書は辞書作成部により高解像度辞書をダウンサンプリングして作成されるので、高解像度辞書を構成する複数の高解像度基底画像と低解像度辞書を構成する複数の低解像度基底画像は相関関係を有する。さらに、画像取得部により解像度が低い第2解像度で標本を撮影して得られる低解像度画像は、解像度が高い第1解像度で撮影する場合と比較して、現象の詳細を解析することはできないものの標本の高速な現象を捉えることはできる。
【0008】
したがって、画像構築部により、画像取得部によって第2解像度で取得された標本の低解像度画像から低解像度辞書および高解像度辞書を用いて標本の高解像度画像を構築することで、第1解像度で標本を撮影して高解像度画像を取得する場合と比較して、標本の高速な現象を捉えつつその高速な現象の詳細を表した高解像度画像を作成することができる。これにより、高解像度と高速性を両立して標本を観察することができる。
【0009】
上記態様においては、前記画像取得部が、前記解像度設定部により設定された前記第1解像度で複数
の高解像度撮影画像を取得し、前記辞書作成部が、前記画像取得部により取得された複数の前記高解像度撮影画像を線形和で表すことができる複数の前記高解像度基底画像を集合させて前記高解像度辞書を作成することとしてもよい。
このように構成することで、高解像度撮影画像の取得および高解像度辞書の作成から、高解像度辞書を用いた高解像度画像の構築までの全てをこの観察装置により行うことができる。
【0010】
上記態様においては、前記辞書作成部が、他の顕微鏡により前記第1解像度よりも高い解像度で取得された複数の前記高解像度撮影画像を線形和で表すことができる複数の前記高解像度基底画像を集合させて前記高解像度辞書を作成することとしてもよい。
このように構成することで、画像構築部により、この観察装置だけでは取得できない高い解像度の高解像度画像を構築することができる。
【0011】
上記態様においては、前記辞書作成部が、前記画像取得部により取得される前記低解像度画像と同じ前記標本を撮影して得られた複数の前記高解像度撮影画像を線形和で表すことができる複数の前記高解像度基底画像を集合させて前記高解像度辞書を作成することとしてもよい。
【0012】
このように構成することで、画像構築部において、画像取得部によって取得される標本の低解像度画像がその標本の複数の低解像度基底画像により展開され、その標本の高解像度画像がその標本の複数の高解像度基底画像の線形結合によって構築される。したがって、低解像度画像の標本と異なる標本の複数の高解像度基底画像が集合してなる高解像度辞書を使用する場合と比較して、画像構築部により構築される高解像度画像の精度を向上することができる。
【0013】
上記態様においては、前記高解像度基底画像の前記標本または解像度が異なる複数の前記高解像度辞書から使用する該高解像度辞書を選択する辞書選択部を備えることとしてもよい。
【0014】
このように構成することで、複数の高解像度辞書を予め用意しておいて、辞書選択部によりその中から使用する高解像度辞書を選択するだけで済むので、高解像度辞書を作成するための時間を省くことができる。また、辞書選択部により、標本に合わせて最適な高解像度辞書を選択すれば、画像構築部により構築される高解像度画像の精度を向上することができる。
【0015】
上記態様においては、前記辞書選択部が、使用する前記高解像度辞書をネットワーク上から選択することとしてもよい。
このように構成することで、多くの選択肢から適当な高解像度辞書を選択して使用することができる。
【0016】
上記態様においては、前記画像構築部が、前記画像取得部によりタイムラプス撮影にて前記第2解像度かつ所定の時間間隔で前記標本を撮影して得られた複数の前記低解像度画像に基づいて、前記標本の複数の前記高解像度画像を構築することとしてもよい。
このように構成することで、標本の高速な現象を逃すことなく、標本の時間変化を詳細に観察することができる。
【0017】
上記態様においては、前記画像構築部が、前記画像取得部によりタイリング撮影にて前記標本を複数の撮影範囲に分割して前記第2解像度で撮影して得られた複数の前記低解像度画像に基づいて、前記標本の複数の部分的な前記高解像度画像を構築し、これら複数の部分的な前記高解像度画像を繋ぎ合わせて前記標本の全体的な前記高解像度画像を構築することとしてもよい。
このように構成することで、標本の高速な現象を逃すことなく、標本の広い範囲を詳細に観察することができる。
【0018】
本発明の第2態様は、高解像度画像を作成するための第1解像度および該第1解像度よりも低い第2解像度との比率に応じて、所望の前記高解像度画像を線形結合により構築するための基底となる複数の高解像度基底画像が集合してなる高解像度辞書をダウンサンプリングし、前記高解像度基底画像よりも解像度が低い複数の低解像度基底画像を集合させてなる低解像度辞書を作成する辞書作成工程と、前記第2解像度かつ所定の時間間隔で標本を撮影して複数の低解像度画像を取得するタイムラプス観察工程と、該タイムラプス観察工程により取得された複数の前記低解像度画像を展開して前記低解像度辞書の複数の前記低解像度基底画像とそれぞれの係数とで表し、該それぞれの係数は変えずに複数の前記低解像度基底画像を前記高解像度辞書の対応する複数の前記高解像度基底画像に置き換えて、線形結合により前記標本の複数の前記高解像度画像を構築する画像構築工程とを含む観察方法である。
【0019】
本態様によれば、高解像度画像は、高解像度辞書を構成する複数の高解像度基底画像の線形和として表現することができ、低解像度画像は、低解像度辞書を構成する複数の低解像度基底画像の線形和として表現することができる。また、低解像度辞書は辞書作成工程により高解像度辞書をダウンサンプリングして作成されるので、高解像度辞書を構成する複数の高解像度基底画像と低解像度辞書を構成する複数の低解像度基底画像は相関関係を有する。さらに、タイムラプス観察工程により解像度が低い第2解像度で標本を撮影して得られる複数の低解像度画像は、解像度が高い第1解像度で撮影する場合と比較して、標本の高速な現象を捉えることができる。
【0020】
したがって、画像構築工程により、タイムラプス観察工程によって第2解像度で取得された標本の低解像度画像から低解像度辞書および高解像度辞書を用いて標本の高解像度画像を構築することで、第1解像度かつ所定の時間間隔で標本を撮影して複数の高解像度画像を取得する場合と比較して、標本の高速な現象を捉えつつその高速な現象の詳細を表した高解像度画像を取得することができる。これにより、高解像度と高速性を両立して、標本の高速な現象を逃すことなく標本の時間変化を詳細に観察することができる。
【0021】
本発明の第3態様は、高解像度画像を作成するための第1解像度および該第1解像度よりも低い第2解像度との比率に応じて、所望の前記高解像度画像を線形結合により構築するための基底となる複数の高解像度基底画像が集合してなる高解像度辞書をダウンサンプリングし、前記高解像度基底画像よりも解像度が低い複数の低解像度基底画像を集合させてなる低解像度辞書を作成する辞書作成工程と、標本の撮影範囲を複数に分割して、各撮影範囲を前記第2解像度で撮影して複数の低解像度画像を取得するマップ観察工程と、該マップ観察工程により取得された複数の前記低解像度画像を展開して前記低解像度辞書の複数の前記低解像度基底画像とそれぞれの係数とで表し、該それぞれの係数は変えずに複数の前記低解像度基底画像を前記高解像度辞書の対応する複数の前記高解像度基底画像に置き換えて、線形結合により前記標本の複数の部分的な前記高解像度画像を構築し、これら複数の部分的な前記高解像度画像を繋ぎ合わせて前記標本の全体的な前記高解像度画像を構築する画像構築工程とを含む観察方法である。
【0022】
本態様によれば、画像構築工程により、マップ観察工程によって第2解像度で取得された標本の低解像度画像から低解像度辞書および高解像度辞書を用いて標本の高解像度画像を構築することで、第1解像度で標本の各撮影範囲を撮影して複数の部分的な高解像度画像を取得する場合と比較して、標本の高速な現象を捉えつつその高速な現象の詳細を表した高解像度画像を取得することができる。これにより、高解像度と高速性を両立して、標本の高速な現象を逃すことなく標本の広い範囲を詳細に観察することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高解像度と高速性を両立して標本を観察することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る観察装置について図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置1は、
図1に示すように、標本(図示略)を観察する顕微鏡3と、ユーザからの指示を入力するユーザインターフェース5と、ユーザインターフェース5からの指示に基づいて顕微鏡3の制御および演算処理を行う制御演算装置7とを備えている。また、観察装置1には、ユーザが指示を入力するマウスやキーボード等の入力部と、撮影条件や画像等を表示するモニタとが接続されている(いずれも図示略)。
【0026】
顕微鏡3は、光源(図示略)から発せられたレーザ光を標本上で2次元的に走査させるガルバノミラー等の走査光学系9と、レーザ光が照射された標本からの観察光を集光する対物レンズ(図示略)と、対物レンズにより集光された観察光を撮影して画像を取得する撮像素子(画像取得部)11とを備えている。
【0027】
ユーザインターフェース5は、ユーザが所望する解像度を画像サイズとして設定する高解像度画像サイズ設定部(解像度設定部)13および低解像度画像サイズ設定部(解像度設定部)15と、ユーザの入力により制御演算装置7に撮影開始を指示する撮影開始指示部17と、ユーザの入力により高解像度画像を構築するための高解像度辞書を作成するのに用いる複数の高解像度撮影画像を指定する高解像画像指定部19とを備えている。高解像度辞書は、所望の高解像度画像を線形結合により構築するための基底となる複数の高解像度基底画像を集合させたものである。
【0028】
高解像度画像サイズ設定部13は、高解像度画像を作成するための第1解像度を第1画像サイズとして設定するようになっている。
低解像度画像サイズ設定部15は、第1解像度よりも低い第2解像度を第2画像サイズとして設定するようになっている。
【0029】
撮影開始指示部17は、ユーザの選択により、制御演算装置7に対して、高解像度画像サイズ設定部13によって設定された第1画像サイズでの撮影開始を指示したり、低解像度画像サイズ設定部15によって設定された第2画像サイズでの撮影開始を指示したりするようになっている。
【0030】
制御演算装置7は、顕微鏡3の走査光学系9および撮像素子11を制御する撮影制御部21と、高解像度辞書を作成する高解像度辞書作成部(辞書作成部)23と、低解像度辞書を作成する低解像度辞書作成部(辞書作成部)25と、高解像度画像を作成する高解像度画像作成部(画像構築部)27とを備えている。
【0031】
撮影制御部21は、撮影開始指示部17からの撮影開始の指示に応じて、第1画像サイズで標本を撮影したりまたは第2画像サイズで標本を撮影したりするように、走査光学系9および撮像素子11を制御するようになっている。
【0032】
高解像度辞書作成部23は、高解像画像指定部19により指定された互いに異なる複数の高解像度撮影画像を線形和で表すことができる複数の高解像度基底画像を内部処理にて生成し、生成した複数の高解像度基底画像を集合させて、例えば
図2に示すような高解像度辞書を作成するようになっている。高解像度辞書を構成する複数の高解像度基底画像は、同一の被写体の撮影部位が異なるものでもよいし被写体自体が異なるものでもよく、また、枚数が多いほど好ましい。
図2において、Dhは高解像度辞書を示し、Bhは高解像度基底画像を示している。
【0033】
低解像度辞書作成部25は、高解像度画像サイズ設定部13により設定される第1画像サイズと低解像度画像サイズ設定部15により設定される第2画像サイズとの比率に応じて高解像度辞書をダウンサンプリングし、高解像度基底画像よりも解像度が低い複数の低解像度基底画像を集合させて、例えば
図3に示すような低解像度辞書を作成するようになっている。
図3において、Dlは低解像度辞書を示し、Blは低解像度基底画像を示している。
【0034】
高解像度辞書をダウンサンプリングして低解像度辞書を作成することで、高解像度辞書を構成する複数の高解像度基底画像と低解像度辞書を構成する複数の低解像度基底画像は相関関係を有する。ここでのダウンサンプリングは、例えば、高解像度辞書を構成する複数の高解像度基底画像にボケやノイズを加えて疑似的な劣化を施すことにより、解像度を低下させた複数の低解像度基底画像に変換するようになっている。
【0035】
高解像度画像作成部27は、低解像度画像サイズ設定部15により設定される第2画像サイズで撮像素子11により取得された低解像度画像を展開し、展開した低解像度画像を低解像度辞書を構成する複数の低解像度基底画像とそれぞれの係数とで表すようになっている。また、高解像度画像作成部27は、低解像度画像を展開して表した複数の低解像度基底画像とそれぞれの係数の内、それぞれの係数は変えずに、複数の低解像度基底画像を高解像度辞書の対応する複数の高解像度基底画像に置き換えて、それらを線形結合させることにより、標本の高解像度画像を構築するようになっている。
【0036】
このように構成された観察装置1の作用について、
図4のフローチャートを参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置1により標本の高解像度画像を作成するには、まず、ユーザは、例えば
図5に示すようなモニタ画面上で、高解像度画像サイズ設定部13により、作成したい高解像度画像の第1解像度(高解像度)として所望の第1画像サイズ(
図5に示す例では512×512)を設定する(ステップSA1)。
【0037】
続いて、ユーザは、低解像度画像サイズ設定部15により、第1解像度よりも低い第2解像度(低解像度)として所望の第2画像サイズ(
図5に示す例では64×64)を設定する(ステップSA2)。
【0038】
次いで、同じく
図5に示すようなモニタ画面上で、ユーザが高解像度(第1画像サイズ)での撮影開始の指示を入力すると、撮影開始指示部17からの指示に従い、撮影制御部21により顕微鏡3の走査光学系9および撮像素子11が第1画像サイズで標本を撮影するように制御される。
【0039】
顕微鏡3では、図示しない光源からレーザ光が発せられて走査光学系9により標本上で2次元的に走査され、撮像素子11により、高解像度画像サイズ設定部13により設定された第1画像サイズで標本からの観察光が撮影される。同様にして、撮像素子11により複数の標本を第1画像サイズで撮影し、複数の高解像度撮影画像を取得する(ステップSA3)。撮像素子11により取得された複数の高解像度撮影画像は、撮影制御部21を介して高解像度辞書作成部23に送られる。
【0040】
次いで、ユーザは、高解像度辞書作成部23に送られた複数の高解像度撮影画像をモニタ等で確認し、
図5に示すようなモニタ画面上で、高解像画像指定部19により、その中から高解像度辞書を作成するのに用いる複数の高解像度撮影画像を指定する(ステップSA4)。
【0041】
次いで、ユーザが、
図5に示すようなモニタ画面上で辞書作成を指示すると、まず、高解像度辞書作成部23により、高解像画像指定部19によってユーザが指定した複数の高解像度撮影画像を線形和で表すことができる複数の高解像度基底画像が生成され、生成された複数の高解像度基底画像が集合させられて、
図2に示すような高解像度辞書が作成される(ステップSA5)。
【0042】
次いで、低解像度辞書作成部25により、高解像度画像サイズ設定部13によって設定された第1画像サイズと低解像度画像サイズ設定部15によって設定された第2画像サイズとの比率に応じて、高解像度辞書作成部23によって作成された高解像度辞書がダウンサンプリングされ、高解像度辞書を構成する複数の高解像度基底画像が低解像度の複数の低解像度基底画像に変換される。そして、低解像度辞書作成部25により、これら複数の低解像度基底画像が集合させられて、
図3に示すような低解像度辞書が作成される(ステップSA6)。
【0043】
次いで、ユーザが
図5に示すようなモニタ画面上で、低解像度(第2画像サイズ)での撮影開始の指示を入力すると、撮影開始指示部17からの指示に従い、撮影制御部21により顕微鏡3の走査光学系9および撮像素子11が第2画像サイズで標本を撮影するように制御される。
【0044】
そして、撮像素子11により、低解像度画像サイズ設定部15によって設定された第2画像サイズで標本からの観察光が撮影されて、
図6に示すような標本の低解像度画像が取得される(ステップSA7)。撮像素子11により解像度が低い第2解像度で標本を撮影して得られる低解像度画像は、解像度が高い第1解像度で撮影する場合と比較して、現象の詳細を解析することはできないものの標本の高速な現象を捉えることはできる。
【0045】
続いて、高解像度画像作成部27により、例えば、
図7に示すように、撮像素子11によって取得された標本の低解像度画像が展開されて、低解像度辞書の複数の低解像度基底画像とそれぞれの係数とで表される。
図7においてa,b,c,dは係数である。
図8においても同様である。
【0046】
そして、高解像度画像作成部27により、例えば、
図8に示すように、その複数の低解像度基底画像とそれぞれの係数の内、それぞれの係数は変えずに、複数の低解像度基底画像が高解像度辞書の対応する複数の高解像度基底画像に置き換えられて、複数の高解像度基底画像とそれぞれの係数が線形結合される。これにより、
図9に示すような標本の高解像度画像が作成される(ステップSA8)。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る観察装置1によれば、高解像度画像は、高解像度辞書を構成する複数の高解像度基底画像の線形和で表現することができ、低解像度画像は、低解像度辞書を構成する複数の低解像度基底画像の線形和で表現することができる。そして、高解像度画像作成部27により、撮像素子11によって第2解像度で取得された標本の低解像度画像から低解像度辞書および高解像度辞書を用いて標本の高解像度画像を構築することで、第1解像度で標本を撮影して高解像度画像を取得する場合と比較して、標本の高速な現象を捉えつつその高速な現象の詳細を表した高解像度画像を作成することができる。これにより、高解像度と高速性を両立して標本を観察することができる。
【0048】
本実施形態は以下のように変形することができる。
第1変形例としては、例えば、
図10のフローチャートに示されるように、低解像度画像サイズ設定部15により第2画像サイズを設定した後(ステップSA2)、予め取得してある高解像度撮影画像を複数用意し(ステップSB3)、その中から使用する複数の高解像度撮影画像を指定して(ステップSA4)、高解像度辞書を作成することとしてもよい(ステップSA5)。
【0049】
予め取得してある高解像度撮影画像としては、自然画像を使用することとしてもよいし、顕微鏡3により予め取得しておいたものを使用することとしてもよい。また、顕微鏡3とは異なる他の顕微鏡により取得した高解像度撮影画像を予め取得してある高解像度撮影画像として使用することとしてもよい。この場合、予め取得してある高解像度撮影画像として、例えば電子顕微鏡のような他の顕微鏡により第1解像度よりも高い解像度で取得された複数の高解像度撮影画像を用いることとしてもよい。
【0050】
予め取得してある複数の高解像度撮影画像を用いることで、観察直前に複数の高解像度撮影画像を取得する手間を省くことができる。これにより、標本に無駄なダメージを与えるのを抑制することができる。また、高解像度辞書作成部23により、他の顕微鏡によって第1解像度よりも高い解像度で取得された複数の高解像度撮影画像を用いて複数の高解像度基底画像が集合してなる高解像度辞書を作成した場合は、高解像度画像作成部27により、この観察装置1だけでは取得できない高い解像度の高解像度画像を構築することができる。
【0051】
第2変形例としては、例えば、
図11のフローチャートに示されるように、高解像画像指定部19により、複数の高解像度撮影画像の中から、低解像度画像と同じ標本を撮影して得られた複数の高解像度撮影画像を指定することとしてもよい(ステップSC4)。例えば、培養細胞のような標本の核の部分を観察する場合は、その核の部分を含む高解像度撮影画像を指定することとすればよい。
【0052】
この場合、顕微鏡3により、低解像度画像と同じ標本を第1画像サイズで撮影して複数の高解像度撮影画像を取得するか(
図4のフローチャートのステップSA3参照。)、または、顕微鏡3または顕微鏡3よりも解像度が高い他の顕微鏡により、低解像度画像と同じ標本を第1画像サイズまたはそれよりも高い解像度で撮影して複数の高解像度撮影画像を予め取得しておいて、それらを用意することとすればよい(
図10のフローチャートのステップSB3参照)。
【0053】
高解像度辞書作成部23により、低解像度画像と同じ標本を撮影して得られた複数の高解像度撮影画像を線形和で表すことができる複数の高解像度基底画像を内部処理にて生成し、生成した複数の高解像度基底画像を集合させて高解像度辞書を作成することで、高解像度画像作成部27において、撮像素子11によって取得される標本の低解像度画像がその標本の複数の低解像度基底画像により展開され、その標本の高解像度画像がその標本の複数の高解像度基底画像の線形結合によって構築される。
【0054】
したがって、低解像度画像の標本と異なる標本の複数の高解像度基底画像が集合してなる高解像度辞書を使用する場合と比較して、高解像度画像作成部27により構築される高解像度画像の精度を向上することができる。
【0055】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る観察装置について説明する。
本実施形態に係る観察装置31は、
図12に示すように、制御演算装置7が高解像度辞書作成部23を備えず、また、ユーザインターフェース5が、高解像画像指定部19に代えて高解像画像辞書指定部(辞書選択部)33を備える点で第1実施形態と異なる。
以下、第1実施形態に係る観察装置1と構成を共通する箇所には、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
高解像画像辞書指定部33は、高解像度基底画像の標本または解像度が異なる複数の高解像度辞書を記憶しており、ユーザがいずれかの高解像度辞書を指定することができるようになっている。また、高解像画像辞書指定部33は、ユーザが指定した高解像度辞書を低解像度辞書作成部25に送るようになっている。
【0057】
このように構成された観察装置31の作用について、
図13に示されるフローチャートを参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置31においては、第2画像サイズが設定された後(ステップSA2)、ユーザは、高解像画像辞書指定部33に記憶されている複数の高解像度辞書をモニタ等で確認し、
図14に示すようなモニタ画面上で、高解像画像辞書指定部33により、所望の高解像度辞書を指定する(ステップSD3)。これにより、ユーザが指定した高解像度辞書が低解像度辞書作成部25に送られて、低解像度辞書作成部25において低解像度辞書が作成される(ステップSA6)。
【0058】
本実施形態に係る観察装置31によれば、複数の高解像度辞書を予め用意しておいて、高解像画像辞書指定部33によりその中から使用する高解像度辞書を選択するだけで済むので、高解像度辞書を作成するための時間を省くことができる。また、高解像画像辞書指定部33により、標本に合わせて最適な高解像度辞書を選択すれば、高解像度画像作成部27により構築される高解像度画像の精度を向上することができる。例えば、低解像度画像の標本と同種の標本の高解像度基底画像を含む高解像度辞書を選択すれば、高解像度画像の構築に係る時間の短縮と高解像度画像の精度の向上を図ることができる。
【0059】
本実施形態においては、高解像画像辞書指定部33が、記憶してある高解像度辞書から使用する高解像度辞書を選択するのでなく、使用する高解像度辞書をネットワーク上から選択することとしてもよい。
このようにすることで、多くの選択肢から観察する標本に適当な高解像度辞書を選択して使用することができる。
【0060】
上記各実施形態においては、撮像素子11によりタイムラプス撮影にて第2画像サイズかつ所定の時間間隔で標本を撮影して複数の低解像度画像を取得し、高解像度画像作成部27が、タイムラプス撮影により取得された複数の低解像度画像に基づいて、標本の複数の高解像度画像を構築することとしてもよい。
【0061】
この場合、観察方法としては、
図15のフローチャートに示されるように、画像サイズ設定工程SE1と、辞書作成工程SE2と、タイムラプス観察工程SE3と、画像構築工程SE4とを含むこととすればよい。
【0062】
画像サイズ設定工程SE1は、第1画像サイズおよび第2画像サイズを設定するようになっている。
辞書作成工程SE2は、第1画像サイズと第2画像サイズとの比率に応じて高解像度辞書をダウンサンプリングして、低解像度辞書を作成するようになっている。
【0063】
タイムラプス観察工程SE3は、撮像素子11により、第2画像サイズかつ所定の時間間隔で標本を撮影して、同一の標本の複数の低解像度画像を取得するようになっている。
画像構築工程SE4は、タイムラプス観察工程SE3により取得された複数の低解像度画像を展開して低解像度辞書の複数の低解像度基底画像とそれぞれの係数とで表し、それぞれの係数は変えずに複数の低解像度基底画像を高解像度辞書の対応する複数の高解像度基底画像に置き換えて、線形結合により標本の複数の高解像度画像を構築するようになっている。
【0064】
このようにすることで、タイムラプス観察工程SE3によって取得された標本の低解像度画像から低解像度辞書および高解像度辞書を用いて標本の高解像度画像を構築することにより、第1解像度かつ所定の時間間隔で標本を撮影して複数の高解像度画像を取得する場合と比較して、標本の高速な現象を捉えつつその高速な現象の詳細を表した高解像度画像を撮影することができる。これにより、高解像度と高速性を両立して、標本の高速な現象を逃すことなく標本の時間変化を詳細に観察することができる。
【0065】
また、上記各実施形態においては、撮像素子11によりタイリング撮影にて標本を複数の撮影範囲に分割して第2画像サイズで撮影して複数の低解像度画像を取得し、高解像度画像作成部27が、取得された複数の低解像度画像に基づいて、標本の複数の部分的な高解像度画像を構築して、これら複数の部分的な高解像度画像を繋ぎ合わせて標本の全体的な高解像度画像を構築することとしてもよい。
【0066】
この場合、観察方法としては、
図16のフローチャートに示されるように、画像サイズ設定工程SE1と、辞書作成工程SE2と、マップ観察工程SF3と、画像構築工程SE4とを含んでいる。画像サイズ設定工程SE1および辞書作成工程SE2は、上述した変形例と同様である。
【0067】
マップ観察工程SF3は、標本の撮影範囲を複数に分割して、各撮影範囲を第2解像度で撮影して複数の低解像度画像を取得するようになっている。
画像構築工程SE4は、マップ観察工程SF3により取得された複数の低解像度画像を展開して低解像度辞書の複数の低解像度基底画像とそれぞれの係数とで表し、それぞれの係数は変えずに複数の低解像度基底画像を高解像度辞書の対応する複数の高解像度基底画像に置き換えて、線形結合により標本の複数の高解像度画像を構築するようになっている。
【0068】
このようにすることで、マップ観察工程SF3によって取得された標本の低解像度画像から低解像度辞書および高解像度辞書を用いて標本の高解像度画像を構築することで、第1解像度で標本の各撮影範囲を撮影して複数の部分的な高解像度画像を取得する場合と比較して、標本の高速な現象を捉えつつその高速な現象の詳細を表した高解像度画像を作成することができる。これにより、高解像度と高速性を両立して、標本の高速な現象を逃すことなく標本の広い範囲を詳細に観察することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記各実施形態および変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。