(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する「発明の実施形態」は、本願発明の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものである。本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0011】
少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「1つの」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。
【0012】
(第1実施形態)
1.空調装置の概要
本実施形態は、室内の冷房(空調)を行う空調装置に本発明を適用したものである。当該空調装置は、室内の熱を室外に放熱することにより冷房を行う。なお、本実施形態に係る空調装置は、例えばICT装置等の発熱体が設置されたサーバ室内の温度を所定範囲内に維持するための空調を行う。
【0013】
空調装置1は、
図1に示すように、室内熱交換器3、室外熱交換器5及び熱移動装置10等を備える。室内熱交換器3は、サーバ室内の空気と水等の液体(以下、熱搬送流体という。)とを熱交換する。つまり、室内熱交換器3は、室内空気から吸熱する。
【0014】
室外熱交換器5は、室外空気と熱搬送流体とを熱交換する。つまり、室外熱交換器5は、室外空気に放熱する。したがって、本実施形態では、室内(室内熱交換器3)側が吸熱側となり、室外(室外熱交換器5)側が放熱側となる。
【0015】
熱移動装置10は、(a)吸熱側にて熱を吸収した熱搬送流体(以下、吸熱流体という。)から放熱側にて熱を放出した熱搬送流体(以下、放熱流体という。)に熱を移動させる冷凍機としての機能、及び(b)熱搬送流体を循環させるポンプとしての機能を兼ね備えている。なお、吸熱流体と放熱流体とを総称する際には、熱搬送流体と記す。
【0016】
2.熱移動装置の構成
熱移動装置10は、
図2及び
図3に示すように、羽根車20、ケーシング30及び磁場発生器40等を少なくとも備える。羽根車20は、
図2に示すように、複数のブレード21を有する。
【0017】
各ブレード21は、羽根車20の回転中心側から径方向外側に延びている。なお、本実施形態に係る各ブレード21は後向き羽根にて構成されている。なお、各ブレード21は、ラジアル羽根、又は前向き羽根にて構成されていてもよい。
【0018】
隣り合うブレード21間の空間は、
図3に示すように、回転軸線方向(紙面上下方向)において、複数の空間22に仕切られている。各空間22を仕切る仕切材23は、電磁鋼板等の強磁性材料にて構成されている。つまり、羽根車20の一部は、磁性材料にて構成されている。
【0019】
電動モータ24は、羽根車20を回転させる回転力を発生する。ケーシング30は、
図2に示すように、羽根車20を回転可能に収納するポンプ室31を構成する。当該ケーシング30は、吸入部32、吸熱側吐出部33及び放熱側吐出部34等を有する。
【0020】
吸入部32は、羽根車20の回転中心側に熱搬送流体を導く。このため、羽根車20が回転すると、回転中心側に導かれた熱搬送流体は、複数の空間22内を回転中心側から径方向外側に流通して羽根車20から吐き出される。つまり、熱移動装置10は、熱搬送流体を径方向外側に吐き出す遠心ポンプ機能を発揮する。
【0021】
本実施形態に係る吸入部32は、
図3に示すように、吸熱流体と放熱流体とを混合し、混合した熱搬送流体を羽根車20の回転中心側に供給する。このため、羽根車20から吐き出される熱搬送流体の温度(以下、吐出温度という。)は、吸熱温度の流体温度と放熱流体温度との中間温度となる。
【0022】
つまり、外気温度が室内より高い場合の吐出温度は、吸熱流体の温度より高く、かつ、放熱流体の温度より低い中間温度である。外気温度が室内より低い場合の吐出温度は、吸熱流体の温度より低く、かつ、放熱流体の温度より高い中間温度である。
【0023】
なお、「吸熱流体と放熱流体とを混合し、混合した熱搬送流体を羽根車20の回転中心側に供給する」とは、羽根車20に供給される時点で吸熱流体と放熱流体とが混合されていることを意図する。つまり、吸熱流体と放熱流体との混合箇所は不問である。
【0024】
吸熱側吐出部33は、羽根車20の回転に伴って当該羽根車20の径方向外側から流出した熱搬送流体を吸熱側(室内熱交換器3側)に吐出するための吐出部である。放熱側吐出部34は、羽根車20の回転に伴って当該羽根車20の径方向外側から流出した熱搬送流体を放熱側(室外熱交換器5側)に吐出するための吐出部である。
【0025】
このため、ケーシング30は、羽根車20から吐き出された熱搬送流体を集合させて吸熱側吐出口33A及び放熱側吐出口34Aに導く渦巻き状に構成されている。換言すれば、熱移動装置10は、渦巻きポンプ状に構成されている。
【0026】
磁場発生器40は、ポンプ室31の一部に磁場を発生させる。本実施形態に係る磁場発生器40は、
図2に示すように、ポンプ室31の略1/2の空間に磁場を発生させる。磁場発生器40は、電磁石又は永久磁石(本実施形態では、電磁石)にて構成されている。
【0027】
以下、ポンプ室31のうち磁場が形成された空間A1(二点鎖線の斜線部分)を磁場空間A1という。ポンプ室31のうち磁場が形成されていない空間A2(二点鎖線の斜線がない部分)を非磁場空間A2とう。
【0028】
そして、磁場空間A1は、放熱側(室外熱交換器5側)に接続される放熱側吐出口34Aに連通している。非磁場空間A2は、吸熱側(室内熱交換器3側)に接続される吸熱側吐出口33Aに連通している。
【0029】
つまり、磁場空間A1は、羽根車20のうち吸入部32(羽根車20の回転中心側)から略180度の範囲で放熱側吐出部34に連なる範囲である。非磁場空間A2は、羽根車20のうち吸入部32から略180度の範囲で吸熱側吐出部33に連なる範囲である。
【0030】
3.本実施形態に係る熱移動装置及び空調装置の特徴
熱移動装置10は、吸熱側にて熱を吸収した熱搬送流体から放熱側にて熱を放出した熱搬送流体に熱を移動させる冷凍機としての機能、及び熱搬送流体を循環させるポンプとしての機能を兼ね備えている。したがって、簡素な構成とすることが可能な熱移動装置を得ることができ得る。
【0031】
すなわち、羽根車20のうち磁場空間A1に位置する部分は熱を放出する。羽根車20のうち非磁場空間A2に位置する部分は熱を吸収する。つまり、磁場空間A1にて放熱される熱は、非磁場空間A2にて吸熱された熱である。
【0032】
非磁場空間A2にて吸熱された熱は、吸熱流体の熱、つまり室内熱交換器3にて吸熱された室内空気の熱である。放熱側吐出部34(放熱側吐出口34A)から流出する熱搬送流体の温度は、少なくとも磁場空間A1にて放熱された熱により、放熱流体の温度より上昇している。
【0033】
したがって、室外熱交換器5には、室外空気の温度より高い温度の熱搬送流体が流入するので、室外熱交換器5から室外空気に熱が放出される。つまり、本実施形態では、熱移動装置10にて加熱昇温された熱搬送流体が室外熱交換器5に流入するので、室外空気の温度が高い場合であっても、熱搬送流体と室外空気との温度差を確保でき得る。延いては、本実施形態に係る空調装置1では、室外空気の温度が高い場合であっても、室内の冷房を行うことが可能となる。
【0034】
なお、熱移動装置10の熱移動量は、羽根車20の回転数(熱搬送流体の流量)、磁場空間A1の磁界の強さ、及び磁場空間A1の面積等に応じて変化する。例えば、磁場空間A1の面積を縮小させて熱移動量を減少させる際には、羽根車20の中心から外周に向けて磁場空間A1の面積を縮小させていくことが望ましい。逆に、磁場空間A1の面積を拡大させて熱移動量を増大させる際には、羽根車20の外周から中心向けて磁場空間A1の面積を拡大させていくことが望ましい。
【0035】
本実施形態に係る空調装置1では、室外空気の温度が低く、熱搬送流体と室外空気との温度差が所定温度差以上の場合には、電磁石への通電を遮断し、磁場空間A1を消磁する。これにより、磁気熱量効果は消失する。
【0036】
しかし、本実施形態では、吸熱流体と放熱流体とが混合されて羽根車20の回転中心側に供給されるので、放熱側吐出部34(放熱側吐出口34A)から流出する熱搬送流体の温度は、放熱流体の温度より高い温度である。
【0037】
したがって、磁気熱量効果が消失した状態であっても、熱搬送流体と室外空気との温度差を確保できるので、室外熱交換器5から室外空気に熱を放出でき得る。延いては、電磁石に通電がされているときに比べて空調装置1の消費電力を低減できる。
【0038】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る磁場空間A1は、羽根車20のうち放熱側吐出部34、つまり羽根車20の外縁から吸入部32に至る範囲全体に設けられていた。これに対して、本実施形態に係る磁場空間A1は、
図4A及び
図4Bに示すように、羽根車20の外縁から吸入部32側に至る範囲のうち予め決められた範囲のみに設けられている。
【0039】
換言すれば、磁場空間A1を構成する仕切材23及び磁場発生器40は、放熱側吐出部34から吸入部32に至る範囲のうち羽根車20の外縁側のみに設けられ、吸入部32側に設けられていない。
【0040】
これにより、磁場空間A1にて加熱昇温した熱搬送流体が吸熱側吐出部33から吸熱側に吐出されてしまうことを抑制でき得る。
すなわち、熱搬送流体は、羽根車20の回転に伴って、羽根車20と共に当該羽根車20の回転の向きに移動しながら、回転中心側から羽根車20の外縁に向けて流通する。以下、「熱搬送流体が羽根車20の回転の向きに移動すること」を単に「移動」という。
【0041】
このため、羽根車20の外縁から吸入部32に至る全範囲が磁場空間A1であると(
図2参照)、回転中心側で加熱昇温した熱搬送流体が非磁場空間A2に移動して吸熱側吐出部33から吐き出される可能性がある。
【0042】
これに対して、本実施形態に係る磁場空間A1は、羽根車20の外縁から吸入部32側に至る所定の範囲のみに設けられている(
図4A参照)。このため、磁場空間A1から非磁場空間A2に移動する熱搬送流体の量は、全範囲が磁場空間A1である場合(
図2参照)に比べて少なくなる。
【0043】
したがって、磁場空間A1にて加熱昇温した熱搬送流体が吸熱側吐出部33から吸熱側に吐出されてしまうことを抑制でき得る。延いては、吸熱側で回収した熱が再び吸熱側に戻ってしまうことを抑制でき得る。
【0044】
なお、熱移動装置10の熱移動量は、羽根車20の回転数、磁場空間A1の磁界の強さ、及び磁場空間A1の面積等に応じて変化する。そして、本実施形態に係る磁場空間A1の面積は、例えば第1実施形態に係る磁場空間A1の面積より小さいので、本実施形態に係る熱移動装置10の熱移動量は、第1実施形態に係る熱移動装置10の熱移動量より小さくなるおそれがある。
【0045】
そこで、本実施形態では、磁場発生器40への通電電流値を大きくし、磁場空間A1に発生している磁界の強さを、例えば第1実施形態より大きくしている。このため、本実施形態では、磁場空間A1の面積が小さくなっているものの、必要な熱移動量が確保されている。
【0046】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
(第3実施形態)
本実施形態は、第2実施形態の変形例である。すなわち、第2実施形態では、磁場空間A1は、予め決められた固定範囲であった。これに対して、本実施形態に係る熱移動装置10は、羽根車20の回転数等に応じて磁場空間A1の範囲を変更する機能を有する。
【0047】
すなわち、
図5に示すように、仕切材23は、吸入部32から羽根車20の外縁まで設けられている。磁場発生器40をなす電磁石は、吸入部32から羽根車20の外縁に至る範囲に複数設けられている。
【0048】
そして、羽根車20の回転数が大きくなるに応じて、吸入部32に近い磁場発生器40への通電が遮断される。つまり、羽根車20の回転数が大きくなるに応じて、回転中心側の電磁石から順に通電が遮断される。これにより、羽根車20の回転数が大きくなるに応じて、磁場空間A1の範囲が外縁側に向けて縮小していく。
【0049】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、吸熱流体と放熱流体とが混合されて羽根車20の回転中心側に供給された。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、吸熱流体と放熱流体とが混合されることなく、吸熱流体が非磁場空間A2側に供給され、放熱流体が磁場空間A1側に供給される構成であってもよい。
【0050】
上述の第3実施形態では、羽根車20の回転数が大きくなるに応じて、吸入部32に近い磁場発生器40への通電が遮断された。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、空調装置1の熱負荷又は熱搬送流体の流量に応じて磁場発生器40への通電が制御される構成であってもよい。
【0051】
上述の実施形態では、室外空気を冷熱源として、室内の冷房(空調)を行う空調装置に熱移動装置10を適用した。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
すなわち、例えば、室外空気を温熱源として、室内の暖房(空調)を行う空調装置、又は空調装置以外の熱利用装置にも適用可能である。なお、
図6は、冷房運転と暖房運転とを切替可能な空調装置1である。切替バルブ50は、熱搬送流体の流通を切り替えるためのバルブである。
【0053】
上述の実施形態では、熱搬送流体として液体(非圧縮性流体)を用いた。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、空気等の気体(圧縮性流体)を熱搬送流体としてもよい。つまり、液体を介することなく、室内空気と室外空気とが熱移動装置10にて熱交換される空調装置であってもよい。
【0054】
上述の実施形態では、羽根車20の磁性材料部分が板状の仕切材23により構成されていた。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、例えば、
図7に示すように、吸入部32側から外縁側に延びる棒状の磁性材料23Aにより磁性材料部分が構成されていてもよい。なお、
図7は、複数の磁性材料23Aが設けられた例であるが、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
上述の実施形態に係る空調装置1は、1つの熱移動装置10を備える構成であった。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、複数の熱移動装置10を備える空調装置1であってもよい。
【0056】
上述の実施形態では、略180度の範囲で磁場空間A1と非磁場空間A2とが交互に設けられていた。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、磁場空間A1と非磁場空間A2とが交互に設けられていれば、磁場空間A1及び非磁場空間A2それぞれが2以上設けられた構成でもよい。
【0057】
また、本願に係る熱移動装置10は、磁場発生器40が移動可能な構成、又は複数の電磁石により磁場を発生させる範囲を冷房運転時と暖房運転時とで変更することにより、冷房運転と暖房運転とを切替可能な空調装置1にも適用可能である。
【0058】
上述の実施形態に係る図に示された磁場発生器40は、ケーシング30の下面のみに配設されていた。しかし、当該図は熱移動装置10を模式的に現したものであり、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、磁場空間A1全体を覆うような磁場発生器40であってもよい。
【0059】
さらに、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。