特許第6962737号(P6962737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962737
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/215 20110101AFI20211025BHJP
   B60R 21/206 20110101ALI20211025BHJP
【FI】
   B60R21/215
   B60R21/206
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-158571(P2017-158571)
(22)【出願日】2017年8月21日
(65)【公開番号】特開2019-34683(P2019-34683A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】大野 稔
(72)【発明者】
【氏名】尾方 哲也
(72)【発明者】
【氏名】寺内 章裕
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−271774(JP,A)
【文献】 実開平03−039607(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張可能なエアバッグを収納し、かつ、膨張する前記エアバッグを車室内へ突出させる突出用開口と、該突出用開口の周囲の周壁部と、を有したケースと、
前記突出用開口を覆い、かつ、膨張する前記エアバッグに押し開かれるドア部を有した室内側パネル部と、該室内側パネル部の裏面側から延び、前記ケースの前記周壁部に連結される側壁部と、を有したエアバッグカバーと、
を備えて構成されるとともに、
前記エアバッグカバーの前記側壁部と前記ケースの前記周壁部との連結部位として、車室内側に露出される露出連結部位を備え、
該露出連結部位が、前記周壁部に、前記突出用開口側から遠ざかるように反転する係止フックを備え、前記側壁部に、前記係止フックに周縁を係止される係止孔を備えて構成され、
前記係止フックが、前記側壁部の内側から外側に向かうように、前記係止孔に貫通させて、前記側壁部に係止させることにより、先端部を、車室内側に露出させるように、前記係止孔の周縁の前記側壁部から突出させる構成としているエアバッグ装置であって、
前記露出連結部位の前記エアバッグカバーにおける前記側壁部の前記係止孔周縁において、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部を前記係止孔の開口面に沿う方向で覆い可能なリブが、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部の高さ寸法と同等以上の高さ寸法として、突設されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
膨張可能なエアバッグを収納し、かつ、膨張する前記エアバッグを車室内へ突出させる突出用開口と、該突出用開口の周囲の周壁部と、を有したケースと、
前記突出用開口を覆い、かつ、膨張する前記エアバッグに押し開かれるドア部を有した室内側パネル部と、該室内側パネル部の裏面側から延び、前記ケースの前記周壁部に連結される側壁部と、を有したエアバッグカバーと、
を備えて構成されるとともに、
前記エアバッグカバーの前記側壁部と前記ケースの前記周壁部との連結部位として、車室内側に露出される露出連結部位を備え、
該露出連結部位が、前記周壁部に、前記突出用開口側から遠ざかるように反転する係止フックを備え、前記側壁部に、前記係止フックに周縁を係止される係止孔を備えて構成され、
前記係止フックが、前記側壁部の内側から外側に向かうように、前記係止孔に貫通させて、前記側壁部に係止させることにより、先端部を、車室内側に露出させるように、前記係止孔の周縁の前記側壁部から突出させる構成としているエアバッグ装置であって、
前記露出連結部位の前記エアバッグカバーにおける前記側壁部の前記係止孔周縁において、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部を前記係止孔の開口面に沿う方向で覆い可能なリブが、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部の高さ寸法と同等以上の高さ寸法として、突設され
前記リブが、前記係止フック先端部の反転方向に沿った先端面側に、配設されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項3】
前記リブが、前記係止孔周縁において、前記係止フックの反転方向に沿う方向で対向する前記係止孔を間にした両縁付近に、配設されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ケースの前記突出用開口を、着座した乗員の下肢の前方側に配設させる膝保護用エアバッグ装置として、構成され、
前記露出連結部位の前記係止フックが、乗員から離れる側の車両の前後方向に沿って反転する構成として、配設されていることを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記露出連結部位の前記係止孔周縁において、対向する前記リブの対向方向と直交する両側に、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部を、前記係止孔の開口面に沿う方向で、覆い可能な第2のリブが、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部の高さ寸法と同等以上の高さ寸法として、突設されていることを特徴とする請求項3若しくは請求項4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記露出連結部位の前記係止孔周縁において、対向する前記リブと、前記第2のリブとが、前記係止孔の周縁で連続的に連なるように、配設されていることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
膨張可能なエアバッグを収納し、かつ、膨張する前記エアバッグを車室内へ突出させる突出用開口と、該突出用開口の周囲の周壁部と、を有したケースと、
前記突出用開口を覆い、かつ、膨張する前記エアバッグに押し開かれるドア部を有した室内側パネル部と、該室内側パネル部の裏面側から延び、前記ケースの前記周壁部に連結される側壁部と、を有したエアバッグカバーと、
を備えて構成されるとともに、
前記エアバッグカバーの前記側壁部と前記ケースの前記周壁部との連結部位として、車室内側に露出される露出連結部位を備え、
該露出連結部位が、前記周壁部に、前記突出用開口側から遠ざかるように反転する係止フックを備え、前記側壁部に、前記係止フックに周縁を係止される係止孔を備えて構成され、
前記係止フックが、前記側壁部の内側から外側に向かうように、前記係止孔に貫通させて、前記側壁部に係止させることにより、先端部を、車室内側に露出させるように、前記係止孔の周縁の前記側壁部から突出させる構成としているエアバッグ装置であって、
前記露出連結部位の前記エアバッグカバーにおける前記側壁部の前記係止孔周縁において、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部を前記係止孔の開口面に沿う方向で覆い可能なリブが、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部の高さ寸法と同等以上の高さ寸法として、突設され
前記リブが、前記係止孔周縁において、前記係止フックの反転方向に沿う方向で対向する前記係止孔を間にした両縁付近に、配設され、
前記露出連結部位の前記係止フックと前記係止孔とが、対向する前記リブの対向方向と直交する方向に沿うように、対応する前記ケースの前記周壁部と前記エアバッグカバーの前記側壁部とに、並設され、
前記係止フックの反転方向に沿う方向で対向する前記リブの内、前記突出用開口に近い側のリブが、並設された前記係止孔の並設方向に沿って、連続的に連なるように、配設されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項8】
前記ケースの前記突出用開口を、着座した乗員の下肢の前方側に配設させる膝保護用エアバッグ装置として、構成され、
前記露出連結部位の前記係止フックが、乗員から離れる側の車両の前後方向に沿って反転する構成として、配設されていることを特徴とする請求項7に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
前記露出連結部位の前記係止孔周縁において、対向する前記リブの対向方向と直交する両側に、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部を、前記係止孔の開口面に沿う方向で、覆い可能な第2のリブが、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部の高さ寸法と同等以上の高さ寸法として、突設されていることを特徴とする請求項7若しくは請求項8に記載のエアバッグ装置。
【請求項10】
前記露出連結部位の前記係止孔周縁において、対向する前記リブと、前記第2のリブとが、前記係止孔の周縁で連続的に連なるように、配設されていることを特徴とする請求項9に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内に配設されて、折り畳んだエアバッグを収納するケースと折り畳まれたエアバッグを覆うエアバッグカバーとの連結に、ケースに設けられた係止フックを利用するタイプのエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置としては、例えば、膝保護用のエアバッグ装置では、膨張可能なエアバッグを収納して、膨張するエアバッグを車室内へ突出させる突出用開口を有したケースと、ケースの突出用開口を覆い、かつ、膨張するエアバッグに押し開かれるドア部を有したエアバッグカバーと、を備えるものがあった(例えば、特許文献1,2参照)。突出用開口は、一般的に、後方側に向けて開口するように配設されていた。そして、エアバッグカバーは、ドア部を設けて室内側に露出される室内側パネル部と、室内側パネル部の裏面側から前方側へ延びてケースに連結される側壁部と、を備えて構成されていた。エアバッグカバーのケースへの連結は、ケースにおける突出用開口の周囲に配置される周壁部の上下の壁部に、突出用開口から離れるように前方側に反転する複数の係止フックが、配設され、各係止フックが、エアバッグカバーの側壁部に貫通するように形成された係止孔に対し、側壁部の内側から外側に突出するように挿入されて、係止孔の周縁を係止することにより、行われていた。
【0003】
さらに、エアバッグカバーの側壁部の下方側には、エアバッグカバーと別体としたアンダカバー(特許文献1参照)や、室内側パネル部の下縁側を湾曲させるように前方側に延ばした延設部(特許文献2参照)が、配設されていた。これらのアンダカバーや延設部は、エアバッグカバーの側壁部の下方側の係止孔周縁から突出した係止フックの先端部に、乗員の指や脚等が触れないように、係止フックの先端部を、後方から下方側にかけて覆うために、配設されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−271774号公報
【特許文献2】特開2007−230344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のエアバッグ装置として、下方側の係止フックの先端部を覆うように、エアバッグカバーと別体としたアンダカバーを利用する構成とすれば、部品点数の増加を招き、また、車両への組付工数の増加を招くことから、好ましくない。また、下方側の係止フックの先端部を覆うように、エアバッグカバーの室内側パネル部の下縁側に、後方側から下方の前方側に向かって屈曲する延設部を設ける構成としても、延設部を設けるスペースが必要となり、エアバッグ装置の搭載する自由度を制限してしまう。勿論、アンダカバーや延設部を設けない構成とすれば、直接的に視認できる訳ではないものの、係止フックの先端部が、エアバッグカバーの側壁部の下面側で、車室内側に露出するように、係止孔の周縁から突出する状態となることから、乗員の指や脚等の被干渉体が、係止フックの先端部に対して引っ掛るような不適切な状態で接触する虞れが生じ、好ましくない。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便に、被干渉体における車室内側に露出された係止フックとの不適切な接触を防止できるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアバッグ装置では、膨張可能なエアバッグを収納し、かつ、膨張する前記エアバッグを車室内へ突出させる突出用開口と、該突出用開口の周囲の周壁部と、を有したケースと、
前記突出用開口を覆い、かつ、膨張する前記エアバッグに押し開かれるドア部を有した室内側パネル部と、該室内側パネル部の裏面側から延び、前記ケースの前記周壁部に連結される側壁部と、を有したエアバッグカバーと、
を備えて構成されるとともに、
前記エアバッグカバーの前記側壁部と前記ケースの前記周壁部との連結部位として、車室内側に露出される露出連結部位を備え、
該露出連結部位が、前記周壁部に、前記突出用開口側から遠ざかるように反転する係止フックを備え、前記側壁部に、前記係止フックに周縁を係止される係止孔を備えて構成され、
前記係止フックが、前記側壁部の内側から外側に向かうように、前記係止孔に貫通させて、前記側壁部に係止させることにより、先端部を、車室内側に露出させるように、前記係止孔の周縁の前記側壁部から突出させる構成としているエアバッグ装置であって、
前記露出連結部位の前記エアバッグカバーにおける前記側壁部の前記係止孔周縁において前記係止孔から突出する前記係止フック先端部を前記係止孔の開口面に沿う方向で覆い可能なリブが、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部の高さ寸法と同等以上の高さ寸法として、突設されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るエアバッグ装置では、露出連結部位において、反転した係止フックにおけるエアバッグカバーの側壁部から突出する先端部が係止孔周縁配置されたリブによって、隠れる状態となる。すなわち、指や脚等の被干渉体が係止フックの先端部に触れようとしても、係止孔周縁配置されたリブに位置規制されて、被干渉体が係止フック先端部に引っ掛るように接触することが防止される。
【0009】
特に、係止フック先端部を覆うように係止孔の周縁に配設されるリブは、指等の被干渉体が係止フック先端部に不適切に接触しない高さ、すなわち、単に、エアバッグカバーの側壁部から突出する係止フック先端部の高さ寸法と同等以上として、被干渉体の係止フック先端部との不適切な接触を防止しており、従来のようなアンダカバーや延設部に比べて、嵩張らずに、容易に配設させることができ、さらに、エアバッグカバー自体の成形時に、簡単に一体的に形成することができる。
【0010】
したがって、本発明に係るエアバッグ装置では、係止孔周縁にリブを配設させるだけで、簡便に、被干渉体における車室内側に露出される係止フックとの不適切な接触を防止することができる。
【0011】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、前記リブが、前記係止フック先端部の反転方向に沿った先端面側に、配設されていることが望ましい。
【0012】
なぜなら、係止フックの先端部は、係止孔から突出した先端面側が被干渉体に引っ掛かり易い構成としているが、その先端面側に接触しようとする被干渉体は、近傍のリブに接触を防止され、引っ掛るような係止フックの先端部との不適切な接触が防止されるからである。
【0013】
また、本発明に係るエアバッグ装置では、前記リブが、前記係止孔周縁において、前記係止フックの反転方向に沿う方向で対向する前記係止孔を間にした両縁付近に、配設されていることが望ましい。
【0014】
なぜなら、係止フックの先端部は、係止孔から突出した先端面側が被干渉体に引っ掛かり易い構成としているが、その先端面側に接触しようとする被干渉体は、近傍のリブに接触を防止され、さらに、沈み込んで係止フック先端部と接触しようとしても、他方側のリブに位置規制され、その結果、係止孔周縁の両側に配置されたリブに位置規制されて、被干渉体が係止フック先端部に引っ掛るように接触することが防止されるからである。
【0015】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、前記ケースの前記突出用開口を、着座した乗員の下肢の前方側に配設させる膝保護用エアバッグ装置として、構成され、前記露出連結部位の前記係止フックが、乗員から離れる側の車両の前後方向に沿って反転する構成として、配設されていてもよい。
【0016】
すなわち、本発明に係るエアバッグ装置としては、膝保護用エアバッグ装置が例示でき
、その場合、ケースの突出用開口は、乗員(運転者含む)の膝の前方側で、後方側に向いて配設されたり、あるいは、下向きに配設されており、露出連結部位の係止フックは、ケースの周壁部における突出用開口の周縁から、乗員から離れる側の車両の前後方向の下向きから前方側、あるいは、乗員から離れる側の車両の前後方向の前向きから上方側に向かって、反転する構成としており、指等の被干渉体が、それらの係止フックの先端部に対し、引っ掛るように不適切に接触することを、リブにより、防止できる。
【0017】
また、本発明に係るエアバッグ装置では、前記露出連結部位の前記係止孔周縁において、対向する前記リブの対向方向と直交する両側に、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部を、前記係止孔の開口面に沿う方向で、覆い可能な第2のリブが、前記係止孔から突出する前記係止フック先端部の高さ寸法と同等以上の高さ寸法として、突設されていることが望ましい。
【0018】
このような構成では、係止フックの反転方向に沿う方向で対向する係止孔周縁の一対の第1のリブ(第1リブ)と、第1リブ相互の対向方向と直交方向における係止孔周縁の両側の第2リブと、によって、係止孔の周縁の四方を囲むように、リブ(第1,第2)が配設され、指等の被干渉体が、係止フックの反転方向に沿って移動したり、あるいは、その直交方向にずれて、係止フックの先端部に接触しようとしても、係止孔の周縁の四方を囲むリブ(第1,第2)により規制されて、係止フック先端部に対する引っ掛るような不適切な接触が、防止される。
【0019】
この場合、本発明に係るエアバッグ装置では、前記露出連結部位の前記係止孔周縁において、対向する前記リブと、前記第2のリブとが、前記係止孔の周縁で連続的に連なるように、配設されていることが望ましい。
【0020】
このような構成では、第1リブと第2リブとが、係止孔の周縁で、係止フックの先端部を連続的に連なって囲むことから、一層、指等の被干渉体の係止フック先端部への引っ掛るような不適切な接触が防止される。
【0021】
さらに、本発明に係るエアバッグ装置では、前記露出連結部位の前記係止フックと前記係止孔とが、対向する前記リブの対向方向と直交する方向に沿うように、対応する前記ケースの前記周壁部と前記エアバッグカバーの前記側壁部とに、並設され、
前記係止フックの反転方向でに沿う方向で対向する前記リブの内、前記突出用開口に近い側のリブが、並設された前記係止孔の並設方向に沿って、連続的に連なるように、配設されていることが望ましい。
【0022】
このような構成では、並設された係止孔の周縁が、連続的に連なるリブにより補強される状態となり、並設された係止孔を設けた側壁部の係止孔周縁の剛性を向上させることができて、エアバッグの膨張時、係止フックに係止される係止孔の周縁を、変形させずに、その配置位置を移動させないことから、エアバッグカバーのドア部を、膨張するエアバッグの圧力により、迅速に、開かせて、エアバッグを素早く展開膨張させることに寄与できる。なお、エアバッグカバーの側壁部がエアバッグの膨張時に移動すれば、移動しない場合に比べて、ドア部の開き時のタイミングに遅れが生じ易く、好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態の膝保護用エアバッグ装置における車両への搭載状態の概略縦断面図である。
図2】実施形態の膝保護用エアバッグ装置における車両への搭載状態の拡大縦断面図である。
図3】実施形態の膝保護用エアバッグ装置における車両への搭載状態の拡大横断面図である。
図4】実施形態の膝保護用エアバッグ装置における車両への搭載状態の後方側から見た概略正面図である。
図5】実施形態のエアバッグカバーの概略底面図である。
図6】実施形態のエアバッグカバーの拡大縦断面図であり、図5のVI-VI部位に対応する。
図7】実施形態のエアバッグカバーにおけるリブを設けた側壁部の部位と、対応するケースの周壁部の部位と、を示す概略部分斜視図である。
図8】実施形態の膝保護用エアバッグ装置の変形例の車両への搭載状態の概略縦断面図である。
図9図8に示す膝保護用エアバッグ装置における車両への搭載状態の拡大縦断面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のエアバッグ装置は、膝保護用エアバッグ装置(適宜、エアバッグ装置と略す)AB1であり、エアバッグ装置AB1は、図1〜4に示すように、着座した乗員としての運転者Mの膝Kを保護できるように、運転者Mの下肢Lの車両前方側であるステアリングコラム4の下方に配設されている。
【0025】
なお、本明細書における上下、左右、及び、前後は、エアバッグ装置AB1を車両に搭載させた際の車両の上下・左右・前後に対応するものである。
【0026】
ステアリングコラム4は、図1に示すように、ステアリングホイール3に連結されるステアリングシャフト5(図4参照)と、外周側のコラムカバー6と、を備えて構成される。コラムカバー6は、略四角筒形状等の合成樹脂製として、ステアリングシャフト5の軸方向に沿って配設されている。即ち、コラムカバー6は、車両前方側を下方に配置させて、車両後方側を上方に配置させるように、後上がりに傾斜して配設されている。そして、コラムカバー6におけるインストルメントパネル(以下、インパネとする)7から突出する部位の下面6aは、略長方形形状とし、車両前後方向で、後上がりの曲面状に形成されている。インパネ7は、ステアリングコラム4の左右両側から上方を囲むアッパパネル7aと、膝保護用エアバッグ装置AB1の左右両側を囲うロアパネル7b(図3,4参照)と、を備えている。
【0027】
エアバッグ装置AB1は、図1〜4に示すように、折り畳まれたエアバッグ10と、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するインフレーター12と、エアバッグ10とインフレーター12とを収納保持して、エアバッグ10を突出させるための突出用開口20aを有したケース20と、ケース20の突出用開口20aを覆うエアバッグカバー35と、を備えて構成される。
【0028】
エアバッグ10は、膨張完了時、上端10aをコラムカバー6のステアリングホイール3近傍の下面6a付近に到達させる略四角板状として、下端10bの内部に収納したインフレーター12を利用して、ケース20に保持されている。
【0029】
インフレーター12は、円柱状の本体13と、本体13を挟持して保持する略円筒状のリテーナ14と、を備えて構成される。本体13は、作動用の信号を入力させるリード線18を結合可能なコネクタ部17を右端面側に備え、コネクタ部17から離れた左端部側に、作動時に膨張用ガスを吐出するガス吐出部13aを配設させている。
【0030】
リテーナ14は、後方に突出する複数(実施形態では2個)のボルト15を備え(図2,3参照)、各ボルト15は、エアバッグ10とケース20とを貫通して、ナット16を
締結されることにより、エアバッグ10とインフレーター12とをケース20の底壁部21に取付固定している。
【0031】
ケース20は、金属製(板金製)の略直方体形状としている。ケース20は、後端側に、膨張時のエアバッグ10を突出させるための長方形に開口した突出用開口20aを備え、突出用開口20aの周縁から前方に延びる略四角筒形状の周壁部22と、周壁部22の前端で突出用開口20aの前方側を塞ぐ底壁部21と、を備えて構成されている。
【0032】
底壁部21には、インフレーター12のリテーナ14に設けられたボルト15を挿通させる挿通孔21aが配設されている。また、底壁部21の左右には、取付部30,30が配設されている。これらの取付部30,30は、ボディ(車体)1側の図示しないインパネリンホースから延びる車体側部材としてのブラケット2に対して、エアバッグ装置AB1を取付固定するためのものである。各取付部30には、取付孔30aが貫通されている。そして、取付孔30aとブラケット2の取付孔2aとにボルト31を挿通させ、ボルト31にナット32を締結すれば、エアバッグ装置AB1が、ケース20の取付部30を利用してブラケット2に締結され、そして、ボディ1側に取付固定される。
【0033】
ケース20の周壁部22は、上方側の上壁部23と、下方側の下壁部24と、左方側の左壁部25と、右方側の右壁部26と、を備えて構成され、右壁部26には、インフレーター12への作動用信号の入力用のリード線18を接続させるコネクタ部17付近を挿通するために、挿通孔26aが形成されている。
【0034】
また、上壁部23と下壁部24とは、突出用開口20aの開口面20bが、斜め下向きに向く面としており、底壁部21から前方へ延びる前後方向の長さ寸法として、上壁部23が下壁部24より長く構成されている。そして、上壁部23と下壁部24とは、突出用開口20aの周縁の後縁23a,24aから、突出用開口20aから遠ざかるように、上下の外方側に延び、ついで、前方側に反転するような断面J字形の係止フック28が形成されている。係止フック28は、上壁部23と下壁部24との後縁23a,24aに、左右方向に沿って複数(実施形態では4個)配設されている。
【0035】
各係止フック28は、周壁部22の上壁部23と下壁部24との後縁23a,24aから上下方向に延びる突出片部28aと、突出片部28aの先端から屈曲して前方に延びる鉤部28bと、を備えて構成されている。これらの係止フック28は、エアバッグカバー35の後述する側壁部42の上下の連結壁部43,46に係止される。そして、突出片部28aは、エアバッグカバー35の連結壁部43,46の係止孔48を貫通する部位となり、鉤部28bは、係止フック28の係止孔48からの抜け止めを図れるように、連結壁部43,46の外側面(上面や下面)43a,46a側における係止孔48の周縁49の前縁部49aに対して、当接可能な部位としている。
【0036】
各係止フック28の連結壁部43,46から外方へ突出する先端部(突出部位)29は、鉤部28bと鉤部28b近傍の突出片部28aの部位とから構成されている。
【0037】
エアバッグカバー35は、図2〜6に示すように、型成形可能なオレフィン系の熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製として、運転者Mの膝Kの前方で正対するように配設される略長方形板状の室内側パネル部36と、室内側パネル部36の前面36aから四角筒形状に前方に延びる側壁部42と、を備えて構成されている。
【0038】
室内側パネル部36は、ケース20の突出用開口20aを覆って、後面36b側を車室内CI側に露出させて配設され、そして、膨張するエアバッグ10に押されて開く上下のドア部38,39を備えて構成されている。上方のドア部38は、上縁側に開き時のヒン
ジ部38aを備え、下方のドア部39は、下縁側に開き時のヒンジ部39aを備えている。ドア部38,39の周囲には、膨張するエアバッグ10に押されて破断する薄肉の破断予定部40が、室内側パネル部36の正面(後方側)から見て、H字形状に配設されている(図4参照)。ヒンジ部38a,39aは、薄肉のインテグラルヒンジとしている。なお、ヒンジ部38a,39aや破断予定部40の薄肉形状は、室内側パネル部36の前面36a側から後方へ凹む凹部により、形成されている。
【0039】
側壁部42は、室内側パネル部36の前面36a側のドア部38,39の周囲から前方に延びる四角筒形状に形成され、上下方向で対向する連結壁部43,46と左右方向で対向するカバー壁部44,45とを備えて構成されている。上方側の連結壁部(上連結壁部)43は、ケース20の上壁部23の上方に配置されて、上壁部23から延びる係止フック28により、上壁部23に連結される部位となり、各係止フック28を挿入させる複数(4個)の係止孔48を、上下方向に貫通させて、左右方向に沿って並設させている。下方側の連結壁部(下連結壁部)46は、ケース20の下壁部24の下方に配置されて、下壁部24から延びる係止フック28により、下壁部24に連結される部位となり、各係止フック28を挿入させる複数(4個)の係止孔48を、上下方向に貫通させて、左右方向に並設させている。左方側のカバー壁部44は、ケース20の左壁部25の外周側に配設され、右方側のカバー壁部45は、ケース20の右壁部26の外周側に配設されている(図3参照)。
【0040】
下連結壁部46の各係止孔48は、係止フック28の突出片部28aの断面形状に対応して、内周面の後面側に、略三角板状の突起48aを備え、内周面の前面側に、係止フック28の挿入容易性を阻害せずに、係止孔48の開口面積を狭めるように、略長方形板状の突起48bを備えて、構成されている。
【0041】
さらに、下連結壁部46の下面46aには、各係止孔48の周縁49に、リブ51,52が形成されている。下連結壁部46の下面46aは、実施形態の場合、運転者Mの下肢Lの前方側の車室内CI側で、露出しており、係止孔周縁49におけるエアバッグカバー35の側壁部42(下連結壁部46)とケース20の周壁部22(下壁部24)との連結部位は、車室内CI側に露出される露出連結部位ECとなる。なお、エアバッグカバー35の上連結壁部43とケース20の上壁部23との連結部位は、インパネ7のロアパネル7bによって、車室内CI側から隠れる遮蔽連結部位HCとなる。そして、リブ51(51F,51B),52(52L,52R)は、露出連結部位ECにおける係止孔周縁49に配設されている。
【0042】
リブ51(51F,51B)は、露出連結部位ECにおける下連結壁部46から突出した係止フック28Eの先端部29を覆うもので、係止孔48の周縁49における係止フック28Eの反転方向に沿う方向の前後方向で対向する両縁の前縁部49aと後縁部49bとに、配設されている。前方側のリブ51Fと後方側のリブ51Bとは、係止孔48の開口面48cに沿う方向(下連結壁部46の下面46aに沿う方向)で、係止フック28Eの先端部29を覆い可能に、下連結壁部46の下面46aから下方に突設されて、それぞれ、左右方向に延びるように配設されている。
【0043】
リブ52(52L,52R)も、露出連結部位ECにおける下連結壁部46から突出した係止フック28Eの先端部29を覆うもので、係止孔48の周縁49におけるリブ51F,51Bの対向方向(前後方向)と直交する左右方向で対向する両縁、すなわち、左縁部49cと右縁部49dとに、配設されて(図5参照)、第2のリブとして構成されている。左方側のリブ52Lと右方側のリブ52Rとは、係止孔48の開口面48cに沿う方向(下連結壁部46の下面46aに沿う方向)で、係止フック28Eの先端部29を覆い可能に、下連結壁部46の下面46aから下方に突設されて、それぞれ、前後方向に延び
るように配設されている。
【0044】
実施形態の場合、リブ51F,52L,51B,52Rは、係止孔周縁49(49E)において、係止孔48の前後左右の四方を囲み、そして、適宜、相互に円弧状に連結されるコーナ部53によって、四角環状に連続的に連なるように配設されている。
【0045】
これらのリブ51(51F,51B),52(52L,52R)は、下連結壁部46の下面46aから突出する係止フック28Eの先端部29の高さ寸法H0と略同等以上の高さ寸法H1となるように設定されている。実施形態の場合、下連結壁部46の下面46aから突出する係止フック28Eの先端部29の高さ寸法H0は、約4mmとし、リブ51,52の高さ寸法H1は、約5.5mmとしている(図6参照)。
【0046】
また、実施形態の場合、前後のリブ51(51F.51B)間の幅寸法WLは、約32mm、左右のリブ52(52L,52R)間の幅寸法WVは、約33mm、リブ51,52の幅寸法WRは、約4mmとしている(図5参照)。換言すれば、リブ51,52で囲まれた前後幅Wfを約24mm、左右幅Wvを約25mmとした収納スペースRS内に、係止フック28の先端部29が、リブ51,52より同等以下の高さ寸法として、配設されている。
【0047】
なお、実施形態の場合、係止フック28の鉤部28bは、幅寸法FWを約15mm、長さ寸法FLを約10mmとしている(図6,7参照)。
【0048】
さらに、実施形態の場合には、係止孔周縁49の後縁部49b側のリブ51Bは、並設された係止孔48の並設方向に沿って、すなわち、左右方向に沿って、連続的に連なるように、形成されて、連結状リブ55としている。換言すれば、各係止孔48の周縁49の各リブ51Bが、相互に、左右方向に配設された連結部54により連結されて、4本のリブ51Bとリブ51B間の3本の連結部54とによって、一本状の連結状リブ55が形成されている。
【0049】
これらのリブ51,52は、エアバッグカバー35の成形時、側壁部42とともに一体成形されて、形成されている。
【0050】
このように形成したエアバッグカバー35をエアバッグ装置AB1として組み立てて車両へ搭載する際には、まず、インフレーター12を収納した状態で、エアバッグ10を折り畳み、エアバッグ10の折り畳み後には、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピングフィルムにより、エアバッグ10をくるんでおく。なお、インフレーター12のリード線18を接続させるコネクタ部17やボルト15は、ラッピングフィルムから突出させておく。そして、ケース20内に、エアバッグ10を収納するとともに、インフレーター12のコネクタ部17付近を挿通孔26aから突出させ、かつ、各ボルト15を、挿通孔21aから突出させて、突出したボルト15にナット16を締め付ければ、インフレーター12とエアバッグ10とをケース20に取り付けることができる。その後、ケース20にエアバッグカバー35を連結させる。この結合は、ケース20の各係止フック28を、対応するエアバッグカバー35の連結壁部43,46の各係止孔48に挿入させて、係止孔48の周縁49に係止させれば、ケース20にエアバッグカバー35を連結させて、エアバッグ装置AB1を組み立てることができる。
【0051】
その後、取付部30,30を、ボルト31とナット32とを使用して、ボディ1側のブラケット2に固定すれば、膝保護用エアバッグ装置AB1を車両に搭載することができる。
【0052】
そしてさらに、リード線18のコネクタ18aをインフレーター12のコネクタ部17に結合させるとともに、インパネ7のアッパパネル7aやロアパネル7bを、車両に組み付ければ、実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB1の車両への搭載作業を完了させることができる。
【0053】
車両へのエアバッグ装置AB1の搭載後、インフレーター12に作動信号が入力されれば、本体13のガス吐出部13aから膨張用ガスが吐出されて、エアバッグ10は、膨張して、図示しないラッピングフィルムを破断するとともに破断予定部40を破断させて、エアバッグカバー35のドア部38,39を押し開き、ケース20の突出用開口20aから、車両後方側へ突出し、さらに、折りを解消しつつ、コラムカバー下面6aに沿って、上方に向かって大きく展開膨張して、運転者Mの膝Kを保護することができる(図1の二点鎖線参照)。
【0054】
そして、実施形態の膝保護用エアバッグ装置AB1では、露出連結部位ECにおいて、反転した係止フック28Eにおけるエアバッグカバー35の側壁部42から突出する先端部29が係止孔周縁49E配置されたリブ51F,51Bによって、隠れる状態となる。すなわち、指や脚等の被干渉体F(図2参照)が係止フック28の先端部29に触れようとしても、係止孔周縁49E配置されたリブ51F,51Bに位置規制されて、被干渉体Fが係止フック先端部29に引っ掛るように接触することが防止される。
【0055】
特に、係止フック先端部29を覆うように係止孔48の周縁49に配設されるリブ51F,51Bは、指等の被干渉体Fが係止フック先端部29に不適切に接触しない高さ寸法H1、すなわち、単に、エアバッグカバー35の側壁部(下連結壁部)46から突出する係止フック先端部29の高さ寸法H0と同等以上として、被干渉体Fの係止フック先端部29との不適切な接触を防止しており、従来のようなアンダカバーや延設部に比べて、嵩張らずに、容易に配設させることができ、さらに、エアバッグカバー35自体の成形時に、簡単に一体的に形成することができる。
【0056】
したがって、実施形態のエアバッグ装置AB1では、係止孔周縁49にリブ51F,51Bを配設させるだけで、簡便に、被干渉体Fにおける車室内CI側に露出される係止フック28との不適切な接触を防止することができる。
【0057】
そして、実施形態のエアバッグ装置AB1では、リブ51Fが、係止フック先端部29の反転方向に沿った先端面29a側に、配設されている。
【0058】
そのため、係止フック28の先端部29は、係止孔48から突出した先端面29a側が被干渉体Fに引っ掛かり易い構成としているが、その先端面29a側に接触しようとする被干渉体Fは、近傍のリブ51Fに接触を防止されることとなり、引っ掛るような係止フック28の先端部29との不適切な接触が防止される。
【0059】
また、実施形態のエアバッグ装置AB1では、リブ51F,51Bが、係止孔周縁49において、係止フック28の反転方向に沿う方向で対向する係止孔48を間にした両縁部49a,49b付近に、配設されている。
【0060】
そのため、係止フック28の先端部29は、係止孔48から突出した先端面29a側が被干渉体Fに引っ掛かり易い構成としているが、その先端面29a側に接触しようとする被干渉体Fは、近傍のリブ51Fに接触を防止され、さらに、沈み込んで係止フック先端部29と接触しようとしても、他方側のリブ51Bに位置規制され、その結果、係止孔周縁49の両側に配置されたリブ51F,51Bに位置規制されて、被干渉体Fが係止フック先端部29に引っ掛るように接触することが防止される。
【0061】
そして、実施形態では、ケース20の突出用開口20aを、着座した乗員(運転者)Mの下肢Lの前方側に配設させる膝保護用エアバッグ装置AB1として、構成され、露出連結部位ECの係止フック28が、運転者Mから離れる側の車両の前後方向に沿って反転する構成として、配設されている。
【0062】
すなわち、実施形態では、ケース20の突出用開口20aが、運転者Mの膝Kの前方側で、後方側に向いて配設されており、露出連結部位ECの係止フック28が、ケース20の周壁部22の下壁部24における突出用開口20aの周縁(後縁)24aから、運転者Mから離れる側の車両の前後方向の下向きから前方側に向かって、反転する構成としており、指等の被干渉体Fが、それらの係止フック28の先端部29に対し、引っ掛るように不適切に接触することを、リブ51F,51Bにより、防止できる。
【0063】
また、実施形態では、露出連結部位ECの係止孔周縁49において、対向するリブ51F,51Bの対向方向と直交する両側に、係止孔48から突出する係止フック先端部29を、係止孔48の開口面48cに沿う方向で、覆い可能な第2のリブ52L,52R、が配設されている。
【0064】
そのため、実施形態では、係止フック28の反転方向に沿う方向で対向する係止孔周縁49の一対の第1のリブ(第1リブ)51F,51Bと、第1リブ51F,51B相互の対向方向と直交方向における係止孔周縁49の両側の第2リブ52L,52Rと、によって、係止孔48Eの周縁49の四方を囲むように、リブ(第1,第2)51F,51B,52L,52Rが配設され、指等の被干渉体Fが、係止フック28Eの反転方向の前後方向に沿って移動したり、あるいは、その直交方向の左右方向にずれて、係止フック28Eの先端部29に接触しようとしても、係止孔48Eの周縁49の四方を囲むリブ(第1,第2)51F,51B,52L,52Rにより規制されて、係止フック先端部29に対する引っ掛るような不適切な接触が、防止される。
【0065】
特に、実施形態では、露出連結部位CEの係止孔周縁49Eにおいて、係止フック28の反転方向に沿う方向で対向するリブ51F,51Bと、第2のリブ52L,52Rとが、係止孔48Eの周縁49で連続的に連なるように、配設されている。
【0066】
そのため、実施形態では、第1リブ51F,51Bと第2リブ52L,52Rとが、係止孔48Eの周縁49で、係止フック28Eの先端部29を連続的に連なって囲むことから、一層、指等の被干渉体Fの係止フック先端部29への引っ掛るような不適切な接触が防止される。
【0067】
さらに、実施形態では、露出連結部位CEの係止フック28Eと係止孔48とが、対向するリブ51F,51Bの対向方向と直交する方向に沿うように、対応するケース20の周壁部22の下壁部24とエアバッグカバー35の側壁部42の下連結壁部46とに、並設され、係止フック28Eの反転方向に沿う方向で対向するリブ51F,51Bの内、突出用開口20aに近い側のリブ51Bが、並設された係止孔48の並設方向に沿って、連続的に連なるように、配設されて、連結状リブ55を構成している。
【0068】
そのため、実施形態では、並設された係止孔48の周縁49が、連続的に連なるリブ55により補強される状態となり、並設された係止孔48を設けた側壁部42の下連結壁部46における係止孔周縁49Eの剛性を向上させることができて、エアバッグ10の膨張時、係止フック28Eに係止される係止孔48の周縁49を、変形させずに、その配置位置を移動させないことから、エアバッグカバー35のドア部38,39を、膨張するエアバッグ10の圧力により、迅速に、開かせて、エアバッグ10を素早く展開膨張させることに寄与できる。なお、エアバッグカバー35の側壁部42がエアバッグ10の膨張時に移動すれば、移動しない場合に比べて、ドア部38,39の開き時のタイミングに遅れが生じ易く、好ましくない。
【0069】
また、実施形態の膝保護用のエアバッグ装置AB1では、ケース20の突出用開口20aが乗員としての運転者Mの下肢Lにおける膝Kの前方側で、後方側に向いて配設されているものを例示したが、図8,9に示す膝保護用エアバッグ装置AB2のように、ケース20Aの突出用開口20aが、助手席の乗員Mの下肢Lの前方側で、下向きに向いて配設されていてもよい。この場合、露出連結部位ECの係止フック28Eは、ケース20Aの周壁部22Aにおける突出用開口20aの周縁(下縁)22Abから、乗員Mから離れる側の車両の前後方向の前向きから上方側に向かって、反転する構成としており、指等の被干渉体が、それらの係止フック28Eの先端部29に対し、引っ掛るように不適切に接触
することを、リブ51U,51Dにより、防止できる。
【0070】
なお、このエアバッグ装置AB2では、膨張するエアバッグ10Aは、ケース20Aから下方側へ突出し、そして、グラブボックスGBのドアGDに沿って、後上方向に向いて展開膨張することとなる。このエアバッグ装置AB2では、エアバッグカバー35Aの側壁部42Aが、ケース20Aの四角筒形状の周壁部22Aの周囲を囲うように配設されて、前後の連結壁部42AF,42ABが、係止孔48を利用して係止フック28に係止されて、ケース20Aと連結される構成としている。そして、後方側の連結壁部42ABの係止孔48付近がグラブボックスGBやロアパネル7bに遮蔽された遮蔽連結部位HCとなり、前方側の連結壁部42AFの係止孔48付近が、車室内CI側に連通する露出連結部位ECとなり、露出連結部位ECに、リブ51U,51Dが配設されて構成されている。なお、露出連結部位ECには、係止孔48の周縁49の上下に配置されるリブ51U,51Dの他、係止孔48の四方を囲むように、係止孔48の周縁49の左右両側に配置されるリブ52(図9参照)も配設され、さらに、実施形態の連結状リブ55と同様に、並設された係止孔48の並設方向(左右方向)に沿って、リブ51Dが、左右方向に連続的に連なって配設されている。
【0071】
なお、指等の被干渉体Fの不適切な係止フック28Eへの接触を好適に防止できる観点からは、対向するリブ51(F,B)間の収納スペースRSの前後幅Wfは、大きすぎては好適な接触防止を図れず、小さすぎては、係止フック28Eを挿入させる係止孔48や係止孔周縁49の面積を確保し難くなることから、係止フック28Eの鉤部28bの前後方向の長さ寸法FLの1.1〜3倍程度が望ましい。
【0072】
同様に、対向するリブ51(F,B)の対向方向と直交する一対のリブ52(L,R)間の収納スペースRSの左右幅Wvは、大きすぎては好適な接触防止を図れず、小さすぎては、係止フック28Eの係止孔48への係止作業を阻害することから、係止フック28Eの鉤部28bの左右方向の幅寸法FWの1.0〜2.0倍程度が望ましい。
【0073】
また、リブ51,52の高さ寸法H1は、係止フック28Eの先端部29の高さ寸法H0と略同等以上あればよいが、高すぎては、エアバッグカバー35の材料が無駄となることから、先端部29の高さ寸法H0の0.9〜2.5倍程度、好ましくは、1.0〜1.6倍程度、が望ましい。
【0074】
さらに、実施形態では、係止フック28Eにより係止される側壁部42の下連結壁部46と室内側パネル部36との連結部位には、室内側パネル部36から突出する縁部を設けない構成を例示したが、スペースに余裕があれば、図2の二点鎖線に示すように、室内側パネル部36の縁部36cを延設させてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10,10A…エアバッグ、20,20A…ケース、20a…突出用開口、22,22A…周壁部、28(H,E)…係止フック、29…(突出部)先端部、35,35A…エアバッグカバー、36…室内側パネル部、38,39…ドア部、42,42A…側壁部、48…係止孔、48c…開口面、49(H,E)…係止孔周縁、51(F,B,U,D)…(第1)リブ、52(L,R)…(第2)リブ、53…コーナ部、54…連結部、55…連結状リブ、
H0…(係止フックの突出した)高さ寸法、H1…(リブの)高さ寸法、M…(乗員)運転者、K…膝、L…下肢、EC…露出連結部位、CI…車室内、F…被干渉物、AB1,AB2…膝保護用エアバッグ装置。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9