(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための一形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の逆止弁組立体10は、逆止弁11と、この逆止弁11が取り付けられた受け座12とからなり、逆止弁11は、流入流体に対し開口して流出させ、流出方向とは逆方向からの逆流流体に対しては閉口して流入を阻止する、弁部13を備え、受け座12は、取り付けられた逆止弁11の、弁部13を閉塞状態にする変形を可能にする、曲面状に形成された受け面12aを有している。
【0012】
本実施形態の逆止弁組立体10は、例えば、排水口に連通する排水流路に備えられた排水トラップの配管等を受け座12として、逆止弁11を取り付けることにより形成(製造)することができ、逆止弁11は、排水流路の上流側から下流側へと向かう順方向の流れの通過は開口して許容し、下流側から上流側へと向かう逆方向の流れの通過は閉口して許容しない、逆流防止弁として用いられる。
図1から
図3に示すように、本実施形態の逆止弁11は、流入流体の流出方向に突出する、内部空間を備える、受け座12に取り付けられた状態で、外表面が半球状(例えば略お椀形状)となる弁本体部14と、受け座12への取付部15と、をさらに有しており、取付部15は、弁本体部14の流入開口に、開口周縁全周にわたって、弁本体部14の外表面から一段高い円環状段部として形成されている。
【0013】
以下、本実施形態の逆止弁組立体10の製造(組立て)前、即ち、受け座12に取り付けられる前の状態の逆止弁11について説明する。
本実施形態の逆止弁組立体10における逆止弁11の弁部13は、弁本体部14の突出方向に沿って、即ち、半球状外表面に沿う曲線状に、延在し、弁本体部14を3方向に切り離して開口するスリット状に形成されており、流入流体の流出口となる弁本体部14の先端部から取付部15の上まで、3方向に切り離された弁本体部14の各弁本体部片14aは、先端部で隣接する弁本体部片14aの間に、間隙を有している(
図2,3参照)。
本実施形態において、略三角形状の外観を有する各弁本体部片14aは、取付部15の全周を略3等分した位置で取付部15から立ち上がるように、取付部15と一体的に形成されており、各弁本体部片14aの、取付部15側を除く2辺の端縁には、取付部15に連続するリブ16が突設されている。よって、隣接する各弁本体部片14aは、リブ16同士が対向することになる。
【0014】
即ち、本実施形態の逆止弁組立体10における弁部13は、弁本体部14の外表面に突設されたリブ16に形成されており、開放時に離間して隣接するリブ16同士が閉塞時に当接した状態になって、所謂口唇状開口部となる弁部13が形成されることになる。
本実施形態の弁部13は、予め切り離されて開放状態にある(
図2,3参照)が、変形可能形状に形成されている取付部15の変形により、閉塞動作を行って閉塞する(
図1,3参照)。ここで、閉塞動作とは、予め切り離されて開放状態にある弁部の、切り離されている部分が互いに当接し密着することをいう。即ち、予め3方向に切り離されている弁本体部14の各弁本体部片14aは、それぞれ、恰も開いた口の唇のように、離間して間隙を有する開放状態にあるが、取付部15の変形動作によって、取付部15と一体化している、それぞれ離間する各弁本体部片14aは、隣接する弁本体部片14a同士が、間隙を閉じるように接近して互いに当接し、恰も閉じた口の唇のように、密着することで、開放状態にあった弁部13は閉塞状態になり、逆止弁11の流出口は閉じられる(
図3、二点鎖線参照)。
【0015】
このように、本実施形態の逆止弁組立体10における逆止弁11は、弁部13が、予め切り離されている開放状態に形成されているため、切開することなく開口を形成することができ、開口のばらつきが少ないとともに、製造が容易になる。
本実施形態の逆止弁組立体10における取付部15は、例えばゴム材料を用いて、曲面形状への変形、本実施形態においては弾性変形を可能にする平坦形状(変形可能形状)に形成されており、平坦形状から曲面形状へと変形させられることにより、取り付けられた逆止弁11の、弁部13を閉塞状態にする変形が可能であるように、構成されている(
図3参照)。この取付部15には、取付部15の内周面全周にわたって、外周面方向を深さ方向として内周面に開口する溝15aが、取付部15の流出方向幅略中央を通って、即ち、取付部15の平坦形状に沿った形状に、形成されている(
図2、破線参照)。
【0016】
図1及び
図4に示すように、本実施形態の逆止弁組立体10における受け座12となる、例えば、配管は、逆止弁11の取付部15が当接する受け面12aとしての、開口端に形成された円環状の外向きフランジを有している。より具体的には、受け面12aは、フランジ全周を略3等分する3ヶ所をそれぞれ底部12bとして、各底部12b間を各底部12b間の略中央を頂部とする山形で繋ぐ各山形部12cが3個連続する、曲面状の山形形状(
図3参照)に形成されている。底部12bは、受け座12に取り付けられる逆止弁11の、隣接する弁本体部片14aの境界部分に対応し、山形部12cは、受け座12に取り付けられる逆止弁11の弁本体部片14aに対応しており、逆止弁11を受け座12に取り付けた際、取付部15の各弁本体部片14aの基部となる部分が山形部12cに重なって位置するようになる(
図1参照)。
【0017】
本実施形態において、逆止弁11を受け座12に取り付け、取付部15の各弁本体部片14aの基部となる部分が山形部12cに重なって位置した状態で、取付部15を受け面12aに密着させるようにすると、平坦形状だった取付部15は全周にわたって受け面12aの形状に沿って変形する。この取付部15の変形に伴い、例えば3個の弁本体部片14aの隣接するもの同士が、それぞれのリブ16を互いに当接させ密着させることになり、開放状態(
図3、実線参照)の弁部13を閉塞状態(
図3、二点鎖線参照)にする閉塞動作を行うことになる。
【0018】
次に、本実施形態の逆止弁組立体10の製造方法について説明する。
本実施形態の逆止弁組立体10における逆止弁11は、例えば、エラストマーやシリコンなどのゴム材料を用いた射出成形等により成形されて製造されており、弁部13は、予め切り離されていて閉塞動作により閉塞する開放状態に形成され、取付部15は、山形形状への変形を可能にして、この変形により弁部13を閉塞状態にすることが可能になるように、平坦形状に形成される。
【0019】
弁部13が、予め切り離されている開放状態に形成されているため、従来の逆止弁のように、ゴム材料からなる閉塞した部分を刃物やレーザ光線を用いて切り開くことで、逆止弁のスリット状の開口を形成する方法において生じていた、切り開く際の切り込みのばらつきによって開口具合が変わってしまって、所望の性能が得られなかったり、加工が煩雑になったりすることが無い。即ち、本実施形態の逆止弁組立体10における逆止弁11の製造方法により、開口のばらつきの少ない逆止弁11を、容易に得ることができ、ひいては、逆止弁組立体10の製造も容易になる。
また、平坦形状に形成された取付部15を設け、この取付部15は山形形状への変形を可能にして、変形により弁部13を閉塞状態にするので、予め弁部13が切り離された状態に形成されていても、受け座12への取り付けに際し、取付部15を山形状態にすることにより、弁部13を閉塞状態にした逆止弁11とすることができる。
【0020】
続いて、弁部13が閉塞動作により閉塞する開放状態に形成されている、本実施形態の逆止弁11(
図2参照)を、本実施形態の受け座12(
図4参照)に取り付けることにより、弁部13を閉塞状態にする(
図1参照)。
【0021】
本実施形態において、本実施形態の逆止弁組立体10における逆止弁11を、本実施形態の受け座の曲面状に形成されている受け面12a、例えば、排水流出口を形成する配管の開口端に形成された円環状の外向きフランジ(
図4参照)に、弁部13を排水流出方向に向けて取り付ける。逆止弁11を受け座12に取り付ける際に、受け座12を取付部15の溝15aに嵌め込むことで、平坦形状の溝15a(
図2参照)は、受け面12aに密着し受け面12aに沿って変形し、取付部15が、平坦形状(
図3、実線参照)から、強制的に、受け面12aの曲面状の流出方向へ凸形状となる山形形状(
図3、二点鎖線参照)へと変形させられることになる。即ち、逆止弁11の取付部15を受け座12に取り付けて、平坦形状の取付部15を強制的に山形形状へと変形させた逆止弁組立体10を製造することができる。
【0022】
この結果、本実施形態の逆止弁組立体10にあっては、逆止弁11の取付部15の変形動作によって、間隙を有して配置されている各弁本体部片14aが互いに接近し、それぞれのリブ16を互いに当接させ密着させて、弁部13が閉塞状態(
図3、二点鎖線参照)になるので、弁部13が予め切り離されている開放状態(
図3、実線参照)に成形されていても、逆止弁11が受け座12に取り付けられることで、弁部13が閉塞状態になり逆止弁11の流出口が閉じられる(
図1参照)。
【0023】
本実施形態の逆止弁組立体10は、逆止弁11と、この逆止弁11が取り付けられた受け座12との組合せからなるが、種々の組合せが可能である。
図5は、本実施形態の逆止弁組立体における、逆止弁と受け座の組み合わせ例について、表にして示す説明図である。なお、
図5においては、理解を容易にするため、曲面(曲面の組合せ)ではなく、平坦面の組合せにより簡略化して示しており、また、組合せ例Cの受け座12については、他の組合せ例とは逆向きの上向き凸形状になり、底部12bは頂部12bとなる。
図5に示すように、本実施形態の逆止弁組立体10は、上述した、逆止弁11の取付部15が平坦形状の逆止弁11と、取り付けられた逆止弁11の弁部13を閉塞動作させる曲面状に形成されている受け座12との組合せ例Aの他、取付部15と受け座12が共に上向きに屈曲した曲面状に形成されている組合せ例B、取付部15と受け座12が共に下向きに屈曲した曲面状に形成されている組合せ例C、取付部15が下向きに屈曲した曲面状に形成され、受け座12が上向きに屈曲した曲面状に形成されている組合せ例D、としても良い。
【0024】
組合せ例Bの場合、取付部15と受け座12が共に上向きに屈曲した曲面状に形成されており、取付部15の屈曲角度(V字状形状の谷が成す角度)αより、受け座12の屈曲角度(V字状形状の谷が成す角度)βの方が小さい。この構成により、取付部15を受け座12に取り付けた際、取付部15の屈曲角度αを強制的に縮小して屈曲角度βへと変形させて、弁部13を閉塞状態(
図3、二点鎖線参照)にすることができ、逆止弁11の流出口が閉じられた逆止弁組立体10(
図1参照)を製造することができる。
【0025】
組合せ例Cの場合、取付部15と受け座12が共に下向きに屈曲した曲面状に形成されており、取付部15の屈曲角度αより、受け座12の屈曲角度βの方が大きい。この構成により、取付部15を受け座12に取り付けた際、取付部15の屈曲角度αを強制的に拡大して屈曲角度βへと変形させて、弁部13を閉塞状態(
図3、二点鎖線参照)にすることができ、逆止弁11の流出口が閉じられた逆止弁組立体10(
図1参照)を製造することができる。
【0026】
組合せ例Dの場合、取付部15が下向きに屈曲した曲面状に形成され、受け座12が上向きに屈曲した曲面状に形成されている。この構成により、逆止弁11の取付部15を受け座12に取り付けた際、取付部15を下向きに屈曲した形状から強制的に上向きに屈曲した形状へと変形させて、弁部13を閉塞状態(
図3、二点鎖線参照)にすることができ、逆止弁11の流出口が閉じられた逆止弁組立体10(
図1参照)を製造することができる。
なお、組合せA、組合せB、組合せC、組合せDの何れにおいても、受け座12の屈曲角度βは、取付部15を受け座12に取り付けた際、弁部13を閉塞状態にすることができる角度であれば良い。
【0027】
本実施形態の逆止弁組立体10において、逆止弁11を、取付部15に溝15aを設けていない形状に形成しても良い。この場合、例えば、
図6に示すように、山形形状の曲面からなる受け座12の曲面上に取付部15を当接・密着させて、取付部15を平坦形状から山形形状へと変形させた状態にし、例えば、
図7に示す、受け座12の山形形状に対応させた取付リング17を用いて、取付リング17の切欠き17aにリブ16を入り込ませ取付部15に重ね、取付部15を受け座12との間に挟み込む(
図6参照)ことにより、取付部15の変形状態を保持する。取付リング17は、例えばボルト・ナット等(図示しない)により、取付部15を受け座12との間に挟み込んだ状態に固定することができる。
【0028】
本実施形態の逆止弁組立体10における逆止弁11においては、弁部13が、頂部側から見た平面視で3方向を開放方向として開閉するので、弁部13の閉口時の閉じる力が3方向に分散されて弱まることになり、弁部13が振動し難くなって騒音が発生し難くなる。加えて、本実施形態の逆止弁11においては、弁部13の取付部15側の一辺が片持ちとなって開くため、弁部13閉口時の閉じる力が弱まることも、弁部13が振動し難くなって騒音が発生し難くなることに寄与している。また、本実施形態の逆止弁組立体10における逆止弁11においては、弁部13が、リブ16に形成されているので、弁部13閉口時の逆止強度を高めることができる。
【0029】
本実施形態の逆止弁組立体10における逆止弁11は、弁部13の開口時に、弁部13が振動し難くなり、弁部13の振動に伴う音の発生を極力抑制することができるので、この逆止弁11から排水等の流入流体が流出する際に、騒音発生の原因になることが殆ど無く、特に、サイホン排水のように、強い吸引力で空気と排水を同時処理する場合に、排水と混じり合った空気が通過するときにも、弁部13、即ち逆止弁11から極力大きな音を発生させないようにすることができる。
【0030】
また、逆止弁11が受け座12に取り付けられた状態で、弁本体部14の外表面が半球状に形成されていることから、弁部13がより振動し難くなり、騒音が発生し難くなる。また、弁本体部14が、流出方向に突出する内部空間を備える形状(例えば略お椀形状)に形成されていることで、例えば、排水が逆流状態になっても、逆流を受け止めて弁本体部14が凹むことがないばかりか、逆に閉鎖を強める方向に力が作用し、逆止効果をより高めることになり、更に、排水流出方向には、流出口近傍となる弁本体部14の先端部付近に水が溜まり易くなり、それによって弁が開き易くなるという効果がある。
弁部13が、リブ16に形成されていることにより、弁部13の逆止強度を向上させることができる。また、弁部13が形成されているリブ16が、弁本体部14の流入流体の流入口に達することにより、弁部13を流入流体の流入口近傍まで開口することができるので、弁部13の開口径を広げて開き易くすることができる。
【0031】
なお、受け座12を、上述したように、配管等により形成するのではなく、一部材として形成し、取り付けられた逆止弁11の弁部13を閉塞動作させる曲面状に形成されている、受け面12aとしての円環状部を有する構成にして、逆止弁組立体18を形成しても良い。
【0032】
図8は、この発明の他の実施形態に係る逆止弁組立体を示す斜視図である。
図8に示すように、逆止弁組立体18は、本実施形態の逆止弁組立体10における逆止弁11と、この逆止弁11に組み付けられ、取付部15を取り付けることにより、取付部15を変形させる受け座19とを有する。受け座19は、受け座19を取付部15の溝15aに嵌め込んだ際に溝15aに当接する受け面19aを有しており、受け面19aに沿って取付部15を変形させて弁部13を閉塞状態にする。この受け座19は、例えば、逆止弁組立体18が取り付けられる取付対象に装着するための装着部19bを有していても良い。
【0033】
この逆止弁組立体18においては、取付部15の溝15aに受け座19を嵌め込むことで、取付部15は平坦形状から山形形状へと強制的に変形され、この変形に伴って、各弁本体部片14aが互いに接近し、それぞれのリブ16を互いに当接させ密着させて、開放状態(
図3、実線参照)の弁部13が強制的に閉塞状態(
図3、二点鎖線参照)になる。
弁部13が閉塞状態になっている逆止弁組立体18により、受け座19の装着部19bを、例えばボルト・ナット等により、逆止弁11の装着対象(例えば排水流出口)に固定することができる。
【0034】
上述した逆止弁組立体18によれば、逆止弁11を装着する逆止弁装着対象に、取付部15の溝15aに嵌め込む山形形状からなる曲面状を有する受け座12が無い場合でも、逆止弁組立体18それ自体で、取付部15を変形させ弁部13を閉塞状態にすることができる。
よって、この逆止弁組立体18は、切開することなく開口を形成することができ、切り込みのばらつきが無く、製造が容易になる逆止弁11を、山形形状等からなる曲面状を有する受け座12の有無にかかわらず、任意の逆止弁装着対象に装着することができる。
【0035】
なお、上述の実施形態において、逆止弁組立体10,18の逆止弁11は、弁本体部14が切り離される方向を、弁本体部14を突出端側から見た平面視で、Y字状スリットの3方向としているが、これに限るものではなく、弁本体部14が切り離される方向は、例えば、一文字状スリットの2方向、或いは十字状スリットの4方向等、3方向以上でも良い。また、弁部13のスリット形状も、直線状に限るものではなく、弁本体部14が切り離されて流出口が形成されるのであれば、種々の形状を適用することができる。
【0036】
図9は、この発明の他の実施形態に係る逆止弁組立体における逆止弁を、受け座に取り付ける前の状態で示す斜視図であり、
図10は、
図9の逆止弁の開口状態及び閉口状態を示す説明図である。
図9に示すように、本実施形態の逆止弁組立体における逆止弁20は、弁部21及び取付部22を有し、弁本体部23が切り離される方向が、弁本体部23を突出端側から見た平面視で、一文字状スリットの2方向とし、取付部22は、平坦面形状に形成されている。
【0037】
この場合も、切り離される方向がY字状スリットの3方向の場合と同様に、
図10に示すように、取付部22の変形動作によって、各弁本体部片23aのリブ24が互いに接近・密着し、弁部21が閉塞状態(図中、二点鎖線参照)になるので、弁部21が予め切り離されている開放状態に成形されていても、逆止弁20を受け座12に取り付けることで、弁部21が閉塞状態になり逆止弁20の流出口が閉じられる。
その他の構成及び作用は、切り離される方向がY字状スリットの3方向の逆止弁11と略同様である。