特許第6962739号(P6962739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

特許6962739逆止弁、逆止弁の製造方法及び逆止弁組立体の製造方法
<>
  • 特許6962739-逆止弁、逆止弁の製造方法及び逆止弁組立体の製造方法 図000002
  • 特許6962739-逆止弁、逆止弁の製造方法及び逆止弁組立体の製造方法 図000003
  • 特許6962739-逆止弁、逆止弁の製造方法及び逆止弁組立体の製造方法 図000004
  • 特許6962739-逆止弁、逆止弁の製造方法及び逆止弁組立体の製造方法 図000005
  • 特許6962739-逆止弁、逆止弁の製造方法及び逆止弁組立体の製造方法 図000006
  • 特許6962739-逆止弁、逆止弁の製造方法及び逆止弁組立体の製造方法 図000007
  • 特許6962739-逆止弁、逆止弁の製造方法及び逆止弁組立体の製造方法 図000008
  • 特許6962739-逆止弁、逆止弁の製造方法及び逆止弁組立体の製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962739
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】逆止弁、逆止弁の製造方法及び逆止弁組立体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/14 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   F16K15/14 C
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-158842(P2017-158842)
(22)【出願日】2017年8月21日
(65)【公開番号】特開2019-35492(P2019-35492A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】豊田 秀司
【審査官】 西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−199482(JP,U)
【文献】 特表2014−506661(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0003846(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00 − 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け座に取り付けられた状態で、流入流体に対し開口して流出させ、流出方向とは逆方向からの逆流流体に対しては閉口して流入を阻止する、弁部と、前記受け座への取付部と、を備えた逆止弁であって、
前記弁部は、閉塞動作により閉塞する開放状態に形成されており、
前記取付部は、変形により前記弁部に前記閉塞動作を行わせる変形可能形状に形成されており、
前記取付部は、平坦形状への変形を可能にする山形形状に形成されており、前記山形形状から前記平坦形状へと変形させられることにより前記弁部が閉塞状態にされることが可能であるように、構成されており、
前記取付部における前記山形形状の、山形の頂点と底部とを結ぶ直線と山形の底部を通る平面とのなす、山形の傾斜角度は、1°〜15°であることを特徴とする、逆止弁。
【請求項2】
前記流入流体の流出方向に突出する、内部空間を備える、弁本体部をさらに有し、
前記受け座に取り付けられた状態で、前記弁部は、前記弁本体部の突出方向に沿って延在し、開放時、前記弁本体部を3方向以上に切り離して開口するスリット状に形成されている、請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記受け座に取り付けられた状態で、前記弁本体部は、外表面が半球状に形成されている、請求項に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記弁部は、前記弁本体部の外表面に突設されたリブに形成されている、請求項2または3に記載の逆止弁。
【請求項5】
前記リブは、前記弁本体部の前記流入流体の流入口に達している、請求項に記載の逆止弁。
【請求項6】
受け座に取り付けられた状態で、流入流体に対し開口して流出させ、流出方向とは逆方向からの逆流流体に対しては閉口して流入を阻止する、弁部と、前記受け座への取付部と、を備えた逆止弁の製造方法であって、
前記弁部を、閉塞動作により閉塞する開放状態に形成し、
前記取付部を、平坦形状への変形を可能にして、該変形により前記弁部を閉塞状態にすることが可能となるように、流出方向に突出する山形形状であって、当該山形形状の、山形の頂点と底部とを結ぶ直線と山形の底部を通る平面とのなす、山形の傾斜角度が、1°〜15°である、山形形状に形成することを特徴とする、逆止弁の製造方法。
【請求項7】
逆止弁と該逆止弁が取り付けられた受け座とからなる、逆止弁組立体を得るための、逆止弁組立体の製造方法であって、
請求項1からの何れか一項に記載の逆止弁を用い、
該逆止弁の前記取付部を前記受け座に取り付けて、前記取付部を変形させることにより、開放状態に形成されていた前記弁部を閉塞動作により閉塞状態にすることを特徴とする、逆止弁組立体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁、逆止弁の製造方法及び逆止弁組立体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流路に設けられて、流路上流側から下流側へと向かう順方向の流れの通過は許容し、流路下流側から上流側へと向かう逆方向の流れの通過は許容しない逆止弁が知られており、このような逆止弁として、例えば、上流側が開放されて下流側が開口/閉口する止水部を有した筒状の逆止弁(特許文献1参照)がある。
この従来の逆止弁は、例えばエラストマーやシリコンなどのゴム材料を設置した金型を加圧・加熱することで、逆止弁の躯体を止水部も連接した形で一体的に成形し、成形物を金型から取り出した後、切断手段である刃物等によって止水部を切開することにより形成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−61045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の逆止弁のように、ゴム材料からなる閉塞した部分を刃物やレーザ光線を用いて切り開くことで、逆止弁のスリット状の開口を形成する方法においては、切り開く際の切り込みのばらつきによって開口具合が変わってしまい、所望の性能が得られなかったり、加工が煩雑になることで、製造が容易ではなかった。
そこで、この発明の目的は、開口のばらつきが少なく、製造が容易になる逆止弁、開口のばらつきの少ない逆止弁を、容易に得ることができる逆止弁の製造方法、及び開口のばらつきが少なく、製造が容易になる逆止弁を、受け座に取り付けた逆止弁組立体を製造することができる逆止弁組立体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明に係る逆止弁は、受け座に取り付けられた状態で、流入流体に対し開口して流出させ、流出方向とは逆方向からの逆流流体に対しては閉口して流入を阻止する、弁部と、前記受け座への取付部と、を備えた逆止弁であって、前記弁部は、閉塞動作により閉塞する開放状態に形成されており、前記取付部は、変形により前記弁部に前記閉塞動作を行わせる変形可能形状に形成されていることを特徴とする。この発明に係る逆止弁によれば、開口のばらつきが少なく、製造が容易になる。
【0006】
この発明の逆止弁では、前記取付部は、平坦形状への変形を可能にする山形形状に形成されており、前記山形形状から前記平坦形状へと変形させられることにより前記弁部が前記閉塞状態にされることが可能であるように、構成されている、ことが好ましい。この構成によれば、取付部を平坦形状へと変形させて、開放状態の弁部を閉塞状態にすることができる。
この発明の逆止弁では、前記流入流体の流出方向に突出する、内部空間を備える、弁本体部をさらに有し、前記受け座に取り付けられた状態で、前記弁部は、前記弁本体部の突出方向に沿って延在し、開放時、前記弁本体部を3方向以上に切り離して開口するスリット状に形成されている、ことが好ましい。この構成によれば、弁部が閉じる際の力が分散されて弁部の開放時に弁部が振動し難くなり、弁本体部に空気が流入しても騒音が発生し難くなる。
【0007】
この発明の逆止弁では、前記受け座に取り付けられた状態で、前記弁本体部は、外表面が半球状に形成されている、ことが好ましい。この構成によれば、弁部がより振動し難くなり、騒音がより発生し難くなる。
この発明の逆止弁では、前記弁部は、前記弁本体部の外表面に突設されたリブに形成されている、ことが好ましい。この構成によれば、弁部閉塞時の逆止強度を向上させることができる。
この発明の逆止弁では、前記リブは、前記弁本体部の前記流入流体の流入口に達している、ことが好ましい。この構成によれば、弁部の開口径を広げて開き易くすることができる。
【0008】
上記目的を達成するため、この発明に係る逆止弁の製造方法は、受け座に取り付けられた状態で、流入流体に対し開口して流出させ、流出方向とは逆方向からの逆流流体に対しては閉口して流入を阻止する、弁部と、前記受け座への取付部と、を備えた逆止弁の製造方法であって、前記弁部を、閉塞動作により閉塞する開放状態に形成し、前記取付部を、平坦形状への変形を可能にして、該変形により前記弁部を閉塞状態にすることが可能となるように、流出方向に突出する山形形状に形成することを特徴とする。この発明に係る逆止弁の製造方法によれば、開口のばらつきの少ない逆止弁を、容易に得ることができる。
【0009】
上記目的を達成するため、この発明に係る逆止弁組立体の製造方法は、逆止弁と該逆止弁が取り付けられた受け座とからなる、逆止弁組立体を得るための、逆止弁組立体の製造方法であって、この発明に係る逆止弁を用い、該逆止弁の前記取付部を前記受け座に取り付けて、前記取付部を変形させることにより、開放状態に形成されていた前記弁部を閉塞動作により閉塞状態にすることを特徴とする。この発明に係る逆止弁組立体の製造方法によれば、開口のばらつきが少なく、製造が容易になる逆止弁を受け座に取り付けた逆止弁組立体を製造することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、開口のばらつきが少なく、製造が容易になる逆止弁、開口のばらつきの少ない逆止弁を、容易に得ることができる逆止弁の製造方法、及び開口のばらつきが少なく、製造が容易になる逆止弁を、受け座に取り付けた逆止弁組立体を製造することができる逆止弁組立体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の一実施の形態に係る逆止弁を示す斜視図である。
図2図1の逆止弁の開口状態及び閉口状態を示す説明図である。
図3図1の逆止弁を受け座に装着した状態を示す断面説明図である。
図4A図1の逆止弁の他の例を受け座に装着した状態を示す断面説明図である。
図4B図4Aの取付リングを示す斜視図である。
図5】この発明の一実施の形態に係る弁組立体を示す断面説明図である。
図6A】この発明の他の実施形態に係る逆止弁を示す斜視図である。
図6B図6Aの逆止弁の開口状態及び閉口状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための一形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の逆止弁10は、受け座に取り付けられた状態で、流入流体に対し開口して流出させ、流出方向とは逆方向からの逆流流体に対しては閉口して流入を阻止する弁部11と、受け座への取付部12と、を備え、弁部11は、閉塞動作により閉塞する開放状態に形成されており、取付部12は、変形により弁部11に閉塞動作を行わせる変形可能形状に形成されている。
【0013】
本実施形態の逆止弁10は、例えば、排水口に連通する排水流路に備えられた排水トラップの配管(受け座)等に設置され、排水流路の上流側から下流側へと向かう順方向の流れの通過は開口して許容し、下流側から上流側へと向かう逆方向の流れの通過は閉口して許容しない、逆流防止弁として用いられる。
本実施形態において、逆止弁10は、流入流体の流出方向に突出する、内部空間を備える、受け座に取り付けられた状態で、外表面が半球状(例えば略お椀形状)となる弁本体部13をさらに有しており、弁本体部13の流入開口には、開口周縁全周にわたって、弁本体部13の外表面から一段高い円環状段部からなる取付部12が形成されている。
【0014】
本実施形態の弁部11は、受け座に取り付けられた状態で、弁本体部13の突出方向に沿って、即ち、半球状外表面に沿う曲線状に、延在し、弁本体部13を3方向に切り離して開口するスリット状に形成されており、流入流体の流出口となる弁本体部13の先端部から取付部12の上まで、3方向に切り離された弁本体部13の各弁本体部片13aは、先端部で隣接する弁本体部片13aの間に、間隙を有している(図1,2参照)。
本実施形態において、略三角形状の外観を有する各弁本体部片13aは、取付部12の全周を略3等分した位置で取付部12から立ち上がるように、取付部12と一体的に形成されており、各弁本体部片13aの、取付部12側を除く2辺の端縁には、取付部12に連続するリブ14が突設されている。よって、隣接する各弁本体部片13aは、リブ14同士が対向することになる。
【0015】
即ち、本実施形態の弁部11は、弁本体部13の外表面に突設されたリブ14に形成されており、開放時に離間して隣接するリブ14同士が閉塞時に当接した状態になって、所謂口唇状開口部となる弁部11が形成されることになる。
本実施形態の弁部11は、予め3方向に切り離されている弁本体部13の各弁本体部片13aが、それぞれ、恰も開いた口の唇のように、離間して間隙を有する開放状態にあるが、変形可能形状に形成されている取付部12の変形により、閉塞動作を行って閉塞する。即ち、取付部12の変形動作によって、取付部12と一体化している、それぞれ離間する各弁本体部片13aは、隣接する弁本体部片13a同士が、間隙を閉じるように接近して互いに当接し、恰も閉じた口の唇のように、密着することで、開放状態にあった弁部11は閉塞状態になり、逆止弁10の流出口は閉じられる。
【0016】
このように、本実施形態の逆止弁10は、弁部11が、予め切り離されている開放状態に形成されているため、切開することなく開口を形成することができ、開口のばらつきが少ないとともに、製造が容易になる。
本実施形態の取付部12は、例えばゴム材料を用いて、平坦形状への変形、本実施形態においては弾性変形を可能にする、流出方向へ凸形状となる山形形状(変形可能形状)に形成されており、山形形状から平坦形状へと変形させられることにより弁部11が閉塞状態にされることが可能であるように、構成されている。この取付部12には、取付部12の内周面全周にわたって、外周面方向を深さ方向として内周面に開口する溝12aが、取付部12の流出方向幅略中央を通って、即ち、取付部12の山形形状に沿う山形に、形成されている(図2、破線参照)。
【0017】
本実施形態において、取付部12は、取付部12の円周上に3ヶ所ある、隣接する弁本体部片13aの境界部分を、それぞれ頂部とし、各弁本体部片13aの円周方向略中央を、それぞれ底部とする(図2、破線参照)、例えば二等辺からなる3個の山形が連続する円環状に形成されており、この二等辺からなる3個の山形に沿う山形が連続する円環状に溝12aが形成されている。
【0018】
本実施形態において、取付部12の、隣接する弁本体部片13aの境界部分を頂部とする山形の傾斜角度αは、山形の底部を通る平面に対し、好ましくは1°〜15°、より好ましくは3°〜5°であり、隣接する各弁本体部片13aの先端部の成す角度β(=2α)は、好ましくは2°〜30°、より好ましくは6°〜10°である。山形の傾斜角度αが1°未満の場合、取付部12の成形がし難くなり、15°を超える場合、弁部11の滑らかな閉塞がし難くなるためである。ここで、山形の傾斜角度αは、取付部12の頂点と底部を結ぶ直線と、取付部12の低部が当接する、逆止弁10が取り付けられる受け座の上面(平坦面)とのなす角とする。
【0019】
図2に示すように、本実施形態において、取付部12は、取付部12の例えば3個の山形を、山を潰すように上から押し下げることで、取付部12の全周にわたって平坦形状(図中、二点鎖線参照)となり、これに伴い、例えば3個の弁本体部片13aの隣接するもの同士が、それぞれのリブ14を互いに当接させ密着させる(図中、二点鎖線参照)。即ち、変形可能形状に形成されている取付部12の変形により、開放状態の弁部11を閉塞状態(図中、二点鎖線参照)にする閉塞動作を行うことになる。
なお、取付部12の山形形状は、二等辺からなる山形に限らず、不等辺からなっていても良く、また、山の頂部が略直線による交差角(図2参照)からなる他、上に凸の円弧からなっていても良く、山形形状から平坦形状への変形を可能とする変形可能形状であれば良い。
【0020】
本実施形態の逆止弁10は、逆止弁10が装着される装着対象である、例えば、排水口に連通する排水流路に備えられた、排水トラップに装着される。
図3に示すように、本実施形態の逆止弁10を排水トラップ(図示しない)に装着する際、例えば、逆止弁10が取り付けられる受け座となる、排水トラップの排水流出口を形成する配管15に、弁部11を排水流出方向に向けて、取付部12を取り付ける。
【0021】
配管15は、開口端に、逆止弁10の取付部12が当接する受け部15aとしての、開口面に略平行なリング状の平坦面により形成されている外向きフランジを有しており(図3参照)、この受け座としての配管15の平坦面からなる受け部15aに、取付部12が取り付けられる。取付部12の溝12aに受け部15aが嵌め込まれることで、山形の溝12a(図2参照)は受け部15aに当接することになり、受け部15aに沿って山形の溝12aと共に山形の取付部12が平坦になる。即ち、本実施形態において、逆止弁10は、取付部12の溝12aに平坦面形状を有する部材(例えば受け部15a)を嵌め込むことにより(図3参照)、取付部12を、強制的に山形形状(図2、実線参照)から平坦形状(図2、二点鎖線、図3参照)へと変形させることになる。
【0022】
この結果、本実施形態の逆止弁10にあっては、取付部12の変形動作によって、間隙を有して配置されている各弁本体部片13aが互いに接近し、それぞれのリブ14を互いに当接させ密着させて、弁部11が閉塞状態(図2、二点鎖線参照)になるので、弁部11が予め切り離されている開放状態(図2、実線参照)に成形されていても、逆止弁10を受け座(本実施形態では配管15)に取り付けることで、弁部11が閉塞状態になり逆止弁10の流出口が閉じられる。
【0023】
なお、取付部12に溝12aを設けていない逆止弁10としても良く、この場合、図4Aに示すように、受け座の平坦面(本実施形態では配管15の受け部15a)に取付部12を当接・密着させて、取付部12を山形形状から平坦形状へと変形させた状態にし、例えば、図4Bに示す、取付リング16を用いて、取付部12を受け座との間に挟み込むことにより、取付部12の変形状態を保持する(図4A参照)。取付リング16は、例えばボルト・ナット等(図示しない)により、取付部12を受け座との間に挟み込んだ状態に固定することができる。
【0024】
本実施形態の逆止弁10においては、弁部11が、頂部側から見た平面視で3方向を開放方向として開閉するので、弁部11閉塞時の閉じる力が3方向に分散されて弱まることになり、弁部11が振動し難くなって騒音が発生し難くなる。加えて、本実施形態の逆止弁10においては、弁部11の取付部12側の一辺が片持ちとなって開くため、弁部11閉口時の閉じる力が弱まることも、弁部11が振動し難くなって騒音が発生し難くなることに寄与している。また、本実施形態の逆止弁10においては、弁部11が、リブ14に形成されているので、弁部11閉口時の逆止強度を高めることができる。
【0025】
本実施形態の逆止弁10は、弁部11の開口時に、弁部11が振動し難くなり、弁部11の振動に伴う音の発生を極力抑制することができるので、この逆止弁10から排水等の流入流体が流出する際に、騒音発生の原因になることが殆ど無く、特に、サイホン排水のように、強い吸引力で空気と排水を同時処理する場合に、排水と混じり合った空気が通過するときにも、弁部11、即ち逆止弁10から極力大きな音を発生させないようにすることができる。
【0026】
また、逆止弁10が受け座に取り付けられた状態で、弁本体部13の外表面が半球状に形成されていることから、弁部11がより振動し難くなり、騒音が発生し難くなる。また、弁本体部13が、流出方向に突出する内部空間を備える形状(例えば略お椀形状)に形成されていることで、例えば、排水が逆流状態になっても、逆流を受け止めて弁本体部13が凹むことがないばかりか、逆に閉鎖を強める方向に力が作用し、逆止効果をより高めることになり、更に、排水流出方向には、流出口近傍となる弁本体部13の先端部付近に水が溜まり易くなり、それによって弁が開き易くなるという効果がある。
弁部11が、リブ14に形成されていることにより、弁部11の逆止強度を向上させることができる。また、弁部11が形成されているリブ14が、弁本体部13の流入流体の流入口に達することにより、弁部11を流入流体の流入口近傍まで開口することができるので、弁部11の開口径を広げて開き易くすることができる。
【0027】
次に、本実施形態の逆止弁10の製造方法について説明する。
本実施形態の逆止弁10を製造する際、例えば、エラストマーやシリコンなどのゴム材料を用いた射出成形等により成形されており、弁部11を、予め切り離されていて閉塞動作により閉塞する開放状態に形成し、取付部12を、平坦形状への変形を可能にして、この変形により弁部11を閉塞状態にすることが可能になるように、流出方向に突出する山形形状に形成する。
【0028】
弁部11が、予め切り離されている開放状態に形成されているため、従来の逆止弁のように、ゴム材料からなる閉塞した部分を刃物やレーザ光線を用いて切り開くことで、逆止弁のスリット状の開口を形成する方法において生じていた、切り開く際の切り込みのばらつきによって開口具合が変わってしまって、所望の性能が得られなかったり、加工が煩雑になったりすることが無い。即ち、本実施形態の逆止弁10の製造方法により、開口のばらつきの少ない逆止弁10を、容易に得ることができる。
また、流出方向に突出する山形形状に形成された取付部12を設け、この取付部12は平坦形状への変形を可能にして、変形により弁部11を閉塞状態にするので、予め弁部11が切り離された状態に形成されていても、受け座(本実施形態では、配管15)への取り付けに際し、取付部12を平坦状態にすることにより、弁部11を閉塞状態にした逆止弁10とすることができる。
【0029】
続いて、本実施形態の逆止弁組立体の製造方法について説明する。
本実施形態の逆止弁組立体の製造方法は、図3に示すように、本実施形態の逆止弁10を用い、この逆止弁10の取付部12を、受け座(本実施形態では、配管15)に取り付けて、取付部12を変形させることにより、開放状態に形成されていた弁部11を閉塞動作により閉塞状態にする。即ち、取付部12の溝12aに、平坦面形状を有する部材(本実施形態では、配管15の受け部15a)を嵌め込むことにより(図3参照)、取付部12を、強制的に山形形状から平坦形状へと変形させることができ、逆止弁10の取付部12を、受け座(本実施形態では、配管15)に取り付けた逆止弁組立体を製造することができる。
なお、一部材としての受け座を設けて逆止弁組立体を形成しても良い。
【0030】
図5に示すように、逆止弁組立体17は、この発明に係る逆止弁10と、この逆止弁10に組み付けられ、取付部12を当接させることにより、取付部12を変形させ弁部11を閉塞状態にする受け座18とを有する。この受け座18は、取付部12の溝12aに嵌め込まれて、平坦面部18aを溝12aに当接させ、取付部12を変形させて弁部11を閉塞状態にする。この受け座18は、例えば、受け座18を逆止弁10が取り付けられる取付対象に装着するための装着部18bを有していても良い。
【0031】
この逆止弁組立体17においては、取付部12の溝12aに受け座18を嵌め込むことで、取付部12は山形形状から平坦形状へと強制的に変形され、この変形に伴って、各弁本体部片13aが互いに接近し、それぞれのリブ14を互いに当接させ密着させて、弁部11が閉塞状態(図2、二点鎖線参照)になる。
弁部11が閉塞状態になっている逆止弁組立体17により、受け座18の装着部18bを、例えばボルト・ナット等により、逆止弁組立体17の装着対象(例えば排水流出口)に固定することで、逆止弁10を装着対象に装着することができる。
【0032】
上述した逆止弁組立体17によれば、逆止弁10を装着する逆止弁装着対象に、取付部12の溝12aに嵌め込む平坦面形状を有する部材(本実施形態では、配管15の受け部15a)が無い場合でも、逆止弁組立体17それ自体で、取付部12を変形させ弁部11を閉塞状態にすることができる。
よって、この逆止弁組立体17は、切開することなく開口を形成することができ、切り込みのばらつきが無く、製造が容易になる逆止弁10を、平坦面形状を有する部材の有無にかかわらず、任意の逆止弁装着対象に装着することができる。
【0033】
なお、上述の実施形態において、逆止弁10は、弁本体部13が切り離される方向を、弁本体部13を突出端側から見た平面視で、Y字状スリットの3方向としているが、これに限るものではなく、弁本体部13が切り離される方向は、例えば、一文字状スリットの2方向、或いは十字状スリットの4方向等、3方向以上でも良い。また、弁部11のスリット形状も、直線状に限るものではなく、弁本体部13が切り離されて流出口が形成されるのであれば、種々の形状を適用することができる。
【0034】
図6Aは、この発明の他の実施形態に係る逆止弁を示す斜視図であり、図6Bは、図6Aの逆止弁の開口状態及び閉口状態を示す説明図である。図6Aに示すように、逆止弁20は、弁部21及び取付部22を有し、弁本体部23が切り離される方向が、弁本体部23を突出端側から見た平面視で、一文字状スリットの2方向とし、取付部22は、取付部22の円周上に2ヶ所ある、隣接する弁本体部片23aの境界部分を、それぞれ頂部として、各弁本体部片23aの円周方向略中央を、それぞれ底部とする、例えば二等辺からなる2個の山形が連続する円環状に形成されている。
【0035】
この場合も、切り離される方向がY字状スリットの3方向の場合と同様に、図6Bに示すように、取付部22の変形動作によって、各弁本体部片23aのリブ24が互いに接近・密着し、弁部21が閉塞状態(図中、二点鎖線参照)になるので、弁部21が予め切り離されている開放状態に成形されていても、逆止弁20を受け座に取り付けることで、弁部21が閉塞状態になり逆止弁20の流出口が閉じられる。
その他の構成及び作用は、切り離される方向がY字状スリットの3方向の逆止弁10と略同様である。
【符号の説明】
【0036】
10,20:逆止弁、 11,21:弁部、 12,22:取付部、 12a:溝、 13,23:弁本体部、 13a,23a:弁本体部片、 14,24:リブ、 15:配管(受け座)、 15a:受け部、 16:取付リング、 17:逆止弁組立体、 18:受け座、 18a:平坦面部、 18b:装着部、 α:傾斜角度、 β:角度
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B