特許第6962740号(P6962740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962740
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】静電気放散性組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20211025BHJP
   C08L 29/14 20060101ALI20211025BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20211025BHJP
   B64D 45/02 20060101ALI20211025BHJP
   H05F 1/00 20060101ALI20211025BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20211025BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20211025BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08L29/14
   B64C1/00 Z
   B64D45/02
   H05F1/00 K
   B05D3/12 Z
   B05D5/12 C
   C08K5/42
   C09K3/16 108Z
   C09K3/16 106A
   C09K3/16 106E
   C09K3/16 107A
   C09K3/16 106D
   C09K3/16 113
   C09K3/16 109
   C09K3/16 102J
   C09K3/16 102K
【請求項の数】28
【外国語出願】
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2017-159281(P2017-159281)
(22)【出願日】2017年8月22日
(65)【公開番号】特開2018-80320(P2018-80320A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2020年7月16日
(31)【優先権主張番号】15/252,029
(32)【優先日】2016年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ エー.キャラハン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ジェイ.キンレン
(72)【発明者】
【氏名】エリック エー.ブルートン
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−001884(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/111382(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/019596(WO,A1)
【文献】 特表2015−513487(JP,A)
【文献】 特開2015−224021(JP,A)
【文献】 特表2011−501379(JP,A)
【文献】 特開2009−001624(JP,A)
【文献】 特開2009−270047(JP,A)
【文献】 特表2007−531807(JP,A)
【文献】 特開2006−117906(JP,A)
【文献】 特開2005−146259(JP,A)
【文献】 特表2001−521271(JP,A)
【文献】 特表2000−516023(JP,A)
【文献】 特開平10−119444(JP,A)
【文献】 特開平10−074601(JP,A)
【文献】 特開平08−120228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
C08L 29/14
B64C 1/00
B64D 45/02
H05F 1/00
B05D 3/12
B05D 5/12
C08K 5/42
C09K 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリマーと、
第2ポリマーと、
ナフチルスルホン酸、アントラセニルスルホン酸、及びピレニルスルホン酸のうちの少なくとも一つと、を含み、前記第2ポリマーはポリビニルブチラールである、静電気放散性組成物。
【請求項2】
前記第1ポリマーは、ポリアニリン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホネート)、及びこれらの混合物のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1ポリマーは、ポリアニリンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリビニルブチラールは、前記組成物の10重量%〜40重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアニリンは、前記組成物の0.1重量%〜25重量%である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ナフチルスルホン酸は、ジノニルナフチルスルホン酸である、請求項1〜のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項7】
前記第1ポリマーは、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)の混合物であり、前記混合物は、前記組成物の1重量%〜50重量%である、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、50%より大きい可視光透過率を有する、請求項1〜のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項9】
グラファイト、ガラス繊維、ナイロン、アラミドポリマー、ポリエチレン、又はこれらの混合物を含む繊維材料をさらに含む、請求項1〜のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1つの組成物を含む、輸送体部品。
【請求項11】
前記輸送体部品は、ノーズ、燃料タンク、テールコーン、パネル、2つ以上のパネル間の被覆ラップジョイント、翼と胴体部のアセンブリ、航空機複合構造材、胴体部ジョイント、翼リブと外皮のジョイント、及び/又は、他の内部部品からなる群から選択される、請求項10に記載の輸送体部品。
【請求項12】
基材と、請求項1〜のいずれか1つの組成物と、を含む部品であって、前記組成物は、厚みが0.1μm〜10μm、抵抗率が1e+4Ω/□〜1e+8Ω/□の層である、部品。
【請求項13】
基材上に設けられる、請求項1〜9のいずれかに記載の静電気放散性組成物の形成方法であって、
前記第1ポリマー、前記第2ポリマー、及び前記少なくとも一つのスルホン酸を混合して第1組成物を形成することと、
前記第1組成物を前記基材に塗布することと、
前記第1組成物を硬化させることと、を含む、方法。
【請求項14】
前記第1組成物を洗浄剤で洗浄することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記洗浄剤は、イソプロピルアルコール、パラトルエンスルホン酸、アセトン、メタノール、これらの水和物、これらの溶媒和物、又はこれらの混合物を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
洗浄することは、1〜10分の間、前記第1組成物の表面に前記洗浄剤を吹き付けることを含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1組成物を、イソプロピルアルコール、パラトルエンスルホン酸、アセトン、メタノール、これらの水和物、これらの溶媒和物、及びこれらの混合物のうちの少なくとも一つを含む第2洗浄剤で洗浄することをさらに含む、請求項14〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
洗浄することは、前記第1組成物を、前記洗浄剤中に1〜1分の間浸漬することを含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項19】
前記洗浄剤は、ジノニルナフチルスルホン酸とイソプロピルアルコールの混合物を含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項20】
前記第1ポリマーを前記第2ポリマーと混合する前に、前記第1ポリマーを溶媒に溶解することをさらに含み、前記溶媒は、キシレン、ベンゼン、トルエン、ジメチルスルホキシド、水、又はこれらの混合物を含む、請求項13〜19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記基材は、輸送体部品であり、前記第1組成物は、0.1μm〜10μmの厚みに塗布される、請求項13〜20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
硬化させることは、前記組成物の温度をピーク硬化温度にまで上げ、前記ピーク硬化温度に1〜48時間の間維持することを含む、請求項13〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記ピーク硬化温度は、室〜200℃である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記基材は、輸送体部品であり、前記第1組成物を前記基材に塗布することは、前記輸送体部品の表面に前記第1組成物を100rpm〜4,000rpmの速度でスピンコーティングすることを含む、請求項13〜23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜のいずれか1つに記載の組成物を輸送体部品に塗布することと、
前記輸送体部品上に配置された前記組成物の表面に電圧を印加することと、を含む、輸送体部品の加熱方法。
【請求項26】
前記組成物の表面に電圧を印加することで、前記輸送体部品の表面にある固相の水が少なくとも部分的に溶融する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記電圧は、10ヘルツ〜2000ヘルツ、及び/又は、10ボルト〜2000ボルトの交流電圧である、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記輸送体部品は、ノーズ、燃料タンク、テールコーン、パネル、2つ以上のパネル間の被覆ラップジョイント、翼と胴体部のアセンブリ、航空機複合構造材、胴体部ジョイント、翼リブと外皮のジョイント、及び/又は、他の内部部品からなる群から選択される、請求項25〜27のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、静電気放散性組成物ならびにその製造及び使用方法を含む。
【背景技術】
【0002】
航空機などの移動中の輸送体の表面には、静電荷が蓄積する。例えば、航空機のノーズの後方には、1つ以上のレーダーが配置されている。ノーズには、プレシピテーションスタチック(precipitation static)(Pスタチック:P-static)と呼ばれる、ある種の静電気が蓄積しうる。
【0003】
航空機部品の表面を保護するために、航空機部品に表面塗膜が塗布されることがある。しかしながら、航空機の機体部品の従来の表面塗膜は、通常、高導電性ではなく、その抵抗率は数百キロΩ〜数十メガΩであった。したがって、従来の航空機の表面塗膜は、航空機の表面(や他の部品)上に電荷の蓄積を引き起こすことがあった。従来の塗膜は、蓄積電荷を放散できないことに加えて、理想的な特性を持っていないこともある。例えば、従来の表面塗膜の耐久性パラメーターに関する性能、例えば、雨による侵食、紫外光耐性、高温耐性、低温耐性、砂や雹による損傷への耐性に関する性能は、過酷な条件にさらされる航空機の機体表面上のものとしては、理想的でないかもしれない。また、戦闘ジェット機のキャノピー(canopy)や、民間航空機もしくは戦闘ジェット機の風防ガラスや窓の塗膜の場合、これらの塗膜は、当該表面を介する可視性を高めるために、実質的に透明でなければならない。従来の表面塗膜は、可視光透過率が低い場合が多い。
【0004】
また、塗膜の1つ以上の所望の物理特性を向上させるために従来の表面塗膜を他の化学物質と混合する場合、この塗膜は、しばしばこの他の化学物質と相性がよくなく、塗膜に添加された他の化学物質の望ましい物理特性を阻害するものであった。従来の表面塗膜はまた、下層の表面/塗膜と親和性が悪い場合が多く、塗膜−塗膜界面で接着性の低下を引き起こしていた。
【0005】
また、寒冷な気象条件は、機体表面上での氷の成長を促進する。氷を除去するために、しばしば、化学物質が融解のため氷に吹き付けられる。化学物質は、輸送体のユーザーにとってコスト的な重荷となる。
【0006】
導電性かつ耐空性を有する組成物、及び、これらの組成物を製造し使用する方法が、必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
少なくとも1つの態様において、静電気放散性組成物は、第1ポリマーと、第2ポリマーと、ナフチルスルホン酸とを含む。
【0008】
少なくとも1つの態様において、静電気放散性組成物は、溶媒中における百分率固体含量が約0.1重量%〜約30重量%の第1ポリマー、ポリオール、イソシアネート、スルホン酸、の1つ以上の反応生成物を含む。
【0009】
少なくとも1つの態様において、静電気放散性組成物の形成方法は、第1ポリマーと第2ポリマーとを混合して第1組成物を形成することを含む。当該方法は、前記第1組成物を前記基材に塗布することと、前記第1組成物を硬化させることとを含む。
【0010】
少なくとも1つの態様において、輸送体部品の加熱方法は、前記輸送体部品上に配置された組成物の表面に電圧を印加することを含む。前記組成物は、第1ポリマーと第2ポリマーとから形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上述の本開示の特徴が詳細に理解できるように、上に簡単に要約した本開示のより具体的な説明を、態様を参照しながら行う。なお、そのうちのいくつかは添付図面に図示する。しかしながら、添付図面は本開示の典型的な態様を示すのみであって、その範囲を制限するものと考えるべきではない。本開示には、他の同様に効果的な態様が存在しうるからである。
【0012】
図1】本開示のいくつかの態様における抵抗値測定のための可能な電極配列を示す。
図2】本開示のいくつかの態様におけるファンデルパウ測定チップの一例を示す。
図3】本開示のいくつかの態様における可視近赤外域でのPANI組成物の吸収を示す。
図4】本開示のいくつかの態様におけるPEDOT:PSS組成物の抵抗値/厚みを示す。
図5A】本開示のいくつかの態様におけるPANI:DNNSA(ポリウレタン中40%)の抵抗値/組成物厚みを示す。
図5B】本開示のいくつかの態様におけるIPAで洗浄したPANI:DNNSA(ポリウレタン中40重量%)の抵抗値/組成物厚みを示す。
図6】本開示のいくつかの態様における未処理PANI:DNNSA組成物のインピーダンス/周波数としてプロットしたインピーダンススペクトルのボードプロットを示す。
図7】本開示のいくつかの態様における櫛型電極に塗布されて洗浄剤で処理されたPANI:DNNSA組成物の相対的な導電率を示す棒グラフである。
図8】本開示のいくつかの態様におけるトルエンから流延されたPANIPOL組成物の抵抗値(kΩ)/アニーリング温度を示す。
図9】本開示のいくつかの態様におけるいろいろな洗浄剤で処理されたエポキシ塗膜中のPANI:DNNSAの抵抗率/エポキシ中の%PANIを示す。
図10】本開示のいくつかの態様における、組成物中に異なる量のPEDOT:PSSを含むPEDOT:PSS組成物の抵抗率を示す。
図11】本開示のいくつかの態様におけるスピン速度/組成物厚みを示す。
図12】本開示のいくつかの態様における、基材上に塗布直後のPANI:DNNSAフィルムの導電率/厚みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
理解を容易にするため、可能な場合は、これらの図中で共通する同一の部品を示すのに同一の引用番号を使用した。1つの態様の要素や特徴は、特に言及しなくても、他の態様に有益に編入されるものである。
【0014】
本開示は、使用時に静電気が蓄積される部品に有用な静電気放散性組成物に関する。静電気放散性組成物は、概して、他の理想的な耐空特性に加えて、高い導電性を有する。一例として、静電気放散性組成物は、第1ポリマーと、第2ポリマーと、ナフチルスルホン酸(DNNSA)とによって形成される。第1ポリマーは、ポリアニリン(PANI)、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(スチレンスルホネート)(PSS)、又はこれらの混合物である。第1ポリマーは、ポリアニリンであってよい。前記ポリアニリンは、組成物の約0.1重量%〜約25重量%を構成する。少なくとも1つの態様において、組成物は、約20重量%〜約80重量%の第1ポリマーを含み、例えば約40重量%〜約60重量%、例えば約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%の第1ポリマーを含む。前記第1ポリマーは、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)の混合物であってよく、この混合物は、組成物の約1重量%〜約50重量%であり、例えば約10重量%〜約25重量%、例えば、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%であってよい。
【0015】
第2ポリマーは、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート、エポキシ、グリシジル−Si−Zr−含有ゾルゲル、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリスルフィド、これらの混合物、又はこれらの塩である。第2ポリマーは、無置換であっても、一置換又は多置換(例えば、二置換、三置換、又は四置換)であってもよく、その置換基の例はそれぞれアルキル(例えば、C1−C20アルキル)、アリール、アミノ、ニトロ、ハロ−(−F、−Cl、−Br、−I)から選ばれる。本開示において、「無置換体」とは、置換基を持つことが可能である分子で、各位置に水素原子を持っている分子である。本開示において、「置換体」は、例えば炭素原子又は窒素原子に結合した水素以外の置換基を持つ分子である。少なくとも1つの態様において、組成物は、約20重量%〜約80重量%の第2ポリマー、例えば約40重量%〜約60重量%、例えば約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%の量の第2ポリマーを含む。第2ポリマーは、ポリウレタン又はポリビニルブチラールを含む。ポリビニルブチラールは、組成物の約10重量%〜約40重量%、例えば約10重量%〜約25重量%、例えば10重量%、15重量%、20重量%、25重量%を構成することができる。
【0016】
ナフチルスルホン酸は、本開示の静電気放散性組成物の抵抗率を低下させる。前記ナフチルスルホン酸は、次式1のものであってもよい。
【化1】
【0017】
式1のベンゼン環はそれぞれ、無置換であっても、必要なら、R1又はR2で一置換、二置換、三置換又は四置換されていてもよい。R1は、独立して、アルキル(例えば、C1−C20アルキル)とアリール、アミノ、ニトロ、ハロ−(−F、−Cl、−Br、−I)から選ばれ、R2は、独立して、アルキル(例えば、C1−C20アルキル)とアリール、アミノ、ニトロ、ハロ−(−F、−Cl、−Br、−I)から選ばれる。C1−C20アルキルで置換されたナフチルスルホン酸には、ジノニルナフチルスルホン酸、メチルナフチルスルホン酸、エチルナフチルスルホン酸、プロピルナフチルスルホン酸、ブチルナフチルスルホン酸、ペンチルナフチルスルホン酸、ヘキシルナフチルスルホン酸、ヘプチルナフチルスルホン酸、オクチルナフチルスルホン酸、ノニルナフチルスルホン酸、デシルナフチルスルホン酸、ジメチルナフチルスルホン酸、ジエチルナフチルスルホン酸、ジプロピルナフチルスルホン酸、ジブチルナフチルスルホン酸、ジペンチルナフチルスルホン酸、ジヘキシルナフチルスルホン酸、ジヘプチルナフチルスルホン酸、ジオクチルナフチルスルホン酸、ジデシルナフチルスルホン酸、及びそれらの異性体が含まれる。
【化1a】
【化1b】
【化1c】
【化1d】
【化1e】
【化1f】
【化1g】
【化1h】
【化1i】
【化1j】
【化1k】
【化1l】
【化1m】
【化1n】
【化1o】
【化1p】
【化1q】
【化1r】
【化1s】
【化1t】
【0018】
静電気放散性組成物は、ナフチルスルホン酸を約1重量%〜約50重量%の量、例えば約3量%〜約25重量%、例えば約10重量%〜約15重量%、例えば5重量%、10重量%、15重量%の量で含むことができる。他のスルホン酸には、フェニルスルホン酸、アントラセニルスルホン酸、ピレニルスルホン酸が含まれ、これらはそれぞれ、無置換であっても、一置換又は多置換であってもよく、その置換基の例はそれぞれ、独立してアルキル(例えば、C1−C20アルキル)とアリール、アミノ、ニトロ、又はハロ−(−F,−Cl,−Br,−I)である。
【0019】
少なくとも1つの態様において、基材は、輸送体部品などの部品を含み、本開示の1つ以上の組成物が、当該部品上に設けられる。基材上の組成物は、(例えば、層として)約0.1μm〜約100μm、例えば約1μm〜約8μm、例えば約2μm〜約6μm、例えば約0.1μm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μmの厚みで塗布される。少なくとも1つの態様では、組成物の抵抗値は、約1e+4Ω/□〜約1e+8Ω/□あり、例えば約1e+4Ω/□、約1e+5Ω/□、約1e+6Ω/□、約1e+7Ω/□、約1e+8Ω/□である。導電性によって、静電気放電がもたらされる。組成物は、約50%を超える可視光透過率、例えば、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%の可視光透過率を有しうる。可視光透過率の向上により、キャノピー、風防ガラス、及び/又は窓の塗膜として使用するための透明な組成物が得られる。本開示の組成物の可視光透過率は、例えば、Carey 5000 UV-VIS-NIR分光光度計などの任意の適当な可視光透過率分光計を用いて、測定することができる。
【0020】
上述の態様に加えて、組成物は、グラファイト、ガラス繊維、ナイロン、アラミドポリマー、ポリエチレン、又はこれらの混合物である繊維材料を含む。
【0021】
輸送体は、任意の適当な輸送装置を含む。輸送体は、限定するものではないが、航空機、自動車、ボート、オートバイ、衛星、ロケット、ミサイルなどを含み、従って、有人及び無人の航空機、有人及び無人の宇宙船、有人及び無人の地上輸送体、有人及び無人の非地上輸送体を含み、さらに、有人及び無人の水上及び水中走行体、物体及び構造物をも含む。
【0022】
輸送体部品は、輸送体部品の1以上の表面に設けられた、本開示の1つ以上の組成物を含みうる。組成物は、第1ポリマーと、第2ポリマーと、スルホン酸と、を含む。第1ポリマー及び/又は第2ポリマーは、導電性である。輸送体部品は、輸送体の任意の部品を含み、例えば、航空機や自動車などにおけるパネルやジョイントなどの構造部品を含むが、これらに限定されない。輸送体部品は、航空機のノーズ、燃料タンク、テールコーン(tail cone)、パネル、2つ以上のパネル間の被覆ラップジョイント、翼と胴体部のアセンブリ、航空機複合構造材、胴体部ジョイント、翼リブと外皮のジョイント、及び/又は、他の内部部品を含む。
【0023】
静電気放散性組成物は、溶媒中における固体含量が約0.1重量%〜約30重量%の第1ポリマー、ポリオール、イソシアネート、スルホン酸、の1つ以上の反応生成物を含む。少なくとも1つの態様において、溶媒中のポリマーの百分率固体含量は、約0.1重量%〜約30重量%であり、例えば約1重量%〜約15重量%、例えば約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%である。第1ポリマーは、ポリアニリン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホネート)、又はこれらの混合物を含む。前記溶媒は、キシレン、ベンゼン、トルエン、ジメチルスルホキシド、水、又はこれらの混合物を含む。前記スルホン酸は、例えばナフチルスルホン酸である。
【0024】
少なくとも1つの態様において、静電気放散性組成物の形成方法は、第1ポリマーと第2ポリマーとを混合して第1組成物を形成することを含む。本方法は、第1組成物を基材上に塗布することを含む。基材は、例えば輸送体部品であり、第1組成物の塗布後の厚みは、例えば約0.1μm〜約10μm、例えば約1μm〜約8μm、例えば約2μm〜約6μm、例えば約0.1μm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μmである。本方法は、第1組成物を硬化することを含む。本方法は、第1ポリマーと第2ポリマーとを混合する前に、第1ポリマーを溶媒に溶解することを含んでいてもよい。溶媒は、キシレン、ベンゼン、トルエン、ジメチルスルホキシド、水、又はこれらの混合物を含む。
【0025】
本方法は、第1組成物を洗浄剤で洗浄することを含んでいてもよい。この洗浄剤は、イソプロピルアルコール、パラトルエンスルホン酸、アセトン、メタノール、これらの水和物、これらの溶媒和物、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。洗浄は、第1組成物の表面に、約1秒〜約10分間、例えば約1分から5分間、洗浄剤を吹き付けることを含んでいてもよい。洗浄は、組成物の表面に、約1mL〜約25kLの量、例えば約1L〜約100L、例えば約1L〜約5L、例えば約1L、約2L、約3L、約4L、約5Lの量で洗浄剤を吹き付けることを含んでいてもよい。洗浄は、第1組成物を第2の洗浄剤で、すなわちイソプロピルアルコール、パラトルエンスルホン酸、アセトン、メタノール、これらの水和物、これらの溶媒和物、又はこれらの混合物で洗浄することを含んでいてもよい。少なくとも1つの態様において、前記洗浄剤はパラトルエンスルホン酸であり、ブトキシエタノール中1重量%のパラトルエンスルホン酸混合物である。前記洗浄剤は、ジノニルナフチルスルホン酸とイソプロピルアルコールの混合物であってもよい。少なくとも1つの態様では、洗浄は、第1組成物を洗浄剤中に約1秒〜約1分の間浸漬することを含む。
【0026】
第1組成物の硬化は、組成物の温度をピーク硬化温度にまで上げ、ピーク硬化温度に約1秒〜約48時間の間、例えば約1時間〜約10時間の間維持することを含んでいてもよい。前記ピーク硬化温度は、略室温〜約200℃であってよく、例えば約50℃〜約90℃、例えば50℃、60℃、70℃、80℃、90℃であってよい。
【0027】
第1組成物の基材上への塗布は、輸送体部品などの基材の表面に、第1組成物を、約100rpm〜約4,000rpmの速度、例えば約500rpm〜約2,000rpmの速度、例えば約500rpm、約1,000rpm、約1,500rpm、約2,000rpmの速度でスピンコーティングして実施してもよい。
【0028】
あるいは、第1組成物の基材上への塗布は、任意の適当な組成物吹き付け装置を用いて、輸送体部品などの基材の表面に第1組成物を吹き付けることによって、実施される。
【0029】
少なくとも1つの態様において、輸送体部品を加熱する方法は、輸送体部品上に設けられた組成物の表面に電圧を印加することを含む。組成物は、第1ポリマーと第2ポリマーとスルホン酸とからなる。材料の表面に電圧を印加すると、輸送体部品の表面に付着した固相の水(氷)が少なくとも部分的に溶融する。電圧は、約10ヘルツ〜約2000ヘルツの交流(AC)電圧、例えば約500ヘルツ〜約1,000ヘルツ、例えば500ヘルツ、600ヘルツ、700ヘルツ、800ヘルツ、900ヘルツの交流電圧とすることができる。電圧は、約10ボルト〜約2000ボルトの交流(AC)電圧、例えば約100ボルト〜約500ボルト、例えば、100ボルト、200ボルト、300ボルト、400ボルト、500ボルトの電圧とすることができる。
【0030】
輸送体部品は、ノーズ、燃料タンク、テールコーン、パネル、2つ以上のパネル間の被覆ラップジョイント、翼と胴体部のアセンブリ、航空機複合構造材、胴体部ジョイント、翼リブと外皮のジョイント、及び/又は、その他の内部部品を含む。第1ポリマーは、ポリアニリン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホネート)、又はこれらの混合物を含み、第2ポリマーは、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート、エポキシ、グリシジル−Si−Zr−含有ゾルゲル、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリスルフィド、又はこれらの混合物を含む。
【0031】
本開示の組成物は、基材の上に、例えば輸送体部品の表面に、例えば浸漬、吹き付け、ブラシコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、ドクターブレードコーティングで、あるいはこれらの併用などの任意の適当な堆積法で、塗布することができる。本開示の組成物は、輸送体部品の1つ以上の表面上に、例えば、航空機部品の内表面(例えば、内部空洞)、外表面、又は両方に、塗布することができる。
【0032】
本開示の組成物は、第1ポリマー、第2ポリマー、及びスルホン酸を含む静電気放散性組成物を含む。第1ポリマーには、ポリアニリン(PANI)やポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(スチレンスルホネート)(PSS)、これらの混合物が含まれる。第2ポリマーには、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、アクリレート、エポキシ、グリシジル−Si−Zr−含有ゾルゲル、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂、フェノキシ樹脂などの樹脂、ポリスルフィドなどの封止材、これらの混合物が含まれる。エポキシには、部分硬化エポキシと特定種のエポキシ、触媒を含む二成分系エポキシ樹脂(例えば、ヘンケル社(Henkel Corporation)(ベイポイント、カリフォルニア:Bay Point, California)から入手可能なHYSOL(登録商標)EA956エポキシ樹脂)、樹脂と硬化剤の両方を含む二液体システム(例えば、ストルアス社(Struers A/S)(バレルプ、デンマーク: Ballerup, Denmark)から入手可能なEPOFIX樹脂)、アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えば、ハンツマンアドバンスドマテリアルズ(Huntsman Advanced Materials)(モンテー、スイス: Monthey, Switzerland)のアラルダイト(Araldite)MY0500又はMY0510))、N、N、N’、N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの四官能のエポキシ(例えば、ハンツマンアドバンスドマテリアルズ(モンテー、スイス)のアラルダイトMY0720又はMY0721)、これらの混合物が含まれる。エポキシにはまた、ビスフェノール−A(ビス−A)又はビスフェノール−F(ビス−F)などの二官能性エポキシ系のエポキシが含まれる。ビス−Aエポキシ樹脂は、アラルダイトGY6010(ハンツマンアドバンスドマテリアルズ)又はDER331(ダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company)(ミッドランド、ミシガン:Midland, Michigan)から入手可能)として市販されている。ビス−Fエポキシ樹脂は、アラルダイトGY281とGY285(ハンツマンアドバンスドマテリアルズ)として市販されている。エポキシは、耐久性が高いため、例えば航空機外側の熱硬化性樹脂として適当である。
【0033】
ポリアニリンには、例えば、式2:
【化2】
(式中、xは正の整数、例えば約10〜約10,000の整数)のポリアニリンや、ロイコエメラルジン、エメラルジン、(ペル)ニグラニリン、これらの混合物、これらの塩類、及び/又はこれらの塩基が含まれる。ポリアニリンは、無置換、一置換又は多置換(例えば、二置換、三置換、又は四置換)であり、その置換基の例は、アルキル(例えば、C1−C20アルキル)、アリール、アミノ、ニトロ、又はハロ−(−F、−Cl、−Br、−I)から選ばれる。
【0034】
ポリ(エチレンジオキシチオフェン)には、例えば、式3:
【化3】
(式中、xは正の整数、例えば約10〜約10,000の整数)のポリ(エチレンジオキシチオフェン)、及び/又はこれらの塩類が含まれる。ポリ(エチレンジオキシチオフェン)は、無置換、一置換又は多置換(例えば、二置換、三置換又は四置換)であり、その置換基の例は、それぞれアルキル(例えば、C1−C20アルキル)、アリール、アミノ、ニトロ、ハロ−(−F、−Cl、−Br、−I)から選ばれる。
【0035】
ポリ(スチレンスルホネート)には、例えば、式4:
【化4】
(式中、xは正の整数、例えば約10〜約10,000の整数)のポリ(スチレンスルホネート)、及び/又はこれらの塩が含まれる。ポリ(スチレンスルホネート)は、無置換、一置換又は多置換(例えば、二置換、三置換又は四置換)であり、その置換基の例は、それぞれアルキル(例えば、C1−C20アルキル)とアリール、アミノ、ニトロ、ハロ−(−F、−Cl、−Br、−I)から選ばれる。
【0036】
アクリレートには、例えば、式5:
【化5】
(式中、xは正の整数、例えば約10〜約10,000の整数)のポリアクリレート、及び/又はこれらの塩が含まれる。R1とR2は、独立してC1−C20アルキル又はC1−C20ヒドロキシアルキルである。少なくとも1つの態様において、R2はメチルである。アクリレートには、ヒドロキシアルキルポリアクリレートとヒドロキシアルキルポリメタクリレート、アルキルポリアクリレート、アルキルポリメタクリレートが含まれる。適当なヒドロキシアルキルポリアクリレート又はヒドロキシアルキルポリメタクリレートの例には、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(3−ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシブチルアクリレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシ−1−メチルエチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(3−ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシブチルメタクリレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチルメタクリレート)等や、エチレングリコールとプロピレングリコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(ジエチレングリコールアクリレート))などが挙げられる。不飽和酸、例えばマレイン酸やフマル酸、イタコン酸などのヒドロキシ含有エステル及び/又はアミドも有用である。少なくとも1つの態様において、ヒドロキシ−アクリル系ポリマーは、総モノマー重量に対して5%〜35%(重量換算)のモノエチレン性不飽和ヒドロキシ含有モノマーからなり、特定の実施態様では、10%〜25%(重量換算)のモノエチレン性不飽和ヒドロキシ含有モノマーからなる。適当なアルキルポリアクリレートとポリメタクリレートの例には、ポリ(アクリル酸メチル)や、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(プロピルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(ヘキシルアクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ポリ(ノニルアクリレート)、ポリ(ラウリルアクリレート)、ポリ(ステアリルアクリレート)、ポリ(シクロヘキシルアクリレート)、ポリ(イソデシルアクリレート)、ポリ(フェニルアクリレート)、ポリ(イソボルニルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(プロピルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(ノニルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(ステアリルメタクリレート)、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(イソボルニルメタクリレート)などが含まれる。
【0037】
ポリウレタンには、例えば、式6:
【化6】
(式中、xは約10〜約10,000の整数)のポリウレタンが含まれる。R1、R2、R3、R4、及びR5の例は、それぞれ独立して、水素あるいはC1−C20アルキルである。ポリウレタンには、例えば、アプテク(Aptek)2100A/Bとアエロジュール(Aerodur)3002(アルゴシーインターナショナル社(Argosy International, Inc.)から入手可能)が含まれる。ポリウレタンは、無置換、一置換又は多置換(例えば、二置換、三置換又は四置換)を含み、置換基の例は、それぞれ独立して、アルキル(例えば、C1−C20アルキル)、アリール、アミノ、ニトロ、及びハロ−(−F、−Cl、−Br、−I)から選ばれる。
【0038】
<ポリマー合成、特性評価と物性測定>
本開示の組成物のポリマーは、市販製品であっても合成品であってもよい。市販されているポリマーには、PANIやPEDOT:PSS、ポリウレタン、又はエポキシがあり、例えば、ヘレウス(Heraeus)又はシグマアルドリッチ(SigmaAldrich)から入手可能である。本開示のポリマーは、複数のモノマーを混合して混合物とし、次いで加熱してこれらモノマーを重合して合成してもよい。1つ以上の重合触媒を混合物に添加して生成するポリマーの分子量(Mn及び/又はMw)の増加を促進してもよい。「Mn」は、数平均分子量であり、「Mw」は重量平均分子量である。少なくとも1つの態様において、ポリマーは、任意の適当な溶媒又は溶媒混合物中、例えば、n−ブタノール、n−ヘキサノール、ジエチルエーテル、又はこれらの混合物中で合成される。
【0039】
本開示の組成物が、DNNSAを含む場合、例えば生産されるポリアニリンは、高い分子量(例えば、>22,000)と適度な導電率(10-5S/cm)を持ち、様々な溶媒に対して高い溶解度を示す。少なくとも1つの態様において、4級アンモニウム塩又は溶媒、例えばメタノール、アセトン、イソプロピルアルコール、パラトルエンスルホン酸、これらの塩、及びこれらの混合物で処理/洗浄することで、合成されたポリマーの組成物の導電率が約5桁増加することがある。理論に縛られるものではないが、洗浄による導電率の増加は、過剰DNNSAの除去、ポリマーの緻密化、またこの結果としての結晶化度の増加によるものである。
【0040】
<ポリアニリンジノニルナフタレンスルホン酸塩の製造例>
0.1モルのDNNSA(2−ブトキシエタノール中の50%w/w溶液)を0.06molのアニリンと200mLの水とに混合して、2−ブトキシエタノールを含む乳白色のエマルジョンを形成した。このエマルジョンを、5℃に冷却して機械的に攪拌し、窒素雰囲気置換した。前記混合物に約1時間かけてペルオキシ二硫酸アンモニウム(40mLの水中に0.074mol)を滴下した。この反応を約17時間進行させた。この間に、エマルジョンが緑色の2−ブトキシエタノール相と無色の水相とに相分離した。合成の進行度は、pHとOCP(開放回路電位、mV)と温度で追跡した。
【0041】
得られた有機相を100mLの水で三度洗浄し、2−ブトキシエタノール中に高濃縮された暗緑色のポリアニリン相を得た。この濃縮物はキシレンに可溶であった。この溶液から薄膜組成物の塗布が可能である。前記の濃縮物の一部にアセトンを添加すると、ポリアニリン塩が緑色粉末として析出した。この粉末をアセトンで徹底的に洗浄して乾燥した後、元素分析した結果、スルホン酸:アニリンの化学量論比は1:2であった。
【0042】
出発混合物中のアニリンのDNNSAに対するモル比を調整して合成ポリマー中のPANI:DNNSAモル比を変えてもよい。例えば、ペルオキシ二硫酸/アニリンモル比率を1.23:1と一定にして、DNNSA/アニリンモル比を1:1、1:2と1:5としてPANI:DNNSA塩を合成してもよい。DNNSA/アニリンモル比率が1.7で、Mw(SEC/粘度)値の31,250が得られる。DNNSA/アニリンモル比率が0.5で、Mw(SEC/粘度)値の25,300が得られる。DNNSA/アニリンモル比率が0.2と低いと、Mw(SEC/粘度)値の5,690が得られる。
【0043】
<分子量測定>
分子量分布平均は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定できる。クロマトグラムは、SECシステムで得ることができ、例えば、150−CV型SEC/粘度測定(SEC/VISC)システム(ウォーターズクロマトグラフィー社:Waters Chromatography Inc.)や、590型ポンプと712型オートインジェクター、410型示差屈折計、TCH型カラムヒーターを供えて複合SECシステム(ウォーターズクロマトグラフィー社)により得られる。両SECシステムは、45℃で運転でき、平均透過度が105と103Åである二本のスチラゲルSECカラム(styragel SEC columns)(ウォーターズクロマトグラフィー社)を直列に使用することができる。0.02MのNH4HCO2(フルカケミカル社:Fluka Chemical Co.)で変性されたUVグレードのN−メチルピロリドン(NMP)(バーディック・アンド・ジャクソン社:Burdick & Jackson Co.)を、移動相とポリマー溶媒として使用してもよい。流速の設定値として0.5mL/minを使用できる。
【0044】
SECの校正は、分子量が1.1×106〜2698の範囲の単分散ポリスチレン標準試薬(東ソー株式会社)で行うことができる。ポリスチレン校正試薬の固有粘度は、前記SEC/粘度検出器で測定してよい。これらの値は、ユニバーサルキャリブレーション(universal calibration)によるサイズ排除クロマトグラフ校正用の、NMP/0.02M−NH4HCO2中のポリスチレンに対する45℃でのマーク・ホーウィンク式(Mark-Houwink expression)を与える。
【数1】
【0045】
ユニバーサル校正曲線又はポリスチレン系の分子量校正曲線を作るのに、線形最小二乗法を用いてもよい。
【0046】
ポリアニリンに対するマーク・ホーウィンク定数は、設定された分子量分布平均とSEC/VISCクロマトグラムの個々のデータ点に計算された固有粘度とから計算することができる。データの取得と整理は、TRISECソフトウェア(ビスコテック社:Viscotek Corp.)で行うことができる。報告された分子量分布平均は、二回の測定の平均であってもよい。
【0047】
脱プロトン化ポリアニリン塩のSEC/VISCクロマトグラムは、典型的には単峰形(unimodal)であり、PANIとそのスルホン酸成分との間でベースライン分離に近い解像度が得られる。スルホン酸成分は、ポリアニリンピークから分離され、分子量計算には含まれない。少なくとも1つの態様において、これらのポリアニリン塩が、Mw/Mn(多分散性)が>1.5のブロードなサイズ排除クロマトグラムを与える。PANI−DNNSA(1:2)のマーク・ホーウィンク(M−H)プロットは、線状であり、R=0.671であり、logK=−3.146であった。
【0048】
<吸収>
吸収の測定は、大気下で汎用の測定付属品(UMA:Universal Measurement Attachment)を用いCary5000スペクトロメータで行うことができる。溶液試料は、1cmの石英キュベット中でトルエンの希薄溶液として測定できる。サンプリング周波数は、測定する波長幅によるが1nmと2nmの間であってよい。試料測定の前に溶媒のバックグラウンドを測定し、後でそれを除く必要がある。乾燥フィルムの測定は、ガラススライド上にスピン回転速度が1000rpmで30秒間、キシレン又はトルエンの溶液からスピンコートし、このようにして得られた試料として測定できる。ガラス基材上でバックグラウンド透過を測定する必要がある。不均一な試料表面からの光散乱効果を最小に抑えるために、試料をガラス基材側とともに光の導入口に向けて配列する必要がある。
【0049】
<抵抗値>
抵抗値の測定は、電極と測定装置、例えばケースレー4200SCS(Keithley 4200SCS)とを適切に組み合わせて実施できる。抵抗値の測定はファンデルパウの方法(van der Pauw method)を用いて行うことが好ましい。この四点法は、試料表面を横断する電流と電圧の平行的なソース・センス測定を行う。二極性をテストするため各接点に加わる電流と電圧の極性を切り替える。試料の直接比較を可能とするために、試料の形状を一定とする必要がある。表1と図1に示すように、電荷方向性の差を考慮して、可能な配列のそれぞれで電流と電圧の測定を回転切替させる。図1は、抵抗値測定に可能な電極配列を示す。

【表1】
【0050】
ファンデルパウ抵抗値の測定は、二枚の隣接する電極間に電流を流し、電極に平行な配列にある試料による電圧降下を測定して行った。
【0051】
シート抵抗は、測定組成物からのVとIの比から計算できる。真に等方的な抵抗を示す試料の場合、RA=RB=RC=RDである。等方的な抵抗(例えば、RA=RBのような)の場合、シート抵抗は、下の式1に示されるように、二つの測定された抵抗値の平均により決められる。異方的な抵抗を持つ(x方向とy方向が異なる抵抗値を示す)試料の場合、シート抵抗の計算がより複雑となる。これについては、次の段落で説明する。RA≠RCでRB≠RDである試料はすべて、測定を行わなかった。式2は、組成物の厚みdが既知の場合(典型的に抵抗率はΩ・cmで報告され、d(cm)を使用する)の、バルク抵抗率ρの決定方法を示す。なお、これは元のファンデルパウの定理から導かれるものである。次いで、バルク抵抗率ρを用いて、導電率σ(S・cm−1)を計算する。これはバルク抵抗率の逆数である(式2)。
【数2】
【数3】
【0052】
A≠RBの場合、ファンデルパウ式から導電率値を得るのがより難しくなる。導電率が等方的でない場合、前記導電率値は、xとyとzの次元を持つテンソル値となる。非常に薄い組成物の場合、正確な導電率値は、下の式3に示すように、直行する導電率測定値の積の平方根を計算して得ることができる。この計算は、測定方向が導電率のテンソル軸に整列している場合にのみ有効である。図2に示すように、前記方法で測定された二つの抵抗値の大きい方が最低導電率テンソルに正確に沿うものであり、抵抗測定値の小さい方が最大導電率テンソルに沿うものであると仮定したものである。図2に、ファンデルパウ測定チップの一例を示す。図2の右側に示すように、導電率テンソルが電極/試料の配置にうまく整列していない場合、不正確な導電率値が得られることとなろう。
【数4】
【0053】
図2のファンデルパウ測定チップでは、数字が測定軸に対応し、σXの記号(σA、σB、σC)が導電率テンソル方向を示す。右側の図の試料のように、試料軸とテンソル軸が一致しないと、不正確に測定された導電率が与えられることとなる。ファンデルパウ・プリント電極とケースレー4200SCSの組み合わせが、試料の測定に適当な装置テストベッドを提供する。
【0054】
測定への湿度の影響を抑えるために、ドロップセンス(Dropsens)組み立て式電極上で正確なファンデルパウ測定を行うために、ケースレー4200SCSにきっちりと結合させるのに小さな試料プローブステーションを使用してもよい。
【0055】
<電気化学インピーダンス分光法(EIS)>
EISでは、異なる周波数での試料のインピーダンスの変化を調べるために可変周波数交流源を使用する。抵抗体と同様に、インピーダンスは、印加される交流と測定される電圧変化の間の遅れである。電気回路の部品は周波数に依存して応答するが、これを測定対象塗膜に特異な特性を見つけるのに使用できる。真のオーム抵抗体は、直流(DC)源と交流(AC)源に同様に応答し、このため周波数依存性の抵抗応答を示さない。キャパシター(また、より複雑な電気部品)は、周波数依存性の応答をもつ。低周波数ではインピーダンスが非常に高く、高周波数では電気インピーダンスが低い。EISデータの解析においては、予測モデル(等価回路モデルとして知られる)は、厳密に試料システムを近似するため、真正電気部品と疑似電気部品とから構成される。次いで、このモデルで計算されるインピーダンススペクトルが、測定されたスペクトルと比較される。
【0056】
組成物のインピーダンス応答とそのキャパシター及び抵抗体としての複合応答を測定してよい。フィッティングをよくするために、フィッティングを、ガムリー内蔵スペクトルフィッティングソフトウェア(Gamry built in spectral fitting software)を用いて得ることができる。このガムリープログラムは、χ2フィッティング式(式4)を使用する。
【数5】
【0057】
完全にマッチした予測及び測定インピーダンススペクトルの場合、χ2=0となる。少なくとも1つの態様において、χ2の値が<10-4なら、許容可能な「良いフィッティング」となる。少なくとも1つの態様において、二つの異なる等価回路モデルを比較するにあたり、この数値の1/3より小さな差は、区別不能とみなされる。
【0058】
<ポリマー組成物>
本開示の組成物は、第1ポリマーと第2ポリマーを混合して作ることができる。また、スルホン酸を、第1ポリマー及び/又は第2ポリマーと混合してもよい。本開示の組成物は、硬化処理、及び/又は、イソプロピルアルコール及び/又はパラトルエンスルホン酸などの洗浄剤で洗浄処理した組成物を含む。
【0059】
本開示の組成物は、表面、例えば輸送体部品の表面に、浸漬、吹き付け、ブラシコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、ドクターブレードコーティング、あるいはこれらの併用などの任意の適当な方法で塗布してもよい。輸送体部品表面への塗布前にあるいは塗布後に、この組成物を硬化させてもよい。例えば、組成物を、輸送体部品に塗布してもよい。塗布後、この組成物を約70℃で約3〜約4時間加熱して組成物を硬化させてもよい。この硬化プロセスを早めるためにさらなる高温を使用してもよい。硬化により、組成物の1つ以上の溶媒、例えばキシレン類、トルエン、及び/又は水が揮散する。
【0060】
<微細構造と組成物の厚み>
組成物の厚みは、白色光干渉分光法により、カットステップ高さから求められる。組成物表面の微細構造は、いずれか適当な3Dレーザー走査型共焦点顕微鏡により、例えばキーエンスVK−X(Keyence VK-X)により観察できる。
【0061】
〔実施例1:PANI:DNNSA+ポリウレタン〕
実施例1の組成物を表2に示す。成分Aは、二個以上のヒドロキシル基をもつポリオールである。成分Bは、二個以上のイソシアネート基をもつイソシアネートである。成分Cは、キシレン及び/又はトルエンで固体含量が約8%にまで稀釈されたPANI/DNNSAである。

【表2】
【0062】
<実施例1の混合方法>
PANI:DNNSA濃縮物をキシレン又はトルエン中で百分率固体含量を約8%にまで稀釈して、成分Cを得た。成分Cを成分Aとよく混合して実質的に凝集物又は粒子を含まない均一な溶液として成分A/成分Cの混合物を得た。次いで、成分Bをこの成分A/成分Cの混合物に添加してよく混合した。実施例1のPANI:DNNSA濃縮物はキシレン又はトルエン中で百分率固体含量を約8%にまで稀釈したが、少なくとも1つの態様において、ポリマーが溶媒中に百分率固体含量として約0.1重量%〜約30重量%、例えば約1重量%〜約15重量%で存在する。イソシアネートには、アリールイソシアネートと脂肪族のイソシアネート、脂環式イソシアネートが含まれる。少なくとも1つの態様において、イソシアネートが、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、及びこれらの混合物を含む。ポリオールには、アリールポリオールと脂肪族ポリオール、脂環式ポリオールが含まれる。少なくとも1つの態様では、ポリオールがC1−C15のポリオールを含む。少なくとも1つの態様において、成分Aと成分Bが合成されるか、アプテク社(Aptek)(例えばアプテク2100:Aptek 2100)、ハンツマン・コーポレーション(Huntsman Corporation)(例えば、ハンツマン5750:Huntsman 5750)、BASF、バイエル社(Bayer AG)などから商業的に入手される。
【0063】
<実施例1の用途>
実施例1の組成物は、基材表面、例えば輸送体部品の表面に、浸漬、吹き付け、ブラシコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、ドクターブレードコーティング、又はこれらを併用して塗布される。塗布の後、この組成物を約70℃で約3〜約4時間加熱して組成物を硬化させる。少なくとも1つの態様において、硬化プロセスを早めるためにさらに高い温度が使用できる。
【0064】
組成物を硬化させると、溶媒(トルエン、キシレン等)が蒸発して、溶媒が残した適当な空隙を持つ制御された架橋状態にあるポリマーが得られる。
【0065】
図3に、可視近赤外領域でのPANI組成物の吸収を示す。ライン302は、PANI:DNNSA:PTSAを含む組成物の吸収を示し、ライン304は、PANI:DNNSAを含む組成物の吸収を示す。図3に示すように、約500nmでの鋭いピーク(ライン302とライン304のピーク)は、バイポーラロン吸収(bipolaron absorption)に相当し、約1000〜2500nmのブロードな吸収は、移動性空孔による赤外吸収の結果である。約500nmのPANIの鋭いピークは、DNNSAカウンターイオン(counterion)をもつポーラロン(polaron)に起因するものである。スペクトルの自由キャリア部分、すなわち赤外領域にまで移動するS字状の部分は、自由キャリアテール(free carrier tail)と呼ばれ、ポリマーの導電率に関わっている。小さな自由キャリアテール(又は自由キャリアテールの不存在)は、ポリマーが(あるとしても)低い導電率を持つことを示す。図3に示すように、PANI:DNNSA:PTSAを含む組成物の自由キャリアテール(ライン302)はPTSA不存在下でのPANI:DNNSAを含む材料の自由キャリアテール(ライン304)より小さい。
【0066】
ドープされたPANIの組成物(例えば、ライン304)は、赤外ウインドウでの非常にブロードなスペルトル特性、例えばキャリアテールがあることにおいて、溶液のもの(ドープされたPANIが不存在下)と異なる。可視領域でのバイポーラロン的な吸収特性は、溶液吸収中のそれと同一の構造物に由来するものであるが、約0.45eVだけブルーシフトしている。理論に縛られるものではないが、このシフトは、鎖間相互作用、例えば隣接するポリマー鎖の上で発色団ダイポールの平行整列によるH型の凝集(これは発光分光法で観察可能である)によるものである。
【0067】
〔実施例2:アクリレートポリマー中のPEDOT:PSS〕
PEDOT:PSSは、水やDMSOなどの極性溶媒に可溶なポリマー系である。この溶解性のため、エポキシ及び/又はポリウレタンなどの第2ポリマーとともに、水溶性分散液を与える。
【0068】
実施例2の抵抗値は、約500Ω/□から始まり、薄さを維持したままで、第三層により約100Ω/□にまで低下する。PEDOT:PSSの含有量が少なくてもこの組成物は静電除去用途に利用可能である。組成物の抵抗値をさらに下げるためにPEDOT:PSSの濃度を上げることもできる。少なくとも1つの態様において、組成物は、約0.1重量%〜約50重量%、例えば約1重量%〜約25重量%、例えば約1重量%〜約10重量%、例えば約5重量%のPEDOT:PSSを含む。
【0069】
図4に、PEDOT:PSS組成物の抵抗値/厚みを示す。図4に示すように、PEDOT:PSSの抵抗値(ライン402)は暗青色の組成物の約70〜80Ω/□と低く始まり、厚みが増えると低下して暗青色の組成物で約6μmの厚みにて約20Ω/□へと減少する。
【0070】
<抵抗値低下のための洗浄>
本開示の組成物は、例えば表面へ塗布後で硬化の前又は後に、1つ以上の洗浄剤で洗ってもよい。洗浄剤には、イソプロピルアルコール(IPA)やパラトルエンスルホン酸、アセトン、メタノール、これらの塩類、これらの混合物が含まれる。少なくとも1つの態様において、組成物が基材に塗布され、1つ以上の洗浄剤を含む溶液中に浸漬される。少なくとも1つの態様において、洗浄は、基材に塗布された組成物の表面への洗浄剤の吹き付けを含む。少なくとも1つの態様において、洗浄剤が約1秒〜約10分、例えば約30秒〜約2分の間、組成物の表面に噴霧される。少なくとも1つの態様において、洗浄剤が、組成物の表面上に、約1mL〜約25kLの量、例えば約100L〜約1kLの量で噴霧される。少なくとも1つの態様において、ある用途にはより大きな抵抗値をもつ組成物が適当であることがあり、したがって洗浄剤による洗浄を省いてもよい。例えば、無洗浄のPANI:DNNSA塗膜の抵抗値は、特定の用途には十分であり、このPANI:DNNSA又はPANI:DNNSA塗膜を無洗浄のまま硬化させることができる。
【0071】
IPA洗浄は、例えば、過剰の酸、例えばDNNSAのいくらかを除去する。酸の除去により、組成物のポリマー鎖間の接触を増加させ組成物の抵抗値の低下を促進する。洗浄剤による洗浄はさらに、その組成物のいろいろな溶媒への溶解度を増加させる。この溶解度の増加により、無洗浄の組成物と比べるとより少量の溶媒が塗布に使用されるため、組成物の基材への塗布が容易となる。塗布に必要な溶媒の量が低下すると硬化時間が短縮され、製造コストが低下する。
【0072】
EISが、PANI組成物のインピーダンスに対する洗浄剤での洗浄の効果の定量化するために使用された。組成物の容量性は、追加的な洗浄(例えば、浸漬)により低下し、IPAに浸漬した場合が最も低くなり、PTSA/PTSA溶液に浸漬した場合が次に低くなる。エポキシ組成物中に導入されたPANI:DNNSAを含む材料は、洗浄を施すことにより、導電性組成物として有望となる。また、PEDOT:PSSは、(典型的なPANI:DNNSAと比べて)より低い投入量で導入しても、導電性組成物を製造することができる。
【0073】
〔実施例3:IPAで洗浄したポリウレタン中の40重量%のPANI:DNNSA〕
図5Aは、PANI:DNNSA(ポリウレタン中40%)の抵抗値/組成物厚みを示し、図5Bは、PANI:DNNSA(ポリウレタン中40重量%)をIPAで洗浄した場合の抵抗値/組成物厚みを示す。図5Aに示すように、IPAで洗浄されていないPANI:DNNSA(ポリウレタン中40%)を含む組成物(ライン502と504と506)の抵抗値は、厚みが約3μm〜約5μmでMΩ/□である。しかし図5Bに示すように、IPA洗浄の後のこれらの組成物の抵抗値(ライン508と510と512)は、IPA洗浄により、厚みが約2μm〜約5μmで実質的にkΩ/□に低下する。図5Aと5Bに示すように、組成物厚みが増加すると、組成物の抵抗値(ライン502、504、506、508、510及び512)もまた低下する。
【0074】
〔実施例4:いろいろな洗浄剤で洗浄されたPANI:DNNSA〕
図6に、未処理のPANI:DNNSA組成物(neat PANI:DNNSA composition)の、インピーダンス/周波数特性としてプロットしたインピーダンススペクトルのボード線図(Bode plot)を示す。図6用のデータはEISにより決定した。浸漬処理は、前記洗浄剤への浸漬又は二次ドーパント処理からなり、各々について10秒間行った。図6に示すように、インピーダンスは、無洗浄のPANI:DNNSA(ライン602)とパラトルエンスルホン酸(PTSA)で洗浄したPANI:DNNSA(ライン604)が最高であった。IPAで洗浄したPANI:DNNSA(ライン606)は、ライン602と604の組成物と比較して低いインピーダンスをもつ組成物を与える。また、IPAで洗浄し、空気乾燥し、次いでブトキシエタノール中1%のPTSA/PTSAM溶液で洗浄したPANI:DNNSA(ライン608)は、ブトキシエタノール中1%のPTSA/PTSAM溶液で洗浄し、空気乾燥し、次いでIPAで洗浄したPANI:DNNSA(ライン610)より、また、ライン602と604と606の組成物より小さなインピーダンスを与える。
【0075】
図6に示すように、PANI:DNNSA組成物で測定された高いインピーダンス(y軸:Ω)は、高いDC抵抗率と同様である。各組成物の出発点となる無洗浄の試料(ライン602)では、周波数が増加するとインピーダンスが大きく低下する。これは、リーキーキャパシターモデル(leaky capacitor model)に特徴的なものである(高結晶性領域間の高R領域によりトリクルスルー電流(trickle through current)が制限される)。
【0076】
組成物インピーダンスのレジスターとリーキーキャパシターとしての作動から真に抵抗システムとしての作動への変化は、この浸漬が、図6に示すように、(孤立したPANI結晶アイランドではなく)より相互結合したポリマーシステムを生成させ、このためにPANIの領域間の電子移動に対して、より小さな抵抗を生成させているという観察に一致する。PANIの高導電性領域間の距離収縮は、このため、EISデータへのRp値の一致を低下させる。このことは、二次浸漬、例えばIPAの後のPTSA浸漬で起こる組成物の収縮(厚み)を考えるとこのことがさらに支持される。
【0077】
図6に含まれていない1つの試料は、DNNSAのIPA溶液に浸漬された組成物であり、これは非常に低い(約1Ω)またフラットなインピーダンスを持っている。このため、この組成物は非常に導電性であり、真に、CPE特性を持たない導体として応答する。この組成物はその無浸漬前駆体より導電性が高いが、EISが示すように、これが実質的に優れているのではない。
【0078】
図7は、櫛型電極上に塗布されて洗浄剤で処理されたPANI:DNNSA組成物の導電率を示す棒グラフである。図7に示すように、無洗浄のPANI:DNNSA(棒602)は、IPAで洗浄したPANI:DNNSA(棒606)や、PTSAで洗浄したPANI:DNNSA(棒604)、IPA次いでPTSAで洗浄したPANI:DNNSA(棒608)、PTSA次いでIPAで洗浄したPANI:DNNSA(棒610)、DNNSAとIPAの混合物で洗浄したPANI(702)、チモール洗浄物(Thymol rinse)(棒704)と比べて低い導電率をもつ。このように、本開示の組成物のインピーダンスと導電率は、組成物の表面に洗浄剤を塗布することで望ましいインピーダンスと導電率に一致させられる。
【0079】
〔比較例:PANIPOLとPANIPLAST〕
PANIPOLは、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)でドープされた高導電性ポリマー(PANI:DNNSAとは異なり組成物洗浄の前)であり、トルエンに少し可溶で、ポリウレタン塗液中で使用可能である。PANIPOLを含む組成物は、トルエンとキシレン中のポリマー分散物から形成できる。これらの分散物のシート抵抗はそれぞれ12.8と16.2Ωである。このポリマーは、複数の溶媒、例えばキシレン類やトルエンにほんの少し可溶であり、このため塗布すると基材上に粗い組成物を与える。これらの組成物の表面粗さは、PANIPOL組成物の「耐空性」を損なうこととなる。これは、これらの組成物がクラッキングを受けやすく、下層/基材が化学的損傷やUVによる損傷を受けやすくなるためである。図8に、トルエン溶液の形態で塗布形成したPANIPOL組成物の抵抗値(kΩ)/アニーリング温度を示す。図8に示すように、アニーリング温度の上昇で、PANIPOL組成物の抵抗値が上昇する(データポイントを黒ダイアモンド印で示す)。
【0080】
PANIPOLの合成に、PANI:DBSAの不溶性絶縁性粉末の単離が含まれていてもよい。あるいは、PANIPOLの合成に、溶液からポリマーを沈殿分離するのでなく、p−キシレンから溶解ポリマーの組成物を塗布することが含まれていてもよい。通常これらの組成物のシート抵抗値の測定値は、数kΩ〜数百kΩである。
【0081】
上述のPANI:DNNSA合成に類似した2−ブトキシエタノール中での合成試験において、ポリマーが溶液から完全に乾燥させられた(キシレン溶液から沈殿分離するのでなく)。しかしこれらの固体はいろいろな溶媒に不溶であることが分かった。しかしながら、多量のキシレンに再懸濁し濾過により単離すると、この組成物は、市販のPANIPOLとよく似ており、14Ωの組成物として利用された。
【0082】
この合成PANIPOLは、市販のPANIPOLより導電率が低いかもしれない。これは、溶液から水中にポリマーを投入すると、臨界量のカウンターイオンとDBSAが除かれるためである。もう1つの合成は、ポリアニリンベースを作成し、次いでDBSAで再ドープするように設計された。この合成により、十分に導電性のあるポリマーペーストが得られた。これらの組成物の導電率値を表3に示す。

【表3】
【0083】
市販のPANIPOLは、トルエンに少し可溶であり、トルエン中に懸濁させ、溶解ポリマーをデカンテーションで除いて分離できる。この溶液を稀釈し、上述のように新たに懸濁されたPANI:DBSAの高稀釈濾過溶液の吸収と比べた。PANIPOLは、新たに合成したPANI:DBSAよりも高いエネルギーで吸収する。その吸収ピークはまた、新たに合成したPANI:DBSAよりブロードであり、ドーパントの消失を示唆した。単独ドープポーラロン状態は、Ω1eVの低いエネルギー吸収と、CB−Ω1の状態への光学的に許容される遷移を引き起こし、ダブルドープバイポーラロンは、Ω1’の少し高いエネルギー吸収を持つ。このように、この吸収を考えると、PANI:DBSAフィル(PANI:DBSA fill)での低エネルギー遷移へのブロードニング(broadening)は、バイポーラロン遷移のいくつかの単独ポーラロンへの変換(脱ドープ)であると考えてよい。これは、この材料がDBSAを失い、これが導電率の差の原因であることを意味するのであろう。
【0084】
PANI:DBSA組成物を洗浄してみたが、表4に示すように、ほんの小さな導電率の増加が観測されたのみである。なお、水浸漬試料は高抵抗値材料である。組成物の水中での処理は大きな変化を示したが、これもまた、水に可溶なDBSAの除去によるものと考えられる。

【表4】
【0085】
PANIPOLと同様に、PANIPLASTは、ポリアニリンとポリアミン/アミドドーパントとを含む組成物である。PANIPLASTもまた、エチレングリコールやキシレン、水、メタノールへの溶解度に制限がある。PANIPLASTは、0.25ミクロンフィルターでは濾過が難しい懸濁液である。PANIPLASTのような塗膜は導電性ではあるが、表面をブラシでこする必要がある。6.4グラムの水中の7.7グラムの懸濁液から形成された塗膜を、4インチ×6インチのパネルに塗布し、70℃で乾燥させた。このPANIPLASTは、約1kΩ〜約2.2kΩの抵抗値を与えた。
【0086】
全体として、この塗布されたPANIPOLとPANIPLAST組成物の粗さが、これらの組成物の「耐空性」を低下させる。これは、これらの組成物がクラッキングを受けやすく、このため下層/基材が化学的損傷やUVによる損傷を受けやすくなるからである。また、PANIPOL組成物の洗浄は、ほんの少し組成物の抵抗値を低下させるだけで、組成物の密度を増加させない。
【0087】
〔実施例5:ポリアニリンをエポキシ中に〕
従来の表面塗膜は、下層の表面及び/又は表面塗膜の他成分の混合したポリマーとの親和性に欠ける。例えば、エポキシ樹脂は多くの望ましい物理特性を持つが、それでも多数の求核性化合物、例えばPANIなどのアニリンと反応する。望ましくない反応性の結果、副産物の析出及び/又は凝集が起こる。反応性種、例えばポリアニリンを、適合した溶媒へ溶解すると、分散性を改善し、これが、反応性の表面及び/又は反応種と混合されたポリマー、例えばポリウレタンとの望まざる反応を減少させることが明らかとなっている。反応種の溶解は、輸送体部品の表面に設けられうる適合した耐空性のある組成物の形成を促進する。このことは、耐空性のための所望の物理特性を持つことに加えて、表面塗膜の周辺の材料との適合性が重要であることを示す。ポリアニリンに適当な溶媒には、キシレン類、トルエン、ベンゼンや、これらの混合物が含まれる。PEDOT:PSSに適当な溶媒には、高極性プロトン性溶媒(例えば水)やDMSOが含まれる。
【0088】
例えば、PANI:DNNSAが、高温硬化型エポキシに混合された。溶液を手作業で混合し、次いで1000rpmのシンキーミキサー(Thinky mixer)に10分間かけた。PANI:DNNSAが、可視的に、エポキシ溶液(非常に低粘度の溶液)から析出してきた。溶液を、4−pt電極(電極間隔が2mm、長さが6mm)上に滴下塗布し、120℃の大気下で1時間乾燥させた。単純な2点抵抗値測定を行い、組成物の厚みを測定して、組成物の抵抗率を計算した。図9に、いろいろな洗浄剤で処理されたエポキシ塗膜中のPANI:DNNSAの抵抗率とエポキシ中の百分率PANI含有量を示す。図9に示すように、PANI:DNNSA:エポキシ組成物の抵抗率は、塗布直後の組成物(黒丸)からIPA浸漬組成物(白丸)、IPA浸漬組成物でさらにPTSA浸漬したもの(黒四角)、IPA洗浄でさらに第2のIPA洗浄したもの(白四角)と減少する。
【0089】
二次処理の前に、PANI:DNNSA:エポキシ組成物は、ポリマー添加量と導電率が関係するという明白な傾向を示さない。PANI:DNNSA添加量が約20%で二次処理がない場合でも、いくつかの静電除去塗膜では、導電性が十分な導電率閾値内に入ることがある。組成物をIPAに浸漬すると、これらの組成物は、PANI:DNNSA添加量の増加につれて導電率が増加する傾向を示す。
【0090】
また、PTSA浸漬の後で、PANIを含まないエポキシ塗膜で、測定可能な導電率が得られた。これは電気伝導性によるものでなく、イオン伝導性によるものであろう。
【0091】
硬化エポキシ塗膜中でPANI:DNNSAは移動可能であるのかもしれない。組成物の処理、例えば浸漬により、より高い組成物導電率を得ることができる。理論に縛られるものではないが、このPANI:DNNSA:エポキシ塗膜の増大した導電率は、過剰のアニリン、DNNSAの除去及び/又は塗布組成物の微細構造への洗浄剤で誘起された変化によるものかもしれない。
【0092】
ポリアニリンのエポキシとの反応性を加減するもう1つの方法は、ポリアニリンをエポキシ表面にゆっくりと添加し、次いで最終の硬化温度に至るまでゆっくりと硬化温度を上げることである。全体としてPANI:DNNSAのエポキシとの反応性は、ピーク硬化温度及び/又は硬化時間によりさらに制御し得る。
【0093】
〔実施例6:ブトバーB90中の熱可塑性樹脂:PANI:DNNSAとブトバーB90中のPEDOT:PSS〕
ブトバーB90(Butvar B90)は、下式のように、ポリビニルブチラール(PVB)とポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルを含むトリブロックポリマーで、式中、x、y、zは、それぞれ正の整数である。
【化7】
【0094】
ブトバーB90を熱可塑性塗膜中の基本樹脂として用いてもよく、また熱硬化性材料と混合して熱硬化性樹脂を作ってもよい。実施例6では、PVBをPEDOT:PSSとPANI:DNNSAに混合し、表面抵抗(Ω/□)と鉛筆硬度を測定した。多数の試料には、また、ブトバーB90のアルコール基と反応する反応性エポキシ成分(例えば、EPON1007−CT−55:ジグリシジルエーテルビスフェノールA)が添加されており、これが塗膜に強度を与えている。
【0095】
PVBの溶液は、10重量%のPVBを、事前調製した40/60のメタノール/トルエン溶液に溶解して調製した。平底ジャーにテフロンコートした金属撹拌子を加え、そこで溶解するまで室温で1〜3時間攪拌した。
【0096】
試料は、PVB溶液をフラスコに入れ、EPON又はH3PO4をいくらか加え、シンキーミキサー又はボルテックスミキサー(vortexer)で混合し、30分間静置して調製した。特定の添加量のPANI:DNNSAを添加し、試料をボルテックス混合した。次いで、この塗液をガラススライド上に小さな塗料ブラシで塗布して試料を作成した。
【0097】
初期の組成はPEDOT:PSSで始めた。これらはすべて非常に高い抵抗値を示す塗膜であった。このB90/EPON/界面活性剤混合物にPANI:DNNSAを20重量%の量で添加すると、抵抗値は3.3MΩとなった。続く試験で他の組成物も試験した。試験した組成物を、下表5に示す。
【表5】
【0098】
したがって本開示の組成物の硬度は、1つ以上の組成物にポリビニルブチラールを含めることで調製でき、組成物硬度の増加により組成物の例えば表面塗膜の「耐空性」を少なくとも部分的に改善することができる。少なくとも1つの態様では、本開示の組成物は、約25重量%のPANI:DNNSAと約75重量%のポリビニルブチラール、例えばブトバーB90とを含む。少なくとも1つの態様では、本開示の組成物は、ポリビニルブチラール中に約6%のPANI:DNNSAを含み、EPON又はリン酸を含まない。
【0099】
〔実施例7:ゾル−ゲル中のポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)〕
PEDOTは、高い固有導電率を持つ導電性ポリマーである。これは、有機薄膜太陽電池中の電子選択的輸送材料として使用可能であり、静電気拡散性塗膜中で使用可能である。実施例7には、市販のPEDOT:PSSを、例えばアルクラッド表面(Alclad surfaces)用の接着促進前処理剤であるグリシジル−Si−Zr−含有ゾルゲル(glycidyl-Si-Zr-containing solgel)であるボーゲル(Boegel)に加えた。
【0100】
PEDOT:PSSを添加し、ボルテックスミキサーで混合して、このゾルゲルの新たに混合調製した溶液とした。高添加量のPEDOT:PSSのいくつかでは、このゾルゲルが速やかにゲル化したことから、このゾルゲルのエポキシ基と導電性ポリマーの間の反応が示唆される。
【0101】
図10は、組成物中に異なる量のPEDOT:PSSを含むPEDOT:PSS組成物の抵抗率を示す。図10に示すように、エポキシ系組成物の抵抗率(黒丸)は、PEDOT:PSSの量が増加すると急激に低下する。ゾル−ゲル系組成物(ボーゲル)の抵抗率(白丸)も、PEDOT:PSS含量の増加とともに減少するが、その程度は、エポキシ系組成物ほどシャープではない。
【0102】
このデータ中にいくつかの傾向が認められる。(1)PEDOT:PSSを含むエポキシは、ずっと小さな添加量閾値において測定可能な導電率を示す(16%未満のIPNを示す)。(2)純粋なPEDOTの導電率は、100S/cm近くである。(3)PEDOT:PSS試料は、二次処理(例えば、IPA洗浄)を必要とせず、導電性塗膜の形成に必要な添加量がずっと小さくなる。
【0103】
<エポキシ中の界面活性剤とPEDOT:PSS>
高温硬化型エポキシ樹脂を用いて、多数の市販の分散剤のPEDOT:PSSを分散させる効力を試験した。ルーブリゾール社(Lubrizol)製ソルプラスR700(Solplus R700)分散剤を含むエポキシ中の添加量レベルが0.1%〜2.0%であるPEDOT:PSSの試料と分散剤を含まない試料との比較を行った。全ての試料中のPEDOT:PSSに相分離が認められたが、ソルプラス含有試料は、粒子凝集が非常に減少した。ソルプラスR700を含む試料は、特に低添加量レベルで反応性が低い。
【0104】
<ある1つのPEDOT:PSS添加量レベル(1.0%)における分散剤の比較:>
比較対象の分散剤は、全てルーブリゾール社のものであり、ソルプラスR700とR710とDP700である。試料は上述のようにして調製した(実施例7)。R700とR710を含む試料は、最良のPEDOT:PSS分散性(目視)を示し、R710は、最も低い抵抗値(6.73MΩ/□)を示した。PEDOT:PSS水溶液では、R710は有機相塗膜樹脂中にポリマーを分散させるのに充分であった。
【0105】
塗布直後の組成物としてより高い導電率を与えるポリマーブレンドも検討した:エポキシ中のPANI:DNNSA−PTSA。これらの試料は、添加量レベルが0.02〜0.2%で調製されたが、いずれも測定可能な抵抗値を持たなかった。
【0106】
<多層スタック>
本開示の態様には、基材上に複数の層として形成されて多層スタックを形成する組成物が含まれる。少なくとも1つの態様において、多層スタックは、同一組成物で同一厚みの単層と比べて、全体として低い電気抵抗値を与える。多層スタックはまた、例えば輸送体部品の塗膜/表面に全体としてより大きな強度を与える。
【0107】
多層スタックは、一枚以上のポリマー層を含み、各層は独立して、PANI:DNNSA、PEDOT:PSS、ポリウレタン、アクリレート、ポリビニルブチラール、及びこれらの混合物から選ばれる。この一枚以上の層は、スルホン酸、例えばDNNSAを含む。
【0108】
多層スタックはまた、下に詳述するように、加熱層として、例えば除氷のための加熱層として使用するための一枚以上の導電層を与える。少なくとも1つの態様において、多層スタックは、導電層の上に設けられた外部保護層を含む。本開示において、「外部」層は、この外部層の上に他の層が設けられていない層であり、外部環境に直接露出されている層である。
【0109】
〔実施例8:多層スタック〕
実施例8は、四層の多層スタックであり、各層は、各層塗布後にIPAで洗浄されたPANI:DNNSAである。各々の塗布と洗浄後の多層スタックの厚みと表面抵抗値を、下表6に示す。IPA処理された試料では、100Ω/□より小さな抵抗値が達成された。
【表6】
【0110】
<組成物の用途>
本開示の組成物の用途の非限定例には、熱可塑性材料としての用途及び/又はプリプレグ材料の成分としての用途が含まれる。プリプレグ材料用途では、本開示の組成物は、グラファイトやガラス繊維、ナイロン、ケブラー(登録商標)等の材料(例えば、他のアラミドポリマー)、ポリエチレン等からなる繊維材料に塗布又は含浸することができる。
【0111】
本開示の組成物は、輸送体部品などの基材の表面に塗布することができる。輸送体部品は、航空機や自動車などにおけるパネルやジョイントなどの構造部品を含む。輸送体部品は、ノーズ、燃料タンク、テールコーン、パネル、2つ以上のパネル間の被覆ラップジョイント、翼と胴体部のアセンブリ、航空機複合構造材、胴体部ジョイント、翼リブと外皮のジョイント、及び/又は、その他の内部部品を含む。
【0112】
組成物は、基材の表面に、任意の適当な塗布法で、塗布することができる。限定的ではないが、塗布法には、浸漬、吹き付け、ブラシコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、ドクターブレードコーティング、及びこれらの併用が含まれる。本開示の組成物を、輸送体部品の表面などの基材に、例えば約0.1μm〜約20μm、例えば約1μm〜約10μm、例えば約1μm〜約8μm、例えば約2μm〜約6μmの範囲で塗布する。組成物の厚みは、塗布組成物の導電率や抵抗値の調整に利用される。組成物の厚みは、また、組成物や最終の塗膜基板の「耐空」性能(例えば、雨による浸食や砂や雹による傷害への耐性)をさらに調整するのに利用できる。
【0113】
組成物を基材に塗布した後、この組成物を、例えば溶媒を揮散させるため、いずれか適当な温度で硬化させる。硬化は、いずれか適当な硬化装置を用いて実施できる。硬化のためには、組成物の温度を徐々にピーク硬化温度にまで上げ、そのピーク硬化温度である期間維持する。ピーク硬化温度は、略室温〜約200℃であり、例えば約70℃〜約150℃であってよい。組成物は、約1秒〜約48時間、例えば約1分〜約10時間の間、硬化させてよい。
【0114】
<吹き付けによる基材上への組成物の塗布>
1つ以上のポリマー類を適当な溶媒(例えば、キシレン類、トルエン、水等)と混合し、基材上に十分な層厚となるまで噴霧して望ましい表面の抵抗を得る。この溶媒を、次いで室温で蒸発させ、硬化した組成物層を基材上に形成する。
【0115】
<スピンコーティングによる基材上への組成物の塗布>
組成物の厚みは、塗布組成物の導電率や抵抗値を精密に調整するのに利用することができ、そのために、例えば、PANI:DNNSAを基材に異なるチャック回転数(chuck rotations)でスピンコートする。図11に、スピン速度と組成物厚みとを示す。図11に示すように、未処理の組成物(黒丸)は、塗布スピン速度に大きく依存する。面白いことに、最終組成物の厚みの差異は、組成物を処理(洗浄剤に浸漬)すると低減する(白丸)。少なくとも1つの態様では、本開示の組成物は、約100rpm〜約4,000rpm、例えば約1,000rpm〜約3,000rpmのスピン速度にてスピンコーティングにより塗布される。
【0116】
図12に、基材上に塗布した直後のPANI:DNNSAフィルムの導電率と厚みを示す。導電率はまた、測定寸法に合わせたスクエア抵抗値として測定される。図12に示すように、導電率は、直線的な傾向をもち、塗布組成物の厚みの増加とともに上昇する(データ点は黒ダイアモンド印で表示)。また、洗浄剤で処理した(例えば、IPA洗浄)した試料での導電率と厚みの間の相関の欠如も観測された(図12に図示せず)。
【0117】
<除氷>
本開示の1つ以上の組成物を輸送体部品に塗布(必要なら硬化)すると、例えば過酷な気候条件の結果として1つ以上の部品上に氷が堆積する場合、この部品を「除氷」することができる。本開示の組成物は導電性であるため、この組成物を含む表面に電圧をかけると、当該表面の温度上昇が起こり、当該表面に堆積した氷の一部が溶融する。少なくとも1つの態様において、本開示の1つ以上の組成物を含んでいる表面に、電圧が印加され、表面に堆積した氷を完全に融解させる。少なくとも1つの態様において、本開示の1つ以上の組成物を含んでいる表面に、電圧が印加され、表面に堆積した氷の部分的な融解をもたらし、その結果、部分的に融解した堆積氷が輸送体部品から滑り落ちる。
【0118】
少なくとも1つの態様において、除氷は、本開示の1つ以上の組成物を含んでいる表面に、任意の適当なAC/DC電圧発生機を接触させて、当該1つ以上の組成物にAC電圧を印加することを含む。交流電圧発生機を、本開示の1つ以上の組成物(抵抗体として)を含む翼の表面に接触させると、少なくともその表面が抵抗加熱して、輸送体部品の一枚以上の層が抵抗加熱することになる。少なくとも1つの態様において、除氷は、航空機の発電部品により、本開示の1つ以上の組成物を含む表面に電圧を印加することを含む。例えば、航空機エンジンを作動モードにスイッチし、この航空機エンジンにより与えられるAC電力が航空機の表面に伝搬し、航空機の部品の1つ以上の表面を除氷する。これらの態様は、航空機に固有の除氷機能を与え、航空機部品の表面に外部電圧発生機を取り付ける必要がなくなる。
【0119】
少なくとも1つの態様において、方法は、約10ヘルツ〜約2000ヘルツ、例えば約200ヘルツ〜約600ヘルツ、例えば約400ヘルツの交流電圧を表面に印加することを含む。少なくとも1つの態様では、方法は、10ボルト〜約2000ボルト、例えば約100ボルト〜約400ボルト、例えば約200ボルトの交流電圧を表面に与えることを含む。方法は、交流電圧を一台以上の変圧器で調整することを含む。方法は、交流電圧を一台以上の整流器で直流電圧に変換することを含む。方法は、一台以上の発振器で直流電圧を交流電圧に変換することを含む。
【0120】
<レドーム等の静電気放電>
航空機中では、航空機のノーズの背後にレーダーが存在する。ノーズは、しばしば、プレシピテーションスタチック(precipitation static)(Pスタチック:P-static)と呼ばれるある種の静電気を蓄積させ、これが、レーダーに静電干渉を引き起こし、またブラシ放電現象を起こして航空機の外表面上の塗膜にダメージを与える。レーダーへの静電干渉の結果、航空機と地上の管制塔との間の通信への障害や空中の他の航空機の検出の障害が起こる。Pスタチックはまた、航空機の他の部品、例えばアンテナなどの部品に静電干渉を引き起こす。また、静電荷は、しばしば、航空機の燃料タンク内部に蓄積して燃料タンクの機能に悪影響を与えることがある。
【0121】
航空機が戦闘用ジェット機の場合、例えば、この戦闘ジェット機のキャノピー(canopy)が、しばしば静電荷を蓄積し、レーダーやアンテナに静電干渉を引き起こす。
【0122】
本開示の1つ以上の組成物を輸送体部品に塗布(必要なら硬化)すると、この1つ以上の組成物が、航空機のある位置、例えば航空機ノーズ、に蓄積したP−スタチックなどの静電気を、静電気的に放散させる。この静電気の放電により、航空機レーダーへの静電干渉が減少あるいは消失し、またブラシ放電現象が減少あるいは消失し、結果として航空機の外表面上の塗膜のダメージが減少又は消失する。本開示の組成物はさらに、航空機の他の部品、例えばアンテナなどの部品への静電干渉を減少あるいは消失させる。本開示の組成物が燃料タンクの内部に塗布されている場合、当該1つ以上の組成物が、燃料タンクの内部における静電荷蓄積を減少あるいは消失させる。
【0123】
<耐空性>
従来の塗膜は、蓄積電荷を放散できないことに加えて、「耐空性」があるとはいえない。例えば、航空機のような輸送体の表面の従来の表面塗膜では、雨による侵食、紫外光耐性、高温耐性、低温耐性、砂や雹によるダメージへの耐性などの耐久性パラメーターに関する性能が、不十分である。また、戦闘ジェット機のキャノピー(canopy)及び/又は民間航空機もしくは戦闘ジェット機の風防ガラス/窓における塗膜についていえば、これらの表面上の塗膜は、当該表面を介しての可視性を向上させるために、実質的に透明でなければならない。本開示の組成物は「耐空性」があり、(従来の塗膜と比べて)雨による侵食や紫外光耐性、高温耐性、低温耐性、砂や雹によるダメージへの耐性、可視性などの耐空性の1つ以上のパラメーターにおいて、改善されている。
【0124】
可視性についていえば、従来の塗膜は、可視光透過率が低い場合がしばしばある。可視光透過率は、材料を通過する、電磁スペクトルにおける可視部分の光の量である。可視効率が高いということは、材料を通過して隣接する空間に入る光の量が多いことを意味する。窓又はキャノピーの全体可視透過率は、グレージングの種類、ペイン(pane)の数、及び塗膜の種類によって、左右される。可視光透過率は、コーティングされていない無色透明なガラスの90%以上から、高反射コーティングが施された着色ガラスの10%未満まで、広範囲にわたる。本開示の組成物は、約50%以上、例えば約60%以上、例えば約70%以上、例えば約80%以上、例えば約90%以上の可視効率を実現する。
【0125】
また、塗膜の1つ以上の所望の物理特性、例えば導電率を向上させるために従来の塗膜を他の化学物質と混合する場合、この塗膜は、しばしばこの他の化学物質と相性がよくなく、塗膜に添加された他の化学物質の望ましい物理特性を阻害するものであった。従来の塗膜はまた、下層の表面/塗膜と親和性が悪く、塗膜−塗膜界面で接着の劣化を引き起こしていた。前述の用途や利点に加えて、本開示の組成物や方法は、静電気放電性で耐空性の材料を制御下で形成することを可能にする。
【0126】
本開示の組成物や方法は、少なくとも部分的には過剰な酸の除去や組成物の高密度化とこの結果としての電気的濾過のために、低抵抗組成物(いろいろな洗浄剤で洗浄されたもの)を与える。DNNSAを用いた結果とは反対に、組成物の塗布の前に過剰のDBSAを除去すると、高抵抗の組成物が得られる。
【0127】
PANIとPEDOT:PSSは、輸送体部品上に塗布される組成物中に配合可能な導電性ポリマーとして有望である。PVB(ポリビニルブチラール)を含む組成物のような本開示の組成物は、堅牢で、作業性がよく、目的の静電除去抵抗値を満たし、塗布しやすい。
【0128】
また、従来のイオン系塗膜と比べると、本開示の組成物や方法では、経時的な界面活性剤の溶出が低下する。これは部分的には、本開示の組成物中の界面活性剤の量が、従来のイオン系塗膜と比べて少ないからである。また、本開示のスルホン酸は、従来のイオン系塗膜の従来の界面活性剤より、材料から溶出する量がより少ない。
【0129】
また、従来のカーボンブラック充填コーティングに比べて、本開示の組成物及び方法は、経時的な抵抗性ドリフトを減らすことができる。従来の塗料は、塗料の導電性を高めるために、相当量の炭素添加剤(例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、C60フラーレン(C60-bucky ball)、グラフェンなど)を塗料に含んでいることが多い。本開示の組成物は、塗料内の炭素添加物を低減する又はなくすことにより、十分な導電性を維持しつつ塗料の全体重量を減らすことのできる組成物を実現している。
【0130】
本開示のいろいろな態様を、説明を目的として記述してきたが、これらは網羅的なものではなく、ここに開示の態様に限定されるのではない。当業者には、記載の態様の範囲から逸脱することなく多くの変更や改変が可能であることは明らかである。本明細書で使用した用語は、実施形態の原理や市場で認められる実用的な用途や技術改良を最もよく説明できるように選ばれており、あるいは当業者が本明細書に開示の態様を理解できるように選ばれている。
【0131】
本明細書において、「輸送体部品」は、輸送体における任意の部品、例えば、航空機、自動車などのパネルやジョイントなどの構造部品を含む。輸送体部品は、ノーズ、燃料タンク、テールコーン、パネル、2つ以上のパネル間の被覆ラップジョイント、翼と胴体部のアセンブリ、航空機複合構造材、胴体部ジョイント、翼リブと外皮のジョイント、及び/又は、その他の内部部品を含む。また、輸送体部品は、限定されることなく、自動車、船舶、ウィンドタービン、住居/地上構造物(housing/ground structure)、掘削装置などの任意の適当な部品も含む。
【0132】
本開示において、用語「組成物」は、限定されることなく、表面、例えば輸送体部品の表面に設けることができる混合物や反応生成物、フィルム/層、例えば薄膜を含む。
【0133】
他の態様を、以下の付記に記載する:
【0134】
付記1.第1ポリマーと、
第2ポリマーと、
ナフチルスルホン酸、アントラセニルスルホン酸、及び/又は、ピレニルスルホン酸と、を含む、静電気放散性組成物。
【0135】
付記2.前記第1ポリマーは、ポリアニリン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホネート)、又はこれらの混合物を含む、付記1に記載の組成物。
【0136】
付記3.前記第1ポリマーは、ポリアニリンである、付記2又は3に記載の組成物。
【0137】
付記4.前記第2ポリマーは、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート、エポキシ、グリシジル−Si−Zr−含有ゾルゲル、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリスルフィド、又はこれらの混合物を含む、付記1〜3のいずれか1つに記載の組成物。
【0138】
付記5.前記第2ポリマーは、ポリウレタン又はポリビニルブチラールである、付記1〜4のいずれか1つに記載の組成物。
【0139】
付記6.前記ポリビニルブチラールは、前記組成物の約10重量%〜約40重量%である、付記4又は5に記載の組成物。
【0140】
付記7.前記ポリアニリンは、前記組成物の約0.1重量%〜約25重量%である、付記1〜6のいずれか1つに記載の組成物。
【0141】
付記8.前記ナフチルスルホン酸は、ジノニルナフチルスルホン酸である、付記1〜7のいずれか1つに記載の組成物。
【0142】
付記9.前記第1ポリマーは、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)の混合物であり、前記混合物は、前記組成物の約1重量%〜約50重量%である、付記1〜8のいずれか1つに記載の組成物。
【0143】
付記10.前記第2ポリマーは、エポキシである、付記9に記載の組成物。
【0144】
付記11.前記組成物は、約50%より大きい可視光透過率を有する、付記1〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【0145】
付記12.グラファイト、ガラス繊維、ナイロン、アラミドポリマー、ポリエチレン、又はこれらの混合物を含む繊維材料をさらに含む、付記1〜11のいずれか1つに記載の組成物。
【0146】
付記13.付記1〜12のいずれか1つの組成物を含む、輸送体部品。
【0147】
付記14.前記輸送体部品は、ノーズ、燃料タンク、テールコーン、パネル、2つ以上のパネル間の被覆ラップジョイント、翼と胴体部のアセンブリ、航空機複合構造材、胴体部ジョイント、翼リブと外皮のジョイント、及び/又は、他の内部部品からなる群から選択される、付記13に記載の輸送体部品。
【0148】
付記15.基材と、付記1〜14のいずれか1つの組成物と、を含む部品であって、前記組成物は、厚みが約0.1μm〜約10μm、抵抗率が約1e+4Ω/□〜約1e+8Ω/□の層である、部品。
【0149】
付記16.溶媒中における固体含量が約0.1重量%〜約30重量%の第1ポリマー、
ポリオール、
イソシアネート、
スルホン酸、の1つ以上の反応生成物を含む、静電気放散性組成物。
【0150】
付記17.前記第1ポリマーは、ポリアニリン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホネート)、又はこれらの混合物を含む、付記16に記載の組成物。
【0151】
付記18.前記溶媒は、キシレン、ベンゼン、トルエン、ジメチルスルホキシド、水、又はこれらの混合物を含む、付記16又は17に記載の組成物。
【0152】
付記19.前記スルホン酸は、ナフチルスルホン酸である、付記16〜18のいずれか1つに記載の組成物。
【0153】
付記20.基材上に設けられる静電気放散性組成物の形成方法であって、
第1ポリマーと第2ポリマーとを混合して第1組成物を形成することと、
前記第1組成物を前記基材に塗布することと、
前記第1組成物を硬化させることと、を含む、方法。
【0154】
付記21.前記第1組成物を洗浄剤で洗浄することをさらに含む、付記20に記載の方法。
【0155】
付記22.前記洗浄剤は、イソプロピルアルコール、パラトルエンスルホン酸、アセトン、メタノール、これらの水和物、これらの溶媒和物、又はこれらの混合物を含む、付記21に記載の方法。
【0156】
付記23.洗浄することは、約1秒〜約10分の間、前記第1組成物の表面に前記洗浄剤を吹き付けることを含む、付記21又は22に記載の方法。
【0157】
付記24.洗浄することは、組成物の表面に、約1mL〜約25kLの量の洗浄剤を吹き付けることを含む、付記21〜23のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
付記25.前記第1組成物を、イソプロピルアルコール、パラトルエンスルホン酸、アセトン、メタノール、これらの水和物、これらの溶媒和物、又はこれらの混合物を含む第2洗浄剤で洗浄することをさらに含む、付記21〜24のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
付記26.前記洗浄剤は、パラトルエンスルホン酸であり、ブトキシエタノール中1重量%のパラトルエンスルホン酸の混合物である、付記21〜25のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
付記27.洗浄することは、前記第1組成物を、前記洗浄剤中に約1秒〜約1分の間浸漬することを含む、付記21〜26のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
付記28.前記洗浄剤は、ジノニルナフチルスルホン酸とイソプロピルアルコールの混合物を含む、付記21〜27のいずれか1つに記載の方法。
【0162】
付記29.前記第1ポリマーを前記第2ポリマーと混合する前に、前記第1ポリマーを溶媒に溶解することをさらに含み、前記溶媒は、キシレン、ベンゼン、トルエン、ジメチルスルホキシド、水、又はこれらの混合物を含む、付記20〜28のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
付記30.前記基材は、輸送体部品であり、前記第1組成物は、約0.1μm〜約10μmの厚みに塗布される、付記20〜29のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
付記31.硬化させることは、前記組成物の温度をピーク硬化温度にまで上げ、前記ピーク硬化温度に約1秒〜約48時間の間維持することを含む、付記20〜30のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
付記32.前記ピーク硬化温度は、略室温〜約200℃である、付記31に記載の方法。
【0166】
付記33.前記基材は、輸送体部品であり、前記第1組成物を前記基材に塗布することは、前記輸送体部品の表面に前記第1組成物を約100rpm〜約4,000rpmの速度でスピンコーティングすることを含む、付記20〜32のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
付記34.付記1〜19のいずれか1つに記載の組成物を輸送体部品に塗布することと、
前記輸送体部品上に配置された前記組成物の表面に電圧を印加することと、を含む、輸送体部品の加熱方法。
【0168】
付記35.前記組成物の表面に電圧を印加することで、前記輸送体部品の表面にある固相の水が少なくとも部分的に溶融する、付記34に記載の方法。
【0169】
付記36.前記電圧は、約10ヘルツ〜約2000ヘルツ、及び/又は、約10ボルト〜約2000ボルトの交流電圧である、付記34又は35に記載の方法。
【0170】
付記37.前記輸送体部品は、ノーズ、燃料タンク、テールコーン、パネル、2つ以上のパネル間の被覆ラップジョイント、翼と胴体部のアセンブリ、航空機複合構造材、胴体部ジョイント、翼リブと外皮のジョイント、及び/又は、他の内部部品からなる群から選択される、付記34〜36のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
付記38.前記第1ポリマーは、ポリアニリン、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホネート)、及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記第2ポリマーは、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート、エポキシ、グリシジル−Si−Zr−含有ゾルゲル、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリスルフィド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、付記37に記載の方法。
【0172】
上記では、本開示の態様について説明したが、その基本的な範囲から逸脱することなく本開示の他のさらなる態様を考案することが可能である。また、上記では、航空字宙産業に利用されるポリマー、材料、及び方法について説明したが、本開示の態様は、航空機とは無関係の他の用途、例えば自動車産業や海洋産業、エネルギー産業、ウィンドタービン等の用途にも適用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12