(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962745
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】LED硬化型防湿絶縁コート剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20211025BHJP
C09D 5/25 20060101ALI20211025BHJP
C09D 153/00 20060101ALI20211025BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D5/25
C09D153/00
H05K3/28 D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-162947(P2017-162947)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2018-111796(P2018-111796A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2020年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2017-2480(P2017-2480)
(32)【優先日】2017年1月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内拓
【審査官】
仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/046571(WO,A1)
【文献】
特開2016−139127(JP,A)
【文献】
特開2014−122267(JP,A)
【文献】
特開2015−137359(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/002615(WO,A1)
【文献】
特開2017−036368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 4/02
C09D 5/25
C09D 153/00
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルメタアクリレートとブチルアクリレートのトリブロック共重合体(A)と、硬化物のガラス転移点が8℃以下である単官能(メタ)アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、前記(A)におけるメチルメタクリレートの共重合比率が重量比で35%未満であり、前記(B)が環状骨格あるいはアルキル構造あるいはエーテル構造を有する(メタ)アクリレートであり、光重合性モノマーに対する前記(C)の比率が0.05〜6重量%であるLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【請求項2】
組成物全体に対する前記(A)の比率が10〜85重量%で、前記(B)の比率が13〜85重量%である請求項1記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【請求項3】
更に2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(D)を含む請求項1または2いずれかに記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【請求項4】
前記(B)が環状骨格あるいはエーテル構造を有する(メタ)アクリレートである請求項1〜3いずれかに記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【請求項5】
硬化物のデュロメータータイプA硬度が60以下である請求項1〜4いずれかに記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)光源でも短時間で硬化が可能な、防湿絶縁コート剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスエポキシ、紙フェノール、ポリイミド等の基材に代表されるプリント配線板へ半導体等の電子部品を実装する際に、その接続部には接続信頼性を高めるため防湿絶縁コート剤が塗布される場合がある。従来このコート剤には熱硬化樹脂の使用、あるいは有機溶剤に溶解した樹脂を塗布後に乾燥する方法が一般的であった。しかし熱硬化樹脂の場合は樹脂硬化に加熱工程が必要で硬化時間がかかるため生産性に問題があり、有機溶剤を使用する樹脂は塗布時に溶剤を揮発させるため環境への負荷が高いという問題が有った。
【0003】
こうした問題を解決すべく、短時間で硬化が可能な紫外線硬化性コート剤が開発されてきた。例えば特許文献1では末端がアクリロキシ基またはメタクリロキシ基であるポリブタジエンと、不飽和二重結を有する単量体と重合開始剤を含有する組成物が開示されている。また更に紫外線の光源として、低消費電力でオゾンの発生が少なく、また長寿命であるため近年急増しているLED光源にも対応可能な組成物として、アクリル系のオリゴマー及びモノマーに、アシルホスフィンオキサイド系とアルキルフェノン系の2種類の開始剤を併用する特許文献2も開示されている。しかしながら、ワイヤーハーネスとコネクターとの接続のように片方が柔軟な部材の場合は、接点をコーティングする樹脂硬化物の硬度が高いと接続の長期信頼性を低下させる場合があり、LED光源でも深部硬化性に優れ、なおかつ低硬度という要求特性へは改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009‐179655号公報
【特許文献2】特許第5297163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電気接点を保護する防湿絶縁コート剤として有用であり、照射する光源がLEDの場合でも短時間に硬化可能で深部硬化性に優れ、更に硬化物が低硬度である組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、メチルメタアクリレートとブチルアクリレートのトリブロック共重合体(A)と、硬化物のガラス転移点が
8℃以下である単官能(メタ)アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、前記(A)におけるメチルメタクリレートの共重合比率が重量比で35%未満であり、
前記(B)が環状骨格あるいはアルキル構造あるいはエーテル構造を有する(メタ)アクリレートであり、光重合性モノマーに対する前記(C)の比率が0.05〜6重量%であるLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する。
【0007】
請求項2記載の発明は、組成物全体に対する前記(A)の比率が
10〜85重量%で、前記(B)の比率が13〜85重量%である請求項1記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する。
【0008】
請求項3記載の発明は、更に2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(D)を含む請求項1または2いずれかに記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する。
【0009】
請求項4記載の発明は、
前記(B)が環状骨格あるいはエーテル構造を有する(メタ)アクリレートである請求項1〜3いずれかに記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する。
【0010】
請求項5記載の発明は、硬化物のデュロメータータイプA硬度が60以下である請求項1〜
4いずれかに記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防湿絶縁コート剤組成物は、防湿および絶縁特性に優れ、特に照射する光源がLEDの場合でも短時間に硬化可能な紫外線硬化型の樹脂組成物で、深部硬化特性に優れ、更に硬化物が低硬度という特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の組成物の構成は、MMAとBAのトリブロック共重合体(A)と、硬化物のガラス転移点が30℃以下である単官能(メタ)アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を包含する。
【0015】
本発明で使用するMMAとBAのトリブロック共重合体(A)は、絶縁樹脂コート剤を構成する主要ポリマーであり、P(ポリ)MMAからなるハードセグメントと、P(ポリ)BAからなるソフトセグメントから構成され、ソフトセグメントの両端をハードセグメントで挟んだトリブロック構造である。そのためPMMAが持つ透明性や耐候性と、PBAが持つ柔軟性や接着性を併せ持っている。また硬化物の硬度が高くなり過ぎないよう、(A)におけるMMAの共重合比率は、重量比で35%以下である。35%を超えると硬化物の硬度が高くなりすぎ、柔軟性のある部材をシール剤で固定する際に不具合となる場合がある。
【0016】
前記(A)の重量平均分子量は、30000〜130000が好ましく、50000〜100000が更に好ましい。30000未満では硬化物の凝集力が低すぎ、130000超では組成物の粘度が高くなり作業性が低下する。また硬化物の伸びや柔軟性を付与するため、(A)自体の硬度はタイプAで40(ISO7619−1準拠)以下、引張強さは7.0MPa(ISO37準拠)以上、引張伸びは450MPa(ISO37準拠)以上であることが好ましい。なお重量平均分子量(以下「Mw」と表記)はゲル透過クロマトグラフィー法により、スチレンジビニルベンゼン基材のカラムでテトラハイドロフラン展開溶媒を用いて、標準ポリスチレン換算の分子量を測定・算出した。
【0017】
前記(A)の配合量は、組成物全体に対し5〜85重量%が好ましく、8〜80重量%である事がより好ましい。5重量%未満では硬化物の凝集力が低すぎ、85重量%超では組成物の粘度が高くなりすぎ作業性が低下する。市販のMMAとBAのトリブロック共重合体としてはクラリティLA2140e(商品名:クラレ社製、MMA含有量28%、Mw75000)などがある。
【0018】
本発明で使用される単官能モノマー(B)は、反応性希釈剤としての役割を担い(A)と反応して皮膜硬度を上げるために配合される。(B)は(A)との相溶性に優れた低粘度の単官能モノマーであり、単独重合硬化物のガラス転移点は30℃以下である。ガラス転移点が30℃超の場合は、硬化物の硬度が高くなりすぎ不適となる。なお以下(B)および(D)のガラス転移点表記については、単独重合硬化物を示すものとする。
【0019】
環状骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(ガラス転移点15℃)、シクロヘキシルアクリレート(15℃)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(−12℃)などがあげられ、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中ではテトラヒドロフルフリルアクリレートが、低粘度で(A)との相溶性が優れており好ましい。
【0020】
アルキル構造およびエーテル構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばメチルアクリレート(8℃)、n-ブチルメタクリレート(20℃)、ラウリルアクリレート(−3℃)、イソステアリルアクリレート(−18℃)、2−エチルヘキシルメタクリレート(−10℃)などが例示され、また水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート(−15℃)、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート(−7℃)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(−32℃)などがあり、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では4-ヒドロキシブチルアクリレートが、低粘度で(A)との相溶性が優れており好ましい。
【0021】
また(B)のガラス転移点を更に下げて−20℃以下とすることで、硬化皮膜の低温環境下での伸び率を向上させることができる。例えばエチルアクリレート(−22℃)、n-ブチルアクリレート(−54℃)、ラウリルメタクリレート(−65℃)、イソデシルメタクリレート(−41℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、エトキシジエチレングリコールアクリレート(−67℃)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(−50℃)などがあり、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では4-ヒドロキシブチルアクリレートおよびエトキシジエチレングリコールアクリレートが、低粘度で(A)との相溶性が優れており好ましい。
【0022】
前記(B)の配合量は、組成物全体に対し13〜85重量%であり、15〜80重量%が更に好ましい。13重量%未満では硬化物の凝集力が低すぎ強度が不足し、85重量%超では硬化物の硬度が高くなりすぎる。また前記(A)の100重量部に対しては800重量部以下が好ましい。
【0023】
本発明で使用される光重合開始剤(C)は、紫外線や電子線などの吸収でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、LEDの発光波長に合わせた吸収帯域をもつ特性が必要である。限られた露光量で深部まで硬化させる場合、開始剤の配合量が多すぎると光のエネルギーが深部まで到達する前に消費されてしまい深部が未硬化となるため、配合量の調整が重要となる。配合量は光重合性モノマー100重量に対し0.05〜6重量%であり、0.1〜5重量%が更に好ましい。0.05重量%未満では硬化性が不充分となり、6重量%超では深部硬化が不充分となる。なおここで言う光重合性モノマーとは、前記(B)、2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(D)およびその他の(メタ)アクリレートモノマーの全てを示す。
【0024】
前記(C)として、具体的には2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。市販品ではIrgacure184、IrgacureTPO、Darocur4265(商品名:BASFジャパン社製)などがある。
【0025】
本組成物には更に2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー(D)を配合することが出来る。(D)を配合することで(B)と架橋構造を形成し、硬化皮膜の凝集力を高めることが出来る。2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1.4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1.9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1.10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3−メチル−1.5ペンタンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどがある。これらの中では硬化物に柔軟性をあたえるエーテル結合を骨格に持つグリコール変性ジアクリレートが好ましく、とりわけ2官能のトリプロピレングリコールジアクリレートが好ましい。
【0026】
前記(D)も(B)と同様にガラス転移点を低くすることで硬化皮膜の可撓性をコントロールすることが可能であり、特に(B)のガラス転移点が−20℃以下の場合は、(D)のガラス転移点も−20℃以下とすることで、低温環境下での硬化皮膜の伸び率をより向上させることができる。例えば、EO変性(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(−40℃)、EO変性(15)トリメチロールプロパントリアクリレート(−32℃)、1.12−ドデカンジオールジメタクリレート(−37℃)、EO変性(20)ビスフェノールAジアクリレート(−37℃)、EO変性(30)ビスフェノールAジアクリレート(−57℃)などがあり、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、EO変性ビスフェノールAジアクリレートが好ましい。
【0027】
前記(D)の配合量は、組成物全体に対し20重量%以下が好ましい。20重量%超では硬化物の架橋反応が進みすぎ、硬化物の硬度が高くなりすぎる傾向がある。また前記(A)の100重量部に対しては100重量部以下が好ましい。
【0028】
本組成物には必要に応じ、硬化助剤、シランカップリング剤、可塑剤、増感剤、酸化防止剤、老化防止剤、消泡剤、難燃剤、充填剤、重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、分散剤、チクソ付与剤などの添加剤、有機および無機微粒子、フィラーを併用することができる。
【0029】
硬化物の硬度は、JIK6253に準拠したデュロメータータイプA硬度で60以下であることが好ましい。タイプA硬度が60以上の場合は、例えばワイヤーハーネスのように柔軟性がある構造体を端子に固定し接点を防湿絶縁コート剤で固定するような時、硬化物とワイヤーハーネスの接続部分に応力が集中しやすくなり、長期の接続信頼性が低下する虞がある。
【0030】
−35℃における硬化物の伸び率は100%以上であることが好ましい。伸び率が100%未満の場合は、条件が非常に厳しい寒熱繰り返しのヒートサイクルテストを実施した時にクラックが入る場合があり、極低温下等の苛酷な環境下では長期の絶縁信頼性が低下する虞がある。また−35℃における硬化物の弾性率は100MPa以下であることが好ましい。弾性率が100MPa超の場合は、伸び率が低い場合と同様にヒートサイクルテストでクラックが入る場合があり、苛酷な環境下では長期の絶縁信頼性が低下する虞がある。
【0031】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。
また実施例8及び9は参考例として記載する。
【0032】
実施例1
MMAとBAのトリブロック共重合体(A)としてクラリティーLA2140e(商品名:クラレ社製、MMA含有量28%、Mw75000)を、単官能モノマー(B)としてTHFA(商品名:共栄社化学社製、テトラヒドロフルフリルアクリレート)を、開始剤(C)としてIrgacure184およびIrgacureTPO(商品名:BASFジャパン社製)を、2官能(メタ)アクリレートモノマー(D)としてM220(商品名:MIWON社製、トリプロピレングリコールジアクリレート)を用い、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し実施例1の防湿絶縁コート剤組成物を調整した。
【0033】
実施例2〜12
実施例1で用いた材料の他、(B)として4HBA(商品名:大阪有機化学社製、4ヒドロキシブチルアクリレート)およびCHA(商品名:共栄社化学社製、シクロへキシルアクリレート)およびECA(商品名:共栄社化学社製、エトキシジエチレングリコールアクリレート)を、(D)としてM2300(商品名:MIWON社製、EO変性(30)ビスフェノールAジアクリレート)およびDCPA(商品名:共栄社化学社製、ジシクロペンタジエンジアクリレート)を用い、配合量を表1のように変更し均一に溶解するまで撹拌し実施例2〜12の防湿絶縁コート剤組成物を調整した。
【0034】
比較例1〜8
実施例で用いた材料の他、MMAとBAのブロック共重合体としてLA1114(商品名:クラレ社製、ジブロック共重合体)およびLA4285(商品名:クラレ社製、MMA比率35重量%超)を、ガラス転移点が30℃超の単官能アクリルモノマーとしてDEAA(商品名:KJケミカルズ社製、ジエチルアクリルアミド)およびFA−512M(商品名:日立化成社製、ジシクロペンテニルオキシエチレンメタクリレート)を、ウレタンアクリレートとしてNISSOTE−2000(商品名:日本曹達社製)およびニューフロンティアR−1220(商品名:第一工業製薬社製)を、無溶剤アクリルポリマーとしてARUFRON UH−2000(商品名:東亞合成社製)を用い、表2記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し比較例1〜8の防湿絶縁コート剤組成物を調整した。
【0038】
表面タック:Φ23mmのポリプロピレン製容器に膜厚が6mmとなるよう防湿絶縁コート剤組成物を入れ、パナソニック製のLED−UV照射装置UD−40を用い、出力1000mW/cm2(波長365nm)の条件で4秒間照射して硬化させ、硬化物表面のべたつき有無を指触で確認し、べたつき無しを○、有りを×とした。
【0039】
深部硬化度:上記の硬化物を容器から取り出し、23±2℃で1時間放置後、硬化物の厚みをマイクロメーターで測定し、厚みが6mmある場合を○、未硬化部分があり6mm無い場合を×とした。
【0040】
硬度:上記硬化物でUV照射した反対側の面を、JIK6253に準拠してテクロック製のタイプAデュロメータ硬度計を用い測定し、A60以下を合格とした。
【0041】
弾性率、引張強度、伸び率:上記紫外線硬化条件で硬化させた厚さ1mmの組成物を、JIS K6251に準拠した8号ダンベル型にて打ち抜きしたサンプルを試験片とする。引張圧縮試験機テクノグラフTGI-1kNを用いて、チャック間距離を33mmとし、クロスヘッドスピード10mm/分で引張り試験を実施して、−35℃、25℃、85℃の3条件で引張強度を測定し、更に破断するまでの変位から伸び率を以下式で算出した。
伸び率(%)=
破断時の変位(長さ)÷33mm×100
例)全く伸びずに破断した場合:0mm÷33mm×100=0%
【0042】
冷熱ショック試験:−40℃×0.5時間⇔85℃×0.5時間の冷熱ショックを500サイクル実施後、目視にてクラックの有無を観察し、クラック無しを○、有りを×とした。なお測定サンプルは6mm×8mm×5mmのポリアセタール製容器に樹脂を充填し、上記紫外線硬化条件で硬化させたものを用いた。
【0045】
実施例は表面タック、深部硬化度、硬度すべての面で問題は無く良好であった。また(B)のガラス転移点が−20℃以下である実施例9〜12は、−35℃での弾性率は100MPa以下で、伸び率も100%以上あり、ヒートサイクルテストの結果もクラックは無く非常に良好であった。
【0046】
一方、開始剤配合量が上限から外れる比較例1は深部が硬化せず、下限から外れる比較例2は硬化不充分で他の評価が出来なかった。モノマーのガラス転移点が30℃を超える比較例3は硬度が高く、ジブロック共重合体の比較例4は表面タックが残り、MMA比率が35重量%以上のトリブロック共重合体の比較例5および6は硬度が高かった。(A)を含まない比較例7及び8は硬度または表面タックに問題があり、いずれも本願発明に適さないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、防湿および絶縁特性に優れ、特に照射する光源がLEDの場合でも短時間に硬化可能な紫外線硬化型の樹脂組成物で、深部硬化特性に優れ、更に硬化物が低硬度という特性を有し、電気接点を保護する防湿絶縁コート剤組成物として有用である。