特許第6962754号(P6962754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962754蓄熱ユニット及び蓄熱ユニットを備えた床構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962754
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】蓄熱ユニット及び蓄熱ユニットを備えた床構造
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20211025BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20211025BHJP
   F24D 5/06 20060101ALI20211025BHJP
   F24D 11/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   F28D20/02 D
   E04F15/18 W
   F24D5/06
   F24D11/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-176566(P2017-176566)
(22)【出願日】2017年9月14日
(65)【公開番号】特開2018-48803(P2018-48803A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2020年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-179700(P2016-179700)
(32)【優先日】2016年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】川添 正伸
(72)【発明者】
【氏名】久家 毅
(72)【発明者】
【氏名】横山 昌弘
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−228207(JP,A)
【文献】 特開2000−121167(JP,A)
【文献】 特開2003−214788(JP,A)
【文献】 特開2014−228231(JP,A)
【文献】 特開2016−014517(JP,A)
【文献】 特開2006−003059(JP,A)
【文献】 特開2001−349582(JP,A)
【文献】 特開2004−060960(JP,A)
【文献】 特開2008−241174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
E04F 15/18
F24D 5/06
F24D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地面から上方へ床下空間を隔てて配設された床構造体と、
前記床下地面上に設置された蓄熱ユニットと
を備える床構造であって、
前記蓄熱ユニットは、
袋体と、前記袋体に収容された、潜熱蓄熱材を含む蓄熱材組成物とを備える蓄熱体、及び、
1以上の前記蓄熱体を支持する枠体
を備える蓄熱パネルと、
1以上の前記蓄熱パネルの前記枠体の部分と係合して、1以上の前記蓄熱パネルの姿勢を保持する脚部と
を備え、
前記床構造体は、敷設された複数の床パネルを備え、
前記複数の床パネルの少なくとも1つは取り外し可能であり、
前記取り外し可能な床パネルの1つを取り外したときに形成される、前記床下空間の開口の平面視での寸法よりも、前記蓄熱ユニットの平面視での寸法が小さく形成されている、
床構造
【請求項2】
前記蓄熱ユニットにおいて、前記枠体が1つあたり複数の前記蓄熱体を支持しており、
1つの前記枠体に支持される複数の前記蓄熱体のうち少なくとも1つの前記蓄熱体における前記潜熱蓄熱材の相変化温度が、他の前記蓄熱体における前記潜熱蓄熱材の相変化温度と異なる、請求項1に記載の床構造
【請求項3】
前記蓄熱ユニットが複数の前記蓄熱パネルを備え、
複数の前記蓄熱パネルのうち少なくとも1つの前記蓄熱パネルが備える前記蓄熱体における前記潜熱蓄熱材の相変化温度が、他の前記蓄熱パネルが備える前記蓄熱体における前記潜熱蓄熱材の相変化温度と異なる、請求項1又は2に記載の床構造
【請求項4】
前記蓄熱ユニットにおいて、
前記枠体には、厚さ方向に貫通した開口部分が形成されており、
前記蓄熱体は、前記開口部分から前記枠体の厚さ方向に、前記蓄熱材組成物の少なくとも一部が前記枠体よりも突出するように、前記開口部分に収容されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の床構造
【請求項5】
前記蓄熱ユニットにおいて、前記蓄熱体の前記袋体は金属フィルムを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の床構造
【請求項6】
前記蓄熱ユニットにおいて、前記蓄熱ユニットを水平面上に設置した時に前記蓄熱パネルと前記水平面とが離間するように前記蓄熱パネルが前記脚部に保持されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の床構造
【請求項7】
前記蓄熱ユニットが、空隙を間に介して前記脚部に保持された複数の前記蓄熱パネルを備え、
前記空隙の各々は、少なくとも1つの方向に沿って延び、前記方向の両端において外方に開放された空間である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の床構造
【請求項8】
前記蓄熱ユニットを水平面上に設置した時に、
複数の前記蓄熱パネルの各々が、水平方向に対して略垂直であり、
前記空隙の各々が、水平方向に沿って延び、水平方向の両端において外方に開放された空間となるように、前記蓄熱ユニットにおいて複数の前記蓄熱パネルが前記脚部に保持されている、請求項7に記載の床構造
【請求項9】
前記蓄熱ユニットにおいて、
前記蓄熱パネルの各々が、床下地面に対して略垂直であり、前記空隙の各々が、水平方向に沿って延び、前記方向の両端において外方に開放された空間となるように、前記蓄熱ユニットが前記床下地面上に設置されている、請求項に記載の床構造。
【請求項10】
前記床下空間に空気流を供給する気流供給器を更に備え、
前記蓄熱ユニットが備える前記蓄熱体における前記蓄熱組成物が、前記気流供給器から供給される空気流の、前記蓄熱ユニットの設置個所における温度に対して、2℃以上低い相変化温度を有する潜熱蓄熱材を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の床構造。
【請求項11】
前記床下空間に空気流を供給する気流供給器を更に備え、
前記蓄熱ユニットが備える前記蓄熱体における前記蓄熱組成物が、前記気流供給器から供給される空気流の、前記蓄熱ユニットの設置個所における温度に対して、2℃以上高い相変化温度を有する潜熱蓄熱材を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の床構造。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の床構造を用いて暖気を蓄える方法であって、
前記蓄熱ユニットが備える前記蓄熱体における前記蓄熱組成物が含む潜熱蓄熱材の相変化温度に対して、2℃以上高い温度の空気に、前記蓄熱ユニットを接触させること
を含む方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の床構造を用いて冷気を蓄える方法であって、
前記蓄熱ユニットが備える前記蓄熱体における前記蓄熱組成物が含む潜熱蓄熱材の相変化温度に対して、2℃以上低い温度の空気に、前記蓄熱ユニットを接触させること
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱蓄熱材を利用した蓄熱材を備えた蓄熱ユニット及び該蓄熱ユニットを備えた床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境性の観点から、床材、壁材、天井材、屋根材等の建材の技術分野において、室内暖房時に発生する熱エネルギーや、日射光等の自然エネルギーをより有効に活用するための研究開発が盛んであり、これらの研究開発に基づいた省エネ及びエコ対策が講じられている。
【0003】
具体的には、床、壁(内壁、外壁)、天井、屋根等の建物の部分に、蓄熱材を用いた蓄熱体を設置する技術が開発されている。例えば、床に蓄熱材を設置する技術が知られている。
【0004】
特許文献1では、蓄熱材を有する蓄熱床構造であって、床を構成する床パネル内に断熱材が設けられており、前記床パネル状に通気部を有する通気根太が配置されており、この通気根太上に発熱可能な床暖房パネルが敷設されており、前記床暖房パネルと前記床パネルとの間に、蓄熱材と、温風通路と、この温風通路に通じるとともに、温風を流入させる温風導入部が設けられていることを特徴とする蓄熱床構造が開示されている。
【0005】
特許文献2では、集熱空気をダクトにて床面材の裏面側に導入すると共に、床面材の裏面近傍に潜熱蓄熱材を前記集熱空気が触れるように配置したことを特徴とする蓄熱床構造が開示されている。
【0006】
また、床材自体に潜熱蓄熱材を組み込む技術も開発されている。例えば、特許文献3では、施工時に室内空間と反対側の面となる下面に凹部が形成された床材本体と、前記床材本体の凹部内に該凹部の内底面に伝熱可能に接触された状態で収容され、潜熱蓄熱材が充填された、伝熱材料からなる可撓性を有する包袋状容器と、前記容器を前記上面が凹部の内底面に伝熱可能に押し付けられるように付勢するクッション材とを備えることを特徴とする潜熱蓄熱床材が開示されている。
【0007】
一方、潜熱蓄熱材を用いた蓄熱体の蓄熱量及び放熱量を高めるためには、複数の蓄熱体を組み合わせて建物に設置することが有効と考えられる。例えば、特許文献4では、箱状を呈する蓄熱槽の内部に蓄熱体が納設された蓄熱装置において、前記蓄熱槽において、前記蓄熱体として、水平板状を呈する蓄熱板部を、水平状態に広がる横方向空気流路を相互間に形成するように所定間隔を置いて積層配置することが開示されている。特許文献4では、前記蓄熱板部として、長辺長さが290mm程度で短辺長さが195mm程度で厚さが20mm程度であるポリエチレン製等の樹脂製容器や金属製容器内に潜熱蓄熱材を封入して形成した蓄熱板が開示されている。特許文献4では、複数の該蓄熱板を、厚さ方向に、蓄熱板支持部材を介して積層して、複数の該蓄熱板の間に、前記横方向空気流路を形成することが開示されている。
【0008】
また、冬季に求められる融解による暖温の貯蔵又は固化による暖温の放熱を目的とする蓄熱体と、夏季に求められる固化による冷温の貯蔵又は融解による暖温の吸収を目的とする蓄熱体とでは、適した相変化温度域が異なる。そこで、特許文献5では、1つの容器内に少なくとも2種類の潜熱型の蓄熱材が充填された複合型蓄熱材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−103352号公報
【特許文献2】特開2002−195587号公報
【特許文献3】特開2012−77492号公報
【特許文献4】特開2014−228207号公報
【特許文献5】特開2004−232897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜3に記載のように、床構造において蓄熱体を組み込み蓄熱床構造とする場合、床構造に、蓄熱体を設置するための構造を設けることが通常である。特に、蓄熱体として、袋体と該袋体に収容された潜熱蓄熱材とを含む蓄熱体を用いる場合、別途用意した設置台に前記蓄熱体を設置することや、特許文献3のように床材自体に凹部を設けてそこに前記蓄熱体を収容することが従来行われている。袋体と該袋体に収容された潜熱蓄熱材とを含む蓄熱体を床構造に組み込む場合、前記蓄熱体の設置位置が制約される、床構造が複雑で省スペース化、低コスト化に不利である、などの点で改善の余地がある。
【0011】
一方、特許文献4に記載されているように、樹脂製容器や金属製容器内に潜熱蓄熱材を封入して形成した蓄熱板は、それ自体が剛性を有するため、蓄熱板支持部材を介して複数を積層することができ、蓄熱槽内の目的とする位置に設置することができる。しかし、このような蓄熱板は、袋体と該袋体に収容された潜熱蓄熱材とを含む蓄熱体と比較して、高コストである、潜熱蓄熱材の量の変更が困難である、蓄熱板の寸法や形状の変更が容易でない、などの点で望ましいものではない。
【0012】
そこで本発明は、袋体と、該袋体に収容された蓄熱材組成物とを含む蓄熱体を、床構造等の建物の部分への設置が容易な形態とすることを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題に鑑みて開発された本発明の蓄熱ユニットは、
袋体と、前記袋体に収容された、潜熱蓄熱材を含む蓄熱材組成物とを備える蓄熱体、及び、
1以上の前記蓄熱体を支持する枠体
を備える蓄熱パネルと、
1以上の前記蓄熱パネルの前記枠体の部分と係合して、1以上の前記蓄熱パネルの姿勢を保持する脚部と
を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の蓄熱ユニットの形態とすることで、袋体と、前記袋体に収容された、潜熱蓄熱材を含む蓄熱材組成物とを備える蓄熱体の姿勢を保持することが可能である。このため、本発明の蓄熱ユニットは、蓄熱体として、袋体と前記袋体に収容された、潜熱蓄熱材を含む蓄熱材組成物とを備える蓄熱体を用いることで、安価である、潜熱蓄熱材の量の変更が容易である、寸法や形状の変更が容易であるといった該蓄熱体の利点を保持しつつ、本発明の蓄熱ユニットを床構造に組み込む場合に、別途設置台を用意する必要や、床構造の部材に特別な設置部位を必要としないという格別有利な効果を奏する。
【0015】
本発明の蓄熱ユニットの好ましい態様では、
前記枠体が1つあたり複数の前記蓄熱体を支持しており、
1つの前記枠体に支持される複数の前記蓄熱体のうち少なくとも1つの前記蓄熱体における前記潜熱蓄熱材の相変化温度が、他の前記蓄熱体における前記潜熱蓄熱材の相変化温度と異なる。
【0016】
本発明の蓄熱ユニットのこの態様では、相変化温度が異なる潜熱蓄熱材を含む複数の蓄熱体を設けることで、幅広い温度域で蓄熱放熱性能を奏することができる。また、個別の蓄熱体としては、1つの相変化温度の潜熱蓄熱材を含む蓄熱体を用いることができ、特許文献5に記載されているような、相変化温度が異なる複数の潜熱蓄熱材を組み合わせた特殊な蓄熱体を利用する必要がない。
【0017】
本発明の蓄熱ユニットの他の好ましい態様では、
複数の前記蓄熱パネルを備え、
複数の前記蓄熱パネルのうち少なくとも1つの前記蓄熱パネルが備える前記蓄熱体における前記潜熱蓄熱材の相変化温度が、他の前記蓄熱パネルが備える前記蓄熱体における前記潜熱蓄熱材の相変化温度と異なる。
【0018】
本発明の蓄熱ユニットのこの態様では、相変化温度が異なる潜熱蓄熱材を含む蓄熱体を備える複数の蓄熱パネルを設けることで、幅広い温度域で蓄熱放熱性能を奏することができる。また、個別の蓄熱体としては、1つの相変化温度の潜熱蓄熱材を含む蓄熱体を用いることができ、特許文献5に記載されているような、相変化温度が異なる複数の潜熱蓄熱材を組み合わせた特殊な蓄熱体を利用する必要がない。
【0019】
本発明の蓄熱ユニットの他の好ましい態様では、
前記枠体には、厚さ方向に貫通した開口部分が形成されており、
前記蓄熱体は、前記開口部分から前記枠体の厚さ方向に、前記蓄熱材組成物の少なくとも一部が前記枠体よりも突出するように、前記開口部分に収容されている。
【0020】
本発明の蓄熱ユニットのこの態様では、蓄熱体のうち前記蓄熱材組成物の少なくとも一部が枠体よりも突出していることで、蓄熱パネルの面に沿った方向に流れる空気との熱の交換を効率的に行うことができる。
【0021】
本発明の蓄熱ユニットの他の好ましい態様では、
前記蓄熱体の前記袋体は金属フィルムを含む。
【0022】
本発明の蓄熱ユニットのこの態様では、潜熱蓄熱材を含む蓄熱材組成物を収容する袋体が金属フィルムを含むことにより、該金属フィルムを介して周囲の空気との熱の交換を効率的に行うことができる。
【0023】
本発明の蓄熱ユニットの他の好ましい態様では、
水平面上に設置した時に前記蓄熱パネルと前記水平面とが離間するように前記蓄熱パネルが前記脚部に保持されている。
【0024】
この態様に係る本発明の蓄熱ユニットは、床下地面に設置した場合に、床下地面と蓄熱パネルとの間に空間が形成され、この空間にコード、ケーブル等を這わせることができる。
【0025】
本発明の蓄熱ユニットの他の好ましい態様では、
空隙を間に介して前記脚部に保持された複数の前記蓄熱パネルを備え、
前記空隙の各々は、少なくとも1つの方向に沿って延び、前記方向の両端において外方に開放された空間である。
【0026】
本発明の蓄熱ユニットのこの態様では、蓄熱パネル間に形成された空隙に、前記方向に沿って空気が流れることができ、蓄熱体と前記空気との熱の交換を効率的に行うことができる。
【0027】
本発明の蓄熱ユニットのこの態様の、より好ましい態様では、
水平面上に設置した時に、
複数の前記蓄熱パネルの各々が、水平方向に対して略垂直であり、
前記空隙の各々が、水平方向に沿って延び、水平方向の両端において外方に開放された空間となるように、複数の前記蓄熱パネルが前記脚部に保持されている。
【0028】
本発明の蓄熱ユニットのこの、より好ましい態様では、床下空間の空気流中の熱を効率的に蓄熱することができる。なお、本明細書において「略垂直」は「垂直」も含む。
【0029】
本発明はまた、
床下地面から上方へ床下空間を隔てて配設された床構造体と、
前記床下地面上に設置された、本発明に係る上記の蓄熱ユニットと
を備える床構造に関する。
【0030】
本発明の床構造では、床下空間に、暖熱または冷熱を貯蔵することができる。本発明に係る上記の蓄熱ユニットは単独で蓄熱体の姿勢を保持することができるため、本発明の床構造は、前記蓄熱ユニットを床下地面に設置することにより構築することができ、機構が簡便で低コスト化が容易である。
【0031】
本発明の床構造の好ましい態様では、
前記蓄熱ユニットが、水平面上に設置した時に、複数の前記蓄熱パネルの各々が、水平方向に対して略垂直であり、且つ、前記空隙の各々が、水平方向に沿って延び、水平方向の両端において外方に開放された空間となるように、複数の前記蓄熱パネルが前記脚部に保持されている蓄熱ユニットであり、
前記蓄熱パネルの各々が、床下地面に対して略垂直であり、前記空隙の各々が、水平方向に沿って延び、前記方向の両端において外方に開放された空間となるように、前記蓄熱ユニットが前記床下地面上に設置されている。
【0032】
床下空間に流れる空気流は、水平方向に広がり垂直方向の厚さが小さい空気流となり易い。本発明の床構造のこの態様によれば、前記空気流が、蓄熱ユニットが備える複数の蓄熱パネル間の空隙を通過することができるため、床下空間に流れる空気流中の熱を効率的に蓄熱することができる。
【0033】
本発明の床構造の他の好ましい態様では、
前記床下空間に空気流を供給する気流供給器を更に備え、
前記蓄熱ユニットが備える前記蓄熱体における前記蓄熱組成物が、前記気流供給器から供給される空気流の、前記蓄熱ユニットの設置個所における温度に対して、2℃以上低い相変化温度を有する潜熱蓄熱材を含む。
【0034】
本発明の床構造のこの態様によれば、暖気の熱を効率的に蓄熱することができる。このため、冬場にエアーコンディショナーの負荷(室内外温度差)が小さい時間帯(昼間等)にエアーコンディショナーによる暖房を稼働して、床下空間に暖気を蓄え、負荷が大きい時間帯(早朝等)にエアーコンディショナーによる暖房を停止し、床下空間に蓄熱された熱を利用することができる。
【0035】
本発明の床構造の他の好ましい態様では、
前記床下空間に空気流を供給する気流供給器を更に備え、
前記蓄熱ユニットが備える前記蓄熱体における前記蓄熱組成物が、前記気流供給器から供給される空気流の、前記蓄熱ユニットの設置個所における温度に対して、2℃以上高い相変化温度を有する潜熱蓄熱材を含む。
【0036】
本発明の床構造のこの態様によれば、冷気を効率的に蓄えることができる。このため、春、秋等の中間期に、夜、朝の冷気を蓄えて、昼間の高温時に、床下空間に蓄えられた冷気を利用することができる。
【0037】
本発明の床構造の他の好ましい態様では、
前記床構造体は、敷設された複数の床パネルを備え、
前記複数の床パネルの少なくとも1つは取り外し可能であり、
前記取り外し可能な床パネルの1つを取り外したときに形成される、前記床下空間の開口の平面視での寸法よりも、前記蓄熱ユニットの平面視での寸法が小さく形成されている。
【0038】
本発明の床構造のこの態様では、床パネルを取り外すことで形成される床下空間の開口を通じて、蓄熱ユニットを床下地面に容易に取り付け及び取り外しすることが可能である。このため、例えば、床下地面上にコード、ケーブル等の配線が設置されており、その上に蓄熱ユニットが配置されている場合に、配線のメンテナンスを行うことが容易である。
【0039】
本発明はまた、
本発明の上記の一以上の態様の蓄熱ユニットを用いて暖気を蓄える方法であって、
前記蓄熱ユニットが備える前記蓄熱体における前記蓄熱組成物が含む潜熱蓄熱材の相変化温度に対して、2℃以上高い温度の空気に、前記蓄熱ユニットを接触させること
を含む方法を提供する。
【0040】
この方法では、前記蓄熱ユニットを、潜熱蓄熱材の相変化温度よりも2℃以上高い温度の空気に接触させることにより、効率的に暖気を蓄えることが可能である。
【0041】
本発明はまた、
本発明の上記の一以上の態様の蓄熱ユニットを用いて冷気を蓄える方法であって、
前記蓄熱ユニットが備える前記蓄熱体における前記蓄熱組成物が含む潜熱蓄熱材の相変化温度に対して、2℃以上低い温度の空気に、前記蓄熱ユニットを接触させること
を含む方法を提供する。
【0042】
この方法では、前記蓄熱ユニットを、潜熱蓄熱材の相変化温度よりも2℃以上低い温度の空気に接触させることにより、効率的に冷気を蓄えることが可能である。
【発明の効果】
【0043】
本発明の蓄熱ユニットは、床構造に組み込む場合に、別途設置台を用意する必要や、床構造の部材に特別な設置部位を形成する必要がなく有利である。
【0044】
本発明の床構造は、床下空間に、暖熱または冷熱を貯蔵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の蓄熱ユニットに用いる蓄熱パネルの第1実施形態の平面図である。
図2図1に示す蓄熱パネルの、I−I線矢視断面図である。
図3】本発明の蓄熱ユニットの第1実施形態の模式的分解斜視図である。
図4】本発明の蓄熱ユニットの第1実施形態の模式的斜視図である。
図5図4に示す本発明の蓄熱ユニットの第1実施形態の側面図である。
図6図4に示す本発明の蓄熱ユニットを備える、本発明の床構造の第1実施形態の模式的断面図である。
図7図6に示す本発明の床構造の実施形態において、床パネルの1つを取り外した状態での模式的平面図である。
図8】本発明の蓄熱ユニットの第2実施形態の模式的斜視図である。
図9】本発明の蓄熱ユニットの第3実施形態の模式的斜視図である。
図10図9に示す本発明の蓄熱ユニットを備える、本発明の床構造の第2実施形態の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態に係る蓄熱ユニット及びその用途について、図1〜10を参照して説明する。ただし本発明の範囲は図示する実施形態に限定されるものではない。
【0047】
<1.第1実施形態に係る蓄熱ユニット>
図1〜5に示す通り、本発明の第1実施形態に係る蓄熱ユニット1は、4つの蓄熱体11と、4つの蓄熱体11を支持する枠体12とを備える蓄熱パネル10と、3つの蓄熱パネル10の各々の枠体12の部分と係合して、3つの蓄熱パネル10の姿勢を保持する脚部20とを備える。
【0048】
1.1.蓄熱パネル
蓄熱パネル10は、蓄熱体11と枠体12とを備える。
【0049】
1.1.1.蓄熱体
蓄熱体11は、袋体14と、袋体14に収容された、潜熱蓄熱材を含む蓄熱材組成物13とを備える。
【0050】
蓄熱材組成物13は、単独で袋体14に収容されていてもよいし、基材に含浸された形態で袋体14に収容されていてもよい。蓄熱材組成物13を含浸する基材としては、板状の基材が例示できる。図示する第1実施形態は、蓄熱材組成物13は基材に含浸された形態で袋体14に収容されている例である。
【0051】
本発明に用いることができる潜熱蓄熱材は、例えば、室内の暖房、日光による熱などで固相から液相に相変化する潜熱蓄熱材であり、相変化温度(融点)は、好ましくは5℃〜60℃の範囲にあり、より好ましくは15℃以上であり、より好ましくは18℃以上であり、より好ましくは35℃以下であり、より好ましくは28℃以下であり、より好ましくは15℃〜35℃の範囲にあり、より好ましくは18℃〜28℃の範囲にある。本明細書において相変化温度及び融点は1atmでの値を指す。相変化温度は相転移温度ともいう。
【0052】
例えば、夏季において、冷房により冷やされた空気、日陰の空気又は夜間の空気の冷温を貯蔵し、室温が高いときにその熱を吸収するする目的では、前記冷温よりも高く、低下させるべき高い室温よりも低い相変化温度の潜熱蓄熱材を用いることが好ましい。このような相変化温度としては、22〜28℃が例示できる。また、冬季において、暖房により温められた空気、日向の空気又は昼間の空気の暖温を貯蔵し、温度が下がった時に放熱する目的では、前記暖温よりも低く、上昇させるべき低い室温よりも高い相変化温度の潜熱蓄熱材を用いることが好ましい。このような相変化温度としては、18〜26℃が例示できる。
【0053】
潜熱蓄熱材としては、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、及びn−ノナデカンからなる群から選択される少なくとも1種(2種以上の混合物であってもよい)等で構成される又は前記少なくとも1種を含む、典型的には炭素数16〜24の範囲内の炭素数を有する、n−パラフィンやパラフィンワックス等の飽和脂肪族炭化水素(好ましくは直鎖飽和脂肪族炭化水素);1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、及び1−エイコセン等からなる群から選択される少なくとも1種(2種以上の混合物であってもよい)等で構成される又は前記少なくとも1種を含む、典型的には炭素数16〜26の範囲内(好ましくは24以下)の炭素数を有する、α−オレフィン(好ましくは直鎖α−オレフィン)等の一価又は多価不飽和脂肪族炭化水素(好ましくは直鎖状の一価又は多価不飽和脂肪族炭化水素);オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、及びミリスチン酸からなる群から選択される少なくとも1種(2種以上の混合物であってもよい)等で構成される又は前記少なくとも1種を含む、典型的には炭素数6〜24、好ましくは炭素数8〜14の範囲内の炭素数を有する、中鎖又は長鎖脂肪酸;上記脂肪酸のエステル;ポリエチレングリコール(例えば分子量500〜1000)等のポリエーテル化合物;硫酸ナトリウム水和物、塩化カルシウム水和物、硫酸ナトリウム10水和物等の無機塩等を挙げることができる。好ましくは、潜熱蓄熱材は、前記飽和脂肪族炭化水素、前記一価又は多価不飽和脂肪族炭化水素、前記中鎖又は長鎖脂肪酸、前記脂肪酸のエステル及び前記ポリエーテル化合物からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
【0054】
また、上記以外に、本発明に用いる潜熱蓄熱材を含む蓄熱材組成物13は、相変化温度以上でゲル状となる組成物であってもよい。相変化温度以上でゲル状となる蓄熱材組成物13は、基材に含浸させなくとも形状を保持することができるため、蓄熱材組成物13が基材に含浸されてない形態において特に好適に利用できる。
【0055】
更に、出願人が既に出願した国際公開2015/174523に開示されるように、潜熱蓄熱材と水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとを含む蓄熱材組成物を、蓄熱材組成物13として用いてもよい。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、及びスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)からなる群から選択される少なくとも1種(2種以上の混合物であってもよい)等を挙げることができる。
【0056】
蓄熱材組成物13が基材に含浸された形態である場合、該基材は、潜熱蓄熱材を含浸し保持することができる基材であればよく、具体的には、潜熱蓄熱材を含浸し保持することができる微細な空隙を有する材料を含む多孔質基材であればよく、その材料は限定されない。
【0057】
前記基材の材料としては、例えば、パーティクルボード、木質繊維板(MDF、インシュレーションボード、ハードボード等)等の木質系ボードを挙げることができる。この他にも、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等の無機質ボード;鉱物質がボード状に成形された鉱物質ボード;グラスウール、カーボンファイバー、金属繊維などの無機繊維を集積したボードなどを挙げることができる。
【0058】
蓄熱材組成物13を含浸する基材の形状は特に限定されないが、通常は板状である。板状の基材の場合、その厚さは特に限定されないが、通常は3〜30mmであり、好ましくは5〜20mmである。蓄熱材組成物13が板状の基材に含浸された形態である場合、板状の基材の厚さ方向の全体に亘って含浸されていることが好ましいが、これには限定されず、板状の基材のうち表層部分のみに蓄熱材組成物が含浸されてもよい。板状の基材及び該基材に含浸された蓄熱材組成物13の形状は特に限定されず、図示する実施形態では、平面視においてほぼ正方形状であるが、以下に示す特徴を備えている限り、平面視において長方形状、円形状、楕円形状、多角形状など、その形状は特に限定されるものではない。
【0059】
板状の基材及び該基材に含浸された蓄熱材組成物13の厚さ方向での断面の形状は特に限定されない。図示するように、袋体14に封入する際に、基材に含浸された蓄熱材組成物13の第1面13aの側を、袋体14を構成する第1シート14Aに押し付けながら、第1シート14Aを、基材に含浸された蓄熱材組成物13の第1面13a及び側面13bの形状に沿うように変形させて、外方に突出した収容部14Cを形成する場合には、基材に含浸された蓄熱材組成物13の第1面13aと側面13bとが交差する稜線部13cが、第1シート14Aを内側から傷つけないように、第1面13aと側面13bとが内側で鈍角を成すように形成されていることが好ましい。更に、基材に含浸された蓄熱材組成物13の第1面13aの側の隅部13e(図1参照)が、第1シート14Aを内側から傷つけないように、また、第1シート材14Aが、蓄熱材組成物13を組み込む際、後述する接合部14Dに密着不良となる大きなしわなどが発生しないように蓄熱組成物13の形状になじませるように、切り欠かれた形状であることが好ましい。
【0060】
第1実施形態において、袋体14は、第1シート材14Aと第2シート材14Bとが、蓄熱材組成物13を囲う接合部14Dにより接合されたものである。第1シート14Aには、蓄熱材組成物13を収容するように突出した形状の収容部14Cが形成されている。
【0061】
第1実施形態において袋体14を構成する材料(第1シート材14Aと第2シート材14Bを構成する材料)は、蓄熱材組成物13に対して非透過性を有し、蓄熱材組成物13に含まれる潜熱蓄熱材が相変化温度よりも高い温度において液化しても漏出を阻止することができる材料である限り特に限定されない。袋体14は、可撓性を有する材料により形成されていることが好ましい。例えば袋体14を構成する材料としては、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等の熱可塑性樹脂のフィルムや、アルミニウム箔等の金属フィルムが挙げられ、これらが積層された積層フィルムであってもよい。袋体14が金属フィルムを含む場合、金属フィルムは伝熱性が高いため、蓄熱材組成物13が袋体14を介して周囲の空気との熱の交換を効率的に行うことができる。第1シート材14Aと第2シート材14Bとにより袋体14を構成する場合、第1シート材14Aと第2シート材14Bはそれぞれ異なる材料を含んでもよい。例えば、図示する実施形態では、第1シート材14Aは光透過性の熱可塑性樹脂のフィルムであり、第2シート材14Bは金属フィルムと熱可塑性樹脂のフィルムとが積層された積層フィルムである。
【0062】
袋体14が第1シート材14Aと第2シート材14Bとを含む場合、第1シート材14Aと第2シート材14Bとの接合は、それぞれが内側面に熱可塑性樹脂を含んでいる場合には熱融着により接合することができるが、これには限定されず、例えば接着剤を介して第1シート材14Aと第2シート材14Bとを接合してもよい。図示する例は、第1シート材14Aと第2シート材14Bとを熱融着して接合部14Dを形成した例である。
【0063】
図示する実施形態では、1対の第1シート材14Aと第2シート材14Bが、複数(図示する例では4つ)の袋体14を形成し、それぞれが蓄熱材組成物13を収容し封入することで、一つながりになった複数の蓄熱体11が形成される。この構成により複数の蓄熱体11を効率的に形成することが可能である。ただし、この例には限定されず、複数の蓄熱体11に含まれる袋体14はそれぞれ独立したものであってよい。
【0064】
1.1.2.枠体
枠体12は、1以上の蓄熱体11を支持する、蓄熱パネル10の骨格を成す部材である。蓄熱体11は、袋体14内の蓄熱材組成物13に含まれる潜熱蓄熱材の相変化温度よりも高いときと低いときとで形状が変化し得るが、蓄熱体11を枠体12により支持することにより、蓄熱体11の形状変化に関わらず、蓄熱パネル10の全体としての形状は保持される。また、後述するように、脚部20は枠体12に係合する。
【0065】
枠体12は、図示するように、平面に沿うように広がりを有する全体形状とすることができ、1以上(図示する例では4つ)の蓄熱体11を前記平面に沿って支持することができるように構成されている。
【0066】
枠体12は、本実施形態では、平面視において周縁の輪郭を形成する周縁部12Aと、周縁部12Aの対向する一対の部分の間を架橋するように形成された複数(図示する例では2つ)の架橋部12B,12Bとを備え、周縁部12Aと架橋部12B,12Bとの間に、厚さ方向に貫通する、複数(図示する例では4つ)の開口部分12C,12C,12C,12Cが形成される。
【0067】
枠体12は、蓄熱ユニット1の通常の使用環境において形状、寸法が実質的に安定な材料により形成することができ、該材料としては例えば木材、金属、樹脂等が例示できる。
【0068】
枠体12は、脚部20と係合して、蓄熱パネル10の姿勢を保持することができる。枠体12における、脚部20と係合するための構造については後述する。
【0069】
1.1.3.蓄熱パネルの全体構成
1以上の蓄熱体11が枠体12により支持されて蓄熱パネル10が形成される。蓄熱パネル10の平面形状は、図示するように矩形状であることができるがこれには限定されず、例えば円形、楕円形、三角形、五角形、六角形等の多角形のように任意の形状であってよい。
【0070】
蓄熱体11は枠体12により支持されている限り、その態様は特に限定されない。例えば、蓄熱体11の袋体14の一部と枠体12の一部とが、接着剤を介して結合されていてもよいし、釘などの固定部材を介して結合されていてもよい。
【0071】
図示する例では、蓄熱体11において蓄熱材組成物13は平面状の広がりを有するように形成され、袋体14のうち、第1シート材14Aと第2シート材14Bとの接合部14Dが、蓄熱材組成物13の周縁を囲うように配置され、該接合部14Dと、枠体12(周縁部12A及び架橋部12B,12B)とが、接着剤(図示せず)を介して結合され、蓄熱体11のうち少なくとも蓄熱材組成物13の部分が、平面視において、枠体12の開口部分12Cに収容されている。この構成では、平面状の広がりを有する蓄熱材組成物13の第1面13aが、袋体14の第1シート材14Aを介して外部の空気と熱の授受を行うことができ、蓄熱材組成物13の第2面13dが、袋体14の第2シート材14Bを介して外部の空気と熱の授受を行うことができるため、蓄熱材組成物13の外部の空気との熱交換を効率的に行うことができる。
【0072】
本実施形態では、蓄熱体11は少なくとも蓄熱材組成物13の部分が、平面視において、枠体12の開口部分12C内に位置するように収容されており、且つ、蓄熱材組成物13の少なくとも一部が、開口部分12Cから枠体12の厚さ方向に突出するように構成されている。この構成により、蓄熱パネル10の面に沿った方向に流れる空気との熱の交換を効率的に行うことができる。図2に示すように、蓄熱材組成物13の一部が、枠体12の開口部分12Cから、枠体12の一方の側(図2における下側)のみに突出していてもよいし、図示しないが、蓄熱材組成物13の一部が、枠体12の開口部分12Cから、枠体12の両側(図2における上側と下側)に突出していてもよい。
【0073】
1つの枠体12に支持される蓄熱体11の個数は1つであってもよいし、図示するように複数であってもよい。1つの枠体12に複数の蓄熱体11が支持される場合には、各蓄熱体11に含まれる潜熱蓄熱材の相変化温度は同一であってもよいし、異なっていてもよい。1つの枠体12に支持される複数の蓄熱体11のうち、少なくとも1つの蓄熱体11に含まれる潜熱蓄熱材の相変化温度が、他の蓄熱体11に含まれる潜熱蓄熱材の相変化温度と異なる蓄熱パネル10の態様では、幅広い温度域で蓄熱放熱性能を奏することができる。また、個別の蓄熱体11としては、1つの相変化温度の潜熱蓄熱材を含む蓄熱体11を用いることができ、特許文献5に記載されているような、相変化温度が異なる複数の潜熱蓄熱材を組み合わせた特殊な蓄熱体を利用する必要がない。相変化温度が異なる複数の潜熱蓄熱材としては、既述のような、夏季において、固化して冷温を貯蔵すること、又は、室温が高いときに融解してその熱を吸収することに適した相変化温度の潜熱蓄熱材と、冬季において、融解して暖温を貯蔵すること、又は、温度が下がった時に固化して放熱して温度低下を抑制することに適した相変化温度の潜熱蓄熱材との組み合わせが例示できる。
【0074】
本発明において、ある蓄熱体11における潜熱蓄熱体の相変化温度が、他の蓄熱体11における潜熱蓄熱体の相変化温度と「異なる」とは、相変化温度が一定の幅を有する温度域である場合には、温度域が全く重複しない場合と、温度域が一部重複するが上限値及び下限値の少なくとも一方が異なる場合との両方を包含する。
【0075】
1.2.脚部
脚部20は、1以上の蓄熱パネル10の枠体12の部分と係合してその姿勢を保持して、蓄熱ユニット1を形成する。
【0076】
脚部20に保持される蓄熱パネル10の数は図示する3には限定されず、1以上であればよいが、2以上である場合は蓄熱ユニット1全体での蓄熱容量が増え蓄熱放熱性能が向上するため好ましい。
【0077】
蓄熱ユニット1は脚部20を備えていることにより直接に設置個所に設置することができ、更なる設置台を必要としない。
【0078】
第1実施形態では、脚部20は、枠体12の周縁部12Aのうち、蓄熱パネル10の平面視での矩形の輪郭の4つの辺の各々の中央に相当する部分(辺中央部分12A1)と係合する中央脚部21と、前記輪郭の4つの隅の各々に相当する部分(隅部分12A2)と係合する隅脚部22とを、それぞれ4つずつ備える。
【0079】
脚部20は1以上の蓄熱パネル10の姿勢を保持することができるものであればよく、脚部20を構成する部材の数や、枠体12における係合の位置は第1実施形態の上記の例には限定されない。
【0080】
第1実施形態では、脚部20を構成する中央脚部21と隅脚部22とはそれぞれ板体であり、それぞれが蓄熱パネル10の面の方向と交差する方向(垂直な方向)に配向され、蓄熱パネル10の枠体12と係合される。
【0081】
中央脚部21と、枠体12の周縁部12Aの辺中央部分12A1とは、互いに係合可能に形成されている。具体的には、枠体12の周縁部12Aの辺中央部分12A1には、それぞれ、蓄熱パネル10の平面視において周縁から内方に向かって、枠体切れ込み121が形成されている。枠体切れ込み121の幅は、板体である中央脚部21の厚さと同じ又は若干大きく構成されている。一方、板体である中央脚部21には、その側端部210に、周縁から内方に向かって中央脚部切れ込み211が形成されている。中央脚部切れ込み211の幅は、枠体12の周縁部12Aの辺中央部分12A1の厚さと同じ又は若干大きく構成されている。枠体12の周縁部12Aの辺中央部分12A1と中央脚部21とは、枠体切れ込み121と中央脚部切れ込み211を介して互いに嵌合することができる。図示する例では、枠体12の周縁部12Aの4つの辺中央部分12A1の全てに枠体切れ込み121が形成され、それぞれに中央脚部21が係合するが、これには限定されず、枠体12の周縁部12Aの4つの辺中央部分12A1の一部、例えば対向する一対、のみに中央脚部21が係合するように構成されていてもよい。中央脚部21の各々には、保持される蓄熱パネル10の数(図示する例では3)に応じた数の中央脚部切れ込み211が形成されている。
【0082】
同様に、隅脚部22と、枠体12の周縁部12Aの隅部分12A2とは、互いに係合可能に形成されている。具体的には、枠体12の周縁部12Aの隅部分12A2には、それぞれ、蓄熱パネル10の平面視において外方に向かって突出した突起122が形成されている。一方、板体である隅脚部22には、板体の厚さ方向に貫通する貫通孔221が形成されている。枠体12の突起122と、隅脚部22の貫通孔221とは、前者が後者に挿通されるように形成されている。また、突起122の突出方向の長さを、隅脚部22の貫通孔221を囲う部分の貫通方向の厚さよりも十分に大きくすることで、隅脚部22の枠体12からの抜けを防止することができるため好ましい。図示する例では、枠体12の周縁部12Aの4つの隅部分12A2の全てに突起122が形成され、それぞれに隅脚部22が係合するが、これには限定されず、枠体12の周縁部12Aの4つの隅部分12A2の一部、例えば対向する一対、のみに隅脚部22が係合するように構成されていてもよい。隅脚部22の各々には、保持される蓄熱パネル10の数(図示する例では3)に応じた数の貫通孔221が形成されている。
【0083】
図示する例では、4つの中央脚部21と、4つの隅脚部22とが、1以上の蓄熱パネル10の枠体12と係合しその姿勢を保持する。他の変形例としては、4つの中央脚部21を備えず4つの隅脚部22が1以上の蓄熱パネル10の枠体12と係合しその姿勢を保持する構成が挙げられるが、その場合は、蓄熱パネル10が、枠体12の周縁部12Aの辺中央部分12A1の近傍において自重により下方に垂れ下がる可能性がある。同様に、他の変形例としては、4つの隅脚部22を備えず4つの中央脚部21が1以上の蓄熱パネル10と係合しその姿勢を保持する構成が挙げられるが、その場合においても、蓄熱パネル10が、枠体12の周縁部12Aの隅部分12A2の近傍において自重により下方に垂れ下がる可能性がある。
【0084】
1.3.蓄熱ユニットの全体構成
第1実施形態に係る蓄熱ユニット1は、上記の特徴を備える1以上の蓄熱パネル10と、1以上の蓄熱パネル10の枠体12の部分と係合して、1以上の蓄熱パネル10を保持する脚部20とを備える。第1実施形態に係る蓄熱ユニット1は脚部20を介して床下地面等に直接設置することができ、且つ、設置後の取り外しも容易である。
【0085】
第1実施形態に係る蓄熱ユニット1は、水平面上に設置したときに、蓄熱パネル10がほぼ水平となるように蓄熱パネル10が脚部20に保持された実施形態である。蓄熱ユニット1の水平面上での設置時の蓄熱パネル10の向きはこの態様には限定されず、蓄熱パネル10が水平方向に対して交差する方向に配向されてもよく、例えば後述する第2実施形態及び第3実施形態のように、蓄熱パネル10が水平方向に対して略垂直となるように蓄熱パネル10が脚部20に保持されていてもよい。
【0086】
蓄熱パネル10の数は1以上であればよく図示する3には限定されないが、複数であれば、1つの蓄熱ユニット1の蓄熱容量が増え蓄熱放熱性能を高めることができるため好ましい。
【0087】
蓄熱ユニット1が複数の蓄熱パネル10を備える場合、各蓄熱パネル10が備える蓄熱体11に含まれる潜熱蓄熱材の相変化温度は同一であってもよいし、異なっていてもよい。特に、少なくとも1つの蓄熱パネル10が備える蓄熱体11における前記潜熱蓄熱材の相変化温度が、他の蓄熱パネル10が備える蓄熱体11における前記潜熱蓄熱材の相変化温度と異なる態様では、1つの蓄熱ユニット1が幅広い温度域で蓄熱放熱性能を奏することができる。例えば、相変化温度が互いに異なる潜熱蓄熱材を含む蓄熱体11を備える複数の蓄熱パネル10を備える蓄熱ユニット1は、異なる温度の熱の蓄熱が可能である。具体例を挙げると、相変化温度が22℃の潜熱蓄熱材を含む蓄熱体11を備える蓄熱パネル10と、相変化温度が24℃の潜熱蓄熱材を含む蓄熱体11を備える蓄熱パネル10とを備える蓄熱ユニット1は、22℃の条件では相変化温度が22℃の潜熱蓄熱材を含む蓄熱体11が22℃の熱を溜め、24℃の条件では相変化温度が24℃の潜熱蓄熱材を含む蓄熱体11が24℃の熱を溜めることができる。また、個別の蓄熱体11としては、1つの相変化温度の潜熱蓄熱材を含む蓄熱体11を用いることができ、特許文献5に記載されているような、相変化温度が異なる複数の潜熱蓄熱材を組み合わせた特殊な蓄熱体を利用する必要がない。相変化温度が異なる複数の潜熱蓄熱材としては、既述のような、夏季において冷温を貯蔵するのに適した相変化温度の潜熱蓄熱材と、冬季において暖温を貯蔵するのに適した相変化温度の潜熱蓄熱材との組み合わせが例示できる。
【0088】
第1実施形態に係る蓄熱ユニット1は、水平面上に設置したときに、前記水平面に脚部20(中央脚部21及び隅脚部22)の下端20a(中央脚部21の下端21a及び隅脚部22の下端22a)が当接し、前記水平面と蓄熱パネル10とが離間するように、すなわち、前記水平面に蓄熱パネル10の下端10aとが当接しないように、脚部20(中央脚部21及び隅脚部22)に蓄熱パネル10が保持されている。この特徴を有する蓄熱ユニット1を、床下地面等の設置面に設置した場合に、該設置面と蓄熱パネル10との間に空間が形成されるため、この空間にコード、ケーブル等を這わせることができる。
【0089】
また、第1実施形態に係る蓄熱ユニット1では、水平面上に設置したときに、蓄熱パネル10の下端10aと、前記水平面との間に、2つの方向X,Y(図4参照)に沿って延び、且つ、方向X,Yの両端において外方に開放された空間Qが形成される。蓄熱ユニット1のこの態様では、空間Qに、方向X,Yに沿って空気が流れることができ、最も下方に位置する蓄熱パネル10の蓄熱体11と前記空気との熱の交換を効率的に行うことができる。また、この特徴を有する蓄熱ユニット1を、床下地面等の設置面に設置した場合に、該設置面と蓄熱パネル10との間に方向X,Yに沿って延び両端が開放された空間が形成されるため、この空間にコード、ケーブル等を這わせることができる。図示する例では、空間Qが、2つの方向X,Yに沿って延び、且つ、方向X,Yの両端において外方に開放された空間であるが、この形態には限定されず、空間Qは少なくとも1つの方向に沿って延び、且つ、該方向の両端において外方に開放された空間であればよい。
【0090】
第1実施形態に係る蓄熱ユニット1では、複数の蓄熱パネル10が、空隙Sを間に介して脚部20に保持されている。空隙Sは、それぞれが、2つの方向X,Y(図4参照)に沿って延び、且つ、方向X,Yの両端において外方に開放された空間である。蓄熱ユニット1のこの態様では、蓄熱パネル10間に形成された空隙Sに、方向X,Yに沿って空気が流れることができ、蓄熱体11と前記空気との熱の交換を効率的に行うことができる。図示する例では、空隙Sが、2つの方向X,Yに沿って延び、且つ、方向X,Yの両端において外方に開放された空間であるが、この形態には限定されず、空隙Sは少なくとも1つの方向に沿って延び、且つ、該方向の両端において外方に開放された空間であればよい。
【0091】
<2.床構造の第1実施形態>
本発明の床構造体の具体的な第1実施形態を図6、7を参照して以下に説明する。
【0092】
本実施形態に係る床構造2は、
床下地面61から上方へ床下空間Pを隔てて配設された床構造体62と、
床下地面61上に設置された、本発明に係る上記の蓄熱ユニット1と
を備える。
【0093】
本実施形態は、蓄熱ユニットとして、上記の第1実施形態に係る蓄熱ユニット1を用いた実施形態であるが、本発明の範囲内であれば他の蓄熱ユニット(例えば後述する第2実施形態又は第3実施形態に係る蓄熱ユニット1)を用いてもよい。
【0094】
床構造2としては、OAフロア等の二重床構造、住宅の1階における、床束や大引等を使った在来工法による床構造が例示できる。床下地面61としては、コンクリートスラブの表面、住宅の1階の床下のコンクリート基礎の表面等が例示できる。
【0095】
本実施形態に係る床構造2では、床構造体62は、複数の床パネル621が敷設されたものである。床パネル621は、スチールパネル、アルミニウムパネル、ケイカルパネル、合板、パーティクルボード、OSB等の板により構成することができる。図示しないが、床パネル621が敷設された床構造体62の室内空間63の側には更にカーペット等の床仕上げ材が敷設されてもよい。
【0096】
床構造体62と、床下地面61との間には、床構造体62を支持する支持脚64が配置される。支持脚64は、床下空間Pの高さを微調整することができるように構成されている。支持脚64は、床パネル621を受ける床受部641と、床受部641が上端に連結された棒状の支持部642と、支持部642の下端に連結され、床下地面61に支持部642を固定する基礎部643とを備える。
【0097】
床下空間Pの、床下地面61から床構造体62までの高さよりも小さくなるように、設置される蓄熱ユニット1の高さを設定すればよい。例えば、OAフロア等の二重床構造では、一般的には、床下空間Pの高さは50〜300mmであり、床下空間Pの高さ以下となるように、蓄熱ユニット1の高さを設定することができる。
【0098】
本実施形態に係る床構造2では、床下空間Pに蓄熱ユニット1が設置されていることにより、床下空間Pに暖熱または冷熱を貯蔵することができる。蓄熱ユニット1は単独で蓄熱体11の姿勢を保持することができるため、床構造2では、蓄熱ユニット1を床下地面Pに設置することで構築することができ、機構が簡便で低コスト化が容易である。
【0099】
また、蓄熱ユニット1として、第1実施形態のように、水平面上に設置した時に蓄熱パネル10と前記水平面とが離間するように蓄熱パネル10が脚部20に保持された構造のものを用いると、図6に示すように、床下地面61上にコード、ケーブル等の配線65を配設した上から蓄熱ユニット1を設置することができるため特に好ましい。
【0100】
本実施形態の床構造2によれば、室内空間63の側の空気の冷熱又は暖熱が蓄熱ユニット1の蓄熱体11に貯蔵され、蓄熱体11に貯蔵された冷熱又は暖熱は、再び室内空間63の側の空気に供給されることができる。このとき、室内空間63の側の空気と、蓄熱体11とが、床構造体62及び床下空間Pを介して熱の授受を行うことができる。
【0101】
より効率的に熱の授受を行うためには、図6に示すように、室内空間63と床下空間Pとの間を通気し室内空間63の空気を床下空間Pに導入する導入路66と、室内空間63と床下空間Pとの間を通気し床下空間Pの空気を室内空間63に導出する導出路67とを形成することが好ましい。図6では、導入路66と導出路67とはともに床構造体62の一部に形成されているが、この形態には限定されず、例えば室内空間63を囲う壁部(図示せず)や天井部(図示せず)に形成されていてもよい。導入路66及び導出路67の空気の流路は適当なダクトにより形成することができる。導入路66及び導出路67の少なくとも一方には、空気を移動させるための手段(例えば送風ファン、エアーコンディショナー)が配置されてもよい。
【0102】
図6では空気の流れを矢印で示す。導入路66及び導出路67を備える床構造2は例えば次のような利用が可能である。蓄熱ユニット1の蓄熱体11の蓄熱材組成物13が、冷房により冷やされた空気の温度よりも高く、外気温よりも低い相変化温度の潜熱蓄熱材を含むものである場合に、深夜等の電気料金の安い時間帯に冷房装置(図示せず)を稼働して室内空間63を冷却しつつ、室内空間63と床下空間Pとの間で空気を循環させて、床下空間Pに設置された蓄熱ユニット1の蓄熱体11の蓄熱材組成物13が含む潜熱蓄熱材を固化させ、冷気を貯蔵する。そして、昼間などの電気料金の高い時間帯には、室内空間63の空気を、導入路66により床下空間Pに導入し、蓄熱ユニット1を通過させて、導出路67により室内空間63に導出させる。この過程で、室内空間63から床下空間Pに導入された空気は、蓄熱ユニット1の蓄熱体11の蓄熱材組成物13が含む潜熱蓄熱材の融解する際の融解熱により冷却され、室内空間63に導出される。
【0103】
導入路66及び導出路67を備える床構造2では、床下空間Pに空気の流れが生じる。この場合、第1実施形態に係る蓄熱ユニット1を、図4に示す方向X,Yのいずれかが、床下空間Pにおける空気の流れの方向と概ね一致するように床下地面61に設置することで、蓄熱ユニット1の蓄熱パネル10の蓄熱体11と、流れる空気との熱の交換を効率化することができる。
【0104】
本実施形態に係る床構造2では、図7に示すように、床構造体62を構成する複数の床パネル621のうち少なくとも1つが取り外し可能であり、この取り外し可能な床パネル621の1つを取り外したときに形成される床下空間Pの開口70の平面視での寸法よりも、蓄熱ユニット1の平面視での寸法が小さく形成されていることを更なる特徴とする。ここで、「床下空間Pの開口70の平面視での寸法よりも、蓄熱ユニット1の平面視での寸法が小さい」とは、床下空間Pの開口70の平面視での輪郭Lが、蓄熱ユニット1の平面視での輪郭Mを完全に内包することを指す。この場合、室内空間63の側から、開口70を通じて、蓄熱ユニット1を床下地面61に容易に取り付け及び取り外しすることが可能である。このため、例えば、床下地面61上に配線65が設置されており、その上に蓄熱ユニット1が配置されている場合でも、配線65のメンテナンスを行うことが容易である。
【0105】
<3.第2実施形態に係る蓄熱ユニット>
本発明の蓄熱ユニットの第2実施形態について図8を参照して説明する。以下の説明では、第2実施形態に係る蓄熱ユニットにおいて、第1実施形態に係る蓄熱ユニットと共通する特徴を備える構成要素については同じ番号を付し、説明を省略する。
【0106】
第2実施形態に係る蓄熱ユニット1は、4つの蓄熱体11と、4つの蓄熱体11を支持する枠体12とを備える蓄熱パネル10と、3つの蓄熱パネル10の各々の枠体12の部分と係合して、3つの蓄熱パネル10の姿勢を保持する脚部20とを備える。
【0107】
第2実施形態に係る蓄熱ユニット1は、第1実施形態に係る蓄熱ユニット1と同様に、脚部20を介して床下地面等に直接設置することができ、且つ、設置後の取り外しも容易である。
【0108】
第2実施形態に係る蓄熱ユニット1は、水平面上に設置したときに、蓄熱パネル10が水平方向に対して略垂直となるように蓄熱パネル10が脚部20に保持されていていることを特徴とする。
【0109】
第2実施形態に係る蓄熱ユニット1は、脚部20として、2つの垂直保持用脚部23を備える。垂直保持用脚部23は、それぞれ、蓄熱パネル10の枠体12の周縁部12Aのうち、蓄熱パネル10の平面視での矩形の輪郭の1つの辺上に位置する2つの部分(保持部分12A3)と係合する。
【0110】
第2実施形態では、垂直保持用脚部23はそれぞれ板体であり、蓄熱パネル10の面の方向と交差する方向(垂直な方向)に配向され、蓄熱パネル10の枠体12と係合される。
【0111】
垂直保持用脚部23と、枠体12の周縁部12Aの保持部分12A3とには、互いに係合可能に形成されている。具体的な構成は図示しないが、垂直保持用脚部23は、第1実施形態における中央脚部21と同様に切れ込みが形成された構造とすることができ、枠体12の周縁部12Aの保持部分12A3は、第1実施形態における枠体12の周縁部12Aの辺中央部分12A1と同様に切れ込みが形成された構造とすることができる。そして、垂直保持用脚部23と、枠体12の周縁部12Aの保持部分12A3とは、前記切れ込みを介して互いに嵌合することができる。垂直保持用脚部23には、第1実施形態における中央脚部21と同様に、保持される蓄熱パネル10の数(図示する例では3)に応じた数の切れ込みを形成することができる。
【0112】
第2実施形態に係る蓄熱ユニット1は、水平面上に設置したときに、前記水平面に脚部20(垂直保持用脚部23)の下端20a(垂直保持用脚部23の下端23a)が当接し、前記水平面と蓄熱パネル10とが離間するように、すなわち、前記水平面に蓄熱パネル10の下端10aとが当接しないように、脚部20(垂直保持用脚部23)に蓄熱パネル10が保持されている。この特徴を有する蓄熱ユニット1を、床下地面等の設置面に設置した場合に、該設置面と蓄熱パネル10との間に空間が形成されるため、この空間にコード、ケーブル等を這わせることができる。
【0113】
また、第2実施形態に係る蓄熱ユニット1では、水平面上に設置したときに、蓄熱パネル10の下端10aと、前記水平面との間に、1つの方向X図8参照)に沿って延び、且つ、方向Xの両端において外方に開放された空間Qが形成される。蓄熱ユニット1のこの態様では、空間Qに、方向Xに沿って空気が流れることができ、蓄熱パネル10の蓄熱体11と前記空気との熱の交換を効率的に行うことができる。また、この特徴を有する蓄熱ユニット1を、床下地面等の設置面に設置した場合に、該設置面と蓄熱パネル10との間に方向Xに沿って延び両端が開放された空間が形成されるため、この空間にコード、ケーブル等を這わせることができる。
【0114】
第2実施形態に係る蓄熱ユニット1では、複数の蓄熱パネル10が、空隙Sを間に介して脚部20に保持されている。空隙Sは、それぞれが、2つの方向Y,Z図8参照)に沿って延び、且つ、方向Y,Zの両端において外方に開放された空間である。蓄熱ユニット1のこの態様では、蓄熱パネル10間に形成された空隙Sに、方向Y,Zに沿って空気が流れることができ、蓄熱体11と前記空気との熱の交換を効率的に行うことができる。図示する例では、空隙Sが、2つの方向Y,Zに沿って延び、且つ、方向Y,Zの両端において外方に開放された空間であるが、この形態には限定されず、空隙Sは少なくとも1つの方向に沿って延び、且つ、該方向の両端において外方に開放された空間であればよい。
【0115】
第2実施形態及び後述する第2実施形態に係る蓄熱ユニット1は、隣接する蓄熱パネル10間の空隙Sが垂直な方向Z及び水平な方向Yに延び、且つ、水平な方向Yの両端において外方に開放されていることにより、次の有利な効果を奏する。
【0116】
床構造の床下空間等を流れる空気流、特にエアーコンディショナーにより床下空間に供給される空気流は、水平方向に広がり垂直方向の厚さが小さい空気流となり易い。図1〜5に基づき説明した第1実施形態に係る蓄熱ユニット1のように、隣接する蓄熱パネル10間に形成される複数の空隙Sの各々が水平な方向X、Yに沿って延びる蓄熱ユニットに対し、水平方向に広がり垂直方向の厚さが小さい空気流が通過するとき、垂直方向の位置が異なる複数の空隙Sのうち一部のみに空気流が通過し、空気流が通過する一部の空隙Sを挟む蓄熱パネル10のみが空気流と熱交換して蓄熱の効率が低下する傾向がある。これに対して、第2実施形態及び後述する第3実施形態に係る蓄熱ユニット1のように、水平面上に設置したときに個々の蓄熱パネル10が略垂直に配置され、空隙Sの各々が、垂直な方向Z及び水平な方向Yに延び、且つ、水平な方向Yの両端において外方に開放された構造の蓄熱ユニット1に対し、水平な方向Yに沿って、水平方向に広がり垂直方向の厚さが小さい空気流が通過すると、全ての空隙Sを空気流が通過することができるため、全ての蓄熱パネル10が空気流と熱交換することができ蓄熱及び放熱を効率的に行うことができる。
【0117】
<4.第3実施形態に係る蓄熱ユニット>
本発明の蓄熱ユニットの第3実施形態について図9を参照して説明する。以下の説明では、第3実施形態に係る蓄熱ユニットにおいて、第1実施形態に係る蓄熱ユニットと共通する特徴を備える構成要素については同じ番号を付し、説明を省略する。
【0118】
第3実施形態に係る蓄熱ユニット1は、2つの蓄熱体11と、2つの蓄熱体11を支持する枠体12とを備える蓄熱パネル10と、6つの蓄熱パネル10の各々の枠体12の部分と係合して、6つの蓄熱パネル10の姿勢を保持する脚部20とを備える。
【0119】
第3実施形態に係る蓄熱ユニット1は、第1実施形態及び実施形態2に係る蓄熱ユニット1と同様に、脚部20を介して床下地面等に直接設置することができ、且つ、設置後の取り外しも容易である。
【0120】
第3実施形態に係る蓄熱ユニット1は、脚部20として、板状脚部24を備える。板状脚部24の上面24aの側には、蓄熱パネル10に応じた数の凹溝24bが形成されている。蓄熱パネル10の枠体12の周縁部12Aのうち、蓄熱パネル10の平面視での矩形の輪郭の1つの辺上の部分12A4が、板状脚部24の凹溝24bの1つに係合することで、複数の蓄熱パネル10が間に空隙Sを介して板状脚部24に保持される。
【0121】
第3実施形態に係る蓄熱ユニット1では、6つの蓄熱パネル10のうち3つからなる蓄熱パネル群10Aは、蓄熱体11が枠体12の開口部分12Cから露出した側の面が同じ方向に向くように隣接して配置され、残りの3つからなる蓄熱パネル群10Bも前記面が同じ方向に向くように隣接して配置され、且つ、蓄熱パネル群10Aの3つの蓄熱パネル10と、蓄熱パネル群10Bの3つの蓄熱パネル10は、前記面が互いに向かい合うように、板状脚部24に保持される。
【0122】
第3実施形態に係る蓄熱ユニット1は、水平面上に設置したときに、6つの蓄熱パネル10が水平な方向X、Yに対して略垂直であり、6つの蓄熱パネル10の間の空隙Sが、水平な方向Yに沿って延び、水平な方向Yの両端において外方に開放された空間となるように、6つの蓄熱パネル10が板状脚部24に保持されていている。第3実施形態に係る蓄熱ユニット1は、水平面上に設置したときに6つの蓄熱パネル10が水平な方向X、Yに対して略垂直に配向するため、必然的に、各空隙Sは、水平な方向Yに沿って延在するだけでなく、垂直な方向Zに沿って延在する。すなわち、第2実施形態に係る蓄熱ユニット1について詳述したのと同様に、第3実施形態に係る蓄熱ユニット1もまた、水平面上に設置したときに個々の蓄熱パネル10が略垂直に配置され、空隙Sの各々が、垂直な方向Z及び水平な方向Yに延び、且つ、水平な方向Yの両端において外方に開放された構造を有する。このため、第3実施形態に係る蓄熱ユニット1に対し、水平な方向Yに沿って、水平方向に広がり垂直方向の厚さが小さい空気流が通過するとき、前記空気流は全ての空隙Sを通過することができるため、全ての蓄熱パネル10が空気流と熱交換することができ蓄熱及び放熱を効率的に行うことができる。
【0123】
図示する第3実施形態に係る蓄熱ユニット1は、更に、2つの補強部材90を備える。2つの補助部材90は、それぞれ、蓄熱パネル10に応じた数の凹溝90bが形成された棒状の部材である。蓄熱パネル10の枠体12の周縁部12Aのうち、前記辺上の部分12A4と対向する他方の辺上の部分12A5の両端部分がそれぞれ、各補強部材90の凹溝90bの1つに係合することで、蓄熱パネル10の姿勢が保持される。ただし補強部材90は必須の構成ではなく、板状脚部24のみで蓄熱パネル10の姿勢が保持されていてもよい。
【0124】
<5.床構造の第2実施形態>
本発明の床構造体の具体的な第2実施形態を、図10を参照して以下に説明する。以下の説明では、第2実施形態に係る床構造において、第1実施形態に係る床構造と共通する特徴を備える構成要素については同じ番号を付し、説明を省略する。
【0125】
床構造2の第2実施形態は、
床下地面61から上方へ床下空間Pを隔てて配設された床構造体62と、
床下地面61上に設置された、本発明に係る上記の蓄熱ユニット1と
を備える。
【0126】
図10では、蓄熱ユニット1として、上記の第3実施形態に係る蓄熱ユニット1を用いた例を示す。
【0127】
本実施形態に係る床構造2において床構造体62は、大引き625、大引き625の上に大引き625と直交するように配置された根太624、及び、根太624の上に敷設された床下合板623により構成される。図示しないが、床構造体62の室内空間63の側には更にカーペット等の床仕上げ材が敷設されてもよい。
【0128】
図10では省略するが、床構造体62と、床下地面61との間には、床構造体62を支持する床束が配置される。床束の具体例としては床構造の第1実施形態において説明した支持脚64が例示できる。
【0129】
床下空間Pの、床下地面61から床構造体62までの高さよりも小さくなるように、設置される蓄熱ユニット1の高さを設定すればよい。一般的には、床下空間Pの高さは50〜300mmであり、床下空間Pの高さ以下となるように、蓄熱ユニット1の高さを設定することができる。
【0130】
第3実施形態に係る床構造2は、床下空間Pに空気流Fを供給する気流供給器100を備えることを更なる特徴とする。ここで、気流供給器100は、床下空間Pに空気流Fを供給できるものであれば良く、扇風機、送風ファン等の送風機、エアーコンディショナー等が例示できる。図10では、床構造体62の一部に室内空間63と床下空間Pとを繋ぐ床開口部69が形成されている。気流供給器100は、床開口部69内に設置され、床下空間Pに空気流Fを供給する。気流供給器100がエアーコンディショナーである場合、例えば電気料金の安い時間帯や、室内外の温度差が小さく負荷の小さい時間帯に、エアーコンディショナーにより冷気又は暖気を空気流Fとして床下空間Pに供給して蓄熱ユニット1に冷気又は暖気を潜熱として蓄えることができる。また、気流供給器100が送風機である場合、春、秋等の中間期に、夜、朝の冷気を室内空間63から床下空間Pに供給して蓄熱ユニット1に蓄え、昼間の高温時に、床下空間に蓄えられた冷気を利用すること等が可能である。
【0131】
第2実施形態に係る床構造2では、蓄熱パネル10の各々が、床下地面61に対して略垂直であり、空隙Sの各々が、水平方向に沿って延び且つ気流供給器100が供給する空気流Fの流れの方向に沿うように、第3実施形態に係る蓄熱ユニット1が床下地面61上に設置されている。このため、床下空間Pを流れる空気流Fは、第3実施形態に係る蓄熱ユニット1の全ての空隙Sを通過することができるため、蓄熱ユニット1が備える全ての蓄熱パネル10の蓄熱体11が空気流Fと熱の授受を効率的に行うことができる。
【0132】
本実施形態の床構造2の好ましい一態様では、蓄熱ユニット1が備える蓄熱体11に含まれる蓄熱材組成物13は、潜熱蓄熱材として、気流供給器100から供給される空気流Fの、蓄熱ユニット1の設置個所における温度に対して、2℃以上低い、より好ましくは3℃以上低い、相変化温度の潜熱蓄熱材を含む。この態様の床構造2は、前記潜熱蓄熱材が、固化した状態から気流供給器100から供給される空気流Fにより融解し、その後に再固化するときの放熱量が大きい、すなわち暖気の熱を効率的に蓄熱することができる。このため、冬場にエアーコンディショナーの負荷(室内外温度差)が小さい時間帯(昼間等)にエアーコンディショナー(気流供給器100)による暖房を稼働して、蓄熱ユニット1に暖気を供給して蓄熱体11の潜熱蓄熱材を融解させることで暖気を蓄え、負荷が大きい時間帯(早朝等)にエアーコンディショナーによる暖房を停止し、床下空間Pの蓄熱ユニット1の蓄熱体11の前記潜熱蓄熱材を再固化させることで蓄えられた暖気を利用することができる。本態様の床構造2において、複数の蓄熱ユニット1が床下地面61上に設置される場合、気流供給器100から供給される空気流Fの温度が設置個所ごとに異なる場合は、設置個所の空気流Fの温度に応じて異なる相変化温度の潜熱蓄熱材を含む蓄熱ユニット1を設置すれば良い。
【0133】
本実施形態の床構造2の他の好ましい一態様では、蓄熱ユニット1が備える蓄熱体11に含まれる蓄熱材組成物13は、潜熱蓄熱材として、気流供給器100から供給される空気流Fの、蓄熱ユニット1の設置個所における温度に対して、2℃以上高い、より好ましくは3℃以上高い相変化温度の潜熱蓄熱材を含む。この態様の床構造2は、前記潜熱蓄熱材が、融解した状態から気流供給器100から供給される空気流Fにより固化し、その後に再融解するときの吸熱量が大きい、すなわち冷気を効率的に蓄えることができる。このため、春、秋等の中間期に、夜、朝の冷気を気流供給器100により蓄熱ユニット1に供給して蓄熱体11の潜熱蓄熱材を固化させることで冷気を蓄え、昼間の高温時に、床下空間Pの蓄熱ユニット1の蓄熱体11の前記潜熱蓄熱材を再融解させることで蓄えられた冷気を利用することができる。本態様の床構造2において、複数の蓄熱ユニット1が床下地面61上に設置される場合、気流供給器100から供給される空気流Fの温度が設置個所ごとに異なる場合は、設置個所の空気流Fの温度に応じて異なる相変化温度の潜熱蓄熱材を含む蓄熱ユニット1を設置すれば良い。
【0134】
<6.暖気/冷気を蓄える方法>
本発明はまた、上記の第1〜第3実施形態の蓄熱ユニット1を用いて暖気を蓄える方法であって、
蓄熱ユニット1が備える蓄熱体11における蓄熱組成物13が含む潜熱蓄熱材の相変化温度に対して、2℃以上高い、好ましくは3℃以上高い温度の空気に、蓄熱ユニット1を接触させること
を含む方法を提供する。
【0135】
下記の実施例2の実験結果は、蓄熱体11における蓄熱組成物13が含む潜熱蓄熱材の相変化温度に対して、2℃以上高い、好ましくは3℃以上高い、温度の空気に、蓄熱ユニット1を接触させて、前記潜熱蓄熱材を固化状態から融解させた場合、前記潜熱蓄熱材が再固化する際の放熱量が大きいこと、すなわち暖気が効率的に蓄えられること、を示す。
【0136】
本発明はまた、上記の第1〜第3実施形態の蓄熱ユニット1を用いて冷気を蓄える方法であって、
【0137】
蓄熱ユニット1が備える蓄熱体11における蓄熱組成物13が含む潜熱蓄熱材の相変化温度に対して、2℃以上低い、好ましくは3℃以上低い温度の空気に、蓄熱ユニット1を接触させること
を含む方法を提供する。
【0138】
下記の実施例2の実験結果から、蓄熱体11における蓄熱組成物13が含む潜熱蓄熱材の相変化温度に対して、2℃以上低い、好ましくは3℃以上低い、温度の空気に、蓄熱ユニット1を接触させて、前記潜熱蓄熱材を融解状態から固化させた場合、前記潜熱蓄熱材が再融解する際の吸熱量が大きいこと、すなわち冷気が効率的に蓄えられること、が推測される。
【0139】
[実施例1]
図1〜5に示す第1実施形態に係る蓄熱ユニット1を製造した。
【0140】
蓄熱パネル10の枠体12として、平面視での外郭寸法が厚さ2.7mm、幅420mm、奥行き420mmであり、開口部分12Cとして、厚さ方向に貫通する、一辺約200mmの正方形の開口部分を4つ形成した、中密度繊維板(MDF)を用いた。枠体12の周縁部12Aの辺中央部分12A1には、それぞれ、図1に示すように、蓄熱パネル10の平面視において周縁から内方に向かって、枠体切れ込み121を形成した。また、枠体12の周縁部12Aの4つの隅部分12A2には、それぞれ、図1に示すように、蓄熱パネル10の平面視において外方に向かって突出した突起122を形成した。
【0141】
蓄熱材組成物13としては、潜熱蓄熱材としてのパラフィンが、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーによりゲル化された組成物を、木質基材に含浸させたものを用いた。木質基材の寸法は、厚さ9mm、幅200mm、奥行き200mmとした。蓄熱材組成物13が有する前記パラフィンの相変化温度(潜熱吸放出温度)は15〜40℃であった。
【0142】
袋体14は、第1シート材14Aとしてポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂シートを用い、第2シート材14Bとしてアルミラミネートフィルムを用いて形成した。PETシートは、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、PET樹脂、EVA樹脂がこの順で積層された三層構造のシートである。アルミラミネートフィルムはアルミニウム、PET樹脂、EVA樹脂がこの順で積層された三層構造のシートである。第1シート材14Aと第2シート材14Bとは、各々のEVA樹脂の層同士を熱融着により融着して接合部14Dを形成した。
【0143】
上記の材料を用いて図1及び2に示す構造の蓄熱パネル10を3枚作製した。
【0144】
脚部20として、4つの中央脚部21と、4つの隅脚部22を用いた。中央脚部21としては、それぞれ、厚さ9mm、幅80mm、高さ180mmの中密度繊維板(MDF)に、3つの中央脚部切れ込み211が形成されたものを用いた。隅脚部22としては、それぞれ、厚さ2.7mm、幅50mm、高さ180mmの中密度繊維板(MDF)に、3つの貫通孔221が形成されたものを用いた。
【0145】
上記の蓄熱パネル10及び脚部20により、図4に示す構造の蓄熱ユニット1を作成した。
【0146】
[実施例2]
図9に示す第3実施形態に係る蓄熱ユニット1を製造した。
蓄熱パネル10の枠体12として、平面視での外郭寸法が厚さ2.7mm、幅420mm、奥行き220mmであり、開口部分12Cとして、厚さ方向に貫通する、一辺約200mmの正方形の開口部分を2つ形成した、中密度繊維板(MDF)を用いた。
【0147】
蓄熱材組成物13としては、潜熱蓄熱材として相変化温度が26℃のパラフィンが、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーによりゲル化された組成物を、木質基材に含浸させたものを用いた。木質基材の寸法は、厚さ9mm、幅200mm、奥行き200mmとした。
【0148】
袋体14は、第1シート材14Aとしてポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂シートを用い、第2シート材14Bとしてアルミラミネートフィルムを用いて形成した。PETシートは、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、PET樹脂、EVA樹脂がこの順で積層された三層構造のシートである。アルミラミネートフィルムはアルミニウム、PET樹脂、EVA樹脂がこの順で積層された三層構造のシートである。第1シート材14Aと第2シート材14Bとは、各々のEVA樹脂の層同士を熱融着により融着して接合部14Dを形成した。
【0149】
上記の材料を用いて図9に示す構造の蓄熱パネル10を6枚作製した。
板状脚部24として、厚さ12mm、幅420mm、奥行き420mmの合板を用いた。板状脚部24の一方の面(上面)24aに、幅3mmの凹溝24bを6つ形成した。
【0150】
補助部材90として、凹溝90bを6つ形成した2本の四角棒材を用意した。
【0151】
6枚の蓄熱パネル10のそれぞれの枠体12の一方の長辺部分12A4を、板状脚部24の凹溝24bに固定し、枠体12の他方の長辺部分12A5の両端を、2つの補助部材90の凹溝90bに固定して、第3実施形態に係る蓄熱ユニット1を作製した。
【0152】
次に、上記で作製した第3実施形態に係る蓄熱ユニット1の、蓄熱体11(相変化温度26℃)の両面に熱流計のセンサーを配置し、以下の試験を行った。20℃において蓄熱体11の潜熱蓄熱材が固化した状態の蓄熱ユニット1に、エアーコンディショナーから26℃(相変化温度)、27℃(相変化温度+1℃)、28℃(相変化温度+2℃)、29℃(相変化温度+3℃)、31℃(相変化温度+5℃)、潜熱蓄熱材が完全に融解する温度、のいずれかに温度設定した空気流を供給し、設定温度に十分に馴らした後、蓄熱ユニット1を20℃の恒温槽に移して約1日間放置した。このときの放熱量を熱量計で測定した。エアーコンディショナーの設定温度を潜熱蓄熱材が完全に融解する温度とした場合の放熱量を100%としたときの各設定温度での放熱量の割合(%)を「潜熱蓄熱割合」とした。結果は以下の通り。
【0153】
この結果から、固化した状態の蓄熱材組成物に相変化温度以上の温度の空気(暖気)を接触させて蓄熱するためには、潜熱蓄熱割合が50%以上はあることが好ましく、そのためには、相変化温度の2℃以上の温度の空気と接触させることが好ましいことが明らかとなった。また、融解した状態の蓄熱材組成物に相変化温度以下の温度の空気(冷気)を接触させて蓄熱するためには、相変化温度の2℃以下の温度の空気と接触させることが好ましいことも示唆される。
【表1】
【符号の説明】
【0154】
1:蓄熱ユニット、2:床構造、10:蓄熱パネル、11:蓄熱体、12:枠体、13:蓄熱材組成物、14:袋体、20:脚部、21:中央脚部、22:隅脚部、23:垂直保持用脚部、12C:枠体の開口部分、61:床下地面、62:床構造体、621:床パネル、P:床下空間、70:床下空間の開口、S:複数の蓄熱パネル間の間隙、X:空隙Sが延びる方向、Y:空隙Sが延びる方向、Y:空隙Sが延びる方向、Z:空隙Sが延びる方向
図1
図2
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図7
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図9
図10