(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0023】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0024】
なお、本明細書中において、高電源電圧をHレベル(又はVDD)、低電源電圧をLレベル(又はGND)と呼ぶ場合がある。
【0025】
また、本明細書は、以下の実施の形態及び実施例を適宜組み合わせることが可能である。また、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、互い構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0026】
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い表現での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体などに分類される。例えば、トランジスタの半導体層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。また、OSトランジスタと記載する場合においては、金属酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物と総称する場合がある。
【0027】
(実施の形態1)
〈〈半導体装置10〉〉
図1は、本発明の一形態である半導体装置10の構成例を示す回路図である。半導体装置10は、電圧生成回路11と、電圧保持回路12と、補正回路20を有する。電圧生成回路11は電圧保持回路12に電気的に接続され、電圧保持回路12は補正回路20と電気的に接続されている。なお、補正回路20と電圧保持回路12との結節点をノードN11と呼称する。
【0028】
トランジスタM10は、記憶回路、演算回路、画素回路など、様々な回路に用いられるトランジスタを表している。
図1は、3つのトランジスタM10が図示されているが、これに限定されず半導体装置10はさらに多くのトランジスタM10と接続されていてもよい。なお、以降の説明において、トランジスタM10はnチャネル型トランジスタとして説明を行う。
【0029】
それぞれのトランジスタM10は第1ゲート及び第2ゲートを有する。これら第2ゲートは、それぞれのトランジスタM10のしきい値電圧(V
th0)を制御する機能を有する。トランジスタM10において、第1ゲートと第2ゲートとは、半導体層を間に介して互いに重なる領域を有することが好ましい。半導体装置10は、ノードN11を介して、トランジスタM10の第2ゲートに電気的に接続されている。
【0030】
半導体装置10は、トランジスタM10の第2ゲートに電圧V
BGを書き込み、さらにそれを保持する機能を有する。例えば、電圧V
BGとして負電位が与えられた場合、トランジスタM10は第2ゲートの負電位が保持されている間、V
th0を高く保つことができる。トランジスタM10はV
th0を高く保つことで、ノーマリーオンを防ぐことができ、トランジスタM10を含む半導体装置全体の消費電力を下げることができる。例えば、トランジスタM10をメモリセルの選択トランジスタに用いた場合、ストレージとして機能する容量素子の電荷を長期間保持することができる。
【0031】
〈電圧生成回路11〉
電圧生成回路11の回路構成例を
図2(A)、(B)に示す。これらの回路図は降圧型のチャージポンプであり、入力端子INにGNDが入力され、出力端子OUTからV
BG0が出力される。ここでは、一例として、チャージポンプ回路の基本回路の段数は4段としているが、これに限定されず任意の段数でチャージポンプ回路を構成してもよい。
【0032】
図2(A)に示す電圧生成回路11aは、トランジスタM21乃至M24、および容量素子C21乃至C24を有する。以降、トランジスタM21乃至M24はnチャネル型トランジスタとして説明を行う。
【0033】
トランジスタM21乃至M24は、入力端子INと出力端子OUT間に直列に接続されており、それぞれのゲートと第1電極がダイオードとして機能するように接続されている。トランジスタM21乃至M24のゲートは、それぞれ、容量素子C21乃至C24が接続されている。
【0034】
奇数段の容量素子C21、C23の第1電極には、CLKが入力され、偶数段の容量素子C22、C24の第1電極には、CLKBが入力される。CLKBは、CLKの位相を反転した反転クロック信号である。
【0035】
電圧生成回路11aは、入力端子INに入力されたGNDを降圧し、V
BG0を生成する機能を有する。電圧生成回路11aは、CLK、CLKBの供給のみで、負電位を生成することができる。
【0036】
上述したトランジスタM21乃至M24は、OSトランジスタで形成してもよい。OSトランジスタを用いることで、ダイオード接続されたトランジスタM21乃至M24の逆方向電流が低減できて好ましい。
【0037】
図2(B)に示す電圧生成回路11bは、pチャネル型トランジスタであるトランジスタM31乃至M34で構成されている。その他の構成要素については、電圧生成回路11aの説明を援用する。
【0038】
〈電圧保持回路12〉
電圧保持回路12は、トランジスタM11を有する(
図1)。トランジスタM11は第1ゲートおよび第2ゲートを有する。第1ゲート及び第2ゲートは半導体層を間に介して互いに重なる領域を有することが好ましい。なお、以降の説明において、トランジスタM11はnチャネル型トランジスタとして説明を行う。
【0039】
トランジスタM11の第1端子は電圧生成回路11に電気的に接続され、トランジスタM11の第2端子はノードN11に電気的に接続されている。トランジスタM11の第2端子は、トランジスタM11の第1ゲートおよびトランジスタM11の第2ゲートに電気的に接続されている。トランジスタM11はダイオードとしての機能を有する。
【0040】
電圧保持回路12は、電圧生成回路11が生成した電圧V
BG0を、電圧V
BGとして、トランジスタM10が有する第2ゲートに印加し保持する機能を有する。なお、トランジスタM11のしきい値電圧をV
th1とすると、V
BG0=V
BG‐V
th1の関係が成り立つ。
【0041】
トランジスタM11は、トランジスタM10の第2ゲートに電位を書き込み、保持する機能を有する。
図3(A)は、一例として、トランジスタM10の第2ゲートに負電位(−5V)が書き込まれた例を示している。トランジスタM10の第2ゲートに書き込まれた負電位はトランジスタM10のV
th0をプラスにシフトさせる。トランジスタM11はその第1端子をGNDにすることで、書き込まれた負電位を保持し、トランジスタM10はノーマリ・オフを維持することができる。
【0042】
図3(A)において、トランジスタM11はV
Gが0Vとなる。V
G=0Vにおけるドレイン電流(以降、カットオフ電流と呼ぶ)が十分に小さければ、トランジスタM11は電荷の流れを遮断し、電圧保持回路12は上記負電位を長期間保持することができる。
【0043】
トランジスタM11のチャネル長は、トランジスタM10のチャネル長よりも長いことが好ましい。例えば、トランジスタM10のチャネル長を1μm未満とした場合、トランジスタM11のチャネル長は1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。トランジスタM11のチャネル長を長くすることで、トランジスタM11は短チャネル効果の影響を受けず、カットオフ電流を低く抑えることができる。また、トランジスタM11はソースとドレイン間の耐圧を高くすることができる。トランジスタM11のソースとドレイン間の耐圧が高いと、高電圧を生成する電圧生成回路11と、トランジスタM10との接続を容易にすることができる。
【0044】
トランジスタM11には、OSトランジスタやチャネル形成領域にワイドバンドギャップ半導体を用いたトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタやワイドバンドギャップ半導体を用いたトランジスタは、カットオフ電流が小さく、ソースとドレイン間の耐圧が高い。なお、本明細書においてワイドバンドギャップ半導体とは、バンドギャップが2.2eV以上の半導体である。例えば、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ダイヤモンドなどが挙げられる。
【0045】
トランジスタM11はトランジスタM10よりも小さいカットオフ電流が要求される。一方で、トランジスタM10はトランジスタM11よりも大きなオン電流が要求される。このように、要求される性質が異なるトランジスタを同一基板上に作る場合、異なる半導体を用いてそれぞれのトランジスタを形成すればよい。トランジスタM11はトランジスタM10よりも、バンドギャップの大きい半導体をチャネル形成領域に用いることが好ましい。また、トランジスタM10はトランジスタM11よりも、電子移動度の高い半導体をチャネル形成領域に用いることが好ましい。
【0046】
なお、トランジスタM11の第2ゲートは、場合によっては省略してもよい。
【0047】
また、電圧保持回路12は、直列に接続された複数のトランジスタM11で構成されていてもよい(
図3(B))。
【0048】
〈補正回路20〉
図4はOSトランジスタのV
G(ゲート電圧)−I
D(ドレイン電流)特性の温度依存性を示す模式図である。OSトランジスタは、低温になるほどしきい値電圧がプラスにシフトしオン電流が低下する。その結果、回路の動作速度が低下する。また、高温になるほどしきい値電圧がマイナスにシフトしサブスレッショルド係数が増大する。その結果、カットオフ電流が増大する。
【0049】
トランジスタM10にOSトランジスタを用いた場合、
図4に示すように、温度によってしきい値電圧(V
th0)が変動してしまう。低温になるほどV
th0はプラスにシフトし、高温になるほどV
th0はマイナスにシフトする。これは、回路にとって動作可能な温度範囲を狭めてしまう要因となる。そのため、半導体装置10は補正回路20を有することが好ましい。
【0050】
補正回路20は、温度センサ17および電圧制御回路18を有する(
図1参照)。
【0051】
温度センサ17は、半導体装置10の温度をセンシングし、電圧V
SNSを出力する機能を有する。V
SNSはアナログデータであり、温度センサ17がセンシングした温度に対応する。
【0052】
温度センサ17として、例えば、白金、ニッケルまたは銅などの測温抵抗体、サーミスタ、熱電対、IC温度センサなどを用いることができる。
【0053】
電圧制御回路18は、参照電圧生成回路19、コンパレータ16、バッファ15および容量素子14を有する。電圧制御回路18は、温度センサ17から取得した温度情報に応じて、トランジスタM10の第2ゲートに印加される電圧を制御する機能を有する。なお、バッファ15は、必要に応じて複数設けてもよいし、場合によっては省略してもよい。
【0054】
参照電圧生成回路19は、参照電圧V
REFを生成する機能を有する。
【0055】
コンパレータ16は、温度センサ17から取得したV
SNSと参照電圧生成回路から取得したV
REFを比較し、比較結果を電圧V
CMPとして出力する。V
CMPはデジタルデータであり、HレベルまたはLレベルの電圧をとり得る。
【0056】
次に、補正回路20の動作について考える。本実施の形態では、例として、27℃(室温)以上の高温においてV
BG=−5Vが与えられ、27℃より低温においてV
BG=−4.2Vが与えられる場合について考える。
【0057】
まず、温度センサ17は27℃(室温)においてV
SNS=0.8Vを出力し、27℃より高温において0.8Vより小さい電圧を出力し(V
SNS<0.8V)、27℃より低温において0.8Vより大きい電圧(V
SNS>0.8V)を出力すると仮定する。また、参照電圧生成回路19は、温度に関わらず、V
REF=0.8Vを出力すると仮定する。また、電圧生成回路11と電圧保持回路12は温度に関わらずV
BG=−5Vを生成すると仮定する。
【0058】
温度センサ17が27℃以上の高温を検知すると、V
SNS≦V
REFとなり、コンパレータ16はLレベル(V
CMP=0V)を出力する。その結果、半導体装置10はV
BG=−5Vを維持する。
【0059】
温度センサ17が27℃より低温を検知すると、V
SNS>V
REFとなり、コンパレータ16はHレベル(V
CMP=1.2V)を出力する。容量素子14との容量結合により、ノードN11の電位は高くなる。例えば、V
BG=−4.2Vとなる。その結果、トランジスタM10のV
th0はマイナスシフトするように補正される。
【0060】
以上の動作により、トランジスタM10の第2ゲートは、高温においては低いV
BG(−5V)が印加され、低温においては高いV
BG(−4.2V)が印加される。その結果、トランジスタM10のV
th0は温度による影響を緩和することができる。トランジスタM10は高いオン電流と低いカットオフ電流の両方を維持することができる。
【0061】
図1において、電圧制御回路18は1つのコンパレータを有する場合を示したが、これに限定されず、電圧制御回路18は複数のコンパレータを有してもよい。そうすることで、電圧制御回路18は、例えば高温、中温、低温など、補正可能な温度範囲をさらに細かく設定できる。
【0062】
半導体装置10は、電圧保持回路12を設けずに、電圧生成回路が生成した電圧を直接、トランジスタM10の第2ゲートに印加してもよい。その場合の回路図を
図5に示す。
【0063】
図5は電圧生成回路11に加えて電圧生成回路13が設けられている。電圧生成回路13は電圧生成回路11よりも高電圧を生成する。例えば、電圧生成回路11は−5Vを生成し、電圧生成回路13は高電圧(例えば−4.2V)を生成する。
【0064】
コンパレータ16は電圧生成回路11および電圧生成回路13に電気的に接続されている。電圧生成回路11および電圧生成回路13は、V
CMPに応じて電圧の出力と非出力を行う。例えば、V
CMPがLレベルのとき、電圧生成回路11は出力を行い、電圧生成回路13は出力を停止する。その結果、V
BGとして−5Vが与えられる。V
CMPがHレベルのとき、電圧生成回路13は出力を行い、電圧生成回路11は出力を停止する。その結果、V
BGとして−4.2Vが与えられる。すなわち、V
CMPに応じて、電圧生成回路11または電圧生成回路13のどちらか一方が選択される。
【0065】
なお、電圧生成回路11とノードN11との間、電圧生成回路13とノードN11との間にそれぞれスイッチを設け、それらのスイッチがV
CMPに従ってオン/オフを行うことで、電圧生成回路の選択を行ってもよい。
【0066】
温度センサ17は、電圧制御回路18をその内部に備えてもよい。その場合の回路図を
図6に示す。
図6において、温度センサ17はV
CMPを直接出力することができる。
【0067】
以上、本実施の形態に示す半導体装置10を用いることで、オン電流が高い半導体装置を提供することができる。また、動作速度が速い半導体装置を提供することができる。また、長期間においてデータの保持が可能な半導体装置を提供することができる。また、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。
【0068】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に記載の半導体装置10を用いた記憶装置について説明する。
【0069】
〈〈記憶装置100〉〉
図7は記憶装置の構成例を示すブロック図である。
図7に示す記憶装置100は、メモリセルアレイ110、周辺回路111、コントロール回路112、半導体装置10、パワースイッチ(PSW)141、142を有する。
【0070】
記憶装置100において、各回路、各信号および各電圧は、必要に応じて、適宜取捨することができる。あるいは、他の回路または他の信号を追加してもよい。信号BW、CE、GW、CLK、WAKE、ADDR、WDA、PON1、PON2は外部からの入力信号であり、信号RDAは外部への出力信号である。信号CLKはクロック信号である。信号CE、GW、および信号BWは制御信号である。信号CEはチップイネーブル信号であり、信号GWはグローバル書き込みイネーブル信号であり、信号BWはバイト書き込みイネーブル信号である。信号ADDRはアドレス信号である。信号WDAは書き込みデータであり、信号RDAは読み出しデータである。信号PON1、PON2は、パワーゲーティング制御用信号である。なお、信号PON1、PON2は、コントロール回路112で生成してもよい。
【0071】
コントロール回路112は、記憶装置100の動作全般を制御する機能を有するロジック回路である。例えば、コントロール回路は、信号CE、信号GWおよび信号BWを論理演算して、記憶装置100の動作モード(例えば、書き込み動作または読み出し動作など)を決定する。または、コントロール回路112は、この動作モードが実行されるように、周辺回路111の制御信号を生成する。
【0072】
メモリセルアレイ110は、複数のメモリセル(MC)130、および複数の配線WL、NWL、BL、BLBを有する。複数のメモリセル130は行列状に配置されている。
【0073】
同じ行のメモリセル130は、その行の配線WL、NWLに電気的に接続される。配線WL、NWLはそれぞれワード線であり、配線BL、BLBは相補データを伝送するためのビット線対である。配線BLBは、BLの論理を反転したデータが入力されるビット線であり、ビット補線や、反転ビット線と呼ばれる場合がある。メモリセル130は、2種類のメモリSMCおよびメモリNVMを有する。SMCは1ビットの相補データを記憶することができるメモリ回路である。NVMはnビット(nは1よりも大きい整数)の相補データを記憶することができるメモリ回路であり、電源オフ状態でも長期間データを保持することが可能である。
【0074】
半導体装置10は負電圧(V
BG)を生成し保持する機能を有する。V
BGはNVMに用いられるトランジスタに印加される。WAKEは、CLKの半導体装置10への入力を制御する機能を有する。例えば、WAKEにHレベルの信号が与えられると、信号CLKが半導体装置10へ入力され、半導体装置10はV
BGを生成する。半導体装置10の詳細は実施の形態1の記載を参酌すればよい。
【0075】
SMCとNVMとはローカルビット線対(配線LBL、LBLB)により電気的に接続されている。配線LBLは、配線BLに対するローカルビット線であり、配線LBLBは、配線BLBに対するローカルビット線である。配線LBL、LBLBによって、SMCとNVMとは電気的に接続されている。メモリセル130は回路LPCを有する。LPCは、配線LBLおよび配線LBLBをプリチャージするためのローカルプリチャージ回路である。LPCの制御信号は、周辺回路111で生成される。
【0076】
周辺回路111は、メモリセルアレイ110に対するデータの書き込みおよび読み出しをするための回路である。周辺回路111は、配線WL、NWL、BL、BLBを駆動する機能を有する。周辺回路111は、行デコーダ121、列デコーダ122、行ドライバ123、列ドライバ124、入力回路125、および出力回路126を有する。
【0077】
行デコーダ121および列デコーダ122は、信号ADDRをデコードする機能を有する。行デコーダ121は、アクセスする行を指定するための回路であり、列デコーダ122は、アクセスする列を指定するための回路である。行ドライバ123は、行デコーダ121が指定する行の配線WL、NWLを選択する機能を有する。具体的には、行ドライバ123は、配線WL、NWLを選択するための信号を生成する機能を有する。列ドライバ124は、データをメモリセルアレイ110に書き込む機能、メモリセルアレイ110からデータを読み出す機能、読み出したデータを保持する機能、配線BLおよび配線BLBをプリチャージする機能等を有する。
【0078】
入力回路125は、信号WDAを保持する機能を有する。入力回路125が保持するデータは、列ドライバ124に出力される。入力回路125の出力データが、メモリセルアレイ110に書き込むデータである。列ドライバ124がメモリセルアレイ110から読み出したデータ(Dout)は、出力回路126に出力される。出力回路126は、Doutを保持する機能を有する。出力回路126は、保持しているデータを記憶装置100外部に出力する。出力されるデータが信号RDAである。
【0079】
PSW141はメモリセルアレイ110以外の回路(周辺回路115)へのVDDの供給を制御する機能を有する。PSW142は、行ドライバ123へのVHMの供給を制御する機能を有する。ここでは、記憶装置100の高電源電圧がVDDであり、低電源電圧はGND(接地電位)である。また、VHMは、配線NWLを高レベルにするために用いられる高電源電圧であり、VDDよりも高い。信号PON1によってPSW141のオン・オフが制御され、信号PON2によってPSW142のオン・オフが制御される。
図7では、周辺回路115において、VDDが供給される電源ドメインの数を1としているが、複数にすることもできる。この場合、各電源ドメインに対してパワースイッチを設ければよい。
【0080】
〈〈メモリセル130〉〉
図8に、メモリセル130の回路構成例を示す。
【0081】
〈SMC〉
SMCは、配線BL、配線BLB、配線LBL、配線LBLB、配線VHH、および配線VLLと電気的に接続されている。
【0082】
SMCは、CMOS型(6トランジスタ型)のSRAMセルと同様の回路構成であり、トランジスタTld1、Tld2、Tdr1、Tdr2、Tac1、Tac2を有する。トランジスタTld1、Tld2はロードトランジスタ(プルアップトランジスタ)であり、トランジスタTdr1、Tdr2は駆動トランジスタ(プルダウントランジスタ)であり、トランジスタTac1、Tac2はアクセストランジスタ(トランスファトランジスタ)である。
【0083】
トランジスタTac1により配線BLと配線LBLとの間の導通状態が制御される。トランジスタTac2により配線BLBと配線LBLBとの間の導通状態が制御される。トランジスタTac1、Tac2のオン・オフは配線WLの電位によって制御される。トランジスタTld1、Tdr1によりインバータが構成され、トランジスタTld2、Tdr2によりインバータが構成されている。これら2個のインバータの入力端子は、それぞれ、他方の出力端子に電気的に接続されており、ラッチ回路が構成される。2個のインバータには、配線VHH、VLLによって電源電圧が供給される。
【0084】
〈NVM〉
図8に示すNVMは、n個(nは2以上の偶数)のNMCを有する。n個のNMCは互いに異なる配線NWLに電気的に接続されている。また、n個のNMCは1本の配線VCSと電気的に接続されている。n個のNMCを区別するために、[0]、[1]等の符号を用い、n本の配線NWLを区別するために、_0、_1等の符号を用いることとする。
【0085】
NMCは1ビットのデータを保持することができるメモリ回路(メモリセルと呼ぶこともできる。)である。NMCは1トランジスタ1容量型のダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)のメモリセルと同様の回路構成である。NMCはトランジスタTr1および容量素子Csを有する。容量素子CsはNMCの保持容量として機能する。配線VCSは、NMCの保持容量用の電源線であり、ここではGNDが入力される。
【0086】
トランジスタTr1のゲート(第1ゲート)は、配線NWLと電気的に接続されている。トランジスタTr1のソース又はドレインの一方は配線LBL(または配線LBLB)と電気的に接続されている。容量素子Csの第1端子はトランジスタTr1のソース又はドレインの他方と電気的に接続され、容量素子Csの第2端子はVCSと電気的に接続されている。
【0087】
トランジスタTr1は第2ゲートを有する。トランジスタTr1の第2ゲートは配線BGLに電気的に接続されている。配線BGLは、トランジスタTr1の第2ゲートの電位を制御するための信号が入力される信号線、あるいは一定電位が入力される電源線である。配線BGLの電位によって、トランジスタTr1のしきい値電圧を制御することができる。その結果、トランジスタTr1がノーマリーオンになることを防ぐことができる。
【0088】
NMC[0]乃至NMC[n−1]のうち半数は配線LBLに接続され、残りの半数は配線LBLBに接続されている。
図8に示すNVMは、メモリセルのレイアウト方式として折り返し型を適用した場合の回路図である。なお、折り返し型のメモリセルに関しては、後述の
図11で再び説明を行う。
【0089】
トランジスタTr1としてOSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタを用いることで、トランジスタTr1のオフ電流を極めて小さくできる。
【0090】
トランジスタTr1のオフ電流を小さくすることで、NMCの保持時間を長くすることができる。オフ電流が極めて小さいとは、例えば、チャネル幅1μmあたりのオフ電流が100zA(ゼプトアンペア)以下であることをいう。なお、オフ電流は小さいほど好ましいため、この規格化されたオフ電流が10zA/μm以下、あるいは1zA/μm以下とすることが好ましく、10yA(ヨクトアンペア)/μm以下であることがより好ましい。1zAは1×10
−21Aであり、1yAは1×10
−24Aである。
【0091】
トランジスタTr1にOSトランジスタを用いることで、NMCの保持時間を長くすることができ、NMCを不揮発性メモリ回路として用いることができる。
【0092】
なお、NMCの数(n)は8の倍数であることが好ましい。すなわち、NVMが保持できるデータのビット数は、8の倍数であることが好ましい。NMCを8の倍数とすることで、メモリセル130は、例えば1バイト(8ビット)、1ワード(32ビット)、ハーフワード(16ビット)など、それぞれの単位ごとにデータを扱うことができる。
【0093】
〈LPC〉
LPCは、配線PCLおよび配線VPCと電気的に接続されている。配線PCLは、配線LBL、LBLBのプリチャージ動作制御用の信号を供給するための信号線である。配線VPCはプリチャージ電圧を供給するための電源線である。LPCは、トランジスタTeq1、Tpc1、Tpc2を有する。トランジスタTeq1、Tpc1、Tpc2のゲートは配線PCLに電気的に接続されている。トランジスタTeq1は配線LBLとLBLBと間の導通状態を制御する。トランジスタTpc1は配線LBLと配線VPCと間の導通状態を制御する。トランジスタTpc2は配線LBLBと配線VPCと間の導通状態を制御する。
【0094】
図8の例では、トランジスタTeq1、Tpc1、Tpc2はnチャネル型トランジスタであるが、これらをpチャネル型トランジスタとしてもよい。あるいは、LPCにTeq1を設けなくてもよい。この場合、トランジスタTpc1、Tpc2は、nチャネル型トランジスタ、pチャネル型トランジスタの何れでもよい。あるいは、LPCをトランジスタTeq1のみで構成することもできる。この場合もトランジスタTeq1はnチャネル型トランジスタでも、pチャネル型トランジスタでもよい。トランジスタTeq1でなるLPCは、配線LBLと配線LBLBとの電位を平滑化することで、配線LBLと配線LBLBのプリチャージを行う。
【0095】
周辺回路111は、メモリセルアレイ110に設けられる各種の電源線(配線VHH、VLL、VPC)への電位を供給する機能を有する。そのため、PSW141がオフとなって、周辺回路111へのVDDの供給が停止すると、これら電源線への電位の供給も停止することとなる。
【0097】
図9のタイミングチャートを用いて、記憶装置100の動作例を説明する。ここでは、データの読み出し動作には、NVMの何れか1のNMCを選択し、選択されたNMCのデータをSMCで増幅して、BL、BLBに書き込む方式が採用されている。
【0098】
図9において、t0、t1等は時刻を表している。波形間に付された矢印は、記憶装置100の動作の理解を容易にするためのものである。VDDMは、記憶装置100に設けられたVDD供給用の電源線である。PSW141によって、VDDMへのVDDの供給が制御される。また、
図9において、点線で表されている波形は、電位が不確定であることを示している。また、VDDM等の配線の低レベル(Lレベル)はGNDである。信号線のうち、PCL、WLの高レベル(Hレベル)はVDDであり、NWL_0−NWL_[n−1]の高レベルはVHMである。
【0099】
なお、NWL_0−NWL_[n−1]の高レベルがVHMであるのは、トランジスタTr1のしきい値電圧がトランジスタTac1等の他のトランジスタよりも高い場合を想定しているからである。NWL_0−NWL_[n−1]にVDDを印加することで、NVMのデータの書き込みおよび読み出しが可能であれば、NWL_0−NWL_[n−1]の高レベルをVDDとすることができる。この場合、記憶装置100にVHM用のPSW142は設けなくてもよい(
図7参照)。
【0100】
(パワーゲーティング)
まず、記憶装置100のパワーゲーティング動作について説明する。t0−t1では、記憶装置100は、VDDの供給が遮断されている電源オフ状態である。t1以降は、記憶装置100は、VDDが供給されている電源オン状態である。
【0101】
t0でPSW141がオフになると、VDDMの電位は下がり、やがてGNDとなる。周辺回路111へのVDDの供給が遮断されるためWL、NWL_0−NWL_[n−1]、PCL、VPCもGNDとなる。t1でPSW141がオンとなると、VDDMが充電され、やがて、その電位はVDDまで上昇する。t1−t2が電源復帰に要する時間である。またPSW141をオン、オフするのと連動して、PSW142もオン、オフするとよい。
【0102】
(初期化)
t2−t3では、記憶装置100を初期状態にするための初期化動作が行われる。具体的には、VPC、VHHおよびVLLはVDD/2とされる。ビット線対(BL、BLB)およびローカルビット線対(LBL、LBLB)はそれぞれプリチャージされ、VDD/2とする。ビット線対のプリチャージは列ドライバ124によって行われ、ローカルビット線対のプリチャージはLPCによって行われる。PCLを高レベル(Hレベル)にすることで、トランジスタTeq1、Tpc1、Tpc2がオンとなり、LBL、LBLBのプリチャージと電位の平滑化が行われる。
【0103】
(書き込み)
書き込みアクセスがあると、列ドライバ124によってビット線対をプリチャージ状態から浮遊状態にする。また、LPCによって、ローカルビット線対をプリチャージ状態から浮遊状態にする。これはPCLをHレベルからLレベルにすることで行われる。
【0104】
次に、列ドライバ124によって、データDA1がビット線対に書き込まれる。ここで、BLがVDDであれば、BLBはGNDである。行デコーダ121によって行アドレスがデコードされたタイミングで、書き込み対象行のNWL_0−NWL_[n−1]の何れか1本をHレベルにする。ここでは、NWL_1をHレベルにして、NMC[1]のトランジスタTr1をオンにする。また、NWL_1が選択された後、VHHはVDDとされ、VLLはGNDとされるため、SMCはアクティブとなる。また、NWL_1が選択された後、書き込み対象行のWLをHレベルにして、トランジスタTac1、Tac2をオンにする。なお、NWL_1をHレベルにするタイミングでWLをHレベルにしてもよい。
【0105】
トランジスタTac1、Tac2がオンになることで、ローカルビット線対にデータDA1が書き込まれる。このとき、SMCはアクティブであるので、SMCにデータDA1が書き込まれる。かつ、NVMにおいて書き込み対象となっているNMC[1]のトランジスタTr1はオンであるので、NMC[1]にもデータDA1が書き込まれることとなる。一定期間WLをHレベルにした後にLレベルにする。WLがLレベルになることで、SMCとビット線対と間は非導通状態となる。この状態になったら、NWL_1をLレベルにして、NMC[1]を非選択状態に戻す。NWL_1をLレベルにした後、VHH、VLLの電位をVDD/2に戻し、SMCを非アクティブにする。SMCを非アクティブにすることで、SMCからはデータDA1は消失するが、データDA1はNMC[1]で長時間保持できるので、問題はない。
【0106】
NWL_1をLレベルにした後、ビット線対およびローカルビット線対のプリチャージ動作を開始し、これらをVDD/2にプリチャージしている。
【0107】
(非アクセス)
t4−t5では、記憶装置100は、ホスト装置からアクセス要求がない非アクセス状態である。PCLはHレベルであり、WLおよびNWL_0−NWL_[n―1]はLレベルである。VPC、VHHおよびVLLはVDD/2である。ビット線対およびローカルビット線対はVDD/2にプリチャージされている。t4−t5では、SMCは動作させる必要がないので、VHH、VLLをVDD/2にしておくことで、SMCのリーク電流を低減することができる。よって、記憶装置100全体の消費電力を効果的に低減することができる。
【0108】
(読み出し)
t5−t6では、記憶装置100は、ホスト装置の読み出しアクセス要求に対する動作を行っている。ここでは、NVMのNMC[1]に、ホスト装置の処理に必要なデータが記憶されていることとする。
【0109】
読み出しアクセスがあると、列ドライバ124により、ビット線対はプリチャージ状態から浮遊状態とされ、LPCにより、ローカルビット線対はプリチャージ状態から浮遊状態とされる。次に、NWL_1をHレベルにして、NMC[1]のトランジスタTr1をオンにする。ローカルビット線対には、データDA1が書き込まれる。NWL_1をHレベルした後、VHHをVDDにし、かつVLLをGNDにして、SMCをアクティブにする。このとき、SMCは差動増幅回路として機能し、ローカルビット線対のデータDA1を増幅する。SMCをアクティブにした後、WLをHレベルにして、ローカルビット線対のデータDA1をビット線対に書き込む。ビット線対に書き込まれたデータDA1は列ドライバ124によって読み出される。
【0110】
読み出し動作の終了動作は、書き込み動作の場合と同様であり、初期化動作と非アクセス状態にするための動作である。まず、WLをLレベルにする。次にNWL_1をLレベルにする。次にVHHおよびVLLをVDD/2にして、SMCを非アクティブにする。また、NWL_1をLレベルにした後、ビット線対およびローカルビット線対のプリチャージを開始する。
【0111】
図9の例では、書き込み動作、読み出し動作の最後に、PCLをHレベルに遷移させてローカルビット線対のプリチャージを開始しているが、このタイミングは
図9の例に限定されない。NWL_1がLレベルになった時からWLをHレベルにする時までの間に、PCLを立ち上げて、ローカルビット線対のプリチャージを開始すればよい。
【0112】
また、
図9の例では、非アクセス状態では、PCLをHレベルに維持することで、ローカルビット線対をVDD/2に固定しているが、PCLをLレベルにして、ローカルビット線対を浮遊状態にしておいてもよい。この場合、書き込み動作、および読み出し動作の開始時に、まず、PCLをLレベルからHレベルにして、ローカルビット線対のプリチャージを行えばよい。
【0113】
〈〈メモリセルアレイのデバイス構造〉〉
記憶装置100において、NVMのトランジスタTr1はOSトランジスタとし、他のトランジスタは、例えば、Siトランジスタ等とすることができる。この場合、メモリセルアレイ110を、Siトランジスタで構成される回路上に、OSトランジスタで構成される回路が積層されているデバイス構造とすることができる。
図10に、メモリセルアレイ110のデバイス構造例を模式的に示す。
【0114】
〈メモリセルアレイ〉
図10の例では、メモリセルアレイ110A上に、メモリセルアレイ110Bが積層されている。メモリセルアレイ110AにはSMCおよびLPCがマトリクス状に設けられている。メモリセルアレイ110BにはNVMがマトリクス状に設けられている。メモリセルアレイ110Aは応答速度が速いメモリ部Aを構成し、メモリセルアレイ110Bはデータの長期貯蔵用のメモリ部Bを構成する。メモリセルアレイ110Bをメモリセルアレイ110Aに積層することで、記憶装置100の大容量化と小型化を効果的に行える。
【0115】
メモリセルアレイ110Bをメモリセルアレイ110Aに積層することで、メモリセルアレイ110の大容量化と小型化が可能となる。CMOS型SRAMのメモリセルと比較した場合、メモリセル130のビット当たりの面積をより小さくすることができる。
【0116】
NVMで構成されるメモリセルアレイ110Bはフラッシュメモリ、MRAM(磁気抵抗ランダムアクセスメモリ)、PRAM(相変化ランダムアクセスメモリ)などの他の不揮発性メモリと比較して、CMOS回路との親和性に非常に優れている。フラッシュメモリは駆動に高電圧が必要である。MRAM、PRAMは電流駆動型メモリであるため、電流駆動用の素子や回路が必要となる。これに対して、NVMは、トランジスタTr1のオン、オフの制御によって動作する。つまり、NVMはCMOS回路と同じように電圧駆動型のトランジスタで構成される回路であり、また、低電圧で駆動することができる。そのため、1つのチップにプロセッサと記憶装置100とを組み込むことが容易である。また、記憶装置100は、性能を低下させずに、ビット当たりの面積を低減することができる。また、記憶装置100は消費電力を低減することができる。また、記憶装置100は電源オフ状態でもデータを記憶することが可能であるので、記憶装置100のパワーゲーティングが可能である。
【0117】
SRAMは高速であるため、標準的なプロセッサのオンチップ・キャッシュメモリに使用されている。SRAMは待機時でも電力を消費してしまうということ、また大容量化が難しいという短所がある。例えば、モバイル機器用のプロセッサでは、オンチップ・キャッシュメモリの待機時の消費電力がプロセッサ全体の平均消費電力に占める割合の80%に達するといわれている。これに対して、記憶装置100は、読み出し、書き込みが速いというSRAMの長所を生かしつつ、SRAMの短所が解消されているRAMである。そのため、オンチップ・キャッシュメモリに記憶装置100を適用することは、プロセッサ全体の消費電力の低減に有用である。記憶装置100はビット当たりの面積が小さいため、大容量化が容易であるので、キャッシュメモリ等に好適である。
【0118】
次に、NVMのレイアウト方式(折り返し型、ツインセル型、開放型)について、
図11乃至
図12を用いて説明を行う。なお、
図11乃至
図12はNVMが8ビットのデータを記憶する(NVMはNMC[0]乃至NMC[7]を有する)例を示している。
【0119】
〈折り返し型〉
図11に示す回路図は、メモリセル130のレイアウト方式として折り返し型を適用した例である。SMCおよびLPCが形成されている領域上に、NMC[0]乃至NMC[7]が設けられている。折り返し型のメモリセル130において、NMCは配線LBLに接続されるものと、配線LBLBに接続されるものに分類される。折り返し型を適用することで、メモリセル130は、配線NWLの電位の変化によって、配線LBLまたは配線LBLBに出力されるノイズを低減することができる。
【0120】
〈開放型〉
図12に示す回路図は、メモリセル130のレイアウト方式として開放型を適用した例である。折り返し型と同様に、NMCは1つのトランジスタと1つの容量素子で構成されている。開放型のメモリセル130において、NMCは配線LBLに接続されるものと、配線LBLBに接続されるものに分類される。
図12において、1つの配線NWLに2つのNMCが接続されているように見えるが、2つのNMCのうち1つは隣り合うメモリセル130に接続されたものである。開放型はNMCを高集積化することが可能で、他のレイアウト方式に比べて、記憶装置100が記憶できるデータの容量を大きくすることができる。
【0121】
〈ツインセル型〉
図13に示す回路図は、はメモリセル130のレイアウト方式としてツインセル型を適用した例である。
図13において、NMCは2つのトランジスタと2つの容量素子で構成されている。すなわち、NMCは相補的な2つのメモリセルを有する。ツインセル型のメモリセル130は、2つのメモリセルに保持された相補データを1ビットとして扱う。
【0122】
NMCは、一対のメモリセルを備えることで相補データを長時間保持することができる。NMCが相補データを保持していることで、NMCで保持している相補データを読み出すときには、SMCは差動増幅回路として機能することができる。このため、ツインセル型は、一対のメモリセルの一方が保持している電圧と、一対のメモリセルの他方が保持している電圧との電圧差が小さくとも、信頼性の高い読み出し動作ができる。
【0123】
〈記憶装置100の断面図〉
図14は、記憶装置100の断面図の一例を示している。
図14に示す記憶装置100は、下から順に積層された層L1、層L2、層L3、層L4を有する。
【0124】
層L1は、トランジスタM1と、基板300と、素子分離層301と、絶縁体302と、プラグ310などを有する。
【0125】
層L2は、絶縁体303と、配線320と、絶縁体304と、プラグ311などを有する。
【0126】
層L3は、絶縁体214と、絶縁体216と、トランジスタTr1と、プラグ312と、絶縁体282と、配線321などを有する。トランジスタTr1の第1ゲートは配線NWLとしての機能を有し、トランジスタTr1の第2ゲートは配線BGLとしての機能を有する。
図19は、トランジスタTr1としてOSトランジスタを用いた例を示している。
【0127】
層L4は、容量素子Csと、プラグ313と、配線LBLなどを有する。容量素子Csは導電体322と、導電体323と、絶縁体305で成る。
【0128】
次に
図15を用いてトランジスタM1の詳細について説明を行う。
図15(A)左側はトランジスタM1のチャネル長方向の断面図であり、
図15(A)の右側はトランジスタM1のチャネル幅方向の断面図を示している。
【0129】
トランジスタM1は基板300上に設けられ、素子分離層301によって隣接する他のトランジスタと分離されている。素子分離層301として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン等を用いることができる。なお、本明細書において、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいい、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。
【0130】
基板300としては、シリコンや炭化シリコンからなる単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムからなる化合物半導体基板や、SOI(Silicon On Insulator)基板などを用いることができる。また、基板300として、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルム、などを用いてもよい。また、ある基板を用いて半導体素子を形成し、その後、別の基板に半導体素子を転置してもよい。
【0131】
また、基板300として、可とう性基板を用いてもよい。なお、可とう性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可とう性基板である基板300に転置する方法もある。その場合には、非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。なお、基板300として、繊維を編みこんだシート、フィルムまたは箔などを用いてもよい。また、基板300が伸縮性を有してもよい。また、基板300は、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有してもよい。または、元の形状に戻らない性質を有してもよい。基板300の厚さは、例えば、5μm以上700μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは15μm以上300μm以下とする。基板300を薄くすると、半導体装置を軽量化することができる。また、基板300を薄くすることで、ガラスなどを用いた場合にも伸縮性を有する場合や、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有する場合がある。そのため、落下などによって基板300上の半導体装置に加わる衝撃などを緩和することができる。即ち、丈夫な半導体装置を提供することができる。可とう性基板である基板300としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。可とう性基板である基板300は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。可とう性基板である基板300としては、例えば、線膨張率が1×10
−3/K以下、5×10
−5/K以下、または1×10
−5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可とう性基板である基板300として好適である。
【0132】
本実施の形態では、一例として、基板300に単結晶シリコンウェハを用いた例を示している。
【0133】
トランジスタM1は、ウェル351に設けられたチャネル形成領域352、不純物領域353及び不純物領域354と、該不純物領域に接して設けられた導電性領域355及び導電性領域356と、チャネル形成領域352上に設けられたゲート絶縁体358と、ゲート絶縁体358上に設けられたゲート電極357とを有する。なお、導電性領域355、356には、金属シリサイド等を用いてもよい。
【0134】
図15(A)において、トランジスタM1はチャネル形成領域352が凸形状を有し、その側面及び上面に沿ってゲート絶縁体358及びゲート電極357が設けられている。このような形状を有するトランジスタをFIN型トランジスタと呼ぶ。本実施の形態では、半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体層を形成してもよい。
【0135】
本実施の形態では、一例として、トランジスタM1としてSiトランジスタを適用した例を示している。トランジスタM1は、nチャネル型のトランジスタまたはpチャネル型のトランジスタのいずれでもよく、回路によって適切なトランジスタを用いればよい。
【0136】
なお、トランジスタM1として、プレーナー型のトランジスタを用いてもよい。その場合の例を
図15(B)に示す。
図15(B)左側はトランジスタM1のチャネル長方向の断面図であり、
図15(B)の右側はトランジスタM1のチャネル幅方向の断面図を示している。
【0137】
図15(B)に示すトランジスタM1は、ウェル361に設けられたチャネル形成領域362、低濃度不純物領域371及び低濃度不純物領域372と、高濃度不純物領域363及び高濃度不純物領域364と、該高濃度不純物領域に接して設けられた導電性領域365及び導電性領域366と、チャネル形成領域362上に設けられたゲート絶縁体368と、ゲート絶縁体368上に設けられたゲート電極367と、ゲート電極367の側壁に設けられた側壁絶縁層369及び側壁絶縁層370を有する。なお、導電性領域365、366には、金属シリサイド等を用いてもよい。
【0138】
再び
図14に戻る。絶縁体302は、層間絶縁体としての機能を有する。トランジスタM1にSiトランジスタを用いた場合、絶縁体302は水素を含むことが好ましい。絶縁体302が水素を含むことで、シリコンのダングリングボンドを終端し、トランジスタM1の信頼性を向上させる効果がある。絶縁体302として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン等を用いることが好ましい。
【0139】
絶縁体303には、基板300またはトランジスタM1などから、トランジスタTr1が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア膜を用いることが好ましい。例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタTr1が有する金属酸化物に水素が拡散することで、該金属酸化物の特性が低下する場合がある。従って、トランジスタM1と、トランジスタTr1との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。
【0140】
水素の拡散を抑制する膜とは、水素の脱離量が少ない膜のことを言う。水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS(Thermal Desorption Spectroscopy))などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体303の水素の脱離量は、TDS分析において、50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体303の面積当たりに換算して、10×10
15atoms/cm
2以下、好ましくは5×10
15atoms/cm
2以下であればよい。
【0141】
また、絶縁体304、214、282は、銅の拡散を抑制する、または、酸素、および水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。例えば、銅の拡散を抑制する膜の一例として、窒化シリコンを用いることができる。また、酸化アルミニウムなどの金属酸化物を用いてもよい。
【0142】
絶縁体216は、例えば、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0143】
絶縁体280、トランジスタTr1の詳細については後述の実施の形態3で説明を行う。
【0144】
絶縁体305には例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウムなどを用いればよい。
【0145】
また、絶縁体305は上記絶縁体の積層構造としてもよい。例えば、酸化窒化シリコンなどの絶縁破壊耐性が大きい材料と、酸化アルミニウムなどの高誘電率(high−k)材料の積層構造としてもよい。当該構成により、容量素子Csは、十分な容量を確保でき、且つ、静電破壊を抑制することができる。
【0146】
図14に示す導電体、配線及びプラグとして、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、金(Au)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ストロンチウム(Sr)の低抵抗材料からなる単体、合金、またはこれらを主成分とする化合物を含む導電体の単層または積層とすることが好ましい。特に、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。また、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。
【0147】
図14の記憶装置100は、トランジスタTr1を容量素子Csの上に形成してもよい。その場合の断面図を
図16に示す。
図16に示す断面図は、層L3と層L4が
図14の断面図が異なる。
【0148】
図16において、層L3は、配線341、容量素子Csを有する。
【0149】
図16において、層L4は、プラグ331、プラグ332、プラグ333、プラグ334、配線342、配線343、配線BL、絶縁体214、絶縁体216、絶縁体280、絶縁体282、トランジスタTr1を有する。
【0150】
容量素子CsをトランジスタTr1の下に設けることで、容量素子Csを形成する際に生じるプロセスダメージまたは水素の影響から、トランジスタTr1を防ぐことができる。
【0151】
図14及び
図16において、符号及びハッチングパターンが与えられていない領域は、絶縁体で構成されている。上記絶縁体には、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどから選ばれた一種以上の材料を含む絶縁体を用いることができる。また、当該領域には、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の有機樹脂を用いることもできる。
【0152】
記憶装置100は、複数のサブアレイを有していてもよい。その場合の構成例を
図17に示す。
【0153】
図17は記憶装置100の一例を示す上面模式図である。記憶装置100は複数のサブアレイ150を有する。それぞれのサブアレイ150は、メモリセルアレイ110、行ドライバ123および列ドライバ124を有する。また、複数のサブアレイ150を囲むように、電源線151が配置されている。
【0154】
記憶装置100において、半導体装置10はメモリセルの外側に配置することができる。例えば、
図17の電源線151の下に配置することができる。そうすることで、記憶装置100の面積オーバーヘッドを少なくすることができる。
【0155】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で用いたOSトランジスタの構造について説明を行う。
【0156】
〈〈金属酸化物〉〉
まず、OSトランジスタに用いられる金属酸化物について説明する。
【0157】
金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0158】
ここでは、金属酸化物が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn−M−Zn酸化物である場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0159】
次に、
図20(A)、
図20(B)、および
図20(C)を用いて、本発明に係る金属酸化物が有するインジウム、元素Mおよび亜鉛の原子数比の好ましい範囲について説明する。なお、
図20(A)、
図20(B)、および
図20(C)には、酸素の原子数比については記載しない。また、金属酸化物が有するインジウム、元素M、および亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[M]、および[Zn]とする。
【0160】
図20(A)、
図20(B)、および
図20(C)において、破線は、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):1の原子数比(−1≦α≦1)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):2の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):3の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):4の原子数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):5の原子数比となるラインを表す。
【0161】
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比(β≧0)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:2:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=1:4:βの原子数比となるラインを表す。
【0162】
また、
図20(A)、
図20(B)、および
図20(C)に示す、[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の原子数比、およびその近傍値の金属酸化物は、スピネル型の結晶構造をとりやすい。
【0163】
また、金属酸化物中に複数の相が共存する場合がある(二相共存、三相共存など)。例えば、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の近傍値である場合、スピネル型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。また、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=1:0:0の近傍値である場合、ビックスバイト型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。金属酸化物中に複数の相が共存する場合、異なる結晶構造の間において、結晶粒界が形成される場合がある。
【0164】
図20(A)に示す領域Aは、金属酸化物が有する、インジウム、元素M、および亜鉛の原子数比の好ましい範囲の一例について示している。
【0165】
金属酸化物は、インジウムの含有率を高くすることで、金属酸化物のキャリア移動度(電子移動度)を高くすることができる。従って、インジウムの含有率が高い金属酸化物はインジウムの含有率が低い金属酸化物と比較してキャリア移動度が高くなる。
【0166】
一方、金属酸化物中のインジウムおよび亜鉛の含有率が低くなると、キャリア移動度が低くなる。従って、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、およびその近傍値である場合(例えば
図20(C)に示す領域C)は、絶縁性が高くなる。
【0167】
従って、本発明の一態様の金属酸化物は、キャリア移動度が高く、かつ、結晶粒界が少ない層状構造となりやすい、
図20(A)の領域Aで示される原子数比を有することが好ましい。
【0168】
特に、
図20(B)に示す領域Bでは、領域Aの中でも、CAAC(c−axis aligned crystalline)−OSとなりやすく、キャリア移動度も高い優れた金属酸化物が得られる。
【0169】
CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造である。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0170】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC−OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0171】
CAAC−OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC−OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない金属酸化物ともいえる。従って、CAAC−OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC−OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0172】
なお、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=4:2:3から4.1、およびその近傍値を含む。近傍値には、例えば、[In]:[M]:[Zn]=5:3:4が含まれる。また、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=5:1:6、およびその近傍値、および[In]:[M]:[Zn]=5:1:7、およびその近傍値を含む。
【0173】
なお、金属酸化物が有する性質は、原子数比によって一義的に定まらない。同じ原子数比であっても、形成条件により、金属酸化物の性質が異なる場合がある。例えば、金属酸化物をスパッタリング装置にて成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原子数比の膜が形成される。また、成膜時の基板温度によっては、ターゲットの[Zn]よりも、膜の[Zn]が小さくなる場合がある。従って、図示する領域は、金属酸化物が特定の特性を有する傾向がある原子数比を示す領域であり、領域A乃至領域Cの境界は厳密ではない。
【0174】
〈〈トランジスタ構造1〉〉
図21(A)および
図21(B)は、トランジスタ200aの上面図および断面図である。
図21(A)は上面図であり、
図21(B)の左図は、
図21(A)に示す一点鎖線X1−X2、
図21(B)の右図は、一点鎖線Y1−Y2に対応する断面図である。なお、
図21(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0175】
図21(B)は、絶縁体214及び絶縁体216上にトランジスタ200aが設けられた例を示している。
【0176】
トランジスタ200aは、ゲート電極として機能する導電体205(導電体205a、および導電体205b)および導電体260と、ゲート絶縁体として機能する絶縁体220、絶縁体222、絶縁体224、および絶縁体250と、金属酸化物230(金属酸化物230a、金属酸化物230b、および金属酸化物230c)と、ソースまたはドレインの一方として機能する導電体240aと、ソースまたはドレインの他方として機能する導電体240bと、導電体260を保護する絶縁体241と、過剰酸素を有する(化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む)絶縁体280と、を有する。
【0177】
トランジスタ200aにおいて、導電体260をトップゲート、導電体205をボトムゲートと呼ぶ場合がある。あるいは、導電体260を第1ゲート、導電体205を第2ゲートと呼ぶ場合がある。
【0178】
また、金属酸化物230は、金属酸化物230aと、金属酸化物230a上の金属酸化物230bと、金属酸化物230b上の金属酸化物230cと、を有する。トランジスタ200aをオンさせると、主として金属酸化物230bに電流が流れる。金属酸化物230bはチャネル形成領域としての機能を有する。一方、金属酸化物230aおよび金属酸化物230cは、金属酸化物230bとの界面近傍(混合領域となっている場合もある)は電流が流れる場合があるものの、そのほかの領域は絶縁体として機能する場合がある。
【0179】
金属酸化物230a、金属酸化物230cは、金属酸化物230bよりも伝導帯下端のエネルギー準位が真空準位に近く、代表的には、金属酸化物230bの伝導帯下端のエネルギー準位と、金属酸化物230a、金属酸化物230cの伝導帯下端のエネルギー準位との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下であることが好ましい。すなわち、金属酸化物230a、金属酸化物230cの電子親和力と、金属酸化物230bの電子親和力との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下であることが好ましい。
【0180】
金属酸化物230bにおいて、エネルギーギャップは2eV以上が好ましく、2.5eV以上3.0eV以下がより好ましい。また、金属酸化物230aおよび金属酸化物230cにおいて、エネルギーギャップは2eV以上が好ましく、2.5eV以上がより好ましく、2.7eV以上3.5eV以下がさらに好ましい。また、金属酸化物230aおよび金属酸化物230cのエネルギーギャップは、金属酸化物230bのエネルギーギャップよりも大きいことが好ましい。例えば、金属酸化物230aおよび金属酸化物230cのエネルギーギャップは、金属酸化物230bのエネルギーギャップと比べて、0.15eV以上、または0.5eV以上、または1.0eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下であることが好ましい。
【0181】
また、金属酸化物230a、金属酸化物230bおよび金属酸化物230cの厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上60nm以下である。
【0182】
金属酸化物のキャリア密度を小さくすることで、トランジスタのしきい値電圧のマイナスシフト、またはトランジスタのオフ電流を低くすることができるため好ましい。金属酸化物のキャリア密度に影響を与える因子としては、金属酸化物中の酸素欠損(Vo)、または金属酸化物中の不純物などが挙げられる。金属酸化物中の酸素欠損が多くなると、該酸素欠損に水素が結合(この状態をVoHともいう)した際に、欠陥準位密度が高くなる。または、金属酸化物中の不純物が多くなると、該不純物に起因し欠陥準位密度が高くなる。したがって、金属酸化物中の欠陥準位密度を制御することで、金属酸化物のキャリア密度を制御することができる。
【0183】
金属酸化物230aおよび金属酸化物230cのキャリア密度は、例えば、8×10
15cm
−3未満、好ましくは1×10
11cm
−3未満、さらに好ましくは1×10
10cm
−3未満であり、1×10
−9cm
−3以上とすればよい。
【0184】
一方で、トランジスタのオン電流の向上、またはトランジスタの電界効果移動度の向上を目的とする場合、金属酸化物のキャリア密度を大きくする方が好ましい。金属酸化物のキャリア密度を大きくするには、金属酸化物の不純物濃度をわずかに高める、あるいは、金属酸化物のバンドギャップをより小さくするとよい。
【0185】
金属酸化物230bのキャリア密度は、金属酸化物230aおよび金属酸化物230cと比較して大きいことが好ましい。
【0186】
金属酸化物230aと金属酸化物230bとの界面、または金属酸化物230bと金属酸化物230cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くすることが好ましい。具体的には、金属酸化物230aと金属酸化物230b、金属酸化物230bと金属酸化物230cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、金属酸化物230bがIn−Ga−Zn酸化物の場合、金属酸化物230a、金属酸化物230cとして、In−Ga−Zn酸化物、Ga−Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0187】
このとき、キャリアの主たる経路は金属酸化物230bとなる。金属酸化物230aと金属酸化物230bとの界面、および金属酸化物230bと金属酸化物230cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができるため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さく、高いオン電流が得られる。
【0188】
金属酸化物230a、金属酸化物230cは、金属酸化物230bと比較して、導電率が十分に低い材料を用いることが好ましい。例えば、金属酸化物230a、金属酸化物230cには、
図20(C)において、絶縁性が高くなる領域Cで示す原子数比の金属酸化物を用いればよい。なお、
図20(C)に示す領域Cは、[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、およびその近傍値、[In]:[M]:[Zn]=1:3:2およびその近傍値、および[In]:[M]:[Zn]=1:3:4、およびその近傍値である原子数比を示している。
【0189】
特に、金属酸化物230bに
図20(A)に示す領域Aで示される原子数比の金属酸化物を用いる場合、金属酸化物230aおよび金属酸化物230cには、[M]/[In]が1以上、好ましくは2以上である金属酸化物を用いることが好ましい。また、金属酸化物230cとして、十分に高い絶縁性を得ることができる[M]/([Zn]+[In])が1以上である金属酸化物を用いることが好適である。
【0190】
導電体205は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等である。又は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0191】
例えば、導電体205aとして、水素に対するバリア性を有する導電体として、窒化タンタル等を用い、導電体205bとして、導電性が高いタングステンを積層するとよい。当該組み合わせを用いることで、配線としての導電性を保持したまま、金属酸化物230への水素の拡散を抑制することができる。なお、
図21(B)では、導電体205a、および導電体205bの2層構造を示したが、当該構成に限定されず、単層でも3層以上の積層構造でもよい。
【0192】
絶縁体220、および絶縁体224は、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などの、酸素を含む絶縁体であることが好ましい。特に、絶縁体224として過剰酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を、トランジスタ200aを構成する金属酸化物に接して設けることにより、金属酸化物中の酸素欠損を補償することができる。なお、絶縁体222と絶縁体224とは、必ずしも同じ材料を用いて形成しなくともよい。
【0193】
絶縁体222は、例えば、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)または(Ba,Sr)TiO
3(BST)などのいわゆるhigh−k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。またはこれらの絶縁体に例えば酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理しても良い。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0194】
なお、絶縁体222が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0195】
また、絶縁体220、絶縁体222、絶縁体224の膜厚を適宜調整することで、しきい値電圧を制御することができる。または、非導通時のリーク電流の小さいトランジスタを提供することができる。絶縁体220、絶縁体222、絶縁体224の膜厚をそれぞれ薄くすることで、導電体205によるしきい値電圧制御が容易になり好ましい。例えば、絶縁体220、絶縁体222、絶縁体224の膜厚はそれぞれ50nm以下、さらに好ましくはそれぞれ30nm以下、さらに好ましくはそれぞれ10nm以下、さらに好ましくはそれぞれ5nm以下にすればよい。
【0196】
絶縁体250は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)または(Ba,Sr)TiO
3(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶縁体に例えば酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理しても良い。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0197】
また、絶縁体250して、絶縁体224と同様に、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁体を用いることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を金属酸化物230に接して設けることにより、金属酸化物230中の酸素欠損を低減することができる。
【0198】
また、絶縁体250は、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化シリコンなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることができる。このような材料を用いて形成した場合、金属酸化物230からの酸素の放出や、外部からの水素等の不純物の混入を防ぐ層として機能する。
【0199】
導電体240a、240bは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金を用いることができる。また、図では単層構造を示したが、2層以上の積層構造としてもよい。
【0200】
例えば、チタン膜とアルミニウム膜を積層するとよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0201】
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0202】
また、ゲート電極として機能を有する導電体260は、例えばアルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属、または上述した金属を成分とする合金か、上述した金属を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一または複数から選択された金属を用いてもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体、ニッケルシリサイド等のシリサイドを用いてもよい。
【0203】
例えば、アルミニウム上にチタン膜を積層する二層構造とするとよい。また、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造としてもよい。
【0204】
また、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた一または複数の金属を組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0205】
また、導電体260は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属の積層構造とすることもできる。
【0206】
導電体260として、仕事関数の高い導電性材料を用いることで、トランジスタ200aのしきい値電圧を大きくし、カットオフ電流を下げることができる。導電体260の仕事関数は好ましくは、4.8eV以上、さらに好ましくは5.0eV以上、さらに好ましくは5.2eV以上、さらに好ましくは5.4eV以上、さらに好ましくは5.6eV以上の導電性材料を用いればよい。仕事関数の大きな導電性材料として、例えば、モリブデン、酸化モリブデン、Pt、Ptシリサイド、Niシリサイド、インジウム錫酸化物、窒素添加されたIn−Ga−Zn酸化物などが挙げられる。
【0207】
導電体260を覆うように絶縁体241を設ける。絶縁体241は、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化シリコンなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることができる。このような材料を用いて形成した場合、導電体260が熱処理工程によって、酸化することを防ぐことができる。なお、絶縁体241は、導電体260に酸化し難い材料を用いることで、省略することができる。
【0208】
トランジスタ200aの上方には、絶縁体280を設ける。絶縁体280は過剰酸素を有することが好ましい。特に、トランジスタ200a近傍の層間膜などに、過剰酸素を有する絶縁体を設けることで、トランジスタ200aの酸素欠損を低減することで、信頼性を向上させることができる。
【0209】
過剰酸素を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×10
18atoms/cm
3以上、好ましくは3.0×10
20atoms/cm
3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
【0210】
例えばこのような材料として、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含む材料を用いることが好ましい。または、金属酸化物を用いることもできる。なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
【0211】
また、トランジスタ200aを覆う絶縁体280は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0212】
〈〈トランジスタ構造2〉〉
図22(A)および
図22(B)は、トランジスタ200bの上面図および断面図である。
図22(A)は上面図であり、
図22(B)の左図は、
図22(A)に示す一点鎖線X1−X2、
図22(B)の右図は、一点鎖線Y1−Y2に対応する断面図である。なお、
図22(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0213】
図22のトランジスタ200bは、
図21のトランジスタ200aにおいて、金属酸化物230a、230bの中央部分がエッチングされたものである(
図22(B)左図参照)。
【0214】
図21のトランジスタ200aは、金属酸化物230bにチャネルが形成されるが、
図22のトランジスタ200bは金属酸化物230cにチャネルが形成される。金属酸化物230cは、金属酸化物230bよりも電子移動度が小さくバンドギャップが広い。そのため、トランジスタ200bはトランジスタ200aよりもオン電流が小さいがオフ電流も小さい。トランジスタ200bは、オン電流よりもオフ電流を重視するトランジスタに好適である。
【0215】
トランジスタ200bはトランジスタ200aと同時に形成することができる。例えば、
図1のトランジスタM10および
図8のトランジスタTr1など、高いオン電流が要求されるトランジスタにトランジスタ200aを採用し、
図1のトランジスタM11など、低いオフ電流が要求されるトランジスタにトランジスタ200bを採用することが好ましい。
【0216】
(実施の形態4)
本実施の形態では、
図1の温度センサ17に用いることが可能な抵抗素子について説明を行う。
【0217】
図18は抵抗素子400の上面図である。抵抗素子400は、金属酸化物401、導電体402および導電体403を有する。また、金属酸化物401はその上面図において蛇行部を有する。
【0218】
金属酸化物401は温度によって抵抗率が変化する性質を有する。抵抗素子400は、導電体402と導電体403の間に電流を流し、金属酸化物401の抵抗値を測定することで温度を検出することができる。
【0219】
図19は
図14に示す記憶装置100の断面図に、抵抗素子400を組み込んだ場合の断面模式図である。OSトランジスタであるトランジスタTr1と同じ層L3に、抵抗素子400が設けられている。
【0220】
抵抗素子400に用いられる金属酸化物401は、トランジスタTr1に用いられる金属酸化物230bと同じ金属酸化物によって構成される。金属酸化物401は、そのままでは抵抗率が高すぎて、抵抗素子として充分な機能を果たさない。そのため、金属酸化物401は、
図18に示す形状にエッチングされた後、抵抗率を下げるための処理が施されることが好ましい。
【0221】
上述の抵抗率を下げるための処理として、例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガスによるプラズマ処理が挙げられる。また、先述の希ガスに、酸化窒素、アンモニア、窒素または水素を導入し、混合ガスとしてプラズマ処理を行ってもよい。これら、プラズマ処理によって、金属酸化物401は酸素欠損が形成され、抵抗率を下げることができる。
【0222】
また、上述の抵抗率を下げるための処理として、窒化シリコンなど、水素を多量に含む膜を金属酸化物401と接するように設ける処理が挙げられる。金属酸化物401は水素を添加されることで、抵抗率を下げることができる。
【0223】
これら抵抗率を下げる処理によって、金属酸化物401は、室温による抵抗率を1×10
−3Ωcm以上、1×10
4Ωcm以下とすることができる。
【0224】
図19に示すように、抵抗素子400をトランジスタTr1と同じ層に形成することで、抵抗素子400はトランジスタTr1の温度を正確に検出することができる。また、抵抗素子400とトランジスタTr1を、同じ工程で形成することができるため、それぞれ別の工程で形成する場合よりも、工程を短縮することができる。
【0225】
なお、抵抗素子400の金属酸化物401と、トランジスタTr1の金属酸化物230bを異なる金属酸化物で形成する場合、抵抗素子400は層L4よりも上層に形成してもよい。
【0226】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態に示した記憶装置または半導体装置を有する半導体ウエハ、ICチップおよび電子部品の例について、
図23及び
図25を用いて説明する。
【0227】
〔半導体ウエハ、チップ〕
図23(A)は、ダイシング処理が行なわれる前の基板611の上面図を示している。基板611としては、例えば、半導体基板(「半導体ウエハ」ともいう。)を用いることができる。基板611上には、複数の回路領域612が設けられている。回路領域612には、上記実施の形態に示す半導体装置などを設けることができる。
【0228】
複数の回路領域612は、それぞれが分離領域613に囲まれている。分離領域613と重なる位置に分離線(「ダイシングライン」ともいう。)614が設定される。分離線614に沿って基板611を切断することで、回路領域612を含むチップ615を基板611から切り出すことができる。
図23(B)にチップ615の拡大図を示す。
【0229】
また、分離領域613に導電層や半導体層を設けてもよい。分離領域613に導電層や半導体層を設けることで、ダイシング工程時に生じうるESDを緩和し、ダイシング工程の歩留まり低下を防ぐことができる。また、一般にダイシング工程は、基板の冷却、削りくずの除去、帯電防止などを目的として、炭酸ガスなどを含有させて比抵抗を下げた純水を切削部に流しながら行なわれる。分離領域613に導電層や半導体層を設けることで、当該純水の使用量を削減することができる。よって、半導体装置の生産コストを低減することができる。また、半導体装置の生産性を高めることができる。
【0230】
分離領域613に設ける半導体層としては、バンドギャップが2.5eV以上4.2eV以下、好ましくは2.7eV以上3.5eV以下の材料を用いることが好ましい。このような材料を用いると、蓄積された電荷をゆっくりと放電することができるため、ESDによる電荷の急激な移動が抑えられ、静電破壊を生じにくくすることができる。
【0231】
〔電子部品〕
チップ615を電子部品に適用する例について、
図24を用いて説明する。なお、電子部品は、半導体パッケージ、またはIC用パッケージともいう。電子部品は、端子取り出し方向や、端子の形状に応じて、複数の規格や名称が存在する。
【0232】
電子部品は、組み立て工程(後工程)において、上記実施の形態に示した半導体装置と該半導体装置以外の部品が組み合わされて完成する。
【0233】
図24(A)に示すフローチャートを用いて、後工程について説明する。前工程において上記実施の形態に示した半導体装置を有する素子基板が完成した後、該素子基板の裏面(半導体装置などが形成されていない面)を研削する「裏面研削工程」を行なう(ステップS1)。研削により素子基板を薄くすることで、素子基板の反りなどを低減し、電子部品の小型化を図ることができる。
【0234】
次に、素子基板を複数のチップに分離する「ダイシング工程」を行う(ステップS2)。そして、分離したチップを個々ピックアップしてリードフレーム上に接合する「ダイボンディング工程」を行う(ステップS3)。ダイボンディング工程におけるチップとリードフレームとの接合は、樹脂による接合や、テープによる接合など、適宜製品に応じて適した方法を選択する。なお、リードフレームに代えてインターポーザ基板上にチップを接合してもよい。
【0235】
次いで、リードフレームのリードとチップ上の電極とを、金属の細線(ワイヤー)で電気的に接続する「ワイヤーボンディング工程」を行う(ステップS4)。金属の細線には、銀線や金線を用いることができる。また、ワイヤーボンディングは、ボールボンディングや、ウェッジボンディングを用いることができる。
【0236】
ワイヤーボンディングされたチップは、エポキシ樹脂などで封止される「封止工程(モールド工程)」が施される(ステップS5)。封止工程を行うことで電子部品の内部が樹脂で充填され、チップに内蔵される回路部やチップとリードを接続するワイヤーを機械的な外力から保護することができ、また水分や埃による特性の劣化(信頼性の低下)を低減することができる。
【0237】
次いで、リードフレームのリードをめっき処理する「リードめっき工程」を行なう(ステップS6)。めっき処理によりリードの錆を防止し、後にプリント基板に設ける際のはんだ付けをより確実に行うことができる。次いで、リードを切断および成形加工する「成形工程」を行なう(ステップS7)。
【0238】
次いで、パッケージの表面に印字処理(マーキング)を施す「マーキング工程」を行なう(ステップS8)。そして外観形状の良否や動作不良の有無などを調べる「検査工程」(ステップS9)を経て、電子部品が完成する。
【0239】
また、完成した電子部品の斜視模式図を
図24(B)に示す。
図24(B)では、電子部品の一例として、QFP(Quad Flat Package)の斜視模式図を示している。
図24(B)に示す電子部品650は、リード655および半導体装置653を示している。半導体装置653としては、上記実施の形態に示した記憶装置または半導体装置などを用いることができる。
【0240】
図24(B)に示す電子部品650は、例えばプリント基板652に設けられる。このような電子部品650が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板652上で電気的に接続されることで電子部品が設けられた基板654が完成する。完成した基板654は、電子機器などに用いられる。
【0241】
(実施の形態6)
上記実施の形態に示す記憶装置または半導体装置は、バッテリを内蔵する電子機器に用いることが好ましい。バッテリを内蔵する電子機器に、上記実施の形態に示す記憶装置または半導体装置を用いることで、電子機器の消費電力を削減し、バッテリの電力を節約することができる。具体例を
図25に示す。
【0242】
図25(A)は腕時計型端末700である。腕時計型端末700は、筐体701、リュウズ702、表示部703、ベルト704、検知部705などを有する。筐体701は内部にバッテリ、記憶装置または半導体装置を有する。表示部703にはタッチパネルを設けてもよい。使用者は、タッチパネルに触れた指をポインタに用いて情報を入力することができる。
【0243】
検知部705は、周囲の状態を検知して情報を取得する機能を備える。例えば、カメラ、加速度センサ、方位センサ、圧力センサ、温度センサ、湿度センサ、照度センサまたはGPS(Global Positioning System)信号受信回路等を、検知部705に用いることができる。
【0244】
例えば、検知部705の照度センサが検知した周囲の明るさを筐体701内部の演算装置が、所定の照度と比較して十分に明るいと判断した場合、表示部703の輝度を弱める。または、薄暗いと判断した場合、表示部703の輝度を強める。その結果、消費電力が低減された電子機器を提供することができる。
【0245】
図25(B)は、携帯電話機710である。携帯電話機710は、筐体711、表示部716、操作ボタン714、外部接続ポート713、スピーカ717、マイク712などを有する。筐体711は内部にバッテリ、記憶装置または半導体装置を有する。携帯電話機710は、指などで表示部716に触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指などで表示部716に触れることにより行うことができる。また、操作ボタン714の操作により、電源のON、OFF動作や、表示部716に表示される画像の種類を切り替えることができる。例えば、メール作成画面から、メインメニュー画面に切り替えることができる。
【0246】
図25(C)はノート型パーソナルコンピュータ720であり、筐体721、表示部722、キーボード723、ポインティングデバイス724等を有する。筐体711は内部にバッテリ、記憶装置または半導体装置を有する。
【0247】
図25(D)はゴーグル型ディスプレイ730である。ゴーグル型ディスプレイ730は、装着部731、筐体732、ケーブル735、バッテリ736、表示部737を有する。バッテリ736は装着部731に収納されている。表示部737は筐体732に設けられている。筐体732は、半導体装置、無線通信装置、記憶装置など各種の電子部品を内蔵する。ケーブル735を介してバッテリ736から筐体732内の表示部737および電子部品に電力が供給される。表示部737には無線によって送信された映像等の各種の情報が表示される。
【0248】
ゴーグル型ディスプレイ730は筐体732にカメラを設けてもよい。カメラが使用者の眼球やまぶたの動きを検知し知ることで、使用者はゴーグル型ディスプレイ730を操作することができる。また、ゴーグル型ディスプレイ730は、装着部731に温度センサ、圧力センサ、加速度センサ、生体センサ等の各種センサを設けてもよい。例えばゴーグル型ディスプレイ730は、生体センサによって、使用者の生体情報を取得し、筐体732内の記憶装置に記憶させる。また、ゴーグル型ディスプレイ730は、無線信号によって他の情報端末に取得した生体情報を送信してもよい。
【0249】
図25(E)はビデオカメラ740である。ビデオカメラ740は、第1筐体741、第2筐体742、表示部743、操作キー744、レンズ745、接続部746等を有する。操作キー744およびレンズ745は第1筐体741に設けられており、表示部743は第2筐体742に設けられている。また第1筐体741は内部にバッテリ、記憶装置または半導体装置を有する。バッテリは第1筐体741の外に設けてもよい。そして、第1筐体741と第2筐体742とは、接続部746により接続されており、第1筐体741と第2筐体742の間の角度は、接続部746により変更が可能である。表示部743における映像を、接続部746における第1筐体741と第2筐体742との間の角度に従って切り替える構成としても良い。
【0250】
図25(F)は自動車750である。自動車750は、車体751、車輪752、ダッシュボード753、ライト754等を有する。車体751は内部にバッテリ、記憶装置または半導体装置を有する。
【0251】
(実施の形態7)
本実施の形態では、上記実施の形態で述べたOSトランジスタに用いることができるCAC(Cloud−Aligned Composite)−OSの構成について説明する。
【0252】
CAC−OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つあるいはそれ以上の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0253】
なお、金属酸化物は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0254】
例えば、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OS(CAC−OSの中でもIn−Ga−Zn酸化物を、特にCAC−IGZOと呼称してもよい。)とは、インジウム酸化物(以下、InO
X1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、またはインジウム亜鉛酸化物(以下、In
X2Zn
Y2O
Z2(X2、Y2、およびZ2は0よりも大きい実数)とする。)と、ガリウム酸化物(以下、GaO
X3(X3は0よりも大きい実数)とする。)、またはガリウム亜鉛酸化物(以下、Ga
X4Zn
Y4O
Z4(X4、Y4、およびZ4は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInO
X1、またはIn
X2Zn
Y2O
Z2が、膜中に均一に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。
【0255】
つまり、CAC−OSは、GaO
X3が主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。なお、本明細書において、例えば、第1の領域の元素Mに対するInの原子数比が、第2の領域の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、第1の領域は、第2の領域と比較して、Inの濃度が高いとする。
【0256】
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、およびOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO
3(ZnO)
m1(m1は自然数)、またはIn
(1+x0)Ga
(1−x0)O
3(ZnO)
m0(−1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。
【0257】
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、またはCAAC構造を有する。なお、CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa−b面においては配向せずに連結した結晶構造である。
【0258】
一方、CAC−OSは、金属酸化物の材料構成に関する。CAC−OSとは、In、Ga、Zn、およびOを含む材料構成において、一部にGaを主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。従って、CAC−OSにおいて、結晶構造は副次的な要素である。
【0259】
なお、CAC−OSは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まない。
【0260】
なお、GaO
X3が主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0261】
なお、ガリウムの代わりに、アルミニウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれている場合、CAC−OSは、一部に該金属元素を主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。
【0262】
CAC−OSは、例えば基板を加熱しない条件で、スパッタリング法により形成することができる。また、CAC−OSをスパッタリング法で形成する場合、成膜ガスとして、不活性ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、及び窒素ガスの中から選ばれたいずれか一つまたは複数を用いればよい。また、成膜時の成膜ガスの総流量に対する酸素ガスの流量比は低いほど好ましく、例えば酸素ガスの流量比を0%以上30%未満、好ましくは0%以上10%以下とすることが好ましい。
【0263】
CAC−OSは、X線回折(XRD:X−ray diffraction)測定法のひとつであるOut−of−plane法によるθ/2θスキャンを用いて測定したときに、明確なピークが観察されないという特徴を有する。すなわち、X線回折から、測定領域のa−b面方向、およびc軸方向の配向は見られないことが分かる。
【0264】
またCAC−OSは、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう。)を照射することで得られる電子線回折パターンにおいて、リング状に輝度の高い領域と、該リング領域に複数の輝点が観測される。従って、電子線回折パターンから、CAC−OSの結晶構造が、平面方向、および断面方向において、配向性を有さないnc(nano−crystal)構造を有することがわかる。
【0265】
また例えば、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、GaO
X3が主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0266】
CAC−OSは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、CAC−OSは、GaO
X3などが主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域と、に互いに相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
【0267】
ここで、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域は、GaO
X3などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、金属酸化物としての導電性が発現する。従って、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域が、金属酸化物中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
【0268】
一方、GaO
X3などが主成分である領域は、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、GaO
X3などが主成分である領域が、金属酸化物中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
【0269】
従って、CAC−OSを半導体素子に用いた場合、GaO
X3などに起因する絶縁性と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(I
on)、および高い電界効果移動度(μ)を実現することができる。
【0270】
また、CAC−OSを用いた半導体素子は、信頼性が高い。従って、CAC−OSは、ディスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
【0271】
本明細書において、特に断りがない場合、オン電流とは、トランジスタがオン状態にあるときのドレイン電流をいう。オン状態(オンと略す場合もある)とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧(V
G)がしきい値電圧(V
th)以上の状態、pチャネル型トランジスタでは、V
GがV
th以下の状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオン電流とは、V
GがV
th以上のときのドレイン電流を言う。また、トランジスタのオン電流は、ドレインとソースの間の電圧(V
D)に依存する場合がある。
【0272】
本明細書において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態(オフと略す場合もある)とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、V
GがV
thよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、V
GがV
thよりも高い状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、V
GがV
thよりも低いときのドレイン電流を言う。トランジスタのオフ電流は、V
Gに依存する場合がある。従って、トランジスタのオフ電流が10
−21A未満である、とは、トランジスタのオフ電流が10
−21A未満となるV
Gの値が存在することを言う場合がある。
【0273】
また、トランジスタのオフ電流は、V
Dに依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、V
Dの絶対値が0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、または20Vにおけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるV
Dにおけるオフ電流を表す場合がある。
【0274】
本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。
【0275】
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0276】
XとYとが直接的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)を介さずに、XとYとが、接続されている場合である。
【0277】
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。または、スイッチは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有している。なお、XとYとが電気的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合を含むものとする。
【実施例】
【0278】
本実施例では実施の形態2に示した記憶装置100の動作周波数についてシミュレーションを行った。
【0279】
記憶装置100の動作周波数をシミュレーションするにあたって、
図21に示すトランジスタ200aを試作し、その電気特性からシミュレーションに必要なパラメータを抽出した。
【0280】
試作したトランジスタ200aのサイズは、L(チャネル長)=60nm、W(チャネル幅)=60nmである。
【0281】
試作したトランジスタ200aにおいて、金属酸化物230aは、膜厚が5nmのIn‐Ga‐Zn酸化物で成る。金属酸化物230aの成膜は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:4のIn−Ga―Zn酸化物のターゲットを用いて、DCスパッタリング法で行った。スパッタリング法は、基板温度を200℃とし、Arと酸素の混合ガスで行った。
【0282】
試作したトランジスタ200aにおいて、金属酸化物230bは、膜厚が15nmのIn‐Ga‐Zn酸化物で成る。金属酸化物230bの成膜は、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:4.1のIn−Ga―Zn酸化物のターゲットを用いて、DCスパッタリング法で行った。スパッタリング法は、基板温度を200℃とし、Arと酸素の混合ガスで行った。
【0283】
試作したトランジスタ200aにおいて、金属酸化物230cは、膜厚が5nmのIn‐Ga‐Zn酸化物で成る。金属酸化物230cの成膜は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のIn−Ga―Zn酸化物のターゲットを用いて、DCスパッタリング法で行った。スパッタリング法は、基板温度を200℃とし、Arと酸素の混合ガスで行った。
【0284】
本実施例では、
図8のトランジスタTr1として、上記トランジスタ200aを想定し、記憶装置100の動作についてシミュレーションを行った。そのため、試作したトランジスタ200aの電気特性を測定し、シミュレーションに必要なパラメータを取得した。
【0285】
シミュレーションによって得られたトランジスタTr1のV
G(ゲート電圧)‐I
D(ドレイン電流)特性を
図26および
図27に示す。
【0286】
図26は、バックゲート電圧をV
BG=−5Vと一定にし、温度を−40℃、27℃、85℃と変化させたときのトランジスタTr1のV
G−I
D特性を示す。それぞれ、V
D(ドレイン電圧)=1.2Vとした。
【0287】
図26より、トランジスタTr1は低温になるほど、しきい値電圧がプラスにシフトし、オン電流が低下することが確認された。
【0288】
図27は、以下の3条件におけるトランジスタTr1のV
G−I
D特性を示す。それぞれ、ドレイン電圧V
D=1.2Vとした。
【0289】
(A)−40℃、V
BG=−5V
(B)−40℃、V
BG=−4.2V
(C)+27℃、V
BG=−5V
【0290】
(A)と(B)の比較より、V
BGを−5Vから−4.2Vへ変化させることで、トランジスタTr1のしきい値電圧が−0.2V変化することが確認された。
【0291】
記憶装置100は、半導体装置10による温度補正が行われない場合、温度に関わらずV
BG=−5Vが印加されているとする。その場合、
図27に示す(A)の条件が、最もオン電流が低い条件と考えられる。
【0292】
記憶装置100は、半導体装置10による温度補正が行われる場合、27℃以上の高温においてV
BG=−5Vが印加され(
図27(C))、27℃未満の低温においてV
BG=−4.2V(
図27(B))が印加されているとする。その場合、
図27に示す(C)の条件が、最もオン電流の低い条件と考えられる。
【0293】
次に、記憶装置100の動作周波数について計算を行った。以下に動作周波数の計算方法について説明を行う。
【0294】
図28(A)は、
図8の容量素子CsにトランジスタTr1を介してデータを書き込む場合を想定している。それぞれDはドレイン、Gはゲート、Sはソースを表している。トランジスタTr1のソースの電位(容量素子Csに印加される電圧)をV
Sとする。トランジスタTr1をオンにすることで、電流I
Dが流れ、容量素子Csが充電される。
【0295】
充電が開始されてV
SがV
CSに達した時に充電完了とする。この時の時間を充電時間t
Wとする(
図28(B)参照)。なお、本実施例において、容量素子Csの容量は3.5fF、V
CSは0.55Vと仮定する。
【0296】
時間tの間に容量素子Csに充電される電荷Qは以下の式で表される。
【0297】
【数1】
【0298】
上式より、充電時間t
wは以下の式で表される。
【0299】
【数2】
【0300】
次に、トランジスタTr1が容量素子Csに充電を行う場合のゲート電圧(V
G=2.97V)とドレイン電圧(V
D=1.08V)を仮定し、
図28(C)に示すI
D−V
S特性をシミュレーションにより取得する。
【0301】
図28(C)に示す領域R1について、式(2)の積分を行うことで、t
wを算出することができる。
【0302】
記憶装置100の動作周波数fと充電時間t
wとの間には逆比例の関係があると仮定する。
【0303】
【数3】
【0304】
式(3)においてAは係数である。事前の測定により、記憶装置100は100MHzで動作する場合、充電時間は4nsであることがわかっている。これより係数Aを求める。
【0305】
上述の係数Aと式(2)より得られたt
wを式(3)に代入することで、記憶装置100の動作周波数を算出することができる。
【0306】
以上の方法により、記憶装置100の動作周波数について計算を行った。計算は温度補正を行わない場合と温度補正を行う場合のそれぞれを想定した。温度補正を行わない場合は
図27(A)の条件を想定し、温度補正を行う場合は
図27(C)の条件を想定した。すなわち、それぞれの場合において、オン電流が最も低くなる条件を想定し、最低限保証できる動作周波数の値を見積もった。計算結果を以下の表に示す。
【0307】
【表1】
【0308】
表1より、温度補正を行うことで、記憶装置100の動作周波数が100MHzから160MHzに向上することが見積もられた。
【0309】
すなわち、記憶装置100は低温環境に置かれても、半導体装置10を用いてV
BGの補正を行うことで、速度を落とすことなく動作することが確認された。