(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車や家庭電化製品などの電気回路自体や前記電気回路を含むシステム全体の異常時などにおいて、電気回路を遮断することで大きな被害を未然に防止する電気回路遮断装置が使用されており、電気自動車の電気回路では電気回路遮断装置の重要性が特に大きくなっている。
電気回路遮断装置は、ハウジング内に点火器、発射体(ピストン)、導体などが収容されたものが知られている(特許文献1〜7)。
【0003】
特許文献1、2では、ハウジングの材質として、金属、セラミックス、ポリマーが例示されており、特定のポリマーが好ましいと記載されている(特許文献1の2〜3頁、特許文献2の2頁)。
特許文献4では、ケーシング13はステンレスからなるものである(段落番号0011)。
特許文献5では、ケース30は、電気絶縁性を有し、かつ強度の高い材料(例えば樹脂材料)によって形成されている(段落番号0034)。
ポリマー材料(樹脂材料)を使用したときは、例えば、特許文献1、2、5のそれぞれの
図2などからも理解できるとおり、必要な強度を付与する点から、ハウジング(ケーシング)を厚肉にする必要がある。
ステンレスのケーシング13を使用したときは、質量の増加が大きくなるほか、絶縁ケース14を組み合わせて配置する必要があるため、構造および組み立てが複雑になる。
特許文献6は、金属製のシリンダーを使用して樹脂製のハウジングを補強することで、特許文献1〜5にはない作用効果が得られている。
特許文献7は、通電状態の導電体が切断されたときに発生するアークを消弧するための消弧室32が設けられている(特許請求の範囲)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、導体片の切断時にアークが生じたときでも消弧できる電気回路遮断装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、合成樹脂からなるハウジング内において、前記ハウジングの第1端部からハウ
ジングの軸方向反対側の第2端部に向かって形成された筒状空間内に順に、点火器、合成樹脂からなる棒状発射体、電気回路の一部を形成させるための導体片が配置され、前記ハウジングの第2端部と前記導体片の間に絶縁閉鎖空間を有しており、
前記導体片が、両端側の第1接続部、第2接続部と中間部分の切断部からなる板片であり、前記切断部の面が前記ハウジングの軸方向に直交するハウ
ジングの幅方向に配置されており、
前記棒状発射体が、先端部のハウ
ジングの幅方向の断面形状が四角形のもので、前記導体片の切断部の面とハウ
ジングの軸方向に対向して配置されているものであり、
前記絶縁閉鎖空間が、ハウ
ジングの幅方向の断面形状が四角形であり、前記導体片に面した開口部、前記開口部とハウ
ジングの軸方向に対向した閉塞端面、前記開口部と前記閉塞端面の間の4つの側面を有しているものであり、
前記絶縁閉鎖空間の開口部の幅(W1)と前記棒状発射体の先端部の幅(L1)がW1>L1で、W1−L1≧0.25mmの関係を有している、電気回路遮断装置を提供する。
【0007】
第1実施形態の電気回路遮断装置は、ガソリンまたはディーゼル自動車のバッテリー(リチウムイオンバッテリーなど)、電気自動車の電気回路、家庭電化製品などの様々な電気回路に取り付けて使用して、電気回路に異常が生じたときには、電気回路を遮断できるものである。
第1実施形態の電気回路遮断装置は、単独で前記した各種自動車に取り付けることもできるが、例えば、自動車に搭載されたエアバッグ装置と連動して作動できるようにして取り付けることもできる。このような場合には、エアバッグ装置が搭載された各種自動車が事故を起こしたとき、エアバッグ装置の作動信号を受けて本発明の電気回路遮断装置も作動して電気回路が遮断されるようにすることで、大電流の漏電を防止できる。
【0008】
ハウジングは合成樹脂からなるものであり、第1端部側からハウ
ジングの軸方向反対側の第2端部側に向かって形成された筒状空間を有しており、前記筒状空間の第2端部側は導体片を介して絶縁閉鎖空間に繋がっている。
ハウジングの外形は取り付け部位に応じて適宜決定されるものである。
ハウジングは、点火器、発射体、導体片などの部品を収容したり、取り付けたりすることができる形状、構造および大きさのものである。
ハウジングは、第1端部から導体片が設置された部分までの第1ハウジングと、導体片が設置された部分から第2端部までの第2ハウジング(ボトムクリップ)からなるものにすることもできる。
【0009】
点火器は、公知の電気回路遮断装置で使用されている点火器のほか、自動車のエアバッグ装置で使用するガス発生器用の点火器などである。
点火器は、点火薬を備えた点火部と通電するための導電ピンを備えたものであり、作動時には、外部電源から通電することで点火薬を燃焼させ、燃焼ガスや火炎などの燃焼生成物を発生させるものである。
【0010】
棒状発射体は、点火器の作動により発生した燃焼生成物の圧力を受けて、ハウジング内を軸方向に移動し、導体片を切断して、電気回路を遮断するためのものである。
棒状発射体は、全体が均一外径(均一幅)のものでもよいし、先端部が他の部分に比べて大きくなっているものでもよいし、小さくなっているものでもよい。
棒状発射体の先端部は、導体片の切断が容易であることから、四角柱形状(ハウジングの幅方向の断面形状が四角形)であり、前記断面形状が正方形のものが好ましい。
棒状発射体は、ハウジングと同じ合成樹脂からなるものを使用することができる。
【0011】
導体片は、公知の電気回路遮断装置で使用されているものと同じものを使用することができる。
導体片は、両端側の接続部(第1接続部と第2接続部)と中間部分の切断部からなる板片であり、電気回路に取り付けたとき、電気回路の一部を形成するためのものである。
導体片の形状は、ハウジングに対する取り付け部分の形状および構造に対応した板形状になっている。
導体片は、筒状空間と絶縁閉鎖空間の間に配置されている。
【0012】
ハウジングの絶縁閉鎖空間の開口部の幅(W1)と棒状発射体の先端部の幅(L1)は、W1>L1で、W1−L1≧0.25mmの関係を有している。W1−L1は0.5mm以上が好ましく、0.8mm以上がより好ましく、2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましい。
絶縁閉鎖空間の開口部の幅(W1)と棒状発射体の先端部の幅(L1)が前記関係を有していると、作動時に棒状発射体が導体片の切断部の一面側(ハウジングの第1端部側)を押したとき、それと同時に導体片の切断部の他面側(ハウジングの第2端部側)が絶縁閉鎖空間の開口部と4つの側面部の境界部の角部に当たった状態で押し込まれるようになるため、切断されやすくなる。このため、棒状発射体に圧力を加える点火器の出力を小さくすることができるようになり、電気回路遮断装置自体も小型化ができるようになる。
【0013】
本発明の電気回路遮断装置の好ましい実施形態は、前記絶縁閉鎖空間が、前記開口部の幅(W1)と前記閉塞端面の幅(W2)がW1>W2の関係を有しており、
前記閉塞端面の幅(W2)と前記棒状発射体の先端部の幅(L1)がW2>L1の関係を有しているものである。
【0014】
W2>L1の関係を有していることで、導体片が切断されたときにアークが発生しても消弧され易くなっている。
【0015】
本発明の電気回路遮断装置の好ましい別の実施形態は、前記絶縁閉鎖空間が、前記開口部の幅(W1)と前記閉塞端面の幅(W2)がW1>W2の関係を有し、前記閉塞端面の幅(W2)と前記棒状発射体の先端部の幅(L1)がW2>L1の関係を有しており、
前記開口部から前記閉塞端面までの前記4つの側面が連続した傾斜面になっているものである。
【0016】
W1>W2、W2>L1の関係を有しており、4つの側面が傾斜面になっていることで、作動時における棒状発射体の運動エネルギーを徐々に吸収できると共に、導体片が切断されたときにアークが発生しても消弧され易くなっている。
【0017】
本発明の電気回路遮断装置の好ましいさらに別の実施形態は、前記絶縁閉鎖空間が、前記開口部の幅(W1)、前記対向する側面間の幅(W3)および前記閉塞端面の幅(W2)が、W1>W2=W3の関係を有し、前記閉塞端面の幅(W2)と前記棒状発射体の先端部の幅(L1)がW2>L1、かつW2−L1≦0.25mmの関係を有しており、
前記開口部と前記4つの側面の境界部に幅の差(W1−W3)による環状段差部が形成されているものである。
【0018】
W1>W2、W2>L1、W2−L1≦0.25mmの関係を有していることで、導体片が切断されたときにアークが発生しても消弧され易くなっている。
【0019】
本発明の電気回路遮断装置の好ましいさらに別の実施形態は、前記棒状発射体が、幅の大きな本体部と、前記本体部よりも幅の小さい先端部を有しており、前記本体部と前記先端部の間が傾斜面になっているものであり、
前記絶縁閉鎖空間が、前記開口部の幅(W1)、対向する側面間の幅(W3)および前記閉塞端面の幅(W2)がW1=W3=W2の関係を有しており、
前記閉塞端面の幅(W2)と前記棒状発射体の先端部の幅(L1)がW2>L1の関係を有しており、かつ前記閉塞端面の幅(W2)と前記棒状発射体の本体部の幅(L2)がW2−L2≦0.25mmの関係を有しているものである。
【0020】
W1=W3=W2、W2>L1、W2−L2≦0.25mmの関係を有していることで、導体片が切断されたときにアークが発生しても消弧され易くなっている。
【0021】
本発明の電気回路遮断装置の好ましいさらに別の実施形態は、前記棒状発射体が、幅の大きな本体部と、前記本体部よりも幅の小さい先端部を有しており、前記本体部と前記先端部の間が段差面になっているものであり、
前記絶縁閉鎖空間が、前記開口部の幅(W1)、対向する側面間の幅(W3)および前記閉塞端面の幅(W2)がW1=W3=W2の関係を有しており、
前記閉塞端面の幅(W2)と前記棒状発射体の先端部の幅(L1)がW2>L1の関係を有しており、かつ前記閉塞端面の幅(W2)と前記棒状発射体の本体部の幅(L2)がW2−L2≦0.25mmの関係を有しているものである。
【0022】
W1=W3=W2、W2>L1、W2−L2≦0.25mmの関係を有していることで、導体片が切断されたときにアークが発生しても消弧され易くなっている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電気回路遮断装置は、作動時において導体片が棒状発射体と絶縁閉鎖空間の開口部の角部の両方からの作用を受けて切断され易くなっているため、棒状発射体に圧力を加えるための点火器の出力を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1)
図1の電気回路遮断装置1
合成樹脂からなるハウジング(樹脂ハウジング)10は、第1端部11からハウジング軸方向反対側の第2端部12側の導体片50まで貫通された筒状空間13を有している。
筒状空間13の第1端部11側には、使用時において点火器20と電源をリードワイヤで接続するためのコネクタ嵌め込み部15が取り付けられている。
筒状空間13内には、第1端部11側から第2端部12側に順に点火器20、合成樹脂からなる棒状発射体40、導体片50が配置されている。ハウジング10、筒状空間13、点火器20、棒状発射体40は、それぞれの中心軸が一致するように配置されている。
【0026】
点火器20は、点火部21と導電ピン23を有する点火器本体の一部が樹脂で包囲された樹脂部22を有しており、樹脂部22から点火部21が突き出されたものである。
【0027】
棒状発射体40は、筒状空間13内を移動できるように配置されているもので、先端部41のハウ
ジングの幅方向の断面形状が正方形のものである。
棒状発射体40は、先端部41を除いた部分の断面形状は特に制限されるものではない。
ハウジング10と棒状発射体40の間には、必要に応じて、ハウジング10を補強するためのシリンダーを配置することができる。シリンダーは、ステンレス、アルミニウムなどの金属、炭素繊維強化樹脂などの繊維強化樹脂からなるものが好ましい。
【0028】
導体片50は、電気回路遮断装置1を電気回路に取り付けたとき、電気回路の一部を形成させるためのものである。
導体片50は、両端側の第1接続部51、第2接続部52と中間部分の切断部53からなる板片である。
第1接続部51(第1接続部51の穴51a)と第2接続部52(第2接続部52の穴52a)は、電気回路において他の導体(例えば、リードワイヤ)と接続するためのものであり、切断部53は、作動時において切断されて電気回路を遮断できるようにするためのものである。
導体片50は、切断部53の面がハウジング10の幅方向に配置されている。
導体片50の切断部53の面は、棒状発射体40の先端部41と対向している。
図1では、切断部53の面と先端部41が当接されているが、間隔をおいて対向されていてもよい。
【0029】
導体片50とハウジングの第2端部12の間には、絶縁閉鎖空間60が形成されている。
絶縁閉鎖空間60は、ハウ
ジングの幅方向の断面形状が正方形のものであり、導体片50に面した開口部61、開口部61とハウ
ジングの軸方向に対向した閉塞端面62、開口部61と閉塞端面62の間の4つの側面63を有している。
開口部61と4つの側面63との境界部分には、約90度の角部64が形成されている。
絶縁閉鎖空間60の開口部61の幅(W1)と棒状発射体40の先端部41の幅(L1)はW1>L1およびW1−L1=1mmの関係を有している。
絶縁閉鎖空間60は、開口部61の幅(W1)、対向する二つの側面63の間の幅(W3)、閉塞端面62の幅(W2)がW1=W3=W2となっている。
【0030】
図1に示す電気回路遮断装置は、金型内に導体片50を配置した状態で射出成形した後、筒状空間13の一端側から必要な部品を挿入して製造する方法のほか、金型内に導体片を配置した状態で射出成形して、第1端部11から導体片50が設置された部分までの第1ハウジングを成形した後、筒状空間13の両端側から必要な部品を挿入したものを再度金型内に配置した状態で射出成形して、導体片50が設置された部分から第2端部12までの第2ハウジング(ボトムクリップ)を成形して製造する方法を適用することができる。
【0031】
次に、
図1に示す電気回路遮断装置1を電気自動車の電気回路(バッテリー)の一部に配置したときの動作を説明する。
図1に示す電気回路遮断装置1は、異常電流を検知するセンサーなどと組み合わせて、例えば電気回路に異常電流が流れたときに自動的に作動を開始するようにすることができるほか、人為的に作動するようにすることもできる。
【0032】
電気回路遮断装置1を電気回路に配置するときは、導体片50の第1接続部51の穴51bと第2接続部52の穴52aにおいて電気回路を構成するリードワイヤと接続する。
電気回路に異常が生じたときには、点火器20が作動して、点火部21から燃焼生成物が発生する。
点火部21から発生した燃焼生成物は筒状空間13内を直進して、棒状発射体40に衝突する。
【0033】
燃焼生成物による圧力を受けた棒状発射体40の先端部41は、軸方向に移動して、導体片50の切断部53を切断する。
このとき、
図1(a)、(b)に示すとおり、W1>L1およびW1−L1=1mmの関係を有していることから、作動時に棒状発射体40の先端部41が導体片50の切断部53を押したとき、それと同時に導体片50の切断部53が開口部61と4つの側面63の境界部の角部64に当たった状態で押し込まれるようになるため、切断部53はハウジンングの軸方向の両側からの作用を受けて容易に切断される。このため、棒状発射体40に圧力を加える点火器20の出力を小さくすることができるようになり、電気回路遮断装置1自体も小型化ができるようになる。
なお、W1=L1の場合、またはW1>L1であるが、W1−L1<0.5mmの場合には、
図1(c)に示すような状態になって切断され難くなるため、導体片50を切断するためにより大きな力(より大きな点火器の出力)が必要になる。
【0034】
その後、棒状発射体の先端部41と切断部53の切断片が閉塞端面62まで移動して電気絶縁的に保持される。
この動作により導体片50の両端にある第1接続部51と第2接続部52は電気的に不通状態となるため、装置1を配置した電気回路は遮断される。
【0035】
(2)
図2の電気回路遮断装置1A
図2に示す電気回路遮断装置1Aは、絶縁空間160の形状が異なるほかは、
図1に示す電解回路手段装置1と同じものである。
導体片50とハウジングの第2端部12の間には、絶縁閉鎖空間160が形成されている。
絶縁閉鎖空間160は、ハウ
ジングの幅方向の断面形状が正方形のものであり、導体片50に面した開口部161、開口部161とハウ
ジングの軸方向に対向した閉塞端面162、開口部161と閉塞端面162の間の4つの側面163を有している。
開口部161と4つの側面163との境界部分は約80度〜約90度未満の角部が形成されている。
【0036】
絶縁閉鎖空間160は、開口部161の幅(W1)と閉塞端面162の幅(W2)がW1>W2の関係を有しており、開口部161から閉塞端面162までの4つの側面163は、連続した傾斜面になっている。
絶縁閉鎖空間160の開口部161の幅(W1)と棒状発射体40の先端部の幅(L1)はW1>L1およびW1−L1=1mmの関係を有しており、閉塞端面162の幅(W2)と棒状発射体の先端部141の幅(L1)はW2<L1の関係を有している。
【0037】
図2の電気回路遮断装置1Aの点火器20が作動して、燃焼生成物による圧力を受けた棒状発射体40の先端部41は、軸方向に移動して、導体片50の切断部53を切断する。
このとき、W1>L1およびW1−L1=1mmの関係を有していることから、作動時に棒状発射体40の先端部41が導体片50の切断部53を押したとき、それと同時に導体片50の切断部53が開口部161と4つの側面163の境界部の角部に当たった状態で押し込まれるようになるため、ハウ
ジングの軸方向の両側からの作用を受けて容易に切断される。このため、棒状発射体40に圧力を加える点火器20の出力を小さくすることができるようになり、電気回路遮断装置1自体も小型化ができるようになる。
【0038】
その後、棒状発射体の先端部41と切断部53の切断片が閉塞端面162まで移動して電気絶縁的に保持される。
この動作により導体片50の両端にある第1接続部51と第2接続部52は電気的に不通状態となるため、装置1を配置した電気回路は遮断される。
このような過程にて導体片50が切断され、第1接続部51と第2接続部52の間にアークが発生した場合でも、W2<L1の関係を有しているため、アークは消弧される。
また棒状発射体40は、開口部161から閉塞端面162に向かって徐々に側面(傾斜面)163との接触強度を高めながら直進するため、運動エネルギーが徐々に吸収され、ハウジング10に対する衝撃が緩和される。このため、ハウジング10の小型化と装置1Aの小型化ができるようになる。
【0039】
(3)
図3の電気回路遮断装置1B
図3に示す電気回路遮断装置1Bは、絶縁空間260の形状が異なるほかは、
図1に示す電解回路手段装置1と同じものである。
絶縁閉鎖空間260は、開口部261の幅(W1)、対向する側面263間の幅(W3)および閉塞端面262の幅(W2)が、W1>W2=W3の関係を有している。
このため、開口部261と4つの側面263の境界部に、それらの幅の差(W1−W3)による環状段差部264が形成されている。
さらに絶縁閉鎖空間260は、閉塞端面262の幅(W2)と棒状発射体40の先端部41の幅(L1)がW2>L1、かつW2−L1≦0.25mmの関係を有している。
絶縁空間260の開口部261と4つの側面263との境界部分は約90度の角部が形成されている。
【0040】
図3の電気回路遮断装置1Bの点火器20が作動して、燃焼生成物による圧力を受けた棒状発射体40の先端部41は、軸方向に移動して、導体片50の切断部53を切断する。
このとき、W1>L1およびW1−L1=1mmの関係を有していることから、作動時に棒状発射体40の先端部41が導体片50の切断部53を押したとき、それと同時に導体片50の切断部53が開口部261と4つの側面263の境界部の角部に当たった状態で押し込まれるようになるため、ハウ
ジングの軸方向の両側からの作用を受けて容易に切断される。このため、棒状発射体40に圧力を加える点火器20の出力を小さくすることができるようになり、電気回路遮断装置1自体も小型化ができるようになる。
【0041】
その後、棒状発射体の先端部41と切断部53の切断片が閉塞端面262まで移動して電気絶縁的に保持される。
この動作により導体片50の両端にある第1接続部51と第2接続部52は電気的に不通状態となるため、装置1Bを配置した電気回路は遮断される。
このような過程にて導体片50が切断され、第1接続部51と第2接続部52の間にアークが発生した場合でも、W2>L1、かつW2−L1≦0.25mmの関係を有しているため、アークは消弧される。
【0042】
(4)
図4の電気回路遮断装置1C
図4に示す電気回路遮断装置1Cは、棒状発射体140の先端部141の形状の形状が異なるほかは、
図1に示す電気回路遮断装置1と同じものである。
棒状発射体140は、幅の大きな本体部141と、先端面143に向かって連続的に幅が小さくなった傾斜先端部142を有している。
先端面143を含む傾斜先端部142のハウ
ジングの幅方向の断面形状は正方形であり、先端面143の幅がL1である。
【0043】
図4の電気回路遮断装置1Cの点火器20が作動して、燃焼生成物による圧力を受けた棒状発射体140の先端面143は、軸方向に移動して、導体片50の切断部53を切断する。
このとき、W1>L1およびW1−L1=1mmの関係を有していることから、作動時に棒状発射体140の先端面143が導体片50の切断部53を押したとき、それと同時に導体片50の切断部53が開口部61と4つの側面63の境界部の角部に当たった状態で押し込まれるようになるため、ハウ
ジングの軸方向の両側からの作用を受けて容易に切断される。このため、棒状発射体140に圧力を加える点火器20の出力を小さくすることができるようになり、電気回路遮断装置1自体も小型化ができるようになる。
【0044】
その後、棒状発射体の先端面143と切断部53の切断片が閉塞端面62まで移動して電気絶縁的に保持される。
この動作により導体片50の両端にある第1接続部51と第2接続部52は電気的に不通状態となるため、装置1Cを配置した電気回路は遮断される。
このような過程にて導体片50が切断され、第1接続部51と第2接続部52の間にアークが発生した場合でも、W2>L1、かつW2−L1≦0.25mmの関係を有しているため、アークは消弧される。
【0045】
(5)
図5の電気回路遮断装置1D
図5に示す電気回路遮断装置1Dは、棒状発射体240の形状が異なるほかは、
図1に示
す電気回路遮断装置1と同じものである。
棒状発射体240は、幅の大きな本体部241と、本体部241よりも幅の小さい先端部242を有しており、本体部241と先端部242の間が段差面243になっている。先端部241のハウ
ジングの幅方向の断面形状は正方形であり、先端部242の幅がL1である。
【0046】
図5の電気回路遮断装置1Dの点火器20が作動して、燃焼生成物による圧力を受けた棒状発射体240の先端部242は、軸方向に移動して、導体片50の切断部53を切断する。
このとき、W1>L1およびW1−L1=1mmの関係を有していることから、作動時に棒状発射体240の先端部242が導体片50の切断部53を押したとき、それと同時に導体片50の切断部53が開口部61と4つの側面63の境界部の角部に当たった状態で押し込まれるようになるため、ハウ
ジングの軸方向の両側からの作用を受けて容易に切断される。このため、棒状発射体240に圧力を加える点火器20の出力を小さくすることができるようになり、電気回路遮断装置1自体も小型化ができるようになる。
【0047】
その後、棒状発射体240の先端部242と切断部53の切断片が閉塞端面62まで移動して電気絶縁的に保持される。
この動作により導体片50の両端にある第1接続部51と第2接続部52は電気的に不通状態となるため、装置1Dを配置した電気回路は遮断される。
このような過程にて導体片50が切断され、第1接続部51と第2接続部52の間にアークが発生した場合でも、W2>L2、かつW2−L2≦0.25mmの関係を有しているため、アークは消弧される。
【0048】
(6)
図6の電気回路遮断装置1E
図6に示す電気回路遮断装置1Eは、
図1に示す電気回路遮断装置1とは棒状発射体340の形状、筒状空間313の形状、導体片350の形状が異なっており、さらにシリンダー330が使用されているほかは、実質的に
図1に示す電気回路遮断装置1と同じものである。
【0049】
合成樹脂からなるハウジング(樹脂ハウジング)310は、第1端部311から第2端部312側の導体片350まで貫通された筒状空間313を有している。
筒状空間313は、第1端部側の大径筒状空間313aと第2端部312側の小径筒状空間313bを有している。
【0050】
棒状発射体340は、基礎部341とロッド部345を有しており、基礎部341の外径はロッド部345の外径よりも大きくなっている。基礎部341のハウジング幅方向の断面形状は円形であり、ロッド部345のハウジング幅方向の断面形状は四角形である。
基礎部341は、点火器320に面した第1基礎部342、ロッド部345と接した第3基礎部344、中間にある第2基礎部343を有している。
第1基礎部342の点火器320側の面は、中心部が最も深い凹部曲面状になっており、点火器320が作動して生じた圧力を受け取り取りやすくなっている。
第1基礎部342と第3基礎部344の外径は同程度であり、シリンダー330の内周面に当接されている。
第2基礎部343の外径は第1基礎部342と第3基礎部344より小さくなっているため、外径差に起因して形成された第2基礎部343の周囲の環状空間にはOリング346が配置されている。
【0051】
シリンダー330は、ハウジング310を補強するためのものであり、ステンレス、アルミニウムなどの金属、炭素繊維強化樹脂などの繊維強化樹脂からなるものである。シリンダー330のハウジング幅方向の断面形状は円形である。
シリンダー330は、点火器320の点火部321と発射体340を包囲し、筒状空間313内に圧入されることで軸方向に移動しないように固定されている。
シリンダー330は、点火器320の点火部321と発射体340を包囲し、筒状空間313内に圧入されることで軸方向に移動しないように固定されている。
シリンダー330の第2端部330a側には、所定間隔で入れられた2本の切り込み部分が等間隔で複数箇所形成されている。所定間隔で入れられた2本の切り込み部分は内側に折り曲げられることで、折り曲げられた部分がロッド部345のガイド部331として機能している。
【0052】
導体片350は、装置1Eを電気回路に取り付けたとき、電気回路の一部を形成させるためのものである。
導体片350は、両端側の第1接続部351、第2接続部352と中間部分の切断部353からなる板片である。
第1接続部351と第2接続部352は、電気回路において他の導体(例えば、リードワイヤ)と接続するためのものであり、切断部353は、作動時において切断されて電気回路を遮断できるようにするためのものである。
【0053】
導体片350は、切断部353の面がハウジング310の軸方向に直交して配置されている。
導体片350の切断部353の面は、発射体340のロッド部345の先端面と対向している。
図3では、切断部353の面とロッド部345の先端面が当接されているが、間隔をおいて対向されていてもよい。
【0054】
導体片350とハウジングの第2端部312の間には、
図1の絶縁空間60に対応する絶縁閉鎖空間360が形成されている。
絶縁閉鎖空間360は、ハウ
ジングの幅方向の断面形状が正方形のものであり、導体片350に面した開口部361、開口部361とハウ
ジングの軸方向に対向した閉塞端面362、開口
部361と閉塞端面362の間の4つの側面363を有している。
開口部361と4つの側面363との境界部分には、約90度の角部364が形成されている。
【0055】
絶縁閉鎖空間360の幅(対向する側面363の間隔)(W1)と棒状発射体340のロッド部345の幅(L1)は、W1>L1およびW1−L1=1mmの関係を有している。
【0056】
図6に示す電気回路遮断装置1Eは、金型内に導体片を配置した状態で射出成形した後、筒状空間313の一端側から必要な部品を挿入して製造する方法のほか、金型内に導体片を配置した状態で射出成形して、第1端部311から導体片350が設置された部分までの第1ハウジングを成形した後、筒状空間313の両端側から必要な部品を挿入したものを再度金型内に配置した状態で射出成形して、導体片350が設置された部分から第2端部312までの第2ハウジング(ボトムクリップ)を成形して製造する方法を適用することができる。
【0057】
図6の電気回路遮断装置1E100が作動すると、
図1に示す電気回路遮断装置1と同様に動作して導体片130が切断され、導体片350の両端にある第1接続部351と第2接続部352は電気的に不通状態となるため、装置1Eを配置した電気回路は遮断される。
図6の実施形態では、W1>L1およびW1−L1=1mmの関係を有していることから、作動時に棒状発射体340の先端部が導体片150の切断部153を押したとき、それと同時に導体片350の切断部353が開口部361と4つの側面363の境界部の角部364に当たった状態で押し込まれるようになるため、切断部353はハウ
ジングの軸方向の両側からの作用を受けて容易に切断される。このため、棒状発射体340に圧力を加える点火器320の出力を小さくすることができるようになり、電気回路遮断装置1E自体も小型化ができるようになる。