特許第6962757号(P6962757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962757
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】測定方法および電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   H01J37/244
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-178196(P2017-178196)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-53927(P2019-53927A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】河野 祐二
【審査官】 関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−162542(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0351371(US,A1)
【文献】 実開昭61−101954(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J37/00−37/02
37/05
37/09−37/18
37/21
37/24−37/244
37/252−37/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出面が複数の検出領域に分割された分割型検出器を備えた電子顕微鏡において、走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を測定する測定方法であって、
デフォーカス量を変化させることなく、結像レンズ系で前記検出面を回折面からずれた面と共役にした状態で試料に入射する電子線をシフトさせることで、前記検出面上における電子線をシフトさせて、前記検出面上における電子線のシフト方向を前記分割型検出器で測定する工程と、
前記シフト方向から、前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める工程と、
を含む、測定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記シフト方向を前記分割型検出器で測定する工程では、
前記試料に入射する電子線のシフトを繰り返し行い、電子線のシフトを繰り返すごとに、電子線をシフトさせる方向を変える、測定方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記シフト方向を前記分割型検出器で測定する工程では、
前記試料に入射する電子線のシフトを繰り返し行い、電子線のシフトを繰り返すごとに、前記検出面と共役となる面の位置を変化させる、測定方法。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項において、
前記電子顕微鏡は、電子源から放出される電子線で前記試料上を走査する走査偏向器を含み、
前記走査偏向器によって、前記試料に入射する電子線をシフトさせる、測定方法。
【請求項5】
検出面が複数の検出領域に分割された分割型検出器を備えた電子顕微鏡において、走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を測定する測定方法であって、
試料に入射する電子線の入射角度を走査することで、前記検出面上における電子線をシ
フトさせて、前記検出面上における電子線のシフト方向を前記分割型検出器で測定する工程と、
前記シフト方向から、前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める工程と、
を含む、測定方法。
【請求項6】
請求項において、
前記電子顕微鏡は、電子源から放出される電子線で前記試料上を走査する走査偏向器を含み、
前記走査偏向器によって、前記試料に入射する電子線の入射角度を走査する、測定方法。
【請求項7】
試料を透過した電子を検出して走査透過電子顕微鏡像を得るための電子顕微鏡であって、
前記試料を透過した電子線を検出する検出面が複数の検出領域に分割された分割型検出器と、
前記試料を透過した電子線で前記検出面上に結像する結像レンズ系と、
前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める演算部と、
を含み、
前記演算部は、
デフォーカス量を変化させることなく、前記結像レンズ系で前記検出面を回折面からずれた面と共役にした状態で前記試料に入射する電子線をシフトさせることで、前記検出面上における電子線をシフトさせて、前記検出面上における電子線のシフト方向を前記分割型検出器で測定した結果を取得する処理と、
取得した前記シフト方向から、前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める処理と、を行う、電子顕微鏡。
【請求項8】
試料を透過した電子を検出して走査透過電子顕微鏡像を得るための電子顕微鏡であって、
前記試料を透過した電子線を検出する検出面が複数の検出領域に分割された分割型検出器と、
前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める演算部と、
を含み、
前記演算部は、
前記試料に入射する電子線の入射角度を走査することで、前記検出面上における電子線をシフトさせて、前記検出面上における電子線のシフト方向を前記分割型検出器で測定した結果を取得する処理と、
取得した前記シフト方向から、前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める処理と、を行う、電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定方法および電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
走査透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope、STEM)は、収束させた電子線を試料上で走査し、この走査と同期させながら試料からの透過電子あるいは散乱電子による検出信号の強度をマッピングすることで走査透過電子顕微鏡像(STEM像)を得る電子顕微鏡である。走査透過電子顕微鏡は、原子レベルの極めて高い空間分解能が得られる電子顕微鏡として、近年、注目を集めている。
【0003】
このような走査透過電子顕微鏡に搭載される電子検出器として、検出面が複数の検出領域に分割された分割型検出器が知られている。分割型検出器は、分割された複数の検出領域について独立した検出系を備え、各検出系は検出面上の特定の検出領域に入射した電子のみを検出する。走査透過電子顕微鏡では検出面と回折面を一致させる(共役な面とする)。すなわち、これは試料から特定の立体角領域に透過・散乱した電子を検出することに対応する。したがって、分割型検出器を用いることにより、試料による電子散乱の立体角依存性を同時に取得し、定量的に評価することができるという利点がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−243516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図14は、従来の分割型検出器を備えた走査透過電子顕微鏡101の動作を説明するための図である。なお、図14では、走査透過電子顕微鏡101の要部のみを図示している。
【0006】
走査透過電子顕微鏡101では、図14に示すように、電子線EBは、照射レンズ系102によって、試料Sの表面に収束される。そして、試料Sを透過した電子線EBは結像レンズ系104によりカメラ長が調整された後に分割型検出器106で検出される。分割型検出器106の後方にはCCD(Charge Coupled Device)カメラ108が配置されている。
【0007】
このような分割型検出器を備えた走査透過電子顕微鏡を用いて、試料の電磁場を可視化する手法として、微分位相コントラスト(Differential Phase Contrast、DPC)法が知られている。この手法は、電子線が試料を透過する際の偏向量を測定し、そこから電子線偏向の原因となる試料の電磁場を計算する手法である。
【0008】
DPC法により測定を行う場合、STEM像に対して分割型検出器の検出領域の方向をあわせる必要がある。STEM像における分割型検出器の検出領域の方向がわからなければ、試料を透過する電子線に対してどの方向の電磁場が働いて電子線が偏向されたのかを特定することができない。
【0009】
図15は、試料Sの結晶方位と、分割型検出器106の検出領域D1,D2,D3,D
4の相対的な方位と、の関係の一例を示す図である。図16は、検出領域D2で得られたSTEM像と検出領域D4で得られたSTEM像との差をとった画像I(D2−D4)を模式的に示す図、および検出領域D1で得られたSTEM像と検出領域D3で得られたSTEM像との差をとった画像I(D1−D3)を模式的に示す図である。
【0010】
例えば、図15に示すように検出領域D2,D4が[110]方向に並び、検出領域D1,D3が[−110]方向に並ぶように検出領域D1,D2,D3,D4を配置する。この状態で撮影を行い、各検出領域D1,D2,D3,D4ごとにSTEM像を取得する。そして、図16に示す画像I(D2−D4)および画像I(D1−D3)を生成する。なお、撮影されたSTEM像のX方向が試料Sの[110]方向であり、STEM像のY方向が試料Sの[−110]方向である。
【0011】
図16に示す画像I(D2−D4)から、電子線が試料を透過する際の[110]方向における偏向の情報を得ることができ、画像I(D1−D3)から[−110]方向における偏向の情報を得ることができる。この結晶方位と偏向の関係から、試料における電磁場の分布を知ることができる。
【0012】
ここで、STEM像における分割型検出器106の各検出領域D1,D2,D3,D4の方向を測定する方法の一例について説明する。図17図23は、測定方法の一例を説明するための図である。
【0013】
STEM像における分割型検出器106の各検出領域D1,D2,D3,D4の方向を知るためには、まず、結像レンズ系104を調整し、図17のように試料面と検出面105が共役になるように設定する。この状態でスキャンを行うと、図18に示すように、検出面105形状の像I1が取得できる。さらに分割型検出器106をリトラクトするなどして、CCDカメラ108によってスキャンしているプローブの像I2(図19参照)を取得すると、スキャン領域が確認できる。これらを合わせることにより、図20に示すように検出面105の各検出領域D1,D2,D3,D4とCCDカメラ108の方向の関係が分かる。
【0014】
次に、図14に示すSTEM像を取得する設定に戻す。この条件では、図21に示すように、照射系の絞り(図示せず)の影の像I4が観察される。デフォーカスを加えて、検出面105を回折面からずらすと、絞りの影がスキャンに伴って動く。例えば、X方向のみにスキャンして、長い露光時間で撮影すると、図22に示すような絞りの影の軌跡を示す像I5が得られる。この絞りの影の動きの方向Aと、図20に示す像I3の検出面105の各検出領域D1,D2,D3,D4の方向から、図23に示すように、STEM像における分割型検出器106の検出領域D1,D2,D3,D4の方向がわかる。図23に示す方向AがSTEM像のX方向である。
【0015】
このように、上述したSTEM像における検出領域の方向を測定する方法では、分割型検出器に対するCCDカメラの向き、スキャン方向とCCDカメラの向きの2段階で、STEM像(スキャン方向)に対する検出領域の方向を測定していた。そのため、このような測定方法では、測定に必要な画像I1〜I5を取得するだけでも時間がかかってしまう。STEM像における分割型検出器の検出領域の方向は、スキャン方向を変えることでも変わるため、スキャン方向を変えるたびに、上記の測定を行うことはユーザーにとって大きな負担となる。また、このような測定方法では、CCDカメラが必要であった。
【0016】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、容易に、走査透過電子顕微鏡像における分割型検出器の検出領域の方向を測定することができる測定方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの
態様に係る目的の1つは、容易に、走査透過電子顕微鏡像における分割型検出器の検出領域の方向を測定することができる電子顕微鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る測定方法は、
検出面が複数の検出領域に分割された分割型検出器を備えた電子顕微鏡において、走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を測定する測定方法であって、
デフォーカス量を変化させることなく、結像レンズ系で前記検出面を回折面からずれた面と共役にした状態で試料に入射する電子線をシフトさせることで、前記検出面上におけ
る電子線をシフトさせて、前記検出面上における電子線のシフト方向を前記分割型検出器で測定する工程と、
前記シフト方向から、前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める工程と、
を含む。
【0018】
このような測定方法では、容易に、走査透過電子顕微鏡像における検出領域の方向を測定することができる。また、このような測定方法では、CCDカメラなどの機材を用いることなく、走査透過電子顕微鏡像における検出領域の方向を測定することができる。
【0019】
本発明に係る測定方法は、
検出面が複数の検出領域に分割された分割型検出器を備えた電子顕微鏡において、走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を測定する測定方法であって、
前記試料に入射する電子線の入射角度を走査することで、前記検出面上における電子線をシフトさせて、前記検出面上における電子線のシフト方向を前記分割型検出器で測定する工程と、
前記シフト方向から、前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める工程と、
を含む。
【0020】
このような測定方法では、容易に、走査透過電子顕微鏡像における検出領域の方向を測定することができる。また、このような測定方法では、CCDカメラなどの機材を用いることなく、走査透過電子顕微鏡像における検出領域の方向を測定することができる。
【0021】
本発明に係る電子顕微鏡は、
試料を透過した電子を検出して走査透過電子顕微鏡像を得るための電子顕微鏡であって、
前記試料を透過した電子線を検出する検出面が複数の検出領域に分割された分割型検出器と、
前記試料を透過した電子線で前記検出面上に結像する結像レンズ系と、
前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める演算部と、
を含み、
前記演算部は、
デフォーカス量を変化させることなく、前記結像レンズ系で前記検出面を回折面からずれた面と共役にした状態で前記試料に入射する電子線をシフトさせることで、前記検出面上における電子線をシフトさせて、前記検出面上における電子線のシフト方向を前記分割型検出器で測定した結果を取得する処理と、
取得した前記シフト方向から、前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める処理と、を行う。
【0022】
このような電子顕微鏡では、容易に、走査透過電子顕微鏡像における検出領域の方向を測定することができる。また、このような電子顕微鏡では、CCDカメラなどの機材を用いることなく、走査透過電子顕微鏡像における検出領域の方向を測定することができる。
【0023】
本発明に係る電子顕微鏡は、
試料を透過した電子を検出して走査透過電子顕微鏡像を得るための電子顕微鏡であって、
前記試料を透過した電子線を検出する検出面が複数の検出領域に分割された分割型検出器と、
前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める演算部と、
を含み、
前記演算部は、
前記試料に入射する電子線の入射角度を走査することで、前記検出面上における電子線をシフトさせて、前記検出面上における電子線のシフト方向を前記分割型検出器で測定した結果を取得する処理と、
取得した前記シフト方向から、前記走査透過電子顕微鏡像における前記検出領域の方向を求める処理と、を行う。
【0024】
このような電子顕微鏡では、容易に、走査透過電子顕微鏡像における検出領域の方向を測定することができる。また、このような電子顕微鏡では、CCDカメラなどの機材を用いることなく、走査透過電子顕微鏡像における検出領域の方向を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。
図2】分割型検出器の構成を模式的に示す図。
図3】分割型検出器の検出面を模式的に示す図。
図4】本実施形態に係る測定方法の一例を示すフローチャート。
図5】通常のSTEM像を取得している様子を模式的に示す図。
図6】通常のSTEM像を取得している様子を模式的に示す図。
図7】結像レンズ系のフォーカスを回折面からずらした状態を模式的に示す図。
図8】結像レンズ系のフォーカスを回折面からずらした状態を模式的に示す図。
図9】試料の電磁場によって電子線が偏向している様子を模式的に示す図。
図10】検出面上での電子線のシフト方向の測定を、試料に入射する電子線のシフト方向を変えながら繰り返し行っている様子を模式的に示す図。
図11】結像レンズ系を強励磁にした場合と結像レンズ系を弱励磁にした場合の、検出面上におけるシフト方向を比較するための図。
図12】電子顕微鏡における処理部の処理の流れの一例を示すフローチャート。
図13】試料に入射する電子線の入射角度を走査している様子を模式的に示す図。
図14】従来の分割型検出器を備えた走査透過電子顕微鏡の動作を説明するための図。
図15】試料の結晶方位と分割型検出器の検出領域の相対的な方位との関係の一例を示す図。
図16】画像I(D2−D4)および画像I(D1−D3)を模式的に示す図。
図17】測定方法の一例を説明するための図。
図18】測定方法の一例を説明するための図。
図19】測定方法の一例を説明するための図。
図20】測定方法の一例を説明するための図。
図21】測定方法の一例を説明するための図。
図22】測定方法の一例を説明するための図。
図23】測定方法の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものでは
ない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0027】
1. 電子顕微鏡
まず、本実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を示す図である。
【0028】
電子顕微鏡100は、図1に示すように、電子源10と、照射レンズ系11と、走査偏向器12と、対物レンズ13と、試料ステージ14と、中間レンズ15と、投影レンズ16と、分割型検出器20と、制御装置30と、処理部40と、操作部50と、表示部52と、記憶部54と、を含む。
【0029】
電子源10は、電子線EBを発生させる。電子源10は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線EBを放出する電子銃である。
【0030】
照射レンズ系11は、電子源10で発生した電子線EBを収束させる。走査偏向器12は、電子源10から放出された電子線EBを偏向させる。制御装置30から供給される走査信号を走査偏向器12に供給することにより、収束した電子線EBで試料S上を走査することができる。これにより、電子顕微鏡100を、走査透過電子顕微鏡(STEM)として機能させることができる。
【0031】
対物レンズ13は、電子線EBを試料S上に収束させる。また、対物レンズ13は、試料Sを透過した電子を結像する。
【0032】
試料ステージ14は、試料Sを保持する。また、試料ステージ14は、試料Sを水平方向や鉛直方向に移動させたり試料Sを傾斜させたりすることができる。
【0033】
中間レンズ15および投影レンズ16は、対物レンズ13で形成された像を分割型検出器20の検出面23に投影(結像)する。
【0034】
分割型検出器20は、投影レンズ16の後方(電子線EBの下流側)に設けられている。分割型検出器20は、試料Sを透過した電子を検出する。図2は、分割型検出器20の構成を模式的に示す図である。図3は、分割型検出器20の検出面23を模式的に示す図である。
【0035】
分割型検出器20は、図2および図3に示すように、電子線を光に変換する電子−光変換素子22と、電子−光変換素子22を4つの検出領域D1,D2,D3,D4に分割するとともに各検出領域D1,D2,D3,D4からの光を伝送する光伝送路24と、光伝送路24から伝送された検出領域D1,D2,D3,D4ごとの光を電気信号に変換する4つの光検出器28と、を備えている。
【0036】
電子−光変換素子22は、例えば、シンチレーターや蛍光板であり、入射した電子を後段の光検出器28で検出可能な強度を持つ光に変換する。
【0037】
光伝送路24は、多数の光ファイバーが束ねられたバンドル光ファイバーであり、電子−光変換素子22側の端部は電子-光変換素子22全面からの光を受光するように一体に纏められ、その反対側の端部は受光した光をその受光位置に応じて各光検出器28に伝送するように分岐している。すなわち、光伝送路24は、電子−光変換素子22の発光面を検出面23とし、検出面23が4つの検出領域D1,D2,D3,D4に分割されるように構成されている。
【0038】
また、光伝送路24は、光の伝送経路を変更することで、電子−光変換素子22の電子線入射面内で4つの検出領域D1,D2,D3,D4を回転させる回転部26を有している。光伝送路24は、真空側に配置される光伝送路24aと、大気側に配置される光伝送路24bと、で構成され、光伝送路24aと光伝送路24bとは、回転部26によって相互に回転可能に接続されている。回転部26は、光伝送路24全体の中心軸を維持しつつ、当該中心軸周りで光伝送路24bを回転させることができる。この回転によって検出領域D1,D2,D3,D4を回転させることができる。
【0039】
駆動部27は、回転部26を動作させて、光伝送路24bを回転させることができる。
【0040】
光検出器28は、例えば光電子増倍管(photomultiplier tube、PMT)と前置増幅器の複合装置であり、分岐した光伝送路24から出射した光を電気信号に変換し、増幅する。この信号は、各検出領域D1,D2,D3,D4に入射した電子線の検出信号として、処理部40に入力される。
【0041】
なお、検出面23の分割数、すなわち検出領域の数は特に限定されない。分割型検出器20は、検出面23がその動径方向および偏角方向(円周方向)に区画されることにより、複数の検出領域を有していてもよい。例えば、分割型検出器20は、検出面23が動径方向に4つ、偏角方向に4つに分割されることにより、16個の検出領域を有してもよい。
【0042】
制御装置30は、図1に示すように、電子源10や、光学系11,12,13,15,16、分割型検出器20の駆動部27(図2参照)を動作させる。制御装置30は、制御部42からの制御信号に基づいて、電子源10や、光学系11,12,13,15,16、駆動部27を動作させる。
【0043】
操作部50は、ユーザーによる操作に応じた操作信号を取得し、処理部40に送る処理を行う。操作部50は、例えば、ボタン、キー、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどである。
【0044】
表示部52は、処理部40によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。
【0045】
記憶部54は、処理部40が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部54は、処理部40の作業領域として用いられ、処理部40が各種プログラムに従って実行した算出結果等を一時的に記憶するためにも使用される。記憶部54の機能は、ハードディスク、RAM(random access memory)などのメモリー(記憶装置)により実現できる。
【0046】
処理部40は、記憶部54に記憶されているプログラムに従って、各種の制御処理や計算処理を行う。処理部40は、記憶部54に記憶されているプログラムを実行することで、以下に説明する、制御部42、画像処理部44、演算部46として機能する。処理部40の機能は、各種プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)等)でプログラムを実行することにより実現することができる。なお、処理部40の機能の少なくとも一部を、ASIC(ゲートアレイ等)などの専用回路により実現してもよい。処理部40は、制御部42と、画像処理部44と、演算部46と、を含む。
【0047】
制御部42は、電子源10や、電子顕微鏡100を構成する光学系11,12,13,15,16、分割型検出器20の駆動部27の動作を制御するための制御信号を生成する処理を行う。制御部42は、例えば、操作部50を介したユーザーの指令に応じて制御信
号を生成し、制御装置30に送る処理を行う。
【0048】
画像処理部44は、分割型検出器20の出力信号を用いてSTEM像を生成する処理を行う。画像処理部44は、例えば、分割型検出器20の各検出領域D1,D2,D3,D4ごとに明視野STEM像を生成する処理や、検出領域D1,D2,D3,D4の検出信号を加減算等して画像(DPC像)を生成する処理を行うことができる。DPC像とは、DPC法により得られた試料Sの電磁場の分布を示す画像である。画像処理部44は、例えば、演算部46で求められた、STEM像における分割型検出器20の検出領域D1,D2,D3,D4の方向(後述する角度α)を用いて、DPC像を生成する。
【0049】
演算部46は、STEM像における分割型検出器20の検出領域D1,D2,D3,D4の方向を求める処理を行う。演算部46の処理の詳細については、後述する。
【0050】
2. 測定方法
次に、本実施形態に係る測定方法について説明する。以下では、本実施形態に係る測定方法として、電子顕微鏡100において、STEM像における分割型検出器20の検出領域D1,D2,D3,D4の方向を求める場合について説明する。
【0051】
ここで、分割型検出器20の検出領域D1,D2,D3,D4の方向は、例えば、図3に矢印で示すように、検出面23の中心Oからみた各検出領域D1,D2,D3,D4の方向である。STEM像における分割型検出器20の検出領域D1,D2,D3,D4の方向は、試料Sに入射する電子線EBのスキャン方向に対する分割型検出器20の検出領域D1,D2,D3,D4の方向と言い換えることもできる。
【0052】
本実施形態に係る測定方法によれば、分割型検出器20で検出された電子線EBのシフト方向(すなわち試料Sの電磁場による電子線EBの偏向方向)が、STEM像においてどの向きにあたるのかを知ることができる。
【0053】
図4は、本実施形態に係る測定方法の一例を示すフローチャートである。図4に示すように、本実施形態に係る測定方法は、結像レンズ系を用いて分割型検出器20の検出面23を回折面からずれた面と共役にした状態で試料Sに入射する電子線EBをシフトさせることで、検出面23上における電子線をシフトさせて、検出面23上における電子線EBのシフト方向を分割型検出器20で測定する工程(S10)と、測定された検出面23上における電子線EBのシフト方向から、STEM像における検出領域D1、D2,D3,D4の方向を求める工程(S12)と、を含む。
【0054】
以下、本実施形態に係る測定方法について詳細に説明する。
【0055】
分割型検出器20を用いることで、複数の検出領域D1,D2,D3,D4の各々からの信号を演算して、検出面23上における電子線EBのシフト量とシフト方向を測定することができる。
【0056】
図5および図6は、通常のSTEM像(明視野STEM像)を取得している様子を模式的に示す図である。図5では、結像レンズ2(対物レンズ13)、結像レンズ系6(中間レンズ15および投影レンズ16)以外の光学系については、図示を省略している。なお、回折面4は、対物レンズ13の後焦点面であり、電子回折図形が得られる面である。また、図6は、試料Sに入射する電子線EBのシフト方向(スキャン方向、S1方向)と、検出面23上における電子線EBのシフト方向(S2方向)と、を示す図である。
【0057】
通常のSTEM像を取得する場合の光学系の条件では、図5に示すように、回折面4と
検出面23とが共役である。そのため、試料Sに入射する電子線EBをシフトさせても(すなわち電子線EBを走査しても)、検出面23上でのビームの位置は変化しない。図示の例では、試料Sに入射する電子線EBをS1方向にシフトさせているが、検出面23上での電子線EBは検出面23の中心Oから移動しない。
【0058】
図7および図8は、結像レンズ系6のフォーカスを回折面4からずらした状態を模式的に示す図である。図9は、試料Sの電磁場によって電子線EBが偏向している様子を模式的に示す図である。
【0059】
図7および図8に示すように、結像レンズ系6を弱励磁にすると、検出面23は、回折面4よりも上側(試料S側)にずれた面8と共役になる。この状態で試料Sに照射される電子線EBをシフトさせると、検出面23上でも電子線EBがシフトする。図示の例では、試料Sに入射する電子線EBをS1方向にシフトさせると、検出面23上において電子線EBはS2方向にシフトしている。
【0060】
ここで、図9に示すように、試料Sの電磁場によって電子線EBがS1方向と同じ方向であるS1s方向にシフトした場合の、検出面23上での電子線EBのシフトの方向をS2s方向とすると、S2s方向とS2方向とは同じ方向となる。
【0061】
そのため、試料Sに入射する電子線EBをS1方向にシフトさせたときの、検出面23上での電子線EBのシフトの方向(S2方向)は、試料Sの電磁場を測定する場合と同様に、各検出領域D1,D2,D3,D4の信号から算出することができる。このようにして算出されたS2方向と、シフト方向S1と、からS1方向とS2方向とがなす角度α(=S2−S1)を求めることができる。この角度αから、STEM像における分割型検出器20の検出領域D1,D2,D3,D4の方向を求めることができる。
【0062】
例えば、分割型検出器20を用いて測定された試料Sの電磁場による電子線EBの偏向方向を角度αだけ回転させれば、図16に示す画像I(D2−D4)から得られる試料Sによる電子線EBの偏向の情報を、STEM像のX方向と一致させることができ、図16に示す画像I(D1−D3)から得られる試料Sによる電子線EBの偏向の情報を、STEM像のY方向と一致させることができる。
【0063】
また、例えば、4つの検出領域D1,D2,D3,D4を回転させる回転部26によって、検出領域D1,D2,D3,D4を角度αだけ回転させることで、得られるSTEM像における方向と、分割型検出器20を用いて測定された試料Sによる電子線EBの偏向の方向と、を一致させることができる。
【0064】
なお、試料Sに入射する電子線EBをシフトさせたときの、検出面23上での電子線EBのシフト方向の測定を、試料Sに入射する電子線EBのシフト方向を変えながら繰り返し行ってもよい。
【0065】
図10は、検出面23上での電子線EBのシフト方向の測定を、試料Sに入射する電子線EBのシフト方向を変えながら繰り返し行っている様子を模式的に示す図である。
【0066】
図10に示すように、試料Sに入射する電子線EBをS1−1方向にシフトさせて、検出面23上における電子線EBのシフト方向(S2−1方向)を測定した後に、試料Sに入射する電子線EBをS1−1方向とは異なるS1−2方向にシフトさせて、検出面23上における電子線EBのシフト方向(S2−2方向)を測定する。次に、試料Sに入射する電子線EBをS1−2方向とは異なるS1−3方向にシフトさせて、検出面23上における電子線EBのシフト方向(S2−3方向)を測定する。これをN回繰り返すことで、
S1−1方向とS2−1方向とがなす角度、S1−2方向とS2−2方向とがなす角度、S1−3方向とS2−3方向とがなす角度、・・・、S1−N方向とS2−N方向とがなす角度を求めることができる。得られたこれらの角度に対して所定の演算(例えば平均)を行うことで、角度αを求めることができる。
【0067】
このようして、試料Sに入射する電子線EBをシフトさせたときの、検出面23上での電子線EBのシフト方向の測定を、試料Sに入射する電子線EBのシフト方向を変えながら繰り返し行うことで、試料Sに入射する電子線EBをシフトさせたときの、検出面23上での電子線EBのシフト方向の測定を一方向のみ行う場合と比べて、より正確にSTEM像における分割型検出器20の検出領域D1,D2,D3,D4の方向を求めることができる。なお、本測定は、試料Sがない真空領域で行うことが望ましいが、試料Sがある領域で測定を行う場合でも、上記のように、試料Sに入射する電子線EBのシフト方向を変えながら繰り返し測定を行うことで、試料Sの影響を低減できる。
【0068】
また、上記では、結像レンズ系6を弱励磁にした場合について説明したが、結像レンズ系6を強励磁にした場合には、図示はしないが、検出面23は、回折面4よりも下側(検出面23側)にずれた面と共役になる。そのため、図11に示すように、結像レンズ系6を強励磁にした場合の検出面23上におけるシフト方向(S3方向)と、結像レンズ系6を弱励磁にした場合の検出面23上におけるシフト方向(S2方向)とは、互いに反対方向(180度回転した方向)となる。この点を考慮すれば、結像レンズ系6を強励磁にした場合にも、結像レンズ系6を弱励磁にした場合と同様に、STEM像における分割型検出器20の検出領域D1,D2,D3,D4の方向を求めることができる。このように、本実施形態では、結像レンズ系6のフォーカスを回折面4からずらした状態で試料Sに入射する電子線EBをシフト(走査)することで、角度αを求めることができる。
【0069】
ここで、結像レンズ系6の励磁を変化させると、像が回転し、検出面23上におけるシフトの方向がずれる場合がある。このような場合には、例えば、結像レンズ系6を弱励磁にした場合と、結像レンズ系6を強励磁にした場合と、についてそれぞれ検出面23上における電子線EBのシフトの方向(S2方向とS3方向)を求める。このとき、回折面4と検出面23とが共役の場合の結像レンズ系6の励磁量(基準励磁量)と結像レンズ系6を弱励磁にした場合の励磁量との差と、基準励磁量と結像レンズ系6を強励磁にした場合の励磁量との差とが等しくなるようにする。このようにして得られた、S2方向とS3方向とから、互いの方向が反対方向であることを考慮した上で(例えば一方のシフトの方向を−180度した上で)、これらの値の平均を計算し(例えば、(S2−180+S3)/2)、この平均値を検出面23におけるシフト方向として、角度αを求める。これにより、結像レンズ系6の励磁の変化による検出面23上におけるシフトの方向のずれの影響を低減(好ましくはキャンセル)することができる。
【0070】
なお、結像レンズ系6の励磁の変化による検出面23上における電子線EBのシフト方向のずれの影響を低減する方法はこれに限定されない。例えば、結像レンズ系6の励磁を変えながら、検出面23上における電子線EBのシフト方向の測定を繰り返し行ってもよい。すなわち、結像レンズ系6の励磁を変化させること(フォーカスを変化させること)によって検出面23と共役となる面8の位置を変化させながら、検出面23上における電子線EBのシフト方向の測定を繰り返し行ってもよい。このようにして測定された複数のシフト方向から線形近似等を用いて、検出面23上におけるシフト方向を求めてもよい。これにより、結像レンズ系6の励磁の変化による検出面23上における電子線EBのシフト方向のずれの影響を低減することができる。
【0071】
試料Sに入射する電子線EBをシフトさせたときの、検出面23上での電子線EBのシフト方向の測定では、試料Sに入射する電子線EBをシフトさせる前の、検出面23上に
おける電子線EBの位置が、検出面23の中心Oからずれていると、角度αに誤差が含まれてしまう。そのため、試料Sに入射する電子線EBのシフトを零とした場合の検出面23上での電子線EBの位置(ベクトル)を基準として、当該位置(ベクトル)と測定された試料Sに入射する電子線EBの所定量だけ偏向したときの検出面23上における電子線EBの位置(ベクトル)との差を計算することで、角度αをより正確に求めることができる。
【0072】
本実施形態に係る測定方法は、例えば、以下の特徴を有する。
【0073】
本実施形態に係る測定方法は、分割型検出器20の検出面23を回折面4からずれた面8と共役にした状態で試料Sに入射する電子線EBをシフトさせることで、検出面23上における電子線EBをシフトさせて、検出面23上における電子線EBのシフト方向を分割型検出器20で測定する工程と、検出面23上における電子線EBのシフト方向から、STEM像における検出領域D1,D2,D3,D4の方向を求める工程と、を含む。そのため、本実施形態に係る測定方法によれば、容易に、STEM像における検出領域D1,D2,D3,D4の方向を測定することができる。また、本実施形態に係る測定方法では、CCDカメラなどの機材を用いることなく、STEM像における検出領域D1,D2,D3,D4の方向を測定することができる。
【0074】
本実施形態に係る測定方法では、試料Sに入射する電子線EBのシフトを繰り返し行い、電子線EBのシフトを繰り返すごとに、電子線EBをシフトさせる方向を変える。そのため、STEM像における検出領域D1,D2,D3,D4の方向をより正確に測定することができる。
【0075】
本実施形態に係る測定方法では、試料Sに入射する電子線EBのシフトを繰り返し行い、電子線EBのシフトを繰り返すごとに、結像レンズ系6によって検出面23と共役となる面8の位置を変化させる。これにより、結像レンズ系6の励磁の変化による検出面23上における電子線EBのシフト方向のずれの影響を低減することができる。
【0076】
3. 電子顕微鏡の動作
次に、電子顕微鏡100の動作について説明する。電子顕微鏡100では、上述した測定方法による測定を自動で行うことができる。図12は、電子顕微鏡100における処理部40(演算部46)の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0077】
まず、演算部46は、ユーザーが測定を開始する指示(開始指示)を行ったか否かを判断し(S100)、開始指示が行われるまで待機する(S100のNo)。演算部46は、例えば、操作部50を介して開始指示が入力された場合に、ユーザーが開始指示を行ったと判断する。
【0078】
演算部46は、開始指示が行われたと判断した場合(S100のYes)、結像レンズ系6によって検出面23を回折面4からずれた面8と共役にした状態で試料Sに入射する電子線EBをシフトさせることで、検出面23上における電子線EBをシフトさせて、検出面23上における電子線EBのシフト方向を分割型検出器20で測定した結果を取得する(S102)。
【0079】
具体的には、演算部46は、制御部42を介して、中間レンズ15および投影レンズ16(結像レンズ系6)を、検出面23を回折面4からずれた面8と共役にする。そして、演算部46は、制御部42を介して、走査偏向器12を動作させて、試料Sに入射する電子線EBを所定方向(例えばS1方向)にシフト(走査)させる。これにより、検出面23上において電子線EBがシフトする。演算部46は、このときの分割型検出器20の検
出領域D1,D2,D3,D4の信号から検出面23上における電子線EBのシフト方向を求める。
【0080】
次に、演算部46は、求めた、検出面23上における電子線EBのシフト方向から、角度αを求め、STEM像における検出領域D1,D2,D3,D4の方向を求める(S104)。
【0081】
演算部46は、例えば、STEM像における検出領域D1,D2,D3,D4(角度α)に基づいて、分割型検出器20の回転部26を回転させてもよい。これにより、例えば、検出領域D2と検出領域D4とを結ぶ方向と、STEM像のX方向と、を一致させ、検出領域D1と検出領域D3とを結ぶ方向と、STEM像のY方向と、を一致させることができる。
【0082】
また、画像処理部44は、例えば、演算部46で求められたSTEM像における検出領域D1,D2,D3,D4(角度α)に基づいて、DPC法により得られた試料Sの電磁場の分布を示す像(DPC像)を生成してもよい。これにより、DPC像と、STEM像と、を容易に対応させることができる。
【0083】
なお、演算部46は、試料Sに入射する電子線EBのシフトを繰り返し行い、電子線EBのシフトを繰り返すごとに、電子線EBをシフトさせる方向を変えてもよい。
【0084】
また、演算部46は、試料Sに入射する電子線EBのシフトを繰り返し行い、電子線EBのシフトを繰り返すごとに、検出面23と共役となる面8の位置を変化させてもよい。
【0085】
電子顕微鏡100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0086】
電子顕微鏡100では、演算部46が、結像レンズ系6によって検出面23を回折面4からずれた面8と共役にした状態で試料Sに入射する電子線EBをシフトさせることで、検出面23上における電子線EBをシフトさせて、検出面23上における電子線EBのシフト方向を分割型検出器20で測定した結果を取得する処理と、取得した検出面23上における電子線EBのシフト方向から、STEM像における検出領域D1,D2,D3,D4の方向を求める処理と、を行う。そのため、電子顕微鏡100では、容易に、STEM像における検出領域D1,D2,D3,D4の方向を測定することができる。また、電子顕微鏡100では、CCDカメラなどの機材を用いることなく、STEM像における検出領域D1,D2,D3,D4の方向を測定することができる。
【0087】
4. 変形例
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0088】
上述した実施形態では、結像レンズ系6によって検出面23を回折面4からずれた面8と共役にした状態で試料Sに入射する電子線EBをシフトさせることで、検出面23上における電子線EBをシフトさせて、検出面23上における電子線EBのシフト方向を分割型検出器20で測定した。
【0089】
これに対して、本変形例では、試料Sに入射する電子線の入射角度を走査することで、検出面23上における電子線EBをシフトさせて、検出面23上における電子線EBのシフト方向を分割型検出器20で測定する。
【0090】
図13は、試料Sに入射する電子線EBの入射角度を走査している様子を模式的に示す
図である。なお、本変形例では、結像レンズ系6は、回折面4と検出面23とを共役な面とする。また、図13では、互いに異なる入射角度を持つ電子線EB0,EB1,EB2を図示している。
【0091】
試料Sに入射し、試料Sを透過した電子線EB0,EB1,EB2は、入射角度に応じて、回折面4の異なる位置に入射する。試料Sに入射する電子線EBの入射角度の走査は、走査偏向器12で行う。ここでは、試料Sに入射する電子線EBの位置は変えずに、電子線EBの位置を一点に止めたまま、入射角度を変える。
【0092】
結像レンズ系6は、回折面4と検出面23とを共役な面とするため、検出面23には電子線EB0,EB1,EB2は、入射角度に応じて、検出面23上の異なる位置に入射する。図13に示す例では、入射角度が大きい電子線ほど、検出面23の中心Oから遠い位置に入射する。
【0093】
このように走査偏向器12で試料Sに入射する電子線EBの入射角度を走査することで、検出面23を回折面4からずれた面8と共役にした状態で試料Sに入射する電子線EBをシフトさせた場合と同様に、検出面23上において電子線EBのシフト方向を分割型検出器20で測定することができる。そのため、本変形例においても、上述した実施形態と同様に、角度αを求めることができ、STEM像における検出領域D1,D2,D3,D4の方向を測定することができる。
【0094】
試料Sに入射する電子線EBの試料Sに対する入射角度に加えて、方位角度も走査してもよい。
【0095】
なお、試料Sに入射する電子線EBの入射角度の走査を、走査偏向器12とは別の偏向器で行ってもよい。この場合、当該別の偏向器を用いて測定された結果を、走査偏向器12に適用すればよい。
【0096】
本変形例によれば、上述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0097】
また、電子顕微鏡100において、本変形例に係る測定方法を、自動で行うことが可能である。具体的には、上述した実施形態では、演算部46が、検出面23を回折面4からずれた面8と共役にした状態で試料Sに入射する電子線EBをシフトさせることで、検出面23上における電子線EBをシフトさせて、検出面23上における電子線EBのシフト方向を分割型検出器20で測定した結果を取得する処理(図12のステップS102の処理)を行った。これに対して、本変形例では、ステップS102の処理に変えて、演算部46が、試料Sに入射する電子線EBの入射角度を走査することで、検出面23上における電子線EBをシフトさせて、検出面23上における電子線EBのシフト方向を分割型検出器20で測定した結果を取得する処理を行う。これにより、上述した実施形態と同様に、容易に、STEM像における検出領域D1,D2,D3,D4の方向を測定することができる。
【0098】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0099】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した
構成を含む。
【符号の説明】
【0100】
2…結像レンズ、4…回折面、6…結像レンズ系、8…面、10…電子源、11…照射レンズ系、12…走査偏向器、13…対物レンズ、14…試料ステージ、15…中間レンズ、16…投影レンズ、20…分割型検出器、22…光変換素子、23…検出面、24…光伝送路、24a…光伝送路、24b…光伝送路、26…回転部、27…駆動部、28…光検出器、30…制御装置、40…処理部、42…制御部、44…画像処理部、46…演算部、50…操作部、52…表示部、54…記憶部、100…電子顕微鏡、101…走査透過電子顕微鏡、102…照射レンズ系、104…結像レンズ系、105…検出面、106…分割型検出器、108…CCDカメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23