(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検眼の情報を取得するための測定光学系が内蔵された測定ヘッドハウジングの外部であって前記被検眼の視線上に設けられたディスプレイと、前記ディスプレイの表示内容を制御する表示コントローラと、を備え、
前記表示コントローラは、前記ディスプレイに前記被検眼の乱視軸の角度を取得させる第1視標と、前記第1視標を用いて取得した角度値を基準として生成された前記被検眼の乱視度数を取得させる第2視標と、を切り替えて表示させ、
前記第2視標は、前記第1視標及び前記第2視標を表示する視標表示領域内に配置され、前記第1視標を用いて取得した乱視軸の角度を示す放物線チャートを所定角度回転させた第2放物線チャートとする
ことを特徴とする眼科装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の眼科装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
まず、
図1〜
図5に基づき、実施例1の眼科装置10の構成を、「全体構成」、「制御系の詳細構成」、「乱視軸テストチャートの詳細構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体構成]
図1に示す眼科装置10は、被検者が左右の両眼を開放した状態で、被検眼の特性測定を両眼同時に実行する両眼開放タイプの眼科装置である。
【0012】
実施例1の眼科装置10は、
図1及び
図2に示すように、床面に設置された基台11と、検眼用テーブル12と、支柱13と、アーム14と、測定ヘッド20と、ディスプレイD(
図2参照)と、を備えている。また、この眼科装置10は、
図1及び
図2に示さないが、タブレット端末等の検者用コントローラ19aと、コントロールレバーユニット等の被検者用コントローラ19bと、液晶ディスプレイ等の表示装置19cと、を有している。
なお、この眼科装置10では、検眼用テーブル12と正対した被検者が、測定ヘッド20が有する額当部15に額を接触させた状態で被検眼の特性測定を行う。以下では、被検者から見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向(測定ヘッド20の前後方向)をZ方向とする。
【0013】
検眼用テーブル12は、基台11に支持され、高さ位置が調節可能になっている。支柱13は、検眼用テーブル12の後端部からY方向に起立しており、上部にアーム14が設けられている。アーム14は、検眼用テーブル12の上方で測定ヘッド20を吊り下げ支持するものであり、支柱13からZ方向に延在されている。このアーム14は、支柱13に対して上下動可能に取り付けられている。
【0014】
そして、検眼用テーブル12の下方には、眼科装置10の各部を統括的に制御するメインコントローラ16(表示コントローラ)が収納された制御ボックス17が設けられている。なお、このメインコントローラ16には、電源ケーブル17aを介して図示しない商用電源から電力供給がなされる。
【0015】
測定ヘッド20は、任意の自覚検査及び任意の他覚測定を行う測定ユニットである。なお、自覚検査では、被検者に視標を表示し、この視標に対する被検者の応答に基づいて検査結果を取得する。この自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査、乱視軸検査、乱視度数検査等がある。また、他覚測定では、被検眼に光を照射し、その戻り光の検出結果に基づいて被検眼に関する情報を測定する。この他覚測定には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。さらに、他覚測定には、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、「OCT」という)を用いた断層像撮影(OCT撮影)、OCTを用いた計測等がある。
この測定ヘッド20は、制御/電源ケーブル(不図示)を介してメインコントローラ16に接続されており、このメインコントローラ16を経由して電力供給がなされる。また、測定ヘッド20とメインコントローラ16との間の情報の送受信も、この制御/電源ケーブルを介して行われる。
【0016】
そして、測定ヘッド20は、被検者の左眼ELの眼情報を取得する左眼用測定ヘッド20Lと、被検者の右眼ERの眼情報を取得する右眼用測定ヘッド20Rと、を有している。ここで、左眼用測定ヘッド20Lと右眼用測定ヘッド20Rとは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面を対称面とする面対称な構成とされている。
【0017】
また、左眼用測定ヘッド20L及び右眼用測定ヘッド20Rは、それぞれアーム14に測定ヘッド駆動機構20bを介して吊り下げ支持された測定ヘッドハウジング20aを有している。ここで、測定ヘッド駆動機構20bは、メインコントローラ16からの制御指令に基づいて、測定ヘッドハウジング20aのX方向、Y方向、Z方向の位置、及び被検眼の眼球回旋軸を中心にした向きを変更する。
【0018】
また、測定ヘッドハウジング20aの内部には、
図3に示すように、左眼EL,右眼ERの情報を取得するための左眼用測定光学系21L,右眼用測定光学系21Rがそれぞれ内蔵されている。
なお、左眼用測定光学系21L及び右眼用測定光学系21Rは、被検眼(左眼EL,右眼ER)の前眼部を観察する観察系、眼屈折力の測定を行う眼屈折力測定系、自覚検査時に用いる各種レンズの集合からなる自覚検査系(クロスシリンダ光学系)、アライメント系、ケラト系等を有している。
【0019】
さらに、左眼用測定ヘッド20L及び右眼用測定ヘッド20Rでは、いずれも測定ヘッドハウジング20aの外側面に偏向部材20cが設けられている。この偏向部材20cは、左眼用測定光学系21L,右眼用測定光学系21Rから照射された光軸を反射して被検眼に向けるものであり、ここではハーフミラーによって構成されている。また、この偏向部材20cの背面側には、シャッター機構22が設けられている。このシャッター機構22は、メインコントローラ16からの制御指令に基づいて開閉し、開放したときに偏向部材20cを透過状態にし、閉鎖した時に偏向部材20cを遮光状態にする。
【0020】
ディスプレイDは、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)、有機EL等のエレクトロルミネセンス(Electroluminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイ等で構成され、メインコントローラ16からの制御指令に基づいて、任意の画像を表示する。このディスプレイDは、
図2に示すように、支柱13の側面13aであって、偏向部材20cを透過した被検眼(左眼EL,右眼ER)の視線e上に配置されている。つまり、ディスプレイDは、偏向部材20cを通して被検者から視認可能な位置に設けられている(
図3参照)。
【0021】
なお、ディスプレイDに表示される任意の画像とは、例えば被検眼(左眼EL,右眼ER)の視線eを固定するための固視標や点状視標、左眼ELの眼特性(視力値、矯正度数(遠用度数、近用度数)、乱視軸角度、乱視度数等)を自覚的に検査するための自覚検査視標や、被検眼の眼特性を他覚的に測定するための他覚測定視標等である。
【0022】
[制御系の詳細構成]
メインコントローラ16は、
図4に示すように、記憶部や内部メモリ等の周辺機器16aを有し、この周辺機器16aに記憶したプログラムに基づいて、眼科装置10の動作を統括的に制御する。
【0023】
このメインコントローラ16には、左眼用測定ヘッド20Lの測定ヘッドハウジング20aに内蔵された左眼用測定光学系21Lと、右眼用測定ヘッド20Rの測定ヘッドハウジング20aに内蔵された右眼用測定光学系21Rと、が接続され、これらが有する各種の光源やレンズ等を適宜駆動や移動させる。
【0024】
また、このメインコントローラ16には、ディスプレイD、測定ヘッド駆動機構20b、検眼用テーブル12の移動機構、アーム14の移動機構、検者用コントローラ19a、被検者用コントローラ19b、表示装置19c、シャッター機構22が接続されている。
【0025】
そして、このメインコントローラ16は、検者用コントローラ19aや被検者用コントローラ19bの操作に従って、ディスプレイDに視標を表示させると共に、シャッター機構22を適宜開閉制御する。さらに、メインコントローラ16は、左眼用測定光学系21Lや右眼用測定光学系21Rによって取得した画像を表示装置19cに適宜表示させ、上記した動作機構等を適宜制御する。
【0026】
[乱視軸テストチャートの詳細構成]
図5は、実施例1の眼科装置において、乱視軸テストチャートの第1視標を示す説明図であり、
図6は乱視軸テストチャートの第2視標を示す説明図である。以下、
図5及び
図6に基づき、実施例1の乱視軸テストチャートの詳細構成を説明する。
【0027】
図5及び
図6に示す乱視軸テストチャートは、角膜や水晶体の歪みによって生じる乱視軸の傾斜角度(以下、「乱視軸角度」という)を自覚検査により検査する際に使用する自覚検査視標の一種である。この乱視軸テストチャートは、被検眼の乱視軸を自覚検査によって取得する際にディスプレイDに表示される。また、実施例1では、乱視軸テストチャートとして、乱視軸角度の大まかな値を取得させる第1視標S1(
図5参照)と、この第1視標S1を用いて取得した角度値を基準として生成され、乱視軸角度の精密な値を取得させる第2視標S2(
図6参照)と、を有している。
【0028】
第1視標S1は、
図5に示すように、視標が表示される視標表示領域Aの中心位置Oから、放射方向の全方位(360°)を所定角度(15°)ごとに複数(24)分割する方向に延びる複数(24本)の放射状線31からなる第1放射状チャート30とする。この第1視標S1では、放射状線31と同時に目盛り32を示す。なお、目盛り32は、放射状線31の一つおきに付された1〜12の数字であり、放射状線31の放射方向外側の端部近傍位置に表示される。
【0029】
第2視標S2は、
図5に示すように、基準となる乱視軸の角度(例えば30°)を中心とした所定角度範囲(30°±10°:20°〜40°)内を、1°ごとに20分割する方向に延びる複数(ここでは42本)の放射状線41からなる第2放射状チャート40とする。ここで、「基準となる乱視軸の角度」とは、第1視標S1である第1放射状チャート30を用いて行った自覚検査で取得した乱視軸の角度である。つまり、この第2視標S2は、第1視標S1を用いて取得した角度値を基準として生成されるものであり、この第1視標S1を用いた検査の結果に応じて変形する。
【0030】
また、第2視標S2は、所定角度範囲内に示された複数の放射状線41のうち、放射中心位置から離れた部分を拡大して示している。なお、この実施例1では、第2視標S2は、視標が表示される視標表示領域Aの中心位置Oを中心とした所定半径の円形領域B内に表示される。さらに、円形領域Bの外周位置には、目盛り42が示されている。この目盛り42は、基準となる乱視軸の角度(ここでは30°)を示す数字と、所定角度範囲の最大値(40°)及び最小値(20°)を示す数字を有している。
【0031】
次に、実施例1の眼科装置10の作用効果を、「自覚検査モード時の動作」、「乱視軸角度の高精度検出作用」、「検査の進展に対応した表示作用」、「ディスプレイ外部配置作用」に分けて説明する。
【0032】
[自覚検査モード時の動作]
実施例1の眼科装置10において自覚検査を行うには、まず、メインコントローラ16は、ディスプレイDを点灯させ、このディスプレイDに測定内容に応じた視標を表示させる。なお、自覚検査用の視標としては、乱視軸検査用の乱視軸テストチャートの他に、例えばランドルト環や数字等の視力表、レッドグリーンテスト用のレッドグリーンチャート、立体視テスト用の立体視テストチャート、斜位検査用の斜位テストチャート、不等像視テスト用のチャート等がある。
【0033】
次に、メインコントローラ16は、偏向部材20cの背面側に設けられたシャッター機構22を開放させ、偏向部材20cを透過状態にする。これにより、被検者は、偏向部材20cを介してディスプレイDに表示された視標を適正に視認することができる。
【0034】
そして、被検者がディスプレイDに表示された視標を視認したら、検者又はメインコントローラ16は、表示した視標の見え方を被検者に質問し、その応答に応じた視標の選択と質問を繰り返すことで自覚検査の測定値を決定する。
【0035】
「乱視軸角度の高精度検出作用」
実施例1の眼科装置10では上述のように自覚検査を実施するが、乱視軸角度を自覚検査によって取得する場合には、ディスプレイDに乱視軸検査用の乱視軸テストチャートを表示させる。
【0036】
このとき、メインコントローラ16は、ディスプレイDに、まず
図5に示す第1視標S1を表示させる。この第1視標S1は、視軸角度の大まかな値を取得させるものであり、視標表示領域Aの中心位置Oから、放射方向の全方位(360°)を15°ごとに24分割する方向に延びる24本の放射状線31からなる第1放射状チャート30である。
【0037】
そして、ディスプレイDに第1視標S1を表示させ、この第1視標S1が被検者の左眼ELの眼底Efに投影されて、被検者が第1視標S1を視認したら、メインコントローラ16又は検者は、被検者に第1視標S1の見え方を質問し、その応答に応じて被検者の乱視軸角度を取得する。このとき使用する視標は、第1視標S1であり、視標表示領域Aの中心位置Oから放射方向の全方位(360°)を複数に分割した放射状線31からなる第1放射状チャート30である。そのため、取得できる乱視軸角度は、複数の放射状線31の間隔(15°)ごとになり、第1視標S1を用いて行った自覚検査で取得できる乱視軸角度は、15°ごとの大まかな値になる。
【0038】
次に、メインコントローラ16は、第1視標S1を用いて行った自覚検査で取得した大まかな乱視軸の角度値を基準にして第2視標S2(
図6参照)を生成する。すなわち、第1視標S1を用いて行った自覚検査で取得した乱視軸の角度(例えば30°)を中心とした所定角度範囲(±10°)内を、1°ごとに20分割する42本の放射状線41からなる第2放射状チャート40を生成する。
【0039】
このメインコントローラ16は、第2視標S2を生成したら、この第2視標S2をディスプレイDに表示させる。そして、偏向部材20cの背面側に設けられたシャッター機構22を開放させて偏向部材20cを透過状態にする。これにより、被検者が第2視標S2を視認したら、メインコントローラ16又は検者は、被検者に第2視標S2の見え方を質問し、その応答に応じて被検者の視軸角度の詳細な値を取得する。このとき使用する視標は第2視標S2であり、基準となる乱視軸の角度を中心とした所定角度範囲内を1°ごとに分割した放射状線41からなる第2放射状チャート40である。そのため、取得できる乱視軸角度は、複数の放射状線41の間隔(1°)ごとになり、第1視標S1を用いて行った自覚検査で取得できる乱視軸角度よりも詳細な値になる。
【0040】
しかも、この第2視標S2では、第1視標S1を用いて行った自覚検査で取得した乱視軸の角度を中心とした所定範囲角度のみを表示する。そのため、この所定角度範囲を拡大して示すことができ、詳細な乱視軸角度を適切に視認させることができる。この結果、被検眼の乱視軸の状態を精度よく把握することができる。
【0041】
そして、この実施例1では、第1視標S1が、視標の表示領域(視標表示領域A)の中心位置Oから放射方向に延びる複数の放射状線31からなる第1放射状チャート30とし、第2視標S2が、この第1放射状チャート30を用いて取得した基準となる乱視軸の角度を中心とした放射方向の所定角度範囲を1°ごとに分割した複数の放射状線41からなる第2放射状チャート40としている。
【0042】
そのため、乱視軸角度の詳細な値を精度よく取得することが可能となり、精度の高い乱視軸角度を把握することができる。また、第1視標S1が全方位(360°)を複数に分割した放射状線41を有していることから、乱視軸テストチャートの形状を回転させることなく、静止させた状態での自覚検査を行うことができる。つまり、視標の表示状態を一定に維持した検査が可能になり、時間をかけて視標を適切に視認させることができる。
【0043】
[検査の進展に対応した表示作用]
メインコントローラ16では、乱視軸角度を検査する自覚検査の初期段階で第1視標S1を表示させる。そして、この第1視標S1を用いた自覚検査によって乱視軸角度の大まかな角度値を取得した後、ディスプレイDに表示された視標を第1視標S1から第2視標S2に切り替え、自覚検査の第2段階で第2視標S2を表示させる。
つまり、このメインコントローラ16では、自覚検査の進展に伴って、ディスプレイDに表示される視標を切り替える。しかも、第1視標S1及び第2視標S2は、任意の画像を表示可能なディスプレイDによって表示されるので、容易に切り替えることができる。
【0044】
これにより、乱視状態(乱視軸角度)を取得する自覚検査において、取得したい乱視状態の精度に応じた視標を表示させることができ、円滑な自覚検査を実施することができる。
【0045】
[ディスプレイ外部配置作用]
実施例1の眼科装置10では、乱視軸検査用の乱視軸テストチャートを表示させるディスプレイDを測定ヘッド20の測定ヘッドハウジング20aの外部に配置している。そのため、ディスプレイDの位置や向きの修正や、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0046】
さらに、ディスプレイDを測定ヘッドハウジング20aの外部に配置したことで、ディスプレイサイズの制約が緩くなり、画面サイズが大きいディスプレイであっても適用することができる。そのため、細かな表示を大きく拡大して表示させることができ、より鮮明な視標を示すことが可能となる。
【0047】
また、この実施例1では、左眼用測定ヘッド20Lや右眼用測定ヘッド20Rの測定ヘッドハウジング20aが、左眼用測定光学系21Lや右眼用測定光学系21Rから照射された光軸を被検眼に向ける偏向部材20cを外側面に有している。一方、ディスプレイDは、この偏向部材20cを通して視認可能な位置に設けられている。
そのため、実施例1の眼科装置10において自覚検査を行う際、測定ヘッド20の位置や被検者の姿勢を変更することなく実施できる。これにより、他覚測定と自覚検査を速やかに切り替えて実施することができると共に、測定ヘッド20の位置を変える(ずらす)ためのスペースが不要になり、狭いスペースであっても眼科装置10を設定することが可能になる。
【0048】
(実施例2)
実施例2は、乱視テストチャートである第1視標を、視標表示領域内に線対称に配置された一対の放物線からなる第1放物線チャートとし、第2視標を、第1視標を用いて生成した乱視度数を取得させる視標である第2放物線チャートとする例である。以下、
図6及び
図7に基づいて、実施例2の乱視テストチャートの詳細構成を説明する。
【0049】
実施例2の第1視標S1Aは、乱視軸の傾斜角度(以下、「乱視軸角度」という)を自覚検査により検査する際に使用する自覚検査視標の一種であり、
図7に示すように、視標が表示される視標表示領域Aの中心位置Oを中心とした所定半径の円形領域B内に表示される。そして、この第1視標S1Aは、円形領域B内に表示される水平直線L1と、一対の放物線50a,50bと、からなる第1放物線チャート50とする。
ここで、水平直線L1は、視標表示領域Aの中心位置Oを通り、視標表示領域A内で水平方向に延びる直線である。また、一対の放物線50a,50bは、視標表示領域Aの中心位置Oを通り水平直線Lに直交する直交直線L2を対称線とする線対称の一対の放物線である。
【0050】
なお、一方の放物線50aは、水平直線L1の一端と円形領域Bの区画線との交点K1と、直交直線L2と円形領域Bの区画線との交点K2とを結ぶ曲線である。また、他方の放物線50bは、水平直線L1の他端と円形領域Bの区画線との交点K3と、直交直線L2と円形領域Bの区画線との交点K2とを結ぶ曲線である。この一対の放物線50a,50bは線対称であればよいので、曲率は任意に設定される。
【0051】
そして、この第1視標S1Aは、乱視状態を検査する自覚検査時において、初期段階(乱視軸角度を取得させる際)に表示される。また、この第1視標S1Aは、乱視軸角度の検査中、視標表示領域Aの中心位置Oを中心として、一定の方向に回転しながら表示される。ここで、乱視眼でこの第1視標S1Aを見たとき、一対の放物線50a,50b上のどこかに「濃く感じる部分」が現れ、他はぼやけて見える。そして、この第1視標S1Aを用いて取得できる乱視軸角度は、この第1視標S1Aを回転させていくことで、一対の放物線50a,50b上に視認した「濃く感じる部分」が交点K2を中心にバランスよく振り分けられるときの水平直線L1によって示される。
【0052】
すなわち、第1視標S1AをディスプレイDに表示させると共にシャッター機構22を開放し、この第1視標S1Aを被検者に視認させる。そして、ディスプレイDに表示された第1視標S1Aを右方向(時計の針の動きと同じ方向)に回転させていき、例えば最初に左側の放物線50aの交点K1付近に「濃く感じる部分」を認めたら、そのまま第1視標S1Aを回転させ続ける。これにより、「濃く感じる部分」は、次第に交点K2に向かい、さらに右側の放物線50bの交点K2付近にも「濃く感じる部分」が現れる。そして、両放物線50a,50b上の「濃く感じる部分」が交点K2付近で同じ長さになったときの水平直線L1で示される方向が乱視軸の方向である。
【0053】
一方、実施例2の第2視標S2Aは、乱視の強さ(以下、「乱視度数」という)を自覚検査により検査する際に使用する自覚検査視標の一種であり、
図8に示すように、視標が表示される視標表示領域Aの中心位置Oを中心とした所定半径の円形領域B内に表示される。そして、この第2視標S2Aは、円形領域B内に表示される第1の放物線チャート50αと、第2の放物線チャート50βと、を有する第2放物線チャート51とする。
【0054】
ここで、第1の放物線チャート50αは、第1視標S1Aを用いて行った自覚検査で取得した基準となる乱視軸の角度を示す放物線チャートを、所定角度(例えば時計回りに20°)回転させた放物線チャートである。また、第2の放物線チャート50βは、第1視標S1Aを用いて行った自覚検査で取得した基準となる乱視軸の角度を示す放物線チャートを、所定角度(例えば反時計回りに35°)回転させた放物線チャートである。なお、基準となる乱視軸の方向は、一点鎖線の軸Jで示す。
つまり、この第2視標S2Aを構成する第2放物線チャート51は、第1視標S1Aを用いて取得した角度値を基準として生成されるものであり、この第1視標S1Aを用いた検査の結果に応じて変形する。
【0055】
そして、この第2視標S2Aは、乱視状態を検査する自覚検査時において、第2段階(乱視度数を取得させる際)に表示される。また、この第2視標S2Aは、回転させることなく基準となる乱視軸の角度に直交する方向を挟み込む形で、第1の放物線チャート50αと第2の放物線チャート50βが同時に表示される。
【0056】
この第2視標S2Aを用いて被検眼の乱視度数を取得するには、予め第1視標S1Aを用いて被検眼の乱視軸角度を取得する。次に、矯正凹円柱レンズの軸をこの取得した乱視軸角度に合わせて、被検眼の眼前に装着する。メインコントローラ16では、その状態でディスプレイDに第2視標S2Aを表示させる。そして、被検者に第2視標S2Aを視認させたら、第1,第2の放物線チャート50α,50β上に「濃く感じる部分」が視認できるか否かを尋ねる。
【0057】
このとき、第1,第2の放物線チャート50α,50βがいずれも濃さが全体に均等であり、濃淡を認めなければ、矯正に用いた凹円柱レンズの度は正しいとする。一方、第1,第2の放物線チャート50α,50βのいずれかに「濃く感じる部分」を認めたときには、左右どちらの放物線上に「濃く感じる部分」が生じているかを尋ねる。基準となる乱視軸の方向を示す軸Jに近い放物線上に「濃く感じる部分」を認める場合には、矯正凹円柱レンズの度を強める。また、基準となる乱視軸の方向を示す軸Jから遠い放物線上に「濃く感じる部分」を認める場合には、矯正凹円柱レンズの度を弱める。
そして、矯正凹円柱レンズの「軸」を固定すると共に「度」を変更した上で、再度同じ操作を繰り返して矯正凹円柱レンズの度を決定する。
【0058】
このように、第2視標S2Aは、第1視標S1Aを用いて取得した乱視軸の角度値を基準として生成され、ディスプレイ22aの表示をこのような第2視標S2Aに切り替えて乱視の状態(乱視度数)を検査する。
そのため、検査の進展に応じてディスプレイ22aの表示を切り替え、被検眼の乱視状態を精度よく把握することができる。特に、この実施例2では、第2視標S2Aが乱視度数を取得させる視標であることから、被検眼の乱視軸角度を精度よく取得することができる。
【0059】
しかも、このとき、第2視標S2Aである第2放物線チャート51は、回転角度が異なる複数(二つ)の放物線チャート(第1の放物線チャート50α、第2の放物線チャート50β)を有しており、この二つの放物線チャート50α,50bを同時に表示することができる。そのため、二つの放物線チャート50α,50bの見比べを容易に行うことができ、例えば二つの放物線チャート50α,50bを交互に表示する場合と比べて、被検者は見え方をより正確に回答することができる。この結果、より精度のよい乱視度数を取得することができる。
【0060】
以上、本発明の眼科装置を実施例1及び実施例2に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0061】
例えば、実施例1では、第1視標S1を、複数の放射状線31からなる第1放射状チャート30とし、第2視標S2を、この第1放射状チャート30を用いて取得した乱視軸の角度を中心とした放射方向の所定角度範囲を詳細に分割した複数の放射状線41からなる第2放射状チャート40とする例を示した。また、実施例2では、第1視標S1Aを、一対の放物線50a,50bからなる第1放物線チャート50とし、第2視標S2Aを、この第1放物線チャート50を用いて取得した乱視軸の角度を示す放物線チャートを回転させた複数の放物線チャート50α,50βを有する第2放物線チャート51とする例を示した。
しかしながら、これに限定されず、第1視標が被検眼の乱視軸の角度を取得する視標であり、第2視標が、この第1視標を用いて取得した乱視軸の角度値を基準として生成された視標であればよい。また、第2視標によって取得する被検眼の特性は、乱視軸角度であってもよいし、乱視度数であってもよいし、それ以外の眼特性であってもよい。
【0062】
すなわち、第1視標S1Aを、実施例2に示すような一対の放物線50a,50bからなる第1放物線チャート50とし、第2視標S2Bを、
図9に示すような、第1放物線チャート50上の「濃く感じる部分K」を含む所定範囲を拡大表示した拡大チャート52にしてもよい。この場合には、拡大チャート52を表示した後、所定の方向に回転させながら被検者に視認させることで、乱視軸角度を詳細に観察することができる。
【0063】
また、実施例2では、第2視標S2Bを、複数(二つ)の放物線チャート50α,50βを有する第2放物線チャート51によって構成する例を示した。しかしながら、この第2放物線チャート51は、第1視標S1Aを用いて行った自覚検査で取得した基準となる乱視軸の角度を示す放物線チャートを所定角度回転させた放物線チャートであればよいので、例えば、基準となる乱視軸を示す放物線チャートを時計回りに20°回転させた第1の放物線チャート50αだけであってもよい。
【0064】
さらに、第1視標を、複数の放射状線からなる第1放射状チャートとし、第2視標を、第1放射状チャートを用いて取得した乱視軸の角度を示す放物線チャートを所定角度回転させた放物線チャートとしてもよい。つまり、第1視標を放射状チャートとし、第2視標を放物線チャートにしてもよい。
【0065】
また、実施例1に示す第1視標S1として、複数の放射状線の少なくとも一つをはっきりとした黒色で示し、残りの放射状線を薄い灰色で表示した放射状チャートであってもよい。この場合、第1視標S1を回転表示させることで乱視軸の角度を観察する。そして、その結果得られた乱視軸の角度値を基準して第2視標S2を生成するようにしてもよい。
【0066】
また、実施例1では、第2視標S2を生成する際、第1視標S1を用いた自覚検査にて取得した基準となる乱視軸の角度値に対して±10°の範囲を「所定角度範囲」に指定した。しかしながら、これに限定されず、この「所定角度範囲」は、第1視標を用いて取得した乱視軸の角度値を基準とした所定の範囲であれば、任意に設定することができる。
【0067】
さらに、被検眼の状態や見え方等に応じて、第1視標S1,S1Aや第2視標S2,S2Aでは、放射状線や放物線の形状、太さ、線種、表示数等の表示状態を調整してもよい。これにより、被検眼に応じて各視標を適切に表示することができ、より正確な観察結果を得ることができる。また、いずれにしても、第1視標S1,S1Aを用いて取得した乱視軸の角度値を基準とした第2視標S2,S2Aとすることで、被検眼の乱視状態を詳細に観察することができる。
【0068】
また、実施例1では、眼科装置10として、測定ヘッドハウジング20aに内蔵された左眼用測定光学系21L及び右眼用測定光学系21Rが、被検眼の眼屈折力の測定を行う眼屈折力測定系を有する、いわゆるレフラクトメータである例を示したが、これに限らない。眼科装置10としては、例えば、
図10に示すように、測定ヘッドハウジング20aの内部に自覚検査系のみを有する測定光学系を内蔵した、いわゆるフォロプター(自覚式検眼装置)であってもよい。
【0069】
そして、実施例1では、ディスプレイDを検眼用テーブル12から起立した支柱13の側面に設置した例を示したが、これに限らない。例えば、
図11に示すように、ディスプレイDを検眼用テーブル12に支持台D1を介して取り付けてもよいし、検眼用テーブル12上にディスプレイDを直接載置してもよい。さらに、
図10に示すように、検眼用テーブル12や支柱13、測定ヘッド20から離れた場所にディスプレイDを設置してもよい。