特許第6962772号(P6962772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6962772-ステータコアの冷却構造および回転電機 図000002
  • 特許6962772-ステータコアの冷却構造および回転電機 図000003
  • 特許6962772-ステータコアの冷却構造および回転電機 図000004
  • 特許6962772-ステータコアの冷却構造および回転電機 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962772
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ステータコアの冷却構造および回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/32 20060101AFI20211025BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H02K1/32 A
   H02K9/19 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-195360(P2017-195360)
(22)【出願日】2017年10月5日
(65)【公開番号】特開2019-68705(P2019-68705A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 誠
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 実公平07−047973(JP,Y2)
【文献】 特開2013−126328(JP,A)
【文献】 特許第5723443(JP,B2)
【文献】 特開2011−036024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/32
H02K 9/19
H02K 9/00
H02K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のステータコアと、
前記ステータコアを囲繞する筒状の保持体と、を有するステータコアの冷却構造であって、
前記ステータコアの外周面と前記保持体の内周面との間に設けられ、冷媒が流通可能な冷媒通路と、
前記ステータコアおよび前記保持体の少なくとも一方に設けられ、前記冷媒通路に連通する冷媒供給口と、
前記ステータコアおよび前記保持体の少なくとも一方に設けられ、前記冷媒通路に連通する冷媒排出口と、
を備え、
前記冷媒供給口は、前記保持体の軸方向の一方の端面側に開口して設けられ、
前記冷媒排出口は、前記保持体の軸方向の他方の端面側に開口して設けられ
前記ステータコアの外周面に形成され、前記ステータコアの外周面上を第一方向に延びるステータ凹部と、
前記保持体の内周面に形成され、前記保持体の内周面上を前記第一方向に交差する第二方向に延びる保持体凹部と、を有し、
前記冷媒通路は、前記ステータ凹部および前記保持体凹部の間に設けられていることを特徴とするステータコアの冷却構造。
【請求項2】
前記保持体凹部は、前記保持体の周方向に延びるに従い前記保持体の軸方向に延びる螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項に記載のステータコアの冷却構造。
【請求項3】
前記冷媒通路は、前記冷媒供給口と前記冷媒排出口との間で、
前記保持体凹部によって螺旋状に形成される第1通路と、
前記ステータコアの軸方向の一端から他端にわたって直線状に延びる前記ステータ凹部によって形成される第2通路と、
が合わさって形成されていることを特徴とする請求項に記載のステータコアの冷却構造。
【請求項4】
前記ステータコアは、前記保持体に圧入されていることを特徴とする請求項から請求項3のいずれか1項に記載のステータコアの冷却構造。
【請求項5】
前記保持体は、前記ステータコアを保持した状態で、回転電機のケースに固定されるホルダであることを特徴とする請求項に記載のステータコアの冷却構造。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のステータコアの冷却構造を備えていることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコアの冷却構造および回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車の動力源として回転電機が使用されている。回転電機としては、例えば特許文献1に開示されている回転電機がある。特許文献1の回転電機は、ステータコアと、保持体とを有する。保持体は、断面が環状に形成されている。保持体の内周面は、ステータコアの外周面に嵌合している。これにより保持体は、ステータコアを保持している。
【0003】
ところで、回転電機の回転数が増加すると、鉄損が増加してステータコアの温度が上昇することが知られている(例えば、下記特許文献2参照)。そこで、下記特許文献2には、ステータコアに冷却油を供給するパイプを備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5723443号公報
【特許文献2】特開2008−263753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献2の構成にあっては、冷却油を供給するために、別途パイプを設ける必要がある。そのため、部品点数の増加に繋がる可能性がある。
また、上述した特許文献1のようにステータコアがホルダに圧入されている構成では、ステータコアとホルダとの間にパイプを通じて冷却油を供給することが困難になる可能性もある。
したがって、従来の構成では、部品点数の削減を図った上でステータコアを冷却するという点で改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みたものであって、従来技術と比較して部品点数の削減を図った上で、ステータコアを冷却できるステータコアの冷却構造および回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係るステータコア(後述の実施形態のステータコア15)の冷却構造(後述の実施形態の冷却構造51)は、筒状のステータコアと、前記ステータコアを囲繞する筒状の保持体(後述の実施形態の保持体11)と、を有するステータコアの冷却構造であって、前記ステータコアの外周面(後述の実施形態の外周面23)と前記保持体の内周面(後述の実施形態の内周面21)との間に設けられ、冷媒が流通可能な冷媒通路(後述の実施形態の冷媒通路53)と、前記ステータコアおよび前記保持体の少なくとも一方に設けられ、前記冷媒通路に連通する冷媒供給口(後述の実施形態の冷媒供給口55)と、前記ステータコアおよび前記保持体の少なくとも一方に設けられ、前記冷媒通路に連通する冷媒排出口(後述の実施形態の冷媒排出口57)と、を備え、前記冷媒供給口は、前記保持体の軸方向の一方の端面(後述の実施形態の端面39a)側に開口して設けられ、前記冷媒排出口は、前記保持体の軸方向の他方の端面(後述の実施形態の端面39b)側に開口して設けられ、前記ステータコアの外周面に形成され、前記ステータコアの外周面上を第一方向に延びるステータ凹部(後述の実施形態のステータ凹部33)と、前記保持体の内周面に形成され、前記保持体の内周面上を前記第一方向に交差する第二方向に延びる保持体凹部(後述の実施形態の保持体凹部35)と、を有し、前記冷媒通路は、前記ステータ凹部および前記保持体凹部の間に設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項に記載の発明に係るステータコアの冷却構造は、前記保持体凹部は、前記保持体の周方向に延びるに従い前記保持体の軸方向に延びる螺旋状に形成されていることを特徴としている。
また、請求項に記載の発明に係るステータコアの冷却構造は、前記冷媒通路は、前記冷媒供給口と前記冷媒排出口との間で、前記保持体凹部によって螺旋状に形成される第1通路と、前記ステータコアの軸方向の一端から他端にわたって直線状に延びる前記ステータ凹部によって形成される第2通路と、が合わさって形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、請求項に記載の発明に係るステータコアの冷却構造は、前記ステータコアは、前記保持体に圧入されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項に記載の発明に係るステータコアの冷却構造は、前記保持体は、前記ステータコアを保持した状態で、回転電機(後述の実施形態の回転電機1)のケース(後述の実施形態のケース3)に固定されるホルダ(後述の実施形態のホルダ19)であることを特徴としている。
【0012】
また、請求項に記載の発明に係る回転電機は、上述のステータコアの冷却構造を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載のステータコアの冷却構造では、ステータコアの外周面と保持体の内周面との間に設けられた冷媒通路と、冷媒供給口と、冷媒排出口とを備えた。これにより、冷媒は、冷媒通路を流通することによりステータコアの外周面と保持体の内周面との間を流通するため、ステータコアにおいて高温となっているステータコアの軸方向の中央部分を冷却することが可能になる。よって、請求項1に記載のステータコアの冷却構造は、従来技術と比較して部品点数の削減を図った上でステータコアを冷却できる。
【0014】
また、ステータコアの冷却構造では、ステータコアの外周面上を第一方向に延びるステータ凹部と、保持体の内周面上を第一方向に交差する第二方向に延びる保持体凹部と、を有し、冷媒通路は、ステータ凹部および保持体凹部の間に設けられている。これにより、冷媒は、ステータ凹部および保持体凹部の間の冷媒通路を流通することで、ステータコアの外周面と保持体の内周面との間を第一方向および第二方向に沿って流通することができるので、ステータコアの軸方向の中央部分を効率よく冷却することが可能になる。よって、請求項2に記載のステータコアの冷却構造は、従来技術と比較して部品点数の削減を図った上でステータコアを効率よく冷却できる。
【0015】
本発明の請求項に記載のステータコアの冷却構造では、保持体凹部は、保持体の周方向に延びるに従い保持体の軸方向に延びる螺旋状に形成されているので、冷媒は、ステータコアの外周面と保持体の内周面との間を螺旋状に流通することができる。よって、請求項3に記載のステータコアの冷却構造は、従来技術と比較して部品点数の削減を図った上でステータコアを効率よく冷却できる。
【0016】
本発明の請求項に記載のステータコアの冷却構造では、ステータコアは、保持体に圧入されているので、冷媒通路を設けていない場合と比較して、ステータコアの外周面と保持体の内周面との接触面積が小さくなり、嵌合部の先端が局所変形するため、圧入後にステータコアに残存する圧縮応力が低減する。よって、請求項4に記載のステータコアの冷却構造は、圧縮応力に起因する磁気特性の低下を抑制することができる。
【0017】
本発明の請求項に記載のステータコアの冷却構造では、保持体は、ステータコアを保持した状態で、回転電機のケースに固定されるホルダであるので、ケースに冷媒通路、冷媒供給口および冷媒排出口を設けなくても、ステータコアの軸方向の中央部分を冷却することが可能になる。よって、請求項5に記載のステータコアの冷却構造は、保持体がケースを備えていても、ケースの強度を低下させずに冷媒を利用してステータコアを効率良く冷却することができる。
【0018】
また、本発明の請求項に記載の回転電機は、上述のステータコアの冷却構造を備えているので、部品点数の削減を図った上でステータコアを冷却できる低コストかつ高性能な回転電機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態のステータコアの冷却構造を備える回転電機の全体構成を示す断面図である。
図2】実施形態のステータコアの冷却構造を軸方向から見た図である。
図3図2のIII−III断面図である。
図4図2のIV−IV断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
(実施形態)
実施形態のステータ5について説明する。
図1は、実施形態のステータコアの冷却構造を備える回転電機の全体構成を示す断面図である。
本実施形態の回転電機1は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車のような車両に搭載される走行用モータである。ただし、本実施形態の構成は、上記例に限られず、車両に搭載される発電用モータ等のその他の用途のモータにも適用可能である。また、本実施形態の構成は、車両に搭載される以外の回転電機であって、発電機を含むいわゆる回転電機全般に適用可能である。
【0022】
図1に示すように、実施形態に係る回転電機1は、ケース3と、ステータ5と、ロータ7と、出力シャフト9とを備える。
出力シャフト9は、ケース3に回転可能に支持されている。
ロータ7は、ロータコア27と、ロータコア27に取り付けられた不図示の磁石と、を有している。ロータコア27は、出力シャフト9に外嵌された筒状に形成されている。なお、以下の説明では、出力シャフト9の軸線Cに沿う方向を単に軸方向といい、軸線Cに直交する方向を径方向といい、軸線C周りの方向を周方向という場合がある。
【0023】
ケース3は、筒状に形成されている。ケース3は、ステータ5およびロータ7を収容している。ステータ5は、ケース3と同軸に配置された筒状に形成されている。ステータ5は、ケース3の内周面13に取り付けられている。ステータ5は、ロータ7に対して回転磁界を作用させる。
【0024】
ステータ5は、ステータコア15と、コイル17と、ホルダ19とを備える。
ステータコア15は、軸線Cと同軸に配置され、ロータ7を径方向の外側から取り囲む筒状に形成されている。ステータコア15は、電磁鋼板に対して打ち抜き加工等を施して形成された環状のプレート43が軸方向に積層されて構成されている。なお、ステータコア15は、いわゆる圧粉コアであってもよい。
コイル17は、ステータコア15に装着されている。
【0025】
ホルダ19は、環状に形成されている。ホルダ19は、ステータコア15を保持している。ホルダ19には、ステータコア15が圧入されており、ホルダ19の内周面21には、ステータコア15の外周面23が嵌合している。これにより、ホルダ19は、ステータコア15を保持している。ホルダ19は、ケース3の内周面13に例えば不図示のボルトにより固定されている。これによりステータ5は、ケース3の内周面13に取り付けられている。
本実施形態の保持体11は、上記のケース3と、上記のホルダ19とを備える。保持体11は、全体として軸線Cを中心とする筒状に構成されており、ステータコア15を囲繞して保持している。
【0026】
図2は、実施形態のステータコアの冷却構造を軸方向から見た図である。
図2に示すように、ステータコア15の端面29には、複数のスロット31が形成されている。複数のスロット31は、端面29の周方向に間隔を置いて配置されている。スロット31は、ステータコア15を軸方向に貫通している。
【0027】
複数のスロット31内には、コイル17が収容されている。コイル17は、複数のスロット31内に一部が収容された状態で、ステータコア15に装着されている。コイル17は、U相、V相およびW相からなる三相コイルである。各相のコイル17は、絶縁紙を介して互いに絶縁される。また、各相のコイル17は、絶縁紙を介してステータコア15と絶縁されている。
【0028】
ステータコア15の外周面23には、複数のステータ凹部33が設けられている。
複数のステータ凹部33は、径方向の内側に凹む凹状に形成されており、外周面23の周方向全体に並んで配置されている。ステータ凹部33は、外周面23の軸方向(請求項の「第一方向」に相当。)に沿って直線状に延びて設けられている。ステータ凹部33は、軸方向から見た断面が、例えばV字状に形成されている。隣接するステータ凹部33,33の間には、第一凸部41が形成されている。第一凸部41は、軸方向から視た断面が例えば三角形状に形成されている。
【0029】
ステータコア15の外周面23には、ホルダ19の内周面21が嵌合している。ホルダ19の内周面21には、保持体凹部35が設けられている。
保持体凹部35は、径方向の外側に凹む凹状に形成されており、ステータ凹部33に交差する方向(請求項の「第二方向」に相当。)に延びている。より具体的に保持体凹部35は、ホルダ19の内周面21において、保持体11の周方向に延びるに従い保持体11の軸方向に延びる螺旋状に形成されている。保持体凹部35は、ホルダ19の内周面21の全体にわたって設けられている。保持体凹部35は、例えばホルダ19の内周面を旋盤等により切削加工して形成されている。保持体凹部35は、周方向から見た断面が、例えばU字状に形成されている。
【0030】
ホルダ19の外周部25には、複数の取付片37が形成されている。複数の取付片37は、外周部25の周方向に間隔を置いて配置されている。取付片37は、ホルダ19の外周部25から径方向の外側に突出して形成されている。ホルダ19は、複数の取付片37が例えば不図示のボルトによりケース3に固定されることで、ケース3に取り付けられている。取付片37の径方向の内側には、冷媒排出口57が設けられている。冷媒排出口57については後述する。
【0031】
図3は、図2のIII−III断面図である。
図4は、図2のIV−IV断面図である。
図3および図4に示すように、複数の保持体凹部35の間には、第二凸部45が形成されている。第二凸部45は、周方向から見た断面が三角形状に形成されている。第二凸部45の先端と第一凸部41の先端とは、ホルダ19にステータコア15が圧入されることで、互いに当接している。
【0032】
続いて、図3図4を用いて、本実施の形態のステータコア15の冷却構造51を説明する。本実施の形態のステータコア15の冷却構造51は、冷媒通路53と、冷媒供給口55と、冷媒排出口57とを備える。
【0033】
冷媒通路53は、ステータコア15を冷却する冷媒が流通する通路である。冷媒通路53は、ステータコア15の外周面23とホルダ19の内周面21との間であって、ステータ凹部33と、保持体凹部35との間に設けられている。また、冷媒通路53は、ステータコア15およびホルダ19の軸方向の一端から他端にわたって設けられている。
なお、図3および図4において、冷媒をドットで図示している。冷媒としては、例えばモータ内外を循環するオイル等が採用される。
【0034】
冷媒供給口55は、ホルダ19の一方の端面39a側に開口して設けられており、冷媒通路53に連通している。冷媒供給口55は、冷媒通路53の保持体凹部35よりも径方向の外側に配置されている。冷媒供給口55は、ステータコア15の外部から保持体凹部35に冷媒を供給する。冷媒供給口55の開口には、不図示の供給管が接続されている。
冷媒排出口57は、ホルダ19の他方の端面39b側に開口して設けられており、冷媒通路53に連通している。冷媒排出口57は、冷媒通路53の保持体凹部35よりも径方向の外側に配置されている。冷媒排出口57は、保持体凹部35を流通する冷媒をステータコア15の外部に排出する。冷媒排出口57の開口には、不図示の排出管が接続されている。なお、排出管が接続されず、排出口から冷媒を飛沫排出することで、他部品の冷却に活用することもある。
【0035】
供給管、冷媒供給口55、冷媒通路53(ステータ凹部33および保持体凹部35)、冷媒排出口57および排出管は、冷媒回路を構成している。冷媒回路には、例えば不図示のポンプが設けられている。ポンプは、駆動することにより、冷媒回路内の冷媒を流通させている。なお、ポンプの形態は特に限定されることはなく、電動ポンプであってもよいし、メカポンプであってもよい。
【0036】
続いて、ステータコア15の冷却方法を説明する。
ポンプが駆動すると、ケース3内の底部に貯留されている冷媒は、冷媒回路内を循環する。具体的には、ポンプが駆動すると、ケース3内の底部に貯留されている冷媒は、供給管、冷媒供給口55、冷媒通路53、冷媒排出口57、排出管の順に流れていき、ケース3内の底部に戻る。
【0037】
上記の冷媒の循環において、ステータコア15の冷却構造51を構成する、冷媒供給口55、冷媒通路53および冷媒排出口57での冷媒の流れを説明する。
ケース3内の底部に貯留された冷媒は、ポンプにより供給管に供給される。供給管を流通する冷媒は、冷媒供給口55を流通し、一部が保持体凹部35に流入する。保持体凹部35に流入した冷媒は、保持体凹部35を冷媒排出口57に向かって流通する。これにより、冷媒は、ステータコア15の外周面23とホルダ19の内周面21との間を螺旋状に流通し、ステータコア15を冷却する。保持体凹部35を流通した冷媒は、冷媒排出口57から排出管に排出される。
【0038】
また、供給管を流通する冷媒は、冷媒供給口55を流通し、一部がステータ凹部33に流入する。ステータ凹部33に流入した冷媒は、ステータ凹部33を他端側に向かって流通する。これにより、冷媒は、ステータコア15の外周面23とホルダ19の内周面21との間を軸方向に沿って流通し、ステータコア15を冷却する。ステータ凹部33を流通した冷媒は、冷媒排出口57から排出管に排出される。
冷媒排出口57から排出管に排出された冷媒は、ケース3内の底部に貯留される。ケース3内の底部に貯留された冷媒は、ポンプにより供給管に供給されて冷媒回路内を循環する。
【0039】
本実施形態のステータコア15の冷却構造51では、ステータコア15の外周面23と保持体11の内周面21との間に設けられた冷媒通路53と、冷媒供給口55と、冷媒排出口57とを備えた。これにより、冷媒は、冷媒通路53を流通することによりステータコア15の外周面23と保持体11の内周面21との間を流通するため、ステータコア15において高温となっているステータコア15の軸方向の中央部分を冷却することが可能になる。よって、本実施形態のステータコア15の冷却構造51は、従来技術と比較して部品点数の削減を図った上でステータコア15を冷却できる。
【0040】
本実施形態のステータコア15の冷却構造51では、ステータコア15の外周面23上を軸方向に延びるステータ凹部33と、保持体11の内周面21上を軸方向に交差する方向に延びる保持体凹部35と、を有し、冷媒通路53は、ステータ凹部33および保持体凹部35の間に設けられている。これにより、冷媒は、ステータ凹部33および保持体凹部35の間の冷媒通路53を流通することで、ステータコア15の外周面23と保持体11の内周面21との間を軸方向および軸方向と交差する方向に沿って流通することができるので、ステータコア15の軸方向の中央部分を効率よく冷却することが可能になる。よって、本実施形態のステータコア15の冷却構造51は、従来技術と比較して部品点数の削減を図った上でステータコア15を効率よく冷却できる。
【0041】
本実施形態のステータコア15の冷却構造51では、保持体凹部35は、保持体11の周方向に延びるに従い保持体11の軸方向に延びる螺旋状に形成されているので、冷媒は、ステータコア15の外周面23と保持体11の内周面21との間を螺旋状に流通することができる。よって、本実施形態のステータコア15の冷却構造51は、従来技術と比較して部品点数の削減を図った上でステータコア15を効率よく冷却できる。
【0042】
本実施形態のステータコア15の冷却構造51では、ステータコア15は、保持体11に圧入されているので、冷媒通路53を設けていない場合と比較して、ステータコア15の外周面23と保持体11の内周面21との接触面積が小さくなり、嵌合部の先端が局所変形するため、圧入後にステータコア15に残存する圧縮応力が低減する。よって、本実施形態のステータコア15の冷却構造51は、圧縮応力に起因する磁気特性の低下を抑制することができる。
【0043】
本実施形態のステータコア15の冷却構造51では、保持体11は、ステータコア15を保持した状態で、回転電機1のケース3に固定されるホルダ19であるので、ケース3に冷媒通路53、冷媒供給口55および冷媒排出口57を設けなくても、ステータコア15の軸方向の中央部分を冷却することが可能になる。よって、本実施形態のステータコア15の冷却構造51は、保持体11がケース3を備えていても、ケース3の強度を低下させずに冷媒を利用してステータコア15を効率良く冷却することができる。
【0044】
また、本実施形態の回転電機1は、上述のステータコア15の冷却構造51を備えているので、部品点数の削減を図った上でステータコア15を冷却できる低コストかつ高性能な回転電機1とすることができる。
【0045】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0046】
例えば、上述した実施形態では、保持体11にステータコア15を圧入したが、保持体11にステータコア15を焼嵌めしてもよい。この場合には、冷媒通路53が設けられていない場合と比較して、ステータコア15の外周面23と保持体11の内周面21との接触面積が小さくなり、嵌合部の先端が局所変形するため、焼嵌め後にステータコア15に残存する圧縮応力が低減する。よって、ステータコア15の冷却構造51は、保持体11にステータコア15が焼嵌めされている場合であっても、ステータコア15の圧縮応力に起因する磁気特性の低下を抑制することができ、回転電機1の性能の低下を抑制することができる。その他の作用効果は、保持体11にステータコア15を圧入した上述の実施形態の作用効果と同様のため、説明を省略する。
【0047】
上述した実施形態では、ステータコア15の外周面23に軸方向に沿って延びるステータ凹部33を設け、ホルダ19の内周面21に軸方向と交差する方向に沿って延びる保持体凹部35を設けた。これに対して、ステータコア15の外周面23に軸方向と交差する方向に沿って延びるステータ凹部を設け、ホルダ19の内周面21に軸方向に沿って延びる保持体凹部を設けてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、ホルダ19の軸方向の両端面39a,39bにそれぞれ冷媒供給口55と冷媒排出口57とを設けたが、一方の同一の端面39a(39b)に冷媒供給口55と冷媒排出口57とを設けてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、冷媒通路53がステータ凹部33と保持体凹部35とを備えたが、ステータ凹部33と保持体凹部35の両方を必ずしも備える必要はなく、ステータ凹部33または保持体凹部35のいずれか一方を備えるようにしてもよい。また、上述の実施形態では、保持体凹部35を螺旋状にしたが、その他に例えば、軸方向または周方向に沿う直線状にしてもよい。
【0050】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 回転電機
3 ケース
11 保持体
15 ステータコア
19 ホルダ
21 (保持体の)内周面
23 (ステータコアの)外周面
33 ステータ凹部
35 保持体凹部
51 冷却構造
53 冷媒通路
55 冷媒供給口
57 冷媒排出口
図1
図2
図3
図4