特許第6962786号(P6962786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962786
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20211025BHJP
   F16F 13/14 20060101ALI20211025BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   F16F13/10 E
   F16F13/14 A
   B60K5/12 J
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-215407(P2017-215407)
(22)【出願日】2017年11月8日
(65)【公開番号】特開2019-86099(P2019-86099A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】古郡 猛
【審査官】 児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−277845(JP,A)
【文献】 特開2016−075323(JP,A)
【文献】 特開2000−320602(JP,A)
【文献】 特開2016−044780(JP,A)
【文献】 特開2002−286081(JP,A)
【文献】 実開平04−106541(JP,U)
【文献】 特開2006−300314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
B60K 1/00− 6/12
7/00− 8/00
16/00
F16F 1/00−6/00
11/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内側取付部材、および他方に連結されるとともに、前記内側取付部材を囲繞する外筒と、
前記内側取付部材と前記外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備え、
前記内側取付部材の外周面には、前記内側取付部材および前記外筒が相対的に接近移動したときに、前記外筒の内周面側に当接可能なストッパ部が形成され、
前記ストッパ部を覆うストッパ弾性部を備え、
前記ストッパ部のうち、前記外筒の中心軸線に沿う軸方向から見た平面視で前記中心軸線回りに周回する周方向の中間部分に、前記平面視で前記中心軸線に交差する径方向の内側に向けて窪む窪み部が形成され、
前記ストッパ弾性部において、前記ストッパ部の窪み部を覆う内側部分より周方向の外側に位置する外側部分は、前記内側部分より径方向の外側に突出し
前記内側部分と前記外側部分とは、周方向に分断されていることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記ストッパ部は、前記内側取付部材の外周面から径方向の外側に膨出し、
前記窪み部は、前記ストッパ部の、径方向の外側を向く頂面において、その軸方向の両端縁より前記軸方向の内側に位置する部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記弾性体は、前記内側取付部材を径方向に挟む両側に各別に配設され、
前記内側取付部材と前記外筒との間には、周方向に互いに隣り合う前記弾性体同士の間を径方向の外側から覆い前記内側取付部材との間に液室を画成する被覆部材が配設され、
前記被覆部材と前記外筒との間に、各前記液室同士を連通するオリフィス通路が形成され、
前記ストッパ部および前記ストッパ弾性部は、周方向で互いに隣り合う前記弾性体同士の間に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内側取付部材、および他方に連結されるとともに、内側取付部材を径方向の外側から囲繞する外筒と、内側取付部材と外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備え、内側取付部材の外周面に、径方向の外側に向けて突出し、かつ内側取付部材および外筒が径方向に相対的に接近移動したときに、外筒の内周面側に当接可能なストッパ部が形成された防振装置が知られている。
この種の防振装置として、例えば下記特許文献1に示されるような、ストッパ部の頂面に、径方向の内側に向けて窪む窪み部が形成され、この窪み部に、ストッパ部の頂面から径方向の外側に向けて突出したストッパ弾性部が配設され、振幅の大きい振動が入力されたときに、ストッパ弾性部が外筒の内周面側に衝突する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−190732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振装置では、ストッパ弾性部が摩耗し硬質のストッパ部が露出して、このストッパ部が直接、外筒の内周面側に衝突することで、大きな衝撃力が生ずるおそれがあった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ストッパ弾性部の摩耗により硬質のストッパ部が露出して、外筒の内周面側に衝突するのを抑制することができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の防振装置は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内側取付部材、および他方に連結されるとともに、前記内側取付部材を囲繞する外筒と、前記内側取付部材と前記外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備え、前記内側取付部材の外周面には、前記内側取付部材および前記外筒が相対的に接近移動したときに、前記外筒の内周面側に当接可能なストッパ部が形成され、前記ストッパ部を覆うストッパ弾性部を備え、前記ストッパ部のうち、前記外筒の中心軸線に沿う軸方向から見た平面視で前記中心軸線回りに周回する周方向の中間部分に、前記平面視で前記中心軸線に交差する径方向の内側に向けて窪む窪み部が形成され、前記ストッパ弾性部において、前記ストッパ部の窪み部を覆う内側部分より周方向の外側に位置する外側部分は、前記内側部分より径方向の外側に突出し、前記内側部分と前記外側部分とは、周方向に分断されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、ストッパ弾性部のうち外側部分が内側部分より径方向の外側に突出しているので、ストッパ弾性部のうち、外筒の内周面側に比較的当接しやすい内側部分の摩耗を抑えることができるとともに、ストッパ弾性部の摩耗が進行しても、この内側部分からストッパ部が露出するのを抑制することができる。
しかも、ストッパ弾性部の内側部分が、ストッパ部の窪み部を覆っているので、内側部分の厚さを確保することが可能になり、この内側部分が外筒の内周面側に衝突したときに生ずる衝撃力を抑えることができるとともに、この内側部分からストッパ部が露出するのを確実に抑制することができる。
ストッパ弾性部において、内側部分と外側部分とが、周方向に分断されているので、ストッパ弾性部の摩耗の進行に伴い、内側部分と外側部分との境界部分に亀裂が発生することがなく、この亀裂が、内側部分および外側部分に進展するのを防ぐことができる。これにより、ストッパ弾性部からストッパ部が露出するのを確実に抑えることができる。
【0008】
ここで、前記ストッパ部は、前記内側取付部材の外周面から径方向の外側に膨出し、前記窪み部は、前記ストッパ部の、径方向の外側を向く頂面において、その軸方向の両端縁より前記軸方向の内側に位置する部分に形成されてもよい。
【0009】
この場合、窪み部が、ストッパ部の頂面において、その軸方向の両端縁より前記軸方向の内側に位置する部分に形成されているので、ストッパ弾性部の内側部分が、外筒の内周面側に衝突したときに、ストッパ弾性部の内側部分のうち、窪み部内に位置する被収容部分が全域にわたって、窪み部の内面に押し当てられることとなり、被収容部分に、過度に大きく変形して応力が集中してしまう箇所が生ずるのを抑制することが可能になり、ストッパ弾性部の耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、前記弾性体は、前記内側取付部材を径方向に挟む両側に各別に配設され、前記内側取付部材と前記外筒との間には、周方向に互いに隣り合う前記弾性体同士の間を径方向の外側から覆い前記内側取付部材との間に液室を画成する被覆部材が配設され、前記被覆部材と前記外筒との間に、各前記液室同士を連通するオリフィス通路が形成され、前記ストッパ部および前記ストッパ弾性部は、周方向で互いに隣り合う前記弾性体同士の間に配設されてもよい。
【0013】
この場合、各液室のうちのいずれか一方が縮小変形し、かつ他方が拡張変形するように、防振装置に径方向の振動が入力されたときに、液室の液体がオリフィス通路を流通することで、オリフィス通路で液柱共振が発生し、この振動が減衰、吸収される、いわゆる液封型の防振装置において、ストッパ弾性部の摩耗に起因した前述の衝撃力が生ずるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る防振装置によれば、ストッパ弾性部の摩耗により露出した硬質のストッパ部が、外筒の内周面側に衝突するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る一実施形態として示した防振装置の軸方向の中央部における横断面図である。
図2図1に示す防振装置のA−A線矢視断面図である。
図3図1に示す防振装置のB−B線矢視断面図である。
図4図1から図3に示す防振装置において、外筒を取り外した状態で、2つの被覆部材における2つの境界部分のうちの一方を径方向の外側から見た側面図である。
図5図1から図3に示す防振装置において、外筒を取り外した状態で、2つの被覆部材における2つの境界部分のうちの他方を径方向の外側から見た側面図である。
図6図4および図5に示す防振装置において、被覆部材を取り外した状態で中弾性体を正面視した側面図である。
図7図4および図5に示す防振装置において、被覆部材を取り外した状態でストッパ弾性部を正面視した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る防振装置の一実施形態を、図1図7を参照しながら説明する。
本実施形態の防振装置1は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内側取付部材11、および他方に連結されるとともに、内側取付部材11を囲繞する外筒12と、内側取付部材11と外筒12とを弾性的に連結する弾性体31、32と、を備えている。
なお、防振装置1は、例えば自動車用のサスペンションブッシュやエンジンマウント、あるいは工場に設置される産業機械のマウント等として用いられる。
以下、外筒12の中心軸線Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向から見た平面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0017】
図1から図3に示されるように、内側取付部材11は、中心軸線Oと同軸に配設された円筒状に形成されている。内側取付部材11の軸方向の中間部分に、径方向の外側に向けて膨出した膨出部15が全周にわたって形成されている。膨出部15は、内側取付部材11における軸方向の中央部に形成されている。膨出部15の、径方向の外側を向く頂面15aは、周方向に延びるとともに、軸方向に延びている。膨出部15は外筒12の内側に配置されている。なお、内側取付部材11の内径は、軸方向の全長にわたって同等になっている。内側取付部材11の軸方向の両端部は、外筒12から軸方向の外側に突出している。
【0018】
弾性体31、32は、ゴム材料により形成され、内側取付部材11の外周面に加硫接着されている。弾性体31、32は、軸方向に間隔をあけて配置されるとともに、外筒12内に嵌合された一対の端弾性体31と、端弾性体31同士の間に配設され、周方向に間隔をあけて配置された一対の中弾性体32と、を備える。
【0019】
端弾性体31は、膨出部15の表面のうち、頂面15aにおける軸方向の両端部から径方向の内側に向けて延び、軸方向を向く両端面15bに各別に配設されている。端面15bは、頂面15aから径方向の内側に向かうに従い漸次、軸方向の外側に向けて延びている。端弾性体31は、膨出部15の端面15bから軸方向の外側に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延びる筒部31aと、筒部31aにおける軸方向の外側の端部から径方向の外側に向けて突出し、全周にわたって連続して延びるフランジ部31bと、を備える。筒部31aおよびフランジ部31bは、中心軸線Oと同軸に配置されている。フランジ部31bは、内側取付部材11における軸方向の端部より軸方向の内側に位置している。フランジ部31b内に環状の補強板33が埋設されている。補強板33は、例えば金属材料、若しくは合成樹脂材料等の硬質の材質で形成される。一対の端弾性体31は、互いに同等の形状で、同等の大きさに形成されている。
【0020】
中弾性体32は、内側取付部材11を径方向に挟む両側に各別に配設されている。中弾性体32は、全域にわたってゴム材料により形成されている。中弾性体32は、図6に示されるように、内側取付部材11における軸方向の中央部に配設された主部32aと、主部32aから軸方向の外側に向けて各別に突出し、かつ主部32aより体積が小さい一対の副部32bと、を備える。主部32aおよび副部32bはそれぞれ、径方向の外側から見た正面視で、一対の辺部が周方向に延び、かつ残り一対の辺部が軸方向に延びる矩形状を呈する。副部32bは、主部32aにおける周方向の中央部に接続されている。副部32bにおける軸方向の外端は、端弾性体31のフランジ部31bに接続されている。主部32a、および副部32bそれぞれの、径方向の外側を向く外面は、径方向の外側から見た正面視で軸方向に直交する横方向、および軸方向の双方向に延びる平坦面となっている。主部32aおよび副部32bの各外面は、段差なく連なっている。一対の中弾性体32は、互いに同等の形状で、同等の大きさに形成されている。主部32aの周方向の大きさは、副部32bの周方向の大きさより大きい。主部32aの軸方向の大きさは、副部32bの軸方向の大きさより小さい。
【0021】
ここで、図1に示されるように、内側取付部材11の膨出部15のうち、周方向で互いに隣り合う中弾性体32同士の間に位置するストッパ部16に、径方向の内側に向けて窪む窪み部16aが形成されている。窪み部16aは、軸方向に延びる溝状に形成されている。窪み部16aは、径方向の外側から見て軸方向に長い長方形状を呈する。ストッパ部16は、内側取付部材11および外筒12が相対的に接近移動したときに、後述する被覆部材17の内面(外筒12の内周面側)に当接可能に形成されている。ストッパ部16は、膨出部15のうち、他の部分より径方向の外側に位置しており、膨出部15の頂面15aは、軸方向から見た平面視で長円形状を呈する。ストッパ部16における頂面15aは、前記平面視で中心軸線Oを中心とする円弧形状に形成されている。
【0022】
窪み部16aは、ストッパ部16の周方向の中間部分に形成されている。図示の例では、窪み部16aは、ストッパ部16の周方向の中央部に形成されている。図2に示されるように、窪み部16aは、ストッパ部16の頂面15aにおいて、その軸方向の両端縁より軸方向の内側に位置する部分に形成されている。すなわち、窪み部16aにおける軸方向の両端部は、ストッパ部16の両端面15bに開口していない。図示の例では、窪み部16aは、ストッパ部16の頂面15aにおいて、その周方向の両端縁より周方向の内側に位置する部分に形成されている。窪み部16aの開口部は、突曲面状に形成されている。窪み部16aは、中心軸線Oに直交する横断面視で、径方向の内側に向けて窪む凹曲面状に形成されている。ストッパ部16の頂面15aのうち、窪み部16aの開口部と、頂面15aの軸方向の端縁と、の間に位置する部分は、軸方向に沿う縦断面視において、軸方向に直線状に延びている。
【0023】
本実施形態では、ストッパ部16を覆うストッパ弾性部34を備える。ストッパ部16およびストッパ弾性部34は、周方向で互いに隣り合う中弾性体32同士の間に配設されている。ストッパ弾性部34、および弾性体31、32は、例えばゴム材料等で一体に形成されている。なお、内側取付部材11の外周面は、全域にわたって例えばゴム材料等で覆われている。
【0024】
図1に示されるように、ストッパ弾性部34において、ストッパ部16の窪み部16aを覆う内側部分34aより周方向の外側に位置する外側部分34bは、内側部分34aより径方向の外側に突出している。内側部分34aの外表面は、中心軸線Oを中心とする円弧形状に形成されている。外側部分34bの外表面は、径方向の外側に向けて突の曲面状に形成されている。中心軸線Oに直交する横断面視において、内側部分34aの外表面の曲率半径は、外側部分34bの外表面の曲率半径より大きい。外側部分34b、および中弾性体32の主部32aそれぞれの軸方向の大きさは互いに同等され、外側部分34b、および主部32aそれぞれの軸方向の位置は互いに同等になっている。
【0025】
内側部分34aと外側部分34bとは、周方向に分断されている。この分断部分(以下、第1分断部分という)34cは、図7に示されるように、ストッパ弾性部34において、内側部分34aと2つの外側部分34bとの各接続部分における軸方向の全長にわたって形成されている。第1分断部分34cにおける軸方向の両端部は、外側部分34bにおける軸方向の両端部より軸方向の外側に位置している。第1分断部分34cにおける軸方向の両端部は、ストッパ部16の頂面15aにおいて、窪み部16aより軸方向の外側に位置する部分に位置している。図1に示されるように、第1分断部分34cは、ストッパ部16の頂面15aにおいて、その周方向の両端縁、および窪み部16aの開口部の双方から周方向に離れた位置に配置されている。
第1分断部分34cは、ストッパ弾性部34を径方向に貫通し、かつ周方向の幅を有して、軸方向に延びる長孔となっている。内側部分34aのうち、2つの第1分断部分34cに周方向に挟まれた部分の周方向の大きさは、外側部分34bの周方向の大きさより小さくなっている。
【0026】
図2および図7に示されるように、ストッパ弾性部34と端弾性体31とは、軸方向に分断されている。この分断部分(以下、第2分断部分という)34dは、ストッパ弾性部34を径方向に貫通し、かつ軸方向の幅を有して、周方向に延びる長孔となっている。第2分断部分34dは、ストッパ弾性部34における軸方向の両端部に形成されている。第2分断部分34dは、ストッパ弾性部34のうちの内側部分34aと、端弾性体31と、を軸方向に分断している。なお、第2分断部分34dは、内側部分34aおよび外側部分34bを含むストッパ弾性部34の全体と、端弾性体31と、を軸方向に分断してもよい。
【0027】
第2分断部分34dにおける軸方向の外端は、外側部分34bにおける軸方向の端部より軸方向の外側に位置し、第2分断部分34dにおける軸方向の内端は、外側部分34bにおける軸方向の端部より軸方向の内側に位置している。第2分断部分34dは、ストッパ部16の頂面15aにおいて、その軸方向の端縁より軸方向の内側で、かつ窪み部16aの開口部より軸方向の外側に位置する部分に位置している。第2分断部分34dは、ストッパ弾性部34において、2つの外側部分34bより周方向の内側に位置する部分に配置されている。
図示の例では、第2分断部分34dの周方向の端部は、第1分断部分34cの軸方向の端部に接続され、第2分断部分34dおよび第1分断部分34cは、径方向の外側から見て矩形枠状を呈する。第2分断部分34dの幅は、第1分断部分34cの幅よりわずかに大きくなっている。
【0028】
内側取付部材11と外筒12との間に、周方向に互いに隣り合う中弾性体32同士の間を径方向の外側から覆い内側取付部材11との間に液室14a、14bを画成する被覆部材17が配設されている。被覆部材17は、弾性体31、32を形成する材質より硬質の、例えば合成樹脂材料等で形成されている。ストッパ部16およびストッパ弾性部34は、周方向で互いに隣り合う中弾性体32同士の間に配設され、液室14a、14bの隔壁の一部を構成している。
【0029】
液室14a、14bに、40℃における動粘度が50cSt以上1000cSt以下、好ましくは500cSt以上1000cSt以下の液体が封入されている。動粘度の測定は、JIS K2283に準拠し、B型粘度計((株)トキメック製)により行える。液体としては、例えばシリコーンオイル等が挙げられる。
被覆部材17は、内側取付部材11を全周にわたって径方向の外側から囲繞している。被覆部材17の内面は、中弾性体32の外面に液密に当接し、ストッパ弾性部34とは非接触となっている。
【0030】
ここで、図2に示されるように、ストッパ弾性部34における、被覆部材17の内面と対向する外表面のうち、少なくとも窪み部16a上に位置する対応部分、および被覆部材17の内面のうち、少なくともストッパ弾性部34の外表面の前記対応部分と対向する対向部分は、軸方向に沿う縦断面視において、全域にわたって軸方向に延びている。図示の例では、前記縦断面視において、ストッパ弾性部34の外表面の前記対応部分、および被覆部材17の内面の前記対向部分は、ほぼ平行になっている。
【0031】
被覆部材17の内面のうち、ストッパ部16の頂面15aにおける窪み部16aの開口周縁部にストッパ弾性部34を介して径方向に対向する部分から前記対向部分にわたって、前記縦断面視で軸方向に延びている。被覆部材17の内面のうち、ストッパ部16における軸方向の端部にストッパ弾性部34を介して径方向に対向する部分は、軸方向の外側に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延びている。
【0032】
図1に示されるように、被覆部材17の内面のうち、ストッパ弾性部34の内側部分34aの外表面と対向する部分は、中心軸線Oを中心とする円弧形状に形成され、ストッパ弾性部34の外側部分34bの外表面と対向する部分は、径方向の外側に向けて窪む凹曲面状に形成されている。中心軸線Oに直交する横断面視において、被覆部材17の内面のうち、ストッパ弾性部34の内側部分34aの外表面と対向する部分の曲率半径は、ストッパ弾性部34の外側部分34bの外表面と対向する部分の曲率半径より大きい。被覆部材17の内面のうち、ストッパ弾性部34の外表面と対向する部分は、ストッパ弾性部34の外表面形状に沿った形状に形成されている。前記横断面視において、被覆部材17の内面のうち、ストッパ弾性部34の外表面と対向する部分は、ストッパ弾性部34の外表面とほぼ平行となっている。
【0033】
被覆部材17は、周方向に沿って複数配設され、周端縁同士が互いに突き当てられて全体で円筒状をなす。図示の例では、被覆部材17は、半割りの筒状に形成され2つ配設されている。被覆部材17は、中弾性体32を全周にわたって覆っている。被覆部材17の周端縁は、中弾性体32における周方向の中央部に位置している。
【0034】
被覆部材17は、中弾性体32を、径方向の内側、および周方向の内側に圧縮変形させている。つまり、中弾性体32には、径方向の両方向、および周方向の両方向に圧縮力が加えられている。図示の例では、1つの被覆部材17の内面における周方向の両端部に、径方向の内側に向けて突出し、中弾性体32の周方向の端面に圧接する圧接突部17fが各別に形成されている。圧接突部17fにおいて、中弾性体32の周方向の端面に圧接する圧接面は、1つの被覆部材17における周方向の外側を向き、かつ軸方向に延びる平面となっている。
【0035】
図4に示されるように、被覆部材17の外周面に、本体溝19と、各液室14a、14bのうちのいずれか一方の液室14a、および本体溝19に開口する第1連通開口18と、各液室14a、14bのうちのいずれか他方の液室14b、および本体溝19に開口する第2連通開口20と、が形成されている。
【0036】
第1連通開口18、および第2連通開口20はそれぞれ、2つの被覆部材17それぞれにおいて、周方向で互いに隣接する周端部に各別に形成されている。
図4および図5に示されるように、本体溝19は、被覆部材17の外周面において、第1連通開口18若しくは第2連通開口20が配置された周方向の一端部から、周方向の他端部に向けて延び、周方向の他端部が周方向に開口した第1溝19aと、第1溝19aから軸方向に離れた位置に配置され、周方向の両端部が周方向に開口した第2溝19bと、を備えている。第1溝19aにおける周方向の一端部は、軸方向に延びる端壁部19cにより周方向に閉塞されている。
【0037】
そして、2つの被覆部材17は、同等の形状で同等の大きさに形成され、それぞれが軸方向に反転した状態で、周端縁同士が周方向に連ねられて配置されている。
これにより、一方の被覆部材17における第1溝19aの周方向の他端部と、他方の被覆部材17における第2溝19bの周方向の他端部と、が互いに接続され、一方の被覆部材17における第2溝19bの周方向の一端部と、他方の被覆部材17における第2溝19bの周方向の一端部と、が互いに接続され、一方の被覆部材17における第2溝19bの周方向の他端部と、他方の被覆部材17における第1溝19aの周方向の他端部と、が互いに接続されている。
【0038】
ここで、図4に示されるように、端壁部19cにおける周方向の両側面のうち、第1溝19aの外側に位置する外側面19dは、軸方向に第2溝19bから離れるに従い漸次、第1溝19aの外側に向けて延びている。これにより、一方の被覆部材17における第2溝19bの周方向の一端部と、他方の被覆部材17における第2溝19bの周方向の一端部と、が、2つの被覆部材17における端壁部19cの外側面19d間の間隙を通して接続されている。2つの被覆部材17における端壁部19cの外側面19dは、互いにほぼ平行となり、この間隙は、軸方向および周方向の双方向に傾斜する方向に直線状に延びている。
【0039】
外筒12が、2つの被覆部材17に一体に外嵌することによって、外筒12と内側取付部材11とが弾性的に連結されるとともに、本体溝19と外筒12の内周面との間に、各液室14a、14b同士を連通するオリフィス通路が画成されている。オリフィス通路は、第1連通開口18、および第2連通開口20を通して、各液室14a、14b同士を連通している。オリフィス通路は、被覆部材17と外筒12との間に、周方向に1周半以上にわたって延設されている。図示の例では、オリフィス通路は、被覆部材17と外筒12との間に、周方向にほぼ2周にわたって延設されている。
そして、この防振装置1に振動が入力されたときに、弾性体31、32が弾性変形しつつ、各液室14a、14bの内容積が変動することで、液室14a、14b内の液体がオリフィス通路を流通して液柱共振を生じさせることにより振動が減衰、吸収される。
【0040】
オリフィス通路を画成する壁面に、このオリフィス通路内を一方の液室14aから他方の液室14bに向けて流通する液体を、他方の液室14b内に短絡して到達させる第1短絡貫通孔21、および、このオリフィス通路内を他方の液室14bから一方の液室14aに向けて流通する液体を、一方の液室14a内に短絡して到達させる第2短絡貫通孔22が形成されている。
第1短絡貫通孔21、および第2短絡貫通孔22を通過する液体の流通抵抗は、オリフィス通路の流通抵抗より小さい。第1短絡貫通孔21、および第2短絡貫通孔22の各流路断面積は、例えば約3mm以上とされ、オリフィス通路の流路断面積より小さい。第1短絡貫通孔21、および第2短絡貫通孔22の各長さは、オリフィス通路の長さより短い。
【0041】
第1短絡貫通孔21、および第2短絡貫通孔22は、被覆部材17の外周面に形成され、本体溝19の溝底面に形成されている。第1短絡貫通孔21、および第2短絡貫通孔22は、2つの被覆部材17に各別に形成されている。第1短絡貫通孔21、および第2短絡貫通孔22は、第2溝19bにおける周方向の両端部のうち、他の被覆部材17における第1溝19aの周方向の他端部に接続された他端部に形成されている。これにより、第1短絡貫通孔21は、他方の液室14bにおいて、オリフィス通路内を液体が一方の液室14aから他方の液室14bに向けて流通する流通方向F1の後側の端部に開口している。第2短絡貫通孔22は、一方の液室14aにおいて、オリフィス通路内を液体が他方の液室14bから一方の液室14aに向けて流通する流通方向F2の後側の端部に開口している。
【0042】
第1短絡貫通孔21は、第1連通開口18から流通方向F1に沿って中心軸線Oを中心に約180°離れた位置に配置され、第2短絡貫通孔22は、第2連通開口20から流通方向F2に沿って中心軸線Oを中心に約180°離れた位置に配置されている。
第1短絡貫通孔21、および第2短絡貫通孔22は、第2溝19bにおける軸方向の中央部に配置されている。第1短絡貫通孔21、および第2短絡貫通孔22それぞれにおける本体溝19の溝底面における開口形状は、周方向に長い長円形状となっている。
【0043】
第1短絡貫通孔21の内周面のうち、液体がオリフィス通路内を一方の液室14aから他方の液室14bに向けて流通する流通方向F1の後側の端部に位置し、流通方向F1の前側を向く後端面21aは、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、流通方向F1の前側に向けて延びている。図示の例では、第1短絡貫通孔21の内周面のうち、流通方向F1の前側の端部に位置し、流通方向F1の後側を向く前端面21bも、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、流通方向F1の前側に向けて延びている。第1短絡貫通孔21における後端面21aおよび前端面21bはほぼ平行になっている。
【0044】
第2短絡貫通孔22の内周面のうち、液体がオリフィス通路内を他方の液室14bから一方の液室14aに向けて流通する流通方向F2の後側の端部に位置し、流通方向F2の前側を向く後端面22aは、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、流通方向F2の前側に向けて延びている。図示の例では、第2短絡貫通孔22の内周面のうち、流通方向F2の前側の端部に位置し、流通方向F2の後側を向く前端面22bも、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、流通方向F2の前側に向けて延びている。第2短絡貫通孔22における後端面22aおよび前端面22bはほぼ平行になっている。
【0045】
図4に示されるように、オリフィス通路において、一方の液室14aとの接続部分を画成する壁面に、他方の液室14bとの接続部分側に短絡して開口する第3短絡貫通孔23、および、他方の液室14bとの接続部分を画成する壁面に、一方の液室14aとの接続部分側に短絡して開口する第4短絡貫通孔24が形成されている。
【0046】
第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24の各流通抵抗は、オリフィス通路の流通抵抗より小さく、第1短絡貫通孔21、および第2短絡貫通孔22の各流通抵抗より小さい。第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24の各流路断面積は、例えば約3mm以上とされ、オリフィス通路の流路断面積、並びに、第1連通開口18、および第2連通開口20の各開口面積より小さい。第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24の各長さは、オリフィス通路の長さより短い。
なお、第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24の各流通抵抗を、第1短絡貫通孔21、および第2短絡貫通孔22の各流通抵抗以上としてもよい。
【0047】
第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24は、第1溝19aにおける周方向の一端部を画成し、かつ軸方向に延びる端壁部19cに形成され、周方向に延びている。第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24は、端壁部19cの表面のうち、径方向の外側を向く外周面に形成され、端壁部19cを周方向に貫いている。第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24は、径方向の外側から見た正面視で、軸方向に直交する方向に直線状に延びている。
【0048】
第3短絡貫通孔23は、オリフィス通路内を液体が一方の液室14aから他方の液室14bに向けて流通する流通方向F1の逆方向に開口し、第4短絡貫通孔24は、オリフィス通路内を液体が他方の液室14bから一方の液室14aに向けて流通する流通方向F2の逆方向に開口している。第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24は、他方の被覆部材17における第2溝19bの周方向の一端部に向けて開口している。
【0049】
第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24は、端壁部19cにおける軸方向の中央部に形成されている。第3短絡貫通孔23は、第1連通開口18における軸方向の中央部に周方向に近接し、第4短絡貫通孔24は、第2連通開口20における軸方向の中央部に周方向に近接している。
なお、第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24として、軸方向に延び、第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24が形成された被覆部材17と同一の被覆部材17の第2溝19bに開口した構成を採用してもよい。また、第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24として、オリフィス通路において、一方の液室14aとの接続部分と、他方の液室14bとの接続部分と、を短絡して直結する構成を採用してもよい。
【0050】
図3図6および図7に示されるように、中弾性体32には、液室14a、14bの内圧により弾性変形することで、各液室14a、14b同士を連通し、液体を各液室14a、14b同士の間を流通させる溝状のリーク通路27、28が形成されている。なお、リーク通路27、28は、各液室14a、14bの内圧が変動する前の待機状態では、被覆部材17がリーク通路27、28の隔壁を弾性変形していることにより、リーク通路27、28を通した各液室14a、14b同士の連通が遮断されている。
リーク通路27、28は、中弾性体32において、被覆部材17の内面に当接した外面に形成されている。リーク通路27、28は、中弾性体32の、周方向を向く側面に開口している。リーク通路27、28は、中弾性体32の外面を径方向の外側から見た正面視で、軸方向に直交する方向に直線状に延びている。
【0051】
リーク通路27、28は、中弾性体32に軸方向の位置を異ならせて複数形成されている。図示の例では、リーク通路27、28は、中弾性体32における主部32aおよび一対の副部32bに1つずつ形成されている。
複数のリーク通路27、28のうち、主部32aに形成された第1リーク通路27は、主部32aにおける軸方向の中央部に配置され、副部32bに形成された第2リーク通路28における軸方向の中央部は、副部32bにおける軸方向の中央部より軸方向の外側に位置している。複数のリーク通路27、28のうちの少なくとも2つは、流路長が互いに異なっている。図示の例では、第1リーク通路27の周方向の長さは、第2リーク通路28の周方向の長さより長くなっている。第1リーク通路27の幅は、第2リーク通路28の幅より狭くなっている。
【0052】
複数のリーク通路27、28のうちの少なくとも2つは、被覆部材17によるこのリーク通路27、28の隔壁の弾性変形量が互いに異なっている。本実施形態では、第1リーク通路27の隔壁の被覆部材17による弾性変形量が、第2リーク通路28の隔壁の被覆部材17による弾性変形量より大きくなっている。第1リーク通路27が開く液室14a、14bの内圧が、第2リーク通路28が開く液室14a、14bの内圧より高くなっている。
なお、第1リーク通路27の隔壁の被覆部材17による弾性変形量を、第2リーク通路28の隔壁の被覆部材17による弾性変形量以下としてもよい。また、第1リーク通路27が開く液室14a、14bの内圧を、第2リーク通路28が開く液室14a、14bの内圧以下としてもよい。
【0053】
被覆部材17の内面には、第1リーク通路27内、および第2リーク通路28内に各別に挿入された突リブ17aが形成されている。突リブ17aは、被覆部材17の内面において、中心軸線Oを径方向に挟む各位置に、軸方向に間隔をあけて複数ずつ形成され、各突リブ17aが、第1リーク通路27内、および第2リーク通路28内に各別に挿入されている。突リブ17aは、第1リーク通路27内、および第2リーク通路28内にそれぞれ、周方向の全長にわたって配置されている。突リブ17aは、第1リーク通路27、および第2リーク通路28の各内面に全域にわたって当接している。
【0054】
軸方向に間隔をあけて配置された複数の突リブ17aにおける周方向の各端部は、軸方向に延びる圧接突部17fにより軸方向に一体に接続されている。突リブ17aは、1つの被覆部材17の内面における周方向の両端部に形成されている。1つの突リブ17aは、被覆部材17の周端縁で周方向に分断され、2つの被覆部材17が周方向に組み合わされて構成されている。
なお、第1短絡貫通孔21、第2短絡貫通孔22、第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24は、第1リーク通路27より軸方向の外側で、かつ第2リーク通路28より軸方向の内側に位置している。
【0055】
以上説明したように、本実施形態による防振装置1によれば、ストッパ弾性部34のうち外側部分34bが内側部分34aより径方向の外側に突出しているので、ストッパ弾性部34のうち、被覆部材17の内面に比較的当接しやすい内側部分34aの摩耗を抑えることができるとともに、ストッパ弾性部34の摩耗が進行しても、この内側部分34aからストッパ部16が露出するのを抑制することができる。
しかも、ストッパ弾性部34の内側部分34aが、ストッパ部16の窪み部16aを覆っているので、内側部分34aの厚さを確保することが可能になり、この内側部分34aが被覆部材17の内面に衝突したときに生ずる衝撃力を抑えることができるとともに、この内側部分34aからストッパ部16が露出するのを確実に抑制することができる。
【0056】
また、窪み部16aが、ストッパ部16の頂面15aにおいて、その軸方向の両端縁より軸方向の内側に位置する部分に形成されているので、ストッパ弾性部34の内側部分34aが、被覆部材17の内面に衝突したときに、ストッパ弾性部34の内側部分34aのうち、窪み部16a内に位置する被収容部分が全域にわたって、窪み部16aの内面に押し当てられることとなり、被収容部分に、過度に大きく変形して応力が集中してしまう箇所が生ずるのを抑制することが可能になり、ストッパ弾性部34の耐久性を向上させることができる。
【0057】
また、ストッパ弾性部34において、内側部分34aと外側部分34bとが、周方向に分断されているので、ストッパ弾性部34の摩耗の進行に伴い、内側部分34aと外側部分34bとの境界部分に亀裂が発生することがなく、この亀裂が、内側部分34aおよび外側部分34bに進展するのを防ぐことができる。これにより、ストッパ弾性部34からストッパ部16が露出するのを確実に抑えることができる。
【0058】
また、各液室14a、14bのうちのいずれか一方が縮小変形し、かつ他方が拡張変形するように、防振装置1に径方向の振動が入力されたときに、液室14a、14bの液体がオリフィス通路を流通することで、オリフィス通路で液柱共振が発生し、この振動が減衰、吸収される、いわゆる液封型の防振装置1において、ストッパ弾性部34の摩耗に起因した前述の衝撃力が生ずるのを抑制することができる。
また、高粘度の液体が液室14a、14bに封入されているので、オリフィス通路における液柱共振に基づく減衰特性のピークが広い周波数範囲にわたって広がることとなり、広い周波数範囲で減衰性能を発揮させることができる。
【0059】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
例えば前記実施形態では、窪み部16aとして、軸方向に延びる溝状を示したが、これに限らず例えば、周方向に延びる溝状、径方向の外側から見て円形状、若しくは矩形状を呈する形態を採用する等、適宜変更してもよい。
また、ストッパ部16は、内側取付部材11の外周面から径方向の外側に向けて膨出させなくてもよい。
また、窪み部16aにおける軸方向の端部が、ストッパ部16の端面15bに開口した構成を採用してもよい。
【0061】
また、ストッパ弾性部34に、第1分断部分34cおよび第2分断部分34dを形成しなくてもよく、第1分断部分34cとして、内側部分34aおよび外側部分34bが周方向で互いに当接するスリットを採用してもよく、第2分断部分34dとして、ストッパ弾性部34および端弾性体31が軸方向で互いに当接するスリットを採用してもよい。
また、前記縦断面視で、ストッパ弾性部34の外表面の前記対応部分、および被覆部材17の内面の前記対向部分が、全域にわたって軸方向に延びる構成を示したが、例えば、前記対応部分および前記対向部分のうちのいずれか一方が、径方向に波打ちながら軸方向に延びる構成とする等、適宜変更してもよい。
【0062】
また、被覆部材17を配設せず、外筒12により液室14a、14bを画成した構成を採用してもよい。
また、被覆部材17に、第1短絡貫通孔21、第2短絡貫通孔22、第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24を形成しなくてもよい。本体溝19において、第1短絡貫通孔21、第2短絡貫通孔22、第3短絡貫通孔23、および第4短絡貫通孔24を形成する位置は、前記実施形態に限らず適宜変更してもよい。第1短絡貫通孔21、および第2短絡貫通孔22の各内周面は、例えば径方向に延びる等、適宜変更してもよい。
また、オリフィス通路として、周方向に1周以下延びる構成を採用してもよい。
また、本体溝19が、被覆部材17の外周面に形成された構成を示したが、本体溝19を外筒12の内周面に形成してもよい。
【0063】
また、オリフィス通路および液室14a、14bを有しない構成を採用してもよい。
また、液室14a、14bに封入する液体は、前記実施形態に限らず例えば、水、およびエチレングリコール等を採用してもよい。
【0064】
また、中弾性体32に補強体を埋設してもよく、また、被覆部材17により中弾性体32を圧縮変形しなくてもよく、また、被覆部材17を、周方向で互いに隣り合う中弾性体32同士の間に嵌合し、中弾性体32を、周方向で互いに隣り合う被覆部材17同士の間から露出させてもよい。
また、中弾性体32に、複数のリーク通路27、28を形成しなくてもよい。
また、中弾性体32として、主部32aおよび副部32bを備える構成を示したが、例えば、主部32aおよび副部32bのうちのいずれか一方のみを備える構成を採用する等適宜変更してもよい。
【0065】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 防振装置
11 内側取付部材
12 外筒
14a、14b 液室
15a 頂面
16 ストッパ部
16a 窪み部
17 被覆部材
31、32 弾性体
34 ストッパ弾性部
34a 内側部分
34b 外側部分
O 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7