特許第6962788号(P6962788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962788
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】留め具
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/00 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   F16B19/00 E
   F16B19/00 N
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-215908(P2017-215908)
(22)【出願日】2017年11月8日
(65)【公開番号】特開2019-86116(P2019-86116A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】松藤 早妃
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−163317(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材を被取付部材に重ね合わせた状態で取り付けるための留め具であって、
軸部と、
前記軸部の一端側から径方向外向きに張り出すフランジ部と、
前記軸部の他端側に形成され、被取付部材の取付孔の縁に係止する弾性係止部と、
前記弾性係止部より前記フランジ部側に設けられ、前記フランジ部および前記軸部の少なくとも一方から張り出すように形成され、前記弾性係止部と軸方向に離間する弾性片と、を備え、
前記フランジ部および前記弾性係止部は、重ね合わせた取付部材および被取付部材を挟み、
前記弾性片は、取付部材の挿入孔に挿入され、被取付部材に対して取付部材が相対移動すると挿入孔の内周面に当接して撓み、
前記弾性片が取付部材の挿入孔の内周面に当接して撓む方向は、前記弾性係止部が被取付部材の取付孔に挿入される際の撓み方向と同じであることを特徴とする留め具。
【請求項2】
取付部材を被取付部材に重ね合わせた状態で取り付けるための留め具であって、
軸部と、
前記軸部の一端側から径方向外向きに張り出すフランジ部と、
前記軸部の他端側に形成され、被取付部材の取付孔の縁に係止する弾性係止部と、
前記弾性係止部より前記フランジ部側に設けられ、前記フランジ部および前記軸部の少なくとも一方から張り出すように形成され、前記弾性係止部と軸方向に離間する弾性片と、を備え、
前記フランジ部および前記弾性係止部は、重ね合わせた取付部材および被取付部材を挟み、
前記弾性片は、取付部材の挿入孔に挿入され、被取付部材に対して取付部材が相対移動すると挿入孔の内周面に当接して撓み、
前記軸部および前記弾性片によって構成される該留め具の軸方向に直交する断面は、略S字状に形成されることを特徴とする留め具。
【請求項3】
取付部材を被取付部材に重ね合わせた状態で取り付けるための留め具であって、
壁状に形成された軸部と、
前記軸部の一端側から径方向外向きに張り出すフランジ部と、
前記軸部の他端側に形成され、被取付部材の取付孔の縁に係止する弾性係止部と、
前記弾性係止部より前記フランジ部側に設けられ、前記フランジ部および前記軸部の少なくとも一方から張り出すように形成され、前記弾性係止部と軸方向に離間する弾性片と、を備え、
前記フランジ部および前記弾性係止部は、重ね合わせた取付部材および被取付部材を挟み、
前記弾性片は、取付部材の挿入孔に挿入され、被取付部材に対して取付部材が相対移動すると挿入孔の内周面に当接して撓み、
前記弾性片の内側の前記軸部の厚さが、前記弾性係止部の内側の前記軸部の厚さより薄いことを特徴とする留め具。
【請求項4】
取付部材を被取付部材に重ね合わせた状態で取り付けるための留め具であって、
軸部と、
前記軸部の一端側から径方向外向きに張り出すフランジ部と、
前記軸部の他端側に形成され、被取付部材の取付孔の縁に係止する弾性係止部と、
前記弾性係止部より前記フランジ部側に設けられ、前記フランジ部および前記軸部の少なくとも一方から張り出すように形成され、前記弾性係止部と軸方向に離間する弾性片と、を備え、
前記フランジ部および前記弾性係止部は、重ね合わせた取付部材および被取付部材を挟み、
前記弾性片は、取付部材の挿入孔に挿入され、被取付部材に対して取付部材が相対移動すると挿入孔の内周面に当接して撓み、
前記弾性片は、取付部材として重ねられた状態にある第1取付部材および第2取付部材の挿入孔に挿入されて、被取付部材に対して第1取付部材および第2取付部材の少なくとも一方が相対移動した状態で、第1取付部材および第2取付部材の少なくとも一方の挿入孔の内周面に当接して撓み、
前記弾性係止部は、被取付部材に対して第1取付部材および第2取付部材の少なくとも一方が相対移動した状態で、第1取付部材および第2取付部材に当接しないように位置することを特徴とする留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付部材を被取付部材に留める留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のインナーパネルにドアトリムを取り付けるための留め具が開示されている。特許文献1に開示される留め具は、頭部とフランジ部によりドアトリムの取付孔の縁を挟み、袴部と係止突部とによりインナーパネルの取付孔の縁を挟んでインナーパネルに固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−82310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される留め具を用いて、重ね合わせた複数の部材を袴部と係止突部で挟んで固定した場合、複数の部材が相対的にずれると、部材の変位が係止突部に伝わって係止突部の係止が外れるおそれがある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、重ね合わせた状態の複数の部材を挟んで留める留め具であって、複数の部材が相対的にずれた場合に取付孔への係止が解除されにくくできる留め具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、取付部材を被取付部材に重ね合わせた状態で取り付けるための留め具であって、軸部と、軸部の一端側から径方向外向きに張り出すフランジ部と、軸部の他端側に形成され、被取付部材の取付孔の縁に係止する弾性係止部と、弾性係止部よりフランジ部側に設けられ、フランジ部および軸部の少なくとも一方から張り出すように形成され、弾性係止部と軸方向に離間する弾性片と、を備える。フランジ部および弾性係止部は、重ね合わせた取付部材および被取付部材を挟み、弾性片は、取付部材の挿入孔に挿入され、被取付部材に対して取付部材が相対移動すると挿入孔の内周面に当接して撓む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、重ね合わせた状態の複数の部材を挟んで留める留め具であって、複数の部材が相対的にずれた場合に取付孔への係止が解除されにくくできる留め具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の留め具の斜視図である。
図2図2(a)は、留め具の側面図であり、図2(b)は、留め具の正面図である。
図3図3(a)は、図2(a)に示す留め具の線分A−A断面図であり、図3(b)は、図2(a)に示す留め具の線分B−B断面図である。
図4】取付状態の留め具の断面図である。
図5】第2取付部材が被取付部材に対して位置ずれしている取付状態の留め具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施例の留め具10の斜視図である。図1(a)は留め具10を斜め上方から見た図であり、図1(b)は留め具10を斜め下方から見た図である。
【0010】
留め具10は、取付部材を被取付部材に取り付けるために用いられる。例えば、留め具10は、車体パネルに外装部品や内装部品を取り付けるために使用される。特に、実施例の留め具10は、2枚の外装部品を重ね合わせた状態で車体パネルに取り付けることができる。
【0011】
図2(a)は、留め具10の側面図であり、図2(b)は、留め具10の正面図である。また、図3(a)は、図2(a)に示す留め具10の線分A−A断面図であり、図3(b)は、図2(a)に示す留め具10の線分B−B断面図である。留め具10は、軸部20、フランジ部22、弾性係止部24および弾性片26を備え、樹脂材料で形成される。
【0012】
軸部20は、フランジ部22の裏面から延出し、図3(a)に示すように壁状で断面矩形状に形成される。軸部20を幅広の壁状に形成することで、取付孔に挿入したときに軸部20の側縁20aが取付孔の縁に当たって、軸部20の幅方向の動きを制限する。軸部20は、取付部材の挿入孔および被取付部材の取付孔に挿入される。フランジ部22は、軸部20の一端から径方向外向きに張り出し、円盤状に形成される。フランジ部22は、取付部材の表面に引っ掛かる。なお、以下の説明では、軸方向は留め具10の中心軸、すなわち軸部20の中心軸に沿う方向であり、径方向は、留め具10の中心軸から放射方向に延びる方向である。
【0013】
弾性係止部24は、軸部20の側縁20aから張り出すように一対形成され、半円錐状の外周面を有し、図3(b)の矢印に示す径方向に撓む。弾性係止部24は、被取付部材の取付孔に挿入される際に、取付孔を通るときに軸部20の中心軸に接近するように撓み、取付孔を通り過ぎると拡開するように撓んで取付孔の縁に係止する。弾性係止部24の係止面24aは、フランジ部22に向かって軸部20に接近するようにテーパ状に形成される。
【0014】
図3(b)に示す軸部20および弾性係止部24の軸方向に直交する断面は、略S字状に形成される。これにより、弾性係止部24に剛性を高めつつ、取付孔に係止しやすくできる。弾性係止部24は、軸方向に直交する断面において、軸部20の側縁20aから90度の回転角以上の周方向幅に延在し、好ましくは120度の回転角以上の周方向幅に延在する。これにより、留め具10の回転位置によらず取付孔に係止しやすくできる。
【0015】
弾性片26は、フランジ部22および軸部20から張り出すように形成され、軸部20の側縁20aから張り出すように一対形成され、半円筒状の外周面を有し、図3(a)の矢印に示す径方向に撓む。弾性片26は、第1取付部材および第2取付部材に挿入されてそれぞれの挿入孔の内周面に当接可能である。図3(a)には、第1取付部材の第1挿入孔12aおよび第2取付部材の第2挿入孔14aが示されており、第1挿入孔12aは丸aであり、第2挿入孔14aは長孔である。第2挿入孔14aが長孔であり、第2取付部材14は位置ずれすることがある。
【0016】
図3(b)に示す矢印の方向、すなわち軸部20の正面に直交する面直方向に軸部20が動くと、弾性係止部24の係止が外れる可能性がある。軸部20の正面は軸部20の幅広の面をいい、軸部20の正面に直交する方向を以下の説明で軸部20の面直方向という。第1取付部材および第2取付部材の少なくとも一方が被取付部材に対して位置ずれした場合に、位置ずれした第1取付部材または第2取付部材が弾性片26に当たって弾性片26を撓ませ、弾性片26の撓みにより位置ずれが吸収されることで、軸部20の面直方向の動きを抑え、軸部20に連動して弾性係止部24の係止が外れることを抑えることができる。
【0017】
弾性片26は、弾性係止部24と軸方向に離間しており、弾性係止部24と独立して撓むことができる。図3(a)に示すように軸部20および弾性片26の軸方向に直交する断面は、略S字状に形成される。これにより、弾性片26を軸部20に連設して剛性を確保し、弾性片26を周方向に長く形成して撓みやすくできる。弾性片26は、軸方向に直交する断面において、軸部20の側縁20aから90度の回転角以上の周方向幅に延在し、好ましくは120度の回転角以上の周方向幅に延在する。これにより、留め具10の回転位置によらず、第1取付部材および第2取付部材の挿入孔の内周面に当接しやすくなる。
【0018】
弾性片26が第1取付部材および第2取付部材の挿入孔の内周面に当接して撓む方向は、弾性係止部24が被取付部材16の取付孔16aに挿入される際の撓み方向、すなわち弾性係止部24の係止が外れる方向と同じである。これにより、弾性片26が弾性係止部24の係止が外れる方向に撓みやすくなり、弾性係止部24の係止が外れることを抑えることができる。
【0019】
図3(a)に示す弾性片26の内側の軸部20の厚さT1が、図3(b)に示す弾性係止部24の内側の軸部20の厚さT2より薄い。軸部20の厚さT1の位置は、軸部20の一端側の部分であり、弾性片26と軸方向に重なる部分であり、軸部20の厚さT1は、弾性片26と軸方向に重なる軸部20の平均値であってよい。軸部20の厚さT2の位置は、軸部20の他端側の部分であり、弾性係止部24と軸方向に重なる部分であり、軸部20の厚さT2は、弾性係止部24と軸方向に重なる軸部20の平均値であってよい。これにより、弾性片26側の軸部20を弾性係止部24側より撓みやすくして、第1取付部材および第2取付部材の位置ずれを弾性片26と弾性片26側の軸部20が撓んで吸収し、弾性係止部24の係止が外れにくくなるように構成できる。また、弾性係止部24側の軸部の剛性を確保できる。
【0020】
図4は、取付状態の留め具10の断面図である。図4(a)は図3(b)に示す留め具10の線分C−Cの位置の断面を示し、図4(b)は図3(b)に示す留め具10の線分D−Dの位置の断面を示す。
【0021】
留め具10は、板状の第1取付部材12および第2取付部材14を被取付部材16に重ね合わせて密着した状態で取り付ける。第1取付部材12はゴム材料で形成され、第2取付部材14はプラスチック材料で形成される。第1取付部材12の第1挿入孔12aおよび被取付部材16の取付孔16aは丸孔であり、第2取付部材14の第2挿入孔14aは長孔である。長孔にすることで第2取付部材14に複数設けられる第2挿入孔の位置の誤差を吸収できる。
【0022】
軸部20の厚さを薄くするための段部20bが、弾性係止部24および弾性片26の間の軸方向位置に形成され、弾性係止部24よりフランジ部22に位置する。
【0023】
留め具10は、第1挿入孔12a、第2挿入孔14aおよび取付孔16aの位置を合わせた状態で軸部20の先端から挿入され、弾性係止部24が取付孔16aの縁に係止することで、第1取付部材12、第2取付部材14および被取付部材16の重ね合わせた部分を弾性係止部24とフランジ部22で挟んで固定する。第1取付部材12および被取付部材16の間にある第2取付部材14は、長孔の第2挿入孔14aによって、第1取付部材12および被取付部材16の間に部分的に隙間を形成するが、フランジ部22および弾性係止部24に挟まれたいずれかの回転位置で、第1取付部材12、第2取付部材14および被取付部材16が密着した重なり合った状態をとる。
【0024】
弾性片26は、第1挿入孔12aおよび第2挿入孔14aに挿入され、第1挿入孔12aの内周面に当接し、第2挿入孔14aの内周面と隙間を持ち、第1挿入孔12aおよび第2挿入孔14aの内周面に当接可能な位置、つまり第2挿入孔14aの内側まで延びる。一方で、弾性係止部24は、被取付部材16の取付孔16aに係止した状態で第2取付部材14に当接しないよう、第2取付部材14の内周面に重ならないように位置する。これにより、第1取付部材12および第2取付部材14が被取付部材16に対して相対移動して弾性係止部24に当たって係止を解除しないように構成できる。
【0025】
図5は、第2取付部材14が被取付部材16に対して位置ずれしている取付状態の留め具10を示す図である。図5の矢印に示すように第2取付部材14が第1取付部材12および被取付部材16に対して面沿いに相対移動しており、第2挿入孔14aの中心軸が第1挿入孔12aおよび取付孔16aに対して位置ずれして、第2挿入孔14aの内周面が弾性片26に当接して弾性片26を軸部20に接近するように撓ませている。弾性片26が撓むため、軸部20があまり面直方向に位置ずれせず、弾性係止部24もほぼ変位しない。このように弾性片26が第2取付部材14の位置ずれを吸収することで、軸部20が軸部20の面直方向に動いて弾性係止部24の係止が外れる可能性を低減できる。
【0026】
弾性片26は、弾性係止部24より撓みやすくなるように形成されてよい。これにより、弾性片26が第2取付部材14の位置ずれを吸収しやすくして、弾性係止部24の係止が外れにくくできる。
【0027】
例えば、弾性片26が軸部20に連結する箇所に軸方向に延びるスリット、または弾性片26がフランジ部22に連結する箇所に周方向に延びるスリットを設けることで、弾性片26が撓みやすくなるように設定できる。また、弾性片26が弾性係止部24より薄肉に形成されることで、弾性係止部24より撓みやすくなるように構成できる。また、弾性片26が、フランジ部22および軸部20の一方から張り出すように形成されることで、弾性片26を撓みやすく構成できる。
【0028】
弾性係止部24の先端は、第2取付部材14より下側に位置しており、第2取付部材14が被取付部材16に対して相対移動しても、弾性係止部24が第2取付部材14に当接しないように構成される。
【0029】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0030】
10 留め具、 12 第1取付部材、 12a 第1挿入孔、 14 第2取付部材、 14a 第2挿入孔、 16 被取付部材、 16a 取付孔、 20 軸部、 20a 側縁、 22 フランジ部、 24 弾性係止部、 24a 係止面、 26 弾性片。
図1
図2
図3
図4
図5