(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
核酸クロマトグラフィーは、核酸を固定したクロマトグラフィー担体上で、前記担体に固定された前記核酸とハイブリダイズする核酸タグを付加した検出対象物質を展開して捕捉し検出する技術である。クロマトグラフィー担体上の異なる位置にそれぞれ塩基配列の異なる核酸を固定し、複数の検出対象物質にそれぞれ前記核酸に特異的な核酸タグを付加することで、1つの検体中に含まれる複数の検出対象物質を1つの担体上で検出することが可能である。また、核酸クロマトグラフィー以外にも、特異的な結合を形成し得る抗原−抗体の組合せや、リガンド−レセプターの組合せを利用して、クロマトグラフィー担体上で検出対象物質を捕捉するクロマトグラフィーの技術が、分子生物学の試験や、医療や食品検査のための遺伝子検査等の分野において広く用いられている。
【0003】
上記のようなクロマトグラフィーでは、検出対象物質を含む試料液や、展開液等の各種の液体が用いられる。これらの液体を、容器からピペット等の器具で取り出し、クロマトグラフィー担体にアプライする場合、前記液体が検査環境中に飛散し、偽陽性の原因となるコンタミネーションを生じる可能性がある。また、容器を検査環境中で開放することで、容器中の液体が汚染される可能性もある。
【0004】
クロマトグラフィーに用いるための試料液、展開液等の液体を容器に入れたまま、ピペット等の器具を用いずに、前記容器の一部を破壊して液体を漏出させ、クロマトグラフィー担体に接触させる装置が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている、親和性バイオアッセイにおいて分析物を検出するデバイスは、
少なくとも1つの透明壁部と、
少なくとも1つのテストストリップを受けるように適合され、且つ前記テストストリップが前記透明壁部を通して目視可能であるように配置された、少なくとも1つのテスト凹部と、
流体サンプルを含有する容器を受けるように適合される少なくとも1つの空洞であって、前記空洞が前記少なくとも1つのテスト凹部と流体連通している、少なくとも1つの空洞と、
前記空洞内に容器を挿入すると、前記容器が穿孔され、且つ前記容器から前記サンプルの少なくとも一部が放出されて前記テスト凹部に到達するように、前記少なくとも1つの空洞に対応して配置された穿孔手段と
を含むことを特徴とする。
【0006】
また、特許文献2に開示されている完全密封標的核酸増幅物高速検査装置は、
内部構造及び外ボックスを含み、
内部構造には固定ボックス部分及び台座部分を含み、
固定ボックス部分には対応する孔があり、洗浄液パック及び増幅物を含有するPCR管を入れるのに用い、
台座部分には液パック突き刺し針を有する洗浄液収納ユニット、カッターを有する増幅物収納ユニット、密封仕切り、グラスファイバー・ペーパー、及びテストストリップ・透明窓を有するテストストリップ密封部分を含み、
外ボックスにはレバーカバー、固定ボックス圧迫部分、洗浄液パック圧迫部分及び透明窓を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の具体的な実施形態について図面を参照して以下に説明するが、本発明の範囲は図示する実施形態には限定されない。
【0018】
図1Aから
図4Cを参照して一実施形態の検査用デバイス1について説明する。
【0019】
本実施形態の検査用デバイス1は筐体10と蓋体20とを備える。筐体10と蓋体20を構成する材料は特に限定されず樹脂、ガラス等の材料を適宜用いることができる。本発明の検査用デバイスでは、本実施形態の検査用デバイス1が備える蓋体20は必須の構成ではないことは後述の通りである。
【0020】
筐体10は、クロマトグラフィー担体30を収容するための内部空間11を内部に形成する。
【0021】
筐体10はまた、内部空間11内に配置された、容器40,40を穿孔又は切開し液体Lを容器40,40から、クロマトグラフィー担体30に接触する位置に漏出させるための穿孔切開部13を備える。
【0022】
図示する例では、筐体10は、筐体上部材10Aと筐体下部材10Bとにより形成される。筐体下部材10Bは、筐体10の底壁部101と底壁部101の周縁から立設した側壁部102とを備える。筐体上部材10Aは、筐体10の上壁部103と、後述する支持部14と、蓋体装着部15とを備える。筐体上部材10Aの上壁部103において、筐体下部材10Bと組み合わせたときに筐体10の外面となる面を上面103aとし、筐体10の内面となる面を下面103bとする。筐体上部材10Aの上壁部103の周縁には、下面103bの側に突出した4つの係止爪部10A1が形成されており、筐体下部材10Bの側壁部102の外面102aには、係止爪部10A1と係合する4つの係止凹部10B1が形成されている。
【0023】
筐体下部材10Bにおける側壁部102の上端102bと、筐体上部材10Aにおける上壁部103の下面103bの周縁部103b1とは、筐体上部材10Aと筐体下部材10Bとを係合させたときに、互いに当接する。更に、上壁部103の下面103bには、周縁部103b1に沿うようにその内周側に隣接し、周縁部103b1よりも突出する突出部103b2が形成されている。筐体上部材10Aと筐体下部材10Bとを係合させたときに、筐体上部材10Aにおける上壁部103の下面103bの突出部103b2の外周面103b3と、筐体下部材10Bにおける側壁部102の内面102cのうち、上端102bに隣接する部分とが当接する。これらの構成により、筐体上部材10Aと筐体下部材10Bとを係合させて筐体10を形成した時に、側壁部102と上壁部103との境目からの液漏れを防ぐことができる。
【0024】
なお、図示する例では筐体10は2つの部材(筐体上部材10Aと筐体下部材10B)により形成されるが、これには限定されず、筐体10は1つの部材から形成されてもよいし、3以上の部材から形成されてもよい。
【0025】
内部空間11は、筐体10に内包される空間であり、図示する例では、孔12,12を通じて外部と連通されているが、他の部分は閉じた構造である。図示する実施形態では、内部空間11を囲う、底壁部101と、側壁部102と、上壁部103とが筐体10の本体部を構成する。
【0026】
支持部14には、クロマトグラフィーに用いられる液体Lを収容した1以上(図示する例では2つ)の容器40,40を支持し、後述する第1位置から第2位置まで容器40,40を案内する容器案内部として孔12,12が形成されている。孔12,12は、それぞれに挿通され支持された容器40,40を、後述する第1位置から第2位置に案内する案内孔として機能する。なお容器案内部は、容器を後述する第1位置から第2位置に案内することができる構造であればよく、支持部14に形成された孔12,12には限らない。孔12,12は、筐体10の内部空間11と外部とを連通する貫通孔である。孔12,12は、貫通方向に容器40,40を挿通し支持することができ、且つ、挿通された容器40,40を、穿孔切開部13に向けて案内することができればよく、その形状は特定の形状に限定されない。なお、
図1Aに示す支持部14の外面14aに描画された「S」は、液体Lとして試料液(サンプル)を収容した容器40を挿通する孔12であることの標識であり、「B」は、液体Lとして展開液(バッファー)を収容した容器40を挿通する孔12であることの標識である。
【0027】
筐体10の内部空間11はクロマトグラフィーの展開を行う場となる。内部空間11内に固相であるクロマトグラフィー担体30が設置される。内部空間11内において、クロマトグラフィー担体30の一部に液体Lが接触することで、クロマトグラフィー担体30中で液体Lが展開され、クロマトグラフィーが行われる。
【0028】
液体Lとしては、水等の溶媒中に検出対象物質を含む試料液、展開液、水等の溶媒中に標識物質を含む液等が例示できる。前記溶媒は典型的には水である。試料液としては、核酸増幅産物を含む試料液が例示できる。展開液としては、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、グッド緩衝液、SSC緩衝液等が例示できる。展開液はさらに界面活性剤を含有していてもよい。また、液体Lは、試料液と展開液、標識物質を含む液の1種以上を混合した混合液であってもよい。また、液体Lとして、発色試薬や色素を含む液体を使用してもよい。図面及び以下の説明では、複数の容器40に収容された液体及び内部空間11に放出された液体を全て液体Lとして表すが、複数の容器40に収容された液体Lは各々異なる組成の液体であってよい。また、試料液以外の液体Lを収容する容器40は、孔12に予め挿通されていても構わない。
【0029】
筐体10の内部空間11に設置するクロマトグラフィー担体30は、固相担体であればよく、樹脂、金属、多糖類、鉱物等からなるものを利用することができ、メンブレン、フィルム、不織布、プレート、ゲル等の形状とすることができる。図示する例では、クロマトグラフィー担体30は細長いメンブレン(ストリップ)であるがこの例には限定されない。好ましくは、クロマトグラフィー担体30は多孔質構造を有するものである。クロマトグラフィー担体30の具体例としては、例えば、紙、ニトロセルロースメンブレン、ポリエーテルスルフォンメンブレン、ナイロンメンブレン、乾燥させた各種ゲル(シリカゲル、アガロースゲル、デキストランゲル、ゼラチンゲル)、シリコン、ガラス、樹脂等が挙げられる。
【0030】
クロマトグラフィー担体30の一部には検出対象物質を捕捉するための捕捉用物質を配置することができる。例えば、検出対象物質が核酸を含む場合には、該核酸とハイブリダイズする核酸を捕捉用物質とすることができ、検出対象物質が抗原又は抗体を含む場合には、該抗原又は抗体と免疫学的に反応する抗体又は抗原を捕捉用物質とすることができる。
【0031】
検出対象物質は、クロマトグラフィー担体30上で目視検出できるものであることが好ましい。例えば、検出対象物質を目視検出が可能な標識物質により標識し、クロマトグラフィー担体30上で展開すれば、目視検出が可能である。目視検出が可能な標識物質としては、着色粒子、色素、蛍光物質等が挙げられる。「着色粒子」とは、金属(例えば、金、銀、銅、白金等)粒子、金属ナノロッド、金属ナノプレート、色素や蛍光物質を含むラテックス粒子、色素や蛍光物質を包含するシリカナノ粒子等が挙げられる。検出対象物質を、目視検出が可能な標識物質により標識する方法は特に限定されない。例えば、検出対象物質が核酸を含む場合には、該核酸とハイブリダイズする核酸が連結された標識物質を、検出対象物質と接触させることで標識物質により標識することができる。目視検出のためには、筐体10の外部から、クロマトグラフィー担体30が確認できるように、筐体10の、内部空間11を囲う壁部の少なくとも一部が可視光を透過する材料により形成されていることが好ましい。特に、筐体10の上壁部103のうち、少なくとも、クロマトグラフィー担体30が配置される部分と対向する部分103cが可視光を透過する材料により形成されていることが好ましい。
【0032】
本実施形態で用いるクロマトグラフィー担体30の構造を
図6に示す。この例では、クロマトグラフィー担体30は液体受容部31と、検出部32とを備える。液体受容部31は検出部32の一端の側に配置され、この部分に液体Lが供給される。検出部32は、検出対象物質が展開される部分である。検出部32の他端の側には吸収パッド33が配置される。液体受容部31と検出部32との間には標識物質を保持する標識物質保持部34が配置される。液体受容部31に供給された液体Lに検出対象物質が含まれるとき、標識物質保持部34を通過する際に検出対象物質が標識物質により標識されてから検出部32に移動する。ただし、検出対象物質が予め標識されている場合や、液体Lに標識物質が含まれている場合には、標識物質保持部34は必要なく、液体受容部31と検出部32とを隣接させる又は液体受容部31を省略することができる。検出部32には、検出対象物質を捕捉するための、上記の捕捉用物質が配置された捕捉領域321が形成されている。液体受容部31、標識物質保持部34、検出部32、吸収パッド33は、クロマトグラフィー担体30として利用可能な材料として上記の材料により構成することができる。これらは同一の部材より構成されていてもよいし、異なる部材より構成されていてもよい。液体受容部31、標識物質保持部34、検出部32、吸収パッド33は、図示するように基材35上に配置することができる。基材35は、例えば樹脂、金属、多糖類、鉱物等により構成することができる。基材35は部分的に又は全て省略することができる。例えば、液体受容部31の下部に該当する基材を部分的に又は全て省略することにより、液体受容部31の柔軟性を向上させ、容器40を穿孔切開部に向けて押し込む際の抵抗を低減することができる。柔軟性の高い基材を用いることでも同様の効果を得ることができる。クロマトグラフィー担体30は、
図6に示す構造を有するものには限定されず、目的とするクロマトグラフィーに応じて適当な構造のものを使用することができる。
【0033】
クロマトグラフィー担体30の他の例としては、
図7に示すような、液体受容部31、標識物質保持部34、吸収パッド33、基材35を備えず、検出部32のみからなるクロマトグラフィー担体30が挙げられる。また、図示しないが、検出部32とそれを支持する基材35のみからなるクロマトグラフィー担体30を用いることもできる。
【0034】
本実施形態では、筐体10の内部空間11内においてクロマトグラフィー担体30は、標識物質保持部34を備える場合には、液体受容部31が、容器40から漏出した液体Lと接触するが、検出部32及び吸収パッド33が、漏出した液体Lとは直接に接触しないように配置される。上記の通り、液体Lに標識物質が含まれている場合等では、クロマトグラフィー担体30から標識物質保持部34を省略することができる。また、上記の通り、検出部32のみからなるクロマトグラフィー担体30や、検出部32及び基材35のみからなるクロマトグラフィー担体30を用いることもできる。標識物質保持部34が省略されたクロマトグラフィー担体30や、
図7に示す検出部32のみからなるクロマトグラフィー担体30や、検出部32及び基材35のみからなるクロマトグラフィー担体30を用いる場合には、容器40から漏出した液体Lが、検出部32と直接接触するよう配置されていてもよい。
【0035】
以下の説明では、クロマトグラフィー担体30のうち、容器40から漏出した液体Lと直接接触する部分を液体接触部30Lとする。
【0036】
筐体10の内部空間11内には、底壁部101から内部空間11内に向けて立設された、クロマトグラフィー担体30が設置される担体設置部16が形成されている。担体設置部16は、クロマトグラフィー担体30を、筐体10の底壁部101と上壁部103との対向方向において、底壁部101と上壁部103との間であって上壁部103寄りの位置に、上壁部103の部分103cと対向するように設置できるよう構成されている。担体設置部16の上面16aに、クロマトグラフィー担体30の検出部32と吸収パッド33が配置される。一方で、液体接触部30Lは、筐体10の支持部14と穿孔切開部13との間に配置される。クロマトグラフィー担体30の検出部32と吸収パッド33は、担体設置部16の上面16aに接着剤や粘着テープにより固定されていてもよい。担体設置部16の上面16aは、穿孔切開部13により穿孔又は切開された容器40から漏出した液体Lが及ばない位置にあり、具体的には、筐体10を水平面上に設置したときに、内部空間11内の、液体Lが漏出される位置よりも高い位置にある。担体設置部16の上面16aは、クロマトグラフィー担体30の検出部32と吸収パッド33を含む部分に応じた平面視形状を有し、図示する例では長手方向と短手方向を有する形状を有する。担体設置部16は、上面16aを囲う位置に、クロマトグラフィー担体30の、上面16aに沿った方向への動きを規制し位置決めをする、複数の位置決め用突起を備える。位置決め用突起は、上面16aの短手方向の両側に配置された第1位置決め用突起16bと、上面16aの長手方向の一方の端に配置された第2位置決め用突起16cとを含む。
【0037】
筐体10の支持部14に形成された容器案内部である孔12の数は図示する例では2であるが、1であっても3以上であってもよく、目的とするクロマトグラフィーに用いられる、液体Lを収容した容器40の数に応じて設定することができる。例えば、液体Lとして、試料液と展開液を用いる場合は、孔12は2つ形成される。この場合、特に限定されないが、2つの孔12、12を、クロマトグラフィー担体30が内部空間11に配置される位置に対向する位置に、展開方向に沿って形成し、展開方向の下流側の孔12に試料液の入った容器40を、展開方向の上流側の孔12に展開液の入った容器40を挿通することが、検出部32に到達する検出対象物質の量が多くなるという点で好ましい。また、容器40の数が2以上の場合、各容器を容易に区別するために、各容器40が異なる形状や色調、模様を有していてもよく、各容器40に収容される液体Lが異なる色調を持つよう着色されていてもよい。異なる形状を有する2以上の容器40を用いる場合、各孔12も各容器形状に適合するよう異なる形状を有していてもよい。
【0038】
蓋体20は、筐体10に装着され、筐体10の支持部14を覆うよう構成されている。蓋体20は、支持部14と蓋体20との間に液体が存在する場合に、該液体が、通常の使用条件下では検査用デバイス1の外部に漏れ出ないように、支持部14を覆う。
【0039】
蓋体20は、本実施形態では、蓋主部21と、蓋主部21の外周縁を起点とし、蓋主部21の内面21aの側に延びる蓋周壁部22とから構成される。
【0040】
筐体10と蓋体20との少なくとも一方は、筐体10に蓋体20を案内する蓋案内部50を備える。
【0041】
本実施形態では、筐体10において、支持部14は上壁部103から外方に突出した位置に形成されており、支持部14と上壁部103とは、支持部14を囲い、蓋体20が装着される蓋体装着部15により接続されている。
【0042】
本実施形態では、蓋案内部50は、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aに形成された筐体側螺合部51と、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aに形成された、筐体側螺合部51と螺合可能な蓋体側螺合部52とから構成される。筐体側螺合部51と蓋体側螺合部52とにより、筐体10に装着された蓋体20を、筐体10の支持部14と、蓋体20とが対向する方向Xを軸として回動させたときに、蓋体20は蓋案内部50により案内されて、方向Xに沿って、筐体10の支持部14に向け移動する。
【0043】
蓋体20の回動をより容易にするために、図示するように蓋体20の蓋周壁部22の外面22bに、方向Xに沿って延在する複数の凹溝23aが周方向に間隔を空けて形成された滑り止め部23を形成することが好ましい。また、蓋体20の蓋主部21の外面21bには、回動方向を目視により識別可能な標識21cを形成することができる。
【0044】
蓋案内部50は、図示する螺合部には限定されず、他の態様であってもよい。例えば、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aと、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aに螺合部が形成されておらず、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aと、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aとが当接しながら、筐体10に対し蓋体20が摺動して案内される態様が他の態様として例示できる。また、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aと、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aに螺合部が形成されておらず、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aと、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aとが1以上のシール材を介して当接しながら、筐体10に対し蓋体20が案内される態様が他の態様として例示できる。シール材は、ゴム等の弾性変形可能な材料により形成することができる。各シール材は、筐体10の蓋体装着部15の外周面15aと、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22aの一方に固定されていてもよい。
【0045】
穿孔切開部13は、支持部14に支持された容器40,40を穿孔又は切開し液体Lを容器40,40から、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lに接触する位置に漏出させる。穿孔切開部13として、本実施形態では、
図2に示すような、容器40,40を切開する刃(穿孔切開部13の刃に特定した態様を指すとき「刃13」として示す)を用いる。
図2に示す刃13は、一部の辺上に刃先部131が形成され、他の辺上に基端部134が形成された板状の刃である。刃先部131の近傍で、二つの側面132,133がともに傾斜しながら刃先部131において交差する両刃であるが、これには限定されず、二つの側面132,133のうち一方のみが傾斜し他方が平坦なまま刃先部131において交差する片刃であってもよい。図示する実施形態では刃13は長方形の板状刃であるが、平行四辺形、台形、三角形、円形等の他の形状の板状の刃も好適に使用できる。また、穿孔切開部13は刃には限定されない。刃以外の穿孔切開部13としては、容器40,40を穿孔する針が例示できる。本実施形態では、複数の容器40,40を、1つの穿孔切開部13により切開するように構成されているが、これには限定されず、容器毎に対応した穿孔切開部13が設けられてもよい。穿孔切開部13を構成する材料は、容器40,40を穿孔又は切開可能な強度が付与できる材料であればよく、例えば鋼、ステンレス、アルミニウム等の金属や、セラミックス、樹脂であることができる。
【0046】
穿孔切開部13は、筐体10の内部空間11内に配置される。本実施形態では、穿孔切開部13は、筐体10の内部空間11内の、孔12,12と対向する壁部である底壁部101の部分に配置され固定されているがこの態様には限定されない。底壁部101の一部には、穿孔切開部13を固定するための固定部17が形成されている。本実施形態では、固定部17は、穿孔切開部である刃13の基端部134を、刃13の厚さ方向の両側から挟むように固定し、刃13の刃先部131が、内部空間11内において支持部14に向くように配置される。本実施形態では、底壁部101上において、固定部17は,担体設置部16と同一線上に並ぶように配置されている。本実施形態の検査用デバイス1を水平面上に載置したとき、固定部17の上面17aは、担体設置部16の上面16aよりも下方に位置する。担体設置部16と固定部17とは、底壁部101から内部空間11内に立設された接続部18により接続されており、担体設置部16の上面16aと、固定部17の上面17aとは、担体設置部16の上面16aから固定部17の上面17aに向けて傾斜した接続部18の上面18aにより接続されている。穿孔切開部13を固定する固定部17の、上面17aの短手方向の両側には更に第3位置決め用突起17dが形成されている。容器40、40が後述する第1位置から第2位置に案内されて移動するに伴い、固定部17に固定された穿孔切開部13と孔12,12との間に配置されたクロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lが、固定部17に向けて移動する際に、液体接触部30Lの動きを容器40、40の移動方向に制限する。
【0047】
容器40としては、クロマトグラフィーに用いられる液体Lを収容し、筐体10の孔12,12に挿通し支持することができ、且つ、穿孔切開部13により穿孔又は切開することができる容器を用いることができる。容器40は、典型的には、樹脂容器である。容器40としては、一方向に延び、一端が閉じ他端に開閉部を有する管状容器が好ましく、具体的には、図示するように、支持部14に支持されたときに、筐体10の外側の端となる外側端41に開閉部41aを有し、筐体10の内側の端となる内側端42が閉じた容器を用いることができる。図示するような外側端41に開閉部41aを備える容器40は、開閉部41aの周縁に、外側端41の平面視での輪郭400において外方に突出することとなるヒンジ部401と摘み部402とを備えることが一般的であり、このような容器40としては、核酸増幅反応や生化学試験に用いられるマイクロチューブが例示できる。
【0048】
支持部14の、孔12、12のそれぞれを囲う位置には、挿通され支持される容器40を各孔12の貫通方向に沿った軸心に向けて付勢し、容器40の各孔12内での姿勢を保持する弾性部材190が配置されている。弾性部材190は、具体的には、支持部14の、内部空間11の側の面である内面14bのうち各孔12の周囲の対向する一対の位置から、内部空間11の側に突出した一対の弾性支持片191,192である。一対の弾性支持片191,192は、一方の弾性支持片191の面191aと、他方の弾性支持片192の面192aとが対向するように配置されている。一方の弾性支持片191の面191aと、他方の弾性支持片192の面192aは、支持部14の内面14bからの方向Xに沿った距離が大きくなるほど近接するように形成されている。一対の弾性支持片191,192は、各孔12内に挿通された容器40を側方から挟み、各孔12の貫通方向に沿った軸心に向けて付勢して姿勢を保持する。一対の弾性支持片191,192は、弾性変形可能であって、容器40が穿孔切開部13に向け押し込まれるに伴い容器40の形状に追従して押し開かれるため、図示するように内側端42から外側端41にかけて幅が太くなる形状の容器40を用いた場合でも容器40の姿勢を安定させることができる。また、弾性支持片191,192が弾性変形可能な範囲内であれば、異なる幅の容器40の支持し安定させることができる。本実施形態では、一対の弾性支持片191,192を備える弾性部材190により、各孔12に挿通された容器40の姿勢を保持することにより、穿孔切開部13に対する容器40の位置を安定させることができ、容器40からの液体Lの漏出量を安定させることができる。
【0049】
続いて、
図3A〜
図4Cを参照して、支持部14の孔12,12に挿入され支持された容器40,40を、穿孔切開部13により穿孔又は切開する機構について説明する。
【0050】
図3A及び
図4Aは、液体Lを収容した容器40,40を、支持部14の孔12,12に挿入し支持した状態を示す。このとき、容器40,40の内側端42,42が、刃13の刃先部131と対向する。このように、容器を支持部に支持し、容器の一方の端部が穿孔切開部と対向した状態での容器の位置を「第1位置」とする。
【0051】
支持部14の孔12,12に支持し第1位置に位置させた容器40,40を、穿孔切開部13に向けて押し込み、容器40,40の内側端42,42が筐体10の固定部17に当接するまで完全に移動させた状態を、
図3B及び
図4Cに示す。このとき、容器40,40の内側端42,42の側から、刃13により容器40,40が切開される。このように、容器を支持部に支持し、容器案内部により案内して、穿孔切開部により穿孔又は切開されるまで移動させた状態での容器の位置を「第2位置」とする。
図3B及び
図4Cに示すように、本実施形態では、第2位置にある容器は、穿孔切開部以外の筐体の一部分に当接している。
【0052】
支持部14の孔12,12に支持された容器40,40が、第1位置から第2位置に案内される過程で、容器40,40は穿孔切開部13により穿孔又は切開されて、容器40,40に収容された液体Lが、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lに接触する位置に漏出する。
図4Bは、容器40,40が第1位置から第2位置に移動する途中の状態を模式的に示す。容器40,40には、穿孔切開部13により穿孔又は切開されて漏出口43,43が形成される。漏出口43,43が形成された容器40,40からは、収容された液体Lが漏出口43,43を介して内部空間11内に漏出し、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lだけでなく、その周辺の、穿孔切開部13、底壁部101(特に固定部17)を含む筐体10の一部分と接触する。
【0053】
本実施形態では更に、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lが、支持部14と穿孔切開部13との間に位置するように筐体10に収容されていることにより、容器40,40が、クロマトグラフィー担体30とともに、穿孔切開部13により穿孔又は切開されることを特徴としている。容器40,40が第1位置にあるとき、容器40,40の内側端42と、穿孔切開部13とが、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lを間に介して対向している。支持部14に支持された容器40,40が第1位置から第2位置に案内されて移動するとき、容器40,40は、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lとともに、穿孔切開部13により穿孔又は切開される。本実施形態によれば、容器40,40から漏出した液体Lが、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lに接触し浸透すること容易である。この特徴を備える検出用デバイス1は、容器40,40から漏出した液体Lをクロマトグラフィー担体30に効率的に接触させることが可能であるため好ましい。
【0054】
本実施形態では、
図3A及び
図4Aに示すように、容器40,40を、筐体10の支持部14に支持させ、第1位置に位置させた状態で、蓋体20を、筐体10の支持部14を囲う蓋体装着部15に装着する。このとき、筐体10の蓋体装着部15の外周面15a上の筐体側螺合部51と、蓋体20の蓋周壁部22の内周面22a上の蓋体側螺合部52とを部分的に螺合させる。これにより、筐体10の支持部14と、容器40,40の外側部分40a,40aとが蓋体20により覆われる。続いて、
図4Bに示すように、蓋体20を、筐体10の支持部14と、蓋体20とが対向する方向Xを軸として回動させたときに、蓋体20は蓋案内部50により案内されて、方向Xに沿って、筐体10の支持部14に向け移動する。この移動の過程で、蓋体20の蓋主部21が、容器40,40の外側端41と当接することで、容器40,40が、穿孔切開部13に向けて押し込まれて、
図3B及び
図4Cに示す第2位置に至る。
図4Bでは、蓋体20の回動によって容器40が方向Xからやや傾斜しながら穿孔切開部13に押し込まれる状態を模式的に示す。この作用により、容器40,40の、穿孔又は切開により形成された漏出口43が開かれるため、液体Lは効果的に漏出され、クロマトグラフィーの条件を安定させることができる。
【0055】
なお本発明の検査用デバイスは、本実施形態のような蓋体を備えていることは必須ではない。例えば,検査用デバイスが、蓋体を備えておらず、筐体の支持部に支持された容器を使用者が筐体の外側から指先、装置等を動作させることによる外力を用いて押し込むことで、容器が第1位置から第2位置に移動するように構成されていてもよい。
【0056】
本実施形態の検査用デバイス1はまた、筐体10の側面にあたる、側壁部102の外面102aの少なくとも一部に波状面102d,102dが形成されている。波状面102d,102dは、筐体10の底壁部101と上壁部103とが対向する方向に沿って延在する複数の溝102eが連続して形成された面である。側壁部102の外面102aに波状面102d,102dが形成されていることにより、使用者が検査用デバイス1を手先で取り扱う際に滑りを防止することができる。また、本実施形態の検査用デバイス1を複数用意し、筐体10の側壁部102の外面102aが接するように並べる際に、波状面102d同士を係合させることができる。波状面は凹凸面の一例であり、本実施形態の検査用デバイス1において、波状面102d,102dに代えて他の形状の凹凸面を形成してもよい。凹凸面は、一方向に延在する複数の溝が連続して形成された面であり、隣接する溝の間には平坦面が形成されていてもよい。凹凸面における前記複数の溝の各々の、延在方向に垂直な平面による断面の形状は特に限定されない。該断面の形状が曲線である場合が図示する波状面であるが、該断面の形状が矩形、U字形などの形状であってもよい。
【0057】
本発明の検査用デバイスは、筐体及び/又はクロマトグラフィー担体の、容器から漏出した液体が接触する表面が、水接触角90°以下の面を含むことを特徴とする。本発明において「水接触角」とは、水と物体の表面とが接する際の角度を意味する。水接触角の測定においては、測定対象の表面が水平になるよう静置された物体に対し、1μlの超純水を滴下し、水接触角を接触角計(KRUSS:MobileDrop)にて計測する。計測は、室温にて滴下後5分以内に完了するよう実施する。
【0058】
本実施形態において、筐体10において、容器40,40から漏出した液体Lが接触する表面を、液体接触面10Lとする。本実施形態では、上記の通り、支持部14に支持された容器40,40が、第1位置から第2位置に案内される過程で、容器40,40は穿孔切開部13により穿孔又は切開されて容器40,40に漏出口43,43が形成され、容器40,40に収容された液体Lが漏出口43,43を介して内部空間11内に漏出し、
図3B,
図4B、
図4Cに示すように、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lの表面30La,30Lb、及び、筐体10の液体接触面10Lに接触する。本実施形態において、筐体10の液体接触面10Lは、具体的には、穿孔切開部13の側面132,133、及び、底壁部101のうち穿孔切開部13と隣接する部分の表面(特に固定部17の上面17a及び側面17b、並びに、底壁部101の内壁面101aのうち固定部17の近傍領域101a1)を包含する。クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lの表面30La,30Lb、及び、筐体10の液体接触面10Lの少なくとも一部が、水接触角が90°以下の面を含む場合、漏出した液体Lは前記面を十分に濡らす。このため漏出した液体Lが、クロマトグラフィー担体30に接触して吸収され易い。具体的には、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lの表面30La,30Lbが、水接触角が90°以下の面を含む場合には、漏出した液体Lは、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lの表面30La,30Lbに直ちに吸収され易い。筐体10の液体接触面10Lが、水接触角が90°以下の面を含む場合には、漏出した液体Lは、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lに直ちに吸収されなくとも、筐体10の液体接触面10Lを濡らして留まるため、時間経過とともにクロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lに吸収され易い。
【0059】
図5は、筐体10及びクロマトグラフィー担体30の、容器40,40から漏出した液体が接触する表面が、水接触角が90°を超える面のみからなる以外は上記実施形態と同様の構成を有する比較例の検査用デバイス1’を用い、容器40,40を支持部14に支持させて第1位置から第2位置まで案内したときの状態を模式的に示す。容器40,40の漏出口43,43から漏出した液体Lは、クロマトグラフィー担体30の液体接触部30Lに吸収されず、筐体10の液体接触面10Lも濡らさず、液体Lは筐体10内で図示するような液滴を形成する。このため比較例の検査用デバイス1’では、クロマトグラフィー担体30と接触し吸収される液体Lの量は少なく、安定した検査が困難である。
【0060】
また、筐体10のうち穿孔切開部13の側面132,133が、水接触角が90°以下の面を含む態様では、
図3B、
図4B、
図4Cに示すように、穿孔切開部13により形成された容器40,40の漏出口43,43に穿孔切開部13が挿入された状態であっても、漏出口43,43から液体Lが円滑に漏出することができる。この結果、クロマトグラフィー担体30へ意図した量の液体Lが円滑に供給され得る。
【0061】
筐体及び/又はクロマトグラフィー担体の表面における、水接触角が90°以下の表面は、親水化処理により形成することが好ましい。親水化処理としては、プラズマ処理、フッ素ガス処理、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)等の親水性又は水溶性樹脂のコーティング、界面活性剤のコーティング、微細凹凸加工等のいずれか、またはそれらの組み合わせが挙げられる。また、筐体及び/又はクロマトグラフィー担体の、容器から漏出した液体が接触する表面を含む部分が、PVP、PVA等の親水性又は水溶性樹脂を含む材料により構成されていてもよい。特に、クロマトグラフィー担体の液体接触部が、PVP又はPVAを含む材料により構成されていていることが好ましい。
【実施例】
【0062】
図1Aから
図4Cに図示した構造の上記実施形態の検査用デバイス1を作成した。クロマトグラフィー担体30としては、
図6に示す構造の、基材35上に、液体受容部31、標識物質保持部34、検出部32、吸収パッド33が配置されたクロマトグラフィー担体30を用いた。液体受容部31の表面と、基材35の表面が、液体接触部30Lの表面30La,30Lbに該当する。刃13としては、金属製の刃13を用い、錆止め用撥水スプレーで処理していないものを「油膜なし」とし、処理したものを「油膜あり」とした。筐体10として、底壁部101と、側壁部102と、上壁部103とを含む本体部がポリカーボネート樹脂からなるものを用いた。
【0063】
検査用デバイス1の、油膜なしまたは油膜ありの刃13の側面(132又は133)、筐体10の固定部17(上面17a又は側面17b)、クロマトグラフィー担体30の液体受容部31、クロマトグラフィー担体30の基材35の表面の水接触角を測定した。水接触角の測定は、測定対象の表面が水平になるよう静置された物体に対し、1μlの超純水を滴下し、水接触角を接触角計(KRUSS:MobileDrop)にて計測した。計測は、室温にて滴下後5分以内に完了するよう実施した。水接触角の測定は3回行い以下の結果を得た。
【0064】
【表1】
0は液体が染み込むため
【0065】
刃13として、刃(油膜なし)を用いた上記実施形態の検査用デバイス1では、容器40から検体液が適切に漏出し、クロマトグラフィー担体30に吸収された。
【0066】
刃13として、刃(油膜あり)を用いた上記実施形態の検査用デバイス1では、容器40から検体液が適切に漏出しない場合があった。