(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962790
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ワーク搬送システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20211025BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
B25J9/06 D
H01L21/68 A
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-216580(P2017-216580)
(22)【出願日】2017年11月9日
(65)【公開番号】特開2019-84651(P2019-84651A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】猪股 徹也
【審査官】
樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/065747(WO,A1)
【文献】
特開2010−184333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/06
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを収納する複数のカセットと、
前記ワークを処理するワーク処理装置と、
ワークを前記複数のカセットに対してロード/アンロードする水平多関節型ロボットと、を有し、
前記水平多関節型ロボットは、基台と、前記基台に回転可能に接続する基台側リンクと、前記基台側リンクに連結するアーム部側リンクと、前記アーム部側リンクに回転自在に接続するアーム部と、前記アーム部に回転自在に接続してワークを保持するハンド部と、を備え、
前記基台側リンクと前記アーム部側リンクとは、前記アーム部側リンクと前記アーム部との連結軸の中心点の移動軌跡が所定の直線となるように規制するリンク機構を構成し、
前記複数のカセットは、前記所定の直線に平行に配置し、前記水平多関節型ロボットの作業領域を画定する境界の1辺を構成し、
前記ワーク処理装置は前記作業領域の前記境界のいずれかの位置に配置され、
前記基台に対する前記基台側リンクの回転中心を原点として、前記所定の直線に平行な相対する2方向の一方をX軸正方向とするXY直交座標系の各象限ごとに指定経由点が定められ、
前記水平多関節型ロボットは、前記ワークのロード/アンロードの対象であるステージの間で移動し、前記指定経由点を移動の際の経由点として使用し、
各象限の前記指定経由点が前記水平多関節型ロボットに固有のものとして、前記水平多関節型ロボットに予め記憶されている、ワーク搬送システム。
【請求項2】
前記指定経由点は、異なる象限の指定経由点間でのポイント・ツー・ポイント動作による移動において前記水平多関節型ロボットに干渉が生じないように、象限ごとに定められる、請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項3】
前記指定経由点は、当該指定経由点と前記水平多関節型ロボットの原点復帰位置との間でのポイント・ツー・ポイント動作による移動において前記水平多関節型ロボットに干渉が生じないように、象限ごとに定められる、請求項1または2に記載のワーク搬送システム。
【請求項4】
前記指定経由点は、象限ごとに、その象限内の任意のステージに対する待機/退避位置とその象限の指定経由点との間でのポイント・ツー・ポイント動作による移動において前記水平多関節型ロボットに干渉が生じないように定められる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のワーク搬送システム。
【請求項5】
前記原点から見てX軸正方向から一定の角度だけ反時計回り方向及び時計回り方向に回転した範囲にあるステージについて、第1象限の指定経由点及び第4象限の指定経由点の一方を選択して当該ステージについての前記経由点とし、
前記原点から見てX軸負方向から一定の角度だけ反時計回り方向及び時計回り方向に回転した範囲にあるステージについて、第2象限の指定経由点及び第3象限の指定経由点の一方を選択して当該ステージについての前記経由点とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のワーク搬送システム。
【請求項6】
前記作業領域の長手方向の中心線に対し、前記所定の直線が、前記複数のカセットの側あるいは前記複数のカセットから遠ざかる側のいずれかの側に偏って位置する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のワーク搬送システム。
【請求項7】
前記原点から見て前記中心線と前記XY直交座標系におけるY軸との交点のY座標が負となるように前記Y軸の正方向を定めたときに、
第1象限及び第2象限の指定経由点における前記水平多関節型ロボットの姿勢は、前記ハンド部がY軸正方向を向き、前記ハンド部と前記アーム部との連結位置からみて前記ハンド部の延びる方向がY軸に向かって傾いているものであり、
第3象限及び第4象限の指定経由点における前記水平多関節型ロボットの姿勢は、前記ハンド部と前記アーム部との間に開き角があり、前記ハンド部と前記アーム部との連結位置からみて前記ハンド部の延びる方向がY軸に向かって20°〜30°の範囲で傾いているものである、請求項6に記載のワーク搬送システム。
【請求項8】
ワークを収納する複数のカセットと、前記ワークを処理するワーク処理装置と、ワークを前記複数のカセットに対してロード/アンロードする水平多関節型ロボットと、を有し、
前記水平多関節型ロボットは、基台と、前記基台に回転可能に接続する基台側リンクと、前記基台側リンクに連結するアーム部側リンクと、前記アーム部側リンクに回転自在に接続するアーム部と、前記アーム部に回転自在に接続してワークを保持するハンド部と、を備えて前記ワークのロード/アンロードの対象であるステージの間で移動し、
前記基台側リンクと前記アーム部側リンクとは、前記アーム部側リンクと前記アーム部との連結軸の中心点の移動軌跡が所定の直線となるように規制するリンク機構を構成し、
前記複数のカセットは、前記所定の直線に平行に配置し、前記水平多関節型ロボットの作業領域を画定する境界の1辺を構成し、前記ワーク処理装置は前記作業領域の前記境界のいずれかの位置に配置されるワーク搬送システムの制御方法であって、
前記基台に対する前記基台側リンクの回転中心を原点として、前記所定の直線に平行な相対する2方向の一方をX軸正方向とするXY直交座標系の各象限ごとに指定経由点が定められ、
各象限の前記指定経由点が前記水平多関節型ロボットに固有のものとして、前記水平多関節型ロボットに予め設定され、
前記ワーク搬送システムにおける2つのステージの間での前記水平多関節型ロボットの移動の際に、前記指定経由点の1以上を経由するように前記水平多関節型ロボットを制御する、制御方法。
【請求項9】
前記指定経由点は、異なる象限の指定経由点間でのポイント・ツー・ポイント動作による移動において前記水平多関節型ロボットに干渉が生じないように、象限ごとに定められる、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記指定経由点は、当該指定経由点と前記水平多関節型ロボットの原点復帰位置との間でのポイント・ツー・ポイント動作による移動において前記水平多関節型ロボットに干渉が生じないように、象限ごとに定められる、請求項8または9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記指定経由点は、象限ごとに、その象限内の任意のステージに対する待機/退避位置とその象限の指定経由点との間でのポイント・ツー・ポイント動作による移動において前記水平多関節型ロボットに干渉が生じないように定められる、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項12】
前記原点から見てX軸正方向から一定の角度だけ反時計回り方向及び時計回り方向に回転した範囲にあるステージについて、第1象限の指定経由点及び第4象限の指定経由点の一方を選択して当該ステージについての経由点とし、
前記原点から見てX軸負方向から一定の角度だけ反時計回り方向及び時計回り方向に回転した範囲にあるステージについて、第2象限の指定経由点及び第3象限の指定経由点の一方を選択して当該ステージについての経由点とする、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項13】
前記作業領域の長手方向の中心線に対し、前記所定の直線が、前記複数のカセットの側あるいは前記複数のカセットから遠ざかる側のいずれかの側に偏って位置する、請求項8乃至12のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項14】
前記原点から見て前記中心線と前記XY直交座標系におけるY軸との交点のY座標が負となるように前記Y軸の正方向を定めたときに、
第1象限及び第2象限の指定経由点において、前記水平多関節型ロボットは、前記ハンド部がY軸正方向に向き、前記ハンド部と前記アーム部との連結位置からみて前記ハンド部の延びる方向がY軸に向かって傾いている姿勢をとり、
第3象限及び第4象限の指定経由点において、前記水平多関節型ロボットは、前記ハンド部と前記アーム部との間に開き角があり、前記ハンド部と前記アーム部との連結位置からみて前記ハンド部の延びる方向がY軸に向かって20°〜30°の範囲で傾いている姿勢をとる、請求項13に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節型ロボットを備えてワークを搬送するワーク搬送装置と、その制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造工程では、半導体ウエハなどのワークを、ワークを収納するカセットとワークに対して所定の処理を実行するワーク処理装置との間で搬送する必要がある。このとき複数のカセットに対してワークをロード/アンロードできることが必要とされており、そのために、複数のアームを互いに回転可能に連結するとともに、モータなどの回転力をアームに伝達して伸縮等の動作をさせるようにした多関節型ロボットが用いられている。ワークが収納される複数のカセットとワーク処理装置と多関節型ロボットとによって1つのワーク搬送システムが構成される。各カセットは、ワークを棚状に積載載置するものであり、これによって1つのカセットに複数のワークを収納できる。カセットの一例としては、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)スタンダードE47.1に規定される正面開口式カセット一体型搬送、保管箱であるFOUP(Front-Opening Unified Pod)などがある。ワーク搬送システムの構成の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたワーク搬送システムでは、複数のカセットを水平面内で1列に配置し、この複数のカセットの並びと対向する位置にワーク処理装置を配置し、カセットの並びとワーク処理装置とによって挟まれた細長い空間に水平多関節型ロボットを設置している。
【0003】
半導体製造プロセスの複雑化に伴って、ワーク搬送システムが対応すべきカセットの数が増加し、かつ、半導体製造装置自体の小型化に伴ってワーク搬送システムの設置スペースをできるだけ削減できることが求められるようになってきている。そのような状況下において、アームが周囲の壁面や機器に干渉しないようにしつつロボットにワークの搬送動作を行なわせる場合、ステージごとに、ティーチングなどにより複数の搬送経由点を設定する必要がある。ステージとは、ワークのロード/アンロードの対象のことであってカセットやワーク処理装置などを含めて総称するものであり、言い換えればワークの搬送元あるいは搬送先となる機器類のことである。例えば特許文献2には、ロボットのハンドの移動経路の軌道を制御するときに、経由点と目標点とを設定し、経由点を経て目標点にハンドを移動させることが開示している。搬送動作の特殊な例として原点復帰があるが、特許文献3には、確実な原点復帰を行なうために、原点位置を越える仮想位置を目標位置とし、その後、原点を目標位置とすることが開示されている。ティーチングなどで経由点を設定することに関連して特許文献4は、ロボットが2つ以上の目標位置を取り得る場合に、周辺機器からの入力信号に応じた軌道に分岐することを開示している。またティーチングによって複数の搬送経由点を設定する代わりに、演算によってステージ間の安全経路を割り出すこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5199117号公報
【特許文献2】特開昭63−301305号公報
【特許文献3】特開2009−148859号公報
【特許文献4】特開平8−106319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送経路を決定するためにステージごとにティーチング作業を行なうことは、それ自体が作業リソースを要することであるだけでなく、実際にロボットを動作させてみないと干渉の有無を確認できず、作業時間が増大してしまう。演算によって安全経路を割り出す場合には、複雑なプログラムとパラメータを必要するのでそれらの開発のためにリソースを必要とし、また、演算時間の無視できない、という課題がある。そして、どちらの手法を用いるとしても、ステージ間動作の経由点の数が多ければ多いほど、実際の搬送動作に要する時間も長くなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、複雑なプログラムによる演算を必要とせず、ティーチングで設定される最低限の経由点だけで安全な搬送経路を見出すことができるワーク搬送システムとその制御方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のワーク搬送システムは、ワークを収納する複数のカセットと、前記ワークを処理するワーク処理装置と、ワークを前記複数のカセットに対してロード/アンロードする水平多関節型ロボットと、を有し、前記水平多関節型ロボットは、基台と、前記基台に回転可能に接続する基台側リンクと、前記基台側リンクに連結するアーム部側リンクと、前記アーム部側リンクに回転自在に接続するアーム部と、前記アーム部に回転自在に接続してワークを保持するハンド部と、を備え、前記基台側リンクと前記アーム部側リンクとは、前記アーム部側リンクと前記アーム部との連結軸の中心点の移動軌跡が所定の直線となるように規制するリンク機構を構成し、前記複数のカセットは、前記所定の直線に平行に配置し、前記水平多関節型ロボットの作業領域を画定する境界の1辺を構成し、前記ワーク処理装置は前記作業領域の前記境界のいずれかの位置に配置され、前記基台に対する前記基台側リンクの回転中心を原点として、前記所定の直線に平行な相対する2方向の一方をX軸正方向とするXY直交座標系の各象限ごとに指定経由点が定められ、前記水平多関節型ロボットは、前記ワークのロード/アンロードの対象であるステージの間で移動し、前記指定経由点を移動の際の経由点として使用
し、各象限の前記指定経由点が前記水平多関節型ロボットに固有のものとして、前記水平多関節型ロボットに予め記憶されている。
【0008】
このようなワーク搬送システムでは、象限ごとの指定経由点をその象限における移動の始点として用いることができるので、その象限内の対象点に移動するときには指定経由点と対象点の間での干渉だけを考慮すればよくなり、搬送経路のティーチングや安全確認が容易になる。ある象限の対象点から他の象限に移動するときも、対象点が属する象限内の移動部分については、対象点と指定経由点との間での干渉だけを考慮すればよいことになり、ティーチングや安全確認が容易になる。
【0009】
本発明のワーク搬送システムでは、各象限の指定経由点が水平多関節型ロボットに固有のものとして、水平多関節型ロボットに予め、例えば出荷時に記憶されてい
る。このように構成すれば、指定経由点相互の移動についてはティーチング済みとして扱うことができて、ティーチングを行なうことなく各象限への移動命令だけ指定経由点への移動を行うことができる。これにより安全確認がより容易になる。
【0010】
本発明のワーク搬送システムの制御方法は、ワークを収納する複数のカセットと、前記ワークを処理するワーク処理装置と、ワークを前記複数のカセットに対してロード/アンロードする水平多関節型ロボットと、を有し、前記水平多関節型ロボットは、基台と、前記基台に回転可能に接続する基台側リンクと、前記基台側リンクに連結するアーム部側リンクと、前記アーム部側リンクに回転自在に接続するアーム部と、前記アーム部に回転自在に接続してワークを保持するハンド部と、を備えて前記ワークのロード/アンロードの対象であるステージの間で移動し、前記基台側リンクと前記アーム部側リンクとは、前記アーム部側リンクと前記アーム部との連結軸の中心点の移動軌跡が所定の直線となるように規制するリンク機構を構成し、前記複数のカセットは、前記所定の直線に平行に配置し、前記水平多関節型ロボットの作業領域を画定する境界の1辺を構成し、前記ワーク処理装置は前記作業領域の前記境界のいずれかの位置に配置されるワーク搬送システムの制御方法であって、前記基台に対する前記基台側リンクの回転中心を原点として、前記所定の直線に平行な相対する2方向の一方をX軸正方向とするXY直交座標系の各象限ごとに指定経由点が定められ、
各象限の前記指定経由点が前記水平多関節型ロボットに固有のものとして、前記水平多関節型ロボットに予め設定され、前記ワーク搬送システムにおける2つのステージの間での前記水平多関節型ロボットの移動の際に、前記指定経由点の1以上を経由するように前記水平多関節型ロボットを制御する。
【0011】
このような制御方法では、象限ごとの指定経由点をその象限における移動の始点として用いることができるので、その象限内の対象点に移動するときには指定経由点と対象点の間での干渉だけを考慮すればよくなり、搬送経路のティーチングや安全確認が容易になってワーク搬送システムも容易に制御できるようになる。ある象限の対象点から他の象限に移動するときも、対象点が属する象限内の移動部分については、対象点と指定経由点との間での干渉だけを考慮すればよいことになり、ティーチングや安全確認が容易になる。
【0012】
本発明において、指定経由点は、象限ごとに、例えば、
(1)異なる象限の指定経由点間でのポイント・ツー・ポイント(PTP;Point To Point)動作による移動において水平多関節型ロボットに干渉が生じない、
(2)指定経由点と原点復帰位置との間でのPTP動作による移動において水平多関節型ロボットに干渉が生じない、
(3)その象限内の任意のステージに対する待機/退避位置とその象限の指定経由点との間でのPTP動作による移動において水平多関節型ロボットに干渉が生じない、
の3条件の全てを満たすように設定することが好ましいが、ワーク搬送システムを構成する各部の構造やレイアウト、事情によっては、1つまたは2つの条件を満たさなくてもある程度の効果は期待できる。条件(1)を満たす場合には、指定経由点間において、経由点の数が最小であってかつ干渉が生じない安全なPTP動作を保障でき、条件(2)を満たす場合には、指定経由点と原点復帰位置との間において、経由点の数が最小であってかつ干渉が生じない安全なPTP動作を保障でき、条件(3)を満たす場合には、任意のステージに対する待機/退避位置と指定経由点との間において、経由点の数が最小であってかつ干渉が生じない安全なPTP動作を保障できる。条件(1)〜(3)を満たす指定経由点であれば、その満たしている条件に対応する区間では安全なPTP動作が保障されるので、ティーチングとしてはPTP動作指令を入力するだけでよく、また干渉の発生の有無の確認作業を省略できる。条件(1)〜(3)の2以上を満たすようにすれば、その分、安全なPTP動作が保障される区間が増えるので、ティーチングや安全確認がより容易になる。
【0013】
本発明では、原点から見てX軸正方向から一定の角度だけ反時計回り方向及び時計回り方向に回転した範囲にあるステージについて、第1象限の指定経由点及び第4象限の指定経由点の一方を選択してそのステージについての経由点とし、原点から見てX軸負方向から一定の角度だけ反時計回り方向及び時計回り方向に回転した範囲にあるステージについて、第2象限の指定経由点及び第3象限の指定経由点の一方を選択してそのステージについての経由点とすることができる。このように構成すれば、作業領域の長手方向の端部に近い領域において、アーム部とハンド部との間の回転角に関する機構的な制約などがある場合においてもそのような制約を回避して、適切な搬送経路を最小限の設定点数で容易に得ることができるようになる。
【0014】
本発明では、作業領域の長手方向の中心線に対し、所定の直線が、複数のカセットの側あるいは複数のカセットから遠ざかる側のいずれかの側に偏って位置するようにすることが好ましい。このように構成することによって、アーム部とアーム部側リンクとの連結部の動く範囲が、幅が狭い作業領域の一方に偏ることなり、アーム部の回転に伴ってアーム部やハンド部が周囲と干渉することが起こりにくくなり、ハンド部やアーム部の適切な折りたたみ状態を維持するように指定経由点を設定することができるようになる。
【0015】
本発明において、原点から見て作業領域の長手方向中心線とXY直交座標系におけるY軸との交点のY座標が負となるようにY軸の正方向を定めたとして、各象限における水平多関節型ロボットの姿勢は、以下のようなものとすることができる。第1象限及び第2象限の指定経由点では、ハンド部がY軸正方向を向き、ハンド部とアーム部との連結位置からみてハンド部の延びる方向がY軸に向かって傾いている。第3象限及び第4象限の指定経由点では、ハンド部とアーム部との間に開き角があり、ハンド部とアーム部との連結位置からみてハンド部の延びる方向がY軸に向かって20°〜30°の範囲で傾いている。各指定経由点での姿勢をこのようなものとすることによって、干渉の発生を防ぎつつ指定経由点からの移動時間をできるだけ短くすることが可能になる。なお、第1象限の指定経由点での姿勢と第2象限の指定経由点での姿勢は、通常は、Y軸に対して対称となるように設定される。また、第3象限の指定経由点での姿勢と第4象限の指定経由点での姿勢も、通常は、Y軸に対して対称となるように設定される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワーク搬送システムにおいて、複雑なプログラムによる演算を必要とせず、ティーチングで設定される最低限の経由点だけで安全な搬送経路を見出すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の一形態のワーク搬送システムを示す平面図である。
【
図2】
図1のII−II線に沿った多関節型ロボットの概略断面図である。
【
図3】各指定経由点とその指定経由点での姿勢とを説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の一形態のワーク搬送システムを示している。このワーク搬送システムは、多関節型ロボット1と、それぞれがワーク21を収納する複数のカセット20と、ワーク21に対する処理を実行するワーク処理装置30とを備えている。複数のカセット20は1方向に並んで配置しており、ワーク処理装置30は、カセット20の並びに対向するように配置している。複数のカセット20の並びとワーク処理装置30との間の細長い長方形の領域は、多関節型ロボット1がハンドやアームなどを動かすことができる作業領域40である。多関節型ロボット1は、作業領域40内に設置され、そのリンクやアーム、ハンドを動かすことによって、カセット20の相互間やカセット20とワーク処理装置30とに間でワーク21を搬送することができる。図示したものでは4個のカセット20が設けられている(すなわち4FOUP)が、カセット20の数は4に限定されるものではない。
【0019】
次に、本実施形態で用いる多関節型ロボット1について説明する。本実施形態では、特許文献1に記載された3リンク型の水平多関節型ロボットを多関節型ロボット1として使用する。多関節型ロボット1は、カセット20の相互間やカセット20とワーク処理装置30との間でワーク21を搬送するものである。搬送に伴っては、ワーク21をカセット20やワーク処理装置30に対して搬入/搬出する、すなわちロード/アンロードする必要がある。ここではカセット20として例えばFOUPなどの正面開口式のものを用いるので、多関節型ロボット1がワーク21のロード/アンロードを行なう方向は、カセット20の並び方向に対して直交する方向となる。
【0020】
多関節型ロボット1は、ワーク21を保持するハンド部7と、ハンド部7を回転可能に保持するアーム部6と、アーム部6の基端側におけるアーム関節部J1を回転可能に保持するとともに、アーム関節部J1の移動軌跡がカセット20の並び方向とほぼ平行の直線となるように動作するリンク機構3と、リンク機構3の基端側が回転可能に支持された基台2と、を有している。リンク機構3は、基台2側に位置して基台2に回転可能に保持される基台側リンク4と、アーム部6側に位置するアーム部側リンク5とを備え、両方のリンク4,5はリンク関節部J2によって互いに回転可能に連結されている。
【0021】
図2は、
図1のII−II線での断面図であり、多関節型ロボット1をさらに詳しく示している。基台2は、昇降モータ(図示せず)によって駆動されて上下方向に昇降する昇降筒8を備えている。基台側リンク4は、昇降筒8に連結され、昇降筒8に内蔵されたリンク機構モータ8aによって回転可能に保持されており、昇降筒8の昇降に伴って基台2に対して昇降可能となっている。基台側リンク4には、基台側プーリ4a、アーム部側プーリ4b及びベルト4cが内蔵されており、ベルト4cは基台側プーリ4aとアーム部側プーリ4bの間で架けわたされている。基台側プーリ4aとアーム部側プーリ4bとの径の比は2:1となっている。アーム部側プーリ4bはアーム部側リンク5に連結されており、基台側リンク4が基台側プーリ4aの回転中心を中心として回転したとき、基台側プーリ4aとアーム部側プーリ4bとの回転角度比、すなわち基台側リンク4とアーム部側リンク5との回転角度比は1:2となるように構成されている。さらに、基台側リンク4とアーム部側リンク5の長さは等しい。その結果、リンク機構3は、アーム部側リンク5とアーム部6とを回転可能に連結する連結軸の中心点(アーム関節部J1)の移動軌跡が、所定の直線上に規制されることになる。図では、この所定の直線を直線Qで示している。アーム部6は、アーム部側リンク5の先端に連結されており、アーム部側リンク5に内蔵されたアーム部モータ51によって回転可能に保持されている。なお、
図2では、説明の便宜上、アーム部モータ51をアーム部側リンク5に内蔵させているが、アーム部モータ51の設置場所はこれに限られず、例えば、アーム部6にアーム部モータ51を内蔵してもよい。ハンド部7は、アーム部6の先端に連結され、アーム部6に内蔵されたフレームモータ6aによって回転可能に保持されている。ハンド部7のアーム部6に対する連結中心、すなわちハンド部7の回転中心をJ3とする。
【0022】
本実施形態において、多関節型ロボット1のリンク機構3の基台2の位置、すなわち基台2に回転可能に保持された基台側リンク4の回転中心J0と、リンク機構3における回転中心位置であるアーム関節部J1は、ワーク処理装置30と4個のカセット20との中間位置よりもカセット20の並びの側に長さPだけ偏った位置にある。ワーク処理装置30と4個のカセット20との中間位置は、作業領域40の長手方向の中心線Lであるとも言える。そして、リンク機構3の駆動に伴って、この偏った位置とは反対側に、リンク関節部J2が屈折して突出するようになっている。したがって、作業領域40の一方の長辺に沿って配置されるカセット20の数を多くした場合において、アーム部6やリンク機構3の各部の長さを長くしたときであっても、リンク機構3のリンク関節部J2がワーク処理装置30やカセット20と接触するのを防ぐことができる。その結果、ワーク搬送システム全体として大型化してしまうのを防ぐことができ、ひいては省スペース化を図ることができる。ここでは、基台側リンク4の回転中心J0とアーム関節部J1とが中間位置(作業領域40の中心線L)よりもカセット20の並びの側に偏った位置にあることとしたが、反対に、回転中心J0及びアーム関節部J1が中間位置よりもワーク処理装置30の側に偏った位置にあることとしてもよい。その場合、アーム関節部J1の移動軌跡は、ワーク処理装置30の側に偏った位置となり、リンク関節部J2は、中間位置よりもカセット20の側に屈折して突出するようになる。
【0023】
本実施形態のワーク搬送システムにおいて、多関節型ロボット1が例えばカセット20やワーク処理装置30に対してワーク21をロード/アンロードする際の動作は、基本的には特許文献1に記載されたものと同じである。以下の説明において、ワーク21のロード/アンロードの対象であるカセット20やワーク処理装置30などのことをステージと呼ぶ。ワーク21をステージにロードする際には、作業領域40においてステージの正面となる位置(待機/退避位置)に、ハンド部7に載置した状態でワーク21を搬送する。待機位置に搬送した状態においてハンド部7が、ステージにワーク21をロードする方向に対して平行に延びるようにする。そしてロードする方向にハンド部7が動くようにして、ワーク21をロードする。その後、ロードする方向とは反対方向となるようにハンド部7を動かす。ステージからワーク21をアンロードするときの処理も、ロードするときの処理と同様に行なわれる。
【0024】
以上の説明では、ワーク処理装置30は複数のカセット20の並びと対向する位置に配置されているとしたが、ワーク処理装置30の位置はこれに限られるものではなく、作業領域40を取り囲む任意の場所にワーク処理装置30を配置することができる。例えば、アーム関節部J1の移動軌跡を延長した直線上にワーク処理装置30を配置することができる。また、複数のカセット20を並んで配置すると説明したが、ロード/アンロードに際しての待機/退避位置が定義されるのであれば、カセット20以外に、例えばワーク21を加工する加工装置などを配置することができる。これらの加工装置などもステージに該当する。
【0025】
カセット20の数が増えたり、ワーク処理装置30の配置が複雑になったりすると、ワーク21の搬送における搬送元のステージと搬送先のステージとの組み合わせで表される搬送経路の数が爆発的に増大する。その一方で、多関節型ロボット1が配置されアーム部6やハンド部7が移動し回転することができる作業領域40のスペースを小さくすることが求められ、その結果、アーム部6やハンド部7が周囲の機器類と衝突しないような搬送経路を決定するためのティーチング作業に時間がかかるようになってきている。そこで、迅速かつ簡便に個々の搬送経路を決定できるようにする必要がある。上述したようにワーク21の搬出元や搬入先の機器すなわちステージがなんであれ、そのステージにワーク21をロード/アンロードする際の待機/退避位置は定義されている。すると、搬送経路の決定では、ステージとそのステージの待機/退避位置の間の動作軌跡と、2つのステージの待機/退避位置の相互間での多関節型ロボット1の動作軌跡を定めればよいことになる。本実施形態において経由点の数が少ない搬送経路の決定は、細長い長方形の作業領域40内で2つのステージのそれぞれの待機/退避位置が与えられたときに、その間の経由点をできるだけ少なくする、という問題に帰着する。当然のことながら、決定される搬送経路では、多関節型ロボット1のアーム部6やハンド部7が周辺の物体(カセット20やワーク処理装置30)に衝突しないようにしなければならず、このために、アーム部6やハンド部7が作業領域40の境界を越えたり触れたりしないようにするという条件を満たせばよいことになる。なおここでは作業領域40は細長い長方形であると説明したが、多関節型ロボット1のアーム関節部J1の移動軌跡の方向に沿って延びる細長い領域であれば、作業領域40は必ずしも長方形である必要はない。長方形の一部が変形したような形状の作業領域40であってもよい。特に、作業領域40の長手方向の端部は、例えば円弧のような形状であってもよい。
【0026】
そこで本実施形態では、多関節型ロボット1の基台側リンク4の回転中心J0を原点とし、作業領域40の長辺に平行な方向をX軸正方向とする、XY直交座標系を考え、このXY直交座標系における各象限に着目する。このとき、原点からX軸の両端側に向かう2方向のうちのどちらをX軸正方向としても構わない。そして、象限ごとに指定経由点と、その指定経由点における多関節型ロボット1の姿勢とを定める。図示したものでは、回転中心J0やアーム関節部J1の移動軌跡が作業領域50の長手方向の中心線Lよりもカセット20の並びに偏って配置しているものとして、回転中心J0からカセット20の並びに向かう方向をY軸の正方向であるものとしている。回転中心J0やアーム関節部J1の移動軌跡が作業領域50の長手方向の中心線Lよりもカセット20の並びから遠ざかる方向に偏っている場合には、そのカセット20の並びから遠ざかる方向をY軸の正方向と定めればよい。
図3において、符号60は、多関節型ロボット1の原点復帰位置を示している。原点復帰位置では、基台側リンク4、アーム部側リンク5、アーム部6及びハンド部7が相互に重なり合い、この重なり合ったものが基台側リンク4の回転中心J0から−Y方向に向くように整列する。
【0027】
指定経由点は、搬送経路のティーチングの際に経由点の数をできる少なくすることを目的として導入されるものである。この象限ごとに設定される指定経由点は、
(1)多関節型ロボット1が周囲と干渉することなく、異なる象限の指定経由点の間での搬送をPTP(ポイント・ツー・ポイント)動作で行うことができる、
(2)多関節型ロボット1が周囲と干渉することなく、その指定経由点と原点復帰位置との間の搬送もPTP動作で行うことができる、
(3)多関節型ロボット1が周囲と干渉することなく、対応する象限内の任意のステージの待機/退避位置とその指定経由点との間の搬送もPTP動作で行うことができる、
という条件の少なくとも1つを満たすように定められる。
図3では、白抜きの双方向矢印により、指定経由点の相互間、あるいは指定経由点と原点復帰位置との間でPTP動作を行なえることを示している。
【0028】
本実施形態で用いるような、リンク先端(ここではアーム関節部J1)が所定の直線に対して平行にしか動かないように規制され、そのリンク先端の先にアーム部6とハンド部7とがこの順でそれぞれ回転可能に取り付けられている水平多関節型ロボットでは、上記の条件(1)〜(3)を同時に満たす指定経由点が象限ごとに必ず存在する。上記の条件(1)〜(3)は、その条件が満たされればPTP動作が可能であるというものであるから、搬送経路のティーチングに際し、その条件に対応する区間はPTP動作が可能ということになるので、少なくともその区間については経由点の数を最小にすることができる。また、象限を定める座標系は基台側リンク4の回転中心J0と上述した所定の直線とによって定まることから、多関節型ロボット1のリンク機構3やアーム部6、ハンド部7の長さのみに応じて指定経由点を定めることができることになる。このことは、多関節型ロボット1の出荷時に指定経由点を設定できることになり、多関節型ロボット1の据付場所での調整作業を容易にする。以下の説明では、指定経由点は、上記の条件(1)〜(3)を同時に満たすものとする。
【0029】
以下、各象限の指定経由点について詳しく説明する。符号61は、第1象限の指定経由点を説明するものであり、この第1象限の指定経由点は、図示する角度範囲θ1の中にあるステージの待機/退避位置を対象とするものである。角度範囲θ1は、基台側リンク4の回転中心J0から見てX軸正方向から少し時計回り方向に回転した位置からY軸正方向までの範囲である。第1の象限の指定経由点の姿勢では、ハンド部7は、Y軸正方向を向き、Y軸と平行であるかY軸から反時計回り方向に若干傾いている。符号62は、第2象限の指定経由点を示している。第2象限の指定経由点は、角度範囲θ2の中にあるステージの待機/退避位置を対象とするものであって、Y軸に対し、第1象限の指定経由点と基本的には対称となっている。ただし、レイアウトやステージの配置が左右対称ではない装置の場合、あるいは、X軸に沿う方向での作業領域40の中心が原点位置とは一致しないような場合には、必ずしもY軸対称である必要はなく、第1象限と第2象限の指定経由点はそれぞれ独自の姿勢をとってもよい。
【0030】
符号63は、第3象限の指定経由点を示している。第3象限の指定経由点は、角度範囲θ3の中にあるステージの待機/退避位置を対象とするものである。角度範囲θ3は、基台側リンク4の回転中心J0から見て、X軸負方向から少し時計回りに回転した位置からY軸負方向までの範囲である。第3象限の指定経由点では、第1象限の場合に比べ、基台側リンク4とアーム部側リンク5との間の開き角が少し大きくなっている。ハンド部7をアーム部6に重ねるようにした場合、いずれかのステージに移動する際にハンド部7を開くように回転させる必要があるが、アーム部6がX軸となす角が第1象限の場合よりも小さいので、ハンド部7の回転に要する時間が長くなる。そこで第3象限の指定経由点では、ハンド部7の回転中心J3を挟んでアーム部6とハンド部7との間に開き角が形成されるようにする。ハンド部7は、アーム部6とハンド部7がなす角が鋭角であって、かつ、Y軸に対して例えば20〜30°程度傾くようにする。符号64は、第4象限の指定経由点を示している。第4象限の指定経由点は、角度範囲θ4の中にあるステージの待機/退避位置を対象とするものであって、Y軸に対し、第3象限の指定経由点と対称となっている。ただし、レイアウトやステージの配置が左右対称ではない装置の場合、あるいは、X軸に沿う方向での作業領域40の中心が原点位置とは一致しないような場合には、必ずしもY軸対称である必要はなく、第3象限と第4象限の指定経由点はそれぞれ独自の姿勢をとってもよい。
【0031】
ここで第1象限の指定経由点が対象とする角度範囲θ1と第4象限の指定経由点が対象とする角度範囲θ4に着目すると、作業領域40の長手方向の端部となる位置で重なり合っている。この重なり合っている位置に待機/退避位置を有するステージからのあるいはそのようなステージへの搬送経路を考える場合、例えば、前後にどのような搬送を行なう予定であるかに応じて、対象範囲が重複する指定経由点のうち多関節型ロボット1の動きに無駄が生じない方の指定経由点を選択すればよい。多関節型ロボット1においてハンド部7はアーム部6に対する回転中心J3の周りを無制限に回転できるのではなく、アーム部6に重なった状態から例えば±270°といった範囲でしか回転できないことが多い。したがって、この回転角度の制限に伴って、2つの指定経由点のうちの一方とすべきことが自動的に決まる場合もある。同様の角度範囲の重複は、第2象限の指定経由点が対象とする角度範囲θ2と第3象限の指定経由点が対象とする角度範囲θ3の間にもある。この場合も、第1象限と第4象限との間で角度範囲が重複したときの処理と同様の処理を行なえばよい。
【0032】
作業領域40の長手方向の中央部分、例えばY軸の位置の近傍にステージ扉などの障害物がある場合には、指定経由点を規定するパラメータに高さ情報(例えば、多関節型ロボット1の昇降筒8の昇降量)を設定することにより、象限間での移動に際して多関節型ロボット1にこの障害物を避けるような動きをさせることが可能になる。
【0033】
次に、本実施形態のワーク搬送システムにおける搬送経路のティーチングについて説明する。作業領域40に隣接して設けられるカセット20やワーク処理装置30などのステージに対してワーク21をロード/アンロードし、そのワークをステージ間で搬送する場合のティーチングについて説明する。本実施形態において各象限ごとに設定される指定経由点は、上述したように、
(1)多関節型ロボット1が周囲と干渉することなく、異なる象限の指定経由点の間での搬送をPTP(ポイント・ツー・ポイント)動作で行うことができる、
(2)多関節型ロボット1が周囲と干渉することなく、その指定経由点と原点復帰位置との間の搬送もPTP動作で行うことができる、
(3)多関節型ロボット1が周囲と干渉することなく、対応する象限内の任意のステージの待機/退避位置とその指定経由点との間の搬送もPTP動作で行うことができる、
という条件を満たす。搬送元のステージから搬送先のステージへの搬送を考えると、多関節型ロボット1は、まず、搬送元のステージの待機/退避位置まで移動し、搬送元のステージからワーク21をアンロードしてそのステージの待機/退避位置まで戻り、次に、ワーク21を保持したまま搬送先のステージの待機/退避位置に移動し、搬送先のステージにワーク21をロードし、最後に、搬送先のステージの待機/退避位置まで戻る、という動きをすることになる。搬送を開始する前の多関節型ロボット1の位置は、原点復帰位置か前回の搬送での搬送先のステージの待機/退避位置であると考えられる。
【0034】
まず、搬送元のステージと搬送先のステージとが異なる象限に属する場合を考える。搬送元のステージの待機/退避位置から搬送元のステージが属する象限の指定経由点に移動し、続いて搬送先のステージが属する象限の指定経由点に移動し、その後、搬送先のステージの待機/退避位置に移動することとすると、搬送元のステージの待機/退避位置から搬送先のステージの待機/退避位置への移動は、2つの指定経由点を経由するPTP動作だけで実行できることになる。ステージとそのステージの待機/退避位置との間でのワーク21のロード/アンロードの動きについては、多関節型ロボット1が周辺と干渉しないように個別にティーチングを行なう必要はあるが、ステージの待機/退避位置間の移動については、経由点を最小限に抑えたPTP動作でのティーチングが可能になる。指定経由点の考えを導入しない従来のやり方では、試行錯誤によって多数の経由点を設定する必要があったので、象限ごとに指定経由点を定めることによって、本実施形態によれば、ティーチングや安全確認が大幅に容易になることになる。搬送開始前に、原点復帰位置あるいは前回の搬送終了位置である待機/退避位置から搬送元のステージの待機/退避位置に移動する必要があるが、これも、指定経由点を経由することによってPTP動作で実現することができる。搬送終了後に原点復帰位置に戻ることとした場合も同様である。
【0035】
搬送元と搬送先のステージが同一象限にあるときは、搬送元のステージの待機/退避位置から搬送先のステージの待機/退避位置への移動は、指定経由点を経由しないでPTP動作だけで実行できる。したがってこの場合も、ステージの待機/退避位置間の移動については、経由点を最小限に抑えたPTP動作でのティーチングが可能になる。
【0036】
[本実施形態の効果]
以上説明したように本実施形態のワーク搬送システムでは、ワーク21の搬送経路を設定する際に、ステージの待機/退避位置からそのステージに対するロード/アンロードの動作については、個別に水平多関節型ロボット1の搬送経路の設定を行うことが必要となるものの、ワーク21の搬送におけるその他の移動については、最低限の数の指定経由点を経由するPTP動作で実現できることになる。したがって、本実施形態によれば、全体としてティーチングの作業量を軽減することができ、また、経由点の数が少なくて高速搬送を実現できる搬送経路を設定することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…多関節型ロボット、2…基台、3…リンク機構、4…基台側リンク、5…アーム部側リンク、6…アーム部、7…ハンド部、20…カセット、21…ワーク、30…ワーク処理装置、40…作業領域。