【実施例】
【0010】
図1は、実施例に係るモニタ部の構成例を説明するための図である。モニタ部1は、半導体装置100に内蔵されたオンチップモニタとして構成される。モニタ部1は、第1モニタ回路(MON1)11と、第2モニタ回路(MON2)12と、オンチップ補正回路(CAL)13と、不揮発性メモリ(NVM)14と、オンチップ確認回路(CHK)15と、を有する。
【0011】
第1モニタ回路11は、半導体装置100の半導体チップの温度または電圧が正常動作範囲内であることを監視するオンチップモニタ回路である。第1モニタ回路11の出力信号(第1情報)11oは、監視結果を示す出力値(第1情報)である。第2モニタ回路12は、第1モニタ回路11の動作が正常か異常かを監視するために設けられたオンチップモニタ回路である。
【0012】
オンチップ補正回路13は、第2モニタ回路12の出力値(第2情報)12aと第1モニタ回路11の出力値11a(第1情報)とに基づいて、第2モニタ回路12の出力値12b(第3情報)の温度または電圧の絶対値を補正乃至校正するための補正情報乃至校正情報13aを生成する。オンチップ補正回路13の生成した校正情報13aは、不揮発性メモリ(NVM)14に格納される。不揮発性メモリ(NVM)14に格納された校正情報13aは、校正情報14aとして第2モニタ回路12に送付され、第2モニタ回路12の出力値12aの温度または電圧の絶対値の補正乃至校正に利用される。
【0013】
オンチップ確認回路(CHK)15は、第1モニタ回路11の出力値11b(第1情報)と第2モニタ回路12の出力値12b(第3情報)とを受け、第2モニタ回路12の出力値12b(第3情報)に基づいて、第1モニタ回路11の出力値11b(第1情報)が正常か否を確認するために設けられている。オンチップ確認回路(CHK)15は、第1モニタ回路11の正常動作の保証を行う。オンチップ確認回路(CHK)15の出力信号15oは、第1モニタ回路11が正常動作と判断された場合、第1モニタ回路11が正常動作であることを示す値、例えば、ロウレベルまたはハイレベルとされる。一方、第1モニタ回路11または第2モニタ回路12の一方または両方が異常動作であると判断された場合、出力信号15oは、第1モニタ回路11または第2モニタ回路12が異常であることを示す値、例えば、ハイレベルまたはロウレベル、とされる。
【0014】
第1モニタ回路11と第2モニタ回路12とは、好ましくは、異なる原理で、温度または電圧の情報を生成する。これにより、同じモニタ回路の単なる2重化による共通原因故障(common cause failure)の内在を防止することが可能となる。たとえば、第1モニタ回路11がバンドキャップ回路を用いた温度モニタまたは温度センサの場合、第2モニタ回路12はリーク電流を用いた温度モニタまたは温度センサとすることが出来る。また、たとえば、第1モニタ回路11がアナログデジタル変換回路を用いた電圧モニタまたは電圧センサの場合、第2モニタ回路12は電圧依存性を有するリングオシレータを用いた電圧モニタまたは電圧センサとすることが出来る。
【0015】
オンチップ補正回路13による校正情報13aの生成は、好ましくは、半導体装置100が出荷され、半導体装置100が半導体システムに実装された後に実施される。このとき得られる校正情報13aは、半導体装置100の出荷後に半導体システムに実装された不揮発性メモリ(NVM)14に格納することが出来る。不揮発性メモリ(NVM)14は、半導体装置100に内蔵されない、オフチップの不揮発記憶回路と見做すことが出来る。なお、不揮発性メモリ(NVM)14は、半導体装置100に内蔵された、フラッシュメモリ等のオンチップの不揮発記憶回路とすることも可能である。
【0016】
図2は、実施例に係る第1モニタ回路と第2モニタ回路12とを説明する図である。第1モニタ回路11は、高精度に温度または電圧をモニタできるように、半導体装置100の設計時及び半導体装置100の出荷前テスト時に調整されている。すなわち、第1モニタ回路11は、高精度化補助回路111、絶対値精度獲得手段112を含む。これにより、第1モニタ回路11は、半導体装置100自身の温度または電圧の監視を高精度に行うことができる。
【0017】
一方、第2モニタ回路12は、半導体装置100の出荷後に、半導体装置100自身で取得する校正情報13aに基づいて温度または電圧の絶対値を出力するように構成されている。そのため、第2モニタ回路12は、第1モニタ回路11に設けられた高精度化補助回路111および絶対値精度獲得手段112のような絶対値の高精度化に関わる余分な回路を省略することが可能である。したがって、第2モニタ回路12の半導体チップ上に占める面積S2は、第1モニタ回路11の半導体チップ上に占める面積S1と比較して、小面積にできる。また、第2モニタ回路12は温度または電圧の絶対値校正に関わる出荷前テストを省略することが可能である。
【0018】
これにより、第1モニタの正常動作を監視する第2モニタ回路を安価に実現できる効果がある。
【0019】
図3は、温度モニタとしての第1モニタ回路の構成例を示す図である。第1モニタ回路(MON1a)11は、バンドギャップ温度モニタ(BGPT_MON)110aを有し、バンドギャップ温度モニタ(BGPT_MON)110aは、高精度化補助回路(HPACKT)111aと、絶対値精度獲得回路(AVPCKT)112aと、を有する。第1モニタ回路(MON1a)11は、デジタル回路向けの第1電源電圧とされる参照電位VDDと、アナログ回路向けの第2電源電位とされる参照電位VDDAとに接続される。第1モニタ回路(MON1a)11は、デジタル回路向けの第1接地電圧とされる参照電位VSSと、アナログ回路向けの第2接地電位とされる参照電位VSSAとに接続される。このような構成により、第1モニタ回路(MON1a)11は、たとえば、高精度な温度情報をデジタル値の出力信号(11o、11b)として出力することが出来る。
【0020】
図4は、電圧モニタとしての第1モニタ回路の構成例を示す図である。第1モニタ回路(MON1b)11は、アナログデジタル変換回路(ADC)110bと、高精度化補助回路(HPACKT)111bと、絶対値精度獲得回路(AVPCKT)112bと、を有する。第1モニタ回路(MON1b)11は、デジタル回路向けの第1電源電圧とされる参照電位VDDと、アナログ回路向けの第2電源電位とされる参照電位VDDAとに接続される。第1モニタ回路(MON1a)11は、デジタル回路向けの第1接地電圧とされる参照電位VSSと、アナログ回路向けの第2接地電位とされる参照電位VSSAとに接続される。
【0021】
アナログデジタル変換回路(ADC)110bの複数の入力端子内の1つの入力端子は、図示されるように、スイッチSWを介して、参照電位VDDとアナログ信号入力端子(ADCin)のいずれか一方に接続可能にされる。電圧モニタとして動作する場合、アナログデジタル変換回路(ADC)110bは、スイッチSWを介して、参照電位VDDを入力として受け、参照電位VDDの電位をアナログデジタル変換する。このような構成により、第1モニタ回路(MON1a)11は、たとえば、参照電位VDDに関する高精度な電圧情報をデジタル値の出力信号(11o、11b)として出力することが出来る。
【0022】
図5は、温度モニタとしての第1モニタ回路の構成例を示す回路図である。
図5に示される第1モニタ回路MON1aは、バンドギャップを利用した温度モニタの一例である。なお、実施例は、
図5の第1モニタ回路の構成に限定される訳ではなく、種々の温度モニタを採用可能である。
【0023】
第1モニタ回路MON1aは、基準電位Vrefを発生する基準電位発生回路VBGと、基準電位Vrefを受けて出力電位Voutを発生する出力回路VOを含む。基準電位発生回路VBGは、電流源とされる3つのPMOSトランジスタM1、M2、M3と、ダイオード接続された2つのNPNバイポーラトランジスタQ1、Q2と、差動アンプの様な演算増幅器OP1と、抵抗素子R0、R1、R2、R3とを含む。抵抗素子R1、R2は、同一の値の抵抗素子である(R1=R2)。出力回路VOは、差動アンプの様な演算増幅器OP2、接続スイッチSWと、抵抗素子R4とを含む。
【0024】
PMOSトランジスタM1、M2、M3の各々ソースはアナログ回路向けの電源電位VCCAに接続され、PMOSトランジスタM1、M2、M3の各々ゲートは共通接続される。PMOSトランジスタM1のドレインは、NPNバイポーラトランジスタQ1のコレクタCに接続され、PMOSトランジスタM2のドレインは、抵抗素子R0を介して、NPNバイポーラトランジスタQ2のコレクタCに接続される。
【0025】
NPNバイポーラトランジスタQ1のベースBとコレクタCとは接続されて、ダイオードが構成される。NPNバイポーラトランジスタQ1のエミッタEはアナログ回路向けの基準電位VSSAに接続される。同様に、NPNバイポーラトランジスタQ2のベースBとコレクタCとは接続されて、ダイオードが構成される。NPNバイポーラトランジスタQ2のエミッタEはアナログ回路向けの基準電位VSSAに接続される。また、PMOSトランジスタM1、M2のドレインは、抵抗素子R1、R2介して、基準電位VSSAに接続される。基準電位VSSAは、接地電位と見做すこともできる。
【0026】
演算増幅器OP1の反転端子(−)はPMOSトランジスタM1のドレインに接続され、演算増幅器OP1の非反転端子(+)はPMOSトランジスタM2のドレインに接続される。また、PMOSトランジスタM3のドレインは、抵抗素子R3を介して、基準電位VSSAに接続される。
【0027】
演算増幅器OP2の非反転端子(+)は、PMOSトランジスタM3のドレインに接続され、基準電位Vrefを受ける。抵抗素子R4は直接接続された複数の抵抗素子から構成され、接続スイッチSWは、たとえば、複数のMOSスイッチ素子から構成される。複数のMOSスイッチ素子のソースドレイン経路のおのおのは、演算増幅器OP2の反転端子(−)と複数の抵抗素子の各々の接続点(k1、k2,・・・、kn)との間に設けられており、複数のMOSスイッチ素子の1つをON状態とすることで、選択された1つの接続点を、演算増幅器OP2の反転端子(−)に接続する。これにより、ボルデージフォロワー回路が構成される。
【0028】
図5において、2つのNPNバイポーラトランジスタQ1、Q2及び抵抗素子R0が絶対値精度獲得手段AVPCKTを構成し、接続スイッチSWが高精度化補助回路HAPCKTを構成する。
【0029】
基準電位発生回路VBGにおいて、NPNバイポーラトランジスタQ1のエミッタEの面積と、NPNバイポーラトランジスタQ2のエミッタEの面積とのエミッタ面積比は、1:Nとされている。この構成では、抵抗素子R0に絶対温度に比例する電流が流れる。演算増幅器OP1は、VAとVBの電圧を同じ電圧(VA=VB)とするので、抵抗素子R1、R2に流れる電流は、ベース・エミッタ間電圧VBEに比例する電流が流れる。また、PMOSトランジスタM1、M2、M3に流れる電流は同じ(I1=I2=I3)になる。
【0030】
ここで、熱電圧VT=kT/q(kはボルツマン定数、qは素電荷、Tは絶対温度)とするとき、エミッタ面積比1:Nの2つのダイオード接続されたNPNバイポーラトランジスタQ1、Q2に同じ電流(I1、I2)を流すと、エミッタ-ベース間電圧差ΔVBE(この場合、接地電圧VSSAに対するQ1、Q2のエミッタ-ベース間の電圧差)は、VT*ln(N)となる。演算増幅器OP1の働きでVAとVBとは等しい。したがって、抵抗素子R0の両端の電圧はVT*ln(N)となる。
【0031】
このようにして、絶対値精度獲得手段AVPCKはVT=kT/q、すなわち温度に比例した電圧VT*ln(N)を生成する。温度Tに対して正の依存性を持つこの電圧と、負の依存性を持つエミッタ-ベース間電圧VBEとの加算を利用して、出力電圧が温度依存性を持たないように、Nの値などを調整している。なお、同様な手法で任意の温度依存性を持つように構成することが可能となる。
【0032】
次に、
図5の高精度化補助手段HAPCKTについて説明する。高精度化補助手段HAPCKTの選択スイッチSWは抵抗素子R4の抵抗分割位置を指定して演算増幅器OP2の参照電圧とする。たとえば、選択スイッチSWがk1*Vout (k1<1)の位置の電圧を指定したとすると、Vref=k1*Voutとなるように演算増幅器OP2は作用する。すなわち、Vout=Vref/k1であり、Vref=k2*T(Tは絶対温度)だとすると、Vout=(k2/k1)*Vrefとなる。すなわち、選択スイッチSWによりk1を調整することにより、プロセスごとにばらつくk2を補正してVoutの温度係数を一定にできる。選択スイッチSWの位置の指定はチップごとに出荷前テストで行うことが出来る。
【0033】
以上の様に、高精度化補助回路(HAPCKT)は、複数のMOSスイッチ素子により構成されるので、その面積は比較的大きい。
【0034】
次に、絶対値精度獲得手段(AVPCKT)に採用されるNPNバイポーラトランジスタQ1、Q2の構成を説明する。
【0035】
図6は、バイポーラトランジスタの断面図である。絶対値精度獲得手段(AVPCKT)を構成するバイポーラトランジスタQ1またはQ2の概念的な断面図である。バイポーラトランジスタQ1、Q2は、CMOSプロセスで形成されるNPNバイポーラトランジスタとしてシリコン単結晶の様な半導体チップや半導体基板に形成される。NPNバイポーラトランジスタQ1、Q2は、コレクタ領域(C)とされる深いN型層60と、N型層60内に形成されたベース領域(B)とされるP型層61と、P型層61内に形成されたエミッタ領域(E)とされるN型層62と、を有する。コレクタ領域60において、半導体チップの表面側には、コレクタ電極とコレクタ領域60とを低抵抗で接続するための不純物濃度の濃いN型層C(n+)が設けられる。同様に、ベース領域61には、ベース電極とベース領域61とを低抵抗で接続するための不純物濃度の濃いP型層B(p+)が設けられる。エミッタ領域62には、エミッタ電極とエミッタ領域62とを低抵抗で接続するための不純物濃度の濃いN型層C(n+)が設けられる。なお、63は、素子分離または層分離として利用されるシリコン酸化膜(SiO2)の様な絶縁膜である。
【0036】
以上の様にバイポーラトランジスタQ1またはQ2の平面的な面積は、深いN型層60とP型層61とにより、一般的な、MOSトランジスタの平面的な面積と比較すると、大きくなる。さらに、
図5で説明された様に、バイポーラトランジスタQ2のエミッタ面積はバイポーラトランジスタQ1のエミッタ面積のN倍(例えば、十数倍)とされているので、バイポーラトランジスタQ2の平面のサイズまたは面積は、バイポーラトランジスタQ1の平面のサイズまたは面積より大きい。したがって、絶対値精度獲得手段AVPCKTの全体的な面積は比較的大きくなる。
【0037】
図7は、温度モニタとしての第2モニタ回路の構成例を示す図である。温度モニタとしての第2モニタ回路MON2Tは、リングオシレータRO1により構成される。リングオシレータRO1では、PMOSトランジスタQP21のオフリーク電流に比例した発振周波数Foutを実現している。この結果、発振周波数Foutは温度の逆数の指数に比例する。リングオシレータRO1の発振周波数Foutは、カウンタ回路121によりカウントされ、カウンタ回路121のカウント値は累積回路122内のレジスタに保持される。
【0038】
リングオシレータRO1は、遅延回路DLと、安定化回路STと、インバータ遅延段INV20と、を備える。遅延回路DLはPMOSトランジスタQP21とNMOSトランジスタQN21、QN22と、を有する。安定化回路STは、基準電圧(Vref)を生成するNMOSトランジスタQN23、QN24と、比較器CMPと、を備える。インバータ遅延段INV20はインバータINV21、INV22、INV23、INV24を備える。
【0039】
動作を以下に説明する。リセット信号(reset)がハイレベルになるとノードN21はロウレベルにリセットされる。Vrefはハイレベル(Vd)とロウレベル(Vs)との中間電位であり、比較器(差動アンプ)CMPの出力のノードN22はロウレベルとなる。その結果、ノードN23はロウレベルとなり、ノードN21はresetがロウレベルに戻った後にはロウレベルのフローティング状態となる。NMOSトランジスタQN21及びQN22のしきい電圧絶対値はPMOSトランジスタQP21のしきい電圧絶対値より大きく設定すると、PMOSトランジスタQP21のオフリーク電流が支配的であり、ノードN21の電位はロウレベルからハイレベルに向かって徐々に上昇する。PMOSトランジスタQP21はリーク型プルアップ素子である。ノードN21の電位がVref以上になると、AMP比較器CMPの出力のノードN22はロウレベルからハイレベルに変化して、インバータ遅延段INV20(4段のインバータINV21〜INV24)の遅延の後、ノードN23はハイレベルとなる。この結果、ノードN21はロウレベルに戻る。これを繰り返して発振する。
【0040】
ノードN21がロウレベルになってからハイレベルに遷移して再びロウレベルに戻るまでの時間は、PMOSトランジスタQP21のオフリーク電流でノードN21の電位がロウレベルからVrefまで上昇する時間(t1)と、ノードN22がハイレベルとなりインバータ遅延段INV20の遅延によりノードN21がロウレベルに戻るまでの時間(t2)との和にほぼ等しい。さらに言えば、t1>>t2なので、発振周波数FoutはPMOSトランジスタQP21のオフリーク電流にほぼ比例する。オフリーク電流は温度の逆数の指数(exp(−1/T))に依存するので、大きな温度依存性を有するリングオシレータを実現できる。
【0041】
なお、
図7に示すようにノードN21を通常の論理回路ではなく比較器CMPで受けることにより安定して発振動作する効果が得られる。すなわち、ノードN21のロウレベルからハイレベルへの変化は非常に緩やかであるため、論理回路で受けた場合、その論理しきい値前後の変化がフル振幅することなく伝搬し、十分フル振幅することなく論理しきい値付近に安定してしまう場合がある。比較器CMPの出力は、その入力しきい値前後で大きくロウレベルからハイレベルへ変化するので、安定してフル振幅で発振するリングオシレータが得られる。なお、インバータINV22の出力と入力との間に耐ノイズフィードバック素子ANFが挿入されている。耐ノイズフィードバック素子ANFはPMOSトランジスタQP22、QP23、NMOSトランジスタQN25、QN26で構成されるインバータである。
【0042】
図8は、電圧モニタとしての第2モニタ回路の構成例を示す図である。電圧モニタとしての第2モニタ回路MON2Vは、リングオシレータRO2と、リングオシレータRO2の電流源PMOSトランジスタAPおよびNMOSトランジスタANを制御する電流源制御回路C2と、温度依存の調整用の定電圧生成回路C1と、を有する。リングオシレータRO2の発振周波数Foutは、
図7と同様に、カウンタ回路121によりカウントされ、カウンタ回路121のカウント値は累積回路122内のレジスタに保持される。
【0043】
リングオシレータRO2は、電流源で駆動される6個のインバータINV1〜INV6と1つのNANDゲートNAとのループ経路が、NANDゲートNAの一つの入力端子に印加される信号(enable)をHighとすることで発振する。電流源駆動のインバータINV1〜INV6は、それぞれ電流源PMOSトランジスタAPと電流源NMOSトランジスタANとPMOSトランジスタMPとNMOSトランジスタMNとを備える。電流源PMOSトランジスタAPのソースは電源電位(Vd)が供給される電源線に接続され、電流源NMOSトランジスタANのソースは基準電位(Vs)が供給される基準線に接続される。ここで、Vs=0Vとすると、電源線と基準線との間の電位差(電圧)はVdとなる。以下、電圧と表記する場合は基準線の電位(Vs=0V)との電位差である。電流源駆動のインバータINV1〜INV6は、次段をLowからHighに駆動する場合には、電流源PMOSトランジスタAPの駆動電流にほぼ比例して信号遷移時間が決まる。次段をHighからLowに駆動する場合は、電流源NMOSトランジスタANの駆動電流にほぼ比例して信号遷移時間が決まる。電流源PMOSトランジスタAPと電流源NMOSトランジスタANとに挟まれ、そのゲートが共通なPMOSトランジスタMPとNMOSトランジスタMNは、電流源PMOSトランジスタAPと電流源NMOSトランジスタANのいずれかを、発振過渡状態に応じて選択するスイッチの働きをする。電流源PMOSトランジスタAPのゲート電圧(Vp)と電流源NMOSトランジスタANのゲート電圧(Vn)は、出力Foutの発振周波数が電圧依存性を有するように、電流源制御回路C2で、それぞれ制御される。
【0044】
温度依存を有する定電圧生成回路C1は、電源電位(Vd)が供給される電源線に接続されたソースを有するダイオード接続されるPMOSトランジスタQP1a及びQP1bと、PMOSトランジスタQP1bのドレインと基準電位(Vs)が供給される基準線との間に接続されるNMOSトランジスタQN1と、を備える。また、電圧生成回路C1は、基準電位(Vs)が供給される基準線に接続されたソースを有するダイオード接続されるNMOSトランジスタQN2a及びQN2bと、NMOSトランジスタQN2bのドレインと電源電位(Vd)が供給される電源線との間に接続されるNMOSトランジスタQP2と、を備える。
【0045】
NMOSトランジスタQN1は、長チャネルのトランジスタであり、ゲートに電位(Vmn)が供給され、実効抵抗を構成する。PMOSトランジスタQP2は、長チャネルのトランジスタであり、ゲートに電位(Vmp)が供給され、実効抵抗を構成する。電圧生成回路C1のノードN11は電流源制御回路C2のPMOSトランジスタQP12のゲートに接続され、ゲート電圧(VSmid)を供給する。また、電圧生成回路C1のノードN12は電流源制御回路C2のNMOSトランジスタQN11のゲートに接続され、ゲート電圧(VDmid)を供給する。
【0046】
電流源制御回路C2は、電圧依存性を強調させるための回路であり、電源電位(Vd)が供給される電源線に接続されソースを有するダイオード接続されたPMOSトランジスタQP11と、PMOSトランジスタQP11のドレイン(ノードN1)と基準電位(Vs)が供給される基準線との間に接続され、ゲートにゲート電圧(VDmid)を受けるNMOSトランジスタQN11と、を備える。また、電圧生成回路C2は、基準電位(Vs)が供給される基準線に接続されソースを有するダイオード接続されたNMOSトランジスタQN12と、NMOSトランジスタQN12のドレイン(ノードN2)と電源電位(Vd)が供給される電源線との間に接続され、ゲートにゲート電圧(VSmid)を受けるPMOSトランジスタQP12と、を備える。ノードN1は、リングオシレータRO2の電流源NMOSトランジスタANのゲートにゲート電圧(Vn)を供給する。ノードN2は、リングオシレータRO2の電流源PMOSトランジスタAPのゲートにゲート電圧(Vp)を供給する。
【0047】
電流源制御回路C2の出力電圧Vnは、電源電圧(Vd)をPMOSトランジスタQP11のダイオードの順方向電圧(VBE)相当程度低い電圧にシフトした値となる。このVnを電流源NMOSトランジスタANのゲート電圧として与えると、電源電圧が例えば0.8V〜1.2Vに変化した時に、Vnは0.2V〜0.5V(電源電圧の1/2以下)に変化するので、電流の電圧依存が強調される。この理由は、ゲート電圧の低い領域では電流の電圧依存性が大きくなるためである。また、電流源制御回路C2と電流源PMOSトランジスタAPとの関係も同様である。電流源制御回路C2の出力電圧Vpは、基準電圧(Vs)をNMOSトランジスタQN12のダイオードのVBE相当程度高い電圧にシフトした値となる。このVp(電源線圧の1/2以上)を電流源PMOSトランジスタAPのゲート電圧として与えると、電流の電圧依存が強調される。この理由は、ゲート電圧の高い領域では電流の電圧依存性が大きくなるためである。すなわち、リングオシレータRO2は、電圧依存性を有するリングオシレータ、または、電圧依存性を強調した電流源制御のリングオシレータと見做すことが出来る。
【0048】
電圧生成回路C1の出力電圧(VSmid)および出力電圧(VDmid)は温度依存性を持つ。VSmid、VDmidの変調はそれぞれ長チャネルPMOSトランジスタQP12およびNMOSトランジスタQN11の実効抵抗値を変化させ、その結果、電源電圧の低電圧変換の程度を変化させる。出力電圧VSmid、VDmidの温度依存性を電圧生成回路C1により調整することで、リングオシレータRO2の発振周波数が、温度依存性を示さないように調整することが可能であり、リングオシレータRO2の発振周波数の電圧依存性を所望の状態に調整することができる。すなわち、電圧生成回路C1が発生するゲート電圧VSmid及びVDmidは、リングオシレータRO2の発振周波数が温度依存性を示さないよう調整するとともに、電流源制御回路C2の発生するゲート電圧Vp及びVnは温度に依存して調整する。
【0049】
図9は、
図7の第2モニタ回路MON2Tの出力値の特性を説明する図である。
図9に示す通り、第2モニタ回路MON2Tは、所定の温度、電圧での出力値が半導体100のプロセス仕上がりに依存する。すなわち、リーク電流が小さく、しきい値が高い半導体チップでは、その出力値は小さくなる。一方、リーク電流が大きく、しきい値が低い半導体チップでは、その出力値は大きくなる。
図8に示す第2モニタ回路MON2Vの出力値の特性も、
図9と同様の出力値の特性を有する。しかし、第2モニタ回路MON2TおよびMON2Vの回路構成自体が簡単で小さな面積で実現できる。
図7及び
図8に示した構成例によれば、第1モニタ回路を監視する第2モニタ回路が小面積に実現でき、その結果、高信頼な半導体装置100を低コストに実現できる効果がある。
【0050】
図10は、実施例に係る半導体システムの全体構成を示すブロック図である。半導体システムSYSは、半導体装置100と、オフチップ不揮発記憶14と、を有する。
図10に示されるような構成により、
図1のモニタ部1を半導体システムSYSに設けることが可能である。
【0051】
半導体装置100は、デジタル回路部(DCKT)101、アナログ回路部(ACKT)102、半導体装置100の入出回路とされる入出力回路部(I/OCKT)103、揮発性記憶装置(MEM)104の各ブロックに加えて、第1モニタ回路(MON1)11と、第1モニタ回路11を含むオンチップ補正回路(CAL)13、第2モニタ回路(MON2)12、オンチップ確認回路(CHK)15が設けられる。半導体装置100内の各回路(11、12、13、15、101―103)は、バス105を介して相互に接続される。デジタル回路部(DCKT)101は、たとえば、中央処理装置CPUやデジタルシグナルプロセッサDSP等を含む。アナログ回路部(ACKT)102は、たとえば、アナログデジタル変換回路(ADC)等を含む。揮発性記憶装置(MEM)104は、たとえば、中央処理装置CPUやデジタルシグナルプロセッサDSP等のデータ処理装置の一時データ記憶領域として利用されるスタチックランダムアクセスメモリ(SRAM)を含む。
【0052】
半導体装置100内の各回路(11、12、13、15、101―103)は、電源電位VDDと参照電位VSSとを受ける様に構成されている。また、アナログ回路部102と第1モニタ11とは、さらに、アナログ向けの電源電位VCCAやアナログ向けの参照電位VSSAを受ける様に構成されている。また、入出力回路部103は、入出力回路向けの電源電位VCCQを受けるように構成される。
【0053】
オフチップ不揮発記憶回路(NVM)14は、半導体装置100に、入出力(I/O)回路部103を介して接続される。オフチップ不揮発記憶回路14は、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置などで構成される。
【0054】
図11は、実施例に係る処理フローを説明する図である。
【0055】
半導体装置100に対して、出荷前には、通常の品質保証テストが実施される(ステップS1)。必要に応じて、第1モニタ回路(MON1)の絶対値のトリミングを実施する(ステップS2)。第1モニタ回路(MON1)内蔵の絶対値精度獲得回路(AVPCKT)112で十分な絶対値精度が得られる場合、ステップS2のトリミングは不要である。
【0056】
出荷後には、半導体装置100はオフチップ不揮発記憶回路(NVM)14とともに、半導体システムSYSに実装される。次に、第2モニタ回路(MON2)12の絶対値の補正を実施か否かを判断する(ステップS4)。ステップS4において、第2モニタ回路(MON2)12の絶対値の補正を実施する場合(No)、ステップS5へ遷移する。ステップS5において、第2モニタ回路(MON2)12の絶対値の補正は、第1モニタ回路(MON1)の出力値11aを用いて行うため、補正に利用する補正情報13aが取得され、(ステップS51)、取得された補正情報13aはオフチップ不揮発記憶回路(NVM)14に書き込まれる(ステップ52)。
【0057】
ステップS4において、第2モニタ回路(MON2)12の絶対値の補正を実施しない場合(Yes)およびステップS5の実施後、以下の3つの動作が並列に行われる。
【0058】
(1)半導体チップ100の通常動作(ステップS6)
(2)第2モニタ回路(MON2)12による第1モニタ回路(MON1)11の正常動作の確認(ステップS7、ステップS9)
(3)第1モニタ回路(MON1)11による半導体装置100の温度または電圧の監視(ステップS8、ステップS10)
上記(2)は、オンチップ確認回路(CHK)15によって行われ、その動作の頻度は低くてもよい。たとえば、半導体装置100のリセット後に、一度実施するなどでよい。
【0059】
上記(2)または(3)で異常が検知された場合(ステップS9、S10においてNoの場合)は異常発生の外部への通知15oなど、所定の処理を行う(ステップ11)。ステップS9、S10においてYesの場合、ステップS7、S8へ遷移する。
【0060】
図12はステップS1、S2の実施方法を説明する図であり、
図13はステップS5の実施方法を説明する図である。
図12に示すように、半導体装置100の出荷前テスト時において、テスタTSTを用いて、第1モニタ回路(MON1)11の出力値の高精度な絶対値のトリミングを実施する。
図13に示すように、半導体装置100の市場での実使用時において、第1モニタ回路(MON1)11を含むオンチップ補正回路(CAL)13により、第2モニタ回路(MON2)12の出力値の絶対値補正のための補正情報13aを取得して、出荷後に半導体システムSYSに実装されるオフチップ不揮発記憶回路(NVM)14に、補正情報13aを書き込む。
【0061】
図14は、オンチップ確認回路の動作フローを説明する図である。
図3の第1モニタ回路MON1aと
図7の第2モニタ回路MON2Tとを用いた場合のオンチップ確認回路15の確認または判断フローである。ステップS21では、オンチップ確認回路15は、第2モニタ回路MON2Tにより温度T2を取得する。温度T2は、オフチップ不揮発記憶回路(NVM)14に格納された補正情報13aを用いて、第2モニタ回路MON2Tの出力値を温度に補正した値である。次に、オンチップ確認回路15は、ステップS21の実行から所定時間内(たとえば、1秒)に第1モニタ回路MON1aにより温度T1を取得する(ステップS22)。ステップS22の後、オンチップ確認回路15は、ステップS23を実施する。ステップS23では、ステップS21,S22で取得した温度T1、T2が所定の温度範囲内か否かを、次式に従って判断する。
【0062】
−ErrT<((T2/T1)−1)<ErrT
ここで、−ErrTはあらかじめ決めた所定の温度の範囲の下限値を示す値である。ErrTはあらかじめ決めた所定の温度の範囲の上限値を示す値である。
【0063】
ステップS23において、温度T1、T2が所定の温度範囲内にある場合(Yes)、第1モニタ回路MON1aと第2モニタ回路MON2Tとも、正常な動作を行っていると判断する。一方、ステップS23において、温度T1、T2が所定の温度範囲以外の場合(No)、第1モニタ回路MON1aと第2モニタ回路MON2Tとのどちらか一方が異常であると判断する。
【0064】
なお、ステップS21−S25は、専用の回路により構成しても良いし、CPU等によるソフトウエアで実現しても良い。
【0065】
図15は、オンチップ確認回路の動作フローを説明する図である。
図4の第1モニタ回路MON1bと
図8の第2モニタ回路MON2Vとを用いた場合のオンチップ確認回路15の確認または判断フローである。ステップS31では、オンチップ確認回路15は、第2モニタ回路MON2Vにより電圧V2を取得する。電圧V2は、オフチップ不揮発記憶回路(NVM)14に格納された補正情報13aを用いて、第2モニタ回路MON2Vの出力値を電圧に補正した値である。次に、オンチップ確認回路15は、ステップS31の実行から所定時間内(たとえば、1秒)に第1モニタ回路MON1bにより電圧V1を取得する(ステップS32)。ステップS32の後、オンチップ確認回路15は、ステップS33を実施する。ステップS33では、ステップS31,S32で取得した電圧V1、V2が所定の電圧範囲内か否かを、次式に従って判断する。
【0066】
−ErrV<((V2/V1)−1)<ErrV
ここで、−ErrVはあらかじめ決めた所定の電圧の範囲の下限値を示す値である。ErrVはあらかじめ決めた所定の電圧の範囲の上限値を示す値である。
【0067】
ステップS33において、電圧V1、V2が所定の温度範囲内にある場合(Yes)、第1モニタ回路MON1bと第2モニタMON2Vとも、正常な動作を行っていると判断する。一方、ステップS33において、電圧V1、V2が所定の電圧範囲以外の場合(No)、第1モニタ回路MON1bと第2モニタ回路MON2Vとのどちらか一方が異常であると判断する。
【0068】
なお、ステップS31−S35は、専用の回路により構成しても良いし、CPU等によるソフトウエアで実現しても良い。
【0069】
図16は、第1および第2モニタ回路が温度モニタ回路である場合の補正情報を説明する図である。たとえば、
図7に示す第2モニタ回路MON2Tの出力値Fout、すなわち、リングオシレータの発振周波数は、以下の式1に従う。
Fout = C1 * exp(−Ea/kT) (式1)
ここで、Eaは温度依存性係数、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。C1は半導体チップごとにプロセス仕上がりに依存して異なる定数である。Eaは半導体チップに依らず、ほぼ一定の値を示す。
図16の(a)、(b)、(c)のグラフにおいて、横軸は第1モニタ回路MON1aで得られた温度Tの逆数1/kTを示し、縦軸は第2モニタ回路MON2Tの出力値Foutの対数(log(Fout))を示している。また、領域Rは第2モニタ回路MON2Tの動作保証範囲以外の低温領域を示している。
【0070】
図16(a)は、第2モニタ回路MON2Tの絶対値の補正情報13aの取得の1回目の場合を示している。すなわち、第1モニタ回路MON1aで得られた温度Tの逆数1/kTを横軸に、第2モニタ回路MON2Tの出力値Foutの対数を縦軸として測定点1をプロットする。この測定点1を通過するように(式1)をフィッティングすることで、C1が得られる。線L1は、半導体装置100の出荷時に想定した第2モニタ回路MON2Tの温度依存性exp(−Ea/kT)の傾きで、測定点1を通る線を示している。
【0071】
図16(b)は、第2モニタ回路MON2Tの絶対値の補正情報13aの取得の2回目の場合を示している。
図16(a)と同様に、第1モニタ回路MON1aで得られた温度Tの逆数1/kTを横軸に、第2モニタ回路MON2Tの出力値Foutの対数を縦軸として測定点2をプロットする。測定点2を追加して、得られた測定点1と測定点2の2点に対して、誤差最小となるように(式1)をフィッティングすることで、新たなC1が得られる。すなわち、半導体装置100の出荷時に想定した第2モニタ回路MON2Tの温度依存性exp(−Ea/kT)の傾きで測定点1、測定点2の誤差最小となる線L2を求める。これにより、
図16(a)よりも精度が高いC1が得られる。
【0072】
同様にして、
図16(c)に示すように、第2モニタ回路MON2Tの絶対値の補正情報の取得のN回目の実施時には、得られたN個の打点に対して誤差最小となるように(式1)をフィッティングすることで、さらに精度が高いC1が得られる。すなわち、半導体装置100の出荷時に想定した第2モニタ回路MON2Tの温度依存性exp(−Ea/kT)の傾きで測定点1、測定点2、・・・、測定点Nに対し誤差最小となる線Lnを求める。これにより、
図16(b)よりもさらに精度が高いC1が得られる。
【0073】
このようにして、正確なC1を求めることにより、第2モニタ回路MON2Tの出力値(Fout)から、その時点での半導体装置100の温度(T2)を比較的正確に求めることが可能となる。したがって、
図14で説明されたオンチップ確認回路15の動作フローを用いることにより、第2モニタ回路MON2を用いた第1モニタ回路MON1の動作の監視を行うことが出来る。
【0074】
図17は、他のフィッティング方法を説明する図である。横軸および縦軸は、
図16と同様である。
図16では、C1を正確に求める方法を説明した。
図17では、第2モニタ回路MON2Tの絶対値の補正情報の取得のN回目実施時において、C1だけでなく、温度依存性係数Eaもフィッティング変数として、N個の打点に対して誤差最小となるように(式1)のフィッティングを行う。すなわち、測定点1から測定点Nに対し誤差最小となる線Lnを求める。これにより、第2モニタ回路MON2Tの出力値(Fout)に対するより正確な補正情報13aを得ることが可能である。
【0075】
図18は、第1および第2モニタ回路が電圧モニタ回路である場合の補正情報を説明する図である。たとえば、
図8に示す第2モニタ回路MON2Vの出力値Fout、すなわち、リングオシレータの発振周波数は、以下の式2に従う。
【0076】
Fout = D1 * V^n (式2)
ここで、D1は半導体チップごとにプロセス仕上がりに依存して異なる定数である。Vは電圧であり、V^nは、Vのn乗を示す。
【0077】
図16で説明された様に、式1のC1をフィッティングから得るのと同様に、式2のD1をフィッティングから得ることができる。
図18(a)、(b)、(c)の横軸は第1モニタ回路MON1bで得られた電圧Vの対数を示し、縦軸は第2モニタ回路MON2Vの出力値Foutの対数(log(Fout))を示している。
【0078】
図18(a)は、第2モニタ回路MON2Vの絶対値の補正情報13aの取得の1回目の場合を示している。すなわち、第1モニタ回路MON1bで得られた電圧Tの対数を横軸に、第2モニタ回路MON2Vの出力値Foutの対数を縦軸として測定点1をプロットする。この測定点1を通過するように(式2)をフィッティングすることで、D1が得られる。線L1vは、半導体装置100の出荷時に想定した第2モニタ回路MON2Vの電圧依存性V^nの傾きで、測定点1を通る線を示している。
【0079】
図18(b)は、第2モニタ回路MON2Vの絶対値の補正情報13aの取得の2回目の場合を示している。
図18(a)と同様に、第1モニタ回路MON1bで得られた電圧Vの対数を横軸に、第2モニタ回路MON2Vの出力値Foutの対数を縦軸として測定点2をプロットする。測定点2を追加して、得られた測定点1と測定点2の2点に対して、誤差最小となるように(式2)をフィッティングすることで、新たなD1が得られる。すなわち、半導体装置100の出荷時に想定した第2モニタ回路MON2Vの電圧依存性V^nの傾きで測定点1、測定点2の誤差最小となる線L2vを求める。これにより、
図18(a)よりも精度が高いD1が得られる。
【0080】
同様にして、
図18(c)に示すように、第2モニタ回路MON2Vの絶対値の補正情報の取得のN回目の実施時には、得られたN個の打点に対して誤差最小となるように(式2)をフィッティングすることで、さらに精度が高いD1が得られる。すなわち、半導体装置100の出荷時に想定した第2モニタ回路MON2Vの電圧依存性V^nの傾きで測定点1、測定点2、・・・、測定点Nに対し誤差最小となる線Lnvを求める。これにより、
図18(b)よりもさらに精度が高いD1が得られる。
【0081】
このようにして、正確なD1を求めることにより、第2モニタ回路MON2Vの出力値(Fout)から、その時点での半導体装置100の電圧(V2)を比較的正確に求めることが可能となる。したがって、
図15で説明されたオンチップ確認回路15の動作フローを用いることにより、第2モニタ回路MON2を用いた第1モニタ回路MON1の動作の監視を行うことが出来る。
【0082】
図19は、補正情報の更新の判定基準を説明する図である。
図19は、
図16及び
図18で説明した方法により定められる式1または式2と、新たに実施された第2モニタ回路MON2の絶対値の補正のための第1モニタ回路MON1の温度測定または電圧測定及び第2モニタ回路MON2の出力値の測定で得られた測定点との誤差Errに基づく判断基準を示している。
図19において、縦軸は前回までの近似線からの新たな測定点の誤差Errの値を示し、横軸は測定回数を示している。
【0083】
前回までの近似線からの新たな測定点の誤差Errの値に対する判断は、例えば、クライテリアCrA及びクライテリアCrBにより判断することが出来る。誤差Errの絶対値がクライテリアCrAより小さい場合、例えば、測定回数がN−2,N−1、Nの場合、
図16及び
図18で求めた近似線式1または近似式2の更新を行わない事とする。これにより、不要に式の更新を実施することがなくなる効果がある。
【0084】
一方、誤差Errの絶対値がクライテリアCrBより大きい場合、例えば、測定回数がN+1の場合、第1モニタ回路MON1または第2モニタ回路MON2の故障を疑う。ただし、近似線がほぼ安定した後に、この判断を行うのが良い。たとえば、過去に近似線式1または式2の更新を行わない回が所定回数あった後に、クライテリアBを有効とする等である。これにより、定量的に第1モニタ回路MON1または第2モニタ回路MON2の故障判断を行うことができる効果がある。
【0085】
図20は、誤差Errの算出方法の一例を示す図である。
図20(a)、(b)は、
図16で説明された、第1および第2モニタ回路が温度モニタ回路である場合を例として、誤差Errの算出方法を説明する。
図20(a)、(b)において、
図16と同様に、横軸は第1モニタ回路MON1aで得られた温度Tの逆数1/kTを示し、縦軸は第2モニタ回路MON2Tの出力値Foutの対数(log(Fout))を示している。
【0086】
図20(a)は、N−1回目までの近似線Ln−1に対して、N回目の測定点Nの誤差Errが小さい場合を示している。この場合、測定点Nが近似線Ln−1上にほぼ一致しており、誤差Errがほぼゼロの状態である。一方、
図20(b)は、誤差Errが大きい場合を示している。この場合、第2モニタ回路MON2Tの出力値のN回目の測定点Nは、N−1回目までの近似線Ln−1から誤差Errの距離だけ離れている状態である。すなわち、誤差Errは、測定点NとN−1回目までの近似線Ln−1との間のかい離している距離として定義されている。
【0087】
以上で説明された様に、温度または電圧の第2モニタ回路MON2の出力値に対する補正情報13aによる高精度化は、半導体装置100及び半導体システムSYSの出荷後において、半導体装置100及び半導体システムSYSの内部で行うことが出来るという効果がある。したがって、半導体装置100の出荷前テスト時の第2モニタ回路MON2の出力値の絶対値の補正は不要であり、第2モニタ回路MON2の出力値の絶対値の補正についてのテストコストが低減できる。また、第1モニタ回路MON11または第2モニタ回路MON2の故障判断を定量的に行うことが可能である。
【0088】
(変形例)
図21は、変形例に係る第2モニタ回路の出力値に対する補正情報の取得方法を説明する図である。
図7に示した第2モニタ回路MON2Tは、PMOSトランジスタQP2のリーク電流の温度依存性を利用した温度モニタである。第2モニタ回路MON2Tの出力値において、温度の低い領域(
図16の領域R参照)の精度が得られないという課題がある。
【0089】
図21(a)は、縦軸にリーク電流(Ileak)とし、横軸に温度Tの逆数1/kTとして、PMOSトランジスタQP2のリーク電流(IL(GP21)の特性を示している。なお、
図21(a)において、T(Low)は低い温度、T(High)は高い温度、Raは温度モニタに適した領域を示している。
【0090】
図21(a)に示されるように、第2モニタ回路MON2Tとしては、温度依存性が大きいサブスレッシュホールド電流Isubを利用しているが、PMOSトランジスタQP2のリーク電流(IL(QP21)は温度にほとんど依存しないオフセット電流Iofも持っている。オフセット電流Iofは、例えば、ゲート電流、接合電流などである。従って、温度が低い領域(<温度Tcrit)では、温度とリーク電流との関係がexp(−Ea/kT)からかい離して、精度が得られない。温度Tcritは、サブスレッシュホールド電流Isubが支配的となる決定的な温度(クリティカルな温度)または所定の温度などという事もできる。
【0091】
変形例では、
図21(b)に示すように、半導体装置100のアクティビティ(AC)が比較的高い状態で第2モニタ回路MON2Tの絶対値の補正を行うものである。
図21(b)において、縦軸は半導体装置100の内部温度(Ta)であり、横軸は半導体装置100のアクティビティ(AC)に相関する動作電力P(リーク電力を含む半導体装置の所定動作時の全電力)であり、線L100は半導体装置100の内部温度(Ta)と動作電力Pとの関係を示している。線L100で示されるように、半導体装置100のアクティビティ(AC)に相関する動作電力Pと、半導体装置100の内部温度(Ta)における環境温度(Tc)からの上昇量とは正の相関がある。そのため、温度Tcritより高くなるアクティビティ(AC)の状態(ACH)で、第2モニタ回路MON2Tの絶対値の補正情報13aの取得を行うのが良い。温度Tcrit以上の状態(>Tcrit)であることは、第1モニタ回路MON1aにより確認することができる。
【0092】
変形例によれば、第2モニタ回路MON2の絶対値の補正情報を正しく得ることができるので、高精度の第2モニタ回路MON2を得られる効果がある。
【0093】
(第2モニタ回路の他の利用例)
第2モニタ回路MON2は、半導体装置100の摩耗故障をモニタする累積ストレスモニタ回路としても利用することが可能である。例えば、
図7に示される第2モニタ回路MON2Tにおいて、PMOSトランジスタQP21に比例した発振周波数Foutを発生させている。ここで、PMOSトランジスタQP21のオフリーク電流は、温度の逆数の指数(exp(−Ea0/kT))に比例する(Fout∝exp(−Ea0/kT))。Ea0はオフリーク電流特有の係数である。Eaを摩耗故障因子特有の係数とすると発振周波数Foutは、以下の関係を有する。
【0094】
(第2モニタ回路MON2Tの発振周波数Fout)
q ∝ exp(−Ea/kT)
ここで、Ea=q*Ea0である。
【0095】
すなわち、第2モニタ回路MON2Tの発振周波数Foutをカウントすることにより、半導体装置100の摩耗故障を予測することが可能である。
【0096】
このように、第2モニタ回路MON2は、第1モニタ回路MON1の正常動作の判定および半導体装置100の摩耗故障をモニタする累積ストレスモニタ回路としても利用することが出来るので、第2モニタ回路MON2が半導体チップ上に占める面積は、オーバーヘッドとなることはない。
【0097】
また、第1モニタ回路MON1と第2モニタ回路MON2とを用いた短期的な半導体装置100の動作保証だけでなく、第2モニタ回路MON2を半導体装置100の摩耗故障をモニタする累積ストレスモニタ回路としても利用し、長期的な半導体装置100の動作保証を行うことが可能になる。
【0098】
実施例によれば、以下の1または複数の効果を得ることか出来る。
【0099】
(1)第1モニタ回路MON1と第2モニタ回路MON2とは、互いに異なる原理に基づいて、温度または電圧の情報を生成する。このため、半導体装置100の設計時、半導体装置100の出荷時には見過ごしていた機能不具合をいずれかのモニタ回路が有していた場合でも、ユーザに対して何らかの異常が発生したことを通知することができる。
【0100】
(2)上記(1)により、高信頼な半導体装置ないし高信頼な半導体システムを提供することが可能になる。
【0101】
(3)第1モニタ回路は、高精度に温度または電圧をモニタできるように設計時及び出荷前テスト時に調整されているので、半導体装置自身の温度または電圧の監視を高精度に行うことができ、その結果、高信頼の半導体装置及びそれを用いた半導体システムが得られる。
【0102】
(4)第2モニタ回路の出力値(12b)は、半導体装置100の出荷後に半導体装置100自身で取得する補正乃至校正情報(13a、14a)に基づいて、温度または電圧の絶対値を出力するように構成されている。そのため、絶対値の高精度化に関わる余分な回路を省略して小面積にできるとともに、絶対値の校正に関わる出荷前テストを省略できる。
【0103】
(5)上記(4)により、第1モニタ回路の正常動作を監視する第2モニタ回路を安価に実現できるという効果がある。
【0104】
(6)また、半導体装置100がオンチップの不揮発記憶回路を持たない場合でも、半導体システムに設けられるオフチップの不揮発記憶回路14を利用することが出来る。したがって、第2モニタ回路の出力値の絶対値の校正は、オフチップの不揮発記憶回路14に記憶させた補正乃至校正情報(13a、14a)に基づいて行うことが出来るので、第2モニタ回路の高精度化できるという効果がある。
【0105】
(7)第2モニタ回路MON2は、第1モニタ回路MON1の正常動作の判定および半導体装置100の摩耗故障をモニタする累積ストレスモニタ回路としても利用することが出来るので、第2モニタ回路MON2が半導体チップ上に占める面積は、オーバーヘッドとなることはない。
【0106】
(8)また、第1モニタ回路MON1と第2モニタ回路MON2とを用いた短期的な半導体装置100の動作保証だけでなく、第2モニタ回路MON2を半導体装置100の摩耗故障をモニタする累積ストレスモニタ回路としても利用し、長期的な半導体装置100の動作保証を行うことが可能になる。
【0107】
(9)上記(8)により、さらに高信頼な半導体装置ないし高信頼な半導体システムを提供することが可能になる。
【0108】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。