特許第6962807号(P6962807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962807
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】水晶振動子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20211025BHJP
   H03H 9/19 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H03H9/02 K
   H03H9/19 D
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-242394(P2017-242394)
(22)【出願日】2017年12月19日
(65)【公開番号】特開2019-110445(P2019-110445A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2020年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−103618(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/125873(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/02
H03H 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動片と、温度センサとしてのダイオードと、を具える水晶振動子において、
前記ダイオードは、2つのダイオードを極性が逆向きに並列接続したダイオード対であることを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
前記ダイオードは、予め半導体素子として形成され外形的には1個の素子と見えるダイオード対であることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
【請求項3】
前記ダイオードは、予め半導体素子として形成され外形的には1個の素子と見え、かつ、チップ部品の形態を持つダイオード対であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水晶振動子。
【請求項4】
前記ダイオードは、予め半導体素子として形成され外形的には1個の素子と見え、かつ、半導体ウエハからダイシングして供給されるダイオード対のチップであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水晶振動子。
【請求項5】
前記水晶振動子は平面形状が四角形状であり、
その外部底面の四隅に外部端子をそれぞれ具え、かつ、
4つの外部端子のうち対角に位置する第1の組の外部端子を前記水晶振動片に接続してあり、対角に位置する第2の組の外部端子を前記ダイオードに接続してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水晶振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサを具えた水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動片と温度センサとを1つのパッケージに具えた構造の水晶振動子は、温度センサ付きの水晶振動子と呼ばれ、近年注目されている。この水晶振動子の概略構造と、これが使用される典型例を、図4(A)を参照して説明する。
【0003】
温度センサ付き水晶振動子10は、水晶振動片11と、温度センサ13とを、1つのパッケージに具えている。この振動子10は、いわゆる1部屋構造のもの、いわゆるH型構造のもの等がある(後述する図2,3参照)。
【0004】
温度センサ付き水晶振動子10は、典型的には、チップセット20に接続して用いられる。典型的なチップセット20は、温度センサ13の特性を電圧特性とする電圧変換回路21、A/D変換器23、温度補償回路25、発振回路27及び機能回路29を具える。そして、温度センサ13の情報を基に、チップセット20で発振回路の出力が温度補償されることで、安定した基準周波数を得ることができる。
【0005】
温度センサ付き水晶振動子10の具体例は、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されている。特許文献1には、温度センサとしてサーミスタを用いた1部屋構造のものが開示されている。また、特許文献2には、温度センサとしてダイオードを用いた(特許文献2の段落59)H型構造のものが開示されている。
【0006】
温度センサとしてサーミスタを用いた場合、サーミスタの温度依存性が非線形であることから温度センサとしての出力特性は非線形である。一方、温度センサとしてダイオードを用いたものは、ダイオードのPN接合部の温度依存性が線形であることから、温度センサとしての出力特性も線形であり、温度センサ付き水晶振動子においても有利なことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−205938号公報
【特許文献2】特開2015−76634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、温度センサとしてダイオードを用いる場合、水晶振動子10に設けるダイオードは、その極性がチップセットの電圧変換回路に対し所定の関係となるように、実装する必要がある。すなわち、図4(B)に示すように、ダイオード13は、その順方向のPN接合部の温度依存性を利用するため、その極性がチップセットの電圧変換回路に対し所定の関係となるように、温度センサ付き水晶振動子10に実装する必要がある。
【0009】
しかしながら、温度センサ付き水晶振動子を製造する場合、水晶振動子製造メーカにおいて、ダイオードの極性を逆向きにして実装してしまう場合も考えられる。従って、このような不具合を防止できる何らかの対策が望まれる。
この出願はこのような点に鑑みなされたものであり、従って、この出願の目的は、温度センサとしてダイオードを用いる水晶振動子において、上記不具合の発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的の達成を図るため、この発明によれば、水晶振動片と、温度センサとしてのダイオードと、を具える水晶振動子において、
前記ダイオードは、2つのダイオードを極性が逆向きに並列接続したダイオード対であることを特徴とする。
この発明を実施するに当たり、前記ダイオード対は、予め半導体素子として形成され外形的には1個の素子と見えるものとするのが良い。
【発明の効果】
【0011】
この発明の水晶振動子によれば、所定のダイオード対を用いるので、このダイオード対のうちの一方は必ずチップセットに対し所定の極性を示す。従って、チップセットと接続した際に所定の温度補償動作が得られる。さらに、チップセット接続時においても水晶振動子の逆接続による不発振、温度センサ機能の喪失を防止する等の効果が得られる。また、水晶振動子の製造メーカにおいては、ダイオードの実装時に極性確認作業を不要にできるので、製造設備の簡略化、製造タクトの向上等が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)は、この発明の水晶振動子を説明するブロック図、(B)、(C)各々は本発明に係るダイオードの好適例の説明図である。
図2】(A)〜(C)は、第1の実施形態の水晶振動子を説明する図である。
図3】(A)〜(C)は、第2の実施形態の水晶振動子を説明する図である。
図4】(A)は、本発明の背景を説明する図、(B)は本発明の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照してこの発明の水晶振動子について説明する。なお、説明に用いる各図はこの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明中で述べる構造例、使用部材等は、この発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0014】
1. 発明の構成
図1(A)は、この発明の水晶振動子の構成を説明するブロック図である。この発明の水晶振動子30は、水晶振動片11と、温度センサとしてのダイオード31と、を具える。ダイオード31は、第1のダイオード31a及び第2のダイオード31bの2個のダイードを、極性が逆向きに並列接続したダイオード対である。さらに、このダイオード31は、半導体メーカにおいて、同一の半導体ウエハ上に形成され外形的には1個の素子として見えるものとするのが良い。すなわち、内部の構造は、第1のダイオード31a及び第2のダイオード31bの2個のダイードを、極性が逆向きに並列接続した構造を持つ半導体素子であるが、外部から見ると、通常のダイオードに見える構造の半導体素子とするのが良い。例えば、図1(B)に示したように、第1のダイオード及び第2のダイオードの2個のダイードを、極性が逆向きに並列接続した構造を持つ半導体素子であって、チップ部品の形態になっているダイオード対はより好ましい。チップ部品の形態であると、実装がし易いからである。また、チップ部品としては、例えば図1(C)のように、半導体ウエハからダイシングして供給されるダイオード対のチップも好ましい。なお、図1(B)、(C)において、31xは電極である。
【0015】
こうしておけば、水晶振動子30を製造する者は、温度センサとしてサーミスタを用いる場合と同様に極性を気にせずに、水晶振動子30用のパッケージにダイオード31を実装できるからである。この結果、実装装置は極性確認機能を不要にでき、また、製造作業での極性確認作業も不要にできるので、製造装置のコスト低減や、製造タクトの短縮を図ることによる生産性の向上が期待できる。また、ダイオードの極性間違いによる不具合も皆無にできる。
【0016】
なお、上記のような、予め半導体素子として半導体メーカで形成されたダイオード対を用いた場合、ダイオード対を構成する各ダイオードは、同一の半導体ウエハに近接して形成されるので、これら2つのダイオードの特性は互いに同等のものになる。従って、このダイード対を水晶振動子にどちら向きに実装しても、チップセットに対し同様な特性を示すことができる。また、この実施形態では、ダイオード対を1個用いる例を示しているが、上記のダイオード対を2個以上、並列に又は直列に接続して用いる場合があっても良い。
【0017】
なお、水晶振動片11は、典型的には、ATカット水晶片であり、周知の通り、その表裏に図示しない励振用電極等を具える。
また、水晶振動子30は平面形状が四角形状であり、その外部底面の四隅に外部端子33a〜33dを具える。そして、図2(B)、図3(B)に示すように、これら4つの外部端子のうち対角に位置する例えば第1の組の外部端子33b、33dを水晶振動片11に接続してあり、対角に位置する第2の組の外部端子33a、33cをダイオード31に接続してある。こうすることにより、水晶振動子の実装時においても逆接続による不発振、温度センサ機能の喪失を防止することができる。
【0018】
2. 実際の構造例
2−1.第1実施形態
図2(A)〜(C)は、温度センサ付の水晶振動子であっていわゆる1部屋構造のものに、本発明を適用した例を説明する図である。特に、(A)図はその上面図、(B)図はその底面図、(C)図はその断面図であり、(A)図中のP−P線に沿った断面図である。
【0019】
この例の場合の水晶振動子30は、例えばセラミックパッケージ35を具えている。このセラミックパッケージ35は、水晶振動片11を内包できる凹部を具え、さらにこの凹部内の底面にダイオード対31を実装する第2の凹部を具えている。水晶振動片11及びダイオード対31は、このセラミックパッケージ35内に所定の配置関係で実装してある。そして、セラミックパッケージ35の土手部の天面に蓋部材37が接合されて、水晶振動片11及びダイオード対31は、セラミックパッケージ35内に封止されている。
【0020】
2−2.第2実施形態
図3(A)〜(C)は、温度センサ付き水晶振動子であっていわゆるH型構造のものに、本発明を適用した例を説明する図である。特に、(A)図はその上面図、(B)図はその底面図、(C)図はその断面図であり、(A)図中のQ−Q線に沿った断面図である。
【0021】
この例の場合の水晶振動子30は、セラミックパッケージ35の外部側の底面に、ダイオード対31用の凹部を設けてあり、この凹部内にダイオード対31を設けたものである。水晶振動片11を収納する部屋と、ダイオード対31を収納する部屋が、縦方向に積層された構造であり、断面がH型に見えるため、H型と称されているものである。
【0022】
2−3.その他の実施形態
上述においては、一部屋構造の例、H型構造の例を示したが、この発明の水晶振動子は上記の例に限られない。例えば、平板状のベースに水晶振動片11及びダイオード対31を実装し、一方、凹部を有したキャップ状の蓋部材を用意し、上記の平板状のベースをこのキャップ状の蓋部材で封止した構造の水晶振動子であっても良い。
【符号の説明】
【0023】
11:水晶振動片、 30:この発明の水晶振動子、
31:ダイオード対、 31a:第1のダイオード、
31b:第2のダイオード、 33a〜33d:端子、
35:セラミックパッケージ、 37:蓋部材。
図1
図2
図3
図4