特許第6962809号(P6962809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6962809-車両用推進軸 図000002
  • 特許6962809-車両用推進軸 図000003
  • 特許6962809-車両用推進軸 図000004
  • 特許6962809-車両用推進軸 図000005
  • 特許6962809-車両用推進軸 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962809
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】車両用推進軸
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/22 20060101AFI20211025BHJP
   F16F 15/12 20060101ALI20211025BHJP
   F16F 15/126 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B60K17/22 Z
   F16F15/12 Q
   F16F15/126 D
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-243019(P2017-243019)
(22)【出願日】2017年12月19日
(65)【公開番号】特開2019-108042(P2019-108042A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2020年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 知哉
【審査官】 長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−308072(JP,A)
【文献】 実開平6−63955(JP,U)
【文献】 特開2001−90815(JP,A)
【文献】 特開2007−290631(JP,A)
【文献】 特開2008−24276(JP,A)
【文献】 実開平5−41930(JP,U)
【文献】 実開平6−14588(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/22
F16F 15/12
F16F 15/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受に軸支され一端が等速ジョイントに連結した軸部材と、前記軸部材に取り付けられるトーショナルダンパとを備えた車両用推進軸であって、
前記トーショナルダンパは、
前記軸受と前記等速ジョイントとの間で前記軸部材に外嵌され、前記軸受に当接して前記軸受を軸方向に位置決めするストッパピースと、
前記ストッパピースの外周に形成される弾性体と、
前記弾性体の外周に形成される質量体と、
を備え
前記等速ジョイントは、アウタケースと、該アウタケースと前記軸部材との間で内部を封止するブーツとを備え、
前記ブーツが前記ストッパピースに固定されており、
前記ストッパピースに、前記等速ジョイントの内部と前記軸受とを連通させる連通路が形成されており、
前記連通路は、前記ストッパピースの前端から後端に亘り前記軸部材の軸心に沿って前記ストッパピースの内周に形成された溝を含む、
ことを特徴とする車両用推進軸。
【請求項2】
前記軸受の外輪には、車体側に接続する内環部材が外嵌され、
前記ストッパピースは、
前記内環部材よりも前記等速ジョイント寄りに配置され、前記弾性体および質量体が取り付けられるダンパ形成部と、
前記ダンパ形成部よりも小さい外径であり、前記内環部材の内部に配置されて前記軸受の内輪に当接する軸受当接部と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用推進軸。
【請求項3】
前記ストッパピースと前記軸部材とが、スプライン嵌合により一体回転することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用推進軸。
【請求項4】
前記ストッパピースと前記軸部材とが、双方の凹部に係止する球体により一体回転することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用推進軸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用推進軸に関する。
【背景技術】
【0002】
トーショナルダンパは、原動機あるいは変速機で生じる回転変動を推進軸において減衰する装置である。トーショナルダンパの一従来例として、ボルト穴を備えた内環と、内環の外側に放射状に伸びる複数の弾性体と、弾性体を内周に接着して保持される円環状の質量体とを備えたものが挙げられる。トーショナルダンパは、質量体が高速で回転することから、車両前後方向と回転方向において確実に取り付けられることが求められる。
【0003】
トーショナルダンパの取り付け例としては、特許文献1に示すように、前記内環を、変速機あるいは終減速装置のコンパニオンフランジと、推進軸のフランジヨークとで挟持し、ボルトで共締めする構造が挙げられる。これにより、トーショナルダンパは、車両前後方向と回転方向において推進軸に固定される。また、他の取り付け例として、特許文献2に示すように、内環を直接推進軸に嵌合して取り付ける構造がある。さらには、特許文献3に示すように、推進軸を構成する部材の外周に弾性体を加硫接着することで取り付ける構造もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−223140号公報
【特許文献2】特開2006−207751号公報
【特許文献3】特開2016−90056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トーショナルダンパは、所定の減衰力を発生させるために質量体がある程度大きなものとなる。一方、推進軸は車体下面のフロアトンネル内に配置されるため、スペースの制約から推進軸と変速機あるいは終減速装置との連結部にトーショナルダンパを挟持して取り付けることが困難な場合がある。
【0006】
この場合、推進軸の中央に配置された中間軸受近傍に取り付けることが考えられるが、中間軸受周りの構造によっては、挟持するフランジ相当の部材が存在しないこともある。このような場合には、特許文献2および3にあるように、推進軸を構成する部材に嵌合あるいは接着することでトーショナルダンパを取り付けることとなる。
【0007】
特許文献2,3の技術は、推進軸に対するトーショナルダンパの車両前後方向や回転方向の位置決めは専ら圧入嵌合や接着剤に依る構造である。しかし、推進軸は車体下部に配置されることから泥水や塩分の影響を受けやすい。仮にトーショナルダンパの取付部周りに腐食が生じた場合、嵌合部のがたつきや接着剤の劣化等が進み、トーショナルダンパの車両前後方向、回転方向の位置決め機能が損なわれるおそれがある。
【0008】
また、中間軸受が、等速ジョイントと連結した軸部材に取り付けられている場合においては、トーショナルダンパを中間軸受と等速ジョイントとの間に配置すると、トーショナルダンパの配置スペースを要する分、軸部材の長さが長くなるという問題がある。
【0009】
本発明はこのような課題を解消するために創作されたものであり、軸受に軸支された軸部材の長さの増長を抑えつつ、位置ずれがなく安定してトーショナルダンパを固定できる車両用推進軸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、軸受に軸支され一端が等速ジョイントに連結した軸部材と、前記軸部材に取り付けられるトーショナルダンパとを備えた車両用推進軸であって、前記トーショナルダンパは、前記軸受と前記等速ジョイントとの間で前記軸部材に外嵌され、前記軸受に当接して前記軸受を軸方向に位置決めするストッパピースと、前記ストッパピースの外周に形成される弾性体と、前記弾性体の外周に形成される質量体と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、圧入嵌合や接着剤を用いることなく、ストッパピースを用いて、位置ずれがなく安定してトーショナルダンパを推進軸に固定できる。そして、本発明によれば、ストッパピースが、軸受の抜け止め機能と、軸部材に対するトーショナルダンパの取付機能とを兼ねる。これにより、トーショナルダンパを軸受と等速ジョイントとの間に配置する構造において、軸受の抜け止め部材の配置スペースとトーショナルダンパの配置スペースとを個別に確保する必要がなくなり、その分、軸部材の長さの増長を抑制できる。また、部品点数の低減を図れ、組み付け工程も簡略化できる。
【0012】
また、本発明は、前記軸受の外輪には、車体側に接続する内環部材が外嵌され、前記ストッパピースは、前記内環部材よりも前記等速ジョイント寄りに配置され、前記弾性体および質量体が取り付けられるダンパ形成部と、前記ダンパ形成部よりも小さい外径であり、前記内環部材の内部に配置されて前記軸受の内輪に当接する軸受当接部と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、軸受に向けて跳ねる泥水やチッピングをトーショナルダンパにて効果的に保護できる。
【0014】
また、本発明は、前記等速ジョイントは、アウタケースと、該アウタケースと前記軸部材との間で内部を封止するブーツとを備え、前記ブーツが前記ストッパピースに固定されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、軸部材の外周にブーツの嵌合部のスペースを確保する必要がない。これにより、軸部材の長さの増長を抑制できる。
【0016】
また、本発明は、前記ストッパピースに、前記等速ジョイントの内部と前記軸受とを連通させる連通路が形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、連通路により等速ジョイント内の圧力を軸受の取付スペースに開放できる。連通路は、等速ジョイントの内部と軸受とを連通するため、外部からの泥水等の浸入のおそれも殆ど無い。
【0018】
また、本発明は、前記ストッパピースと前記軸部材とが、スプライン嵌合により一体回転することを特徴とする。
また、本発明は、前記ストッパピースと前記軸部材とが、双方の凹部に係止する球体により一体回転することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、軸部材に対するストッパピースの回り止めを簡単な構造で実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、軸部材の長さの増長を抑えつつ、位置ずれがなく安定してトーショナルダンパを推進軸に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態の推進軸の側断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】本発明の第2実施形態の推進軸の側断面図である。
図4図3の要部拡大図である。
図5図3におけるV-V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について2つの実施形態を説明する。各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0023】
「第1実施形態」
図1において、車両用推進軸(以降、単に推進軸という)20は、例えばFF(Front-engine Front-drive)ベースの四輪駆動車に搭載される。推進軸20は、フロアパネル(不図示)の下方で車両前後方向に延在するように配置され、車体前部の変速装置(不図示)からの動力を車体後部の終減速装置(不図示)に伝達する。
【0024】
推進軸20は、車両前寄りの第1パイプ材21と、車両後寄りの第2パイプ材22と、第1パイプ材21と第2パイプ材22との間に配置された軸部材であるスタブシャフト23と、第1パイプ材21とスタブシャフト23とを連結する等速ジョイント24とを備えている。第1パイプ材21の後端は、等速ジョイント24のアウタケース25の前端に溶接等により接合している。第2パイプ材22の前端は、スタブシャフト23の後端に溶接等により接合している。等速ジョイント24の内部にはグリスが封入されている。
【0025】
等速ジョイント24は、例えばトリポード型等速ジョイントである。等速ジョイント24は、開口部を後向きにして配置された有底円筒状のアウタケース25と、アウタケース25の摺動溝に沿って軸心O方向に摺動するローラ26を有するインナ部材27とを備えている。インナ部材27には、スタブシャフト23の前端がスプライン嵌合により連結されている。
【0026】
アウタケース25の内部は、グリスの流出防止や泥水、塵等の浸入防止のために設けたブーツ28により封止される。ブーツ28はゴム製部材である。ブーツ28の一端はアダプタ29を介してアウタケース25に取り付けられている。アダプタ29は、前後端が開口形成された略筒状の板金部材であり、前端側がアウタケース25の後端周りに嵌合固定されている。アダプタ29の後端には内側に折り返した折り返し部29Aが形成されている。ブーツ28は、一端が折り返し部29Aに挟持固定され、一旦前方に延びた後に内側に折り返されて後方に延び、他端がスタブシャフト23の外周面にバンド30により締着されている。
【0027】
なお、等速ジョイント24としては、トリポード型に限定されず、ダブルオフセット型やバーフィールド型等であってもよい。
【0028】
スタブシャフト23は、バンド30の締着部の後方に形成され後記するストッパピース2が外嵌するストッパピース嵌合部31と、ストッパピース嵌合部31の後方に形成され後記する軸受41が外嵌する軸受嵌合部32と、軸受嵌合部32の後方で軸受嵌合部32よりも大径に形成された軸受規制部33と、軸受規制部33の後方で大径に形成され後端が第2パイプ材22と接合するパイプ接合部34とを備えている。
【0029】
スタブシャフト23は、中間軸受体40により車体に支持されている。中間軸受体40は、スタブシャフト23の軸受嵌合部32に外嵌する軸受41と、軸受41に外嵌する円筒状の内環部材42と、内環部材42の径外側に配置された環状の防振部材43と、防振部材43の径外側に配置された外環部材44と、外環部材44に外嵌する円環部48と、円環部48に接合されたブラケット49とを備えている。
【0030】
内環部材42は環状を呈する金属製の部材であり、軸受41の外輪に外嵌している。防振部材43は、環状を呈するゴム製部材であり、スタブシャフト23からの振動を減衰し、車体への振動の伝達を低減させる。内環部材42は防振部材43の内周面に加硫溶着されている。軸受41は、その内輪が後記するストッパピース2と軸受規制部33とに挟まれることで軸心O方向の抜け止めがなされる。内環部材42とストッパピース2との間、および内環部材42と軸受規制部33との間には、それぞれ軸受41への泥水や塵等の浸入を防止するシール部材46,47が設けられている。外環部材44は、環状の金属製の部材であり、円環部48、ブラケット49を介して車体の下部に固定されている。
【0031】
なお、スタブシャフト23において、軸受規制部33とパイプ接合部34との間には、内環部材42の後端との間で隙間を詰めるように径外方向に向けて凸部35が突設されている。この凸部35により、シール部材47への泥水や塵等の浸入が抑制される。
【0032】
「トーショナルダンパ」
以上のように中間軸受体40で軸支されたスタブシャフト23には、トーショナルダンパ1Aが取り付けられている。トーショナルダンパ1Aは、軸受41と等速ジョイント24との間でスタブシャフト23のストッパピース嵌合部31に外嵌され、軸受41に当接して軸受41を軸心O方向に位置決めするストッパピース2と、ストッパピース2の外周に形成される弾性体3と、弾性体3の外周に形成される質量体4とを備えて構成されている。トーショナルダンパ1Aは、例えば原動機のトルク変動が要因となって推進軸20の回転方向に振動が生じた場合に、補助的な質量体4を弾性体3を介して付加することにより推進軸20の固有振動数周辺での共振現象を抑制する機能を担う。
【0033】
図2において、ストッパピース2は、例えば金属製の円筒状部材であり、冷間鍛造により形成するのが好適である。ストッパピース2は、内環部材42の前端から若干の隙間Cを空けて等速ジョイント24寄りに配置される大きい外径のダンパ形成部5と、ダンパ形成部5よりも小さい外径であり、ダンパ形成部5の後端から後方に延びる軸受当接部6とを備えた形状からなる。ダンパ形成部5は、内環部材42の外径寸法と略同じ程度の外径寸法である。ゴム部材からなる弾性体3は、このダンパ形成部5の外周面に加硫接着により接着されており、弾性体3の外周面に環状の質量体4が加硫接着により接着されている。
【0034】
軸受当接部6は、内環部材42の内部に配置されており、その後端が軸受41の内輪の前端面に当接している。前記したシール部材46は、内環部材42の内周と軸受当接部6の外周との間に設けられている。シール部材46よりも前側において軸受当接部6の外周には、内環部材42の内周との間で隙間を詰めるように径外方向に向けて凸部7が突設されている。前記隙間Cと共にこの凸部7による隙間形成により、シール部材46への泥水や塵等の浸入が抑制される。
【0035】
ストッパピース2の前端は、スタブシャフト23の外周に係合したスナップリング8により抜け止めされている。ストッパピース2の抜け止め部材としては、スナップリング8の他に、ナット等を利用してもよい。
【0036】
ストッパピース2をスタブシャフト23と一体回転させる手段としては、双方の凹部に球体11を係止させる構造が挙げられる。ストッパピース2の軸受当接部6の内周には軸心O方向に延びる凹溝9が形成されている。一方、スタブシャフト23のストッパピース嵌合部31の外周には係止穴10が形成され、この係止穴10に鋼球等の球体11がストッパピース嵌合部31の外周から突出するように係止している。球体11は凹溝9の内部に位置する。以上のように、凹溝9と係止穴10の双方に係止する球体11により、ストッパピース2がスタブシャフト23と一体回転する。また、ストッパピース2とスタブシャフト23とをスプライン嵌合により一体回転させるようにしてもよい。
【0037】
第1実施形態の推進軸20によれば、スペースの制約の多い車体フロアにおいて、比較的スペースが確保された軸受41の近傍にスペース効率良くトーショナルダンパ1Aを配置できる。具体的には、ストッパピース2が、軸受41の抜け止め機能と、スタブシャフト23に対するトーショナルダンパ1Aの取付機能(内環機能)とを兼ねる。これにより、トーショナルダンパ1Aを軸受41と等速ジョイント24との間に配置する構造において、軸受41の抜け止め部材の配置スペースとトーショナルダンパ1Aの配置スペースとを個別に確保する必要がなくなり、その分スタブシャフト23の長さの増長を抑制できる。また、部品点数の低減を図れ、組み付け工程も簡略化できる。
【0038】
内環部材42よりも等速ジョイント24寄りに配置され、弾性体3および質量体4が取り付けられるダンパ形成部5と、ダンパ形成部5よりも小さい外径であり、内環部材42の内部に配置されて軸受41の内輪に当接する軸受当接部6と、を備えるストッパピース2とすることにより、軸受41に向けて跳ねる泥水やチッピングをトーショナルダンパ1Aにて効果的に保護できる。特に、本実施形態の場合、トーショナルダンパ1Aが軸受41よりも前方に配置されることとなるので、車両走行中、前方から内環部材42の内部に浸入して軸受41に向けて跳ねる泥水やチッピングをトーショナルダンパ1Aにて保護でき、軸受41の耐久性が向上する。
【0039】
凹溝9と係止穴10の双方に係止する球体11によりストッパピース2とスタブシャフト23とを一体回転させる、またはストッパピース2とスタブシャフト23とをスプライン嵌合により一体回転させることにより、簡単な組み付け作業でストッパピース2の回り止めを行える。スタブシャフト23に対して圧入嵌合や接着剤を用いないため、泥水や塩分の影響を全く受けない。
【0040】
「第2実施形態」
図3図4に示す第2実施形態に係るトーショナルダンパ1Bは、第1実施形態のトーショナルダンパ1Aに対し、等速ジョイント24のブーツ28がストッパピース2に外嵌合して固定されている点、およびストッパピース2に、等速ジョイント24の内部と軸受41とを連通させる連通路13、14が形成されている点で異なっている。
【0041】
ストッパピース2には、ダンパ形成部5の前端から前方に延び、スタブシャフト23のストッパピース嵌合部31に外嵌するブーツ嵌合部12が形成されている。等速ジョイント24のブーツ28は、ブーツ嵌合部12の外周に外嵌してバンド30により締着されている。
【0042】
ストッパピース2の内周には、ストッパピース2の前端から後端に亘り軸心Oに沿って連通路13が形成されている。なお、ストッパピース2のブーツ嵌合部12の前端内径に面取りが施されている場合には、スナップリング8の口部と連通路13とは面取りを介して通ずることとなる。軸心Oと連通路13との径方向の距離は、等速ジョイント24のアウタケース25の内径寸法よりも十分に小さく、およそアウタケース25の内径寸法の半分程度である。連通路13は、例えば図5に示すように断面が矩形状を呈する溝として形成されている。また、ストッパピース2の後端、すなわち軸受当接部6の後端には、軸受41の前端とシール部材46とで囲まれた空間S(図4)と、連通路13とを連通するように、軸心Oの径方向に沿って連通路14が形成されている。連通路14も例えば断面が矩形状を呈した溝として形成されている。
【0043】
第2実施形態の推進軸20によれば、等速ジョイント24のブーツ28をストッパピース2に外嵌することにより、スタブシャフト23の外周にブーツ28の締着部のスペースを確保する必要がない。これにより、スタブシャフト23の長さの増長を抑制できる。
【0044】
第2実施形態の推進軸20によれば、連通路13,14により等速ジョイント24内の圧力を軸受41の取付スペースに開放できる。連通路13,14は、等速ジョイント24の内部と軸受41の取付スペースとを連通するため、外部からの泥水等の浸入のおそれも殆ど無い。連通路13は、アウタケース25の内周よりも軸心Oに十分に近く位置しているので、アウタケース25の内周に溜まっているグリスが連通路13に入り込むことも無い。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。2つの実施形態では、等速ジョイント24の後方に中間軸受体40を配置する構成を明示したが、中間軸受体40の後方に等速ジョイント24を配置した構成においても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B トーショナルダンパ
2 ストッパピース
3 弾性体
4 質量体
5 ダンパ形成部
6 軸受当接部
7 凸部
8 スナップリング
9 凹溝
10 係止穴
11 球体
12 ブーツ嵌合部
13,14 連通溝
20 車両用推進軸
21 第1パイプ材
22 第2パイプ材
23 スタブシャフト(軸部材)
24 等速ジョイント
28 ブーツ
40 中間軸受体
41 軸受
図1
図2
図3
図4
図5