(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962813
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】注出キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20211025BHJP
B65D 47/08 20060101ALI20211025BHJP
B65D 47/06 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
B65D47/20 300
B65D47/08 100
B65D47/06 400
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-253103(P2017-253103)
(22)【出願日】2017年12月28日
(65)【公開番号】特開2019-119452(P2019-119452A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝之
(72)【発明者】
【氏名】當麻 徹
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【審査官】
武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−69023(JP,A)
【文献】
特開2017−81636(JP,A)
【文献】
実開昭48−13445(JP,U)
【文献】
特開2002−205755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着され、筒状壁と、該筒状壁に連結するとともに該容器の内部空間に通じる開口を設けた天壁とを備えるキャップ本体と、
前記キャップ本体の上方に位置するとともに該キャップ本体に対して着脱可能に装着され、前記筒状壁に当接して内側空間を区画するとともに前記天壁に当接して前記開口に通じる外側空間を区画する隔壁と、該隔壁を貫いて該内側空間に通じる注出口とを備える注出部材と、
前記筒状壁及び前記隔壁の少なくとも一方に設けられ、前記外側空間と前記内側空間とを連通させる連通口と、
前記筒状壁内に移動可能に配され、該隔壁から離反した状態では前記内部空間の内容液を前記開口、前記外側空間、前記連通口及び前記内側空間を通して前記注出口から注出させる一方、前記隔壁に当接した状態では、該注出口に向かう内容液の流れを遮断して注出を停止させる移動体と、を備える注出キャップ。
【請求項2】
前記隔壁は、前記筒状壁の外周面又は内周面に当接する環状壁を有し、
前記連通口は、前記筒状壁及び前記環状壁の少なくとも一方に設けられ、該筒状壁の軸線に沿って延在する少なくとも一つの溝部である請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項3】
前記天壁は、前記内部空間に通じるとともに前記開口とは別異に設けられる他の開口を備える請求項1又は2に記載の注出キャップ。
【請求項4】
前記注出部材の上方に位置するとともに該注出部材に対して着脱自在に装着され、前記注出口を閉鎖する蓋体を備える請求項1〜3の何れか一項に記載の注出キャップ。
【請求項5】
前記キャップ本体と前記注出部材とを連結する第1ヒンジと、該第1ヒンジに対向するとともに該注出部材と前記蓋体とを連結する第2ヒンジとを備え、成形時においては、該キャップ本体、該第1ヒンジ、該注出部材、該第2ヒンジ、該蓋体の順で一列に連結する請求項4に記載の注出キャップ。
【請求項6】
前記移動体は、弱化部を介して前記筒状壁に連結し、前記第1ヒンジで折り返して前記キャップ本体に対して前記注出部材を装着した際には前記隔壁によって該筒状壁の内側に押し込まれて該弱化部が破断するものである請求項5に記載の注出キャップ。
【請求項7】
前記筒状壁は、第3ヒンジを介して該筒状壁に連結するとともに該筒状壁の内側に向けて回動させた際は該筒状壁に保持されて該筒状壁からの前記移動体の抜け出しを阻止する底壁を有する請求項1〜6の何れか一項に記載の注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に装着して容器内に収容した内容液を注出する注出キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料や食品調味料などの内容液を収容する容器においては、容器の口部に装着され、容器を傾けることで内容液を注出することができる注出キャップが知られている(例えば特許文献1参照)。このような注出キャップによれば、容器の傾き具合(容器の傾き角度や傾ける際の速度、傾いた状態にしておく時間など)に応じて内容液の注出量を変えることができる。
【0003】
一方、毎回決まった量の内容液を注出したいとの要望もある。例えば特許文献2には、筒状体の内側に移動可能な球状の弁体を配し、弁体が移動している間は内容液が注出される一方、弁体が弁座に着座すると内容液の注出が停止されるように構成した注出キャップが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−169355号公報
【特許文献2】特開2015−30488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1、2に示されているように、容器の傾き具合に応じて任意の量で注出するものと所定量で注出するものとでは、キャップの構造が異なっている。すなわち従来の注出キャップは、任意の量か定量かの何れか一方でしか内容液を注出することができない。このため、使用場面に応じて内容液の注出方法を切り替えることができる注出キャップが求められていた。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであり、内容液を任意の量で注出することも所定量で注出することも可能な注出キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器の口部に装着され、筒状壁と、該筒状壁に連結するとともに該容器の内部空間に通じる開口を設けた天壁とを備えるキャップ本体と、
前記キャップ本体の上方に位置するとともに該キャップ本体に対して着脱可能に装着され、前記筒状壁に当接して内側空間を区画するとともに前記天壁に当接して前記開口に通じる外側空間を区画する隔壁と、該隔壁を貫いて該内側空間に通じる注出口とを備える注出部材と、
前記筒状壁及び前記隔壁の少なくとも一方に設けられ、前記外側空間と前記内側空間とを連通させる連通口と、
前記筒状壁内に移動可能に配され、該隔壁から離反した状態では前記内部空間の内容液を前記開口、前記外側空間、前記連通口及び前記内側空間を通して前記注出口から注出させる一方、前記隔壁に当接した状態では、該注出口に向かう内容液の流れを遮断して注出を停止させる移動体と、を備える注出キャップである。
【0008】
前記隔壁は、前記筒状壁の外周面又は内周面に当接する環状壁を有し、
前記連通口は、前記筒状壁及び前記環状壁の少なくとも一方に設けられ、該筒状壁の軸線に沿って延在する少なくとも一つの溝部であることが好ましい。
【0009】
前記天壁は、前記内部空間に通じるとともに前記開口とは別異に設けられる他の開口を備えることが好ましい。
【0010】
前記注出部材の上方に位置するとともに該注出部材に対して着脱自在に装着され、前記注出口を閉鎖する蓋体を備えることが好ましい。
【0011】
前記キャップ本体と前記注出部材とを連結する第1ヒンジと、該第1ヒンジに対向するとともに該注出部材と前記蓋体とを連結する第2ヒンジとを備え、成形時においては、該キャップ本体、該第1ヒンジ、該注出部材、該第2ヒンジ、該蓋体の順で一列に連結することが好ましい。
【0012】
前記移動体は、弱化部を介して前記筒状壁に連結し、前記第1ヒンジで折り返して前記キャップ本体に対して前記注出部材を装着した際には前記隔壁によって該筒状壁の内側に押し込まれて該弱化部が破断するものであることが好ましい。
【0013】
前記筒状壁は、第3ヒンジを介して該筒状壁に連結するとともに該筒状壁の内側に向けて回動させた際は該筒状壁に保持されて該筒状壁からの前記移動体の抜け出しを阻止する底壁を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明における注出キャップは、キャップ本体の筒状壁内に移動体が配されていて、移動体は、注出部材の隔壁から離反した状態では開口や外側空間、内側空間等を通して内容液を注出口から注出させる一方、隔壁に当接した状態では、注出口に向かう内容液の流れを遮断して注出を停止させることができる。すなわち、注出口から内容液を注出させる場合は、移動体の移動位置に応じて内容液を所定量で注出することができる。また、注出部材はキャップ本体に対して着脱可能であるため、注出部材を取り外した状態で容器を傾ければ、キャップ本体の天壁に設けた開口を通して内容液を任意の量で注出することができる。
【0015】
隔壁に、筒状壁の外周面又は内周面に当接する環状壁を設け、連通口を、筒状壁及び環状壁の少なくとも一方に設けられ、筒状壁の軸線に沿って延在する少なくとも一つの溝部とする場合は、内容液は連通口である溝部を経て、注出口から注出される。すなわち、内容液が溝部を通過する際にはある程度高い圧力が必要であり、そのためには、容器を押圧して内部空間を加圧することが必要になる。ここで、意図した通りに移動体が移動する場合は、想定した量で内容液を注出することが可能であるが、自重のみで移動体を動かそうとすると、容器の傾き具合によっては想定した通りに移動体が動かないおそれがある。一方、容器を押圧して内容液に圧力を加えると、移動体は内容液の圧力によっても動くため、より安定的な移動が見込めることになり、注出する内容液の量もより安定させることができる。
【0016】
天壁に、内部空間に通じるとともに開口とは別異に設けられる他の開口を設ける場合は、注出部材を取り外して任意の量で内容液を注出するにあたって、開口から内容液を注出させつつ、他の開口からは内容液と置換するための空気を導入することができるため、任意の量での内容液の注出がスムーズに行えるようになる。
【0017】
注出部材の上方に位置するとともに注出部材に対して着脱自在に装着され、注出口を閉鎖する蓋体を設ける場合は、保管時において注出口への埃等の付着を防止することができる。また、乾燥による内容液の固化も防ぐことができる。
【0018】
キャップ本体と注出部材とを連結する第1ヒンジと、第1ヒンジに対向するとともに注出部材と蓋体とを連結する第2ヒンジとを備え、成形時においては、キャップ本体、第1ヒンジ、注出部材、第2ヒンジ、蓋体の順で一列に連結する場合は、これらを一つの部材として成形することができるため、金型に要する費用等が削減されてコストを抑制することができる。また使用時には、第1ヒンジと第2ヒンジによって、蓋体や注出部材を片手で開くことができ、使い勝手が向上する。
【0019】
移動体を、弱化部を介して筒状壁に連結し、第1ヒンジで折り返してキャップ本体に対して注出部材を装着した際には、隔壁によって筒状壁の内側に押し込まれて弱化部が破断するよう構成する場合は、移動体も含めて一つの部材として成形することができるため、コストをより抑制することができる。
【0020】
また筒状壁に、第3ヒンジを介して筒状壁に連結するとともに、筒状壁の内側に向けて回動させた際は筒状壁に保持されて筒状壁からの移動体の抜け出しが阻止される底壁を設ける場合は、底壁も含めて一つの部材として成形することができるため、コストを更に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に従う注出キャップの一実施形態を、容器に装着した状態で示した側面視での断面図である。
【
図2】(a)は
図1のA−Aに沿う断面図であり、(b)は
図1のB−Bに沿う断面図であり、(c)は
図1に示した移動体の平面図である。
【
図3】
図1に示した注出キャップの成形時での状態を示した断面図である。
【
図4】
図1の注出キャップから所定量の内容液を注出する状況について示した図である。
【
図5】
図1の注出キャップから任意の量の内容液を注出する状況について示した図である。
【
図6】本発明に従う注出キャップの他の実施形態を、容器に装着した状態で示した側面視での断面図である。
【
図7】
図6に示した注出キャップの成形時での状態を示した断面図である。
【
図8】(a)は
図6に示すC−Cに沿う断面図であり、(b)は
図6に示す矢印Dに沿う矢視図であり、(c)は
図7に示す矢印Eに沿う矢視図であり、(b)は
図7の矢印Fに沿う矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明に従う注出キャップの一実施形態について説明する。なお、本明細書等において「上方」とは、水平面に載置した容器(符号8)に注出キャップ(符号1)を装着した状態において、キャップ本体(符号2)に対して蓋体(符号6)が位置する側であり、「下方」とはその逆側である。また「前方」とは、蓋体に設けた摘まみ(符号6f)が位置する側であり、「後方」とはその逆側である。
【0023】
本実施形態の注出キャップ1は、キャップ本体2、第1ヒンジ3、注出部材4、第2ヒンジ5、蓋体6、移動体7を備えている。また注出キャップ1は、容器8に装着される。
【0024】
まず、容器8について説明する。容器8は、有底筒状をなすものであって、上部を開放した円筒状の口部8aを備えている。口部8aの外周面には、径方向外側に向けて突出する爪部(容器爪部)8bが設けられていて、打栓によって注出キャップ1を保持している。また容器8の内側には、内容液を収容する内部空間8cが形成されている。なお、本発明に従う注出キャップは、打栓タイプによるものに限られず、口部外周面に雄ねじを備える容器に対して装着されるようにした、ねじタイプのものも含まれる。
【0025】
次にキャップ本体2について説明する。キャップ本体2は、円筒状になる筒状壁2aを備えている。筒状壁2aの上方は開放していて、その内周面には少なくとも1つの内向き凸部2bが設けられ、その外周面には筒状壁2aの軸線(容器8の軸線Oと一致する)に沿って延在する少なくとも1つの溝部2cが設けられている。本実施形態の内向き凸部2bと溝部2cは、
図2(a)に示すように、周方向に等間隔でそれぞれ4つ設けられている。そして
図1に示すように筒状壁2aの下方は、底壁2dによって閉鎖されている。なお底壁2dには、底壁2dを貫く孔2eが設けられている。
【0026】
またキャップ本体2は、筒状壁2aに連結する天壁2fを備えている。本実施形態の天壁2fは、中央部において筒状壁2aと連結するものであり、筒状壁2aから径方向外側に向けて延在する水平部分と、水平部分の外縁から上方に向けて立ち上がって筒状壁2aを取り囲む環状部分とで構成される形態をなしている。ここで、環状部分の上端部は径方向外側に向けて湾曲している。また、筒状壁2aの水平部分には、その後方において、天壁2fを上下方向に貫く開口(第1開口)2gが設けられていて、更に水平部分の前方には、天壁2fを上下方向に貫くとともに
図2(b)に示すように第1開口2gよりも開口面積が小さくなる他の開口(第2開口)2hが設けられている。なお、後述するように第1開口2gは内容液を任意の量で注出する際の注出口として機能する部位であり、筒状壁2aの環状部分は、第1開口2gから内容液を注出する際の注出筒として機能する部位である。
【0027】
更にキャップ本体2は、側面視での断面形状が概略U字状をなすとともに口部8aを取り囲んで天壁2fに連結する外周壁(キャップ本体外周壁)2jを備えていて、キャップ本体2は、天壁2fとキャップ本体外周壁2jとによって容器爪部8bに係合保持されている。また、天壁2fとキャップ本体外周壁2jとの連結部には、径方向外側に向けて突出する係合部(キャップ本体係合部)2kが設けられている。
【0028】
またキャップ本体外周壁2jの前方には、第1ヒンジ3が設けられていて、キャップ本体2の上方に位置する注出部材4は、第1ヒンジ3を介してキャップ本体2と一体に連結している。
【0029】
注出部材4は、筒状壁2a及び天壁2fの上方に位置する隔壁4aを備えている。隔壁4aの中央部には、筒状壁2aの外周面に当接する環状壁(内側環状壁)4bが設けられていて、筒状壁2aの内側に空間(内側空間)4cを区画している。なお、内側環状壁4bの下端は溝部2cよりも上方に位置していて、内側空間4cは溝部2cを介して後述する外側空間と通じている。また内側環状壁4bの径方向内側には、隔壁4aを貫くとともに内容液の出口となる注出口4dと、注出口4dを取り囲んで上方に向けて立ち上がるとともに上端部を径方向外側に向けて湾曲させた注出筒4eが設けられている。また隔壁4aは、注出口4dを取り囲んで下方に向けて延在する環状の閉鎖壁4fを備えている。更に隔壁4aは、内側環状壁4bの径方向外側に、天壁2fにおける環状部分の内周面に当接する外側環状壁4gを備えていて、筒状壁2aの外側に空間(外側空間)4hを区画している。
【0030】
また注出部材4は、側面視での断面形状が概略逆向きのU字状をなすとともに天壁2fにおける環状部分を取り囲んで隔壁4aに連結する外周壁(注出部材外周壁)4jを備えている。注出部材外周壁4jには、径方向内側に向けて突出してキャップ本体係合部2kに対して着脱可能に係合する係合部(注出部材第1係合部)4kが設けられている。また、隔壁4aと注出部材外周壁4jとの連結部には、径方向外側に向けて突出する係合部(注出部材第2係合部)4mが設けられている。
【0031】
また、注出部材外周壁4jの後方には、第2ヒンジ5が設けられていて、注出部材4の上方に位置する蓋体6は、第2ヒンジ5を介して注出部材4と一体に連結している。
【0032】
蓋体6は、隔壁4aの上方に位置する頂壁6aを備えている。頂壁6aの中央部には、注出筒4eの内周面と当接する円筒状のシール筒6bが設けられている。またシール筒6bの径方向外側には、隔壁4aに当接して頂壁6aに力が付与されても変形を防止する環状のストッパー6cが設けられている。また、頂壁6aの外縁部には、下方に向けて延在する外周壁(蓋体外周壁)6dが設けられていて、蓋体外周壁6dの内周面には、凹状をなすとともに注出部材第2係合部4mに対して着脱自在に係合する係合部(蓋体係合部)6eが設けられている。また蓋体外周壁6dの前方には、径方向外側に延在して蓋体6を開く際の指掛かりとなる摘まみ6fが設けられている。
【0033】
移動体7は、筒状壁2aの内側に移動可能に配されている。
図1、
図2(c)に示すように移動体7は、上下方向中央部に位置する円板部7aと、円板部7aの中央部から上下方向に延在する円柱部7bと、円板部7aの外縁部から上下方向に延在する円筒部7cと、円筒部7cから径方向外側に向けて突出するリング状の突出部7dとを備えている。なお移動体7は、
図1に示すように注出部材4がキャップ本体2に装着された状態において、底壁2dと閉鎖壁4fとの間で移動するものであり、移動体7が閉鎖壁4f側に移動した際には、円筒部7cの上面と閉鎖壁4fの下面は全周に亘って当接する。また、キャップ本体2から注出部材4を取り外した状態では、移動体7は、突出部7dが内向き凸部2bに引っ掛かるまで移動する。
【0034】
ところで本実施形態のキャップ本体2等は合成樹脂製であって、
図3に示すように、キャップ本体2、第1ヒンジ3、注出部材4、第2ヒンジ5、蓋体6の順で、一列に連結した状態で成形される。このため、これらを別々で形成する場合と比較して金型に要する費用等が削減されてコストを抑制することができる。なお、本実施形態の移動体7は、キャップ本体2等とは別異に形成されている。
【0035】
このような形態になる注出キャップ1において、内容液を所定量で注出させる場合は、
図4に示すように蓋体6を開いた状態とする。そして容器8を傾けるとともにこれを押圧すると、内部空間8cが加圧され、それに伴い内容液は、第1開口2gや第2開口2hを通って外側空間4hに導入され、更に溝部2cを経て内側空間4cに導入されて、注出口4dを通して注出筒4eから注出される。この際、加圧された内容液は孔2eからも内側空間4cに導入されるため、移動体7は、それ自身の自重や加圧された内容液によって閉鎖壁4fに向けて移動する。そして移動体7が閉鎖壁4fに当接すると、注出口4dは、閉鎖壁4fと円筒部7cによって閉鎖されるため、内容液の注出も停止する。このように、キャップ本体2に注出部材4が装着された状態では、移動体7が底壁2dから閉鎖壁4fまで移動する間のみ内容液が注出される。
【0036】
一方、内容液を任意の量で注出させる場合には、
図5に示すようにキャップ本体2に対して注出部材4を開いた状態とする。そして、第2開口2hに対して第1開口2gが下方に位置する姿勢で容器8を傾けると、内部空間8cの内容液は、第1開口2gを経由して天壁2fの環状部分を伝って注出される。なお、内容液を注出する際は、第2開口2hを通して内部空間8cに空気が導入されるため、内部空間8cでは内容液と空気との置換が行われる。このため内容液は、容器8を傾けている間、スムーズに注出される。なお、容器8を傾けることで移動体7は筒状壁2a内を移動するが、内向き凸部2bに突出部7dが引っ掛かるため、移動体7が筒状壁2aから脱落することはない。また、筒状壁2aの内周面と突出部7dとの隙間(径方向の隙間)は僅かであり、また突出部7dはリング状であって全周に亘って延在しており、周方向に切れ目がないため、筒状壁2aと移動体7の間からの内容液の流出は有効に防止される。
【0037】
次に、
図6〜
図8を参照しながら、本発明に従う注出キャップの他の実施形態について説明する。なお以下の説明では、前述の注出キャップ1と相異する点を取り上げることとし、基本的に注出キャップ1と同一となる部分については、図面に同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
本実施形態の注出キャップ1’において、キャップ本体2は、筒状壁2aと天壁2fに替えて筒状壁2a’と天壁2f’を備えている。天壁2f’は、前述の天壁2fよりも下方において筒状壁2a’と連結している。また筒状壁2a’は、天壁2f’と連結する部位よりも上方においては
図8(a)に示すように円筒状をなす一方、天壁2f’と連結する部位よりも下方においては
図8(b)に示すように角筒状をなすものである。また本実施形態では、前述の底壁2dに替えて、第3ヒンジ2mを介して筒状壁2a’の下端に連結する底壁2d’を備えている。ここで底壁2d’は、
図8(c)に示すように、概略矩形状をなすとともに先端側の2つの角部は比較的半径の大きい円弧状に形成されていて、また成形時においては、
図7に示すように筒状壁2a’に沿って延在している。なお筒状壁2a’の内周面には、
図6に示すように係止凸部2nが設けられている。このような形態になる底壁2d’は、第3ヒンジ2mを起点として筒状壁2a’の内側に向けて回動させると、係止凸部2nに引っ掛かって保持される。なお、上述したように底壁2d’の2つの角部は比較的半径の大きい円弧状に形成されているため、係止凸部2nに引っ掛かって保持される状態では、
図8(b)に示すように筒状壁2a’と底壁2d’の間には孔2e’が形成される。これにより、筒状壁2a’の内側に区画される内側空間4cは、孔2e’を通して容器8の内部空間8cに連通する。
【0039】
また本実施形態の移動体7は、
図7に示すように成形時において、強度の低い弱化部2pを介して筒状壁2a’の上部に連結している。すなわち本実施形態では、成形時においては注出キャップ1’に関わる全ての部材が一体化している。なお、移動体7が筒状壁2a’に連結した状態において、
図6に示すように第1ヒンジ3で折り曲げて、キャップ本体2に対して注出部材4を装着させると、移動体7は閉鎖壁4fによって押し込まれる。このため移動体7は、弱化部2pで切り離されてそのまま筒状壁2a’内に配されることになる。なお弱化部2pは、筒状壁2a’に連結する側の厚みに対して移動体7に連結する側の厚みが厚くなっていて、筒状壁2a’との境界で破断するようにしている。このような本実施形態の注出キャップ1’によれば、移動体7を含めて全ての部材を一体化させたことによって金型数が削減されるうえ、キャップ本体2に注出部材4を装着すれば移動体7の取り付けが完了するため、組み立て工数も減らすことができる。すなわち本実施形態の注出キャップ1’によれば、コストを更に抑制することができる。
【0040】
そして注出キャップ1’においても、蓋体6を開いて容器8を傾け、更にこれを押圧すると、移動体7が底壁2d’から閉鎖壁4fまで移動する間、内容液を注出することができる。また、注出部材4を開いて容器8を傾ければ、内容液を任意の量で注出することができる。
【0041】
以上、2つの実施形態に基づいて説明したが、本発明に従う注出キャップは、これらの実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含まれる。例えば移動体7の形状は種々変更可能であって、円柱部7bと円筒部7cとを径方向に結合させて、全体として円柱状になるようにしてもよい。また、キャップ本体、注出部材、及び蓋体を、第1ヒンジや第2ヒンジで連結せずに、それぞれ分離させてもよい。更に、上述した内側環状壁4bは、筒状壁2aの外周面に当接するものであったが、内周面に当接するものでもよい。また上述した実施形態では、内側空間4cと外側空間4hとを連通させる連通口として、筒状壁2aに溝部2cを設けたが、溝部2cは内側環状壁4bに設けてもよく、また溝部2cによらずに小孔を設けてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1、1':注出キャップ
2:キャップ本体
2a、2a':筒状壁
2b:内向き凸部
2c:溝部(連通口)
2d、2d':底壁
2e、2e':孔
2f、2f':天壁
2g:第1開口(開口)
2h:第2開口(他の開口)
2j:キャップ本体外周壁
2k:キャップ本体係合部
2m:第3ヒンジ
2n:係止凸部
2p:弱化部
3:第1ヒンジ
4:注出部材
4a:隔壁
4b:内側環状壁(環状壁)
4c:内側空間
4d:注出口
4e:注出筒
4f:閉鎖壁
4g:外側環状壁
4h:外側空間
4j:注出部材外周壁
4m:注出部材第2係合部
5:第2ヒンジ
6:蓋体
6a:頂壁
6b:シール筒
6c:ストッパー
6d:蓋体外周壁
6e:蓋体係合部
6f:摘まみ
7:移動体
7a:円板部
7b:円柱部
7c:円筒部
7d:突出部
8:容器
8a:口部
8b:容器爪部
8c:内部空間