特許第6962815号(P6962815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社スリー・ディー・マトリックスの特許一覧

特許6962815非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド
<>
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000013
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000014
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000015
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000016
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000017
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000018
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000019
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000020
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000021
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000022
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000023
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000024
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000025
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000026
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000027
  • 特許6962815-非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド 図000028
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962815
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20211025BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20211025BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20211025BHJP
【FI】
   C12N5/071
   !C07K14/00ZNA
   !C07K7/08
【請求項の数】27
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-530643(P2017-530643)
(86)(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公表番号】特表2018-500898(P2018-500898A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】US2015065302
(87)【国際公開番号】WO2016094829
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年12月7日
(31)【優先権主張番号】62/091,130
(32)【優先日】2014年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505043041
【氏名又は名称】株式会社スリー・ディー・マトリックス
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ギル, ユン ソク
(72)【発明者】
【氏名】リウール, マルク
(72)【発明者】
【氏名】永野 惠嗣
(72)【発明者】
【氏名】ギルバート, カール パトリック
(72)【発明者】
【氏名】清藤 利郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄也
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/037395(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0130455(US,A1)
【文献】 Analytical Chemistry,2009年08月15日,Vol. 81, No. 16,p. 6779-6788
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C07K 14/00
C07K 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己組織化ペプチドを含む組成物であって、前記自己組織化ペプチドは、セリンおよびトレオニンの14個の交互に現れるアミノ酸からなる、組成物。
【請求項2】
前記自己組織化ペプチドからなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
【化3】

の化学構造(ST14)からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
自己組織化したナノファイバーを形成することが可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
自己組織化ペプチドを含むペプチド溶液であって、前記自己組織化ペプチドは、セリンおよびトレオニンの14個の交互に現れるアミノ酸からなる、ペプチド溶液。
【請求項6】
【化5】

の化学構造(ST14)からなる、請求項5に記載のペプチド溶液。
【請求項7】
前記自己組織化ペプチドが、自己組織化したナノファイバーを形成することが可能である、請求項5に記載のペプチド溶液。
【請求項8】
前記ペプチド溶液における前記自己組織化ペプチドの濃度が、0.1重量/体積(w/v)パーセント〜10重量/体積(w/v)パーセントである、請求項5に記載のペプチド溶液。
【請求項9】
前記ペプチド溶液における前記自己組織化ペプチドの濃度が、0.5重量/体積(w/v)パーセント〜5重量/体積(w/v)パーセントである、請求項8に記載のペプチド溶液。
【請求項10】
前記ペプチド溶液のpHが、0.5〜8である、請求項5に記載のペプチド溶液。
【請求項11】
前記ペプチド溶液のpHが、3〜7である、請求項10に記載のペプチド溶液。
【請求項12】
前記ペプチド溶液の張度が、低張性、等張性、または高張性である、請求項5に記載のペプチド溶液。
【請求項13】
前記ペプチド溶液の張度が、等張性である、請求項12に記載のペプチド溶液。
【請求項14】
前記ペプチド溶液の張度が、デキストロース、グリセリン、マンニトール、塩化カリウム、および塩化ナトリウムからなる群から選択される張度調整剤で調整される、請求項12に記載のペプチド溶液。
【請求項15】
前記ペプチド溶液の張度が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの塩で調整される、請求項12に記載のペプチド溶液。
【請求項16】
前記少なくとも1つの塩が、1つまたは複数の塩形成性陽イオンおよび1つまたは複数の塩形成性陰イオンを含み、ここで、前記1つまたは複数の塩形成性陽イオンが、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウムイオン、四級アンモニウムイオン、およびナトリウムイオンからなる群から選択され、前記1つまたは複数の塩形成性陰イオンが、酢酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、シアン化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、およびリン酸イオンからなる群から選択される、請求項15に記載のペプチド溶液
【請求項17】
ヒト細胞をさらに含む、請求項5に記載のペプチド溶液。
【請求項18】
細胞500万個/ミリリットルの細胞濃度を有する、請求項17に記載のペプチド溶液。
【請求項19】
前記ペプチド溶液の貯蔵弾性率が、中性pHへの曝露後に、5〜10倍上昇する、請求項6に記載のペプチド溶液。
【請求項20】
前記ペプチド溶液の貯蔵弾性率が、中性pHへの曝露後に、7倍上昇する、請求項19に記載のペプチド溶液。
【請求項21】
ペプチドを滅菌するための方法であって、
自己組織化ペプチドを含むペプチド溶液を用意するステップであって、前記自己組織化ペプチドは、セリンおよびトレオニンの14個の交互に現れるアミノ酸からなる、ステップと、
所定の温度および所定の圧力で、所定の期間前記ペプチド溶液を処理して、前記ペプチド溶液を滅菌するステップであって、前記所定の温度および所定の圧力は、飽和蒸気の条件を提供するように選択される、ステップと
を含む、方法。
【請求項22】
前記ペプチド溶液を処理するステップの前に、前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量を測定するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ペプチド溶液を処理するステップの後に、前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量を測定するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ペプチド溶液を処理するステップの前の前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量と、前記ペプチド溶液を処理するステップの後の前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量とを比較するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ペプチド溶液を処理するステップが、オートクレーブにおいて前記ペプチド溶液を処理することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
自己組織化ペプチドを含む肉眼で見える足場であって、前記自己組織化ペプチドは、セリンおよびトレオニンの14個の交互に現れるアミノ酸からなる、肉眼で見える足場。
【請求項27】
中性pHでの前記ペプチドの自己組織化によって形成される、請求項26に記載の肉眼で見える足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1つまたは複数の態様は、一般に、医療および研究上の適用において使用することができる材料および方法に関する。より詳細には、1つまたは複数の態様は、ペプチドハイドロゲル材料を提供するために使用することができる材料および方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
1つまたは複数の態様によると、非イオン性極性アミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドを含む組成物が提供される。
【0003】
1つまたは複数の態様によると、非イオン性極性アミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドを含むペプチド溶液が提供される。
【0004】
1つまたは複数の態様によると、ペプチドを滅菌する方法が提供される。方法は、非イオン性極性アミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドを含むペプチド溶液を用意するステップを含む。方法は、また、所定の温度および所定の圧力で、所定の期間前記ペプチド溶液を処理して、前記ペプチド溶液を滅菌するステップであって、前記所定の温度および所定の圧力は、飽和蒸気の条件を提供するように選択される、ステップを含む。
【0005】
1つまたは複数の態様によると、非イオン性極性アミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドを含む肉眼で見える足場が、提供される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
非イオン性極性アミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドを含む組成物。
(項目2)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも7アミノ酸から本質的になる、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも14アミノ酸から本質的になる、項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記自己組織化ペプチドが、約7アミノ酸〜約200アミノ酸から本質的になる、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目1から4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記非イオン性極性アミノ酸が、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、グルタミン、アスパラギン、メチオニン、トリプトファン、ヒドロキシプロリン、およびその組合せからなる群から選択される、項目1から4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、少なくとも7つの非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目8)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、少なくとも14個の非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目9)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも7つの連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目10)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも14個の連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、7つの非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目12)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、14個の非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目13)
前記自己組織化ペプチドが、7つの連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目14)
前記自己組織化ペプチドが、14個の連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目15)
少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、7つの非イオン性極性アミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目16)
少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、14個の非イオン性極性アミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目17)
7つの連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目18)
14個の連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目19)
セリンおよびトレオニンの交互に現れるアミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドを含む、項目6に記載の組成物。
(項目20)
セリンおよびトレオニンの交互に現れるアミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目19に記載の組成物。
(項目21)
セリンおよびトレオニンの7つの交互に現れるアミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目20に記載の組成物。
(項目22)
セリンおよびトレオニンの14個の交互に現れるアミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目20に記載の組成物。
(項目23)
【化3】

の化学構造(ST14)から本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目24)
トレオニンから本質的になる前記自己組織化ペプチドを含む、項目6に記載の組成物。
(項目25)
トレオニンから本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目24に記載の組成物。
(項目26)
14個のトレオニンから本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目27)
【化4】

の化学構造(T14)から本質的になる、項目6に記載の組成物。
(項目28)
前記自己組織化ペプチドが、約7〜約200のアミノ酸を含む、項目6に記載の組成物。
(項目29)
自己組織化したナノファイバーを形成することが可能である、項目6に記載の組成物。
(項目30)
非イオン性極性アミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドを含むペプチド溶液。
(項目31)
前記自己組織化ペプチドが、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、グルタミン、アスパラギン、メチオニン、トリプトファン、ヒドロキシプロリン、およびその組合せからなる群から選択される非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目30に記載のペプチド溶液。
(項目32)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、少なくとも7つの非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目33)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、少なくとも14個の非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目32に記載のペプチド溶液。
(項目34)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも7つの連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目35)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも14個の連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目34に記載のペプチド溶液。
(項目36)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、7つの非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目37)
前記自己組織化ペプチドが、少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、14個の非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目38)
前記自己組織化ペプチドが、7つの連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目39)
前記自己組織化ペプチドが、14個の連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目40)
少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、7つの非イオン性極性アミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目41)
少なくとも2つの前記非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、14個の非イオン性極性アミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目42)
7つの連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目43)
14個の連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目44)
セリンおよびトレオニンの交互に現れるアミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドを含む、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目45)
セリンおよびトレオニンの交互に現れるアミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目44に記載のペプチド溶液。
(項目46)
セリンおよびトレオニンの7つの交互に現れるアミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目45に記載のペプチド溶液。
(項目47)
セリンおよびトレオニンの14個の交互に現れるアミノ酸から本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目45に記載のペプチド溶液。
(項目48)
【化5】

の化学構造(ST14)から本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目49)
トレオニンから本質的になる前記自己組織化ペプチドを含む、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目50)
トレオニンから本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目49に記載のペプチド溶液。
(項目51)
14個のトレオニンから本質的になる前記自己組織化ペプチドから本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目52)
【化6】

の化学構造(T14)から本質的になる、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目53)
非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、項目30に記載のペプチド溶液。
(項目54)
約7〜約200のアミノ酸を有する前記自己組織化ペプチドを含む、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目55)
前記自己組織化ペプチドが、自己組織化したナノファイバーを形成することが可能である、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目56)
前記ペプチド溶液における前記自己組織化ペプチドの濃度が、約0.1重量/体積(w/v)パーセント〜約10重量/体積(w/v)パーセントである、項目31に記載のペプチド溶液。
(項目57)
前記ペプチド溶液における前記自己組織化ペプチドの濃度が、約0.5重量/体積(w/v)パーセント〜約5重量/体積(w/v)パーセントである、項目56に記載のペプチド溶液。
(項目58)
前記ペプチド溶液のpHが、約0.5〜約8である、項目30に記載のペプチド溶液。
(項目59)
前記ペプチド溶液のpHが、約3〜約7である、項目58に記載のペプチド溶液。
(項目60)
前記ペプチド溶液の張度が、低張性、等張性、または高張性である、項目30に記載のペプチド溶液。
(項目61)
前記ペプチド溶液の張度が、等張性である、項目60に記載のペプチド溶液。
(項目62)
前記ペプチド溶液の張度が、デキストロース、グリセリン、マンニトール、塩化カリウム、および塩化ナトリウムからなる群から選択される張度調整剤で調整される、項目60に記載のペプチド溶液。
(項目63)
前記ペプチド溶液の張度が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの塩で調整される、項目60に記載のペプチド溶液。
(項目64)
前記少なくとも1つの塩が、1つまたは複数の塩形成性陽イオンおよび1つまたは複数の塩形成性陰イオンを含み、ここで、前記1つまたは複数の塩形成性陽イオンが、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウムイオン、四級アンモニウムイオン、およびナトリウムイオンからなる群から選択され、前記1つまたは複数の塩形成性陰イオンが、酢酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、シアン化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、およびリン酸イオンからなる群から選択される、項目63に記載の組成物。
(項目65)
ヒト細胞をさらに含む、項目30に記載のペプチド溶液。
(項目66)
細胞約500万個/ミリリットルの細胞濃度を有する、項目65に記載のペプチド溶液。
(項目67)
前記ペプチド溶液の貯蔵弾性率が、中性pHへの曝露後に、約5〜約10倍上昇する、項目48に記載のペプチド溶液。
(項目68)
前記ペプチド溶液の貯蔵弾性率が、中性pHへの曝露後に、約7倍上昇する、項目67に記載のペプチド溶液。
(項目69)
ペプチドを滅菌するための方法であって、
非イオン性極性アミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドを含むペプチド溶液を用意するステップと、
所定の温度および所定の圧力で、所定の期間前記ペプチド溶液を処理して、前記ペプチド溶液を滅菌するステップであって、前記所定の温度および所定の圧力は、飽和蒸気の条件を提供するように選択される、ステップと
を含む、方法。
(項目70)
前記ペプチド溶液を処理するステップの前に、前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量を測定するステップをさらに含む、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記ペプチド溶液を処理するステップの後に、前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量を測定するステップをさらに含む、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記ペプチド溶液を処理するステップの前の前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量と、前記ペプチド溶液を処理するステップの後の前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量とを比較するステップをさらに含む、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記ペプチド溶液を処理するステップが、オートクレーブにおいて前記ペプチド溶液を処理することを含む、項目69に記載の方法。
(項目74)
非イオン性極性アミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドを含む肉眼で見える足場。
(項目75)
前記非イオン性極性アミノ酸が、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、グルタミン、アスパラギン、メチオニン、トリプトファン、ヒドロキシプロリン、およびその組合せからなる群から選択される、項目74に記載の肉眼で見える足場。
(項目76)
前記ペプチドが約7〜約200のアミノ酸長である、項目74に記載の肉眼で見える足場。
(項目77)
前記ペプチドが約8〜約20のアミノ酸長である、項目76に記載の肉眼で見える足場。
(項目78)
中性pHでの前記ペプチドの自己組織化によって形成される、項目74に記載の肉眼で見える足場。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面が、縮尺通りに描写されていることは意図されていない。明確の目的のために、全ての要素が標識されていない場合がある。図面において、
【0007】
図1図1は、一部の実施形態による、ST14の化学構造である。
図2図2は、一部の実施形態による、T14の化学構造である。
図3図3は、一部の実施形態による、ペプチドST14の画像である。
図4図4は、一部の実施形態による、ペプチドST14の画像である。
図5図5は、一部の実施形態による、ペプチドT14の画像である。
図6図6は、一部の実施形態による、ペプチドT14の画像である。
図7図7は、一部の実施形態による、ペプチドST14のマススペクトロメトリーのグラフである。
図8図8は、一部の実施形態による、ペプチドST14のマススペクトロメトリーのグラフである。
図9図9は、一部の実施形態による、ペプチドT14のマススペクトロメトリーのグラフである。
図10図10は、一部の実施形態による、ペプチドT14のマススペクトロメトリーのグラフである。
図11図11は、一部の実施形態による、コンゴレッド緩衝液でのゲル形成に関する画像である。
図12図12は、一部の実施形態による、ST14の貯蔵弾性率対振動応力をプロットするグラフである。
図13図13は、一部の実施形態による、ST14の貯蔵弾性率対濃度をプロットするグラフである。
図14図14は、一部の実施形態による、DMEM処理の前後のST14の貯蔵弾性率をプロットするグラフである。
図15図15は、一部の実施形態による、DMEM処理後のST14の貯蔵弾性率の倍数増加をプロットするグラフである。
図16図16は、一部の実施形態による、細胞生存率パーセント対ペプチドの濃度をプロットするグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1つまたは複数の実施形態によると、非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチドが、提供される。「自己組織化ペプチド」という用語は、水溶液中で、ベータ−シート構造が誘導される特定の条件の存在下でベータ−シート構造を示し得るペプチドを指し得る。特定の条件は、自己組織化ペプチド溶液のpHを調整することを含んでよい。調整とは、自己組織化ペプチド溶液のpHを上昇または低下させることであってよい。pHの調整は、例えば、pHを生理的なpHまたは中性のpHに上昇または低下させることであってよい。特定の条件は、一価陽イオンなどの陽イオンを自己組織化ペプチド溶液に添加することも含んでよい。
【0009】
生理的pHまたは生理的温度などの「生理的条件」は、特定の生物体、細胞系、または被験体に関して天然に生じ得、人工的な実験室条件とは対照的であり得る。条件は、1つまたは複数の特定の性質または1つまたは複数の性質の範囲などの1つまたは複数の性質を含んでよい。例えば、生理的条件は、温度または温度の範囲、pHまたはpHの範囲、圧力または圧力の範囲、および特定の化合物、塩、および他の構成成分の1つまたは複数の濃度を含んでよい。例えば、いくつかの例では、生理的条件は、約20〜約40摂氏温度の範囲の温度を含んでよい。いくつかの例では、気圧は、約1atmであってよい。pHは、中性pHの範囲内であってよい。例えば、pHは、約6〜約8の範囲であってよい。一部の例において、生理的pHは、6未満であり得、消化管(gastric tract)の少なくとも一部の事例では、例えば、約1〜4であり得る。生理的条件は、膜またはハイドロゲルの形成を誘導し得る一価金属陽イオンなどの陽イオンを含んでよい。これらは、塩化ナトリウム(NaCl)を含んでよい。生理的条件は、約1mM〜約20mMのグルコース濃度、スクロース濃度、または他の糖濃度も含んでよい。生理的条件は、一部の具体的な実施形態における標的部位の局所的条件を含み得る。
【0010】
自己組織化ペプチドは、組成物としてまたは組成物の一部と言及される場合もあり、これはハイドロゲル足場などのハイドロゲルであってもよい。1つまたは複数の実施形態によると、非イオン性極性アミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドが提供される。さらに他の実施形態によると、非イオン性極性アミノ酸からなる自己組織化ペプチドが提供される。自己組織化ペプチドを含む、から本質的になる、またはからなる組成物またはペプチド溶液が、提供され得る。
【0011】
具体的な非イオン性極性アミノ酸の数または百分率は、自己組織化するペプチドの能力に基づき得る。組成物およびペプチド溶液は、非イオン性極性アミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドを含む、またはから本質的になる、またはからなり得る。
【0012】
一部の実施形態において、自己組織化ペプチドの非イオン性極性アミノ酸は、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、グルタミン、アスパラギン、メチオニン、トリプトファン、ヒドロキシルプロリン、およびその組合せからなる群から選択され得る。自己組織化ペプチドの非イオン性極性アミノ酸は、セリンおよびトレオニンからなる群から選択され得る。自己組織化ペプチドの非イオン性極性アミノ酸は、トレオニンから本質的になり得る。
【0013】
特定の実施形態において、自己組織化ペプチドは、いくつかのアミノ酸を有する、を含む、から本質的になる、もしくはからなり得る、またはペプチドの自己組織化を提供するペプチド長を有する。自己組織化ペプチドは、ペプチドの自己組織化をもたらし得る長さより長くてもよいが、それは、特定の例において、コストまたは自己組織化の間もしくは後のペプチドの凝集により望ましくない場合もある。
【0014】
特定の実施形態において、自己組織化ペプチドは、約7アミノ酸〜約200アミノ酸を有する、を含む、またはから本質的になり得る。自己組織化ペプチドは、約7アミノ酸〜約200アミノ酸から本質的になり得る。自己組織化ペプチドは、約7アミノ酸から本質的になり得る。自己組織化ペプチドは、約8アミノ酸から本質的になり得る。自己組織化ペプチドは、約10アミノ酸から本質的になり得る。自己組織化ペプチドは、約12アミノ酸から本質的になり得る。自己組織化ペプチドは、約14アミノ酸から本質的になり得る。自己組織化ペプチドは、約16アミノ酸から本質的になり得る。自己組織化ペプチドは、約18アミノ酸から本質的になり得る。自己組織化ペプチドは、約20アミノ酸から本質的になり得る。
【0015】
一部の実施形態において、自己組織化ペプチドは、交互に現れる非イオン性極性アミノ酸を含む、から本質的になる、またはからなり得る。自己組織化ペプチド、またはペプチドの交互に現れる非イオン性極性アミノ酸部分は、上記の通り、適切なもしくは予め決められた長さのものであり得る。
【0016】
交互に現れるによって、第1の非イオン性極性アミノ酸と第2の非イオン性極性アミノ酸とが交互に現れる、一連の3つまたはそれ超のアミノ酸を含むことが意味される。一部の実施形態において、交互に現れることは、第1の非イオン性極性アミノ酸、第2の非イオン性極性アミノ酸、および第3の非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、一連の3つまたはそれ超のアミノ酸を含むことを意味する。一部の実施形態において、交互に現れることは、第1の非イオン性極性アミノ酸、第2の非イオン性極性アミノ酸、第3の非イオン性極性アミノ酸および第4の非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、一連の4つまたはそれ超のアミノ酸を含むことを意味する。ペプチド配列において、第1の非イオン性極性アミノ酸および第2の非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、または第1の非イオン性極性アミノ酸、第2の非イオン性極性アミノ酸、および第3の非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる、または第1の非イオン性極性アミノ酸、第2の非イオン性極性アミノ酸、第3の非イオン性極性アミノ酸、および、第4の非イオン性極性アミノ酸が交互に現れる各および全てのアミノ酸を含む必要はない。
【0017】
一部の実施形態において、連続的な非イオン性極性アミノ酸を含む、から本質的になる、またはからなる自己組織化ペプチドが提供され得る。自己組織化ペプチド、またはペプチドの連続的な非イオン性極性アミノ酸部分は、上記の通り、適切なもしくは所定の長さのものであり得る。
【0018】
連続的によって、連続的に続く一連の3つまたはそれ超のアミノ酸を途切れない連続体において含むことが意味される。特定の実施形態において、連続的な配置において、非イオン性極性アミノ酸を含む自己組織化ペプチドが、提供され得る。例えば、自己組織化ペプチドは、連続的な非イオン性極性アミノ酸を含み得る。連続的である非イオン性極性アミノ酸は、同じ非イオン性極性アミノ酸であり得る。一部の例において、連続的である非イオン性極性アミノ酸は、互いに異なってもよいが、反復パターンを維持してもよい。
【0019】
一部の実施形態において、自己組織化ペプチドは、交互に現れる非イオン性極性アミノ酸を含む、から本質的になる、またはからなり得る。交互に現れる非イオン性極性アミノ酸は、交互に現れるセリンおよびトレオニンアミノ酸であり得る。一部の実施形態において、自己組織化ペプチドは、セリンおよびトレオニンの交互に現れるアミノ酸を含み得る。他の実施形態において、自己組織化ペプチドは、セリンおよびトレオニンの交互に現れるアミノ酸残基から本質的になり得る。特定の実施形態において、セリンとトレオニンが交互に現れる、14の非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、自己組織化ペプチドが提供され、特定の例において、ST14と称される。
【0020】
一部の実施形態において、連続的な非イオン性極性アミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドが提供される。一部の実施形態において、トレオニンアミノ酸から本質的になる自己組織化ペプチドが提供される。組成は、少なくとも7つのトレオニンアミノ酸から本質的になり得る。自己組織化ペプチドは、14のトレオニンアミノ酸から本質的になり得る。特定の実施形態において、自己組織化ペプチドは、少なくとも14のトレオニンアミノ酸から本質的になり得る。14の非イオン性極性トレオニンアミノ酸から本質的になり得る、自己組織化ペプチドが提供され、これはT14と称され得る。
【0021】
ST14およびT14は、極性無電荷側鎖、具体的には、セリン(SerまたはS)およびトレオニン(ThrまたはT)を有するアミノ酸から構成される。セリンの側鎖は、第一級アルコールであり、置換メタノールと化学的に等価である。また、トレオニンの側鎖は、第二級アルコールおよびメチル基を含有する。側鎖の基を考慮すると、ST14およびT14は、側鎖がセリンの様な第一級アルコールである、ポリビニルアルコール(PVC)に類似する。PVCは、その生体適合性のため生物医学的適用において使用されている。
【0022】
以下および図1に示す通り、ST14はセリンおよびトレオニンから構成され、これらが交互に配列されて構造中に14アミノ酸を有する。
【化1】
図1. ST14の化学構造。ST14は、その構造中に14の交互に現れるセリンおよびトレオニンを有する。
【0023】
以下および図2に示す通り、T14はトレオニンのみから構成され、14のトレオニンが構造中に連続的に配列されている。
【化2】
図2. T14の化学構造。T14は、その構造中に14の連続的なトレオニンを有する。
【0024】
本開示の組成物、ペプチド溶液、および自己組織化ペプチドは、自己組織化したナノファイバーを形成することが可能であり得る。
【0025】
本開示の組成物もしくは自己組織化ペプチドを含む、から本質的になる、またはからなるペプチド溶液が提供され得る。例えば、非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、もしくはからなる自己組織化ペプチドを含む、から本質的になる、またはからなるペプチド溶液が提供され得る。ペプチドの自己組織化のため提供するようないくつかの非イオン性極性アミノ酸を含み得るペプチド溶液が提供され得る。非イオン性極性アミノ酸の数は、自己組織化するその能力に基づき得る。ペプチド溶液は、本明細書中に記載される任意の自己組織化ペプチドを含む、から本質的になる、またはからなり得る。
【0026】
一部の実施形態において、セリン(S)およびトレオニン(T)の交互に現れるアミノ酸残基を含む、から本質的になる、またはからなる、組成物もしくは自己組織化ペプチドを含む、から本質的になる、またはからなるペプチド溶液が、提供され得る。セリン(S)およびトレオニン(T)の交互に現れるアミノ酸残基から本質的になる、組成物または自己組織化ペプチドまたは14またはそれ超のトレオニンアミノ酸から本質的になる組成物を含む、から本質的になる、またはからなるペプチド溶液が、提供され得る。
【0027】
ペプチド溶液における自己組織化ペプチドの濃度は、約0.1重量/体積(w/v)パーセント〜約10重量/体積(w/v)パーセントであり得る。特定の実施形態において、ペプチド溶液における自己組織化ペプチドの濃度は、約0.5重量/体積(w/v)パーセント〜約5重量/体積(w/v)パーセントであり得る。
【0028】
ペプチド溶液(脱イオン水中のペプチド)のpHは、約1.5〜約3であり得る。特定の実施形態において、ペプチド溶液のpHは、約1.8〜約2.7であり得る。特定の実施形態において、ペプチド溶液のpHは、約1.9〜2.5であり得る。ペプチド溶液のpHは、アミノ酸のタイプ、ペプチドの長さ、および溶液中のペプチドの濃度を含めた、ペプチドの様々な特性に応じて変動し得る。
【0029】
特定の実施形態において、ペプチド溶液は、約0.5〜約8のpHを有し得る。ペプチド溶液のpHが調整されて約0.5〜約8のpHを有するペプチド溶液を提供し得る。特定の実施形態において、ペプチド溶液のpHは、約3〜約8に調整され得る。ペプチド溶液は、その所望の使用に基づき変更または調整され得る。例えば、より中性(約5〜8のpH)が、特定の適用、例えば、研究所の実験について望ましい可能性がある。同じまたは異なる範囲のpH値が、他の適用について望ましい可能性がある。ペプチド溶液は、実質的に生物学的に活性でなくてもよい。
【0030】
ペプチド溶液は、溶液をより高いpHの条件に曝露することによって上昇する貯蔵弾性率を有し得る。例えば、ペプチド溶液を約7〜約8のpHにまたは中性pHに曝露することによって、貯蔵弾性率は、約5〜約10倍上昇し得る。曝露は、所定時間起こり得る。例えば、曝露は、約30秒〜約60分、または約1分〜約30分、または約2分〜約15分の時間起こり得る。一部の実施形態において、曝露は、不定期間であり得る。一部の実施形態において、ペプチド溶液の貯蔵弾性率は、約7〜約8または中性pHへの曝露後に、約7倍に上昇し得る。特定の実施形態において、ペプチド溶液におけるペプチドの濃度は、約0.1重量/体積(w/v)パーセント〜約10重量/体積(w/v)パーセントである。特定の実施形態において、ペプチド溶液におけるペプチドの濃度は、約0.5重量/体積(w/v)パーセント〜約5重量/体積(w/v)パーセントである。ペプチド溶液におけるペプチドの濃度は、約1重量/体積(w/v)パーセントであり得る。
【0031】
特定の実施形態において、本開示のペプチド溶液は、細胞を含み得る。細胞は、ヒトまたは他の哺乳動物のものであってもよいし、ヒトまたは他の哺乳動物に由来してもよい。特定の実施形態において、細胞は、間葉性幹細胞であり得る。一部の実施形態において、細胞は、マウス間葉性幹細胞であり得る。一部の実施形態において、細胞は、ヒト間葉性幹細胞であり得る。溶液中の細胞の濃度は、細胞約500万個/ミリリットルであり得る。一部の実施形態において、細胞濃度は、細胞500万個/ミリリットル未満であり得る。
【0032】
特定の他の実施形態において、ペプチドは、少なくとも約14アミノ酸を含む、から本質的になる、またはからなり得る。ペプチドは、TTTTTTTTTTTTTT(T14)であり得る。ペプチドは、STSTSTSTSTSTST(ST14)であり得る。
【0033】
ハイドロゲル足場は、約10Paを超える貯蔵弾性率を特徴とし得る。特定の実施形態において、ハイドロゲル足場は、約100Paを超える貯蔵弾性率を特徴とし得る。これは、少なくとも部分的に、初期ペプチド溶液の濃度によって決定され得る。例えば、特定の実施形態において、理論に拘束されることを望まないが、初期ペプチド溶液の濃度が高いほど、ハイドロゲル足場の貯蔵弾性率も高い。
【0034】
ハイドロゲル足場を形成するための有効な濃度は、約0.5重量/体積(w/v)パーセント〜約5重量/体積(w/v)パーセントの範囲の濃度を含み得る。
【0035】
ハイドロゲル足場は、約1ナノメートル〜約20ナノメートルの直径を有するナノファイバーを有し得る。特定の実施形態において、ハイドロゲル足場は、約5ナノメートル未満の直径を有するナノファイバーを有し得る。
【0036】
特定の実施形態において、非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、またはからなる自己組織化ペプチドなどの本開示の自己組織化ペプチドは、安定性(わずかな分解もしくは分解なし)を有する、またはオートクレーブされた後の分子量にわずかな変化があるもしくは変化のないことを特徴とする。オートクレーブプロセスは、自己組織化ペプチドまたは自己組織化ペプチド溶液に実施してもよいし、自己組織化ペプチドの分解を最小にするかまたは分解させずに自己組織化ペプチドまたは自己組織化ペプチド溶液をうまく滅菌してもよい。滅菌は、存在する微生物の少なくとも一部を排除するまたは死滅させる、ならびに流体、化合物、または材料に存在する伝播性の因子、例えば、微生物、真菌、細菌、ウイルス、および胞子を含めた、全ての形態の生命体の少なくとも一部を排除するまたは減少させることを含み得るプロセスを指す。滅菌は、その意図される使用に適切な、微生物の排除または低減を含み得る。滅菌は、流体、化合物、または材料に存在する、伝播性の因子、例えば、微生物、真菌、細菌、ウイルス、および胞子を含めた、全ての形態の生命体の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%を排除するまたは減少させることを含み得る。滅菌は、存在する、伝播性の因子、例えば、微生物、真菌、細菌、ウイルス、および胞子を含めた、全ての形態の生命体の100%を排除するまたは減少させることを含み得る。オートクレーブプロセスは、任意の従来のオートクレーブ手順を用いて実施され得、例えば、121℃飽和蒸気で所定の期間実施され得る。オートクレーブの時間は、約1分間〜約30分間であり得る。特定の実施形態において、所定の時間は、少なくとも約3分間であり得る。特定の実施形態において、所定の時間は、少なくとも約15分間であり得る。特定の他の実施形態において、所定の時間は、少なくとも約25分間であり得る。これらのペプチドのオートクレーブが成功することにより、任意の濃度の自己組織化ペプチドおよびペプチド溶液を滅菌する一貫した手順が提供され、高い濃度のペプチド溶液を濾過することで起こり得る潜在的問題が避けられる。オートクレーブプロセスの間に安定性を有する、特定の自己組織化ペプチドとして、ST14およびT14を含め、本開示のものが挙げられる。
【0037】
本開示の自己組織化ペプチドを滅菌するための方法が提供される。方法は、自己組織化ペプチド、または本開示の自己組織化ペプチドを含む自己組織化ペプチド溶液を用意することを含み得る。ペプチド溶液は、非イオン性極性アミノ酸から本質的になる、またはからなる自己組織化ペプチドを含む、またはから本質的になり得る。ペプチド溶液は、トレオニンから本質的になる少なくとも1つの自己組織化ペプチドを含む自己組織化ペプチド、ならびに交互に現れるセリンおよびトレオニンから本質的になるペプチドを含む、またはから本質的になり得る。方法は、所定の温度および所定の圧力で所定の期間ペプチド溶液を処理して、ペプチド溶液を滅菌することを含み得、所定の温度および所定の圧力は、飽和蒸気の条件を提供するように選択される。
【0038】
方法は、前記ペプチド溶液を処理するステップの前に、前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量を測定するステップをさらに含み得る。方法は、前記ペプチド溶液を処理するステップの後に、前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量を測定するステップをさらに含み得る。方法は、前記ペプチド溶液を処理するステップの前の前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量と、前記ペプチド溶液を処理するステップの後の前記ペプチド溶液中の前記自己組織化ペプチドのモル質量とを比較するステップをさらに含み得る。ペプチド溶液を処理することは、オートクレーブにおいてペプチド溶液を処理することを含み得る。
【0039】
記載された通り、温度および圧力は、飽和蒸気の条件を提供するように選択され得る。例えば、温度は、約121℃であり得、圧力は約15psiであり得る。温度は、約132℃であり得、圧力は約30psiであり得る。
【0040】
所定の期間は、約1分間〜約30分間であり得る。特定の実施形態において、所定時間は、少なくとも約3分間であり得る。特定の実施形態において、所定の期間は、少なくとも約15分間であり得る。特定の別の実施形態において、所定の期間は、少なくとも約25分間の間であり得る。
【0041】
例示的な条件は、表1のものを含み得る。
【表1】
【0042】
この関連で、オートクレーブによって滅菌された本開示のペプチド溶液または自己組織化ペプチドが提供され得る。
【0043】
ガンマ線照射による滅菌はまた、ペプチドまたはペプチド溶液に実施され得る。ガンマ線照射によって滅菌された本開示のペプチドまたはペプチド溶液が提供され得る。
【0044】
1つまたは複数の実施形態によると、肉眼で見える足場が提供される。肉眼で見える足場は、複数の自己組織化ペプチドを含む、から本質的になる、またはからなり得、それらの各々は、約7〜約200の非イオン性極性アミノ酸を含む、から本質的になる、またはからなる。ペプチドは、約8〜約20のアミノ酸を含む、から本質的になる、またはからなり得る。ペプチドは、非イオン性極性アミノ酸残基から本質的になり得る。自己組織化ペプチドの非イオン性極性アミノ酸は、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、グルタミン、アスパラギン、メチオニン、トリプトファン、およびヒドロキシルプロリン、ならびにその組合せからなる群から選択され得る。肉眼で見える足場は、本開示中で記載される任意の自己組織化ペプチドを含む、から本質的になる、またはからなり得る。
【0045】
一部の実施形態では、生物学的に活性な薬剤は、本開示の材料および方法と共に使用することができ、本明細書に開示の組成物およびペプチド溶液の部分であることもできる。生物学的に活性な薬剤は、被験体または実験室の状況における条件または他の活性のいくらかの活性、制御、調節、または調整を与え得るペプチド、DNA配列、化学化合物、または無機化合物もしくは有機化合物を含めた化合物を含み得る。生物学的に活性な薬剤は、別の構成成分と相互作用してそのような活性をもたらし得る。生物学的に活性な薬剤は、本明細書では一部の実施形態によると薬物と称することができる。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の生物学的に活性な薬剤をペプチド系の外側に徐々に放出させることができる。例えば、1つまたは複数の生物学的に活性な薬剤をハイドロゲルから徐々に放出させることができる。in vitroにおける試験とin vivoにおける試験のどちらでも、生物学的に活性な薬剤のこの段階的な放出が実証されている。生物学的に活性な薬剤は、ペプチド溶液に被験体への投与前に添加することもでき、この溶液と別々に被験体に投与することもできる。
【0046】
本開示は、時には自己組織化オリゴペプチドと称される自己組織化ペプチドを含む水溶液、組成物、ハイドロゲル、足場および膜に関する。自己組織化ペプチドは、中性pH、生理的なpH、および/または陽イオン、例えば、一価の陽イオンの存在下で、水溶液中でベータシート構造を示し得る。
【0047】
ペプチドは、一般に、水溶液中で安定であり、中性または生理的pHに暴露されると、大きな、肉眼で見える構造、足場、またはマトリックスに自己組織化するものであってよい。ハイドロゲルが形成されたら、ハイドロゲルは分解されなくてもよく、ある期間後に分解または生分解されてもよい。分解の速度は、少なくとも一部において、アミノ酸配列およびその周囲の条件の少なくとも1つに基づくものであってよい。
【0048】
「肉眼で見える」とは、10倍またはそれ未満の拡大率の下で見ることができる十分に大きな寸法を有することを意味する。好ましい実施形態では、肉眼で見える構造は、裸眼で見ることができる。肉眼で見える構造は透明であってよく、また、2次元であっても3次元であってもよい。一般には、各寸法は、少なくとも10μmのサイズである。ある特定の実施形態では、少なくとも2つの寸法が少なくとも100μm、または少なくとも1000μmのサイズである。しばしば、少なくとも2つの寸法は少なくとも1〜10mmのサイズ、10〜100mmのサイズ、またはそれ超である。
【0049】
ある特定の実施形態では、フィラメントのサイズは、約10ナノメートル(nm)〜約20nmであってよい。フィラメント間の距離は約50nm〜約80nmであってよい。一部の実施形態において、フィラメントのサイズ、例えば、フィラメントの直径は、約5nmであり得る。特定の実施形態において、フィラメントのサイズ、例えば、フィラメントの直径は、約5nm未満であり得る。
【0050】
ペプチドはまた、相補性および構造的に適合性であり得る。相補性は、イオン対(ionized pair)および/またはそれらの親水性側鎖の間に形成される水素結合を介して相互作用するペプチドの能力を指し、構造的に適合性は、相補性なペプチドが、それらのペプチド骨格間に一定の距離を維持する能力を指す。これらの特性を有するペプチドは、分子間相互作用に関与し、二次構造レベルでのベータシートおよび三次構造レベルでの織り合わされたフィラメントの形成および安定化をもたらす。
【0051】
上記の性質を特徴とするペプチドの均質な混合物および不均質な混合物はどちらも、安定な肉眼で見える膜、フィラメント、およびハイドロゲルを形成し得る。自己相補的で自己適合性のペプチドは、均質な混合物中で膜、フィラメント、およびハイドロゲルを形成し得る。互いに相補的であり、かつ/または構造的に適合性である、均質な溶液中で膜、フィラメント、およびハイドロゲルを形成することができないものを含めた不均質なペプチドも、肉眼で見える膜、フィラメント、およびハイドロゲルに自己組織化し得る。
【0052】
膜、フィラメント、およびハイドロゲルは、非細胞傷害性であってよい。本開示のハイドロゲルは、被験体において消化および代謝されるものであってよい。ハイドロゲルは、30日またはそれ未満で生分解されるものであってよい。ハイドロゲルは、単純な組成を有し、浸透性であり、また、多量に作製するのが比較的安価である。膜およびフィラメント、ハイドロゲルまたは足場は、滅菌条件下で作製および保管することもできる。膜の形成に最適な長さは、アミノ酸組成、溶液条件、および形成の部位における条件の少なくとも1つに伴って変動し得る。
【0053】
ペプチドの自己組織化は、ペプチドを構成するアミノ酸によるペプチド分子間の水素結合および疎水性結合に起因するものであってよい。本開示の自己組織化ペプチドのナノファイバーの直径は約10nm〜約20nmの範囲であってよく、平均孔径は約5nm〜約200nmの範囲であってよい。いくつかの実施形態において、本開示の自己組織化ペプチドのナノファイバーの直径は約5nmまたは約5nm未満であってよい。ある特定の実施形態では、ナノファイバーの直径、孔径、およびナノファイバーの密度は、ペプチド溶液の体積などの、使用するペプチド溶液の濃度および使用するペプチド溶液の量の少なくとも1つによって制御することができる。
【0054】
ST14およびT14などの本開示の自己組織化ペプチドは、別個の生理的に活性なまたは生物学的に活性なモチーフまたは配列を欠き、したがって、内因性の細胞機能を損なわない可能性があるペプチド配列であり得る。生理的に活性なモチーフにより、転写などの多数の細胞内の現象を制御することができ、また、生理的に活性なモチーフが存在することにより、当該モチーフを認識する酵素による細胞質内タンパク質または細胞表面タンパク質のリン酸化が導かれる。生理的に活性なモチーフが存在すると、種々の機能を有するタンパク質の転写を活性化または抑制することができる。本開示の自己組織化ペプチドは、そのような生理的に活性なモチーフを欠いてよく、したがって、このリスクを有さない。溶液の浸透圧を低張性から等張性に改善するために、自己組織化ペプチド溶液に糖を添加し、それにより、生物学的安全性を上昇させることができる。特定の例では、糖は、スクロースまたはグルコースであってよい。
【0055】
1つまたは複数の実施形態によると、ペプチド溶液の張度は、低張性、等張性、または高張性であり得る。一部の特定の非限定的な実施形態において、ペプチド溶液の張度は、等張性であり得る。ペプチド溶液の張度は、様々なアプローチで調整され得る。一部の実施形態において、ペプチド溶液の張度は、例えば、ヒトの身体などの対象と関連する投与部位であるが、限定されない、ペプチド溶液の投与の部位と関連する張度に影響を与え得るまたはそれを調整し得る。例えば、一部の実施形態において、張度は、張度調整剤(tonicity agent)で調整され得る。張度調整剤は、デキストロース、グリセリン、マンニトール、塩化カリウム、および塩化ナトリウムからなる群から選択され得るが、これらに限定されるものではない。他の実施形態において、ペプチド溶液の張度は、少なくとも1つの塩で調整され得る。少なくとも1つの塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択され得るが、これらに限定されるものではない。少なくとも1つの塩として、1つまたは複数の塩形成性陽イオンおよび1つまたは複数の塩形成性陰イオンが挙げられ得る。1つまたは複数の塩形成性陽イオンは、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウムイオン、四級アンモニウムイオン、およびナトリウムイオンからなる群から選択され得るが、これらに限定されるものではない。1つまたは複数の塩形成性陰イオンは、酢酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、クエン酸イオン、シアン化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、およびリン酸イオンからなる群から選択され得るが、これらに限定されるものではない。
【0056】
膜の形成に最適な長さは、アミノ酸組成に伴って変動し得る。本開示のペプチドにより意図される安定化因子は、ペプチド骨格間の一定の距離を維持する相補的なペプチドである。
【0057】
化学的に合成されたペプチドの使用により、ペプチド溶液が別の動物の細胞外マトリックスに由来する未同定の構成成分などの未同定の構成成分を有さないようにすることを可能にできる。したがって、この性質により、従来の組織由来のバイオマテリアルと比較して、ウイルス感染のリスクを含めた感染の懸念を排除することができる。これにより、牛海綿状脳症(BSE)などの感染を含めた感染の懸念を排除し、ペプチドを、医療的使用に関して高度に安全なものにすることができる。
【0058】
ペプチドの最初の濃度は、形成される膜、ハイドロゲル、または足場のサイズおよび厚さに関する因子であり得る。一般に、ペプチド濃度が高いほど、膜またはハイドロゲルの形成の程度が高くなる。より高い最初のペプチド濃度(約10mg/ml)(約1.0w/vパーセント)で形成されるハイドロゲル、または足場は、より厚くなり得、したがって、より強力になる可能性がある。
【0059】
膜、ハイドロゲル、または足場の形成は、選択条件に対するペプチド溶液の曝露に基づき起こり得る。膜、ハイドロゲル、または足場の形成は、およそ数秒からおよそ数分の範囲で起こり得る。例えば、形成は、即時であり得る。一部の実施形態において、形成は、1秒未満で起こり得る。形成は、5秒未満、30秒未満、1分未満、5分未満、15分未満、または30分未満で起こり得る。ハイドロゲルの形成は、約1〜2分以内で起こり得る。他の例では、ハイドロゲルの形成は、約3〜4分以内で起こり得る。特定の実施形態において、膜またはハイドロゲルの形成は可逆的であり得る、および他の実施形態において、形成は不可逆的であり得る。ある特定の実施形態では、ハイドロゲルの形成にかかる時間は、少なくとも一部において、ペプチド溶液の濃度、適用されるペプチド溶液の体積、および適用のエリアにおける条件(例えば、適用のエリアにおける一価金属陽イオンの濃度、エリアのpH、およびエリアまたはその付近における1つまたは複数の流体の存在)のうちの1つまたは複数に基づくものであってよい。プロセスは、12未満またはそれと同等のpHによって、および温度によっては影響されない可能性がある。膜またはハイドロゲルは、約1〜99摂氏温度の範囲の温度で形成され得る。
【0060】
ある特定の実施形態では、自己組織化ペプチドは、自己組織化ペプチドの効果の増強をもたらすことができるか、または別の作用、治療、療法をもたらすもしくは他のやり方で被験体の1つまたは複数の構成成分と相互作用することができる1つまたは複数の構成成分と共に調製することができる。例えば、1つまたは複数の生物学的に活性なまたは生理的に活性なアミノ酸配列またはモチーフを含む追加的なペプチドを構成成分の1つとして自己組織化ペプチドと共に含めることができる。他の構成成分は被験体に薬物または他の治療などのいくらかの利益をもたらし得る生物学的に活性な化合物を含み得る。例えば、溶血、炎症または感染を処置または予防する抗生物質または小分子薬が、自己組織化ペプチドと共に投与されてもよいし、あるいは別々に投与されてもよい。
【0061】
小分子薬物は、グルコース、サッカロース、精製サッカロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、デキストラン(destran)、ヨウ素、塩化リゾチーム、ジメチルイソプロピルアズレン(dimethylisoprpylazulene)、トレチノイン、トコフェリル(tocoferil)、ポピドンヨード、アルプロスタジルアルファデクス、アニスアルコール、サリチル酸イソアミル、α,α−ジメチルフェニルエチルアルコール、バクダノール(bacdanol)、ヘリオナール(helional)、スルファジアジン銀(sulfazin silver)、ブクラデシンナトリウム、アルプロスタジルアルファデクス、硫酸ゲンタマイシン、塩酸テトラサイクリン、フシジン酸ナトリウム、ムピロシンカルシウム水和物および安息香酸イソアミルからなる群より選択することができる。他の小分子薬物も意図され得る。タンパク質に基づく薬物を投与される構成成分として含めることができ、それらとして、エリスロポエチン、組織型プラスミノーゲン活性化因子、合成ヘモグロビンおよびインスリンが挙げられる。
【0062】
ペプチド溶液を、迅速なまたは即時のハイドロゲルへの形成から保護するための構成成分を含めることができる。これは、ペプチド溶液を標的エリアに時間制御放出させてハイドロゲルを所望の所定の期間にわたって形成させることを可能にするために時間をわたり分解させることができる封入送達系を含み得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。
【0063】
本明細書に記載される、任意の成分は、ペプチド溶液に含まれてもよいし、またはペプチド溶液と別々に投与されてもよい。さらに、本明細書において提供される方法および容易にする方法はいずれも、1または複数の関係者によって実施されてよい。
【0064】
本開示の一部の実施形態において、自己組織化ペプチドは、デバイスまたは機器におけるコーティングとして使用され得る。自己組織化ペプチドはまた、ガーゼまたは帯具、または裏打ちなどの支持体に組み込まれ得または固定され得、これが対象に治療効果を提供し得るまたは標的領域内に適用され得る。自己組織化ペプチドはまた、使用のためスポンジに浸漬され得る。
【0065】
本明細書に開示されている組成物、ペプチド、ペプチド溶液、および方法のこれらおよび他の実施形態の機能および利点は、以下の実施例からより完全に理解される。以下に続く実施例は、開示される組成物の利益を説明することを意図しているが、その完全な範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
形態学的研究
ST14およびT14ペプチドの原子間力顕微鏡法(AFM)画像を、それらのナノ構造を可視化するため調査した。試料を、ペプチド(100マイクロモル濃度(μM))溶液のおよそ50マイクロリットル(μl)のアリコートをマイカ表面の表面(9ミリメートル(mm)直径)に配置することにより調製した。各試料を、約30秒マイカ上に静置し、次に100μlのMilli−Q(超高純度)水のアリコートですすぎ洗いをして結合していないペプチドを除去した。マイカ表面における試料を、次にAFM観察のため空気乾燥した。AFMを、タッピングモードを用いてAsylum−1 MFP−3D AFM System(Asylum Research、Santa Barbara、CA)で実施した。画像に、オリンパスSiチップ(AC240FS)を利用した。カンチレバーの自由共鳴頻度は、70kHzであった。高さ画像を、256×256ピクセル解像度で記録した。
【0067】
図3および4に示される通り、ST14が、自己組織化したナノファイバーを形成することをAFM形態研究は実証した。図5および6に示される通り、凝集物がT14において検出されている。
【0068】
(実施例2)
安定性および滅菌研究
滅菌は、自己組織化ペプチド溶液を含めた、全ての生体材料についての製造プロセスにおいて非常に重要なステップである。ペプチドのオートクレーブ処理は、濾過滅菌が可能ではないであろう高度に粘稠性のペプチド溶液についての最良の滅菌法であると思われる。オートクレーブがペプチド分子を分解するかどうかを決定するために、ペプチドのマススペクトロメトリー(mass spec)分析を、121℃、25分、高圧飽和蒸気でのオートクレーブの前後で実施した。N末端およびC末端が保護されていないST14およびT14それぞれに関して、結果が図7〜8および図9〜10に示される。
【0069】
オートクレーブ処理前のST14の測定されたモル質量は1335であったが、これは計算されたモル質量に一致する(図7〜8)。ST14は、オートクレーブ処理の間に分解しなかった;したがって、オートクレーブは、ST14の滅菌に関して適切な方法である。
【0070】
T14の測定されたモル質量は1433であり、これは計算されたモル質量に一致する。図9〜10に示される通り、T14はオートクレーブの間に分解せず、したがって、オートクレーブ処理はT14の滅菌に関して適切な方法である。
【0071】
(実施例3)
ペプチド溶液の視覚的な外観
ST14およびT14を、様々な濃度での脱イオン水中の溶解性および溶液中の外観に関して検査した。ST14およびT14溶液は、1パーセント重量/体積(w/v)から5パーセントw/vで半透明であった。ST14は1パーセント重量/体積(w/v)から5パーセントw/vで高粘度溶液を形成し、一方、T14は5パーセントw/vで高粘度溶液を形成した。これは2つのペプチドの間の差を示しており、どのようにして、これらが所与の条件下で挙動し得るかが示され得る。
【0072】
(実施例4)
ペプチド溶液のpH
ペプチド溶液を提供するための脱イオン水中でのペプチドのpHを、様々な濃度で測定した。ペプチド溶液のpHを、様々な濃度で測定した。ST14およびT14を検査した。記録したpH値は、約1.9から約2.5の範囲であった。結果は表2に示される。これらの結果は、pHがペプチドの濃度およびペプチドのタイプに応じて変動することを示す。
【表2】
【0073】
(実施例5)
ペプチドゲル形成
コンゴレッドアッセイを実施してPBS緩衝液(pH7.4)中でのペプチド溶液のゲル形成を決定した。様々な濃度の100μlの各ゲルを、スライドガラス上に置いた。30秒後、500μlのPBS緩衝液(pH7.4)中の1%コンゴレッド溶液をゲルアリコートのそれぞれの周辺および上部に添加し、次に過剰なコンゴレッド溶液を検査前に拭き取った。
【0074】
ST14およびT14を、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%および5.0%の様々な濃度で置いた。ゲル形成の可視化により、各濃度でのゲル化の成功または失敗が決定された。ST14は、0.5%でゲルを形成しなかった。T14は、1%未満でゲルを形成しなかった。データは、図11に示される。
【0075】
(実施例6)
流体力学的な特性に対する濃度の効果
ST14の流体力学的な特性を、40mmプレートを有するレオメータ(AR500、TA Instruments)を用いて様々な濃度で評価した。ペプチド溶液(700μL)をレオメータプレートに配置し、過剰な溶液をキムワイプで静かに除去した;測定は、37℃での2分間の緩和時間後に実施した。プレートを300μmの測定する幾何学的なギャップに配置して、貯蔵弾性率、損失弾性率、および粘性(η’)を37℃で測定し、応力掃引試験を0.1Pa〜1000Paの振動応力、角周波数10rad/sで実施した。
【0076】
ST14に関して流体力学の結果は図12および13に示される。T14の流体力学的な特性は、測定されなかった。ST14の様々な濃度での流体力学的な特性は表3にも示される。
【0077】
ST14の貯蔵弾性率、降伏応力、および最大粘性は、濃度の上昇に伴って上昇した。
【表3】
【0078】
(実施例7)
ペプチドハイドロゲルの性質に対する細胞培養培地の接触の影響
ST14のレオロジー的性質に対するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(pH7.4)の影響を、40mmプレートを伴うレオメーター(AR500、TA Instruments)で評価した。DMEMは、6.4g/LのNaCl、3.4g/LのNaHCO(炭酸水素ナトリウム)、微量の他の塩、種々のアミノ酸、および4.5g/Lのグルコースを含有する細胞培養培地である。DMEMのpHは7.2±0.2であり、質量オスモル濃度は335±30mOsm/KgHOである;どちらの測定値も血液などのヒト生理的流体と近いものである。 ペプチド溶液(1%)を少なくとも48時間4℃に維持した後に試験した。実験を実施するために、ペプチド溶液1mLを穏やかにピペットで取り、レオメーターのプレート上に置いた。DMEM溶液2mLをペプチド溶液の周りに穏やかに添加した。ペプチド溶液をDMEMで2分処理し、次いで、培地を除去し、プレートをおよそ450μmの測定用幾何学的形状ギャップに置いた。2分の緩和時間後に37℃で測定を実施した。周波数試験を振動応力1Paで1rad/sから100rad/sまで実施した。
【0079】
図14において、ST14(1%)のレオロジー的性質を2分にわたるDMEM処理の前後で比較した。非処理のペプチド溶液に関する貯蔵弾性率データを、それらの応力掃引試験の1Paかつ10rad/sでのデータから取得し、DMEM処理ペプチドハイドロゲルに関するものは、それらの頻度掃引試験の1Paかつ10rad/sでのデータから適合させた。2分間のDMEM処理後の貯蔵弾性率の倍数増加は、図15に示される。ST14は、DMEM処理後、貯蔵弾性率の6.9倍増加を示した。
【0080】
この観察は、重要な分子間相互作用が、DMEM処理後に生じ、これはDMEM処理後に最終的な剛性が決定されることを示唆している。pHおよび塩濃度における変化は、その流体力学的な特性に影響し得る。
【0081】
(実施例8)
細胞生存率試験
細胞生存率(細胞傷害性)アッセイを実施してハイドロゲル組織培養系における頻繁に使用されている細胞株であるC57BL/6マウス間葉性幹細胞(mMSC)の生存率を支持するST14の能力を測定した。各ハイドロゲルを2.5%の濃度で調製し、次に1.5%、1.25%、1.0%、0.75%、および0.50%の濃度にスクロースで希釈し、スクロースの終濃度を10%とした。細胞を洗浄し、10%スクロース中に細胞500万個/mlの終濃度に再懸濁した。細胞を遠心分離し、上清を除去した。細胞を、10%スクロース中にハイドロゲルのそれぞれの濃度に再懸濁した。プロトコールは、次に、使用のためのPuraMatrix(登録商標)ガイドライン(BD/Corningウェブサイト)において記載されている通りのプレーティング懸滴培養およびその後の単離に従った。
【0082】
ST14に関して結果は図16に示される。ペプチドの濃度が0.75%を超過した場合、細胞生存率は有意に減少した。
【0083】
図16において、細胞生存率が次のより低い濃度での細胞生存率よりも有意により低い場合(p<0.05)に「」が付され、細胞生存率が次のより低い濃度での細胞生存率よりも有意により高い場合(p<0.05)に「#」が付される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16