特許第6962822号(P6962822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962822SbF5による1233xfの244bbへのフッ化水素処理
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962822
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】SbF5による1233xfの244bbへのフッ化水素処理
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/087 20060101AFI20211025BHJP
   C07C 19/10 20060101ALI20211025BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20211025BHJP
【FI】
   C07C17/087
   C07C19/10
   !C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-560782(P2017-560782)
(86)(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公表番号】特表2018-515574(P2018-515574A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】US2016033450
(87)【国際公開番号】WO2016187507
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年5月20日
(31)【優先権主張番号】62/164,631
(32)【優先日】2015年5月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン シュエフイ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジョセフ ナッパ
(72)【発明者】
【氏名】カール クラウス
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−515158(JP,A)
【文献】 特開平08−024362(JP,A)
【文献】 特開2010−215622(JP,A)
【文献】 特開2009−167187(JP,A)
【文献】 特開2010−043080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/00
C07C 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを調製する方法であって、
液相中、SbF5の存在下、10℃〜65℃の範囲の温度で、2−クロロ−1,1,1−トリフルオロプロペンとHFを反応させる工程、
反応温度に達したら1時間以内に、水を加えて反応を停止させる工程、
含み
HF対2−クロロ−1,1,1−トリフルオロプロペンの比率が、1〜10の範囲であり
触媒が、重量比で1%〜50%の量で存在する、方法。
【請求項2】
2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)は、244bbと245cbの混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HF対2−クロロ−1,1,1−トリフルオロプロペンの比率が、1〜5の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒が、重量比で2%〜30%の量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、重量比で3%〜20%の量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンが、脱塩化水素されて、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンを形成する請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化有機化合物の新規調製方法、および、より詳細には、フッ素化炭化水素の生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、特に、テトラフルオロプロペン(2,3,3,3,−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf又は1234yf)を含む)のようなハイドロフルオロアルケン又はフルオロオレフィンは、効果的な冷媒、消火剤、熱伝達媒体、噴霧剤、発泡剤、膨張剤、ガス状誘電体、殺菌剤キャリア、重合媒体、微粒子除去流体、キャリア流体、バプ研磨剤、置換乾燥剤(displacement drying agent)、及びパワーサイクル動作流体であると開示している。クロロフルオロカーボン(CFCs)及び、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFCs)(両方とも、地球のオゾン層にダメージを与える可能性がある)とは異なり、HFCsは塩素を含有しないため、したがって、オゾン層への脅威を生じさせない。
【0003】
オゾン減少の懸念に加えて、地球温暖化はもう一つのこれらの多くの応用にとって環境上の懸念事項である。したがって、オゾン減少が低い普及品であること、および地球温暖化の可能性が低いことの両方を満たす化合物が必要とされている。ある種のフルオロオレフィンは、両方の目的に満たすと信じられている。したがって、ハロゲン化されたハイドロカーボン、および地球温暖化の可能性も低い塩素を含まないフルオロオレフィンを製造する方法の必要性がある。
【0004】
そのようなHFOの一つは、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf又は1234yf)である。CQ2=CCl−CH2Q又は、CQ3−CCl=CH2又は、CQ3−CHCl−CH2Qから開始する、HFO−1234yfの調製は、以下の3つの反応工程を含み得る。
(i)(CQ2=CCl−CH2Q又は、CQ3−CCl=CH2又は、CQ3−CHCl−CH2Q)+HF−>2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf又は1233xf)+固体触媒で充填した蒸気相反応器中のHCl
(ii)2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)+HF−>液体フッ化水素処理触媒で充填した液相反応器中の2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb又は244bb)、および、
(iii)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)−>蒸気相反応器中の2,3,3,3,−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)
ここで、少なくとも一つのQはフッ素ではないという条件で、Qは独立して、F,Cl,Br,およびIから選択される。
【0005】
1233xfの244bbへのフッ化水素処理は、通常、フッ化SbCl5の存在下、70℃より高い温度で行われる。さもなければ、触媒は、凍結することになる。これらの条件下では、特に高温においては、平衡制限のために、1233xfは、完全には244bbに変換されない。結果として、かなり量の1233xfが、形成された製造物中に存在する。1233xf及び244bbの沸点は、約2℃しか離れていないため、これらの2種類のものを分離することは困難でり、且つ、コストがかかる。
【0006】
さらに、反応開始材料(例えば、HCFC−244bbフィードストック)中の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)の存在は、244bbの1234yfのへ変換を顕著に減少させることもあり得る。さらに、開始材料中での2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの共存すると、脱塩化水素させるときに、タールを生成しうるトリフルオロプロピンおよびオリゴマーが形成されうることになる。この結果は、所望製品の収率の減少という点からは不利益となる。したがって、1233xfの244bbへの高い変換を達成し、精製の必要性をなくすか、及び/又は最小化するより良い触媒の必要性がある。
【0007】
本発明は、この必要性を満たすものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の開示は、式RCX=CYZのオレフィンをフッ化水素処理して、式RCXFCHYZ、及び、式RCHXCFYZのハイドロフルオロアルカンを生成する方法であり、
X,Y,およびZは、それぞれ独立して同じであるか又は異なり、H,F,Cl,Br及び、塩素若しくはフッ素若しくは臭素で一部又は全部置換されたC1−C6アルキルからなる群から選択され、及び、Rは、塩素若しくはフッ素若しくは臭素で一部又は全部置換されたC1−C6アルキルであり、液相中で、SbF5の存在下、約−30℃〜約65℃の範囲の温度で、フルオロオレフィンと、HFとを反応させる方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以降の一般的な記載、および以下の詳細な記載は、例示的なもので、且つ説明のみのためであり、発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、用語「含む」、「含んでいる」、「含有する」、「含有している」、「有する」、「有している」または、これらのいかなる他のバリエーションは、排他的ではない包含物をカバーすることを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、単にそれらの要素に限定されることかく、特別にリストされていない他の要素や、またはプロセス、方法、物品、または装置に特有のものを含んでも良い。さらに、反対する特別な言及がない限り、「または」は、包含することを指し、排他的なことを指すものではない。例えば、条件AまたはBは、以下の何れをも充足している。Aは真実(または存在)、および、Bは不実(または不存在)、Aは不実(または不存在)およびBは真実(または存在)、並びにAおよびBは真実(または存在)である。
【0011】
定義がされていない限り、本明細書において使用される全ての技術上および科学上の用語は、本発明が属する技術分野の当業者にとって一般的に理解されるものと同様の意味を有するものである。相容れない場合は、定義を含めた本明細書が支配する。本明細書に記載されているこれらに類似するまたは均等な方法並びに材料は、本発明の実施態様の実施またはテストに使用されうるが、好ましい方法および材料は、以下に記載されるものである。さらに、材料、方法および、実施例は、単なる例示に過ぎず、限定するものではない。
【0012】
本明細書において、用語「オレフィン」は、炭素−炭素二重結合を含む化合物を指すものとして使用される。それは、本明細書において、式RCX=CYZに関連して定義されている。
【0013】
本明細書において、用語「ハイドロフルオロアルケン」又は「フルオロオレフィン」は、水素、炭素、フッ素、および、少なくと1つの炭素−炭素二重結合並びに、任意選択的に塩素を含む化合物を意味するものとして使用される。
【0014】
本明細書において、用語「HFO」は、水素、炭素、フッ素、および、少なくと1つの炭素−炭素二重結合を含み、且つ、塩素を含まない化合物を示すものとして使用される。本明細書において、用語「HCFO」は、水素、炭素、塩素,フッ素、および、少なくと1つの炭素−炭素二重結合を含む化合物を示すものとして使用される。本明細書において、用語「HCO」は、水素、炭素、塩素,および、少なくと1つの炭素−炭素二重結合を含み、且つ、フッ素を含まない化合物を示すものとして使用される。
【0015】
用語「フッ化水素処理」は、炭素−炭素二重結合にフッ化水素を付加する反応を意味すると理解される。
【0016】
本明細書において、用語「ハイドロフルオロアルカン」は、水素、フッ素、及び、任意選択的に塩素を含み、2つ以上の炭素原子を有し、そこでは、2つの隣接する炭素原子上で、フッ素原子及び水素原子が置換されているアルカンを指するものとして使用される。本明細書において、ハイドロフルオロアルカンは、フルオロオレフィンのフッ化水素処理から生じた生成物でありえる。
【0017】
本明細書において、用語「HF」は、市販されている無水液体フッ化水素であり、又は、それは、反応器中で、泡となるガスである。無水物HFは、ケマーズ カンパニー FC、LLC及び、ハニウェル インターナショナル インクで、例えば、Solvay S.A.として販売されている。
【0018】
本明細書において、反応物質(一般的には、限定された試薬)に関する用語「変換」は、反応方法で反応したモル数を、その方法において当初存在した反応物質のモル数で除し、100倍したものを指すものとして使用される。
【0019】
本明細書において、「パーセント変換率」は、100%と定義され、反応容器からの流出中の開始材料の重量パーセントよりも少ない。
【0020】
本明細書において、有機反応生成物に関する「選択性」は、有機反応物の合計モル数に対する、その反応物のモル数の比率を、100倍したものを指すものとして使用される。
【0021】
本明細書において、「パーセント選択性」は、所望の形成物の重量として、反応において形成された生成物の合計量の部分として、そして開始材料を除いて定義されるものとして使用される。
【0022】
本明細書に開示のいくつかのフルオロオレフィン、例えば、CF3CH=CHCl (HCFO−1233zd又は1233zd)は、異なる立体配置異性体、又は立体異性体として存在する。特定の異性体を指定しない場合、本発明の開示は、全ての一つの立体配置異性体、一つの立体異性体、または、これらの任意の組合せを含む。例えば、HCFO−1233zdは、E−異性体、Z−異性体、または、両異性体の任意の比率の組合せ、混合物を含むものを意味する。
【0023】
本開示は、式RCXFCHYZのハイドロフルオロアルカンを生成する方法であり、X,Y,及びZは、それぞれ独立して同じであるか又は異なり、H,F,Cl,Br及び、フッ素若しくは塩素で一部又は全部置換されたC1−C6アルキルからなる群から選択され、且つ、Rは、フッ素若しくは塩素で一部又は全部置換されたC1−C6アルキルであり、式RCX=CYZのフルオロオレフィンとHFとを、液相中で、有効量のSbF5触媒存在下で反応させる工程を含む方法である。
【0024】
用語「塩素で一部又は全部置換されたアルキル基」と「塩素化アルキル」は、同義語であり、アルキル基が少なくともClで、一置換されていなければならないことを意味する。同様に、用語「フッ素で一部又は全部置換されたアルキル基」と「フッ化アルキル」は、同義語であり、アルキル基が少なくともFで、一置換されていなければならないことを意味する。しかし、両方の場合で、アルキル基は、そこで、一つ以上のフッ素置換基を有しているか、又はそこで、一つ以上の塩素置換基を有しているか、又は、そこで、一つ以上のフッ素基若しくは塩素基の組合せを有していても良い。炭素原子の幾つかは、1つ以上の塩素原子又はフッ素原子で置換されていても良い。一つの実施態様では、アルキル基は、1つ以上のフッ素原子で置換されている。一つの実施態様では、アルキル基は、塩素若しくはフッ素又は、塩素およびフッ素の両方の組合せで完全に置換されている。別の実施態様では、アルキル基は、過塩素化されており、一方で、別の実施態様では、アルキル基は、過フッ素化されている。
【0025】
「アルキル基」は、直鎖又は分岐鎖であっても良い。一つの実施態様では、アルキル基は直鎖である。別の実施態様では、アルキル基は、1〜4炭素原子を含み、別の実施態様では、それは、1又は2又は3個の炭素原子を含み、別の実施態様では、1又は2個の炭素原子を含む。別の実施態様では、それは1個のみの炭素原子を含む。具体例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソプロピル、sec−ブチル及び、tert−ブチルを含む。
【0026】
本明細書において定義したように、炭素−炭素二重結合の一部の炭素原子はR、X,Y,及びZで置換されており、他のことの中で、Rは、塩素若しくはフッ素で一部又は全部置換されていると定義されており、及び、X,Y,およびZは、他のことの中で、塩素若しくはフッ素で一部又は全部置換されても良い。一つの実施態様では、X,Y,およびZは、それぞれ独立して、塩素若しくはフッ素で一部又は全部置換されており、そして、別の実施態様では、X,Y,およびZの2つは、塩素若しくはフッ素で一部又は全部置換されており、別の実施態様では、X,Y,およびZの1つは、塩素若しくはフッ素で一部又は全部置換されており、さらに、別の実施態様では、X,Y,およびZの3つは、塩素若しくはフッ素で一部又は全部置換されており、別の実施態様では、別の実施態様では、X,Y,およびZの何れも、塩素若しくはフッ素で一部又は全部置換されていない。X,Y,およびZに関して、塩素若しくはフッ素で一部又は全部置換されてると定義される場合、Rに関して、一つの実施態様では、(アルキル基が2つ以上の炭素原子を有する場合)二重結合を有する炭素原子に対するα炭素原子又はβ炭素原子の少なくとも一つのは、塩素若しくはフッ素で置換されている。
【0027】
一つの実施態様では、X,Y,およびZは、それぞれ独立して、H,フッ素又は塩素である。別の実施態様では、Rは、過塩素化(perchlorinated)、過フッ素化(perfluorinated)されている。本発明の幾つかの実施態様では、Rは、−CF3又は−CF2CF3である。別の実施態様では、X,Y,およびZは、それぞれ独立して、H,フッ素又は塩素であり、且つ、Rは、過塩素化、過フッ素化されている。さらに、更なる実施態様では、X,Y,およびZは、それぞれ独立して、H,フッ素又は塩素であり、且つ、Rは、例えば、−CF3又は−CF2CF3のように過フッ素化されている。
【0028】
本発明の方法は、使用した反応物、特にフッ化水素に耐性のある材料で作られた反応器で行うことが出来る。本明細書において、用語「反応器」は、バッチ方式モデル、又は、連続式モデルの何れかで行うことが出来る反応における容器をいう。適切な反応器は、攪拌器付き及び攪拌器なしのタンク反応装置、又は管状反応器を含む。
【0029】
一つの実施態様では、反応器は、ステンレススチール、ハステロイ、インコネル、モンテル、金、金被覆(gold-lined)、又は石英(quartz)を含む腐食に対して耐性である材料で構成される。別のの実施態様では、反応器は、TFE又はPFAで被覆されている。
【0030】
本明細書で開示のオレフィンは、式RCX=CYZ(R、X、Y、Zは、上記に定義したものである)を有するものである。具体例には、RCCl=CH2、RCH=CHCl、RCCl=CHCl、RCH=CCl2、及び、RCH=CH2などが含まれる。一つの実施態様では、Rは、トリフルオロメチルであり、別の実施態様では、Rは、ペンタフルオロエチルである。代表的なオレフィンには、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、クロロテトラフルオロプロペン(HCFO−1224又は1224)、2,3,3,3,−テトラフルオロプロペン(1234yf)、ジクロロテトラフルオロプロペン(HCFO−1214又は1214)、1,3,3,3,−テトラフルオロプロペン(1234ze)、3,3,3,−トリフルオロプロペン(HFO−1234zf又は1234zf)などが含まれる。
【0031】
本明細書のハイドロフルオロアルカンは、上記に定義したように、フルオロオレフィンに対する、HFの付加物である。本明細書で定義されているように、これらは、式RCXFCHYZ、又は、式RCHXCFYZ(R、X、Y、Zは、上記に定義したものである)を有する。上記に記載したように、一つの実施態様では、Rは、トリフルオロメチルであり、別の実施態様では、Rは、ペンタフルオロエチルである。代表的なハイドロフルオロプロパンには、1,1,1,2−テトラフルオロ−2−クロロプロパン、1,1,1,3−テトラフルオロ−3−クロロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−3−クロロプロパン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3−クロロプロパン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンなどを含む。
【0032】
本発明の方法は、フルオロオレフィンの二重結合の間にHFを付加させて、ハイドロフルオロアルカンを生成する。このF原子は、中間又は末端の炭素原子に付加され、そして、水素原子は、末端又は中間の炭素原子に付加されうる。したがって、例えば、本明細書の開示にしたがうと、フルオロオレフィンがRCCl=CH2のときに、生成物は、RCFClCH3である。別の実施態様では、フルオロオレフィンがRCH=CHClのときに、生成物は、RCH2CHFClである。別の実施態様では、フルオロオレフィンがRCH=CCl2のときに、ハイドロフルオロプロパンは、RCH2CFCl2である。さらに、別の実施態様では、フルオロオレフィンがRCH=CH2のときに、形成されたハイドロフルオロプロパンは、RCHFCH3およびRCH2CH2Fある。先に述べた具体例に関して、一つの実施態様では、Rは、CF3又はC26でありえる。
【0033】
一つの実施態様では、フルオロオレフィンは、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり、且つ、ハイドロフルオロアルカンは、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンである。別の実施態様では、フルオロオレフィンは、3,3,3−トリフルオロプロペンであり、且つ、ハイドロフルオロアルカンは、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン、及び、1,1,1,3−テトラフルオロプロパンである。別の実施態様では、フルオロオレフィンは、(Z)又は(E)−1−クロロ−3,3,3−テトラフルオロプロペンであり、且つ、ハイドロフルオロアルカンは、3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンである。別の実施態様では、フルオロオレフィンは、シス又はトランス−1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり、且つ、ハイドロフルオロアルカンは、1,1,1,2−テトラフルオロ−2,3−ジクロロプロパン、及び、1,1,1,3−テトラフルオロ−2,3−ジクロロプロパンである。別の実施態様では、フルオロオレフィンは、2,3,3,3,−テトラフルオロプロペンであり、且つ、ハイドロフルオロアルカンは、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンである。さらに、別の実施態様では、フルオロオレフィンは、1,3,3,3,−テトラフルオロプロペンであり、且つ、ハイドロフルオロアルカンは、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンである。
【0034】
拘束されるものではないが、炭素−炭素二重結合へのHFの添加に関して、フッ素原子は最もハロゲンが付加した二重結合の炭素原子に付加する。その他の場合、拘束されるものではないが、HFは、マルコニコフの法則(HFの水素原子は、より安定したカルボニウムイオンを形成する炭素原子に付加することになる)にしたがって、二重結合の炭素原子に付加する。したがって、例えば、炭素−炭素二重結合の炭素原子の一つが、炭素−炭素二重結合の他方の炭素原子よりも、そこでより多く置換された水素原子を有すると、HFの水素原子は、そこで最も置換された水素を有する炭素原子に付加する。
【0035】
上記方法は、液相中で行われる。フルオロオレフィンはフッ化水素同様に、反応条件下で液体である。水は反応を停止するため使用されることから、水の存在量は最小化される。例えば、使用されるフッ化水素は無水物である。フッ化水素は、液体のフルオロオレフィン中に、ガスとして気泡にされるか、若しくは液体として加える、または、それは、ピリジンのように無水溶媒として存在しても良い。したがって、例えば、一つの実施態様では、必須ではないが、フルオロオレフィンは、HFと混合又は触媒と混合する前に、乾燥剤で乾燥させる。「乾燥」させることで、それは、溶解することなく、さもなければ、乾燥されるフルオロオレフィンを汚染する水を、吸収することになる材料(例えば、硫酸カルシウム又はモレキュラーシーブなどである)を意味する。別の実施態様では、反応は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどのような不活性雰囲気下で行われる。しかし、一つの実施態様では、反応は空気中で行うことが出来、そして、一つの実施態様では、反応はフルオロオレフィンを乾燥させずに行われる。
【0036】
一つの実施態様では、無水液体HFを使用するか、または、HFはガスとして供給するとき、反応は無水HFを溶解させた溶媒以外に溶媒を添加しないで行われる。HFがガスとして供給された場合、ガスとして泡となるが、反応は溶媒を添加しないで行うことが出来る。
【0037】
一つの実施態様では、フッ化水素処理反応は、約−30℃〜約65℃の範囲の温度で行われる。別の実施態様では、フッ化水素処理反応は、約−10℃〜約40℃の範囲の温度で行われる。別の実施態様では、フッ化水素処理反応は、約0℃〜約30℃の範囲の温度で行われる。さらに、別の実施態様では、フッ化水素処理反応は、約0℃〜約25℃の範囲の温度で行われる。別の実施態様では、フッ化水素処理反応は、約5℃〜約25℃の範囲の温度で行われる。さらに、別の実施態様では、フッ化水素処理反応は、約5℃〜約20℃の範囲の温度で行われる。さらに、フッ化水素処理反応は、上記に開示の範囲の間のいかなる温度において行うことが出来、これらの温度は、本発明の範囲内であると考えられる。したがって、上記に開示のフッ化水素化反応は、以下の反応器温度で行われる:約−30℃、約−29℃、約−28℃、約−27℃、約−26℃、約−25℃、約−24℃、約−23℃、約−22℃、約−21℃、約−20℃、約−19℃、約−18℃、約−17℃、約−16℃、約−15℃、約−14℃、約−13℃、約−12℃、約−11℃、約−10℃、約−9℃、約−8℃、約−7℃、約−6℃、約−5℃、約−4℃、約−3℃、約−2℃、約−1℃、約0℃、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、約49℃、約50℃、約51℃、約52℃、約53℃、約54℃、約55℃、約56℃、約57℃、約58℃、約59℃、約60℃、約61℃、約62℃、約63℃、約64℃、又は約65℃。
【0038】
一つの実施態様では、反応混合物は、当該分野の公知技術を使用して攪拌される。例えば、反応混合物は、回転マグネットを使用して攪拌される。代わりに、反応が行われる反応器には、反応混合物を攪拌するインペラ(攪拌羽)又は他の攪拌装置が装着されている。
【0039】
一つの実施態様では、混合は、攪拌装置に代わるものにより提供されてもよい。そのような方法は、当該分野では公知であり、圧力容器に加えられるガスからのガス気泡又は、液体の蒸発による圧力容器内に生じるガス気泡により提供される混合を使用することも含む。混合は、圧力容器からポンプへ液体を引きこむこと、及び、圧力容器中に液体をポンプで戻すことにより提供することが出来る。内容物を混合する固定ミキサー又は他の装置は、追加の混合力インプットを与えるために、液体の循環経路中に存在しても良い。
【0040】
一つの実施態様では、HF対フルオロオレフィンの比率は、約0.5〜約20の範囲である。別の実施態様では、HF対フルオロオレフィンの比率は、約1〜約10である。別の実施態様では、HF対フルオロオレフィンの比率は、約1〜約5である。
【0041】
SbF5は、触媒として効果的な量で存在する。一つの実施態様では、SbF5触媒は、混合物の重量比で約1%〜約50%存在する。別の実施態様では、SbF5触媒は、重量比で約2%〜約30%存在する。別の実施態様では、SbF5触媒は、重量比で約3%〜約15%存在する。
【0042】
上記に述べたように、ハイドロフルオロアルカンは、フルオロオレフィンの触媒フッ素化により調製される。一つの実施態様では、フルオロオレフィンの触媒フッ素化は、ハイドロフルオロアルカンへの変換%が、少なくとも90モル%の結果となる。別の実施態様では、フルオロオレフィンの触媒フッ素化は、ハイドロフルオロアルカンへの変換%が、少なくとも95モル%の結果となる。別の実施態様では、フルオロオレフィンの触媒フッ素化は、ハイドロフルオロアルカンへの変換%が、少なくとも98モル%の結果となる。さらに、別の実施態様では、フルオロオレフィンの触媒フッ素化は、ハイドロフルオロアルカンへの変換%が、少なくとも99モル%の結果となる。
【0043】
本発明の一つの実施態様は、本方法の導入で記載した1234yfを製造するための方法の工程(ii)を置き換えることである。
【0044】
本発明で開示の有利な点の一つは、フッ化水素処理のための触媒反応が、本明細書に記載されているように、より低い温度で、SbCl5又はフッ素化SbCl5のような、フルオロオレフィンの他のフッ化水素処理反応のための他の触媒よりも低い温度で、起きることである。これらの他の触媒とは異なり、本方法で使用されるこれらの低い温度では、SbF5は液体である。したがって、これらのフッ化水素処理反応を行うには、よリ少ないエネルギーが必要とされるにすぎない。さらに、本方法では、触媒は、この低い温度で十分な活性を有する。したがって、触媒反応は低い温度で進行し、結果として、より効率的になる。
【0045】
さらに、もう一つの利点は、生成される所望のハイドロフルオロアルカンの開始オレフィンに対する比率は、約90:1又はそれより多く、そして、別の態様では、約100:1又はそれより多く、そして、別の態様では、約110:1又はそれより多い。したがって、別の理由で、この反応は非常に効率的である。
【0046】
さらに、効率性の観点からは、もし、オレフィン及びフッ化水素処理反応から生じたハイドロフルオロアルカンが、例えば、1233xf及び244bbのように、一緒に混合されたものであり、そして本発明の条件下でSbF5と反応させられた場合、追加のハイドロフルオロアルカン生成物が形成されることになる。例えば、一つの実施態様では、1233xfのようなオレフィン対244bbのようなハイドロフルオロアルカンのフィード(供給)材料比率が、約1%より多い場合、本方法は、未反応オレフィンをハイドロフルオロアルカンへ、顕著に変換させ、それにより、混合物中のハイドロフルオロアルカンの量を増加させることになる。したがって、本開示は、オレフィンに対する所望のハイドロフルオロアルカンの収率を最大化する方法を提供するものである。したがって、上記の具体例、オレフィンが1233xfであり、ハイドロフルオロアルカンが244bbであるところ、もし、1233xfが約1モル%よりも多く存在した場合、反応前よりも、生成物は顕著により多くの244bbを有することになる。
【0047】
したがって、一つの実施態様では、本開示のこの利点は、生成されるHFO−1234yfの収率を向上させるために使用出来ることである。上記に記載したように、HFO−1234yfの調製は、以下に示す、少なくとも3つの工程を含み得る。
(i)(CQ2=CCl−CH2Q又は、CQ3−CCl=CH2又は、CQ3−CHCl−CH2Q)+HF−>2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)+固体触媒で充填した蒸気相反応器中のHCl
(ii)2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)+HF−>液体フッ化水素処理触媒で充填した液相反応器中の2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)、および、
(iii)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)−>蒸気相反応器中の2,3,3,3,−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)
【0048】
工程(i)、工程(ii)、および、工程(iii)の一般的な反応は、周知技術である。例えば、これらは、米国特許第8,846,990号公報に記載されており、この特許公報は、本明細書に参照として組み込まれる。
【0049】
第一の工程は、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230xa又は1230xa)を含む、開始組成物は、第1反応容器(フッ素化反応器)中で、無水HFと反応させ、少なくともHCFO−1233xf(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)とHClとの混合物を生成する。この反応は、反応容器中で、ガス相中、約200℃〜約400℃の温度、及び、約0〜約200psigの圧力で行われる。蒸気相反応器中に存在する流出した流れは、未反応のHF,未反応の反応開始組成物、重い中間体、HFC−245cbなどのような追加成分を、任意選択的に含んでも良い。
【0050】
この反応は、蒸気相フッ素化反応に適した反応器で行うことが出来る。この反応器は、ハステロイ、インコンネル、モネルなどのようなフッ化水素の腐食作用に耐性を有する材料から構成してもよい。蒸気相の方法の場合には、反応器は、蒸気相フッ素化触媒で満たされる。当該分野の公知のフッ素化触媒を、この方法において使用することが出来る。適切な触媒は、限定されるものではないが、金属酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、酸ハロゲン化物(oxyhalides)、これらの無機塩、並びに、これらの混合物を含むが、これらのものは、任意選択的にハロゲン化されていても良く、金属は、限定されるものではないが、クロム、アルミニウム、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、及び、これらの2つ以上の組合せを含む。本発明の非排他的な適切な触媒の組合せには、Cr23、FeCl3/C,Cr23/Al23、Cr23/AlF3、CoCl2/炭素,CoCl2/Cr23/Al23、NiCl2/Cr23/Al23、CoCl2/Al23、NiCl2/AlF3及び、これらの組合せが含まれる。クロム酸化物/アルミニウム酸化物触媒は、米国特許第5,155,082号公報に記載されている。この公報の内容を、参照として、本明細書に組み込む。結晶質クロム酸化物又は非晶質クロム酸化物のようなクロム(III)酸化物が好ましく、非晶質クロム酸化物が最も好ましい。クロム酸化物(Cr23)は、多様な粒径で購入可能である市販されている材料である。フッ素化触媒は、少なくとも98%の純度であることが好ましい。フッ素化触媒は過剰に存在するが、少なくとも反応を起こすために十分な量で存在する。
【0051】
反応の第一工程は、蒸気相反応に限定される必要はなく、米国特許公開第2007/0197842号公報に開示されているように、液相反応を使用して行うこと、液相と蒸気相を組合せて行うことも可能である。この公報の内容を、参照として、本明細書に組み込む。反応は、バッチ方法、連続方式、又はこれらの組合せにより行うことが出来ると考えられる。
【0052】
液相反応を含む反応中の態様に関しては、反応は、触媒系又は非触媒系である。ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タリウム、ハロゲン化鉄、及び、これらの2以上の組合せを含む金属ハロゲン化触媒のようなルイス酸触媒、を採用できる。ある態様では、限定されるものではないが、SbCl5、SbCl3、SbF5、SbCl4、TiCl4、FeCl3、及び、これらの2種以上の組合せを含む、金属塩化物並びに金属フッ化物を使用することが出来る。SbF5は低温では液体である。
【0053】
2,3,3,3,−テトラフルオロプロペンを形成する方法の第二の工程は、HCFO−1234xfを、HCFC−244bbに変換することである。一つの実施態様では、この工程は、液相容器(TFE又はPFAで被覆されていてもよい)中の液相で行うことが出来る。そのような方法は、約70℃〜約120℃の範囲の温度、および、約50〜約120psiの範囲の圧力で行うことが出来る。液相フッ素化触媒をこれらの温度において、効果的に使用することが出来る。非排他的なリストは、ルイス酸、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属酸化物、IVb族金属ハロゲン化物、Vb族金属ハロゲン化物、又はこれらの組合せを含む。非排他的な液相フッ素化触媒の例は、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タリウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオビウム、ハロゲン化モリブデン、ハロゲン化鉄、フッ素化クロムハロゲン化物、フッ素化クロム酸化物、又はこれらの組合せである。非排他的な液相フッ素化触媒の例は、SbCl5、SbCl3、SbF5、SnCl4、TaCl5、TiCl4、NbCl5、MoCl6、FeCl3、SbCl5のハロゲン化種、SbCl3のハロゲン化種、SnCl4のハロゲン化種、TaCl5のハロゲン化種、TiCl4のハロゲン化種、NbCl5のハロゲン化種、MoCl6のハロゲン化種、FeCl3のハロゲン化種、又はこれらの組合せである。
【0054】
これらの触媒は、もし、それらが不活性化されたとき、公知の手段により容易に再生することが出来る。触媒を再生する適切な一つの方法は、触媒を通して、塩素流を流れさせることを含む。例えば、液相フッ素化触媒、1ポンド毎に対して、1時間当たり約0.002〜約0.2lbの塩素を液相反応に加えることが出来る。例えば、これは、約65℃〜約100℃の温度で、約1時間〜約2時間又は連続して行うことが出来る。
【0055】
反応のこの第二の工程は、液相反応に限定される必要はなく、米国特許公開第2007/0197842号公報に開示されているように、蒸気相反応を使用して行うこと、液相と蒸気相を組合せて行うことも可能である。この公報の内容を、参照として、本明細書に組み込む。この最後に、フィードの流れを含むHCFO−1233xfは、約50℃〜約400℃の温度に予め加熱され、そして、触媒及びフッ素化剤と接触させる。触媒は、そのような反応に使用される標準蒸気相剤を含むことが出来、そして、フッ素化剤は、限定するものではないが、フッ化水素のように、一般的に公知のフッ素化剤はを含むことが出来る。
【0056】
米国特許公開第2007/0197842号公報に開示されているように、従来技術に開示の方法において、第二の工程からの生成物は、その後、第三の反応器に移動され、そこで、244bbは脱ハロゲン化水素される。脱ハロゲン化水素の触媒は、金属ハロゲン化物、ハロゲン化金属酸化物、中性(又はゼロ酸化状態)金属若しくは金属合金、又は、バルク若しくは担持形態の活性化炭素、であるか、又は、含んでもよい。金属ハロゲン化物触媒、又は、金属酸化物触媒は、限定されるものではないが、1価、2価、3価の金属ハロゲン化物、金属酸化物、および、それらの混合物/組合せ、並びに、より好ましくは、1価、および2価の金属ハロゲン化物、および、それらの混合物/組合せを含んでもよい。金属ハロゲン化物、金属酸化物、および、それらの混合物/組合せの構成金属は、限定されるものではないが、Cr3+,Fe3+,Mg2+,Ca2+、Ni2+,Zn2+,Pd2+,Li+,Na+,K+,およびCs+,を含む。構成ハロゲンは、限定されるものではないが、F-、Cl-、Br-およびI-を含む。有用な1価又は2価の金属ハロゲン化物は、限定するものではないが、LiF,NaF,KF,CsF,MgF2,CaF2,LiCl,NaCl,KCl、およびCsClが含まれる。ハロゲン化処理は、従来技術において公知の処理を施すこと、特に、ハロゲン化源として、HF,F2,HCl、Cl2,HBr,Br2,HI,およびI2を適用することを含んでもよい。
【0057】
触媒が、中性、即ちゼロ価金属、であるか、又は含むとき、その時、金属及び金属合金、並びにこれらの混合物が使用される。有用な金属は、限定されるものではないが、Pd,Pt,Rh,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Cr,Mn,並びに、前記の合金又は混合物の組合せが含まれる。触媒は、担持されていても、担持されていなくても良い。金属合金の有用な具体例は、限定されるものではないが、SS316、モネル400、インコンネル825、インコンネル600、及びインコンネル625が含まれる。そのような触媒は、別個の担持された要素若しくは担持されていない要素、及び/又は反応器の一部として、及び/又は反応器壁として提供されてもよい。
【0058】
好適な、限定的でない触媒は、活性化炭素、ステンレススチール(例えば、SS316)、オーステナイト系ニッケルベース合金(例えば、インコンネル625)、ニッケル、フッ素化10%CsCl/MgO、及び、10%CsCl/MgF2を含む。適切な反応温度は、約300℃〜約550℃であり、適切な反応圧力は、約0psig〜約150psigの間でありえる。反応器排液は、苛性スクラバー又は蒸留カラムにフィードし、HClの副生成物を除去し、酸を含まない有機生成物を生成し、任意選択的に、当該分野で公知の精製技術又はその組合せを使用して更なる精製に処しても良い。
【0059】
脱ハロゲン化水素反応は蒸気相中で行われる。これは、約200℃〜約800℃の範囲の温度、約300℃〜約600℃、又は約400℃〜約500℃で行っても良い。適切な反応器圧力は、約0psig〜約200psigの範囲、約10psig〜約100psig、又は約20psig〜約70psigである。
【0060】
1233xfの1234yfへの収率及び、変換を増加させる方法、並びに、より効率良く反応させる方法は、工程(ii)の生成物(脱塩化水素工程の前に本発明の方法にしたがって、1233xf及び244bbの混合物、並びに、SbF5触を含む)と反応させる。これは、244bb比率を増加させ(1233xfの存在量を減少させる)、その結果生じた物は、その後、上記工程(iii)に適用される。この追加のフッ素化水素処理反応を行うことにより、より多くの244bbが生成され、そして、結果として、顕著に多くの1234yfが生成される。したがって、生成された244bbは、その後、別の反応器に移動させられ、それは、工程(iii)にしたがって、脱ハロゲン化水素反応を受ける。
【0061】
代わりに、上記に述べたように、この方法の工程(ii)を行う代わりに、工程(i)で生成された1233xfは、本明細書に記載のように、本発明にしたがって、SbF5の存在下、HFでフッ化水素処理される。したがって、形成された244bb生成物は、その後、脱塩化水素されて、上記に述べられている工程(iii)にしたがって、1234yfを形成する。
【実施例】
【0062】
以下の非限定的な実施例により、さらに、本発明を説明する。
(実施例1)
30℃で、SbF5触媒とHFによる1233xfのフッ化水素処理
【0063】
13.8gのHF、および、5gのSbF5を、210mLのシェイカーチューブ反応器に入れた。その後、この反応器を抜き取り、−15℃に冷却した。30gの1233xfを、この反応器中に加えた。その後、反応器は、攪拌され30℃に加熱された。温度が30℃に達したら、水を加えて触媒反応を終了させた。この有機層は、ステンレススチール製シリンダー中に蒸気移動させ、GC−MSにより分析された。下記の表1は、GC−MS分析の結果を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(実施例2)
10℃で、SbF5触媒とHFによる1233xfのフッ化水素処理
【0066】
13.8gのHF、および、5gのSbF5を、210mLのシェイカーチューブ反応器に入れた。その後、この反応器を抜き取り、−15℃に冷却した。30gの1233xfを、この反応器中に加えた。その後、反応器は攪拌され10℃に加熱された。温度が10℃に達したら、水を加えて触媒反応を終了させた。この有機層は、ステンレススチール製シリンダー中に蒸気移動させ、GC−MSにより分析された。下記の表2は、GC−MS分析の結果を示す。
【0067】
【表2】
【0068】
(実施例3)
30℃で、SbF5触媒とHFによる1233xfのフッ化水素処理
【0069】
10.0gのHF、および、5gのSbF5を、210mLのシェイカーチューブ反応器に入れた。その後、この反応器を抜き取り、−40℃に冷却した。30gの1233xfを、この反応器中に加えた。その後、反応器は攪拌され、30℃に加熱され、そして、1時間攪拌した。反応器を、−30℃に迅速に冷却し、そして、75mLの水を加えて触媒反応を終了させた。この有機層は、ステンレススチール製シリンダー中に蒸気移動させ、GC−MSにより分析された。下記の表3は、GC−MS分析の結果を示す。
【0070】
【表3】
【0071】
(比較例1)
80℃で、フッ化SbCl5触媒とHFによる1233xf-244bb平衡
【0072】
18.0gのHF、および、14gのSbCl5を、210mLのシェイカーチューブ反応器に入れ、そして、100℃に加熱して2時間攪拌した。その後、この反応器を抜き取り、0℃に冷却し、HClを換気した。20gの244bb(99.7モル%)を、この反応器に加えた。その後、反応器を、1時間、80℃に加熱し、その後、迅速に30℃に冷却した。そして、反応器に水を加えて触媒反応を終了させた。この有機層は、ステンレススチール製シリンダー中に蒸気移動させ、GC−MSにより分析された。下記の表4は、GC−MS分析の結果を示す。1233xf/244bb比率は、0.3モル%から1.95モル%へ増加した。これは、1233xfから244bbへの完全な変換を阻害する1233xfと244bbとの間に平衡が存在することを示す。
【0073】
【表4】
【0074】
多くの態様、及び実施態様が記載されてきているが、それらは単なる例示的なものであり、限定するものではない。本明細書を読めば、当業者は、発明の範囲から離れることなく、他の態様および実施態様が可能であることが分かる。
【0075】
1つ以上の他の特徴および有利な点は、上記発明の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。