特許第6962844号(P6962844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962844粒子状物質濃度推定装置および粒子状物質濃度推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962844
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】粒子状物質濃度推定装置および粒子状物質濃度推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/06 20060101AFI20211025BHJP
   G01N 21/53 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G01N15/06 D
   G01N21/53 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-62298(P2018-62298)
(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2019-174266(P2019-174266A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多久 俊平
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−177685(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/101762(WO,A1)
【文献】 特開2004−203966(JP,A)
【文献】 実開昭57−182149(JP,U)
【文献】 特開平2−64437(JP,A)
【文献】 特開2012−251889(JP,A)
【文献】 特開2015−121515(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/47409(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/76780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00−15/14
G01N 21/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の所定の測定高さ位置における粒子状物質の濃度を測定する濃度測定部と、
前記室内の空気の流れに関する空気流情報を取得する空気流情報取得部と、
前記測定高さ位置と前記測定高さ位置より下方の所定の目的高さ位置との距離、および、取得された前記空気流情報に基づき、測定された前記粒子状物質の濃度を補正して、前記目的高さ位置における粒子状物質の濃度を推定する濃度推定部と、
を備える粒子状物質濃度推定装置。
【請求項2】
前記空気流情報取得部は、前記空気流情報として、所定の期間において、前記室内で人が動いていた時間を取得する請求項1に記載の粒子状物質濃度推定装置。
【請求項3】
前記空気流情報取得部は、前記空気流情報として、所定の期間において、前記室内で人を感知したことを示す情報を取得する請求項1に記載の粒子状物質濃度推定装置。
【請求項4】
前記空気流情報取得部は、前記空気流情報として、前記室内における上昇流の風速を取得する請求項1に記載の粒子状物質濃度推定装置。
【請求項5】
前記濃度推定部は、前記室内における床の材質の種類に基づいて決定される補正係数で、前記測定された粒子状物質の濃度を補正する請求項1から4のいずれか1項に記載の粒子状物質濃度推定装置。
【請求項6】
前記濃度推定部は、前記室内の湿度に基づいて、前記目的高さ位置における粒子状物質の濃度を推定する請求項1から5のいずれか1項に記載の粒子状物質濃度推定装置。
【請求項7】
室内の所定の測定高さ位置における粒子状物質の濃度を測定する工程と、
前記室内の空気の流れに関する空気流情報を取得する工程と、
前記測定高さ位置と前記測定高さ位置より下方の所定の目的高さ位置との距離、および、取得された前記空気流情報に基づき、測定された前記粒子状物質の濃度を補正して、前記目的高さ位置における粒子状物質の濃度を推定する工程と、
を含む粒子状物質濃度推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の空気中に含まれる粒子状物質の濃度を推定する粒子状物質濃度推定装置および粒子状物質濃度推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気中に含まれる粒子状物質によるアレルギー等の健康被害が問題となっている。粒子状物質は、例えば、花粉や埃(ハウスダスト等)、PM2.5、PM10である。そこで、空気中に含まれる粒子状物質を測定するセンサが開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−121515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気中を浮遊する粒子状物質は、大きさに応じた速度で地面に向かって沈降する。一方、人の活動等により空気の流れが発生すると、粒子状物質の沈降速度が低下したり、粒子状物質が舞い上がったりする。このため、空間内の位置によって粒子状物質の濃度が異なる場合がある。そうすると、粒子状物質の濃度を知りたい位置(以下、「目的高さ位置」という)と、センサによる測定高さ位置とが離れている場合、目的高さ位置の濃度と測定高さ位置の濃度とに差が生じてしまう。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、センサによる測定高さ位置と目的高さ位置とが離れている場合であっても、目的高さ位置の粒子状物質の濃度を精度よく推定することが可能な粒子状物質濃度推定装置および粒子状物質濃度推定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の粒子状物質濃度推定装置は、室内の所定の測定高さ位置における粒子状物質の濃度を測定する濃度測定部と、室内の空気の流れに関する空気流情報を取得する空気流情報取得部と、測定高さ位置と測定高さ位置より下方の所定の目的高さ位置との距離、および、取得された空気流情報に基づき、測定された粒子状物質の濃度を補正して、目的高さ位置における粒子状物質の濃度を推定する濃度推定部と、を備える。
【0007】
また、空気流情報取得部は、空気流情報として、所定の期間において、室内で人が動いていた時間を取得してもよい。
【0008】
また、空気流情報取得部は、空気流情報として、所定の期間において、室内で人を感知したことを示す情報を取得してもよい。
【0009】
また、空気流情報取得部は、空気流情報として、室内における上昇流の風速を取得してもよい。
【0010】
また、濃度推定部は、室内における床の材質の種類に基づいて決定される補正係数で、測定された粒子状物質の濃度を補正してもよい。
【0011】
また、濃度推定部は、室内の湿度に基づいて、目的高さ位置における粒子状物質の濃度を推定してもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の粒子状物質濃度推定方法は、室内の所定の測定高さ位置における粒子状物質の濃度を測定する工程と、室内の空気の流れに関する空気流情報を取得する工程と、測定高さ位置と測定高さ位置より下方の所定の目的高さ位置との距離、および、取得された空気流情報に基づき、測定された粒子状物質の濃度を補正して、目的高さ位置における粒子状物質の濃度を推定する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、目的高さ位置の粒子状物質の濃度を精度よく推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態にかかる粒子状物質濃度推定装置の使用形態を説明する図である。
図2】粒子状物質濃度推定装置の構成を説明する図である。
図3】直近T分間における感知時間xtと、f(xt)との関係を説明する図である。
図4】測定高さ位置と目的高さ位置との距離hと、f(h)との関係を説明する図である。
図5】実施形態の粒子状物質濃度推定方法の処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(粒子状物質濃度推定装置100)
図1は、本実施形態にかかる粒子状物質濃度推定装置100の使用形態を説明する図である。図1に示すように、粒子状物質濃度推定装置100は、室内(屋内)10における天井12に設置される。粒子状物質濃度推定装置100は、例えば、ガス警報器または火災報知器に組み込まれる。
【0017】
図2は、粒子状物質濃度推定装置100の構成を説明する図である。なお、図2中、信号の流れを実線の矢印で示す。図2に示すように、粒子状物質濃度推定装置100は、濃度測定部110と、空気流情報取得部120と、中央制御部130と、情報出力部140とを含む。
【0018】
濃度測定部110は、室内10の所定の測定高さ位置における粒子状物質の濃度を測定する。本実施形態において、測定高さ位置は、天井12の位置とする。濃度測定部110は、例えば、光散乱方式の装置である。
【0019】
空気流情報取得部120は、例えば、人感センサを含む。空気流情報取得部120は、室内10において人が動いたことを検知し、その時間を積分(蓄積)する。したがって、空気流情報取得部120は、室内10において人が動いていれば、その人数に限らず、動いている時間がすべて積分される。本実施形態において、空気流情報取得部120は、直近T分間において、室内10で人が動いていた時間(感知時間)xtを取得する。
【0020】
中央制御部130は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。中央制御部130は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して粒子状物質濃度推定装置100全体を管理および制御する。本実施形態において、中央制御部130は、濃度推定部132として機能する。
【0021】
濃度推定部132は、測定高さ位置の下方に位置する目的高さ位置における粒子状物質の濃度を推定する。目的高さ位置は、例えば、人の顔(顔の中心)の位置(例えば、床14から150cm)、または、床14の位置とする。濃度推定部132は、測定高さ位置と目的高さ位置との距離h、および、直近T分間(例えば、5分間)における感知時間xtに基づき、濃度測定部110によって測定された粒子状物質の濃度csを補正して、目的高さ位置の粒子状物質の濃度cmを推定する。なお、測定高さ位置と目的高さ位置との距離hは、測定高さ位置と目的高さ位置との鉛直方向の距離である。
【0022】
具体的に説明すると、濃度推定部132は、下記式(1)に基づいて、目的高さ位置の粒子状物質の濃度cmを導出する。
cm = cs × f(xt) × f(h) …式(1)
ここで、f(xt)は、粒子状物質の舞い上がり程度を示す関数であり、f(h)は、粒子状物質の沈降(自由落下)程度を示す関数である。f(xt)とf(h)とは独立した関数である。
【0023】
図3は、直近T分間における感知時間xtと、f(xt)との関係を説明する図である。図3中、縦軸にf(xt)を示し、横軸にxtを示す。図3に示すように、f(xt)は、感知時間xtが0に近いほど値が大きくなり、感知時間xtがTに近づくほど1に近づく。つまり、感知時間(人が動いている時間)xtが長いほど、空気が攪拌される頻度が大きくなり、粒子状物質が舞い上げられる確率が高くなる。このため、感知時間xtが長いほど、目的高さ位置と測定高さ位置との粒子状物質の濃度が近くなり、f(xt)は、1に近づく。
【0024】
図4は、測定高さ位置と目的高さ位置との距離hと、f(h)との関係を説明する図である。図4中、縦軸にf(h)を示し、横軸にhを示す。図4に示すように、距離hが0である場合、すなわち、測定高さ位置と目的高さ位置とが等しい場合、f(h)は1となる。また、距離hが大きくなるほど、目的高さ位置と測定高さ位置との濃度が乖離し、f(h)は大きくなる。
【0025】
このように、濃度推定部132が、感知時間xt、および、距離hに基づいて、濃度測定部110によって測定された粒子状物質の濃度csを補正することにより、目的高さ位置の粒子状物質の濃度cmを精度よく推定することが可能となる。
【0026】
情報出力部140は、例えば、表示器や音声出力器で構成され、濃度推定部132によって推定された目的高さ位置の粒子状物質の濃度cmを出力する。
【0027】
(粒子状物質濃度推定方法)
続いて、上記粒子状物質濃度推定装置100を用いた粒子状物質濃度推定方法について説明する。図5は、本実施形態の粒子状物質濃度推定方法の処理の流れを説明するフローチャートである。図5に示すように、粒子状物質濃度推定方法は、測定工程S110と、取得工程S120と、推定工程S130と、出力工程S140とを含む。以下、各工程について説明する。
【0028】
(測定工程S110)
測定工程S110は、濃度測定部110が、測定高さ位置における粒子状物質の濃度csを測定する工程である。
【0029】
(取得工程S120)
取得工程S120は、空気流情報取得部120が、直近T分間における感知時間xtを取得する工程である。
【0030】
(推定工程S130)
推定工程S130は、濃度推定部132が、測定高さ位置と目的高さ位置との距離h、測定工程S110において測定された濃度cs、および、取得工程S120において取得された感知時間xtに基づき、上記式(1)を用いて、目的高さ位置の粒子状物質の濃度cmを推定する工程である。
【0031】
(出力工程S140)
出力工程S140は、情報出力部140が、推定工程S130において推定された濃度cmを出力する工程である。
【0032】
以上説明したように、本実施形態にかかる粒子状物質濃度推定装置100およびこれを用いた粒子状物質濃度推定方法によれば、室内10における空気の流れの状況(感知時間xt)、距離hに基づいて、濃度測定部110によって測定された粒子状物質の濃度csを補正することにより、目的高さ位置の粒子状物質の濃度cmを精度よく推定することが可能となる。
【0033】
(第1の変形例)
上記実施形態において、空気流情報取得部120は、空気流情報として、直近T分間における感知時間xtを取得した。しかし、空気流情報取得部120は、直近T分間のみならず、現在よりT分前時点から遡った所定の期間における感知時間を取得してもよい。
【0034】
例えば、直近T分間における感知時間xt、T分前時点から遡ったT分間における感知時間をx2t、2T分前時点から遡ったT分間における感知時間をx3t等とする。つまり、(n−1)T分前時点から遡ったT分間における感知時間をxntとする(nは2以上の整数)。
【0035】
そして、空気流情報取得部120が、感知時間xtおよび感知時間xntを取得し、濃度推定部132は、感知時間xt、感知時間xnt、および、距離hに基づいて、濃度測定部110によって測定された粒子状物質の濃度csを補正する。
【0036】
具体的に説明すると、濃度推定部132は、下記式(2)に基づいて、目的高さ位置の粒子状物質の濃度cmを導出する。
cm = cs × f(h)× f(xt) × f(xnt) …式(2)
ここで、f(xnt)は、f(xt)と同様に、粒子状物質の舞い上がり程度を示す関数であり、感知時間xntが0に近いほど値が大きくなり、感知時間xntがTに近づくほど1に近づく。ただし、感知時間xntが感知時間xtと等しい場合、f(xt)>f(xnt)となる。また、この場合、nが大きいほど、f(xnt)は小さくなる。
【0037】
(第2の変形例)
空気流情報取得部120は、空気流情報として、所定の期間において、室内10で人を感知した回数(感知回数)xcを示す情報を取得してもよい。この場合、濃度推定部132は、直近T分間における人の感知回数xcに基づく係数、および、距離hに基づいて、濃度測定部110によって測定された粒子状物質の濃度csを補正する。例えば、濃度推定部132は、上記式(1)のf(xt)に代えて、f(xc)を乗算して、粒子状物質の濃度csを補正する。ここで、f(xc)は、f(xt)と同様に、感知回数xcが0に近いほど値が大きくなり、感知回数xcが多いほど1に近づく。つまり、感知回数xcが多いほど、空気が攪拌される頻度が大きくなり、粒子状物質が舞い上げられる確率が高くなる。このため、感知回数xcが多いほど、f(xc)は1に近づく。
【0038】
同様に、例えば、濃度推定部132は、上記式(2)のf(xt)に代えて、f(xc)を乗算し、f(xnt)に代えて、f(xnc)を乗算して、粒子状物質の濃度csを補正する。なお、直近T分間における感知回数xc、T分前時点から遡ったT分間における感知回数をx2c、2T分前時点から遡ったT分間における感知回数をx3c等とする。つまり、(n−1)T分前時点から遡ったT分間における感知回数をxncとする(nは2以上の整数)。f(xnc)は、f(xc)と同様に、粒子状物質の舞い上がり程度を示す関数であり、感知回数xncが0に近いほど値が大きくなり、感知回数xncがTに近づくほど1に近づく。ただし、感知回数xncが感知回数xcと等しい場合、f(xc)>f(xnc)となる。また、この場合、nが大きいほど、f(xnc)は、小さくなる。
【0039】
(第3の変形例)
空気流情報取得部120は、空気流情報として、所定の期間において、室内10で人を感知したことを示す情報を取得してもよい。この場合、濃度推定部132は、人を感知したことに基づく係数、および、距離hに基づいて、濃度測定部110によって測定された粒子状物質の濃度csを補正する。例えば、濃度推定部132は、上記式(1)のf(xt)に代えて、所定の係数(例えば、人を感知した場合、係数を0.8とし、人を感知しない場合係数を0.2とする)を乗算して、粒子状物質の濃度csを補正する。
【0040】
(第4の変形例)
空気流情報取得部120は、空気流情報として、室内10の風速vを取得してもよい。この場合、空気流情報取得部120は、風速計で構成される。また、空気流情報取得部120は、下から上へ向かう空気の風速v(上昇流の風速v)を取得する。この場合、濃度推定部132は、風速vに基づく係数、および、距離hに基づいて、濃度測定部110によって測定された粒子状物質の濃度csを補正する。例えば、濃度推定部132は、上記式(1)のf(xt)に代えて、f(v)を乗算して、粒子状物質の濃度csを補正する。ここで、f(v)は、f(xt)と同様に、風速vが0に近いほど値が大きくなり、風速vが大きいほど1に近づく。つまり、風速vが大きいほど、粒子状物質が舞い上げられる確率が高くなる。このため、風速vが大きいほど、f(v)は1に近づく。
【0041】
(第5の変形例)
濃度推定部132は、空気流情報、および、距離hに加えて、室内10における床14の材質の種類に基づいて決定される補正係数で、粒子状物質の濃度csを補正してもよい。例えば、床14がフローリング(床14の材質が木、プラスチック、石)の場合、粒子状物質が舞い上げられる確率が高い。一方、床14が絨毯(床14の材質が、毛、布)の場合、粒子状物質が舞い上げられる確率が低い。したがって、床14がフローリングの場合、式(1)または式(2)に乗算する補正係数を1または1に近い第1値とする。また、床14が絨毯の場合、式(1)または式(2)に乗算する補正係数を、第1値を上回る第2値とする。
【0042】
(第6の変形例)
濃度推定部132は、空気流情報、および、距離hに加えて、室内10の湿度に基づいて、濃度測定部110によって測定された粒子状物質の濃度csを補正して、目的高さ位置の粒子状物質の濃度cmを推定してもよい。室内10の湿度が高いほど、粒子状物質の質量が大きくなり、沈降しやすくなる。したがって、室内10の湿度が高いほど、式(1)または式(2)に乗算する補正係数を大きくする(1を上回る値とする)。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0044】
例えば、上記実施形態において、粒子状物質濃度推定装置100が天井12に設置される構成を例に挙げて説明した。しかし、粒子状物質濃度推定装置100の設置箇所に限定はない。例えば、粒子状物質濃度推定装置100は、天井付近に設置されてもよい。
【0045】
また、上記実施形態において、情報出力部140が、濃度推定部132が推定した、目的高さ位置の粒子状物質の濃度cmを出力する構成を例に挙げて説明した。しかし、情報出力部140は、推定した濃度cmが所定の閾値を上回った場合にのみ、推定した濃度cmを出力してもよい。また、情報出力部140は、推定した濃度cmが所定の閾値を上回った場合に、推定した濃度cm、および、所定の情報のいずれか一方または両方を出力してもよい。例えば、情報出力部140は、目的高さ位置が人の顔の位置である場合、所定の情報として、空気清浄機の運転を推奨する旨の情報を出力してもよい。また、情報出力部140は、目的高さ位置が床14の位置である場合、所定の情報として、掃除機の運転を推奨する旨の情報を出力してもよい。
【0046】
また、目的高さ位置は、予め設定されていてもよいし、ユーザによる操作入力に応じて変更されてもよい。この場合、f(h)は定数となる。
【0047】
また、濃度推定部132は、濃度測定部110によって測定された粒子状物質の濃度csと、測定高さ位置と目的高さ位置との距離hと、人の感知時間xt、人を感知したか否か、人の感知回数xc、および、風速vのうちのいずれか1または複数の空気流情報に基づいて、目的高さ位置における粒子状物質の濃度cmを推定してもよい。また、濃度推定部132は、濃度測定部110によって測定された粒子状物質の濃度csと、測定高さ位置と目的高さ位置との距離hと、人の感知時間xt、人を感知したか否か、人の感知回数xc、および、風速vのうちのいずれか1または複数の空気流情報に加えて、室内10における床14の材質の種類、および、室内10の湿度のいずれか一方また両方に基づいて、目的高さ位置における粒子状物質の濃度cmを推定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、室内の空気中に含まれる粒子状物質の濃度を推定する粒子状物質濃度推定装置および粒子状物質濃度推定方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
S110 測定工程
S120 取得工程
S130 推定工程
100 粒子状物質濃度推定装置
110 濃度測定部
120 空気流情報取得部
132 濃度推定部
図1
図2
図3
図4
図5