(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の車両用シートでは、シートバックのリクライニング時に、着座者の脚部がシートクッションと共に大きく上昇されるため、着座者の足部が車体床部から浮き上がって不安定になることが懸念される。また、上記構成の車両用シートが運転席の場合、シートバックのリクライニング時に、着座者の脚部がステアリングホイール等と干渉する恐れがある。以上のことから、上記構成の車両用シートでは、リクライニングの調整幅が少なくなる等の問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シートバックのリクライニング時における着座者の背ズレ及び脚部の上昇を抑制することができる車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、シートクッションの骨格の後部を構成すると共に、車体床部に対してシート幅方向を軸線方向とする後部軸回りに回転可能とされるクッションフレーム後部と、前記シートクッションの骨格の前部を構成すると共に、シート幅方向を軸線方向とし且つ前記後部軸よりもシート前方側に位置する中折れ軸回りに回転可能に前記クッションフレーム後部と連結されるクッションフレーム前部と、前記クッションフレーム後部の後端側から立設され、シートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、前記クッションフレーム後部、前記クッションフレーム前部及び前記シートバックフレームを含んで構成されるシートフレームを、車体床部に対してシート前後方向にスライドさせるシートスライド機構と、前記クッションフレーム前部から前記クッションフレーム後部がシート後方へ延びる非リクライニング状態と前記クッションフレーム後部が前記クッションフレーム前部に対して後下がりに傾斜するリクライニング状態との間で、前記クッションフレーム前部と前記クッションフレーム後部とをシート上下方向に相対移動させる駆動機構と、を備え
、前記シートバックフレームが前記クッションフレーム後部と一体でリクライニングする。
【0007】
請求項1に記載の車両用シートによれば、駆動機構は、上記の非リクライニング状態とリクライニング状態との間で、クッションフレーム前部とクッションフレーム後部とをシート上下方向に相対移動させる。この相対移動により、上記の非リクライニング状態からリクライニング状態となる際には、クッションフレーム前部とクッションフレーム後部とが中折れ軸回りに相対回転すると共に、クッションフレーム後部が後部軸回りに回転し、クッションフレーム後部の後端側から立設されたシートバックフレームがリクライニング(後傾)する。この際には、クッションフレーム後部がシートバックフレームと一緒に中折れ軸回りにリクライニングされるので、着座者の背ズレを抑制することができる。しかも、上記のリクライニングの際には、クッションフレーム後部がクッションフレーム前部に対して中折れ軸回りに回転されて後下がりに傾斜されるので、クッションフレーム前部がクッションフレーム後部と一緒に後部軸回りに回転(上昇)される場合と比較して、着座者の脚部の上昇を抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記駆動機構は、前記クッションフレーム前部と車体床部との間に設けられるリクライニング用リンクと、前記リクライニング用リンクを駆動することで前記クッションフレーム前部をシート上下方向に移動させるリクライニング用モータと、を有するリクライニング用駆動機構を含んで構成されている。
【0009】
請求項2に記載の車両用シートでは、クッションフレーム前部と車体床部との間にリクライニング用リンクが設けられる。このリクライニング用リンクがリクライニング用モータによって駆動されることで、クッションフレーム前部がシート上下方向に移動される。これにより、クッションフレーム前部とクッションフレーム後部とを簡素な構成でシート上下方向に相対移動させることが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記駆動機構は、前記リクライニング用リンクと前記クッションフレーム前部との間に設けられるフロントリンクと、前記クッションフレーム後部と車体床部との間に設けられ、前記後部軸を介して前記クッションフレーム後部と連結されるリヤリンクと、前記フロントリンク及びリヤリンクのうちの少なくとも一方を駆動することで前記クッションフレーム前部及び前記クッションフレーム後部をシート上下方向に移動させるリフタ用モータと、を有するリフタ用駆動機構を含んで構成されている。
【0011】
請求項3に記載の車両用シートでは、前述したリクライニング用リンクとクッションフレーム前部との間にフロントリンクが設けられ、クッションフレーム後部と車体床部との間にリヤリンクが設けられる。このリヤリンクは、前述した後部軸を介してクッションフレーム後部と連結される。そして、これらのフロントリンク及びリヤリンクのうちの少なくとも一方がリフタ用モータによって駆動されることで、クッションフレーム前部及びクッションフレーム後部がシート上下方向に移動される。これにより、簡素な構成でリフタの機能を追加することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項2又は請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記駆動機構は、前記クッションフレーム前部と前記クッションフレーム後部とをチルト用モータの駆動力によって前記中折れ軸回りに相対回転させるチルト用駆動機構を含んで構成されている。
【0013】
請求項4に記載の車両用シートは、上記のチルト用駆動機構を備えているので、前述したリクライニングの際に、クッションフレーム前部とクッションフレーム後部とを設定通りに中折れ軸回りに相対回転させ易くなる。
【0014】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記クッションフレーム後部と前記シートバックフレームとが一体に繋がっている。
【0015】
請求項5に記載の車両用シートでは、クッションフレーム後部とシートバックフレームとが一体に繋がっているので、部品点数や部品の組付工数を少なくすることができる。
請求項6に記載の発明に係る車両用シートは、シートクッションの骨格の後部を構成すると共に、車体床部に対してシート幅方向を軸線方向とする後部軸回りに回転可能とされるクッションフレーム後部と、前記シートクッションの骨格の前部を構成すると共に、シート幅方向を軸線方向とし且つ前記後部軸よりもシート前方側に位置する中折れ軸回りに回転可能に前記クッションフレーム後部と連結されるクッションフレーム前部と、前記クッションフレーム後部の後端側から立設され、シートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、前記クッションフレーム前部から前記クッションフレーム後部がシート後方へ延びる非リクライニング状態と前記クッションフレーム後部が前記クッションフレーム前部に対して後下がりに傾斜するリクライニング状態との間で、前記クッションフレーム前部と前記クッションフレーム後部とをシート上下方向に相対移動させる駆動機構と、を備え、前記駆動機構は、
前記クッションフレーム前部と車体床部との間に設けられるリクライニング用リンクと、前記リクライニング用リンクを駆動することで前記クッションフレーム前部をシート上下方向に移動させるリクライニング用モータと、を有するリクライニング用駆動機構を含んで構成されると共に、前記リクライニング用リンクと前記クッションフレーム前部との間に設けられるフロントリンクと、前記クッションフレーム後部と車体床部との間に設けられ、前記後部軸を介して前記クッションフレーム後部と連結されるリヤリンクと、前記フロントリンク及びリヤリンクのうちの少なくとも一方を駆動することで前記クッションフレーム前部及び前記クッションフレーム後部をシート上下方向に移動させるリフタ用モータと、を有するリフタ用駆動機構を含んで構成されている。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、シートバックのリクライニング時における着座者の背ズレ及び脚部の上昇を抑制することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1〜
図11を用いて本発明の実施の形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図においては、図面を見易くするために、一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜示される矢印FR、UP、LHは、車両用シート10の前方、上方、左方をそれぞれ示している。この車両用シート10の前後方向、左右方向(幅方向)および上下方向は、この車両用シート10が搭載された車両(自動車)の前後方向、左右方向(幅方向)および上下方向と一致している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0019】
図1〜
図6に示されるように、車両用シート10は、シートフレーム12と、シートスライド機構52と、リクライニング用駆動機構60と、リフタ用駆動機構76と、チルト用駆動機構102とを備えている。また、この車両用シート10は、上記各機構52、60、76、102の作動を制御する制御装置としてのECU120(
図10参照)を備えている。リクライニング用駆動機構60、リフタ用駆動機構76及びチルト用駆動機構102は、本発明における「駆動機構」を構成している。
【0020】
シートフレーム12は、シートクッション14(
図7〜
図9参照)の骨格を構成するシートクッションフレーム16と、シートバック36(
図7〜
図9参照)の骨格を構成するシートバックフレーム38と、ヘッドレスト48(
図7〜
図9参照)の骨格を構成するヘッドレストフレーム58(
図11(A)及び
図11(B)以外では図示省略)とを含んで構成されている。シートクッションフレーム16、シートバックフレーム38及びヘッドレストフレーム58には、それぞれ表皮15、37、49(
図7〜
図9以外では図示省略)によって覆われた図示しないパッドが取り付けられる構成になっている。なお、
図7〜
図9、
図11(A)、
図11(B)に示される着座者Pは、例えばAM50(米国人成人男性の50パーセンタイル)のダミー人形である。また、
図7〜
図9において、SWは車両のステアリングホイールであり、IPは車両のインストルメントパネルである。以下、上記各構成要素について詳細に説明する。
【0021】
(シートクッションフレーム16について)
シートクッションフレーム16は、シートクッション14の骨格の前部を構成するクッションフレーム前部18と、シートクッション14の骨格の後部を構成するクッションフレーム後部20とが、左右の段付ボルト22を介して回転可能に連結された構成になっている。
【0022】
クッションフレーム前部18は、左右のサイドフレーム部24と、左右のサイドフレーム部24の前部の上端部間に架け渡されたフロントフレーム部26と、左右のサイドフレーム部24の後端部間に架け渡されたパイプフレーム部28とを備えている。左右のサイドフレーム部24及びフロントフレーム部26は、例えば板金によって構成されており、パイプフレーム部28は、例えば金属製のパイプによって構成されている。
【0023】
クッションフレーム後部20は、左右のサイドフレーム部30と、左右のサイドフレーム部30の前端部間に架け渡されたパイプフレーム部32と、パイプフレーム部32の後方で左右のサイドフレーム部30間に架け渡されたロアフレーム部34とを備えている。左右のサイドフレーム部30は、例えば板金によって構成されており、パイプフレーム部32は、例えば金属製のパイプによって構成されており、ロアフレーム部34は、例えば板金と金属製のパイプとが組み合わされて構成されている。
【0024】
クッションフレーム前部18が備える左右のサイドフレーム部24の後端部は、クッションフレーム後部20が備える左右のサイドフレーム部30の前端部に対してシート幅方向外側から重ね合わされている。そして、左右のサイドフレーム部24の後端部及び左右のサイドフレーム部30の前端部を貫通した左右の段付ボルト22が図示しないナットに螺合している。これにより、クッションフレーム前部18とクッションフレーム後部20とが左右の段付ボルト22回りに相対回転可能に連結されている。左右の段付ボルト22は、シート幅方向を軸線方向としており、同軸的に配置されている。本実施形態では、
図11(A)に示されるように、左右の段付ボルト22と着座者PのヒップポイントHPとにおけるシートバック前後方向の配置の差異(位置ズレ)L1が小さく設定されている。なお、上記のシートバック前後方向は、シート側面視で着座者Pのトルソラインと直交する方向である。上記左右の段付ボルト22は、本発明における「中折れ軸」に相当する。以下、段付ボルト22を、「中折れ軸22」と称する場合がある。
【0025】
(シートバックフレーム38について)
シートバックフレーム38は、左右のサイドフレーム部40と、左右のサイドフレーム部40の上端部間に架け渡されたアッパフレーム部42と、左右のサイドフレーム部40の下端部間に架け渡された背面パネル部44とを備えている。左右のサイドフレーム部40及び背面パネル部44は、例えば板金によって構成されており、アッパフレーム部42は、例えば金属製のパイプによって構成されている。このアッパフレーム部42には、ヘッドレスト48(
図7〜
図9参照)の骨格を構成するヘッドレストフレーム58(
図11(A)及び
図11(B)参照)が連結される構成になっている。
【0026】
上記構成のシートバックフレーム38は、クッションフレーム後部20の後端側から立設されている。具体的には、クッションフレーム後部20の左右のサイドフレーム部30の後端部には、例えば板金によって構成された左右のBブラケット46がボルト締結等の手段で固定されている。左右のBブラケット46は、左右のサイドフレーム部30の後端部からシート上方側へ延びており、シートバックフレーム38の左右のサイドフレーム部40の下端部に対してシート幅方向外側から重ね合わされている。左右のサイドフレーム部40と左右のBブラケット46とは、ボルト締結等の手段で固定されている。これにより、左右のサイドフレーム部40と左右のサイドフレーム部30とが左右のBブラケット46を介して固定されている。
【0027】
(シートスライド機構52について)
シートスライド機構52は、左右のロアレール54と、左右のアッパレール56とを含んで構成されている。ロアレール54及びアッパレール56は、例えば板金によって構成されており、シート前後方向を長手とする長尺状に形成されている。ロアレール54の前端部及び後端部は、前後のブラケット(符号省略)を介して車体床部11(
図7〜
図9以外では図示省略)に固定されている。なお、
図7〜
図9では、シートスライド機構52を概略的に記載している。アッパレール56は、ロアレール54に対してシート前後方向にスライド可能に支持されている。このシートスライド機構52は、
図1〜
図3に示されるスライド用モータ58の駆動力によってアッパレール56をロアレール54に対してシート前後方向にスライドさせる構成になっている。
【0028】
(リクライニング用駆動機構60について)
リクライニング用駆動機構60は、リクライニング用リンク62と、リクライニング用モータ72とを備えている。リクライニング用リンク62は、左右のリンク部材64と、左右のリンク部材64をシート幅方向に連結した連結パイプ66とによって構成されている。左右のリンク部材64の一端側は、左右のアッパレール56の前部に固定された左右のリンクブラケット68に対して左右の段付ボルト(連結軸)70を介して回転可能に連結されている。左右の段付ボルト70は、シート幅方向を軸線方向としており、同軸的に配置されている。左右のリンク部材64のうちの一方(ここでは右側のリンク部材64)には、セクタギヤ64Aが一体に形成されている。このセクタギヤ64Aは、リクライニング用モータ72に対応している。
【0029】
リクライニング用モータ72は、減速ギヤ付きのモータであり、ボルト及びナット(符号省略)を用いてギヤブラケット74に固定されている。このギヤブラケット74は、左右のアッパレール56のうちの一方(ここでは右側のアッパレール56)にボルト締結等の手段で固定されている。リクライニング用モータ72の出力軸には、ピニオンギヤ(符号省略)が固定されており、当該ピニオンギヤが前述したセクタギヤ64Aに噛合されている。これにより、リクライニング用モータ72が回転すると、リクライニング用リンク62が左右の段付ボルト70回りに回転される構成になっている。
【0030】
(リフタ用駆動機構76について)
リフタ用駆動機構76は、フロントリンク78と、リヤリンク80と、リフタ用モータ82とを備えている。フロントリンク78は、リクライニング用リンク62とクッションフレーム前部18との間に設けられており、左右のリンク部材84と、左右のリンク部材84をシート幅方向に連結した連結パイプ86とによって構成されている。左右のリンク部材84の一端部は、リクライニング用リンク62が有する左右のリンク部材64の他端部に対して左右の段付ボルト(連結軸)88を介して回転可能に連結されている。左右の段付ボルト88は、シート幅方向を軸線方向としており、同軸的に配置されている。
【0031】
左右のリンク部材84の他端部は、クッションフレーム前部18が有する左右のサイドフレーム部24に対して左右のリベット(連結軸)90を介して回転可能に連結されている。左右のリベット90は、シート幅方向を軸線方向としており、同軸的に配置されている。クッションフレーム前部18は、フロントリンク78及びリクライニング用リンク62を介して左右のアッパレール56と連結されており、左右のアッパレール56に対して所定の範囲内でシート上下方向に移動可能に支持されている。フロントリンク78及びリクライニング用リンク62は、ダブルリンクを構成している。
【0032】
リヤリンク80は、クッションフレーム後部20と車体床部11との間(ここではクッションフレーム後部20と左右のアッパレール56との間)に設けられており、左右のリンク部材92と、左右のリンク部材92をシート幅方向に連結した連結パイプ94とによって構成されている。左右のリンク部材92の一端部は、左右のアッパレール56の後部に固定された左右のリンクブラケット96に対して左右の段付ボルト(連結軸)98を介して回転可能に連結されている。左右の段付ボルト98は、シート幅方向を軸線方向としており、同軸的に配置されている。左右のリンク部材92のうちの一方(ここでは左側のリンク部材92)には、セクタギヤ92Aが一体に形成されている。このセクタギヤ92Aは、リフタ用モータ82に対応している。
【0033】
左右のリンク部材92の他端部は、連結パイプ94を介して左右のサイドフレーム部30と連結されている。具体的には、左右のサイドフレーム部30の後部には、円形の貫通孔100が形成されており、これらの貫通孔100には、連結パイプ94の軸線方向両端部が回転自在に嵌合している。この連結パイプ94は、例えば軸線方向両端部が加締められることで、左右のサイドフレーム部30に対する軸線方向の変位を規制されている。クッションフレーム後部20は、リヤリンク80を介して左右のアッパレール56と連結されており、連結パイプ94回りに回転可能に車体床部11に支持されている。このクッションフレーム後部20は、左右のアッパレール56に対して所定の範囲内でシート上下方向に移動可能に支持されている。連結パイプ94は、本発明における「後部軸」に相当しており、シート幅方向を軸線方向として配置されている。以下、連結パイプ94を、「後部軸94」と称する場合がある。
【0034】
リフタ用モータ82は、減速ギヤ付きのモータであり、ボルト及びナット(符号省略)を用いて左側のサイドフレーム部30に固定されている。リフタ用モータ82の出力軸には、ピニオンギヤ(符号省略)が固定されており、当該ピニオンギヤが前述したセクタギヤ92Aに噛合されている。これにより、リフタ用モータ82が回転すると、リヤリンク80が左右の段付ボルト98回りに回転され、クッションフレーム後部20がシート上下方向に移動される構成になっている。リヤリンク80は、シングルリンクを構成している。
【0035】
(チルト用駆動機構102について)
チルト用駆動機構102は、チルト用モータ104と、当該チルト用モータ104によって駆動される送りねじ機構106と、クッションフレーム前部18のパイプフレーム部28に固定された連結ブラケット108とを備えている。チルト用モータ104及び送りねじ機構106は、クッションフレーム後部20が備えるロアフレーム部34の下方でシート幅方向中央部付近に配置されている。送りねじ機構106は、ボルト及びナット(符号省略)を用いてロアフレーム部34に固定されたハウジング110(
図2以外では符号省略)と、当該ハウジング110に対してシート前後方向に移動可能に支持されたロッド112とを備えており、チルト用モータ104は、ビス止め等の手段で上記のハウジング110に固定されている。このチルト用モータ104は、図示しない出力軸がシート幅方向に沿う姿勢で配置されている。
【0036】
上記のロッド112は、シート前後方向を長手とする長尺棒状に形成されており、後部側がハウジング110をシート前後方向に貫通している。このロッド112の後部側には、外周に雄ねじが形成された雄ねじ部(図示省略)が設けられている。この雄ねじ部に対応してハウジング110内には、内周に雌ねじが形成された回転体(図示省略)が設けられており、当該回転体の雌ねじに上記の雄ねじ部が螺合している。この回転体がチルト用モータ104によって回転されることにより、ロッド112がハウジング110に対してシート前後方向に相対移動される構成になっている。
【0037】
ロッド112の前端部は、クッションフレーム前部18のパイプフレーム部28の下方に配置されている。このパイプフレーム部28の下方には、連結ブラケット108が配置されている。連結ブラケット108は、例えば板金がプレス成形されて形成されたものであり、シート平面視でシート後方側が開口した断面略U字状をなしている。この連結ブラケット108の上端部は、例えば溶接等の手段でパイプフレーム部28に固定されている。この連結ブラケット108には、シート幅方向を軸線方向とする段付ボルト(連結軸)114を介してロッド112の前端部が回転可能に連結されている。これにより、ロッド112がチルト用モータ104によってシート前後方向に移動されると、クッションフレーム前部18とクッションフレーム後部20とが左右の中折れ軸22回りに相対回転される構成になっている。
【0038】
(ECU120について)
図10に示されるECU(Electronic Control Unit)120は、CPU、ROM、RAM、及びI/O(入出力インターフェース)がバスに接続されたマイクロコンピュータで構成されている。このECU120のI/Oには、前述したスライド用モータ58、リクライニング用モータ72、リフタ用モータ82、及びチルト用モータ104が電気的に接続されている。これらのモータ58、72、82、104には、例えばこれらのモータ58、72、82、104の出力軸の回転位置を検出するエンコーダが設けられている。
【0039】
また、ECU120のI/Oには、シートクッション14の側面等に設けられた操作部122が電気的に接続されている。この操作部122には、スライド用スイッチ124、リクライニング用スイッチ126、リフタ用スイッチ128、及びチルト用スイッチ130が設けられており、これらのスイッチ124、126、128、130の操作に応じてECU120が上記各モータ58、72、82、104の作動を制御する構成になっている。
【0040】
具体的には、ECU120は、スライド用スイッチ124が操作されると、スライド用モータ58を作動させ、左右のアッパレール56を左右のロアレール54に対してシート前後方向に移動させる。これにより、シートフレーム12が、車体床部11に対する前後方向移動範囲の前端位置であるフロントモスト位置(図示省略)と、車体床部11に対するスライド範囲の後端位置であるリヤモスト位置(図示省略)との間で前後に移動(スライド)される構成になっている。
【0041】
また、ECU120は、リフタ用スイッチ128が操作されると、リフタ用モータ82を作動させ、リヤリンク80を回転させる。このリヤリンク80は、4節リンク機構の駆動リンクとして回転し、フロントリンク78が4節リンク機構の従動リンクとして回転する。これにより、シートフレーム12が、車体床部11に対する上下方向移動範囲の下端位置であるロアモスト位置(
図4及び
図7参照)と、車体床部11に対する上下方向移動範囲の上端位置であるアッパモスト位置との間で上下に移動される構成になっている(
図5の矢印LIF参照)。なお、
図7〜
図9では、シートクッションフレーム16や各リンク62、78、80の動きを理解し易くするために、クッションフレーム前部18、クッションフレーム後部20、各リンク62、78、80、中折れ軸22、後部軸94などを概略的に記載している。
【0042】
また、ECU120は、チルト用スイッチ130が操作されると、リクライニング用モータ72、リフタ用モータ82及びチルト用モータ104を作動させ、クッションフレーム前部18をクッションフレーム後部20に対して中折れ軸22回りに相対回転させる。これにより、クッションフレーム前部18が、クッションフレーム後部20からシート前方へ延びる非チルト位置(図示省略)と、クッションフレーム後部20に対して前下がりに傾斜するチルト位置(図示省略)との間で上下に移動される構成になっている。
【0043】
また、ECU120は、リクライニング用スイッチ126が操作されると、リクライニング用モータ72、リフタ用モータ82及びチルト用モータ104を作動させ、クッションフレーム前部18とクッションフレーム後部20とを中折れ軸22回りに相対回転させる(中折れさせる)。これにより、クッションフレーム後部20が、クッションフレーム前部18からシート後方へ延びる非リクライニング位置(
図4、
図5、
図7、
図8、
図11(A)参照)と、クッションフレーム前部18に対して後下がりに傾斜するリクライニング位置(
図6、
図9、
図11(B)参照)との間で上下に移動される構成になっている。
【0044】
この場合、クッションフレーム後部20に一体に固定されたシートバックフレーム38が、クッションフレーム後部20と一体でリクライニング(後傾)される。このシートバックフレーム38は、クッションフレーム後部20が非リクライニング位置に位置する状態では、クッションフレーム後部20の後端側からシート上方側かつ若干シート後方側へ斜めに延びるようにクッションフレーム後部20に固定されている。このシートバックフレーム38は、クッションフレーム後部20が非リクライニング位置とリクライニング位置との間で移動されることにより、シート前後方向に傾動する(
図6の矢印REC参照)。上記の非リクライニング位置にクッションフレーム後部20が位置する状態が、本発明における「非リクライニング状態」に相当し、上記のリクライニング位置にクッションフレーム後部20が位置する状態が、本発明における「リクライニング状態」に相当する。
【0045】
また、本実施形態では、ECU120は、シートフレーム12が非リクライニング状態とされ且つアッパモスト位置よりもロアモスト位置側に位置する状態でリクライニング用スイッチ126が操作された際には、先ずリフタ用モータ82を作動させ、シートフレーム12をアッパモスト位置へと移動させる。次いで、ECU120は、リクライニング用モータ72、リフタ用モータ82及びチルト用モータ104を作動させ、クッションフレーム後部20を非リクライニング位置からリクライニング位置へと移動させる構成になっている。これにより、クッションフレーム後部20がリクライニング位置へと移動される際に、クッションフレーム後部20が左右のシートスライド機構52等と干渉することを防止するようにしている。
【0046】
なお、シートフレーム12がロアモスト位置に位置する状態においても、クッションフレーム後部20がシートスライド機構52等と干渉せずにリクライニング位置へと移動可能な構成にすることも可能である。その場合、リクライニング用スイッチ126の操作時における上記各モータ72、82、104を作動順序は、上記の順序に限られない。例えばECU120が上記各モータ72、82、104を同時に作動させる構成にしてもよい。また、例えばシートスライド機構52(車体床部11)に対するシートクッションフレーム16の配置が高く設定される場合、リフタ用モータ82の作動が省略される構成にしてもよい。
【0047】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0048】
上記構成の車両用シート10では、リクライニング用スイッチ126が操作されると、ECU120がリクライニング用モータ72、リフタ用モータ82、及びチルト用モータ104を作動させる。これにより、
図4、
図5、
図7、
図8、
図11(A)に示される非リクライニング状態と、
図6、
図9、
図11(B)に示されるリクライニング状態との間で、クッションフレーム前部18とクッションフレーム後部20とがシート上下方向に相対移動(相対回転)される。この相対移動により、上記の非リクライニング状態からリクライニング状態となる際には、クッションフレーム前部18とクッションフレーム後部20とが中折れ軸22回りに相対回転すると共に、クッションフレーム後部20が後部軸94回りに回転し、クッションフレーム後部20の後端側から立設されたシートバックフレーム38がリクライニングする。この際には、クッションフレーム後部20がシートバックフレーム38と一緒に中折れ軸22回りに回転されるので、着座者Pの背中Bがシートバック36に対して上下に位置ズレすること(着座者Pの背ズレ)を抑制できる。
【0049】
つまり、本実施形態では、シートクッションフレーム16の前後方向中央部付近に配置された中折れ軸22を回転中心(ヒンジセンター)として、シートバックフレーム38がクッションフレーム後部20と一緒にリクライニングされる。これにより、着座者PのヒップポイントHPと、シートバック36(シートバックフレーム38)の回転中心とのズレが少なくなる(
図11(A)及び
図11(B)参照)。その結果、着座者Pの背中Bとシートバック36との相対的な位置ズレを防止又は抑制できる(
図11(A)及び
図11(B)の矢印P1、S1参照)ので、着座者Pに対して背ズレによる不快感を与えることなく、快適な姿勢変化を提供することができる。
【0050】
上記の効果について、
図12(A)及び
図12(B)に示される車両用シート200(比較例)を用いて補足説明する。この車両用シート200では、シートバック36の下端部が周知のリクライニング機構202を介してシートクッション14の後端部に連結されている。この車両用シート200では、シートバック36の回転中心(ヒンジセンター)となるリクライニング機構202と、着座者PのヒップポイントHPとにおけるシートバック前後方向の配置の差異L2(
図12(A)参照)が大きく設定されている。このため、シートバック36のリクライニング時に、着座者Pの背中Bとシートバック36との間で上下位置ズレが生じる。その結果、例えば着座者Pの衣服がシートバック36の表皮37との摩擦により引っ張られることとなり、着座者Pに不快感を与えることとなるが、本実施形態ではこれを回避することができる。
【0051】
しかも、本実施形態では、上記のリクライニングの際には、クッションフレーム後部20がクッションフレーム前部18に対して中折れ軸22回りに回転されて後下がりに傾斜するので、クッションフレーム前部18がクッションフレーム後部20と一緒に後部軸94回りに回転(上昇)される場合と比較して、着座者Pの脚部Lの上昇を抑制することができる。その結果、着座者Pの足部Fが車体床部11から浮き上がって不安定になることを防止又は抑制できると共に、着座者Pの脚部LがステアリングホイールSWやインストルメントパネルIP等と干渉することを防止又は抑制できる。これにより、本実施形態では、リクライニングの調整幅を大きく設定することが容易になる。
【0052】
また、本実施形態では、リクライニング用駆動機構60は、クッションフレーム前部18と車体床部11との間に設けられるリクライニング用リンク62と、リクライニング用リンク62を駆動することでクッションフレーム前部18をシート上下方向に移動させるリクライニング用モータ72と、を有している。そして、上記のリクライニング用リンク62がリクライニング用モータ72によって駆動されることで、クッションフレーム前部18がシート上下方向に移動される。これにより、クッションフレーム前部18とクッションフレーム後部20とを簡素な構成でシート上下方向に相対移動させることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のリクライニング用リンク62とクッションフレーム前部18との間にフロントリンク78が設けられ、クッションフレーム後部20と車体床部との間にリヤリンク80が設けられている。このリヤリンク80は、後部軸94を介してクッションフレーム後部20と連結されている。このリヤリンク80がリフタ用モータ82によって駆動されることで、クッションフレーム前部18及びクッションフレーム後部20がシート上下方向に移動される。これにより、簡素な構成でリフタの機能を追加することができる。
【0054】
さらに、本実施形態は、クッションフレーム前部18とクッションフレーム後部20とをチルト用モータ104の駆動力によって中折れ軸22回りに相対回転させるチルト用駆動機構102を備えている。このため、前述したリクライニングの際に、クッションフレーム前部18とクッションフレーム後部20とを設定通りに中折れ軸22回りに相対回転させ易くなる。また、クッションフレーム前部18をクッションフレーム後部20に対して中折れ軸22回りに相対回転(上下動)させることができるので、簡素な構成でチルトの機能を追加することができる。
【0055】
また、本実施形態では、クッションフレーム後部20が車体床部11に対して後部軸94回りに回転可能に支持された構成であるため、車体床部11に対するクッションフレーム後部20の支持剛性を良好に確保することができる。
【0056】
<実施形態の補足説明>
上記実施形態は、リフタ用駆動機構76を備えた構成にしたが、これに限らず、リフタ用駆動機構76が省略された構成にしてもよい。その場合、例えば左右のアッパレール56の後部上面に取り付けられた左右のブラケットと、クッションフレーム後部20の左右のサイドフレーム30とが、シート幅方向を軸線方向とする後部軸を介して回転可能に連結される構成になる。またその場合、例えばリクライニング用リンク62が有する左右のリンク部材64の他端部が、クッションフレーム前部18の左右のサイドフレーム24に対してシート幅方向に沿った軸線回りに回転可能に連結される構成になる。但しその場合、左右のリンク部材64の長さ寸法等を変更する必要がある。
【0057】
また、上記実施形態では、リクライニング用駆動機構60がクッションフレーム前部18をシート上下方向に移動させる構成にしたが、これに限らず、リクライニング用駆動機構としてのアクチュエータがクッションフレーム後部をシート上下方向に移動させる構成にしてもよい。その場合、クッションフレーム前部が車体床部に対してシート上下方向に移動不能とされる構成にしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、チルト用駆動機構102が送りネジ機構106を備えた構成にしたが、これに限らず、チルト用駆動機構は、減速ギヤ付きのモータであってもよい。その場合、減速ギヤ付きモータの駆動力によって、クッションフレーム前部とクッションフレーム後部とが中折れ軸回りに相対回転(中折れ)される構成になる。
【0059】
また、上記実施形態は、チルト用駆動機構102を備えた構成にしたが、これに限るものではない。すなわち、例えば、前述したようにクッションフレーム前部がシート上下方向に移動不能とされる一方、クッションフレーム後部がアクチュエータによってシート上下方向に移動される構成の場合、当該移動のみによってクッションフレーム前部とクッションフレーム後部とを中折れ軸回りに相対回転させることができるので、チルト用駆動機構が不要となる。
【0060】
また、上記実施形態では、クッションフレーム後部20とシートバックフレーム38とが左右のBブラケット46を介して固定された構成にしたが、これに限るものではない。例えば、クッションフレーム後部20とシートバックフレーム38とが周知のリクライニング機構を介して連結される構成にしてもよい。それにより、シートフレーム12の変形モードを増やすことができる。また例えば、
図13に示される変形例のように、クッションフレーム後部20の左右のサイドフレーム部30と、シートバックフレーム38の左右のサイドフレーム部40とが一体に繋がった構成にしてもよい。この変形例では、サイドフレーム30とサイドフレーム40とが一枚の鋼板によって一体に成形されている。これにより、部品点数や部品の組付工数を少なくすることができる。
【0061】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。