(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記冷却ジャケットは、冷媒を通す管体が巻回されて構成され、前記ノズルの外側に配置されたときに、前記ノズルの照射方向を高さ方向として、前記ノズルの途中の高さ位置から前記ノズルの先端の高さ位置に進むに従って前記管体の巻き径が小さくなる、
請求項1又は請求項2に記載の冷却装置。
前記冷却ジャケットが前記ノズルの外側に配置された状態で、前記ノズルの照射方向から見たとき、前記ノズルに噴射物が供給する入力ポートの全てが、前記冷却ジャケットに隠れる、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷却装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、困難な加工を実現するため、加工対象物を高温に予熱した状態で、ノズルからレーザビームとガス又は粉体等とを出射して、所定の加工を行う加工方法が開発されている。しかしながら、このような加工方法では、高温に予熱された加工対象物の広い範囲から熱輻射がノズルに照射され、ノズルが高温に熱せられて悪影響を及ぼす恐れがあった。
【0006】
一方、従来のノズルに設けられる冷却構造は、レーザ光の照射により加熱された加工面からの熱輻射、あるいは、加工面からのレーザ光の反射光に起因するノズルの加熱を低減させたる目的で設けられている。加工面からの熱輻射又はレーザ光の反射光により熱せられる箇所は、ノズルの先端部又はノズルのインナー部である。このため、従来のノズルの冷却構造は、ノズルの加熱される箇所から熱を排出するように、ノズル自体に設けられている。また、従来のノズルに設けられる冷却構造は、加工対象物に噴射するガスを冷却する目的で設けられることもある。例えば特許文献2の冷却構造は、ガスを冷却するため水冷の構造がノズル自体に設けられている。
【0007】
このような構造であるため、加工対象物を高温に予熱して加工を行う加工方法に、従来の冷却構造を持ったノズルを使用しても、加工対象物の広い範囲から生じる熱輻射の影響を十分に排除することはできなかった。従来の冷却構造もったノズルでは、予熱された加工対象物の広い範囲から強い熱輻射が照射された場合に、先ず、ノズルの外周部が熱せられてしまう。そして、この熱がノズルの肉厚部を伝って、ノズルの内部に移動してしまう。この場合、ノズル内に設けられるレンズ又はカバーガラス等が高温に晒されてしまったり、噴射ガスの冷却能力が低下したりするといった課題が生じる。
【0008】
本発明は、予熱された加工対象物の広い範囲から生じる熱輻射が、ノズルに悪影響を及ぼすことを抑制できる冷却装置及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
レーザ加工装置のノズルとは別体に設けられかつ内部に冷媒を通す通路を有する冷却ジャケット
と、
前記ノズルと前記冷却ジャケットとの間に配置され、前記冷却ジャケットの前記ノズルへの位置決めと、前記ノズルと前記冷却ジャケットとの間の断熱とを行う介在部と、
を備え、
前記冷却ジャケットが前記ノズルの外側に配置され
、
前記介在部は、コイルバネを含み、前記コイルバネの外周部が前記ノズルに接触するように構成されている冷却装置である。
【0010】
本発明のレーザ加工装置は、
レーザビームを照射するノズルと、
前記ノズルを支持する支持部と、
上記の冷却装置と、
を備え、
前記冷却ジャケットが前記支持部に支持されている構成を採用した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、予熱された加工対象物の広い範囲から生じる熱輻射が、ノズルに悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置を示す構成図である。
図1は、冷却装置20の一部を破断して示している。
図2は、本発明の実施形態に係る冷却装置を示す分解斜視図である。
図3は、レーザ加工装置のノズルに冷却装置を装着した状態を示す一部破断の側面図である。
図4は、レーザ加工装置のノズルに冷却装置を装着した状態を下方から見た図である。
【0015】
本発明の実施形態に係るレーザ加工装置1は、肉盛溶接を行う装置である。肉盛溶接とは、加工対象物6とは異なる種類の金属材料を加工対象物6の表面に溶接する加工である。レーザ加工装置1は、ノズル11から金属材料の粉体とこの粉体を溶融する高エネルギー密度のレーザビームとを出射し、溶融した金属材料を加工対象物6の表面に結合させる。
【0016】
本実施形態に係るレーザ加工装置1は、ノズル11、光学ユニット15、搬送装置としてのロボットアーム17、及び、ノズル11とは別体の冷却ジャケット210を有する冷却装置20を備える。
【0017】
光学ユニット15は、外部のレーザ光源から光ファイバー等を介して供給されるレーザ光を受け、このレーザ光をレンズに通して加工用のレーザビームを生成する。
【0018】
ノズル11は、光学ユニット15に接続され、光学ユニット15から送られるレーザビームを加工対象物6へ照射する。以下、レーザビームの照射方向を、下方として説明する。ノズル11の内部にはレーザビームを上下に通す通路が設けられ、ノズル11の下端にレーザビームの出射口を含んだ開口部111が設けられている。レーザビームを通す通路にはレンズ又はカバーガラス等が設けられていてもよい。
【0019】
さらに、ノズル11には、外部から噴射物としての金属粉体及びアシストガスを受ける複数の入力ポート112と、噴射物を加工対象物6へ向けて噴射する噴射口と、入力ポート112から噴射口まで噴射物を通す流路とを備える。入力ポート112は、ノズル11の側部から外方へ突出して設けられ、金属粉体を供給する管F、及び、アシストガスを供給する管Fと接続される。噴射口は、レーザビームの出射口に隣接して設けられ、ノズル11の下端部の開口部111に含まれる。
【0020】
ノズル11のうち、レーザビームを通す筒状体の内壁部から外周部までの部位、金属粉体及びアシストガスの流路を囲う壁部、及び、入力ポート112など、主な部分は金属から構成される。ノズル11の下方先端部には、下方に進むほど径が小さくなるテーパー部114が設けられ、テーパー部114の先端に出射口及び噴射口を含む開口部111が設けられている。
【0021】
ロボットアーム17は、可動部172を介して接続された複数のアーム要素171と、可動部172の駆動装置と、複数のアーム要素171の先端部に設けられた支持部173とを有する。支持部173には、ノズル11を接続した光学ユニット15と、冷却装置20とが固定されている。すなわち、支持部173は、光学ユニット15を介してノズル11を支持し、また、冷却装置20を支持している。ロボットアーム17は、可動部172を動かしてアーム要素171を変位させることで、ノズル11の位置及び向きを加工位置に合わせて変えることができる。
【0022】
冷却装置20は、
図2にも示すように、管体としての冷却管201とフレーム203とを含んだ冷却ジャケット210、及び、介在部205を有する。
【0023】
冷却管201は、回転しながら回転面に垂直な方向へ移動しかつこの垂直な方向へ移動するごとに徐々に回転径が小さくなる三次元曲線に沿って、金属製(例えば銅製)の管体が巻回されて構成される。巻回された冷却管201が、下端から上端にかけて巻き径が大きくなるテーパーの角度は、ノズル11のテーパー部114の角度と一致するが、互いに異なる角度であってもよい。巻回された冷却管201は、冷却液などの冷媒を流し、ノズル11の側方に配置されて、加工対象物6から放射される熱輻射を遮断して、輻射熱がノズル11に伝わるのを抑制する。具体的には、冷却管201が、ノズル11と予熱された加工対象物6との間の空間を遮ることで加工対象物6からノズル11へ直接に熱輻射が照射されることを抑止する。さらに、冷却管201が熱輻射を受けることで冷却管201に生じる熱が冷媒に吸収されて外部に排出される。このため、予熱された加工対象物6の熱輻射により、ノズル11が加熱されることが抑制される。
【0024】
図3及び
図4にも示すように、冷却管201のうち最も巻き径が小さい先端部分の開口径は、ノズル11から出射される金属粉体及びアシストガスを遮らない範囲で、ノズル11の開口部111に近い径を有する。巻回されることで隣接する冷却管201の二つの区間は、互いに大きく離間しないように巻回される。これにより、
図4に示すように、冷却管201を巻回面に垂直な方向から見たとき、中央の開口を除いて隙間が見えない。また、巻回面に垂直な方向から見たとき、ノズル11の複数の入力ポート112の全てが、冷却管201に隠れる。また、
図3に示すように、立体的に見て、冷却管201と複数の入力ポート112との間には隙間が生じるように、冷却管201は幅広に形成されている。
【0025】
フレーム203は、金属製であり、剛性を有し、冷却管201の巻回方向に沿って延設された上フレーム203aと、上フレーム203aと交差する方向に延設された複数の縦フレーム203bと、を備える。縦フレーム203bは、
図3に示すように、巻回された冷却管201の内周面に沿うように傾斜され、ロウ付け等により上フレーム203aと接合されている。また、縦フレーム203bは、ロウ付け等により冷却管201の対向する各部に接合されている。これにより、巻回された冷却管201の形態が保持される。
【0026】
また、フレーム203は、上フレーム203aからその巻回面に垂直な方向に延設される支持フレーム203cと、支持フレーム203cに設けられた固定部203dと、を備える。
図1に示すように、支持フレーム203cが固定部203dを介してロボットアーム17の支持部173に連結されることで、冷却装置20が支持される。
【0027】
介在部205は、ノズル11と冷却ジャケット210との間に介在されて、両者を互いに位置決めし、これらの間に断熱作用を及ぼす。介在部205は、例えば金属製(真鍮製等)であり、ノズル11の先端側の一部と嵌合する環状の形態を有し、ノズル11の先端側からノズル11に嵌合することができる。介在部205の外周部は、フレーム203の縦フレーム203bにロウ付け等により接合されている。冷却管201、フレーム203及び介在部205が、共に金属製であることで、これらを低コストにかつ強固に接合することができる。
【0028】
介在部205の内周部には、周方向に沿って配置されるコイルバネ205aと、コイルバネ205aを保持する環状溝205bとが設けられている。コイルバネ205aの外周部がノズル11に接触することで、ノズル11と介在部205との相対的な位置(ノズル11から出射されるレーザビームの光軸に垂直な方向における位置)が決まる。この相対的な位置において、介在部205の内側面とノズル11の外側面との間には隙間g1が生じる。また、ノズル11の周囲に冷却ジャケット210を配置し、フレーム203を支持部173に連結する際、冷却ジャケット210の自重により、介在部205がノズル11から鉛直方向に僅かに下降して固定される。これにより、鉛直方向を向いたノズル11の外面と介在部205の内面との間にも隙間g2が生じる。隙間g1、g2には空気が介在するため、これによりノズル11と介在部205との間に高い断熱作用が得られる。また、介在部205とノズル11との接触が、コイルバネ205aを介した点接触に制限されるので、接触部を介した熱の伝動量も少なく制限できる。
【0029】
なお、実施形態の冷却装置20においては、冷却管201の巻回された部分が、下端から上端にかけて径が大きくなるようにテーパーを有する形態を示した。しかし、冷却管201の巻回された部分の上部において、このテーパーが無く、ノズル11の途中の位置から先端部の高さにかけてテーパーを有する構成であってもよい。
【0030】
<冷却装置の装着と加工処理>
冷却装置20は、次のように装着される。先ず、作業員は、ノズル11の先端側から冷却ジャケット210を被せ、介在部205をノズル11の先端部に嵌合させる。次に、作業員は、フレーム203の固定部203dを支持部173に連結する。これにより、冷却装置20の装着が完了する。
【0031】
レーザ加工装置1の加工処理の際には、冷却管201に冷媒が流され、加工対象物6が高温に予熱される。加工対象物6からは広い範囲から強い熱輻射が発生するが、加工対象物6からノズル11へ向かう熱輻射の大部分は冷却ジャケット210に照射され、冷却ジャケット210に輻射熱が伝わる。輻射熱は、冷媒に吸収されて外部へ排出される。加えて、介在部205の断熱機能により、冷却ジャケット210からノズル11へ輻射熱が伝わることが抑制される。したがって、ノズル11が高温になってレンズ又はカバーガラスに悪影響が生じることが防止され、ノズル11側で制御される金属粉体又はアシストガスの温度制御に輻射熱が悪影響することが防止される。
【0032】
加工対象物6の予熱温度、加工対象物6とノズル11との距離が異なることで、冷却ジャケット210が受ける輻射熱量が異なるが、その場合でも、冷却ジャケット210の温度及び冷媒の温度が影響を受けるだけで、ノズル11の温度への影響は抑制される。したがって、ノズル11側で制御される金属粉体又はアシストガスの温度制御に輻射熱が悪影響することが防止される。
【0033】
加工処理が開始されると、ノズル11の入力ポート112へ金属粉体とアシストガスが供給され、これらがノズル11の開口部111から加工対象物6へ吹き付けられる。さらに、ノズル11の開口部111から加工対象物6へ高エネルギー密度のレーザビームが照射され、金属粉体が溶融されて加工対象物6の表面に結合する。加工対象物6が高温に予熱されていることで、結合しにくい組成同士であっても、加工対象物6と溶融した金属粉体とが強固に結合される。
【0034】
以上のように、本実施形態に係るレーザ加工装置1及びその冷却装置20によれば、ノズル11とは別体に設けられた冷却ジャケット210がノズル11の外側に配置されるので、予熱された加工対象物6の広い範囲から生じる熱輻射が、ノズル11の外周部に照射されてノズル11が高温になってしまうことを抑制できる。したがって、ノズル11が高温になって内部のレンズ又はカバーガラスに悪影響が生じたり、ノズル11から噴射するガス等の温度制御に悪影響が生じたりすることを防止できる。
【0035】
また、本実施形態に係る冷却装置20によれば、冷却ジャケット210とノズル11との間に、これらの位置決めを行い、かつ、これらの間に断熱作用を及ぼす介在部205が設けられている。これにより、ノズル11を移動させて加工を行う場合でも、ノズル11と冷却ジャケット210との間の断熱を保ちつつ、冷却ジャケット210とノズル11との正常な配置関係を保つことができる。さらに、先端形状の異なる複数種類のノズル11がある場合、各種類のノズル11の形状及び寸法に合わせた複数種類の介在部205を設けることで、1種類の冷却ジャケット210を流用して、複数種類のノズル11に対応する冷却装置20を製作できる。これにより、冷却装置20のコストの低減を図れる。
【0036】
また、本実施形態に係る冷却装置20によれば、介在部205は、コイルバネ205aの外周部がノズル11に接触することで、ノズル11を位置決めする。この構成により、ノズル11への冷却ジャケット210の脱着が容易となり、かつ、介在部205の断熱作用を低減させない。
【0037】
また、本実施形態に係るレーザ加工装置1及び冷却装置20によれば、冷却ジャケット210が冷却管201を巻回して構成されており、これにより低コストに高効率な輻射熱の遮断作用を得ることができる。また、ノズル11の先端側にはテーパー部114が設けられ、さらに、冷却ジャケット210のノズル11の先端部の近傍にもテーパーが設けられている。これにより、例えば、凹部の底面などに、加工対象箇所が設定されているような場合に、テーパーの部分を凹部内に挿入し、ノズル11を加工対象箇所に近づけて加工を行うことができる。また、冷却ジャケット210とノズル11のテーパー部114との間には隙間が設けられ、これにより冷却ジャケット210からノズル11へ輻射熱が移動してしまうことを抑制できる。
【0038】
また、本実施形態に係るレーザ加工装置1によれば、ノズル11に入力ポート112が設けられる一方、下方から見て、冷却ジャケット210が入力ポート112を隠す大きさを有する。さらに、冷却ジャケット210は、入力ポート112との間に隙間が生じる大きさを有する。したがって、入力ポート112が加工対象物6からの熱輻射に晒されてしまうことが回避され、輻射熱により入力ポート112に悪影響が生じることを抑制できる。
【0039】
また、本実施形態に係るレーザ加工装置1によれば、冷却ジャケット210はノズル11とは別の支持部173に支持されている。したがって、支持構造を伝って輻射熱がノズル11へ伝わってしまうことも抑制できる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、ノズルから、レーザビーム、金属粉体及びアシストガスが出射されるレーザ加工装置に、本発明を適用した例を示した。しかし、本発明は、ノズルからレーザビームのみが出射されるレーザ加工装置に適用されてもよい。また、上記実施形態では、冷却ジャケット210として、巻回された冷却管201がフレーム203に固定された構成を示したが、ノズルの外側を囲う板材の内部に冷媒を流す流路が設けられた構成であってもよい。また、上記実施形態では、介在部にコイルバネを設け、コイルバネの外周部がノズルと接触する構成を示したが、コイルバネに替えて例えば断熱性の高いセラミック等の部材を適用してもよい。また、冷却ジャケット210の材質及び形状、ノズルを移動する搬送装置の構成など、上記の実施形態において具体的に示した細部等は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。