(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1や特許文献2では、ハウジングとして、雄ネジ部や工具係合部が設けられる本体部と、本体部よりも先端側に設けられて本体部の厚みよりも厚みが薄い部位(以下、薄肉部とも言う)と、を備え、薄肉部とシース管とが周方向に亘ってレーザ溶接されている。
しかしながら、ヒータのシース管は熱伝導性を考慮して、厚みが非常に薄くされているため、特許文献1や特許文献2のように、ハウジングに単に薄肉部を設けるだけでは、シース管とハウジングとの良好な接合ができない虞がある。具体的には、薄肉部とシース管とに形成される溶融部が十分にシース管に入り込まず、シース管とハウジングとの接合強度が十分でなく、その結果、ハウジングとシース管との水密性が確保できない虞があった。他方、溶融部が十分にシース管に入り込むようにするために、溶接条件を変更する(例えば、レーザ出力を上げる等)と、溶融部がシース管を貫通してしまい、シース管に穴が形成されてシース管内に配置された発熱体が酸化消耗してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、ハウジングに設けた薄肉部とシース管とを接合するにあたり、シース管とハウジングとの水密性を確保しつつ、且つシース管が貫通して発熱体が酸化消耗するのを抑制できるヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のヒータは、軸線方向に延びるとともに先端部が閉塞した筒状のシース管と、前記シース管内に配置され、通電により発熱する発熱体と、前記シース管の後端側を自身の筒孔内に挿通する筒状のハウジングと、を備え、前記ハウジングは、本体部と、前記本体部よりも先端側で、且つ、前記シース管に対して前記軸線方向に重なるように配置され、前記本体部の厚みよりも薄い筒状の薄肉部と、を有し、前記薄肉部と前記シース管とに全周に亘ってレーザ溶接により形成された溶融部が設けられるヒータであって、前記溶融部に隣接する非溶融部と前記溶融部との前記薄肉部の外表面の境界における前記薄肉部の厚みが、前記シース管の厚みより薄いことを特徴とする。
【0008】
この形態のヒータによれば、薄肉部の厚みがシース管の厚みよりも薄くしている。これにより、シース管内に設けられる溶融部を適切な大きさに調整することができる。その結果、シース管とハウジングの水密性を確保することができると共に、シース管が貫通して発熱体が酸化消耗することを抑制できる。
【0009】
また、「溶融部に隣接する非溶融部と溶融部との薄肉部の外表面の境界」としては、薄肉部のうち溶融部よりも先端側に設けられる非溶融部と溶融部との境界(以下、先端側境界ともいう)のほか、薄肉部のうち溶融部よりも後端側に設けられる非溶融部と溶融部との境界(以下、後端側境界ともいう)が挙げられる。
さらに、「境界における薄肉部の厚みがシース管の厚みより薄い」とは、先端側境界における薄肉部の厚みがシース管の厚みより薄い形態のほか、後端側境界における薄肉部の厚みがシース管の厚みより薄い形態が挙げられる。なお、先端側境界及び後端側境界の両方が存在する場合には、何れか一方の境界の厚みとシース管の厚みとが上述の関係になっていればよく、より好ましくは両方の境界の厚みとシース管との厚みとが上述の関係になっていればよい。他方、先端側境界、後端側境界の一方のみが存在する場合には、存在する一方の境界の厚みとシース管との厚みとが上述の関係になっていればよい。
【0010】
また、本発明のヒータは、前記溶融部が、前記薄肉部のうち前記本体部と離間した位置に設けられてなることが好ましい。薄肉部のうち本体部に隣接する位置に溶融部を形成すると、溶接により溶融部を形成する際に、溶接時の熱が本体部に伝導し易くなり、良好な溶融部形状を得ることが難しくなる。一方、溶融部を本体部と離間した薄肉部に形成すると、溶接時の熱が本体部に伝導しにくくなり、良好な溶融部形状を得ることができる。
【0011】
また、本発明のヒータは、前記溶融部の後端と前記本体部の先端との軸線方向の距離が1mmより大きいことが好ましい。溶融部の後端を本体部の先端から1mmよりも大きく離間させることで、溶接時の熱が本体部にさらに伝導しにくくなり、溶融部に生じるクラック(以下、凝固割れとも言う)が発生することを抑制できる。
【0012】
また、本発明のヒータは、前記薄肉部の少なくとも一部に、前記シース管が圧入されてなる圧入部が設けられてなることが好ましい。このように、薄肉部に圧入部を設けることで、シース管の軸と薄肉部との軸とをほぼ一致させることができ、シース管と薄肉部とが軸ずれすることを抑制できる。その結果、薄肉部に形成する溶融部が、周方向に亘ってほぼ均一で良好な形状を得ることができる。
なお、圧入部は、薄肉部の一部に設けていても良いし、薄肉部全体に設けられていても良い。
【0013】
また、本発明のヒータは、前記溶融部が、前記圧入部に重なるように設けられてなることが好ましい。このように、溶融部が圧入部に重なるように設けられることで、シース管と薄肉部との周方向のクリアランス(隙間)が設けられていない部位に溶融部を形成することができる。その結果、シース管内に設けられる溶融部がより適度な大きさに調整することが可能となる。
その上、形成された溶融部の外表面が径方向内側に向かって凹みにくくなるため、溶融部が周方向に亘ってほぼ均一で良好な形状を得ることができる。
【0014】
なお、溶融部と圧入部と重ねる形態とするにあたり、圧入部は薄肉部の一部に設けられることが好ましい。圧入部以外の部位(以下、離間部という)では、薄肉部とシース管とにクリアランス(隙間)が形成されることになる。すると、この離間部では、溶接時に薄肉部からシース管への熱の伝導が抑制できる。その結果、溶接時の熱が圧入部に滞留しやすくなり、良好な溶融部形状を得ることができる。
【0015】
また、本発明のヒータは、前記圧入部が、前記薄肉部の一部に設けられてなり、前記溶融部と前記圧入部とが前記軸線方向にずれて形成されてなることを特徴とする。溶融部が圧入部に重なるように設けられると、溶融部に内部応力が加わることとなり、溶融部にクラックが生じることがある。これに対し、圧入部と溶融部とをずれて設けることで、溶融部の内部応力を減らすことができ、溶融部のクラックを抑制できる。
【0016】
また、本発明のヒータは、前記溶融部が、前記圧入部よりも先端側に設けられてなることを特徴とする。このように、溶融部を圧入部よりも先端側に設けることで、溶接時の熱が、体積が大きいシース管の先端側に圧入部を介して伝導することを抑制できるため、良好な溶融部形状を得ることができる。
【0017】
また、本発明のヒータは、前記溶融部が、前記薄肉部の先端に設けられてなることを特徴とする。このように、薄肉部の先端に溶融部を形成することで、シース管内に設けられる溶融部をより適切な大きさに調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、ヒータ10を容器1に配置した説明図である。
図1に示すように、箱状の容器1内には液体(例えば、オイルやウォッシャー液等)2が入れられている。この容器1の上部には、ヒータ10を取り付けるための取付部3が形成されている。取付部3は、ヒータ10が挿通される取付孔4が設けられると共に、取付孔4に面する取付部3の内面にはヒータ10の雄ネジ部540(後述)と螺合する雌ネジ部5が設けられている。取付部3にヒータ10を取り付けることで、ヒータ10の先端側が容器1内に突出し、液体2に晒される。
【0020】
図2は、ヒータ10を示す半断面図である。ヒータ10は、シースヒータ800の他、中軸200と、主体金具500とを主に備える。これらヒータ10を構成する部材は、ヒータ10の軸線Oの方向(以下、軸線方向ODとも言う)に沿って組み付けられている。
図2では、軸線Oから紙面右側に外観構成を図示し、軸線Oから紙面左側に断面構成を図示した。なお、本明細書では、ヒータ10におけるシースヒータ800側を「先端側」と呼び、係合部材100側を「後端側」と呼ぶ。
【0021】
主体金具500は、SUS304やSUS310S等のステンレス鋼を筒状に成形した部材である。主体金具500は、先端側の端部においてシースヒータ800を保持する。また、主体金具500は、後端側の端部において絶縁部材410及びOリング460を介して中軸200を保持する。絶縁部材410は、絶縁部材410の後端に接するリング300が中軸200に加締められることで、主体金具500に固定される。さらに、主体金具500の軸孔510内には、絶縁部材410からシースヒータ800に至る中軸200が配置される。軸孔510は、軸線Oに沿って形成された貫通孔であり、中軸200よりも大きな径を有する。軸孔510に中軸200が位置決めされた状態で、軸孔510と中軸200との間には、両者を電気的に絶縁する空隙が形成される。さらに、主体金具500は、本体部530と、本体部530の厚みよりも薄い厚みの薄肉部550とを備える。このうち、本体部530には、工具係合部520と、雄ネジ部540とを備える。主体金具500の工具係合部520は、ヒータ10の取り付け及び取り外しに用いられる工具(図示せず)に係合する。雄ネジ部540は、容器1に形成された雌ネジ部5に嵌り合う。また、本体部530よりも先端側には、薄肉部550が設けられており、シースヒータ800が薄肉部550の内部(軸孔510)に圧入され、薄肉部550とレーザ溶接されている。なお、シースヒータ800と薄肉部550との構造については、後述する。なお、主体金具500が特許請求の範囲の「ハウジング」に相当する。
【0022】
中軸200は、導電材料で円柱状(棒状)に成形された部材である。中軸200は、主体金具500の軸孔510に挿入された状態で軸線方向ODに沿って組み付けられる。中軸200は、先端側に形成された先端部210と、後端側に設けられた雄ネジ部290とを備える。先端部210は、シースヒータ800の内部に挿入される。雄ネジ部290は、主体金具500から後端側に突出している。雄ネジ部290には、係合部材100が嵌り合う。
【0023】
図3は、シースヒータ800の詳細な構成を示す断面図である。シースヒータ800は、シースヒータ800の内部に中軸200の先端部210が挿入された状態で、主体金具500の軸孔510内に圧入されている。シースヒータ800は、シース管810と、発熱コイル820と、絶縁体870とを主に備える。
【0024】
シース管810は、軸線方向ODに延び、先端が閉じられた筒状部材である。シース管810は、発熱コイル820と、絶縁体870と、を内包する。シース管810は、軸線方向ODに延びる側面部814と、側面部814の先端側に接続し、外側に向けて丸く形成された先端部813と、先端部813とは反対側に開口した端部である後端部819とを備える。この後端部819からシース管810の内部に中軸200の先端部210が挿入されている。シース管810は、パッキン600及び絶縁体870によって中軸200と電気的に絶縁される。一方、シース管810は、主体金具500と接触して電気的に接続されている。このシース管810は、SUS310S等のステンレス鋼である。
【0025】
絶縁体870は、電気絶縁性を有する絶縁材料の粉末により形成されている。絶縁体870としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)の粉末が用いられる。絶縁体870は、シース管810が中軸200、発熱コイル820を内包することによって、シース管810内に形成された隙間に充填(配置)され、その隙間を電気的に絶縁する。
【0026】
発熱コイル820は、シース管810の内側に軸線方向ODに沿って配置され、通電によって発熱する。発熱コイル820は、先端側のコイル端部である先端部822と、後端側のコイル端部である後端部829と、先端部822と後端部829とを接続する螺旋部823とを備える。先端部822は、シース管810の先端部813に接続しており、シース管810と電気的に接続される。後端部829は、中軸200の先端部210に接合されることにより中軸200と電気的に接続される。発熱コイル820は、Fe−Cr−Al合金、Ni−Cr合金、Co−Ni合金、Ni等からなる。なお、発熱コイル820が、特許請求の範囲の「発熱体」に相当する。
【0027】
図4は、主体金具500の薄肉部550付近の断面図である。
図4の断面は、軸線Oを通る位置でシース管810及び主体金具500を切断した断面である。なお、中軸200は簡略化のため、斜視図にて示す。
図4に示すように、主体金具500は、本体部530と薄肉部550とを備える。薄肉部550は、本体部530の先端側に接続されており、薄肉部550の厚みは、本体部530の厚みよりも薄く形成されている。
【0028】
シース管810は、本体部530及び薄肉部550の内側(軸孔510)に挿通されている。この際、シース管810は、薄肉部550に圧入されており、薄肉部550の一部に、圧入部552が形成されている。さらに、薄肉部550とシース管810とが全周に亘ってレーザ溶接され、溶融部560が周方向に設けられている。この溶融部560は、圧入部552に重なるように設けられている。
【0029】
そして、本実施形態では、薄肉部550の厚みT1がシース管810の厚みT2よりも薄くされている。なお、本実施形態では、薄肉部550の全部位の厚みがシース管810の厚みT2よりも薄くされている。薄肉部の厚みT1は、溶融部560に隣接する非溶融部561と溶融部560との薄肉部550の外表面の境界S1(後端側境界S1)における薄肉部550の厚みT1であることを特定している。これは、溶接により溶融部560の形状が変化することで、溶融部560において薄肉部550の厚みが特定できない虞があるのに対し、非溶融部561と溶融部560との境界Sを起点すれば、容易に薄肉部550の厚みT1を特定することができるからである。
【0030】
以上のように構成されたヒータ10によれば、薄肉部550の厚みT1がシース管810の厚みT2よりも薄くしている。これにより、シース管810内に設けられる溶融部560を適切な大きさに調整することができる。その結果、シース管810と主他金具500の水密性を確保することができると共に、シース管810が貫通して発熱コイル820が酸化消耗することを抑制できる。なお、本実施形態では、後端側境界S1における薄肉部550の厚みT1とシース管810の厚みT2とを比較したが、先端側境界S2における薄肉部550の厚みとシース管810の厚みT2とを比較してもよい。
【0031】
また、本実施形態のヒータ10は、溶融部560が、薄肉部550のうち本体530と軸線方向ODに離間した位置に設けられてなる。このように溶融部560を本体部530と離間した薄肉部550の位置に形成すると、レーザ溶接時の熱が本体部530に伝導しにくくなり、良好な溶融部560の形状を得ることができる。
【0032】
また、本実施形態のヒータ10は、溶融部560の後端562と、本体部530の先端531との軸線方向の距離が1.5mmとなっている。このように、溶融部560の後端562を本体部530の先端531から1mmより大きく離間させることで、レーザ溶接時の熱が本体部530にさらに伝導しにくくなり、溶融部560に生じる凝固割れが発生することを抑制できる。
【0033】
また、本実施形態のヒータ10は、薄肉部550の少なくとも一部に、シース管810が圧入されてなる圧入部552が設けられてなる。このように、薄肉部550に圧入部552を設けることで、シース管810の軸と薄肉部550との軸とをほぼ一致させることができ(ヒータ10の軸Oに合わせることができ)、シース管810と薄肉部550とが軸ずれすることを抑制できる。その結果、薄肉部550に形成する溶融部560が、周方向に亘ってほぼ均一で良好な形状を得ることができる。
【0034】
また、本実施形態のヒータ10は、溶融部560が、圧入部552に重なるように設けられてなる。このように、溶融部560が圧入部552に重なるように設けられることで、シース管810と薄肉部550との周方向のクリアランス(隙間)が設けられていない部位(つまり、圧入部552)に溶融部を形成することができる。その結果、シース管810内に設けられる溶融部560がより適度な大きさに調整することが可能となる。
その上、形成された溶融部560の外表面が径方向内側に向かって凹みにくくなるため、溶融部560が周方向に亘ってほぼ均一で良好な形状を得ることができる。
【0035】
また、本実施形態のヒータ10は、シース管810内に配置されるパッキン600を、本体部530と軸線方向ODに重なるように配置されていると共に、薄肉部550と軸線方向ODに重ならないように配置している(
図3参照)。これにより、ヒータ10の発熱コイル820による熱がパッキン600に滞留することなく、本体部530に伝導することができ、パッキン600が劣化することを抑制できる。
【0036】
次に、ヒータ10の製造方法について説明する。
図5は、ヒータ10の製造方法を示すフローチャートである。ヒータ10の製造では、まず、発熱コイル820と中軸200とが溶接される(ステップS10)。
【0037】
次に、発熱コイル820の先端部822と、シース管810の先端部813と、が溶接される(ステップS20)。ステップS20における溶接工程が完了すると、次に、シース管810の内に絶縁体870が充填される(ステップS30)。絶縁体870が、発熱コイル820と、中軸200とを内包することによってシース管810内に形成された空隙に充填されて、シースヒータ800の組み立てが完了する。
【0038】
シースヒータ800が組み立てられると、シースヒータ800に対し、スウェージング加工が施される(ステップS40)。スウェージング加工とは、シースヒータ800に対して打撃力を加えてシースヒータ800を縮径させ、シース管810内に充填した絶縁体870を緻密化させる加工である。スウェージングに伴ってシースヒータ800に打撃力が加えられると、打撃力がシースヒータ800内部に伝えられることにより、絶縁体870が緻密化される。
【0039】
シースヒータ800にスウェージング加工が施されると、シースヒータ800を主体金具500に圧入する(ステップS50)。シースヒータ800を主体金具500の先端側から挿入し、薄肉部550に圧入部552を形成する。その後、主体金具500とシースヒータ800とを溶接する(ステップS60)。薄肉部550の圧入部552に重なるようにして、薄肉部550の全周に亘ってレーザ溶接を行い、薄肉部550とシース管810とに溶融部560を形成する。その後、ヒータ10の組み立てを行い(ステップS70)、ヒータ10が完成する。具体的には、主体金具500の後端部分において、Oリング110や絶縁部材120を中軸200に嵌め込み、係合部材140を主体金具500の後端に設けられた中軸200の雄ネジ部290に締め付ける。
【0040】
次に、第2実施形態のヒータ10aについて、説明する。なお、第2実施形態のヒータ10aは、第1実施形態のヒータ10のうち、薄肉部550における溶融部560の形成位置が異なるだけであり、その他の部位については第1実施形態のヒータ10と同様である。よって、以下の説明では、第2実施形態のヒータ10aの薄肉部550aを中心に説明し、その他の部位の説明は簡略又は省略する。
【0041】
図6は、ヒータ10aの主体金具500aの薄肉部550a付近の断面図である。
図6の断面は、軸線Oを通る位置でシース管810及び主体金具500aを切断した断面である。なお、中軸200は簡略化のため、斜視図にて示す。
図6に示すように、主体金具500aは、本体部530aと薄肉部550aとを備える。薄肉部550aは、本体部530aの先端側に接続されており、薄肉部550aの厚みは、本体部530aの厚みよりも薄く形成されている。
【0042】
シース管810は、本体部530a及び薄肉部550aの内側(軸孔510a)に挿通されている。この際、シース管810は、薄肉部550aに圧入されており、薄肉部550aの一部には圧入部552aが形成されている。そして、第2実施形態では、薄肉部550aとシース管810とが全周に亘ってレーザ溶接され、溶融部560aが周方向に設けられている。この溶融部560aは、圧入部552aと軸線方向ODにずれて設けられている。
【0043】
以上のように構成されたヒータ10aにおいても、薄肉部550aの厚みT1がシース管810の厚みT2よりも薄くしている。これにより、シース管810内に設けられる溶融部560aを適切な大きさに調整することができる。その結果、シース管810と主他金具500aの水密性を確保することができると共に、シース管810が貫通して発熱コイル820が酸化消耗することを抑制できる。なお、本実施形態では、薄肉部550aの全部位の厚みがシース管810の厚みT2よりも薄くされている。
【0044】
また、本実施形態のヒータ10aは、圧入部552aが、薄肉部550aの一部に設けられてなり、溶融部560aと圧入部552aとが軸線方向ODにずれて形成されてなる。これにより、溶融部560aの内部応力を減らすことができ、溶融部560aのクラックを抑制できる。
【0045】
また、本実施形態のヒータ10aは、溶融部560aが、圧入部552aよりも先端側に設けられてなる。このように、溶融部560aを圧入部552aよりも先端側に設けることで、溶接時の熱が、体積が大きいシース管810の先端側に圧入部552aを介して伝導することを抑制できるため、良好な溶融部形状を得ることができる。
【0046】
次に、第3実施形態のヒータ10bについて、説明する。なお、第3実施形態のヒータ10bは、第1実施形態のヒータ10のうち、薄肉部550における溶融部560の形成位置が異なるだけであり、その他の部位については第1実施形態のヒータ10と同様である。よって、以下の説明では、第3実施形態のヒータ10bの薄肉部550bを中心に説明し、その他の部位の説明は簡略又は省略する。
【0047】
図7は、ヒータ10bの主体金具500bの薄肉部550b付近の断面図である。
図7の断面は、軸線Oを通る位置でシース管810及び主体金具500bを切断した断面である。なお、中軸200は簡略化のため、斜視図にて示す。
図7に示すように、主体金具500bは、本体部530bと薄肉部550bとを備える。薄肉部550bは、本体部530bの先端側に接続されており、薄肉部550bの厚みは、本体部530bの厚みよりも薄く形成されている。
【0048】
シース管810は、本体部530b及び薄肉部550bの内側(軸孔510b)に挿通されている。この際、シース管810は、薄肉部550bに圧入されており、薄肉部550aの一部には圧入部552bが形成されている。そして、第3実施形態では、薄肉部550bとシース管810とが全周に亘ってレーザ溶接され、溶融部560bが周方向に設けられている。この溶融部560aは、薄肉部550bの先端551bに設けられている。
【0049】
以上のように構成されたヒータ10bにおいても、薄肉部550bの厚みT1がシース管810の厚みT2よりも薄くしている。これにより、シース管810内に設けられる溶融部560bを適切な大きさに調整することができる。その結果、シース管810と主他金具500bの水密性を確保することができると共に、シース管810が貫通して発熱コイル820が酸化消耗することを抑制できる。なお、本実施形態では、薄肉部550bの全部位の厚みがシース管810の厚みT2よりも薄くされている。
【0050】
また、本実施形態のヒータ10bは、溶融部560bが、薄肉部550bの先端551bに設けられてなる。このように、薄肉部550bの先端551bに溶融部560bを形成することで、シース管810内に設けられる溶融部560bをより適切な大きさに調整することができる。
【0051】
次に、溶融部560の後端562の本体部530の先端531からの距離と凝固割れとの関係について評価した。この評価に際して、第1実施形態のヒータ10を上述の製造方法により作成した。なお、主体金具500に挿入前のシース管810の直径(圧入部552に配置される部位の直径):φ6.2mm、圧入部552における薄肉部550の直径:φ6.94mm、薄肉部550の厚みT1:0.4mm、シース管810の厚みT2:0.7mm、本体部530の肉厚:1.0mm、薄肉部550の軸線方向ODの長さ:4mmとした。また、レーザ溶接条件としては、YAGレーザ溶接機を用い、出力:1.5〜2.5KW、回転速度:3s/1回転、1回転でのレーザショット数:65回であった。
【0052】
このレーザ溶接条件のもと、レーザ照射位置を、薄肉部550の軸線方向ODに上下に移動させた複数のサンプルを作成した。詳細には、形成された溶融部560の後端561と本体部530の先端531との距離が1mm以下となるサンプルAを10本、形成された溶融部560の後端561と本体部530の先端531との距離が1mmを超えて2mm以下となるサンプルBを10本、形成された溶融部560の後端561と本体部530の先端531との距離が2mmを超えるサンプルCを10本、それぞれ作成した。
【0053】
そして、このサンプル30本について、凝固割れが発生しているかどうかを確認した。なお、凝固割れが発生しているかどうかは、溶融部560の軸線方向ODの中心位置にて、軸線方向ODに垂直な方向で切断し、切断面に表出した溶融部560をSEMにより確認した。
【0054】
その結果、サンプルA(形成された溶融部560の後端561と本体部530の先端531との距離が1mm以下)では、溶融部560に凝固割れが発生しているサンプル数が3本であった。これに対し、サンプルB(形成された溶融部560の後端561と本体部530の先端531との距離が1mmを超えて2mm以下)や、サンプルC(形成された溶融部560の後端561と本体部530の先端531との距離が2mmを超える)については、溶融部560に凝固割れが発生しているサンプル数は0本であった。以上のことより、溶融部560の後端562を本体部530の先端531から1mmより大きく離間させることで、レーザ溶接時の熱が本体部530にさらに伝導しにくくなり、溶融部560に生じる凝固割れが発生することを抑制できることが分かる。
【0055】
本発明は、本明細書の実施形態や実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。
【0056】
本実施形態では、圧入部552、552a、552bは薄肉部550、550a、50bの一部に設けられていたが、これに限られるものではなく、薄肉部の全体に亘って設けられていてもよい。
また、本実施形態では、溶融部560、560a、560bは薄肉部550、550a、550bの一部に設けられていたが、これに限られるものでなく、薄肉部の全体に亘って設けられていてもよい。
また、本実施形態では、薄肉部550、550a、550bの全部位の厚みがシース管810の厚みT2よりも薄くされていたが、これに限られず、薄肉部550、550a、550bの厚みT1(境界S1、S2の位置における薄肉部550、550a、550bの厚みT1)がシース管810の厚みT2よりも薄くされていればよく、例えば、薄肉部550、550a、550bが軸線方向ODの先端側に向かうにつれて厚みが薄くなるテーパ部であってもよい。
また、本実施形態では、シース管810内に発熱コイル820のみを配置する形態であったが、これに限られることなく、発熱コイルと発熱コイルを制御する制御コイルがシース管内に配置される形態であってもよい。