(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸線を中心として延びる円筒状をなして外径及び内径が該軸線方向にわたって一様とされた円筒形状をなす外筒本体、及び、該外筒本体の前記軸線方向の一部から前記外筒本体の外周面及び内周面が径方向外側に膨出するようにして形成されたバイパス部を有し、ガラスから成型された外筒と、
該外筒の先端に設けられたフロントアセンブリと、
前記外筒の後端に設けられたフィンガーグリップと、
前記外筒内における前記バイパス部の先端側に嵌入されたフロントストッパーと、
前記外筒内における前記バイパス部の後端側に嵌入され、前記フロントストッパーとともに製剤を封止するミドルストッパーと、
前記外筒内における前記ミドルストッパーの後端側に嵌入されて前記ミドルストッパーとともに液剤を封止するエンドストッパーと、
前記フィンガーグリップを挿通して前記エンドストッパーに後端側から接続されるプランジャーロッドと、
を備え、
前記バイパス部の径方向の厚さが前記外筒本体の径方向の厚さよりも小さく、かつ、前記外筒本体の径方向の厚さに対する前記バイパス部の径方向の厚さの比が、0.8以上とされ、
前記バイパス部の外面の径方向位置が、前記外筒本体の外周面よりも径方向外側とされ、
前記バイパス部の内面の径方向位置が、前記外筒本体の内周面と外周面との間とされており、
前記外筒本体の内径が、10.0〜15.0mmとされ、
前記バイパス部は、周方向に間隔をあけて4つのみが設けられており、
各前記バイパス部内の空間の前記軸線に直交する断面積が0.25〜0.80mm2とされ、
前記4つのみのバイパス部の前記断面積の合計が、1.00〜3.20mm2とされている二室式容器兼用注射器。
軸線を中心として延びる円筒状をなして外径及び内径が該軸線方向にわたって一様とされた円筒形状をなす外筒本体、及び、該外筒本体の前記軸線方向の一部から前記外筒本体の外周面及び内周面が径方向外側に膨出するようにして形成されたバイパス部を有し、ガラスから成型された外筒と、
該外筒の先端に設けられたフロントアセンブリと、
前記外筒の後端に設けられたフィンガーグリップと、
前記外筒内における前記バイパス部の先端側に嵌入されたフロントストッパーと、
前記外筒内における前記バイパス部の後端側に嵌入され、前記フロントストッパーとともに製剤を封止するミドルストッパーと、
前記外筒内における前記ミドルストッパーの後端側に嵌入されて前記ミドルストッパーとともに液剤を封止するエンドストッパーと、
前記フィンガーグリップを挿通して前記エンドストッパーに後端側から接続されるプランジャーロッドと、
を備え、
前記バイパス部の径方向の厚さが前記外筒本体の径方向の厚さよりも小さく、かつ、前記外筒本体の径方向の厚さに対する前記バイパス部の径方向の厚さの比が、0.8以上とされ、
前記バイパス部の外面の径方向位置が、前記外筒本体の外周面よりも径方向外側とされ、
前記バイパス部の内面の径方向位置が、前記外筒本体の内周面と外周面との間とされており、
前記外筒本体の内径が、10.0〜15.0mmとされ、
前記バイパス部は、周方向に間隔をあけて3つのみが設けられており、
各前記バイパス部内の空間の前記軸線に直交する断面積が0.25〜0.80mm2とされ、
前記3つのみのバイパス部の前記断面積の合計が、0.75〜2.40mm2とされている二室式容器兼用注射器。
【背景技術】
【0002】
容器兼用注射器は、予め薬液が充填されているため、医療機関において煩雑な操作をすることなく包装から取り出して即座に使用できる。このように利便性に優れ、医師や看護師等の医療業務に携わる者の作業軽減に大いに貢献するため、容器兼用注射器は多くの病医院で採用されている。
【0003】
従来、この容器兼用注射器の一種として、製剤と液剤とを分離して充填した二室式容器兼用注射器が知られている(例えば特許文献1参照)。
二室式容器兼用注射器は、外筒の先端側にフロントストッパーが嵌入されており、外筒内の中央部に嵌入されたミドルストッパーによって該外筒内部が前後二室に分割されている。外筒におけるミドルストッパーよりも先端側の部分には、外筒の一部が径方向外側に膨出することで形成されたバイパス部が形成されている。ミドルストッパーの先端側の前室には、粉末状の製剤が封入されており、その先端はフロントストッパーで封止されている。ミドルストッパーの後端側の後室には液剤が封入されており、その後端はエンドストッパーによって封止されている。エンドストッパーの後端にはプランジャーロッドが接続されている。
【0004】
二室式容器兼用注射器を使用する際には、プランジャーロッドを外筒内に押し込むことによりエンドストッパーを外筒内にて前進させる。すると、当該エンドストッパーの前進による押圧力が液剤を介してミドルストッパーに伝達されることにより、当該エンドストッパーの前進とともにミドルストッパーも前進していく。そして、ミドルストッパーがバイパス溝の形成部分に到達すると、該バイパス部を介してミドルストッパーの前後2室が連通状態となる。これによって、後室の液剤が前室内に流入し、該液剤と前室の製剤とが混合されることにより注射薬が調製される。
【0005】
また、例えば特許文献2には、外筒の内周面から凹むバイパス溝が形成された二室式容器兼用注射器が開示されている。外筒の外周面は一様な外形とされている。したがってバイパス溝は、外筒の内周面と外周面との間の肉厚内に形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1及び
図2に示すように、二室式容器兼用注射器1は、外筒本体110と、ハブルアーロック20と、フロントストッパー30と、ミドルストッパー40と、エンドストッパー50と、フィンガーグリップ60と、プランジャーロッド70とを備えている。この二室式容器兼用注射器1には、混合されることで注射薬が調製される製剤及び液剤が分離した状態で充填されている。
【0016】
外筒100は、透明なガラス
から成型されている。外筒100は、外筒本体110及びバイパス部120を有している。外筒本体110は、軸線Oに沿って延びる円筒状をなしている。外筒本体110の外周面110a及び内周面110bは、軸線O方向にわたって一様な径を有している。外筒本体110の軸線O方向の中央部には、該外筒本体110の一部が径方向外側に膨出するようにして成型されたバイパス部120が形成されている。バイパス部120の軸線O方向の寸法は、ミドルストッパー40の軸線O方向の寸法より大きく設定されている。バイパス部120の軸線O方向の位置は、設計に応じて適宜設定することができる。
【0017】
図1に示すように、ハブルアーロック20は、適度な剛性を備えた透明なプラスチックから成型されており、軸線Oを中心とした外形多段円柱状をなしている。このハブルアーロック20は、円筒形状をなす基端部21と、該基端部21の先端側に一段縮径するように結合された円筒部22と、該円筒部22のさらに先端側に円筒部22よりも小径に成型されたルアー先23とを備えている。
【0018】
基端部21の内側には、ハブルアーロック20の後端側に開口する嵌着孔24が成型されており、該嵌着孔24の前方側、即ち、円筒部22の内側には、有底穴状のバイパスチャンバー25が成型されている。バイパスチャンバー25の底部に当たる箇所は、フロントストッパー30の先端が当接する前端面25aとされている。前端面25aは、前方側に向かうに従って漸次縮径する円錐面状に成型されている。
【0019】
ルアー先23の内部には、軸線Oに沿って貫通された導入孔23aが成型されており、この導入孔23aは、一端側がルアー先23の先端に開口するとともに他端側がバイパスチャンバー25における前端面25a中央に開口している。導入孔23aの一端側、即ち、先端側には、軸線Oに沿って先端側に延びる注射針が連通状態にして取り付けられる。
【0020】
嵌着孔24は、外筒本体110にハブルアーロック20を取り付けるために成型された孔であって、その内径は外筒本体110の外径とほぼ同一に成型されている。この嵌着孔24を外筒本体110先端に外嵌させることによって、ハブルアーロック20が外筒本体110の先端側に取り付けられるようになっている。
【0021】
バイパスチャンバー25は、その内径が嵌着孔24よりも一段小径とされた有底穴であって、その内周壁には溝部26が成型されている。溝部26は直線溝26aと環状溝26bとから構成されている。
直線溝26aは、バイパスチャンバー25の内壁面において軸線Oと平行に延びるように周方向に等間隔を空けて複数が成型されている。直線溝26aの先端側は、バイパスチャンバー25の内壁面から前端面25aに延びてルアー先23の内部に成型された導入孔23aにそれぞれ接続されている。
【0022】
環状溝26bは、軸線Oを中心として周方向に延在する円環状の溝であって、バイパスチャンバー25の内壁面における該バイパスチャンバー25と嵌着孔24との境界付近に成型されている。この環状溝26bは、上記複数の直線溝26aそれぞれの後端に接続されており、これにより各直線溝26aは環状溝26bを介して接続されている。
【0023】
このような構成のハブルアーロック20のルアー先23には、キャップ28が取り付けられている。このハブルアーロック20とキャップ28とによってフロントアセンブリが構成されている。
【0024】
なお、ハブルアーロック20のルアー先23に、キャップ28に代えて注射針が取り付けられ、該注射針29aを取り囲むようにプロテクターが取り付けられていてもよい。この場合、ハブルアーロック20、注射針及びプロテクターによってフロントアセンブリが構成されている。
【0025】
フロントストッパー30、ミドルストッパー40及びエンドストッパー50は、それぞれ製剤、液剤及び注射薬に対して耐食性を備える医療用ゴムから成型されている。フロントストッパー30、ミドルストッパー40及びエンドストッパー50は、外筒本体110の内径より僅かに大きな外径を有する軸線Oを中心とした略円柱形状をなしている。
【0026】
フロントストッパー30は、外筒本体110におけるバイパス部120の先端側に嵌入されている。
ミドルストッパー40は、外筒本体110におけるバイパス部120の後端側に嵌入されている。ミドルストッパー40は、外筒本体110内においてフロントストッパー30とミドルストッパー40とに挟み込まれるようにして粉末状の製剤Sが封止されている。即ち、外筒本体110の内周面、フロントストッパー30の後端面及びミドルストッパー40の先端面によって画成された前室F内に製剤Sが充填されている。
【0027】
エンドストッパー50は、外筒本体110内におけるミドルストッパー40のさらに後端側に当該ミドルストッパー40と軸線O方向に間隔をあけて嵌入されている。エンドストッパー50とミドルストッパー40とに挟み込まれるようにして液体状の液剤Lが封止されている。即ち、外筒本体110の内周面110b、ミドルストッパー40の後端面及びエンドストッパー50の先端面によって画成された後室B内に液剤が充填されている。なお、エンドストッパー50の後端には、後述するプランジャーロッド70が捩じ込まれる雌ネジ穴(図示省略)が成型されている。
このように、二室式容器兼用注射器1においては、ミドルストッパー40によって仕切られた前室F及び後室B内に、製剤及び液剤が分離して封止されている。
【0028】
フィンガーグリップ60は、嵌着部61と、フランジ部62とを備えている。
嵌着部61は、軸線Oを中心とした略円筒形状をなしており、その内周側が外筒本体110の後端が嵌め込まれる嵌着孔61aとされている。
フランジ部62は、嵌着部61の後端から軸線Oを中心とした直径方向に張り出しており、軸線O方向矢視において略矩形状をなしている。このフランジ部62は、二室式容器兼用注射器1の使用時に医療従事者の指を支持することにより、該医療従事者の二室式容器兼用注射器1の取り扱いを容易にする役割を有している。
【0029】
プランジャーロッド70は、軸線Oに沿って延在する長尺状をなしており、その先端がエンドストッパー50に接続されている。プランジャーロッド70はフィンガーグリップ60を挿通している。これにより、プランジャーロッド70を先端側に押し込むことによって、外筒本体110内のエンドストッパー50を先端側に向かって移動させることができる。
【0030】
次に、外筒100の構成について
図2及び
図3を参照して詳細に説明する。
本実施形態のバイパス部120は、周方向に間隔をあけて複数が形成されている。各バイパス部120の軸線O方向の寸法及び軸線O方向の位置は互いに同一とされている。バイパス部120は、外筒100の成型時に筒状の外筒本体110の内側から型を押し当てて径方向外側に膨出させることによって形成される。これによって、バイパス部120は、直線部121、後側傾斜部122及び前側傾斜部123を有している。
【0031】
直線部121は、軸線Oに平行に直線状に延びる部分である。後側傾斜部122は、直線部121の後端と外筒本体110とを接続する部分であって、後端側から先端側に向かうに従って径方向外側に向かって傾斜して直線部121の後端に接続されている。前側傾斜部123は、直線部121の先端と外筒本体110とを接続する部分であって、先端側から後端側に向かうに従って径方向外側に向かって傾斜して直線部121の先端に接続されている。
【0032】
バイパス部120の直線部121は、
図3に示す軸線Oに直交する断面視で、外筒本体110の外周面110aから山状に突出している。バイパス部120の直線部121における外面121aは、径方向外側に突出する凸部曲面状をなしている。バイパス部120の直線部121における内面121bは、外面121aに対応する凹部曲面状をなしている。即ち、上記成形方向によって、バイパス部120の直線部121における外面121a及び内面121bは互いに対応した形状をなしている。
【0033】
バイパス部120の直線部121の内面121bによって、外筒本体110の内側の空間に連通するバイパス空間Pが形成されている。即ち、バイパス空間Pは、外筒本体110の内側の空間を径方向外側に膨出させて構成をなしている。
【0034】
ここで、外筒本体110の外周面110aと内周面110bとの径の差を外筒本体11
0の厚さT1とする。バイパス部120における外面121aと内面121bとの径の差をバイパス部120の厚さT2とする。なお、バイパス部120の厚さT2は、バイパス部120の直線部121における外面121aの頂部と内面121bの底部との径方向の寸法差である。本実施形態では、0.8×T1≦T2
の関係が成立している
。バイパス部120の厚さT2は、外筒本体110の厚さT1
よりも僅かに小さい値に設定されている。
【0035】
さらに、本実施形態では、バイパス部120の直線部121における内面121bの径方向位置は、外筒本体110の外周面110aと内周面110bとの間の径方向位置とされている。バイパス部120の直線部121における外面121aの径方向位置は、外筒本体110の外周面110aよりも径方向外側とされている。外筒本体110の厚さT1は例えば1.0mmに設定されている。バイパス部120の直線部121の外面121aにおける頂部の径方向位置と、外筒本体110の外周面110aとの径方向位置との径方向の差分は、例えば0.8mmとされている。バイパス部120の直線部121の内面121bにおける底部の径方向位置と、外筒本体110の内周面110bとの径方向位置との径方向の差分は、例えば0.8mmとされている。
【0036】
本実施形態では、バイパス部120は、計4つが設けられている。各バイパス部120は、互いに周方向に90°の間隔をあけて設けられている。外筒100の内径は、10.0〜15.0mmに設定されている。
図3に示す各バイパス部120の直線部121の軸線Oに直交する断面におけるバイパス空間Pの断面積は、0.25〜0.80mm
2に設定されている。この場合、4つのバイパス部120の断面積(流路断面積)の合計は、1.00〜3.20mm
2とされる。
【0038】
さらに、バイパス部120は、計3つが設けられていてもよい。この場合、3つのバイパス部120は、互いに周方向に120°の間隔をあけて設けられている。外筒100の内径は、上記同様10.0〜15.0mmに設定されている。各バイパス部120の直線部121の軸線Oに直交する断面におけるバイパス空間Pの断面積は、上記同様0.25〜0.80mm
2に設定されている。これにより、3つのバイパス部120の断面積の合計は、0.75〜2.40mm
2とされている。
【0039】
上記いずれの場合であっても、バイパス部120の直線部121における外筒本体110からの径方向の高さ(膨出高さ)は、0.4〜0.8mmに設定されている。
【0040】
以上のような構成の二室式容器兼用注射器1によれば、外筒本体110の径方向の厚さT1に対するバイパス部120の径方向の厚さT2の比が、0.8〜1.0とされている。これによって、バイパス部120の厚さT2の寸法を確保することができるため、バイパス部120での強度を確保することができる。
【0041】
仮に、バイパス部120の外面121a及び内面121bが径方向外側に大きく膨出している場合、バイパス部120は成形過程で外筒本体110の一部を変形させることで形成しているため、バイパス部120の厚さが外筒本体110に比べて極端に薄くなってしまう。本実施形態では、バイパス部120の内面121bの径方向位置が、外筒本体110の外周面110aと内周面110bとの間の径方向位置となるように形成しているため、バイパス部120の膨出量が抑えられる結果、当該バイパス部120の厚さを外筒本体110と同等又は僅かに小さくなる程度に設定することができる。
【0042】
また、仮にバイパス部120が径方向外側に大きく膨出した場合、当該バイパス部120によって形成されるバイパス空間Pも径方向外側に大きく膨出する。この場合、バイパス部120に流入する液剤は、より径方向外側に向かってバイパス部120内に流入する。また、バイパス部120から流出する液剤は、より径方向内側に向かってバイパス部120から流出されることになる。このため、製剤に供給される液剤は、流通方向が大きく乱れた状態で前室Fに入り込むことになる。その結果、液剤が当初意図した分散性を得られずに、製剤と良好に混合されない場合が生じる。
【0043】
本実施形態では、バイパス部120の膨出量が上記の通り抑えられているため、バイパス部120内に流入する液剤、及びバイパス部120から流出する液剤は、大きく流れが乱されることはない。そのため、液剤を前室Fに良好に分散させながら供給することができ、製剤との混合を促進させることができる。
【0044】
さらに、バイパス部120の内面121bの径方向位置が外筒本体110の外周面110aと内周面110bとの間の径方向位置とされていることで、当該バイパス部120の内面121bに対応して形成されるバイパス部120の外面121aの膨出量を抑えることができる。当該バイパス部120が大きく膨出している場合、バイパス部120が指の動きを妨げ、取り扱い性を阻害する場合がある。一方、バイパス部120がなければ、外筒100の表面が滑らかになる結果、指による外筒100の保持が困難となる場合がある。本実施形態ではバイパス部120の膨出量が適度に抑えられているため、上記のような不都合はなく、外筒100及び二室式容器兼用注射器1の取り扱いを容易にすることができる。
【0045】
ここでバイパス部120の流路断面積は大きい程、素早く後室Bの液剤を流入させることができる。例えばバイパス部120が一つのみ設けられている場合、当該バイパス部120の流路断面積を大きくすると、液剤がバイパス部120の先端から速く飛び出す結果、ハブルアーロック20から吐出する現象や、製剤が固まり(だま)となって溶解・懸濁に時間が掛かる場合がある。
【0046】
また、バイパス部120の断面積を小さくするとバイパス部120への液剤の流入に時間がかかる他、プランジャーロッド70を強く押し込んで早く溶解液を流入させようとすると、流入の最中にミドルストッパー40がバイパス部120の先端より前まで移動してしまい、液剤の全量を前室Fに移動させることができない場合がある。
一方、液剤をゆっくりと全周から流入させる構成として、流路断面積の小さな多数(5〜17)のバイパス部120を設けた場合、各バイパス部120の流路断面積は小さくなるため、速い流入操作には不向きである。
【0047】
これに対して本実施形態では、内径10.0〜15.0mmの外筒本体110に対して0.25〜0.80mm
2、好ましくは、0.30〜0.70mm
2の流路断面積を持つバイパス部120を
3〜4つ設けた構成としている。
これにより、
3〜4つのバイパス部120が外筒本体110の周方向全域に均等に配置されることによって、後室Bからの液剤流入が前室Fの製剤を多方向から湿潤・溶解することができる。また、急激な溶解液流入による「だま」の発生を防ぎ、安定して素早い溶解を行うことが可能となる。
【0048】
さらに、バイパス部120の総断面積を
バイパス部が4つの場合には1.00〜3.20mm2、バイパス部が3つの場合には0.75〜2.40mm2と少なくすることにより、溶解液のバイパス部120への残留量を少なくすることができる他、エンドストッパー50がバイパス部120を通過後に、残留した液剤がプランジャーロッド70側に戻ってしまうことを抑制することができる。
【0049】
また、微細なバイパス部120を多数形成した場合には粒径の大きな製剤がバイパス部120に詰まり溶解されないことも想定されるが、本実施形態の各バイパス部120の断面積を、0.25〜0.80mm
2とすることでより大きな粒径まで対応することが可能となる。
【0050】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
なお、バイパス空間Pの断面積は、例えば0.30〜0.70mm
2に設定されていてもよい。これによりバイパス部120が4つの場合には、バイパス部120の断面積の合計は1.20mm
2〜2.80mm
2となる。また、バイパス部120が3つの場合には、バイパス部120の断面積の合計は0.90mm2〜2.10mm
2となる
。