(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の床暖房用蓄熱構造及び特許文献2の木質系床材ともに、暖房用の蓄熱対策であり、冷房時の対策は従来なされていなかった。
【0007】
本発明の課題は、冷暖房が必要な夏季・冬季期間に室温を安定させて、冷暖房の運転時間の短縮が図れる蓄冷熱床を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば
図1に示すように、
床下地材11の上に配置され、第一潜熱蓄熱材(以下、第一PCMと呼ぶ)により形成された蓄熱層14と、
前記蓄熱層14の上方に配置され、前記蓄熱層14より潜熱蓄熱温度が高い第二潜熱蓄熱材(以下、第二PCMと呼ぶ)により形成された蓄冷層18と、
前記蓄冷層18の上に敷設された床仕上げ材19と、
前記蓄熱層14と蓄冷層18との間に配置された
剛性を有する板材16と、
前記床下地材11と前記板材16との間に取り付けられた剛性を有する枠材15と、
を備えており、
居室1の床の特定箇所Sに前記蓄熱層14が敷設されて、
前記蓄冷層18は、前記蓄熱層14よりも広範囲で前記居室1の床に敷設されている蓄冷熱床10を特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、床下地材11の上に、第一PCMにより形成された蓄熱層14が配置され、その蓄熱層14の上方に、当該蓄熱層14より潜熱蓄熱温度が高い第二PCMにより形成された蓄冷層18が配置されているので、その蓄冷層18を形成する第二PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を最初に受ける蓄冷層18を形成する第二PCMの潜熱蓄冷によって床10の温度を下げて蓄冷することができる。
そして、蓄冷層18の下方に、当該蓄冷層18より潜熱蓄熱温度が低い第一PCMにより形成された蓄熱層14が配置されているので、その蓄熱層14を形成する第一PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、蓄冷層18の下方に配置された蓄熱層14の、自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わない液相状態の第一PCMも顕熱蓄冷材として利用できる。
また、蓄熱層14を形成する第一PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が低い冬季の暖房時においては、その暖房の熱を最初に受ける蓄冷層18の、自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わない固相の第二PCMも顕熱蓄熱材として利用でき、その蓄冷層18の下方に配置された蓄熱層14を形成する第一PCMの潜熱蓄熱によって床10の温度を上げて蓄熱することができる。
したがって、冷暖房が必要な夏季・冬季期間に室温を安定させて、冷暖房の運転時間の短縮が図れる。
さらに、蓄熱層14とその上方に配置される蓄冷層18との間に板材16が配置されているので、蓄冷層18の上の床仕上げ材19の荷重を、蓄冷層18を介してその下の板材16で確実に受け止めることができる。
加えて、居室1の床の特定箇所Sに蓄熱層14が敷設されているので、その蓄熱層14を形成する第一PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が低い冬季の暖房時において、その暖房の熱を受ける蓄冷層18の、自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わない固相の第二PCMも顕熱蓄熱として利用でき、その蓄冷層18の下方の蓄熱層14の潜熱蓄熱によって、居室1の床の特定箇所Sのみ温度を上げて蓄熱することができる。
そして、蓄冷層18は、蓄熱層14よりも広範囲で居室1の床に敷設されているので、その蓄冷層18を形成する第二PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を最初に受ける蓄冷層18を形成する第二PCMの潜熱蓄冷によって、居室1の蓄熱層14よりも広範囲で床の温度を下げて蓄冷することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、例えば
図1に示すように、
請求項1に記載の蓄冷熱床10において、
前記蓄熱層14は、潜熱蓄熱温度20℃付近に設定されて、
前記蓄冷層18は、潜熱蓄熱温度27℃付近に設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、潜熱蓄熱温度20℃付近に設定された蓄熱層14なので、冬季の暖房時は20℃付近以下で、蓄熱層14を形成する第一PCMの潜熱蓄熱により床10の温度を20℃付近に上げて維持することができる。
また、潜熱蓄熱温度27℃付近に設定された蓄冷層18なので、夏季の冷房時は27℃付近以上で、蓄冷層18を形成する第二PCMの潜熱蓄冷により床10の温度を27℃付近に下げて維持することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、例えば
図1に示すように、
請求項1又は2に記載の蓄冷熱床10において、
前記蓄冷層18の上にフローリング19が配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、蓄冷層18の上にフローリング19が配置されているので、蓄冷層18の上のフローリング19の荷重を、蓄冷層18を介してその下の板材16で確実に受け止めることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、例えば
図1に示すように、
請求項1から3のいずれか一項に記載の蓄冷熱床10において、
前記蓄熱層14は、前記第一PCMを樹脂に分散してシート状に形成された蓄熱シートで、
前記蓄冷層18は、前記蓄熱層14より潜熱蓄熱温度が高い前記第二PCMを樹脂に分散してシート状に形成された蓄冷シートであることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、第一PCMを樹脂に分散してシート状に形成された蓄熱シート14と、その蓄熱シート14より潜熱蓄熱温度が高い第二PCMを樹脂に分散してシート状に形成された蓄冷シート18なので、蓄熱層14及び蓄冷層18ともに薄くて熱抵抗が少なく、蓄冷熱床10の厚みを薄く抑えることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、例えば
図1に示すように、
請求項1から4のいずれか一項に記載の蓄冷熱床10において、
前記床下地材11の下に断熱材12が配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、床下地材11の下に断熱材12が配置されているので、床下地材11の下方を断熱材12により断熱状態に保持して、冬季の暖房時において、床下地材11上の蓄熱層14による蓄熱状態を維持することができて、夏季の冷房時における蓄冷層18による床10の蓄冷状態を維持することができる。
【0020】
請求項
6に記載の発明は、例えば
図3に示すように、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の蓄冷熱床を備える居室1において、
居室1の天井下地材31の下に、前記蓄冷熱床10の前記蓄熱層14より潜熱蓄熱温度が高い第三潜熱蓄熱材(以下、第三PCMと呼ぶ)により形成された天井蓄冷層35が配置されていることを特徴とする。
【0021】
請求項
6に記載の発明によれば、居室1の天井下地材31の下に、蓄冷熱床10の蓄熱層14より潜熱蓄熱温度が高い第三PCMにより形成された天井蓄冷層35が配置されているので、その天井蓄冷層35を形成する第三PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を、天井蓄冷層35を形成する第三PCMの潜熱蓄冷によって居室1の天井の温度を下げて蓄冷することができる。
したがって、床蓄冷層18及び天井蓄冷層35の潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を受ける床蓄冷層18及び天井蓄冷層35の潜熱蓄冷によって居室1の床及び天井の温度をともに下げて蓄冷することができる。
【0022】
請求項
7に記載の発明は、例えば
図3に示すように、
請求項
6に記載の居室1において、
前記天井蓄冷層35は、前記蓄冷熱床10の前記蓄熱層14より潜熱蓄熱温度が高い前記第三PCMを樹脂に分散してシート状に形成された天井蓄冷シートであることを特徴とする。
【0023】
請求項
7に記載の発明によれば、蓄冷熱床10の蓄熱層14より潜熱蓄熱温度が高い第三PCMを樹脂に分散してシート状に形成された天井蓄冷シート35なので、天井蓄冷層は薄くて熱抵抗が少なく、蓄冷天井30の厚みを薄く抑えることができる。
【0024】
請求項
8に記載の発明は、例えば
図3に示すように、
請求項
6又は
7に記載の居室1において、
前記天井蓄冷層35は、前記蓄冷熱床10の前記蓄熱層14よりも広範囲で前記居室1の天井に敷設されていることを特徴とする。
【0025】
請求項
8に記載の発明によれば、天井蓄冷層35は、蓄冷熱床10の蓄熱層14よりも広範囲で居室1の天井に敷設されているので、その天井蓄冷層35の潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を受ける天井蓄冷層35を形成する第三PCMの潜熱蓄冷によって、蓄冷熱床10の蓄熱層14よりも広範囲で居室1の天井の温度を下げて蓄冷することができる。
したがって、床蓄冷層18及び天井蓄冷層35の潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を受ける床蓄冷層18及び天井蓄冷層35の顕熱蓄冷によって、蓄冷熱床10の蓄熱層14よりも広範囲で居室1の床及び天井の温度をともに下げて蓄冷することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、冷暖房が必要な夏季・冬季期間に室温を安定させて、冷暖房の運転時間の短縮が図れる蓄冷熱床を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(実施形態)
先ず、
図4は本発明を適用した居室の一例としての概略平面を示すもので、図示のような住宅の間取りプランにおいて、居間2、食堂3及び台所4を含む居室1の床の特定箇所(居室1の四割相当)Sに
図1に示す蓄冷熱床10が敷設されて、その他の床は蓄冷床となっていて、居室1の居間2、食堂3及び台所4を含む全範囲Wに
図3に示す蓄冷天井30が敷設されている。
【0029】
次に、
図1は本発明に係る蓄冷熱床10を示すもので、
図4の矢印A−A線に沿った縦断面図であり、蓄冷熱床10は、図示のように、地盤に構築された基礎5の上に台輪6を介して設置された床下地材(床パネル)11の上に、蓄熱板材(高強度石膏ボード)13、蓄熱層(蓄熱シート)14、板材(捨て張り合板)16、蓄冷層(蓄冷シート)18、床仕上げ材(フローリング)19を順に敷設して構成されている。
なお、図示例では、建物の一階の床であるが、二階以上の床であってもよい。
【0030】
すなわち、床下地材である床パネル11は、縦横の框材11a及び補助桟材11bによって構成された枠体の上面に面材11cが貼設されて、その面材11cの下方で框材11a及び補助桟材11bの内方の空間部に断熱材12が充填されている。床パネル11の厚さは、90mm程度である。
この床パネル11の面材11cの上に蓄熱板材13が敷設されている。
【0031】
蓄熱板材13は、一般的な石膏ボードよりも硬質で高い蓄熱性を具備する高強度石膏ボードである。高強度石膏ボード13の厚さは、9.5mm程度である。
この高強度石膏ボード13の上に蓄熱層14が敷設されている。
【0032】
蓄熱層14は、潜熱蓄熱温度20℃付近に設定された第一PCMで形成されるもので、その第一PCMを樹脂に分散してシート状に形成された蓄熱シートにより形成されている。蓄熱シート14の厚さは、7.2mm程度である。
この蓄熱シート14は、高強度石膏ボード13の上面に取り付けられた縦横の長尺材15により囲まれた格子枠状の複数の区画にそれぞれ収納されている。蓄熱板材13の厚さは、8mm程度である。
【0033】
なお、PCMは、物質が固相から液相、あるいは液相から固相に相変化するときの潜熱を利用するものであり、固相のPCMの温度が上昇して、その融点に達すると、PCMの溶融が始まり、融解熱を外部から吸収する。逆に、液相にあるPCMの温度が降下し、凝固点に達すると、凝固が始まり、凝固熱を外部に放出する。このような熱の授受を利用している。
PCMとしては、例えば蓄熱材料であるノルマルパラフィンや無機水和塩を塩化カルシウム水和塩、多孔質シリカ等の多孔質材料である担持体に含浸させたものが用いられる。
【0034】
そして、蓄熱シート14の上に板材16が敷設されている。
この板材16は、厚さ12mm程度の捨て張り合板である。
【0035】
ここで、蓄冷熱床10と隣接する蓄冷床は、基礎5の上に台輪6を介して設置された床下地材として、厚さ120mm程度の床パネル21が採用されている。床パネル21は、縦横の框材21a及び補助桟材(図略)によって構成された枠体の上面に面材21cが貼設されて、その面材21cの下方で框材11a及び補助桟材の内方の空間部に断熱材22が充填されている。
この厚さ120mm程度と厚い床パネル21に隣接する床パネル11の端部の段さ部分に沿って、厚さ30mm程度の調整材17が配置されており、この調整材17に沿って高強度石膏ボード13、長尺材15及び板材16の端部が揃えられている。
これにより、捨て張り合板16、調整材17及び床パネル21の面材21cがフラットに連続している。
【0036】
そして、捨て張り合板16、調整材17及び床パネル21の面材21cの上に蓄冷層18が敷設されている。
【0037】
蓄冷層18は、潜熱蓄熱温度27℃付近に設定された第二PCMで形成されるもので、その第二PCMを樹脂に分散してシート状に形成された蓄冷シートにより形成されている。蓄冷シート18の厚さは、6mm程度である。
この蓄冷シート18は、
図4の居室1の床全面にわたって、捨て張り合板16、調整材17及び床パネル21の面材21cの上に敷設されている。
そして、蓄冷シート18の上に床仕上げ材19が敷設されている。
【0038】
床仕上げ材19は、厚さ6mm程度のフローリングである。
このフローリング19は、
図4の居室1の床全面にわたって、蓄冷シート18の上に敷設されている。
【0039】
図2は以上の蓄冷熱床10の蓄冷熱量−温度特性図で、図示のように、冬季と夏季の室温を蓄冷熱によって安定させ、冷暖房を極力使わずに年間を通して18〜29℃に室温を維持することが可能となる。
【0040】
以上、実施形態によれば、床パネル11の上に、第一PCMにより形成された蓄熱層を形成する蓄熱シート14が配置され、その蓄熱シート14の上方に、当該蓄熱シート14より潜熱蓄熱温度が高い第二PCMにより形成された蓄冷層を形成する蓄冷シート18が配置されている。
したがって、蓄冷シート18の第二PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を最初に受ける蓄冷シート18の第二PCMの潜熱蓄冷によって床10の温度を下げて蓄冷することができる。
【0041】
そして、蓄冷シート18の下方に、当該蓄冷シート18より潜熱蓄熱温度が低い第一PCMにより形成された蓄熱シート14が配置されている。
したがって、蓄熱シート14の第一PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、蓄冷シート18の下方に配置された蓄熱シート14の、自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わない液相状態の第一PCMも顕熱蓄冷材として利用できる。
【0042】
また、蓄熱シート14の第一PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が低い冬季の暖房時においては、その暖房の熱を最初に受ける蓄冷シート18の、自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わない固相の第二PCMも顕熱蓄熱材として利用でき、その蓄冷シート18の下方に配置された蓄熱シート14の第一PCMの潜熱蓄熱によって床10の温度を上げて蓄熱することができる。
以上により、冷暖房が必要な夏季・冬季期間に室温を安定させて、冷暖房の運転時間の短縮が図れる。
【0043】
さらに、蓄熱シート14とその上方に配置される蓄冷シート18との間に板材16が配置されているので、蓄冷シート18の上に敷設するフローリング19の荷重を、蓄冷シート18を介してその下の板材16で確実に受け止めることができる。
【0044】
しかも、潜熱蓄熱温度20℃付近に設定された蓄熱シート14なので、冬季の暖房時は20℃付近以下で、蓄熱シート14の第一PCMの潜熱蓄熱により蓄冷熱床10の温度を20℃付近に上げて維持することができる。
また、潜熱蓄熱温度27℃付近に設定された蓄冷シート18なので、夏季の冷房時は27℃付近以上で、蓄冷シート18の第二PCMの潜熱蓄冷により蓄冷熱床10を含む床全体の温度を27℃付近に下げて維持することができる。
【0045】
以上の結果、
図2に示した蓄冷熱床10の蓄冷熱量−温度特性図のように、冬季と夏季の室温を蓄冷熱によって安定させ、冷暖房を極力使わずに年間を通して18〜29℃に室温を維持することができる。
【0046】
すなわち、夏季の冷房時において、一般的に、冷気は下層に堆積すること、起居しているときに使用する冷房運転時間が短いことから、熱抵抗の小さい床表層側に、厚さ6mm程度と比較的薄い蓄冷シート18を配置して、室温を24〜29℃程度に安定させることができる。
また、冬季の暖房時においては、暖房運転時間が夏季の冷房運転時間よりも長いことから、床の蓄冷シート18の下層側に、厚さ7.2mm程度の蓄熱シート14を配置して、室温を18〜22℃程度に安定させることができる。
【0047】
そして、PCMを樹脂に分散してシート状に形成された、厚さ7.2mm程度の蓄熱シート14と、その蓄熱シート14より潜熱蓄熱温度が高いPCMを樹脂に分散してシート状に形成された、厚さ6mm程度の蓄冷シート18なので、ともに薄くて熱抵抗が少なく、蓄冷熱床10の厚みを薄く抑えることができる。
【0048】
また、蓄冷シート18の上に敷設されたフローリング19の荷重を、蓄冷シート18を介してその下の板材16で確実に受け止めることができる。
なお、蓄冷シート18とフローリング19は一体化していてもよい。すなわち、工場で蓄冷シート18とフローリング19を接着しておいたり、フローリング19自体に蓄冷シート18を一体成形してもよい。
【0049】
また、床パネル11の下に断熱材12が配置されているため、床パネル11の下方を断熱材12により断熱状態に保持して、冬季の暖房時において、床パネル11上の蓄熱シート14による蓄熱状態を維持することができて、夏季の冷房時における蓄冷シート18による床10の蓄冷状態を維持することができる。
【0050】
すなわち、室内とは反対側に断熱材12が設けられた床パネル11における面材11cの室内側に蓄熱板材(高強度石膏ボード)13と蓄熱シート14及び蓄冷シート18が設けられているため、室内側からの熱を受けて、いったん蓄熱板材13まで熱が伝われば、蓄熱板材13と蓄熱シート14及び蓄冷シート18の双方で蓄熱又は蓄冷することができるので、蓄熱シート14及び蓄冷シート18における室内側の狭い範囲のみが作用して蓄熱されるような事態が発生しにくくなる。そのため、蓄熱シート14及び蓄冷シート18の蓄熱・蓄冷効果を高めることができ、蓄熱・蓄冷効果を十分に発揮することが可能となる。
その結果、空調機の消費電力を低減することができ、省エネルギーや地球温暖化対策、ランニングコスト低減等に貢献できる。
【0051】
また、床パネル11における面材11cの室内とは反対側に断熱材12が設けられているので、この断熱材12によって、室内とは反対側からの冷気や暖気の影響を受けにくくなる。
さらに、放熱する際には、この断熱材12によって室内とは反対側に放熱されにくくなるため、蓄熱シート14及び蓄冷シート18と蓄熱板材13に蓄熱・蓄冷された熱をより多く室内側に放熱することができる。
【0052】
また、床パネル11における面材11cの室内側面に蓄熱板材13が取り付けられ、かつ、蓄熱シート14及び蓄冷シート18の室内側にフローリング19が位置しているので、蓄熱板材である高強度石膏ボード13を、フローリング19を固定するための固定下地として利用することが可能となる。
【0053】
また、蓄熱シート14が収納される部分は、高強度石膏ボード13の室内側面に取り付けられた複数の長尺材15によって囲まれるため、蓄熱シート14のための収納スペースを、高強度石膏ボード13と、複数の長尺材15と、フローリング19によって形成できる。これによって、蓄熱シート14の収納スペースを確保でき、かつ、蓄熱シート14の周囲を確実に囲んで保護することができる。
さらに、フローリング19は、長尺材15を介して高強度石膏ボード13に支持されているので、フローリング19を、高強度石膏ボード13から複数の長尺材15分の間隔を空けて支持することができる。これにより、蓄熱シート14のための収納スペースを確保しつつ、フローリング19を、長尺材15を介して高強度石膏ボード13に確実に固定することができる。
【0054】
また、床パネル11と床パネル21との厚みの差を利用して形成されたスペースに蓄熱板材13と蓄熱シート14が設けられているので、床パネル11と床パネル21との厚みの差によって生じる段差を有効利用することができる。
さらに、厚みのある床パネル21は、断熱材22を含んで構成されたものなので、高い断熱効果を得ることができる。さらに、このような床パネル21が、蓄熱効果の高い蓄冷熱床10の床パネル11と隣接して設けられているため、双方の床パネル11・21によって、室内温度の変化の緩和に貢献できることになる。
【0055】
また、床パネル11の面材11cは、建物躯体の床を構成する床下地材であるため、その床下地材である面材11cの室内側に、蓄熱・蓄冷効果を十分に発揮することが可能な蓄熱層14及び蓄冷層18を形成できる。これによって、室内温度の変化を緩和することができる。
【0056】
また、居室1の床の特定箇所Sに蓄熱シート14が敷設されているため、その蓄熱シート14のPCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が低い冬季の暖房時において、その暖房の熱を受ける蓄冷シート18の、自身の熱抵抗によって潜熱蓄熱を行わない固相の第二PCMも顕熱蓄熱として利用でき、その蓄冷シート18の下方に配置された蓄熱シート14の第一PCMの潜熱蓄熱によって、居室1の床の特定箇所Sのみ温度を上げて蓄熱することができる。
【0057】
そして、居室1の床の全面に蓄冷シート18が敷設されているので、その蓄冷シート18の第二PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を最初に受ける蓄冷シート18の第二PCMの潜熱蓄冷によって、居室1の床全面の温度を下げて蓄冷することができる。
【0058】
次に、
図3は蓄冷天井30を示すもので、蓄冷天井30は、居室1の全範囲Wにおいて、図示のように、天井下地材(高強度石膏ボード)31の下に、天井蓄冷層(天井蓄冷シート)35、天井仕上げ材(普通硬質石膏ボード)36を順に敷設して構成されている。
【0059】
すなわち、天井下地材で蓄熱板材を兼ねた高強度石膏ボード31は、前述した蓄冷床から連続している壁パネル41の面材42及び図略の芯材に固定した縦横の桟材32の下面に取り付けられている。縦横の桟材32の上に断熱材33が敷設されており、壁パネル41の面材42の外壁側には断熱材43が充填されており、45は梁材、47は外壁材である。高強度石膏ボード31の厚さは、12.5mm程度である。
この高強度石膏ボード31の下に天井蓄冷層35が敷設されている。
【0060】
天井蓄冷層35は、蓄冷熱床10の蓄冷シート18と同様に、潜熱蓄熱温度27℃付近に設定された第三PCMで形成されるもので、その第三PCMを樹脂に分散してシート状に形成された天井蓄冷シートにより形成されている。天井蓄冷シート35の厚さは、6mm程度である。
この天井蓄冷シート35は、
図4の居室1の天井全面にわたって、高強度石膏ボード31の下に重ねて敷設されている。
そして、天井蓄冷シート35の下に天井仕上げ材36が敷設されている。
【0061】
天井仕上げ材36は、厚さ9.5mm程度の普通硬質石膏ボードである。
この普通硬質石膏ボード36は、
図4の居室1の天井全面(全範囲W)にわたって、蓄冷シート35の下に重ねて敷設されている。
このように、準不燃仕様の蓄冷天井30となっている。
なお、蓄冷シート35と普通硬質石膏ボード36は一体化していてもよい。すなわち、工場で蓄冷シート35と普通硬質石膏ボード36を接着しておいたり、普通硬質石膏ボード36自体に蓄冷シート35を一体成形してもよい。
【0062】
以上、実施形態によれば、居室1の天井下地材31の下に、蓄冷熱床10の蓄熱シート14より潜熱蓄熱温度が高い第三PCMにより形成された天井蓄冷層を形成する天井蓄冷シート35が配置されている。
したがって、その天井蓄冷シート35を形成する第三PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を、天井蓄冷シート35の第三PCMの潜熱蓄冷によって居室1の天井の温度を下げて蓄冷することができる。
【0063】
その結果、床の蓄冷シート18及び天井蓄冷シート35の潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を受ける床蓄冷シート18及び天井蓄冷シート35の潜熱蓄冷によって居室1の床及び天井の温度をともに下げて蓄冷することができる。
以上により、冷房が必要な夏季期間に室温を安定させて、冷房の運転時間の短縮が図れる。
【0064】
しかも、蓄冷熱床10の蓄熱シート14より潜熱蓄熱温度が高い第三PCMを樹脂に分散してシート状に形成された、厚さ6mm程度の天井蓄冷シート35のため、天井蓄冷層は薄くて熱抵抗が少なく、蓄冷天井30の厚みを薄く抑えることができる。
【0065】
さらに、天井下地材31の全面に天井蓄冷シート35が敷設されているため、その天井蓄冷シート35の第三PCMの潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を受ける天井蓄冷シート35の第三PCMの潜熱蓄冷によって、居室1の天井全面の温度を下げて蓄冷することができる。
したがって、床の蓄冷シート18及び天井蓄冷シート35の潜熱蓄熱温度よりも気温が高い夏季の冷房時において、その冷房の熱を受ける床の蓄冷シート18及び天井蓄冷シート35の第一PCM及び第三PCMの顕熱蓄冷によって居室1の床全面及び天井全面の温度をともに下げて蓄冷することができる。
【0066】
また、天井下地材である高強度石膏ボード31を取り付ける縦横の桟材32の上に断熱材33が配置されているため、天井下地材(高強度石膏ボード)31の上方を断熱材33により断熱状態に保持して、夏季の冷房時において、天井蓄冷シート35による蓄冷天井30の蓄冷状態を維持することができる。
【0067】
すなわち、室内とは反対側に断熱材33が設けられた蓄冷天井30の室内側に蓄熱板材(高強度石膏ボード)31と天井蓄冷シート35が設けられているため、室内側からの熱を受けて、いったん蓄熱板材31まで熱が伝われば、蓄熱板材31と蓄冷シート35の双方で蓄冷することができるので、天井蓄冷シート35における室内側の狭い範囲のみが作用して蓄熱されるような事態が発生しにくくなる。そのため、天井蓄冷シート35の蓄冷効果を高めることができ、蓄冷効果を十分に発揮することが可能となる。
その結果、空調機の消費電力を低減することができ、省エネルギーや地球温暖化対策、ランニングコスト低減等に貢献できる。
【0068】
また、蓄冷天井30の室内とは反対側に断熱材33が設けられているので、この断熱材33によって、室内とは反対側からの暖気の影響を受けにくくなる。
さらに、放熱する際には、この断熱材33によって室内とは反対側に放熱されにくくなるため、天井蓄冷シート35と蓄熱板材31に蓄冷された熱をより多く室内側に放熱することができる。
【0069】
また、蓄冷天井30の室内側面に蓄熱板材31が取り付けられ、かつ、天井蓄冷シート35の室内側に普通硬質石膏ボード31が位置しているので、蓄熱板材である高強度石膏ボード31を、普通硬質石膏ボード31を固定するための固定下地として利用することが可能となる。
【0070】
(変形例)
以上の実施形態においては、床下地材を床パネル、天井下地材を天井パネルとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、床下地材及び天井下地材は板材であってもよい。
また、実施形態では、蓄冷層を床及び天井の全面(全範囲)に設けたが、少なくとも蓄熱層よりも広い範囲で設ければよく、蓄冷層を設ける範囲は床及び天井の全面に限らない。
さらに、蓄冷熱床及び蓄冷天井の各構成部材の厚さ寸法等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。