特許第6962865号(P6962865)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962865
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】自動運転車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/00 20060101AFI20211025BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20211025BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20211025BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20211025BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20211025BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20211025BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B60W30/00ZHV
   B60W50/14
   F16H61/02
   B60K6/48
   B60K6/54
   B60W20/15
   B60W10/06 900
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-103545(P2018-103545)
(22)【出願日】2018年5月30日
(65)【公開番号】特開2019-206300(P2019-206300A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】貞清 雅行
(72)【発明者】
【氏名】石川 尚
(72)【発明者】
【氏名】野口 智之
(72)【発明者】
【氏名】足立 崇
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6387157(JP,B1)
【文献】 国際公開第2018/179958(WO,A1)
【文献】 特開2018−077652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00
B60W 50/14
F16H 61/02
B60K 6/48
B60K 6/54
B60W 20/15
B60W 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車両を走行させるために用いられる走行用アクチュエータと、
災害情報を受信する通信部と、
前記通信部により災害情報が受信されると、前記自動運転車両を所定位置へ退避または避難するように前記走行用アクチュエータを制御する制御部と、を備え、
前記走行用アクチュエータは、走行駆動源の動力を車輪に伝達する動力伝達径路に配置された変速機の変速比を変更する変速用アクチュエータを含み、
前記制御部は、前記通信部により災害情報が受信されると、前記変速機の変速比が大きくなるように前記変速用アクチュエータを制御することを特徴とする自動運転車両。
【請求項2】
請求項1に記載の自動運転車両において、
前記自動運転車両は、前記走行駆動源としての内燃機関と電動機とを有するハイブリッド車両であり、
前記走行用アクチュエータは、前記内燃機関の起動用アクチュエータを含み、
前記制御部は、前記内燃機関が非起動状態であるときに、前記通信部により災害情報が受信されると、さらに前記内燃機関が起動するように前記起動用アクチュエータを制御することを特徴とする自動運転車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動運転車両において、
前記災害情報は、互いに種別の異なる第1災害情報と第2災害情報とを含み、
前記制御部は、前記通信部により前記第1災害情報が受信されると、前記自動運転車両が所定の避難場所へ移動するように前記走行用アクチュエータを制御する一方、前記通信部により前記第2災害情報が受信されると、前記自動運転車両が路肩へ停車するように前記走行用アクチュエータを制御することを特徴とする自動運転車両。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動運転車両において、
前記通信部により災害情報が受信されると、乗員に対し警報を報知する報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記報知部により警報が報知された後、乗員からのモード切換指令に応じて自動運転モードから手動運転モードに走行モードを切り換えることを特徴とする自動運転車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転が可能な自動運転車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地震等の災害の発生時に、自動運転によって車両を路肩に退避させるようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、災害情報が受信された後に、停車可能なスペースを有する路肩を検出し、検出した路肩に車両が停車するように自動運転モードで車両を走行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1:特開2010−20371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、災害発生時には、車両を速やかに退避または避難させることが好ましい。しかしながら、上記特許文献1記載の装置は、災害発生時に単に走行モードを自動運転モードに切り換えて車両を退避させるように構成するだけであり、上記特許文献1記載の装置では、車両を速やかに退避または避難させることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である自動運転車両は、自動運転車両を走行させるために用いられる走行用アクチュエータと、災害情報を受信する通信部と、通信部により災害情報が受信されると、自動運転車両を所定位置へ退避または避難するように走行用アクチュエータを制御する制御部と、を備える。走行用アクチュエータは、走行駆動源の動力を車輪に伝達する動力伝達径路に配置された変速機の変速比を変更する変速用アクチュエータを含み、制御部は、通信部により災害情報が受信されると、変速機の変速比が大きくなるように変速用アクチュエータを制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、災害発生時に車両を速やかに避難または退避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る自動運転車両の主に走行駆動系の構成を概略的に示す図。
図2】本発明の実施形態に係る自動運転車両の走行動作を制御する車両制御システムの全体構成を概略的に示すブロック図。
図3図2の記憶部に記憶されたシフトマップの一例を示す図。
図4】本発明の実施形態に係る車両制御システムの要部構成を示すブロック図。
図5図4のコントローラで実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図5を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る自動運転車両(以下、単に車両と呼ぶこともある)は、車両が災害情報を受信したときに、車両を自動運転により所定位置へ退避または避難可能に構成される。災害情報には、災害が発生したとの情報および災害が発生するおそれがあるとの情報が含まれる。災害には、地震、津波、竜巻、洪水、土砂崩れ等の自然災害の他、弾道ミサイルの落下等の各種緊急事態の発生情報が含まれる。
【0009】
図1は、本実施形態に係る自動運転車両100の走行駆動系の概略構成を示す図である。車両100は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。
【0010】
図1に示すように、車両100は、走行駆動源としてエンジン1およびモータジェネレータ2を有するハイブリッド車両として構成される。エンジン1およびモータジェネレータ2と車輪4との間の動力伝達径路には変速機3が配置される。エンジン1およびモータジェネレータ2の動力は、変速機3を介して車輪4に伝達され、これにより車両100が走行する。なお、モータジェネレータ2を省略して内燃機関車として車両100を構成することもでき、エンジン1を省略して電気自動車として車両100を構成することもできる。
【0011】
エンジン1は、スロットルバルブ1aを介して供給される吸入空気とインジェクタ1bから噴射される燃料とを適宜な割合で混合し、点火プラグ等により点火して燃焼させ、これにより回転動力を発生する内燃機関(例えばガソリンエンジン)である。なお、ガソリンエンジンに代えてディーゼルエンジン等、各種エンジンを用いることもできる。さらに車両100は、不図示のバッテリから供給される電力によって駆動するスタータモータ5を備え、スタータモータ5の駆動によりクランクシャフトを回転させ、エンジン1を始動することができる。モータジェネレータ2の動力によりエンジン1を始動するようにしてもよく、その場合にはスタータモータ5が不要である。
【0012】
モータジェネレータ2は、回転可能なロータと、ロータの周囲に配置されたステータとを有し、モータおよび発電機として機能することができる。すなわち、モータジェネレータ2のロータは、不図示の電力制御ユニットを介してバッテリからステータのコイルに供給される電力により駆動する。このとき、モータジェネレータ2はモータとして機能する。一方、モータジェネレータ2のロータの回転軸が外力により駆動されると、モータジェネレータ2は発電し、電力制御ユニットを介して電力がバッテリに蓄電される。このとき、モータジェネレータ2は発電機として機能する。
【0013】
変速機3は、エンジン1およびモータジェネレータ2から入力された回転を変速して出力するとともに、エンジン1およびモータジェネレータ2から入力されたトルクを変換して出力する。変速機3は、例えば複数の変速段に応じて変速比を段階的に変更可能な有段変速機である。なお、変速比を無段階に変更可能な無段変速機を、変速機3として用いることもできる。図示は省略するが、トルクコンバータを介してエンジン1からの動力を変速機3に入力してもよい。
【0014】
変速機3は、例えばドグクラッチや摩擦クラッチなどの係合機構3aを備える。油圧制御装置6は、電気信号により作動する制御弁(電磁弁や電磁比例弁など)を含む。制御弁6aはソレノイドに供給される電気信号に応じて駆動し、制御弁6aの駆動に応じて油圧制御装置6が油圧源から係合機構3aへの油の流れを制御することにより、変速機3の変速段を変更することができる。
【0015】
スロットルバルブ1aの開度、インジェクタ1bからの燃料の噴射量(噴射時期、噴射時間)、モータジェネレータ2の駆動、スタータモータ5の駆動、および制御弁6aの駆動は、車両100に搭載されたコントローラ20(図2)により制御される。
【0016】
図2は、車両100の走行動作を制御する車両制御システム200の全体構成を概略的に示すブロック図である。図2に示すように、車両制御システム200は、車両100に搭載された車載装置101と、ネットワーク201を介して車載装置101と通信可能なサーバ装置50とを有する。ネットワーク201には、インターネット網や携帯電話網等に代表される公衆無線通信網だけでなく、所定の管理地域ごとに設けられた閉鎖的な通信網、例えば無線LAN、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等も含まれる。
【0017】
サーバ装置50は、例えば単一のサーバとして、あるいは機能ごとに別々のサーバから構成される分散サーバとして構成される。クラウドサーバと呼ばれるクラウド環境に作られた分散型の仮想サーバとしてサーバ装置50を構成することもできる。サーバ装置50は、CPU,ROM,RAM、およびその他の周辺回路を有する演算処理装置を含んで構成され、機能的構成として、通信部51と、記憶部52と、災害通知部53とを有する。
【0018】
通信部51は、ネットワーク201を介し車載装置101と無線通信可能に構成されるとともに、無線または有線で各種の緊急情報(災害情報)を外部から受信可能に構成される。通信部51が受信する緊急情報には、災害情報共有システム(通称Lアラート)により配信される緊急情報、緊急警報放送システム(略称EWS)により配信される緊急警報信号、全国瞬時警報システム(通称J−ALERT)により配信される緊急情報、緊急情報ネットワークシステム(通称Em−Net)により配信される緊急情報などが含まれる。すなわち、自然災害情報と自然災害情報以外の情報とが含まれる。通信部51は、車載装置101との通信により車両100の位置情報も取得する。
【0019】
記憶部52は、災害が発生したと仮定したときの、当該災害の被害が及ぶ地域に位置する車両の避難場所および避難場所に到るまでの典型的なあるいは推奨する避難経路等を予め記憶する。避難場所は、自然災害の種類に対応付けて記憶される。例えば津波に対応する避難場所として、高台に位置する大型スーパーの駐車場などが記憶される。避難経路を記憶部52に記憶せずに、サーバ装置50のCPU(例えば図示しない経路演算部)で演算するようにしてもよい。
【0020】
災害通知部53は、通信部51が各種の緊急情報、すなわち災害情報を受信すると、通信部51を介して受信した車両100の位置情報に基づいて、災害情報を送信すべき車両100を特定する。つまり、退避や避難を要する地域に位置する車両100を特定する。そして、例えばテレマティクスを活用して、特定された車両100に災害情報を送信する。このとき、災害通知部53は、災害情報と車両100の位置情報とに基づき、記憶部52を参照して、避難を要する地域に位置する車両100の避難場所を決定する。そして、決定した避難場所を含む避難指令を、対応する車両100の車載装置101に、通信部51を介して送信する。送信する避難指令には、避難場所に到るまでの経路情報が含まれる。
【0021】
車載装置101の構成について説明する。車載装置101は、コントローラ20と、コントローラ20にそれぞれ電気的に接続された外部センサ群11と、内部センサ群12と、入出力装置13と、GPS受信機14と、地図データベース15と、ナビゲーション装置16と、通信ユニット17と、走行用アクチュエータACとを主に有する。
【0022】
外部センサ群11は、車両100の周辺情報である外部状況を検出する複数のセンサの総称である。例えば外部センサ群11には、車両100の全方位の照射光に対する散乱光を測定して車両100から周辺の障害物までの距離を測定するライダ、電磁波を照射し反射波を検出することで車両100の周辺の他車両や障害物等を検出するレーダ、車両100に搭載され、CCDやCMOS等の撮像素子を有して車両100の周辺(前方、後方および側方)を撮像するカメラなどが含まれる。
【0023】
内部センサ群12は、車両100の走行状態を検出する複数のセンサの総称である。例えば内部センサ群12には、車両100の車速を検出する車速センサ、車両100の前後方向の加速度および左右方向の加速度(横加速度)をそれぞれ検出する加速度センサ、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ、車両100の重心の鉛直軸回りの回転角速度を検出するヨーレートセンサ、スロットルバルブ1aの開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサなどが含まれる。手動運転モードでのドライバの運転操作、例えばアクセルペダルの操作、ブレーキペダルの操作、ステアリングの操作等を検出するセンサも内部センサ群12に含まれる。
【0024】
入出力装置13は、ドライバから指令が入力されたり、ドライバに対し情報が出力されたりする装置の総称である。例えば入出力装置13には、操作部材の操作によりドライバが各種指令を入力する各種スイッチ、ドライバが音声で指令を入力するマイク、ドライバに表示画像を介して情報を提供する表示部、ドライバに音声で情報を提供するスピーカなどが含まれる。各種スイッチには、自動運転モードおよび手動運転モードのいずれかを指令する手動自動切換スイッチが含まれる。
【0025】
手動自動切換スイッチは、例えばドライバが手動操作可能なスイッチとして構成され、スイッチ操作に応じて、自動運転機能を有効化した自動運転モードまたは自動運転機能を無効化した手動運転モードへの切換指令を出力する。手動自動切換スイッチの操作によらず、所定の走行条件が成立したときに、手動運転モードから自動運転モードへの切換、あるいは自動運転モードから手動運転モードへの切換が指令されるようにしてもよい。すなわち、手動自動切換スイッチが自動的に切り換わることで、モード切換が手動ではなく自動で行われるようにしてもよい。自動運転モードには、予め乗員が設定した目的地へ車両100を自動走行させる通常の自動運転モードと、災害情報を受信したときに目的地とは異なる所定位置へ速やかに車両を移動させる災害運転モードとが含まれる。
【0026】
GPS受信機(GPSセンサ)14は、複数のGPS衛星からの測位信号を受信し、これにより車両100の絶対位置(緯度、経度など)を測定する。測定された車両100の絶対位置は、通信ユニット17を介してサーバ装置50に送信される。
【0027】
地図データベース15は、ナビゲーション装置16に用いられる一般的な地図情報を記憶する装置であり、例えばハードディスクにより構成される。地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、交差点や分岐点の位置情報が含まれる。なお、地図データベース15に記憶される地図情報は、コントローラ20の記憶部22に記憶される高精度な地図情報とは異なる。
【0028】
ナビゲーション装置16は、ドライバにより入力された目的地までの道路上の目標経路を探索するとともに、目標経路に沿った案内を行う装置である。目的地の入力および目標経路に沿った案内は、入出力装置13を介して行われる。目標経路は、GPS受信機14により測定された車両100の現在位置と、地図データベース15に記憶された地図情報とに基づいて演算される。目的地は、サーバ装置50からの指令により自動的に設定することもでき、これにより災害時に車両100を避難場所に移動することができる。
【0029】
通信ユニット17は、ネットワーク201を介してサーバ装置50と通信し、サーバ装置50から災害情報等を受信する。通信ユニット17は、地図情報および交通情報などを定期的に、あるいは任意のタイミングで各種サーバ装置50から取得することもできる。取得した地図情報は、地図データベース15や記憶部22に出力され、地図情報が更新される。取得した交通情報には、渋滞情報や、信号が赤から青に変わるまでの残り時間等の信号情報が含まれる。
【0030】
走行用アクチュエータACは、車両100の走行動作に関する各種機器を作動するアクチュエータである。走行用アクチュエータACには、エンジン1のスロットルバルブ1aの開度(スロットル開度)を調整するスロットル用アクチュエータ、エンジン始動用のアクチュエータ(スタータモータ5)、モータジェネレータ2、変速機3の係合機構3aへの油の流れを制御して変速機3の変速段を変更する変速用アクチュエータ(制御弁6aのソレノイドなど)、制動装置を作動するブレーキ用アクチュエータ、およびステアリング装置を駆動する操舵用アクチュエータなどが含まれる。
【0031】
コントローラ20は、電子制御ユニット(ECU)により構成される。なお、エンジン制御用ECU、変速機制御用ECU等、機能の異なる複数のECUを別々に設けることができるが、図2では、便宜上、これらECUの集合としてコントローラ20が示される。コントローラ20は、CPU等の演算部21と、ROM,RAM,ハードディスク等の記憶部22と、インターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。
【0032】
記憶部22には、車線の中央位置の情報や車線位置の境界の情報等を含む高精度の詳細な地図情報が記憶される。より具体的には、地図情報として、道路情報、交通規制情報、住所情報、施設情報、電話番号情報等が記憶される。道路情報には、高速道路、有料道路、国道などの道路の種別を表す情報、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の3次元座標位置、車線のカーブの曲率、車線の合流ポイントおよび分岐ポイントの位置、道路標識等の情報が含まれる。交通規制情報には、工事等により車線の走行が制限または通行止めとされている情報などが含まれる。記憶部22には、変速動作の基準となるシフトマップ(変速線図)、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報も記憶される。
【0033】
演算部21は、自動走行に関する機能的構成として、自車位置認識部23と、外界認識部24と、行動計画生成部25と、走行制御部26とを有する。
【0034】
自車位置認識部23は、GPS受信機14で受信した車両100の位置情報および地図データベース15の地図情報に基づいて、地図上の車両100の位置(自車位置)を認識する。記憶部22に記憶された地図情報(建物の形状などの情報)と、外部センサ群11が検出した車両100の周辺情報とを用いて自車位置を認識してもよく、これにより自車位置を高精度に認識することができる。なお、道路上や道路脇の外部に設置されたセンサで自車位置を測定可能であるとき、そのセンサと通信ユニット17を介して通信することにより、自車位置を高精度に認識することもできる。
【0035】
外界認識部24は、ライダ、レーダ、カメラ等の外部センサ群11からの信号に基づいて車両100の周囲の外部状況を認識する。例えば車両100の周辺を走行する周辺車両(前方車両や後方車両)の位置や速度や加速度、車両100の周囲に停車または駐車している周辺車両の位置、および他の物体の位置や状態などを認識する。他の物体には、標識、信号機、道路の境界線や停止線、建物、ガードレール、電柱、看板、歩行者、自転車等が含まれる。他の物体の状態には、信号機の色(赤、青、黄)、歩行者や自転車の移動速度や向きなどが含まれる。
【0036】
行動計画生成部25は、例えばナビゲーション装置16で演算された目標経路と、自車位置認識部23で認識された自車位置と、外界認識部24で認識された外部状況とに基づいて、現時点から所定時間先までの車両100の走行軌道(目標軌道)を生成する。目標経路上に目標軌道の候補となる複数の軌道が存在するときには、行動計画生成部25は、その中から法令を順守し、かつ効率よく安全に走行する等の基準を満たす最適な軌道を選択し、選択した軌道を目標軌道とする。そして、行動計画生成部25は、生成した目標軌道に応じた行動計画を生成する。
【0037】
行動計画には、現時点から所定時間T(例えば5秒)先までの間に単位時間Δt(例えば0.1秒)毎に設定される走行計画データ、すなわち単位時間Δt毎の時刻に対応付けて設定される走行計画データが含まれる。走行計画データは、単位時間Δt毎の車両100の位置データと車両状態のデータとを含む。位置データは、例えば道路上の2次元座標位置を示す目標点のデータであり、車両状態のデータは、車速を表す車速データと車両100の向きを表す方向データなどである。走行計画は単位時間Δt毎に更新される。
【0038】
行動計画生成部25は、現時点から所定時間T先までの単位時間Δt毎の位置データを時刻順に接続することにより、目標軌道を生成する。このとき、目標軌道上の単位時間Δt毎の各目標点の車速(目標車速)に基づいて、単位時間Δt毎の加速度(目標加速度)を算出する。すなわち、行動計画生成部25は、目標車速と目標加速度とを算出する。なお、目標加速度を走行制御部26で算出するようにしてもよい。
【0039】
走行制御部26は、自動運転モードにおいて、行動計画生成部25で生成された目標軌道に沿って車両100が目標車速および目標加速度で走行するように走行用アクチュエータACを制御する。すなわち、単位時間Δt毎の目標点を車両100が通過するように、スロットル用アクチュエータ、モータジェネレータ2、変速用アクチュエータ、ブレーキ用アクチュエータ、および操舵用アクチュエータなどをそれぞれ制御する。
【0040】
変速用アクチュエータは、例えば予め定められたシフトマップに基づいて制御される。図3は、予め記憶部22(図2)に記憶されたシフトマップの一例を示す図である。図中、横軸は車速V、縦軸は要求駆動力Fである。なお、要求駆動力Fはアクセル開度(自動運転モードでは擬似的アクセル開度)またはスロットル開度に一対一で対応し、アクセル開度またはスロットル開度が大きくなるに従い要求駆動力Fは大きくなる。特性f1は、n+1段からn段へのダウンシフトに対応するダウンシフト線の一例であり、特性f2は、n段からn+1段へのアップシフトに対応するアップシフト線の一例である。
【0041】
図3に示すように、例えば作動点Q1からのダウンシフトに関し、要求駆動力Fが一定のまま車速Vが減少して、作動点Q1がダウンシフト線(特性f1)を超えると(矢印A)、変速機3がn+1段からn段へとダウンシフトする。車速Vが一定のまま要求駆動力Fが増加した場合も、作動点Q1がダウンシフト線を超えて、変速機3がダウンシフトする。
【0042】
一方、例えば作動点Q2からのアップシフトに関し、要求駆動力Fが一定のまま車速Vが増加して、作動点Q2がアップシフト線(特性f2)を越えると(矢印B)、変速機3はn段からn+1段へとアップシフトする。車速Vが一定のまま要求駆動力Fが減少した場合も、作動点Q2がアップシフト線を越えて変速機3がアップシフトする。なお、変速段が大きいほど(ハイ側であるほど)、ダウンシフト線およびアップシフト線は、高車速側にずらして設定される。
【0043】
本発明の実施形態に係る自動運転車両100は、災害情報を受信したときに自動運転により車両100を所定位置へ退避または避難可能に構成する車両制御装置を有する。図4は、車両制御装置60の要部構成を示すブロック図である。なお、車両制御装置60は、自動運転に係る構成、すなわち図2の車載装置101を有するが、図4では、図2の構成のうちの一部の図示を省略する。
【0044】
図4に示すように、コントローラ20には、通信ユニット17と、車速センサ12aと、手動自動切換スイッチ13aと、スピーカ13bと、制御弁6aと、スタータモータ5とが接続される。手動自動切換スイッチ13aは、手動運転モードと自動運転モードとを切り換えるスイッチであり、例えば運転席に設けられた手動運転選択用釦の操作により手動運転モードに切り換えられ、自動運転選択用釦の操作により自動運転モードに切り換えられる。車速センサ12aは、内部センサ群12の一部を構成する。手動自動切換スイッチ13aとスピーカ13bとは、入出力装置13の一部を構成する。コントローラ20は、機能的構成として、災害判定部27と、音声制御部28と、走行制御部26とを有する。
【0045】
災害判定部27は、通信ユニット17を介して受信した災害情報に基づいて災害情報の種類を判定する。すなわち、所定の避難場所に避難すべき災害情報(便宜上、これを避難災害情報と呼ぶ)であるか、それとも速やかに路肩に停車して車内から退避すべきか災害情報(便宜上、これを退避災害情報と呼ぶ)であるかを判定する。例えば受信した災害情報が津波警報、噴火警報、大雨警報であるときは、避難災害情報であると判定し、受信した災害情報が弾道ミサイルの発射警報や地震速報であるときは、退避災害情報と判定する。
【0046】
音声制御部28は、スピーカ13bに制御信号を出力し、通信ユニット17を介して受信した災害情報に対応した警報を、スピーカ13bから出力させる。このとき、音声制御部28は、手動自動切換スイッチ13aが操作されない限り所定時間後に災害運転モードに自動的に切り換わることを、併せてスピーカ13bから報知するようにしてもよい。
【0047】
走行制御部26は、通信ユニット17を介して災害情報を受信すると、制御弁6a(厳密には制御弁6aのソレノイド)に制御信号を出力し、変速機3をダウンシフトさせる。より具体的には、走行制御部26は、予め記憶部22に記憶された車速と駆動力との関係を表す変速段毎の走行性能曲線に基づいて、車速センサ12aにより検出された車速に対応した最小変速段を特定し、最小変速段を限度として所定段だけダウンシフトさせる。ダウンシフトの程度は現在の変速段と最小変速段との差に応じて決定する。例えば差が大きいほど、ダウンシフトの程度を大きくする。なお、例えば図3のシフトマップ上の作動点Q1の要求駆動力を所定量増加させ、あるいはダウンシフト線の特性f1を高車速側に所定量シフトさせることにより、ダウンシフトさせるようにしてもよい。変速機3をダウンシフトさせることで、走行駆動力を増加することができ、車両100の迅速な加減速が可能となる。
【0048】
通信ユニット17を介して災害情報を受信したとき、車両100がエンジン1を停止してモータジェネレータ2のみを駆動源として走行、すなわちEV走行している場合、走行制御部26はスタータモータ5に制御信号を出力し、エンジン1を始動させる。すなわち、エンジン1とモータジェネレータ2の双方を駆動源として車両100を走行、つまりハイブリッド走行させる。これにより、走行駆動力を増大することができる。
【0049】
さらに走行制御部26は、音声制御部28での処理によりスピーカ13bから警報が出力されてから所定時間内に手動自動切換スイッチ13aが操作されたか否か、すなわち自動運転選択用釦および手動運転選択用釦のいずれかが操作されたか否かを判定する。走行制御部26は、所定時間内に手動自動切換スイッチ13aが操作されない、すなわち自動運転選択用釦および手動運転選択用釦のいずれも操作されないと判定すると、走行モードを災害運転モードに切り換える。
【0050】
このとき、受信した災害情報が災害判定部27で避難災害情報であると判定されると、走行制御部26は、通信ユニット17が受信した避難場所、すなわち災害の種類に対応してサーバ装置50で決定された避難場所を、車両100の目的地として設定する。以降、走行制御部26は、この目的地に向けて車両100を自動運転で走行するように走行用アクチュエータAC(図2)を制御する。この場合、予め変速機3をダウンシフトしているため、車両100の走行駆動力を迅速に増加させることができ、車両100を速やかに避難場所まで移動することができる。
【0051】
一方、受信した災害情報が災害判定部27で退避災害情報であると判定されると、走行制御部26は、外部センサ群11(カメラなど)からの信号に基づいて退避可能な路肩を検出し、路肩に車両100を停車させる。この場合、予め変速機3をダウンシフトしているため、エンジンブレーキの作動により車両100を速やかに路肩に停車することができる。
【0052】
これに対し、スピーカ13bから警報を報知した後、所定時間内にドライバの手動自動切換スイッチ13aの操作により手動運転モードが選択されると、走行モードを手動運転モードに切り換える(手動運転モード時には手動運転モードを継続する)。この状態では、走行制御部26は、ドライバのアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリング等の操作に応じて走行用アクチュエータACを制御する。
【0053】
また、スピーカ13bから警報を報知した後、所定時間内にドライバの手動自動切換スイッチ13aの操作により自動運転モードが選択されると、走行モードを自動運転モードに切り換える(自動運転モード時には自動運転モードを継続する)。この状態では、走行制御部26は、ドライバが予め定めた目的地に向けて自動運転で車両が走行するように走行用アクチュエータACを制御する。
【0054】
図5は、予め定められたプログラムに従い図4のコントローラ20で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば手動自動切換スイッチ13aにより自動運転モードが選択されると開始され、所定周期で繰り返される。
【0055】
まず、ステップS1で、通信ユニット17を介して災害情報(緊急情報)を受信したか否かを判定する。ステップS1で否定されるとステップS2に進み、通常の自動運転モードによる自動運転を継続する。すなわち、この場合には、予め乗員が設定した目的地へ向けて車両100が自動走行するように走行用アクチュエータACに制御信号を出力する。一方、ステップS1で肯定されるとステップS3に進む。
【0056】
ステップS3では、車速センサ12aにより検出された車速に応じた最小変速段を特定した上で、制御弁6aに制御信号を出力し、現在の変速段と最小変速段との差に応じて変速機3をダウンシフトさせる。このとき、エンジン1が始動されていなければ、スタータモータ5に制御信号を出力し、エンジン1を始動させる。次いで、ステップS4で、スピーカ13bに制御信号を出力し、ステップS1で受信した災害情報に対応した警報を出力する。次いで、ステップS5で、手動自動切換スイッチ13aにより自動運転の選択操作がなされたか否か、すなわち自動運転選択用釦が操作されたか否かを判定する。ステップS5で肯定されるとステップS2に進み、否定されるとステップS6に進む。
【0057】
ステップS6では、手動自動切換スイッチ13aにより手動運転の選択操作がなされたか否か、すなわち手動運転選択用釦が操作されたか否かを判定する。ステップS6で肯定されるとステップS7に進み、走行モードを手動運転モードに切り換える。この場合、ドライバのアクセルペダルやブレーキペダル等の操作に応じて走行用アクチュエータACに制御信号を出力する。一方、ステップS6で否定されるとステップS8に進む。ステップS8では、ステップS4で警報が出力されてから、自動運転選択用釦および手動運転選択用釦のいずれも操作されずに所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS8で肯定されるとステップS9に進み、否定されるとステップS2に進む。
【0058】
ステップS9では、ステップS1で受信した災害情報が津波警報であるか否かを判定する。ステップS9で否定されるとステップS10に進み、ステップS1で受信した災害情報が噴火警報であるか否かを判定する。ステップS10で否定されるとステップS11に進み、ステップS1で受信した災害情報が大雨警報であるか否かを判定する。ステップS11で否定されるとステップS12に進み、ステップS1で受信した災害情報がミサイル発射の警報であるか否かを判定する。ステップS12で否定されるとステップS13に進み、ステップS1で受信した災害情報が地震速報であるか否かを判定する。ステップS13で否定されるとステップS2に進む。
【0059】
ステップS9、ステップS10、ステップS11のいずれかが肯定されると、すなわち災害情報が避難災害情報のときは、ステップS14に進む。ステップS14では、通信ユニット17が受信した避難場所、すなわち災害の種類に応じてサーバ装置50で決定された避難場所を、車両100の目的地として設定するとともに、その目的地に向けて車両100が走行するように走行用アクチュエータACを制御する。また、ステップS12、ステップS13のいずれかが肯定されると、すなわち災害情報が退避災害情報のときは、ステップS15に進む。ステップS15では、外部センサ群11からの信号に基づいて車両100を停車させることが可能な路肩を検出し、その路肩に車両100を停車させるように走行用アクチュエータACを制御する。
【0060】
本発明の実施形態に係る自動運転車両100の動作をより具体的に説明する。車両100が例えば自動運転モードでEV走行しているときに、通信ユニット17を介して災害情報を受信すると、変速機3がダウンシフトするするとともに、エンジン1が始動する(ステップS3)。さらに災害情報に対応した警報がスピーカ13bから出力される(ステップS4)。このとき、ドライバが所定時間以内に手動自動切換スイッチ13aの操作により手動運転モードを選択すると、走行モードが手動モードに切り換わる(ステップS7)。これにより車両100は、ドライバによるアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングハンドル等の操作に応じて走行する。手動運転モードで走行を開始するとき、予め変速機3がダウンシフトし、かつ、エンジン1が始動しているため(ステップS3)、ドライバによる操作による車両100の迅速な走行が可能である。
【0061】
警報がスピーカ13bから出力されてから所定時間以内に、ドライバが手動自動切換スイッチ13aの操作により自動運転モードを選択すると、自動運転モードが継続される(ステップS2)。これにより車両100は、予めドライバが設定した目的地に向けて自動運転による走行を継続する。この場合も、変速機3がダウンシフトし、かつエンジン1が始動しているため(ステップS3)、走行駆動力が大きく、車両100の迅速な走行が可能である。
【0062】
このように、警報が出力されてから所定時間以内に手動自動切換スイッチ13aが操作されると、スイッチ操作に対応した走行モード(手動運転モードまたは自動運転モード)で車両100が走行する。このため、緊急時であっても、ドライバの意思を反映した走行が可能である。
【0063】
一方、警報がスピーカ13bから出力されてから所定時間以内に、手動自動切換スイッチ13aが操作されないとき、走行モードが災害運転モードに切り換わる。このとき、災害情報が津波警報、噴火警報、大雨警報などの避難災害であれば、例えば高台などに速やかに避難することが好ましい。このため、サーバ装置50で定められた避難場所が車両100の目的地として設定され、車両はその避難場所に向けて自動運転で走行する(ステップS14)。災害運転モードの開始時には、変速機3がダウンシフトし、かつ、エンジン1が始動しているため(ステップS3)、走行駆動力を増加することができ、避難場所に向けて車両100を迅速に移動することができる。
【0064】
走行モードが避難運転モードに切り換わるとき、災害情報が弾道ミサイル発射の警報や地震速報などの退避災害であれば、車両100を直ちに安全な場所に停車して乗員が車両100から退避することが好ましい。あるいは、高速道路等においては停車した車内に留まることが好ましい。このため、車載装置101は路肩を検出し、検出した路肩に車両100を自動運転で停車させる(ステップS15)。この場合、変速機3がダウンシフトし、かつ、エンジン1が始動しているため(ステップS3)、エンジンブレーキが作動し、車両100を迅速に路肩に停車することができる。
【0065】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態に係る自動運転車両100は、車両100を走行させるために用いられる走行用アクチュエータACと、災害情報を受信する通信ユニット17と、通信ユニット17により災害情報が受信されると、車両100を避難場所や路肩などの所定位置へ退避または避難するように走行用アクチュエータACを制御するコントローラ20と、を備える(図2)。走行用アクチュエータACは、エンジン1およびモータジェネレータ2の動力を車輪4に伝達する動力伝達径路に配置された変速機3の変速比を変更する変速用アクチュエータ(制御弁6aなど)を含み、コントローラ20は、通信ユニット17により災害情報が受信されると、変速機3がダウンシフトするように変速用アクチュエータを制御する。
【0066】
これにより災害発生時に変速機3がダウンシフトするため、車両100の走行駆動力を増大することができる。したがって、車両100の加速性および減速性が向上し、緊急時に車両100を速やかに避難場所に避難または路肩などに退避することができる。
【0067】
(2)自動運転車両100は、エンジン1とモータジェネレータ2とを有するハイブリッド車両として構成される(図1)。走行用アクチュエータACは、エンジン1の起動用のスタータモータ5を含む(図1)。コントローラ20は、エンジン1が非起動状態であるときに、通信ユニット17により災害情報が受信されると、さらにエンジン1が起動するようにスタータモータ5を制御する。これによりエンジン1およびモータジェネレータ2を駆動源として車両100が走行するようになるため、災害発生時の車両100の走行駆動力が増大し、車両100を迅速に避難または退避することができる。
【0068】
(3)災害情報は、互いに種別の異なる避難災害情報と退避災害情報とを含む。コントローラ20は、通信ユニット17により避難災害情報が受信されると、所定の避難場所へ移動するように走行用アクチュエータACを制御する一方、通信ユニット17により退避災害情報が受信されると、路肩へ停車するように走行用アクチュエータACを制御する。このように災害の種別に応じて異なる目的地が設定されるため、災害の内容を考慮して乗員を安全な場所に避難または退避させることができる。
【0069】
(4)自動運転車両100は、通信ユニット17により災害情報が受信されると、乗員に対し警報を報知するスピーカ13bをさらに備える(図4)。コントローラ20は、スピーカ13bにより警報が報知された後、手動自動切換スイッチ13aの操作によるモード切換指令に応じて自動運転モードから手動運転モードに走行モードを切り換える。これにより災害発生時に乗員の操作により自動運転を解除することができ、乗員の意思を反映した車両100の走行が可能である。
【0070】
(5)コントローラ20は、スピーカ13bにより警報が報知されてから所定時間内に手動自動切換スイッチ13aを介してモード切換指令が出力されないとき、災害運転モードに自動的に移行する。換言すると、災害情報を受信すると、車両100は即座に移動できる状態で所定時間待機し(ステップS3)、ドライバに手動運転を選択するか自動運転を選択するかを判断する時間を与える。これにより、ドライバの意思に沿った運転が行われるようになり、ドライバにとっての満足感が高い。
【0071】
上記実施形態は種々の形態に変更することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、車両100をハイブリッド車両として構成し、通信部としての通信ユニット17が災害情報を受信したときに、変速機3をダウンシフトするだけでなく、エンジン1を非起動状態においてはエンジン1を起動するようにしたが、少なくとも変速比が大きくなるように変速用アクチュエータを制御するのであれば、制御部としてのコントローラ20の構成はいかなるものでもよい。上記実施形態では、ソレノイドへの通電に応じて駆動する制御弁6aを変速用アクチュエータとして用いたが、電動モータにより変速機構が駆動されるようにしてもよく、変速用アクチュエータの構成は上述したものに限らない。スタータモータ5以外によってエンジン1を起動するようにしてもよく、起動用アクチュエータの構成も上述したものに限らない。
【0072】
上記実施形態では、避難災害情報として津波警報、噴火警報、大雨警報のいずれかが受信されると、車両100を所定の避難場所に避難させるようにしたが、第1災害情報はこれに限らない。上記実施形態では、退避災害情報として弾道ミサイルの発射警報、地震速報のいずれかが受信されると、車両100を路肩等に停車させるようにしたが、第2災害情報はこれに限らない。上記実施形態では、通信ユニット17を介して災害情報が受信されると、スピーカ13bから警報を報知するようにしたが、ディスプレイに警報を表示するようにしてもよく、報知部の構成は上述したものに限らない。燃費性能を重視したエコモード、動力性能を重視したスポーツモード、動力性能と燃費性能を両立したノーマルモード等に走行モードを選択可能に自動車両を構成してもよい。この場合、災害情報が受信されると、走行モードをスポーツモードに変更するようにしてもよい。
【0073】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 エンジン、3 変速機、5 スタータモータ、6a 制御弁、13a 手動自動切換スイッチ、13b スピーカ、17 通信ユニット、20 コントローラ、26 走行制御部、100 自動運転車両、AC 走行用アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5