(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンなどの内燃機関の排気通路に取り付けられ、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)や酸素等の特定ガスの濃度に応じて出力が変化する検出素子を備えたガスセンサが知られている(例えば、特許文献1)。検出素子は、固体電解質体に一対の電極を設けたセルを少なくとも1つ以上有する構成をなし、特定ガスの濃度に応じてセルから出力される出力信号に基づき特定ガスの濃度を測定する。
【0003】
この検出素子は、ガスセンサを排気管に取り付けるための主体金具に保持される。また、検出素子の後端部側は主体金具よりも後方に突出され、主体金具の後端側に取り付けられる外筒によって取り囲まれる。検出素子の後端部には、出力を取り出すための複数の電極パッドが設けられており、電極パッドは、リード線と端子金具とを介して外部回路と電気的に接続される。外筒内にはさらに、絶縁セラミックからなるセパレータが配置される。複数の端子金具はセパレータの内部に収容され、互いに非接触の状態で維持される。
【0004】
さらに、セパレータと外筒との間には、自身の内部にセパレータを保持する筒状の保持部材が配置される。保持部材は、セパレータの外側面を取り囲む筒部と、筒部よりも後端側に位置し、周方向に間隔をあけて配置された複数の支持部と、複数の支持部の間に配置された内側延出部とを有する。複数の支持部は、セパレータに当接することでセパレータを軸線方向に支持する。詳細には、複数の支持部は、セパレータが軸線方向の先端側に移動することを規制している。また内側延出部は、セパレータの外側面と当接することで径方向にセパレータを挟持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の保持部材では、複数の支持部が全体的にしなることでセパレータを保持する力が逃げてしまう構造であったため、外部からの振動がセパレータに伝わった際にセパレータの軸線方向への移動を規制しきれずにセパレータががたつき、セパレータの内部に収容している端子金具とセパレータ内壁とが繰り返し接触して端子金具が疲労破壊する虞があった。その結果、検出素子と端子金具との電気的接続の信頼性が低下する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
本発明の一形態によれば、ガスセンサは、軸線方向に延び、特定ガスの濃度を検出するための検出素子と、前記検出素子の周囲を取り囲んで保持する主体金具と、前記主体金具の後端側に取り付けられた筒状の外筒と、一端側にリード線が接続されると共に、他端側にて前記検出素子と電気的に接続される端子金具と、前記外筒内に配置され、前記端子金具と前記検出素子とを内部に収容する筒状のセパレータと、前記セパレータと前記軸線方向に当接する保持部材と、を少なくとも備え、前記保持部材の先端向き面または後端向き面には、前記軸線方向に見て自身の厚み以上の長さの領域において、リブが周方向に亘って所定の間隔で複数設けられている。
【0009】
この形態のガスセンサによれば、保持部材の先端向き面または後端向き面にリブが周方向に亘って所定の間隔で複数設けられていることから、保持部材のセパレータとの当接箇所近傍の軸線方向における剛性が強化される。これにより、保持部材のしなりを抑制でき、セパレータのがたつきを防止することができる。
【0010】
本形態のガスセンサにおいて、前記リブは、高低差を有する凹凸形状であってもよい。
【0011】
この形態のガスセンサによれば、リブの剛性がより高まるため、好ましい。
【0012】
本形態のガスセンサにおいて、前記保持部材は、前記セパレータの外側面を取り囲む筒部と、前記筒部の後端に周方向に亘って接続され、径方向内側に向かって縮径するように湾曲する外側屈曲部と、前記外側屈曲部のうち前記径方向内側の端部に周方向に間隔をあけて接続され、前記径方向内側に向かって延びると共に、前記セパレータを前記軸線方向に支持する複数の支持部と、を有し、前記リブは、前記支持部に設けられていてもよい。
【0013】
この形態のガスセンサによれば、保持部材のうちセパレータを当接支持する支持部の軸線方向における剛性が強化されるため、好ましい。
【0014】
本形態のガスセンサにおいて、前記保持部材は、前記外側屈曲部のうち前記径方向内側の端部に接続されると共に、周方向に隣り合う2つの前記支持部の間に配置された内側延出部であって、前記軸線方向の先端側に向かって湾曲した内側屈曲部を有し、先端側端部が前記セパレータの前記外側面に当接することで前記径方向に前記セパレータを挟持する複数の内側延出部をさらに有してもよい。
【0015】
この形態のガスセンサによれば、内側延出部によってセパレータを径方向に挟持することができ、セパレータのがたつきをより防止することができるため好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態としてのガスセンサ1の断面図である。
図1において、ガスセンサ1の軸線O(1点鎖線で示す)に平行な軸線方向CDを上下方向として図示し、検出素子10の先端部11側をガスセンサ1の先端側AS、後端部12側をガスセンサ1の後端側BSとして説明する。
【0018】
図1において、ガスセンサ(全領域空燃比ガスセンサ)1は、センサ素子21と、軸線O方向に貫通してセンサ素子21を挿通させる貫通孔32を有するホルダ(セラミックホルダ)30と、セラミックホルダ30の径方向周囲を取り囲む主体金具11と、を備えている。
センサ素子21のうち、検知部22が形成された先端寄り部位が、セラミックホルダ30より先端に突出している。このように貫通孔32を通されたセンサ素子21は、セラミックホルダ30の後端面側(図示上側)に配置されたシール材(本例では滑石)41を、絶縁材からなるスリーブ43、リングワッシャ45を介して先後方向に圧縮することによって、主体金具11の内側において先後方向に気密を保持して固定されている。
なお、センサ素子21の後端29を含む後端29寄り部位はスリーブ43及び主体金具11より後方に突出しており、その後端29寄り部位に形成された各電極端子24に、シール材85を通して外部に引き出された各リード線66の先端に設けられた端子金具40が圧接され、電気的に接続されている。また、この電極端子24を含むセンサ素子21の後端29寄り部位は、外筒81でカバーされている。以下、さらに詳細に説明する。
【0019】
センサ素子21は軸線O方向に延びると共に、測定対象に向けられる先端側(図示下側)に、検知用電極等(図示せず)からなり被検出ガス中の特定ガス成分を検出する検知部22を備えた帯板状(板状)をなしている。センサ素子21の横断面は、先後において一定の大きさの長方形(矩形)をなし、セラミック(固体電解質等)を主体として細長いものとして形成されている。このセンサ素子21自体は、従来公知のものと同じものであり、固体電解質(部材)の先端寄り部位に検知部22をなす一対の検知用電極が配置され、これに連なり後端寄り部位には、検知用出力取り出し用のリード線66接続用の電極端子24が露出形成されている。また、本例では、センサ素子21のうち、固体電解質(部材)に積層状に形成されたセラミック材の先端寄り部位内部にヒータ(図示せず)が設けられており、後端寄り部位には、このヒータへの電圧印加用のリード線66接続用の電極端子24が露出形成されている。なお、図示はしないが、これら電極端子24は縦長矩形に形成され、例えばセンサ素子21の後端29寄り部位において、帯板の幅広面(両面)に3つ又は2つの電極端子が横に並んでいる。
なお、センサ素子21の検知部22に、アルミナ又はスピネル等からなる多孔質の保護層23が被覆されている。
【0020】
主体金具11は、先後において同心異径の筒状をなし、先端側が小径で、後述するプロテクタ51、61を外嵌して固定するための円筒状の円環状部(以下、円筒部ともいう)12を有し、その後方(図示上方)の外周面には、それより大径をなす、エンジンの排気管への固定用のネジ13が設けられている。そして、その後方には、このネジ13によってセンサ1をねじ込むための多角形部14を備えている。また、この多角形部14の後方には、ガスセンサ1の後方をカバーする保護筒(外筒)81を外嵌して溶接する円筒部15が連設され、その後方には外径がそれより小さく薄肉のカシメ用円筒部16を備えている。なお、このカシメ用円筒部16は、
図1では、カシメ後のために内側に曲げられている。なお、多角形部14の下面には、ねじ込み時におけるシール用のガスケット19が取着されている。
一方、主体金具11は、軸線O方向に貫通する内孔18を有している。内孔18の内周面は後端側から先端側に向かって径方向内側に先細るテーパ状の段部17を有している。
【0021】
主体金具11の内側には、絶縁性セラミック(例えばアルミナ)からなり、概略短円筒状に形成されたセラミックホルダ30が配置されている。セラミックホルダ30は、先端に向かって先細りのテーパ状に形成された先端向き面30aを有している。そして、先端向き面30aの外周寄りの部位が段部17に係止されつつ、セラミックホルダ30が後端側からシール材41で押圧されることで主体金具11内にセラミックホルダ30が位置決めされ、かつ隙間嵌めされている。
一方、貫通孔32は、セラミックホルダ30の中心に設けられると共に、センサ素子21が略隙間なく通るように、センサ素子21の横断面とほぼ同一の寸法の矩形の開口とされている。
【0022】
センサ素子21は、セラミックホルダ30の貫通孔32に通され、センサ素子21の先端をセラミックホルダ30及び主体金具11の先端12aよりも先方に突出させている。
一方、センサ素子21の先端部位は、本形態では、2層構造からなり、共にそれぞれ通気孔(穴)56、67を有する有底円筒状のプロテクタ(保護カバー)51,61で覆われている。このうち内側のプロテクタ51の後端が、主体金具11の円筒部12に外嵌され、溶接されている。なお、通気孔56はプロテクタ51の後端側で周方向において例えば8箇所設けられている。一方プロテクタ51の先端側にも、周方向において例えば4箇所、排出穴53が設けられている。
また、外側のプロテクタ61は、内側のプロテクタ51に外嵌して、同時に円筒部12に溶接されている。外側のプロテクタ61の通気孔67は、先端寄り部位に、周方向において例えば8箇所設けられており、また、外側のプロテクタ61先端の底部中央にも排出孔69が設けられている。
【0023】
又、
図1に示すように、センサ素子21の後端29寄り部位に形成された各電極端子24には、外部にシール材85を通して引き出された各リード線66の先端に設けられた各端子金具40がそのバネ性により圧接され、電気的に接続されている。そして、この圧接部を含む各端子金具40は、外筒81内に配置された絶縁性のセパレータ90内に設けられた各収容部内にそれぞれ対向配置で設けられている。なお、セパレータ90は、外筒81内にカシメ固定された保持部材70を介して径方向及び先端側への動きが規制されている。そして、この外筒81の先端部を、主体金具11の後端寄り部位の円筒部15に外嵌して溶接することで、ガスセンサ1の後方が気密状にカバーされている。
なお、リード線66は外筒81の後端部の内側に配置されたシール材(例えばゴム)85を通されて外部に引き出されており、この小径筒部83を縮径カシメしてこのシール材85を圧縮することにより、この部位の気密が保持されている。
【0024】
因みに、外筒81の軸線O方向の中央よりやや後端側には、先端側が径大の段部81dが形成され、この段部81dの内面がセパレータ90の後端を先方に押すように支持する。一方、セパレータ90はその外周に形成されたフランジ93を外筒81の内側に固定された保持部材70の上に支持させられており、段部81dと保持部材70とによってセパレータ90が軸線O方向に保持されている。
【0025】
図2は、保持部材70によってセパレータ90が支持された状態の図である。
図3は、保持部材70の断面図である。
図4は、保持部材70の上面図である。
図5は、
図4のF4a−F4a断面図である。
図6は、
図4のF4b−F4b断面図である。
図2,3,5,6は、筒部71が外筒80の加締めに対応して変形する前の状態を示している。また、
図2,3,5,6には、保持部材70の径方向RDを矢印によって図示している。
図4には、保持部材70をガスセンサ1に組み付けた場合にセパレータ90の外側面92が配置される位置を、二点鎖線で示す。さらに、
図5,6においては、セパレータ90の内部の詳細な構造を省略する。
【0026】
図2に示すように、セパレータ90は、筒状の保持部材70内に挿通されている。セパレータ90のうち後端側部分は保持部材70よりも後端側BSに突出し、先端側部分は保持部材70の先端開口75から先端側ASに突出している。
【0027】
図3及び
図4に示すように、保持部材70は、筒部71と、外側屈曲部72と、複数の支持部76と、複数の内側延出部73とを備える。筒部71は、
図2に示すように、セパレータ90の外側面92を取り囲むように配置されている。
図3に示すように、外側屈曲部72は、筒部71の後端に接続され、径方向RD内側に向かって縮径するように湾曲する。詳細には、外側屈曲部72は、上側に凸を形成するように(すなわち、先端側ASに円弧の中心が位置するように)湾曲する。外側屈曲部72は、筒部71の後端に周方向に亘って接続されている。
【0028】
図3に示すように、支持部76は、外側屈曲部72のうち径方向RD内側の端部72eから径方向RD内側に向かって延びる。第1実施形態では、支持部76は、径方向RDに平行な方向に延びる。
図4に示すように、支持部76は、周方向に亘って間隔をあけて複数(本実施形態では、6つ)設けられている。また、支持部76のそれぞれには、端部79から径方向RD外側に向かって延びるリブ76aが設けられている。即ち、リブ76aは、周方向に亘って間隔をあけて複数(本実施形態では、6つ)設けられている。リブ76aは軸線方向に高低差を有する凹凸形状をなしている。
図5に示すように、支持部76のうち径方向RD内側の端部79は、テーパ部94と当接することで、セパレータ90を軸線方向CDに支持する。具体的には、端部79とテーパ部94とが当接することで、セパレータ90が先端側ASに移動することを規制する。ここで、セパレータ90から各端部79が受ける先端側AS方向の力を力F1とする。また、筒部71と、セパレータ90と支持部76との当接位置(端部79)との径方向RDに沿った最大長さを最大長さLAとし、支持部76のうちリブ76aが形成された領域の径方向RDに沿った長さを長さL76とする。なお、第1実施形態では、
図1に示すように、筒部71の中央部のみが加締めによって変形しているだけであり、筒部71の後端部付近は加締めによる変形が生じていないため、最大長さLAは、変形前の筒部71の外側面と支持部76の端部79との長さに相当する。
【0029】
図4に示すように、本実施例では支持部76におけるリブ76aが形成された領域の径方向RDに沿った長さL76は、保持部材の厚みよりも長い。具体的には、支持部76におけるリブ76aが形成された領域は、保持部材の筒部71の外周面から内周面にかけての長さLBよりも長い。このような長さの領域に亘ってリブ76aを支持部76に形成することで、支持部76の剛性が強化される。これにより、セパレータ90が先端側ASに移動することを規制する効果が増大し、セパレータ90のがたつきを防止することができる。
【0030】
図4に示すように、内側延出部73は、周方向に隣り合う2つの支持部76の間に配置されている。本実施形態では、内側延出部73は、6つ設けられている。
図3に示すように、内側延出部73は、内側屈曲部73aと、内側ストレート部73bと、内側当接部73cとを有する。内側屈曲部73aは、端部73eに接続され、先端側ASに向かって湾曲する。詳細には、内側屈曲部73aは、上側に凸を形成するように(すなわち、先端側ASに円弧の中心が位置するように)湾曲する。内側ストレート部73bは、内側屈曲部73aの径方向RD内側の端部から先端側ASに延びる部材である。内側ストレート部73bは平板状である。内側当接部73cは、内側ストレート部73bの先端側AS端部から径方向RD内側に延びる部材である。内側ストレート部73b及び内側当接部73cは、径方向RDに弾性変形可能なように構成されている。
図6に示すように、円弧状の先端側端部78が弧全体に亘って外側面92と当触する。また、外側面92が筒部71内に挿通された状態では、外側面92から径方向RDに力F2を受けることで、内側延出部73(つまり、内側当接部73c)は自由状態に比べて径方向RD外側に弾性変形している。これにより、複数の内側当接部73cによって径方向RD内側にセパレータ90が挟持されるため、セパレータ90が径方向RDにおいてある程度位置決めされる。
【0031】
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
上記実施形態では、自動車の排気管内を流通する排気ガス中の酸素の有無を検出するガスセンサについて説明したが、これに限定されるものではなく、他の気体中の特定のガス(例えば、NOx)を検出するための各種ガスセンサに本実施形態は適用可能である。
【0032】
本実施形態では、リブ76aが形成された領域の径方向RDに沿った長さL76は、筒部71と端部79との径方向RDに沿った最大長さLAの約50%の長さであったが、これ以上の長さであっても良く、最大長さLAと同値であってもよい。即ち、LB≦L76≦LAを満たすことで、本発明の効果を奏することができる。
【0033】
また、本実施形態では、リブ76aは高低差を有する凹凸形状をなしていたが、これに限られず、支持部76の先端向き面または後端向き面において、凹部または凸部が形成されていてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、リブ76aは形成領域の全面に渡って一様の凹部と、それに対応する凸部が形成されていたが、これに限られず、長さLBよりも短い凹部または凸部が支持部76のリブ形成領域の全面に渡って複数形成されていてもよい。左記態様は、例えばローレット加工やエンボス加工を施すことで達成可能である。