【実施例1】
【0018】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0019】
図1は、加湿装置の外観斜視図である。加湿装置の本体1の上面には、加湿装置の動作を指示するための多数のスイッチが設けられた操作部2、室内の湿度を表示する湿度表示部3、加湿空気を吹き出す吹出口4が設けられている。また、加湿空気を発生させる加湿手段10に水を供給する水タンク7が本体1に着脱自在に設けられる。
【0020】
図2は、加湿装置の縦断面構成図である。本体1の背面には室内の空気を本体1に取り入れるための吸込口5が設けられ、さらに吸込口5の上部には後述する湿度センサ16に連通する通気口6が形成されている。また、本体1内の底部には水タンク7から水が供給されて一定量の水を貯える水槽部8と、この水槽部8内に吸水性を有する気化フィルタ9が配置されていて、水槽部8と気化フィルタ9により加湿空気を発生させる加湿手段10が構成される。気化フィルタ9は一部が水槽部8内の水に浸漬されており、この水を吸い上げることにより湿潤している。
【0021】
そして、気化フィルタ9の上部にはモータ11とシロッコファン12からなる送風機13が設けられており、この送風機13の駆動により吸込口5から吹出口4にいたる送風経路に送風が行われる。また、送風経路中の気化フィルタ9の上流には、吸込口5から導入された空気を加熱して温風とするための温風用ヒータ14が設けられている。
【0022】
送風機13が駆動されると、シロッコファン12が回転することにより室内の空気が吸込口5から取り込まれ、取り込まれた空気は温風用ヒータ14を通過する間に温風となって、さらに温風は気化フィルタ9を通過することで加湿空気となり、加湿空気が吹出口4より室内に放出される。
【0023】
さらに、送風機13の上部には、加湿装置の動作を制御するための後述する制御部30を備えた制御基板15が設けられ、この制御基板15には種々の電子部品や、吸込口5から取り入れられた室内空気の湿度を検知する湿度センサ16が配置されている。
【0024】
図3は加湿装置の構成を示すブロック図である。マイクロコンピュータからなる制御部30は、湿度センサ16、操作部2に設けられた各種スイッチ(運転スイッチ21、湿度設定スイッチ22、運転切換スイッチ23など)からの入力を受け、湿度表示部3、送風機13、温風用ヒータ14への制御信号を出力し、加湿運転を制御する。
【0025】
また、制御部30は、湿度センサ16が検知した湿度を取得する湿度取得部31、湿度センサ16が検知した湿度から補正湿度を演算する補正値演算部32、湿度表示部3に表示する湿度の表示態様を判定する表示態様判定部33、表示態様判定部33の判定結果と補正値演算部32で演算された補正湿度をもとに、湿度表示部3の表示を制御する湿度表示制御部34、時間を計測する計時部35、湿度センサ16が検知した検知湿度と、湿度設定スイッチ22で入力された設定湿度と、運転切換スイッチ23で入力された運転モードとから加湿量を決定する加湿量制御部36、加湿量制御部36の指示に基づき送風機13に制御信号を送る送風機制御部37と、温風用ヒータ14に制御信号を送る温風用ヒータ制御部38、とを含んで構成される。なお、図の構成は本実施形態にかかる加湿装置の一実施例であって、図示される以外のその他の構成要素を含んでいても構わない。
【0026】
次に、上述のように構成される加湿装置の加湿運転について説明する。運転スイッチ21を操作して運転開始の指示を行い、さらに湿度設定スイッチ22で目標とする湿度を選択すると送風機13が駆動される。送風機13が駆動することで、室内の空気は吸込口5から本体1内に取り入れられ、取り入れられた空気は気化フィルタ9を通過する際に加湿空気となって吹出口4から排出される。また、送風機13が駆動してシロッコファン12が回転することにより本体1内が負圧となることから、制御基板15に設けられた湿度センサ16周辺には通気口6から室内の空気が取り込まれて、湿度センサ16は室内の湿度を検知して制御部30に信号を送る。
【0027】
このようにして加湿運転が開始されると、制御部30は湿度設定スイッチ22により設定された設定湿度と、湿度センサ16が検知した検知湿度の差を算出し、送風機13の回転数および温風用ヒータ14への通電率を制御して設定湿度に近づけるよう加湿量を調節する。例えば、検知湿度が設定湿度より小さく、その差が大きい場合には、送風機13の回転数と温風用ヒータ14への通電率を最大にして設定湿度に早く近づけるように加湿運転を行う。その後、検知湿度が設定湿度に対して所定値以上となるか、または設定湿度以上を一定時間維持すれば検知湿度が安定領域に入ったと判定し、送風機13の回転数と温風用ヒータ14への通電率を制限する。そして、湿度表示部3には、湿度センサ16が検知した湿度が表示される
【0028】
ところで、この種の加湿装置は構造上、運転を開始した直後(送風機の能力にもよるが、数十秒〜数分間)は実際の室内湿度と湿度センサ16の検知値との間に差異が発生してしまうことがあり、この間は湿度表示部3に正確な湿度を表示することができなくなってしまうおそれがある。
【0029】
つまり、運転を停止していても、加湿手段10(水槽部8や気化フィルタ9)からは少しずつ水が蒸発している。運転停止中は送風機13の回転も停止しているため水の蒸発量はわずかではあるが、本体1内に室内の空気が導入されないため、本体1内は蒸発した水蒸気がこもった状態となってしまう。そして、本体1にこもった水蒸気の一部は湿度センサ16付近で滞留して、湿度センサ16の検知する湿度に影響を及ぼし、本来検知すべき湿度より高い値となってしまうため、正確な室内湿度を表示することができなくなる。そこで、このような湿度表示の不具合を解消するため、次に説明する湿度表示制御を行う。
【0030】
まず、運転開始から所定時間(例えば30秒間)は、湿度表示部3に湿度を表示しない表示マスク制御を実行する。表示マスク制御の実行中は、加湿装置の運転状態を表示するためのランプ、例えば運転ランプ、設定湿度ランプ、運転モードランプなど(いずれも図示せず)を点灯させて運転が開始されたことを表示するが、湿度表示部3には湿度センサ16が検知した湿度は表示しない。つまり、運転開始から30秒の間は、正確な湿度を検知することができないため、湿度の表示は行わない。このとき、湿度表示部3は消灯させてもよいし、表示をマスクしていることがわかるような特殊な表示を行ってもよい。
【0031】
この表示マスク制御の実行中に、制御部30は複数回湿度センサ16の検知湿度を取得する。そして、取得した湿度に基づいて、表示マスク制御の終了後に、湿度表示部3に補正した湿度を表示する補正湿度表示制御を実行するかを決定する。
【0032】
運転が停止していたことで、湿度センサ16の周辺に加湿手段10から蒸発した水蒸気が滞留している場合、運転を開始した直後はこの水蒸気により、実際の室内湿度よりも湿度センサ16が検知する湿度が高くなることがある。しかしこの場合でも、送風機13の回転により室内空気が本体1に流入しはじめると湿度センサ16付近の水蒸気はこの気流により排出され、徐々に湿度センサ16の検知湿度が低下して本来の湿度に近い値が検知されるようになる。また、これと同時に加湿によって室内空気の湿度が上昇するため、ある時点からは湿度センサ16が検知する湿度が上昇する。つまり、湿度センサ16の値が下降しているときは、湿度センサ16の検知湿度は本来よりも高い値を示し、一方で湿度センサ16の値が上昇しているときは正しい値を示しているといえる。したがって、表示マスク制御の実行中に複数回取得した湿度から、湿度センサ16の検知する湿度が低下しているか上昇しているかを判定することで、運転開始から短時間で、検知湿度に補正が必要かを判断することができる。
【0033】
そして、湿度が下降していれば、表示マスク制御終了後には、湿度を補正して表示する補正湿度表示制御を実行し、湿度が上昇していれば補正湿度表示制御は不要であるから表示マスク制御終了後は直ちに検知湿度を表示する。これにより、運転開始から短時間で湿度表示部3に的確な湿度を表示することができる。
【0034】
図4は、上述の湿度表示制御の詳細を説明するフローチャートである。制御部30は、運転スイッチ21が操作されて、運転開始が指示されたことを検知すると(ステップ1)、表示マスク制御(ステップ2〜ステップ8)を実行する。表示マスク制御の実行中は、運転状態を表示するためのランプを点灯させて運転が開始されたことを表示するが、湿度表示部3には湿度センサ16が検知した湿度は表示しない。また、ステップ2で表示マスク制御が開始されると同時に、計時部35では時間の計時を開始する。
【0035】
次に、計時部35が計時する時間が所定の第1時間(例えば10秒)経過したかを判定する(ステップ3)。第1時間が経過した場合には、湿度取得部31は湿度センサ16の検知した湿度を取得し、取得した湿度は第1の湿度として記憶される(ステップ4)。また計時部35は、ステップ4の後も計時を継続しており、その後、運転開始から所定の第2時間(例えば29秒)が経過したかを判定する(ステップ5)。第2時間が経過した場合には、湿度取得部31は湿度センサ16の検知した湿度を取得し、取得した湿度は第2の湿度として記憶される(ステップ6)。
【0036】
そして、計時部35はさらに計時を継続し、運転開始からの時間が表示マスク時間(例えば30秒)経過したかを判定し(ステップ7)、表示マスク時間が経過した場合には、表示マスク制御を終了する(ステップ8)。また、表示マスク制御の終了とともに計時部35の動作も停止し、計時した時間をリセットする。
【0037】
このように、表示マスク制御では、湿度表示部3に湿度を表示しない状態を維持するとともに、複数回(本実施形態では2回)湿度センサ16の検知した湿度を取得する。そして、ここで取得した湿度に基づいて、表示マスク制御の終了後に、湿度表示部3に補正した湿度を表示する補正湿度表示制御を実行するかを決定する。
【0038】
ステップ8で表示マスク制御が終了すると、表示態様判定部33では、表示マスク制御中に取得した第1の湿度と第2の湿度の大小を比較し、湿度表示部3に表示する湿度の表示態様を判定する(ステップ9)。
【0039】
第1の湿度と第2の湿度を比較したとき、湿度センサ16の値が下降している場合(第2の湿度が低い場合)、湿度センサ16は未だ滞留する水蒸気を含んだ空気の湿度を検知しており、一方で湿度センサ16の値が上昇しているとき(第2の湿度が高い場合)は、湿度センサ16は加湿によって上昇した室内空気の湿度を検知しているといえる。よって、第1の湿度と第2の湿度の大小を比較することで、湿度表示部3に表示する湿度の補正が必要であるかを判断することができる。
【0040】
第1の湿度より第2の湿度が低い場合(ステップ9で判定Yes)、表示する湿度に補正が必要であると判断し、補正湿度表示制御(ステップ10〜ステップ19)を実行する。この補正湿度表示制御には、第1補正表示制御(ステップ10〜ステップ14)と第2補正表示制御(ステップ15〜ステップ19)が含まれる。
【0041】
一方、第1の湿度より第2の湿度が高い場合(ステップ9で判定No)、湿度センサ16は室内空気の湿度を正しく検知しており、表示する湿度に補正は不要であると判断し、湿度表示部3には湿度センサ16が検知した湿度を表示する(ステップ21)。
【0042】
第1補正表示制御では、湿度表示部3には、表示マスク制御の実行中に取得した湿度に基づいて決定された湿度を表示する。具体的には、ステップ10で第1補正表示制御が開始されると、補正値演算部32は、第1湿度と第2湿度の値から補正湿度を演算し(ステップ11)、湿度表示制御部34はこの補正湿度を湿度表示部3に表示させる(ステップ12)。また、計時部35では第1補正表示制御の開始とともに、計時を開始する。
【0043】
そして、計時部35が計時する時間が所定の第3時間(例えば30秒)経過したかを判定し(ステップ13)、第3時間が経過したと判断すると、第1補正表示制御を終了する(ステップ14)。なお、第1補正表示制御では表示湿度の更新は行わず、ステップ11で決定した補正値を表示し続ける。第1補正表示制御が終了すると、次に第2補正表示制御を開始する(ステップ15)。
【0044】
第2補正表示制御では、湿度表示部3には、第1補正表示制御で表示した補正値、すなわちステップ11で決定した補正値と、第2補正表示制御を開始した後に検知した湿度とに基づいて決定された湿度を表示する。また、この第2補正表示制御では、所定の間隔で湿度センサ16の検知した湿度を取得し、取得した湿度から移動平均値を算出して補正湿度として表示することができる。
【0045】
ステップ15で第2補正表示制御が開始されると、補正値演算部32は、ステップ11で決定した補正湿度と、2秒間隔で取得した湿度とから移動平均を演算し(ステップ16)、湿度表示制御部34はこの補正湿度を更新して湿度表示部3に表示させる(ステップ17)。これを複数回繰り返し(ステップ18)、規定回数(例えば8回)に達した場合に第2補正表示制御を終了する(ステップ19)。もし、第1補正表示制御で表示した湿度と実際の湿度との間に差があったとしても、この第2補正表示制御を行うことで、表示湿度を徐々に実際の湿度に近づけることができる。
【0046】
第2補正表示制御が終了すると、補正湿度表示制御は終了となり、以降は湿度センサ16の検知した湿度を湿度表示部に表示する(ステップ20)。
【0047】
このように、表示マスク制御の実行中に複数回湿度を取得し、この取得した湿度に基づき、表示マスク制御が終了した後に表示する湿度に補正が必要かを判断するようにしたので、運転開始から短時間で湿度表示部3に的確な湿度を表示することができる。
【0048】
図5(A)と
図5(B)は、上述の湿度表示制御に基づき、湿度センサ16が検知した湿度と、湿度表示部3に表示する湿度を表したグラフである。湿度センサ16が検知した湿度を一点鎖線、湿度表示部3に表示する湿度を太実線で表している。
【0049】
湿度運転開始から10秒経過時の湿度H1(第1の湿度)と、29秒経過時の湿度H2(第2の湿度)を比較すると、
図5(A)ではH1>H2のため、表示マスク時間の終了後、補正湿度表示制御(第1補正表示制御、第2補正表示制御)が実行され、湿度表示部3には補正湿度が表示される。そして補正湿度表示制御が終了すると、湿度センサ16が検知した湿度が表示される。他方、
図5(B)では、H1<H2であるから補正湿度表示制御は実行されず、表示マスク時間が終了した後は、直ちに湿度センサ16が検知した湿度が表示される。
【実施例2】
【0050】
次に、その他の実施例について
図6を用いて説明する。
図6は、加湿装置の湿度表示制御を説明するフローチャートである。このフローチャートは、表示マスク制御の実行中に、運転停止が指示されたかを判定するステップを備えており、この点が
図4に示す制御と異なる。そのため、
図4と同じ動作をするステップについては同じ番号を付し、詳しい説明は省略する。
【0051】
運転開始が指示されて、表示マスク制御が開始されると、運転開始からの時間が計時されるが、これと並行して運転停止が指示されたかを判定する(ステップ31、ステップ32)。
【0052】
運転開始から第1時間が経過する前に運転停止が指示された場合は(ステップ31でYes)、スタートに戻り、ステップ1で運転が再開されるのを待つ。そして、運転が開始されたことを検知すると、表示マスク制御が実行される。つまり、運転開始から第1時間が経過する前に運転停止の指示があった場合は、それまでに計時した時間はリセットされ、次に運転開始時の指示があったときには、表示マスク制御が最初から実行される。
【0053】
また、運転開始から第1時間が経過した後、第2時間が経過する前に運転停止が指示された場合は(ステップ32でYes)、そのまま計時を続け、運転が再開されたかを判定する(ステップ33)。運転が再開されると、ステップ32で運転停止の指示がされてから所定の第4時間(例えば40秒)が経過したかを判定する(ステップ34)。運転停止から40秒以上経過していた場合には、ステップ2に戻り表示マスク制御を開始するが、運転停止からの時間が40秒以下の場合には、次にステップ1での運転開始からの経過時間を判定する(ステップ35)。そして、ステップ1で運転開始されてから、表示マスク時間が経過している場合には、表示マスク制御を終了し(ステップ36)、その後は検知湿度を表示する(ステップ37)。
【0054】
つまり、上述のように第1時間が経過した後、表示マスク時間が経過する前に運転停止と運転開始が指示されたときは、運転停止から再開までに要した時間によって、その後の制御が決定される。停止していた時間が長ければ(ステップ34でYes)、それは使用者が運転の停止を指示したものと解することができる。また、停止している間に発生した水蒸気が湿度センサ16付近に滞留し、湿度センサ16の検知する湿度に影響を与えるおそれがあるため、それまでに計時した時間をリセットして、表示マスク制御を最初から実行する。
【0055】
一方、停止していた時間が短いとき(ステップ34でNo)、使用者は運転の停止を意図しないが、何らかの理由(例えば間違ってスイッチを操作してしまった)で運転スイッチ21を操作してしまったとも考えられる。もしその場合に表示マスク制御を最初から実行してしまうと、表示がマスクされる時間が延長されて、湿度が表示されない状態が通常よりも長く継続されることになる。さらには、湿度が表示されない状態が続くことを異常と勘違いし、再度運転スイッチ21を操作して運転の停止と開始を繰り返してしまうおそれもある。すると、いつまでも湿度の表示されない状態が続くことになる。そこで、運転停止から比較的短時間で運転再開の指示があった場合には、表示マスク時間の終了に合わせて湿度表示部3に湿度を表示する。これにより、湿度の表示されない状態が必要以上に継続されることを防ぎ、使い勝手が損なわれない。
【0056】
なお、フローチャートでは、ステップ36で表示マスク制御を終了すると、検知湿度を表示するようになっているが、検知湿度に変えて補正湿度を表示することもできる。補正湿度を表示する場合には、ステップ36で表示マスク制御を終了する前に、湿度センサ16の検知湿度を取得し、ステップ4で取得した湿度とから補正湿度を演算するステップをさらに備える。