特許第6962873号(P6962873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962873
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】エンジンの吸気構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/104 20060101AFI20211025BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20211025BHJP
   F02F 1/22 20060101ALI20211025BHJP
   F02F 1/42 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   F02M35/104 A
   F02M35/10 101F
   F02M35/10 301R
   F02F1/22 A
   F02F1/42 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-125642(P2018-125642)
(22)【出願日】2018年6月30日
(65)【公開番号】特開2020-2919(P2020-2919A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2020年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宣義
(72)【発明者】
【氏名】金子 莉菜
【審査官】 池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−054358(JP,U)
【文献】 特開平04−072421(JP,A)
【文献】 特許第145752(JP,B2)
【文献】 特開2001−329923(JP,A)
【文献】 実開平02−019832(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0061825(US,A1)
【文献】 特開平09−250350(JP,A)
【文献】 特開2008−308992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/104
F02M 35/10
F02F 1/22
F02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸気ポートを覆う大きさの1つの開口を備えるマニホルド本体部と、空気の吸入部とを有する吸気マニホルドが設けられ、
前記マニホルド本体部の内部空間を隣り合う前記吸気ポートどうしの間で仕切る仕切り壁を、隣り合う前記吸気ポートどうしの間の全てに設け、これら仕切り壁によって前記内部空間が前記吸気ポートに対応した複数の空間部に区切られるとともに、前記仕切り壁のそれぞれの吸気ポート側端部に、隣り合う前記空間部どうしを連通させる連通口が形成され、
前記連通口が、前記仕切り壁における前記吸気ポート側端部の上下方向で中央部に設けられた切欠きであり、
前記仕切り壁は、前記切欠きの上側、下側、及び反吸気ポート側に壁面を有し、側面視の形状が吸気ポート側に開放されるU字状又はコ字状に形成されているエンジンの吸気構造。
【請求項2】
複数の前記吸気ポートが形成されているシリンダヘッドが設けられ、前記吸気ポートに対して作用するファンネルが設けられている請求項1に記載のエンジンの吸気構造。
【請求項3】
前記ファンネルは、前記シリンダヘッドの吸気マニホルド側の端面から吸気マニホルド側に突出する状態で設けられている請求項2に記載のエンジンの吸気構造
【請求項4】
前記ファンネルは、前記シリンダヘッドに支持されている請求項2又は3に記載のエンジンの吸気構造。
【請求項5】
前記吸気ポートが3つ並んだ直列3気筒エンジンに適用されている請求項1〜4の何れか一項に記載のエンジンの吸気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ディーゼルエンジンや建機用エンジンなどの各種エンジンに用いられ吸気構造、即ち、エンジンの吸気構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの吸気構造を形成する主な部品である吸気マニホルドは、例えば特許文献1において開示されているように、空気供給側の1つの通路から各気筒(各吸気ポート)に枝分かれしている構造のものが一般的である。
【0003】
産業用エンジン、例えば、発展途上国向けや廉価機種用の小型ディーゼルエンジンなどにおいては、コスト及び省スペース化のために、各気筒毎に分離せずに各吸気ポートを覆う1つの大きな開口(吸気出口)を備えた吸気マニホルド、いわゆる箱型の吸気マニホルドも多用されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−321641号公報
【特許文献2】特開2001−329923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
箱型の吸気マニホルドでは、吸気ポート毎に枝分かれせず1つの内部空間による吸入路を有しているので、他の吸気ポートから逆流してくる脈動派の影響を受け易い面がある。この影響が大きいと、吸気ポートへの吸入量が所期する量よりも減ってしまい、燃焼状態が悪化し、ディーゼルエンジンでは黒煙やPMが増加する不都合を招く。
【0006】
そこで、箱型の吸気マニホルドでは、その容積を十分に取って、吸気マニホルド自体が各気筒共通のサージタンクにもなるようにして、吸気干渉を減らして吸入量を増やすことが考えられた。吸入量が増えると、出力向上のみならず、PMなどの排ガス低減も行え、排ガス規制の強化に対応可能となる利点が得られる。
【0007】
しかしながら、小型ディーゼルエンジンでは、複数気筒のうちの端にある吸気ポートの近傍にインジェクションポンプがあり、燃料噴射管の取り回しの関係上、吸気ポート周辺空間には制約がある。故に、吸気マニホルドの形状は制約のある空間に合せたものにならざるを得ず、十分な容積を取ることが難しい問題がある。
【0008】
本発明の目的は、さらなる構造工夫により、前述した空間に制約のあることを受け入れながらも、各気筒の吸入効率を向上させ、排ガス規制の強化にも対応可能となるように、実質的に箱型の吸気マニホルドにおける容積が増やせることが可能なエンジンの吸気構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エンジンの吸気構造において、
複数の吸気ポートを覆う大きさの1つの開口を備えるマニホルド本体部と、空気の吸入部とを有する吸気マニホルドが設けられ、
前記マニホルド本体部の内部空間を隣り合う前記吸気ポートどうしの間で仕切る仕切り壁を、隣り合う前記吸気ポートどうしの間の全てに設け、これら仕切り壁によって前記内部空間が前記吸気ポートに対応した複数の空間部に区切られるとともに、前記仕切り壁のそれぞれの吸気ポート側端部に、隣合う前記空間部どうしを連通させる連通口が形成され
前記連通口が、前記仕切り壁における前記吸気ポート側端部の上下方向で中央部に設けられた切欠きであり、
前記仕切り壁は、前記切欠きの上側、下側、及び反吸気ポート側に壁面を有し、側面視の形状が吸気ポート側に開放されるU字状又はコ字状に形成されていることを特徴とする。
加えて、吸気ポートに対して作用するファンネルが設けられていると好都合である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、仕切り壁で吸入路の断面積を絞ることによってベンチュリー効果が発揮され、吸い戻しによる吸気脈動が減衰され、脈動音を低減させることができる。そのための手段としては、マニホルド本体部の内部空間を区切る仕切り壁を設けるだけでよいから、コスト上昇や配置スペースの増大が殆どないようにしながら、合理的、経済的に吸気ポートへの吸入量増大を図ることが可能になる。
【0011】
その結果、空間に制約のあることを受け入れながらも、各気筒の吸入効率を向上させ、排ガス規制の強化にも対応可能となるように、実質的に箱型の吸気マニホルドにおける容積が増やせることが可能なエンジンの吸気構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】吸気ポートを含む吸気マニホルドを示す側面図
図2図1のZ−Z線断面図
図3】吸気ポート及びエアファンネルを示す側面図
図4】エアファンネルの形状を示し、(A)は図3のY−Y線断面図、(B)は図3のX−X線断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明によるエンジンの吸気構造の実施の形態を、立型3気筒の産業用ディーゼルエンジンに適用された場合について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1及び図2に吸気マニホルド1が示されている。この吸気マニホルド1は、シリンダヘッド12の吸気ポートpに対応した開口4を備えるマニホルド本体部2と、吸入口5を備える空気の吸入部3とを備えている。マニホルド本体部2の開口端面2aをシリンダヘッド12の吸気側側面12aに当接してボルト止めするためのボルト止め部6がマニホルド本体部2に複数個所(5箇所)形成されている。
【0015】
マニホルド本体部2は、シリンダヘッド12に形成されている直列配置された3つの吸気ポートp,p,pを覆う大きさを有する横長形状の1つの開口4と、開口4を囲繞する外周フランジ壁2Aを備えている。この箱型の吸気マニホルド1は、外周フランジ壁2Aの開口端面2aをシリンダヘッド12の吸気側側面12aに当接させた状態で、ボルト止め部6に通されるボルト11により、シリンダヘッド12に取付け可能である。
【0016】
吸入部3はマニホルド本体部2に対して、その長手方向(開口4の長手方向)に大きく偏った位置に設けられ、吸入口5と開口4とは互いに反対向きに開口している。マニホルド本体部2の内部は、円筒状の1つの吸入口5と横長形状の開口4とを連通させる1つの内部空間である吸入路7に形成されている。
【0017】
マニホルド本体部2は、上壁8、下壁9、及び背壁10を備えており、上壁8及び下壁9の開口側端が外周フランジ壁2Aに形成されている。吸入路7は、上壁8の裏面8s、下壁9の裏面9s、及びは背壁10の裏面10sなどにより囲まれた場所として形成されている。なお、図2に示されるように、開口端面2aに開口するシール材収容溝17が外周フランジ壁2Aに周設されている。
【0018】
図1に示されるように、吸入口5から吸込まれた空気は、矢印a,b,cのように吸入路7を流れ、開口4から3つの吸気ポートp(図3も参照)に流れるようになる。なお、図1などにおいては、吸入部3のある方を後、その反対側を前とする。また、図2などにおいては、開口4側を左、背壁10側を右とする。
【0019】
〔実施形態1〕
仕切り壁13について説明する。
図1図2に示されるように、マニホルド本体部2の吸入路7を隣り合う吸気ポートp,pどうしの間で仕切る仕切り壁13が設けられているとともに、仕切り壁13の吸気ポート側端部に連通口14が形成されている。連通口14が、仕切り壁13における吸気ポートp側端部(左側端部)の幅方向(上下方向)で中央部に設けられており、従って、仕切り壁13は、側面視(前後方向視)の形状が吸気ポートp側(左側)に開放されるU字状(又はコ字状)に形成されている。
【0020】
仕切り壁13は、3つの吸気ポートpの間、即ち第1吸気ポートp1と第2吸気ポートp2との間と、第2吸気ポートp2と第3吸気ポートp3との間の2箇所に設けられている。これら2つの仕切り壁13,13により、吸入路7は、第1空間部7Aと第2空間部7Bと第3空間部7Cとに区切られたような状態になっている。第1空間部7Aと第2空間部7Bとは前側の仕切り壁13の連通口14で連通され、第2空間部7Bと第3空間部7Cとは後側の仕切り壁13の連通口14で連通されている。
【0021】
仕切り壁13は、マニホルド本体部2と一体成形によりなるものでもよいし、マニホルド本体部2に取り付けられる別の部品に形成されてもよい。また、各仕切り壁13の吸気ポート並び方向(前後方向)の位置や形状などは、任意に変更設定が可能である。また、仕切り壁13の厚さも適宜に選択設定することが可能である。
【0022】
連通口14は、図2では仕切り壁に13に形成された切欠きであるが、大きな1つの孔や、複数又はや多数の小孔から形成されてもよい。また、連通口14を、切欠きと孔との両方で形成してもよい。仕切り壁13の壁面13a,13aは互いに平行であるとか平坦面であるのが好ましいが、左右方向視で鼓形や樽形を呈するように、仕切り壁13の厚みを変化させてもよい。
【0023】
仕切り壁13を設けたことによる作用効果などについて説明する。
仕切り壁13によって区切られた第1〜第3空間部7A,7B,7Cは、仕切り壁13に比べて面積(断面積)の十分小さい連通口14で連通されているから、連通口14によるベンチュリー効果が発揮され、吸入気筒の吸気ポートp以外の吸気ポートpの容積分の空気を吸出せるようになる。つまり、仕切り壁13で吸入路7の断面積を絞ることにより、吸い戻しによる吸気脈動が減衰され、脈動音を低減させることができる。
【0024】
仕切り壁13によって区切られた第1〜第3空間部7A,7B,7Cが、対応する吸気ポートp1,p2,p3に対するサージタンクのような機能を発揮し、各気筒吸入時の吸気干渉が減って吸入空気量を増やすことができる。従って、出力の向上、排ガス、特にPMの低減に繋がり、排ガス規制強化により高次元で対応させることが可能になる。
【0025】
〔実施形態2〕
エアファンネル15について説明する。
図3及び図4に示されるように、3つ(複数の一例)の吸気ポートp1,p2,p3が形成されているシリンダヘッド12が設けられている。このシリンダヘッド12には、ボルト11の螺着が可能な雌ネジ部18が5箇所に形成されており、5つのボルト11を用いて吸気マニホルド1をボルト止めすることができる。
【0026】
吸気マニホルド1は、3つの吸気ポートp1,p2,p3を覆う大きさの1つの開口4を備えるマニホルド本体部2及び空気の吸入部3を有する箱型の吸気マニホルド1(図1参照)である。図3の仮想線eは、シリンダヘッド12に取り付けられた状態の吸気マニホルド1の外郭線を示している。シリンダヘッド12には、各吸気ポートp(p1,p2,p3)に対して作用するエアファンネル(ファンネルの一例)15が設けられている。
【0027】
図3及び図4(A),(B)に示されるように、エアファンネル15は、ラッパ上に拡がる誘導内周面19を有するファンネル作用部15Aと、シリンダヘッド12に取り付けるための嵌合基部15Bとを有する左右方向視で矩形環状を呈するファンネルに構成されている。ファンネル15は、ファンネル作用部15Aがシリンダヘッド12の吸気側側面12aから吸気マニホルド1側(右側)に、即ち、吸気マニホルド1の吸入路7に突出する状態で設けられている。
【0028】
誘導内周面19は、先端側(右側)に行くほどより大きく開く開花曲線Rが施されており、円滑な空気導入作用を発揮させることが可能である。なお、図4においては、ファンネル作用部15Aの先端部(右端部)が角張っているように描かれているが、丸められている方が好ましい。ファンネル作用部15Aの外面20は、嵌合基部15Bの外面21よりも前後上下に張出しているので、これら両者20,21の間には段差面16が形成されている。
【0029】
シリンダヘッド12には、吸気ポートpの入口側端(吸気側側面12a側端)の内周を一段広くした装着凹部22が形成されている。従って、エアファンネル15は、その嵌合基部15Bを装着凹部22に圧入などにより嵌め込むことにより支持されている。なお、冷やし嵌め、ボルト止めなど、圧入以外の手段によりシリンダヘッド12に取り付けてもよい。図4に示されるように、嵌合基部15Bにおける誘導内周面19と、吸気ポートpの内周面23とは互いに同一面となっているが、そうでなくてもよい。
【0030】
エアファンネル15を設けたことによる作用効果などについて説明する。
各吸気ポートp1,p2,p3は、エアファンネル15の採用により空気導入形状が強化されて空気の吸い込みが促進され、吸気マニホルド1の容積を増やすことなく吸気ポートpへの吸入量を増大させることが可能になる。
【0031】
従って、吸入空気量が増得るだけでなく、エアファンネル15による空気の流れ易さが向上することで、各気筒吸入時の吸気干渉も減るから、出力の向上、排ガス、特にPMの低減に繋がり、排ガス規制強化により高次元で対応させることが可能になる。
【0032】
なお、このエアファンネル15と、実施形態1の仕切り壁13とを併用すれば、両者15,13の相乗効果により、各気筒の吸入効率がさらに向上するようになり、排ガス規制の強化にも無理なく対応させることが可能である。
【0033】
〔別実施形態〕
(1)仕切り壁13の数は気筒数によって異なってもよいし、隣り合う吸気ポートp,p間に2個以上設けてもよい。
(2)仕切り壁13の壁面13aに凹凸や起伏、或いは波形を付けてもよい。
(3)仕切り壁13とエアファンネル15との両方を設けた吸気構造でもよい。
【0034】
(4)エアファンネル15は、図4(A)と(B)に示されるように、横断面と縦断面とで誘導内周面19の曲率が互いに異なっているが、同じでもよい。
(5)ファンネル作用部15Aの突出量は、吸気マニホルド1との関係において任意に設定することが可能である。
(6)エアファンネル15を、ボルト止めなどによって吸気マニホルド1に取り付けたり支持させたりすることが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 吸気マニホルド
2 マニホルド本体部
3 吸入部
4 開口
7 内部空間(吸入路)
7A〜7C 空間部
12 シリンダヘッド
12a 端面
13 仕切り壁
14 連通口(切欠き)
15 ファンネル
p 吸気ポート
図1
図2
図3
図4