特許第6962875号(P6962875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6962875-耐火樹脂組成物及び耐火樹脂成形体 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962875
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】耐火樹脂組成物及び耐火樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20211025BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20211025BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20211025BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20211025BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K3/013
   C08K3/04
   C08K3/32
   C08K5/3492
   C08L21/00
   C08L31/04 S
   E04B1/94 R
   E06B5/16
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-134796(P2018-134796)
(22)【出願日】2018年7月18日
(62)【分割の表示】特願2018-502277(P2018-502277)の分割
【原出願日】2017年12月19日
(65)【公開番号】特開2018-199814(P2018-199814A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-245621(P2016-245621)
(32)【優先日】2016年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
(72)【発明者】
【氏名】土肥 彰人
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/117702(WO,A1)
【文献】 特開平02−215857(JP,A)
【文献】 特開平08−113662(JP,A)
【文献】 特開平08−012805(JP,A)
【文献】 特開2016−164217(JP,A)
【文献】 特表2010−533220(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/187492(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/16
E06B 5/16
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、エラストマー及びゴムからなる群から選択される一種以上のマトリックス成分と、
熱膨張性黒鉛と、
難燃剤としてメラミン誘導体と、
無機充填剤とを含有し、
前記樹脂がEVAであり、
前記メラミン誘導体が、メラム、メレム、メロン、ポリリン酸アミド、環状尿素化合物、オルトリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、ポリメタリン酸メラミン、硫酸メラミン、ピロ硫酸メラム、有機スルホン酸メラム、有機ホスホン酸メラミン、有機ホスフィン酸メラミン、メラミンシアヌレート、又はホウ酸メラミンを含み、
前記エラストマーが熱可塑性エラストマーである、耐火樹脂組成物。
【請求項2】
前記メラミン誘導体が、オルトリン酸メラミン及びホウ酸メラミンから選択される一種以上である請求項1に記載の耐火樹脂組成物。
【請求項3】
前記マトリックス成分100質量部に対して、前記熱膨張性黒鉛を10〜200質量、前記難燃剤を5〜400質量部、及び前記無機充填剤を0〜400質量部、それぞれ有する請求項1又は2に記載の耐火樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱膨張性黒鉛の含有量に対する、前記難燃剤と前記無機充填剤の合計の含有量が質量比で1:0.5〜10である請求項2又は3のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
【請求項5】
前記難燃剤以外のリン含有化合物の含有量が、耐火樹脂組成物中、25質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の耐火樹脂組成物からなる耐火樹脂成形体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の耐火樹脂組成物からなる熱膨張性耐火シート。
【請求項8】
請求項6に記載の耐火樹脂成形体又は請求項7に記載の熱膨張性耐火シートを備えた建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火樹脂組成物及び耐火樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野において、防火のため、建具、柱、壁材等の建築材料に、マトリックス樹脂に加熱により膨張する無機質材料を混入した耐火樹脂組成物が用いられている。このような耐火樹脂組成物及びそれより形成された耐火樹脂成形体は、加熱により膨張して燃焼残渣が耐火断熱層を形成し、耐火断熱性能を発現する。
【0003】
特許文献1は、液状ゴム30〜60質量部、ブチルゴム40〜70質量部からなるベースゴム成分と、該ベースゴム成分100質量部に対して、粘着付与剤を3〜50質量部、熱膨張性黒鉛を10〜100質量部、難燃剤を30〜180質量部、無機充填剤を30〜210質量部、加硫剤を0.1〜10質量部、加硫促進剤を0.1〜10質量部を少なくとも含有する、未加硫のまま成形される耐火被覆材用の耐火ゴム組成物について開示している。該耐火ゴム組成物は形状保持性の向上のために1〜50質量部の亜リン酸アルミニウムを有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−138184
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、耐火樹脂組成物が雨に晒される部位又は結露等で湿度が高い部位に用いられた場合、耐火樹脂組成物中の成分が溶出し、性能低下や外観不良を起こす場合がある。
【0006】
特許文献1は耐水性については取り組んでいない。
【0007】
本発明の目的は、耐火性及び耐水性に優れた耐火樹脂組成物及び該耐火樹脂組成物からなる耐火樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の以下の態様が提供される。
【0009】
項1.樹脂、エラストマー及びゴムからなる群から選択される一種以上のマトリックス成分と、
熱膨張性黒鉛と、
低級リン酸塩及びメラミン誘導体からなる群から選択される一種以上の難燃剤と、を含有する耐火樹脂組成物。
【0010】
項2.無機充填剤をさらに含有する項1に記載の耐火樹脂組成物。
【0011】
項3.前記マトリックス成分100質量部に対して、前記熱膨張性黒鉛を10〜200質量部、前記難燃剤を5〜400質量部、及び前記無機充填剤を0〜400質量部、それぞれ含有する項1又は2に記載の耐火樹脂組成物。
【0012】
項4.前記熱膨張性黒鉛の含有量に対する、前記難燃剤と前記無機充填剤の合計の含有
量が、質量比で1:0.5〜10である項2又は3のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
【0013】
項5.前記マトリックス成分が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上である項1〜4のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
【0014】
項6.前記難燃剤以外のリン含有化合物の含有量が、耐火樹脂組成物中、25質量%以下である項1〜5のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
【0015】
項7.項1〜6のいずれかに記載の耐火樹脂組成物からなる耐火樹脂成形体。
【0016】
項8.項1〜6のいずれかに記載の耐火樹脂組成物からなる熱膨張性耐火シート。
【0017】
項9.項7に記載の耐火樹脂成形体又は請求項8に記載の熱膨張性耐火シートを備えた建具。
【発明の効果】
【0018】
本発明の耐火樹脂組成物及び該耐火樹脂組成物からなる耐火樹脂成形体によれば、建築物に優れた耐火性能と耐水性とを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】熱膨張性耐火シートをドアに施工した例を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の耐火樹脂組成物は、樹脂、エラストマー及びゴムからなる群から選択される一種以上のマトリックス成分と、熱膨張性黒鉛と、低級リン酸塩及びメラミン誘導体からなる群から選択される一種以上の難燃剤とを含有する。
【0021】
マトリックス成分としては、例えば、樹脂、エラストマー、ゴム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0024】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
【0025】
エラストマーの例としてはオレフィン系エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。TPOはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンをハードセグメントとし、エチレン-プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジ
エンゴム等のゴムをソフトセグメントとする熱可塑性エラストマーである。
ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム等が挙げられる。
【0026】
これらの樹脂、エラストマー、及びゴムの各々は、一種もしくは二種以上を使用することができる。また、樹脂、エラストマー、及びゴムを組み合わせて使用することもできる。
【0027】
これらの樹脂、エラストマー、及びゴムの中でも、耐火性の点では、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂が好ましい。柔軟な性質を得るためには、ポリオレフィン樹脂、TPO又はEPDMが好ましい。樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
熱膨張性黒鉛は、加熱時に膨張する公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、強酸化剤で酸処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。強酸化剤としては、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0029】
熱膨張性黒鉛は任意選択で中和処理されてもよい。つまり、上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛を、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和する。
【0030】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。
【0031】
耐火樹脂組成物における熱膨張性黒鉛の含有量は特に限定されないが、マトリックス成分100質量部に対して、5〜400質量部であることが好ましく、10〜200質量部であることがより好ましい。火の通過を阻止するのにより適した膨張を得る点で、熱膨張性黒鉛の含有量が5質量部以上であることが好ましく、形状保持性の点からは、400質量部以下であることが好ましい。
【0032】
熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュかそれより値が小さいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層を得るのに十分であり、また粒度が20メッシュかそれより値が大きいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。
【0033】
低級リン酸塩及びメラミン誘導体からなる群から選択される一種以上の難燃剤は、耐火樹脂組成物の難燃性の改善に加えて、雨、結露、湿気等の水分に対する耐水性の向上のために添加される。当該難燃剤の添加により、水分への暴露に対する耐火樹脂組成物の性能の低下が抑制される。
【0034】
「低級リン酸塩」は、無機リン酸塩のうち、縮合していない、つまり高分子化していない無機リン酸塩を指す。無機リン酸としては第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸等が挙げられる。塩としては、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩)、周期表3B族金属の塩(アルミニウム塩など)、遷移金属塩(チタン塩、マンガン塩、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩、バナジウム塩
、クロム塩、モリブデン塩、タングステン塩)、アンモニウム塩、アミン塩、例えば、グアニジン塩又はトリアジン系化合物の塩などが挙げられ、好ましくは金属塩である。ただし、メラミン塩は除く。一つの実施形態では、低級リン酸塩はリン酸金属塩及び亜リン酸金属塩のうちの少なくとも一方である。亜リン酸金属塩は発泡性であってもよい。また、亜リン酸金属塩は、マトリックス成分との密着性を向上させるため、表面処理剤などにより表面処理して用いてもよい。このような表面処理剤としては、官能性化合物(例えば、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物など)などが使用できる。
【0035】
そのような低級リン酸の金属塩の例として、第1リン酸アルミニウム、第1リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム、第1リン酸カルシウム、第1リン酸亜鉛、第2リン酸アルミニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸カルシウム、第2リン酸亜鉛、第3リン酸アルミニウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸カルシウム、第3リン酸亜鉛、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸亜鉛、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0036】
低級リン酸塩の含有量は、マトリックス成分100質量部に対して5〜400質量部であることが好ましく、10〜400質量部であることがより好ましく、15〜200質量部であることが更に好ましい。耐火樹脂組成物に十分な難燃性と十分な耐水性を付与する点では5質量部以上であることが好ましく、400質量部以下であると、耐火樹脂組成物の耐水性がより向上する。
【0037】
このような低級リン酸塩は、安全性に優れ、経済的に有利であり、難燃性を大幅に改善できる。
【0038】
メラミン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、メラム、メレム、メロンなどのメラミン以外のアミノ基を有する窒素含有環状化合物;メラム、メレム、メロン、メラミンなどのアミノ基を有する窒素含有環状化合物と酸素酸、有機リン酸、ヒドロキシル基を有する窒素含有化合物との塩;ポリリン酸アミド、環状尿素化合物、ピロリン酸メラミン、オルトリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、ポリメタリン酸メラミン、硫酸メラミン、ピロ硫酸メラム、有機スルホン酸メラム、有機ホスホン酸メラミン、有機ホスフィン酸メラミン、メラミンシアヌレート及びホウ酸メラミンなどが挙げられる。
【0039】
特に高い難燃性を付与し、かつ入手が容易な点から、メラミン誘導体は、ピロリン酸メラミン、オルトリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン及びホウ酸メラミンから選択される一種以上であることが好ましい。
【0040】
メラミン誘導体の含有量は、マトリックス成分100質量部に対して5〜400質量部であることが好ましく、10〜400質量部であることがより好ましく、15〜200質量部であることが更に好ましい。耐火樹脂組成物に十分な難燃性と十分な耐水性を付与する点では5質量部以上であることが好ましく、400質量部以下であると、耐火樹脂組成物の耐水性がより向上する。
【0041】
耐火樹脂組成物が低級リン酸塩及びメラミン誘導体の両方を含む場合は、上記難燃剤の合計量が5〜400質量部であることが好ましく、10〜400質量部であることがより好ましく、15〜200質量部であることが更に好ましい。
【0042】
本発明の耐火樹脂組成物は、無機充填剤をさらに含有することができる。無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0043】
無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上が分散性の点で好ましい。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、耐火樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで耐火樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、粒径が100μm以下であることが好ましい。無機充填剤の粒径が100μm以下であると、成形体の表面性や耐火樹脂組成物の力学的性能がより向上する。
【0044】
耐火樹脂組成物における無機充填剤の含有量は特に限定されないが、マトリックス成分100質量部に対して、0〜400質量部であることが好ましい。一つの実施形態では、無機充填剤の含有量はマトリックス成分100質量部に対して5〜400質量部である。機械的物性を維持する点では、無機充填剤の含有量はマトリックス成分100質量部に対して400質量部以下であることが好ましい。
【0045】
熱膨張性黒鉛の含有量に対する、難燃剤と無機充填剤の合計の含有量(熱膨張性黒鉛の含有量:(難燃剤及び無機充填剤の合計の含有量))は、質量比で1:0.5〜10であることが好ましい。該質量比が1:0.5以上であると、十分な耐火性能を得ることができる。該質量比が1:10以下であると、機械的物性が向上し、十分な強度を得ることができる。
【0046】
特に耐火樹脂組成物が、上記マトリックス成分100質量部に対して、上記熱膨張性黒鉛を10〜200質量部、上記難燃剤を5〜400質量部、上記無機充填剤を0〜400質量部を含有する場合、耐火樹脂組成物は優れた耐火性と耐水性とを兼ね備えることができる。
【0047】
本発明の耐火樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、さらにリン化合物を含有することができる。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、及び、下記
化学式(1)で表される化合物が好ましい。
【0048】
【化1】
【0049】
化学式(1)中、R1及びR3は、同一又は異なって、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を示す。R2は、水酸基
、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を示す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面をポリリン酸アンモニウム樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。
【0050】
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
リン化合物の含有量は限定されないが、マトリックス成分100質量部に対し、0〜50重量であることが好ましい。
【0051】
本発明の耐火樹脂組成物は、可塑剤をさらに含有することができる。
【0052】
前記可塑剤は、特に限定されず、例えば、下記に例示する1種又は2種以上の可塑剤を組み合わせて使用し得る:
ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、又は炭素原子数10〜13程度の高級アルコール又は混合アルコールのフタル酸エステル等のフタル酸エステル系可塑剤;
ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)、ジ−n−オクチルアジペート、ジ−n−デシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等の脂肪族エステル系可塑剤;
トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、ジ−n−オクチル−n−デシルトリメリレート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;
アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)及びアジピン酸ジイソデシル(DIDA)等のアジピン酸エステル系可塑剤;
セバシン酸ジブチル(DBS)及びセバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)等のセバシン酸エステル系可塑剤;
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、トリス(2エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;
2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸テトラヘプチルエステル等のビフェニルテトラカルボン酸テトラアルキルエステル系可塑剤;
ポリエステル系高分子可塑剤;
エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油、液状エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤;
塩素化パラフィン;及び
五塩化ステアリン酸アルキルエステル等の塩素化脂肪酸エステル。
【0053】
上記の可塑剤のうち、フタル酸系可塑剤が難燃性と経済的な点で好ましい。
【0054】
前記可塑剤の添加量は、少ないと押出成形性が低下する傾向があり、多くなると得られた成形体が柔らかくなり過ぎる傾向がある。このため可塑剤の含有量は限定されないが、マトリックス成分100質量部に対し、0〜200重量であることが好ましい。一実施形態において、マトリックス成分がポリ塩化ビニル樹脂又はポリ塩素化塩化ビニル樹脂の場合、可塑剤の含有量はマトリックス成分100質量部に対し、20〜200質量部であることができる。
【0055】
耐火樹脂組成物に含有することができる上記その他の成分の例としては、その物性を損なわない範囲で、更に、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等が挙げられる。
【0056】
本発明の耐火樹脂組成物は、水及び湿気等の水分への暴露に対する性能の低下を抑制するためには、リンの含有量ができるだけ少ない方が好ましい。上記の低級リン酸塩及びメラミン誘導体からなる群から選択される一種以上の難燃剤以外のリン含有化合物の含有量は、耐火樹脂組成物中、25質量%以下であることが好ましい。
【0057】
上記のマトリックス成分、熱膨張性黒鉛、難燃剤、及び任意選択のその他の成分を混合した耐火樹脂組成物を、建築物の建材等の被塗物に塗工して乾燥させることにより、所望の厚さの熱膨張性耐火シートを得ることができる。塗工は当該技術分野において周知である。熱膨張性耐火シートの厚みは特に限定されないが、0.2〜10mmが好ましい。0.2mm以上であると断熱性を発現し、10mm以下であると重量の点で取り扱い性が良好である。
【0058】
また、上記のマトリックス成分、熱膨張性黒鉛、難燃剤、及び任意選択のその他の成分を混合した耐火樹脂組成物を、成形することにより耐火樹脂成形体を製造することができる。成形にはプレス成形、押し出し成形、射出成形が含まれる。耐火樹脂成形体には、タイト材、グレージングチャンネル、ガスケット等のパッキン、熱膨張性耐火シート等が含まれる。熱膨張性耐火シートの厚みは特に限定されないが、0.2〜10mmが好ましい。
【0059】
耐火樹脂組成物、熱膨張性耐火シート、及び耐火樹脂成形体は、火災時などの高温にさ
らされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されない。50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の膨張倍率が3〜50倍
のものであれば好ましい。膨張倍率が3倍以上であると、膨張倍率がマトリックス成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。なお、膨張倍率は耐火樹脂組成物、熱膨張性耐火シート、又は耐火樹脂成形体の試験片の(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)として算出される。
【0060】
熱膨張性耐火シートは、基材と積層されてもよい。基材は熱膨張性耐火シートの片面又は両面に積層される。基材は通常、織布又は不織布であり、上記織布又は不織布に使用される繊維としては、特に限定はされないが、不燃材料又は準不燃材料のものが好ましく、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、熱硬化性樹脂繊維等が好ましい。
【0061】
ここで、不燃材料とは、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間は、燃焼しない材料である(建築基準法第2条第9号、建築基準法施行令第108条の2第1号参照)。例えば炭素繊維、金属、ガラス等を挙げることができる。「準不燃材料」とは、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後10分間は、燃焼しない材料(建築基準法施行令第1条第5号参照)である。
【0062】
本発明の耐火樹脂組成物及びそれからなる耐火樹脂成形体は、建築材料に耐火性能を与えるために使用することができる。例えば、窓(引き違い窓、開き窓、上げ下げ窓等を含む)、障子、扉(すなわちドア)、戸、ふすま等の建具;柱;鉄骨コンクリート等の壁に配置して、火災や煙の侵入を低減又は防止することができる。例えば図1に示すように熱膨張性耐火シート1をドア10の本体部分12に設置すれば、ドア10の本体部分12に優れた耐火性及び耐水性を付与する。
【0063】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0064】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。
【0065】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料及び数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
なお、本発明は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)樹脂、エラストマー及びゴムからなる群から選択される一種以上のマトリックス成分と、 熱膨張性黒鉛と、
低級リン酸塩及びメラミン誘導体からなる群から選択される一種以上の難燃剤と、を含有する耐火樹脂組成物。
(2)無機充填剤をさらに含有する(1)に記載の耐火樹脂組成物。
(3)前記マトリックス成分100質量部に対して、前記熱膨張性黒鉛を10〜200質量部含有する(1)又は(2)に記載の耐火樹脂組成物。
(4)前記マトリックス成分100質量部に対して、前記難燃剤を5〜400質量部含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(5)前記マトリックス成分100質量部に対して、前記難燃剤を15〜200質量部含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(6)前記マトリックス成分100質量部に対して、前記無機充填剤を0〜400質量部含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(7)前記マトリックス成分100質量部に対して、前記無機充填剤を0〜200質量部含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(8)前記マトリックス成分100質量部に対して、前記熱膨張性黒鉛を10〜200質量部、前記難燃剤を5〜400質量部、及び前記無機充填剤を0〜400質量部、それぞれ含有する請求項(1)又は(2)に記載の耐火樹脂組成物。
(9)前記マトリックス成分100質量部に対して、前記熱膨張性黒鉛を10〜200質量部、前記難燃剤を15〜200質量部、及び前記無機充填剤を0〜200質量部、それぞれ含有する請求項(1)又は(2)に記載の耐火樹脂組成物。
(10)前記熱膨張性黒鉛の含有量に対する、前記難燃剤と前記無機充填剤の合計の含有量が、質量比で1:0.5〜10である(2)及び(6)〜(9)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(11)前記マトリックス成分が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又はそれらの組み合わせである(1)〜(10)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(12)前記マトリックス成分が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上である(1)〜(11)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(13)前記マトリックス成分が、ポリ塩化ビニル樹脂を含む(1)〜(12)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(14)前記マトリックス成分が、ポリ塩化ビニル樹脂である(1)〜(12)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
【0066】
(15)前記マトリックス成分が、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂を含む(1)〜(12)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(16)前記マトリックス成分が、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂である(1)〜(12)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(17)前記マトリックス成分が、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を含む(1)〜(12)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(18)前記マトリックス成分が、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)である(1)〜(12)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(19)前記マトリックス成分が、ポリオレフィン樹脂を含む(1)〜(12)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(20)前記マトリックス成分が、ポリオレフィン樹脂である(1)〜(12)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(21)前記ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂を含む(19)又は(20)に記載の耐火樹脂組成物。
(22)前記ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂である(19)又は(20)に記載の耐火樹脂組成物。
(23)前記マトリックス成分が、エポキシ樹脂を含む(1)〜(12)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(24)前記マトリックス成分が、エポキシ樹脂である(1)〜(12)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(25)前記マトリックス成分が、オレフィン系エラストマー(TPO)を含む(1)〜(11)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(26)前記マトリックス成分が、オレフィン系エラストマー(TPO)である(1)〜(11)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(27)前記マトリックス成分が、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)を含む(1)〜(11)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(28)前記マトリックス成分が、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)である(1)〜(11)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(29)前記難燃剤が低級リン酸塩を含む(1)〜(28)のいずれかに記載の耐火樹脂
組成物。
【0067】
(30)前記低級リン酸塩の含有量がマトリックス成分100質量部に対して15〜200質量部である(29)に記載の耐火樹脂組成物。
(31)前記難燃剤がメラミン誘導体を含む(1)〜(28)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(32)前記メラミン誘導体の含有量がマトリックス成分100質量部に対して15〜200質量部である(31)に記載の耐火樹脂組成物。
(33)前記難燃剤が低級リン酸塩及びメラミン誘導体を含む(1)〜(28)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(34)前記低級リン酸塩及びメラミン誘導体の合計量がマトリックス成分100質量部に対して15〜200質量部である(33)に記載の耐火樹脂組成物。
(35)前記難燃剤以外のリン含有化合物の含有量が、耐火樹脂組成物中、25質量%以下である(1)〜(34)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(36)低級リン酸塩が縮合していない無機リン酸塩である(1)〜(35)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。
(37)(1)〜(36)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物からなる耐火樹脂成形体。(38)長さ50mm、幅50mm、厚さ1.5mmのシート状の前記耐火樹脂成形体を60℃で1週間純水に浸漬し、該純水を90℃にて蒸発、乾燥させ、析出物の重量を測定したときの、
重量変化率(%)=(析出物の重量)/(浸漬前の耐火樹脂成形体の重量)
で表わされる重量変化率(%)が3以下である(37)に記載の耐火樹脂成形体。
(39)(37)又は(38)に記載の耐火樹脂成形体を備えた建具。
(40)(1)〜(36)のいずれかに記載の耐火樹脂組成物からなる熱膨張性耐火シート。
(41)長さ50mm、幅50mm、厚さ1.5mmの前記熱膨張性耐火シートを60℃で1週間純水に浸漬し、該純水を90℃にて蒸発、乾燥させ、析出物の重量を測定したときの、
重量変化率(%)=(析出物の重量)/(浸漬前の熱膨張性耐火シートの重量)
で表わされる重量変化率(%)が3以下である(40)に記載の熱膨張性耐火シート。
(42)(40)又は(41)に記載の耐火樹脂成形体を備えた建具。
【0068】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0069】
1.実施例1〜32及び比較例1,2の熱膨張性耐火シートの製造
(実施例1、2、17及び18)
表1及び表3に示すように、各成分を所定量含有する組成物を調製した。各成分の詳細は以下の通りである。
エポキシ樹脂(製品名:E−807、三菱化学株式会社)
エポキシ樹脂(製品名:FL−079、三菱化学株式会社)
無機充填剤(「炭酸カルシウム」、製品名:ホワイトンBF−300、備北粉化工業株式会社)
難燃剤(「ポリリン酸メラミン・メラム・メレム」、製品名:Phosmel(登録商標)200、日産化学工業株式会社)
難燃剤(「亜リン酸アルミニウム」、製品名:APA100、太平化学産業株式会社)
熱膨張性黒鉛(製品名:CA−60N、エア・ウォーター株式会社)
当該組成物を遊星式攪拌機にて混練して、耐火樹脂組成物を得た。各成分の単位は質量部である。得られた耐火樹脂組成物を25℃で5分プレス成形をし、得られたシート状の
耐火樹脂組成物を100℃の恒温漕に15時間投入し、硬化させ、成形体である1.5mm厚の熱膨張性耐火シートを製造した。
【0070】
(実施例3、実施例6〜16、23及び24)
表1、表2及び表4に示すように、各成分を所定量含有する組成物を調製した。各成分の詳細は以下の通りである。
ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂(製品名:TK−1000、信越化学工業株式会社)
塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)樹脂(製品名:HA−53F、徳山積水工業社)
可塑剤(製品名:DIDP、ジェイプラス株式会社)
無機充填剤(「炭酸カルシウム」、製品名:ホワイトンBF−300、備北粉化工業株式会社)
難燃剤(「亜リン酸アルミニウム」、製品名:APA100、太平化学産業株式会社)
難燃剤(「ポリリン酸メラミン」、製品名:MPP−A、株式会社三和ケミカル社)
難燃剤(「ピロリン酸メラミン」、製品名:BUDIT311、ブーデンハイム社)
難燃剤(「オルソリン酸メラミン」、製品名:BUDIT310、ブーデンハイム社)
難燃剤(「メラミンシアヌレート」、製品名:MC-4000、日産化学工業株式会社)
熱膨張性黒鉛(製品名:CA−60N、エア・ウォーター株式会社)
熱膨張性黒鉛(製品名:EXP42S160、富士黒鉛社)及び熱膨張性黒鉛(製品名:ADT351、ADT社)
当該組成物を150℃で8分間、混練ロールで混練して、プレス成形して硬化させ、1.5mm厚の熱膨張性耐火シートを得た。
【0071】
(実施例4、5、19〜22)
表1及び表3に示すように、各成分を所定量含有する組成物を調製した。各成分の詳細は以下の通りである。
エチレン−酢酸ビニル(EVA)樹脂(製品名:エバフレックスEV460、三井デュポンポリケミカル株式会社)
可塑剤(製品名:DIDP、ジェイプラス株式会社)
無機充填剤(「炭酸カルシウム」、製品名:ホワイトンBF−300、備北粉化工業株式会社)
難燃剤(「ポリリン酸メラミン・メラム・メレム」、製品名:Phosmel(登録商標)200、日産化学工業株式会社)
難燃剤(「亜リン酸アルミニウム」、製品名:APA100、太平化学産業株式会社)
難燃剤(「ポリリン酸アンモニウム」、製品名:AP422、クラリアントケミカルズ社)
熱膨張性黒鉛(製品名:CA−60N、エア・ウォーター株式会社)
熱膨張性黒鉛(製品名:ADT351、ADT社)
当該組成物を150℃で8分間、混練ロールで混練して、プレス成形して硬化させ、1.5mm厚の熱膨張性耐火シートを得た。
【0072】
(実施例25〜30)
表4に示すように、各成分を所定量含有する組成物を調製した。各成分の詳細は以下の通りである。
低密度ポリエチレン樹脂(製品名:UE320、日本ポリエチレン株式会社製)
無機充填剤(「炭酸カルシウム」、製品名:ホワイトンBF−300、備北粉化工業株式会社)
難燃剤(「ポリリン酸メラミン・メラム・メレム」、製品名:Phosmel(登録商標)200、日産化学工業株式会社)
難燃剤(「ポリリン酸メラミン」、製品名:MPP−A、株式会社三和ケミカル社)
難燃剤(「ピロリン酸メラミン」、製品名:BUDIT311、ブーデンハイム社)
難燃剤(「メラミンシアヌレート」、製品名:MC-4000、日産化学工業株式会社)
難燃剤(「亜リン酸アルミニウム」、製品名:APA100、太平化学産業株式会社)
熱膨張性黒鉛(製品名:ADT351、ADT社)
当該組成物を150℃で8分間、混練ロールで混練して、プレス成形して硬化させ、1.5mm厚の熱膨張性耐火シートを得た。
【0073】
(実施例31)
表4に示すように、各成分を所定量含有する組成物を調製した。各成分の詳細は以下の通りである。
エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)(製品名:3072EPM、三井化学社)
無機充填剤(「炭酸カルシウム」、製品名:ホワイトンBF−300、備北粉化工業株式会社)
難燃剤(「亜リン酸アルミニウム」、製品名:APA100、太平化学産業株式会社)
熱膨張性黒鉛(製品名:ADT351、ADT社)
当該組成物を150℃で8分間、混練ロールで混練して、プレス成形して硬化させ、1.5mm厚の熱膨張性耐火シートを得た。
【0074】
(実施例32)
表4に示すように、各成分を所定量含有する組成物を調製した。各成分の詳細は以下の通りである。
オレフィン系エラストマー(TPO)(製品名:ミラストマー5020BS、日本ポリエチレン株式会社製)
無機充填剤(「炭酸カルシウム」、製品名:ホワイトンBF−300、備北粉化工業株式会社)
難燃剤(「亜リン酸アルミニウム」、製品名:APA100、太平化学産業株式会社)
熱膨張性黒鉛(製品名:ADT351、ADT社)
当該組成物を150℃で8分間、混練ロールで混練して、プレス成形して硬化させ、1.5mm厚の熱膨張性耐火シートを得た。
【0075】
(比較例1)
実施例1における、無機充填剤(「炭酸カルシウム」、製品名:ホワイトンBF−300、備北粉化工業株式会社)100質量部及び難燃剤(「ポリリン酸メラミン・メラム・メレム」、製品名:Phosmel(登録商標)200、日産化学株式会社)100質量部を使用する代わりに、無機充填剤(「炭酸カルシウム」、製品名:ホワイトンBF−300、備北粉化工業株式会社)200質量部を使用し、難燃剤(製品名:Phosmel(
登録商標)200、日産化学株式会社)を0質量部とし、他の成分は同じとした。実施例
1と同様の方法で1.5mm厚の熱膨張性耐火シートを得た。
【0076】
(比較例2)
実施例1における、難燃剤(「ポリリン酸メラミン・メラム・メレム」、製品名:Phosmel(登録商標)200、日産化学株式会社)を0質量部とし、難燃剤(「ポリリン酸アンモニウム」、製品名:AP422、クラリアントケミカルズ社))を100質量部使用し、他の成分は同じとした。実施例1と同様の方法で1.5mm厚の熱膨張性耐火シートを得た。
【0077】
2.熱膨張性耐火シートの性能の確認
(耐火性試験)
吉野石膏社製、強化石膏ボードGB−F(厚さ12.5mm)910mm×910mm上の中心部に評価を行う実施例1〜32及び比較例1,2の各耐火シート(1.5mm厚
、300mm×300mm)の周縁150mmおきに8箇所、中心1箇所、計9箇所ステープルガンで貼り付けた。得られた試験体を垂直炉(サンプルに対して、垂直に加熱)にて、ISO加熱曲線に従い、加熱条件を調整し、20分間の耐火性試験を実施した。20分間の試験後に熱膨張性耐火シートの燃焼残渣が落下せずに保持できているものを○、できていないものを×とした。結果を表1〜4に示す。
【0078】
(重量変化率)
実施例1〜32及び比較例1,2の各耐火シートから作製した試験片(長さ50mm、幅50mm、厚さ1.5mm)5枚を200gの純水に浸漬した。密閉容器にて60℃で1週間浸漬した後、試験片を取り出し、純水を90℃にて蒸発、乾燥させ、析出物を得た。析出物の重量を測定し、下記式により、試験片の重量変化率を算出した。重量変化率が小さいほど、耐水性が大きいといえる。重量変化率(%)が3未満の場合を合格、重量変化率(%)が3以上の場合を不合格とする。結果を表1〜4に示す。
重量変化率(%)=(析出物の重量)/(浸漬前の試験片の重量)×100
【0079】
比較例1の耐火シートは重量変化率が小さいが耐火性が劣っていた。比較例2の耐火シートは耐火性に優れているが、耐水性が劣っていた。
一方、各実施例の耐火シートは重量変化率が小さく優れた耐水性と、優れた耐火性とを有していた。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
図1