(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ネットワーク構造構築部は、正規化された2つのデータの組合せを画像に変換し、前記画像および前記重要業績評価指標、前記ペルソナを関連付けたニューラルネットワークを構築する、
ことを特徴とする請求項1に記載の特徴抽出装置。
【背景技術】
【0002】
スーパー、コンビニエンスストアなどの小売業をはじめとして、原材料メーカからメーカ、卸、小売の繋がりは、一般的にはサプライチェーンの概念で理解されている。
【0003】
図8は、サプライチェーンの概要を示す図である。
サプライチェーンは、原材料メーカ・生産者90、製品メーカ91、商社・卸92、小売93、消費者94がそれぞれ繋がって構成される。原材料メーカ・生産者90は、製品メーカ91から生産計画を受領し、これに従って調達物流を製品メーカ91に流す。
【0004】
製品メーカ91は、商社・卸92から販売計画を受領し、これに従って商社・卸92の共配センタへ商品を集約する。矢印で示された「SCM(サプライチェーン・マネジメント)の最適化」とは、原材料メーカ・生産者90から商社・卸92までの商品の流れを改善することをいう。
商社・卸92は、小売93から発注見込みを受領し、これに従って小売93の店舗に商品を配送する。矢印で示された「店舗/物流業務の効率化」とは、小売93から製品メーカ91までの発注の流れと、製品メーカ91から小売93までの商品の流れを改善することをいう。
小売93は、消費者94の需要・嗜好を察知し、これに従って商品を、例えば消費者94の戸口に配送するなどして販売する。ここでは、小売93から消費者94への配送サービスのレベル向上と、広告やキャンペーンなどに代表される各施策が課題とされる。
【0005】
マーケティングとは、このサプライチェーン全体を改善することである。物流(在庫)情報の連携や業務プロセスの効率化とは、原材料メーカ・生産者90から小売93までの商品の流れを効率化することである。
【0006】
現状、このモノやカネの流れは、企業ごとに自社でデータを保有するのみである。よって、小売93と原材料メーカ・生産者90とが企業間で連携することや、小売93のデータを原材料メーカ・生産者90が保有することは難しい。従って、サプライチェーンという概念はあるものの、サプライチェーン全体の繋がりを実際に統括して業務管理するのは難しい。
【0007】
企業内で調達必要量やマーケティングの実施量などを導出する場合、それぞれ実施したい必要量の性質や分析したい特徴量にあわせるため、それぞれ異なるモデルを作成し、必要量を導出することが多かった。ここでモデル作成の手法としては、例えば商品需要予測ではARIMA(Autoregressive Integrated Moving Average)モデルが適用されることが多く、マーケティングであれば販売傾向分析が適用されることが多い。
【0008】
或る商品のマーケティングを実施した場合、マーケティングを実施しなかった従前よりも、この商品の販売量が増加すると考えられる。この商品の販売量の増加は、例えばこの商品またはその原材料の発注量の増加を引き起こす。このようにサプライチェーンのいずれかで生じた変化は、それぞれサプライチェーンの全体に関連性を有する。よって、サプライチェーンの変化は、サプライチェーン全体のモデルに即座に反映されることが望ましい。
しかし、現状では、サプライチェーンを構成するそれぞれの企業ごとにモデルを作成しているので、次のモデリングを実施するまで、サプライチェーンの変化が反映されないといった課題があった。
【0009】
そこで、特許文献1に記載されているような発明が発表されている。特許文献1に記載の発明は、様々なビジネスに汎用的に使用できる安価なシステムであって、高度な専門知識を必要とせず、大規模な企業連携型を効率的に最適化することが可能な、企業連携型最適化支援システムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態について、商品の生産から流通、店舗を介して消費者の手に届くまでの工程において、業務改善施策をレコメンデーションした場合を例に、各図を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施形態における特徴抽出装置1の構成例を示す図である。
本実施形態の特徴抽出装置1は、データ連携基盤2と、解析エンジン装置3と、データ保存部4と、施策考案部5と、外部システムインタフェース部6とを備え、これらを一連に実施するコンピュータである。
【0020】
データ連携基盤2は、商品の生産メーカが仕入れる材料に関するデータから始まり、生産工程、商品卸し、流通、店舗・ECサイトに至る情報を保存する。データ連携基盤2は、繋がりのある企業間でデータを同一基盤に蓄積するので、それらのデータを一元的に取り扱うことを可能としている。
【0021】
データ連携基盤2は、原材料メーカデータ21、製品メーカデータ22、商社・卸データ23、店舗データ241、EC(Electronic Commerce)サイトデータ242、消費者データ25、ISM(In-store Merchandising)データ246を格納する。データ連携基盤2は更に、販促履歴データ263、SNS(Social Networking Service)データ262、外部データ261、顧客管理データ243、IoTデータ244、センサデータ245、顧客管理データ243などを格納する。
【0022】
原材料メーカデータ21は、製品の原材料の生産量や時期に関する情報である。
製品メーカデータ22は、各製品の生産量の情報やこれら製品の出荷時期に関する情報であり、仕入れた原材料に基づいている。これら原材料メーカデータ21や製品メーカデータ22は、例えは各メーカにおける製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)から取得される。
【0023】
商社・卸データ23は、生産された製品(商品)の流通量や時期に関する情報である。
店舗データ241は、実店舗における購買数、時期に関する情報である。
ECサイトデータ242は、ECサイト上における行動履歴に関する情報である。
消費者データ25は、消費者の行動を把握するために小売業が保有する情報であり、例えばECサイトへのアクセス履歴におけるページビュー数やネット回遊履歴などである。また顧客管理データ243は、CRM(Customer Relationship Management)から取得されるサプライチェーンでつながる企業の一つ下、またはそれ以下の下流側の商品購買情報、マーケティング情報である。顧客管理データ243は、小売業にとっての消費者の情報である。
【0024】
ISMデータ246は、店舗内の陳列・配置情報であり、例えば棚の数や照明、POP(Point of Purchase advertising)の有無、入り口からの距離等をいう。販促履歴データ263は、原材料メーカや製品メーカや商社・卸や小売業によるサプライチェーン下流側への販売促進(キャンペーン)に関する履歴情報である。SNSデータ262は、SNSによって発信された書き込み情報や集計情報である。外部データ261は、気象情報、GPS(Global Positioning System)やメッシュによる位置情報、競合店の存在情報、曜日情報やイベント情報などである。IoTデータ244とは、人流センサ等を用いた消費者の動線や商品棚への接触行動の情報や、温度センサ等を用いた店舗や外の気温情報、湿度センサを用いた店舗や外の湿度情報、その他花粉量、風速、雨量等をセンサで検知した情報である。センサデータ245は、ウェアラブルセンサを用いた店舗内のスタッフや消費者の行動データであり、歩数、行動推定、活性度等が含まれる。
【0025】
それぞれの業務ごと、データ収集単位ごとのデータを、以下「グループ」と呼び、その構成されるデータ項目を、以下「変数」と呼ぶ。例えば製粉メーカや製乳メーカなどの複数企業が菓子の原材料を提供する場合、これら複数企業は、原材料メーカという同じグループに属する。また、メーカから卸Aを介して卸Bに流れ、小売店に繋がる多段階卸の場合、これら卸Aと卸Bとは、同じ役割であり卸という同じグループに属する。本実施形態の解析エンジン装置3の処理は、グループ単位に実施される。また、業務単位である1グループごとに、ペルソナが設定される。
【0026】
解析エンジン装置3は、データ前処理部31と、ネットワーク構造構築部32と、特徴量推定部33と、商品レコメンド計画部34と、データ解釈部35とを備える。
データ前処理部31は、データ連携基盤2に含まれる各種データの前処理を行って特徴量を生成する。
【0027】
ネットワーク構造構築部32は、ペルソナと、データ前処理部31が生成した各特徴量と、重要業績評価指標とを関係付けるネットワーク構造を、ディープラーニング技術により構築する。ペルソナとは、ユーザ情報(属性)や、サービス・商品の典型的なユーザ像である。重要業績評価指標とは、売上高や粗利や純利や出荷数や販売数量や購買点数や購買頻度のうちいずれかである。
【0028】
特徴量推定部33は、ネットワーク構造構築部32が構築したネットワーク構造に基づき、重要業績評価指標の向上に寄与する特徴量を推定する。特徴量推定部33は、入力層から人の理解可能な中間層を介して出力層までの因果関係を推定する。
商品レコメンド計画部34は、特徴量推定部33が推定した特徴量に基づき、重要業績評価指標の向上に寄与する商品を推薦する。
【0029】
データ解釈部35は、特徴量推定部33が推定した特徴量を、人が解釈しやすい形に逆変換する。小売業のマーケティング担当者や商品メーカのマーケティング担当者、商品開発者は、データ解釈部35が逆変換した各種データからペルソナごとの因子の変化をとらえる。更に、各担当者や開発者は、ペルソナによる中間層の傾向変化を意味づけて理解することが可能となる。
【0030】
データ保存部4は、データ前処理部31が生成した特徴量である前処理済み画像72,74,76や、ペルソナの各属性を含むペルソナデータ41や、重要業績評価指標データ42などを保存する。
施策考案部5は、特徴量推定部33が推定した特徴量(正規化されている)から、重要業績評価指標を更に向上させるのに最適な2つの変数の組合せを算出して、これを施策として考案する
外部システムインタフェース部6は、外部システムと連携するためのインタフェースである。外部システムインタフェース部6は、解析エンジン装置3で計画した販売促進施策を、外部システムへ配信して連携するためのインタフェースである。
【0031】
本実施形態の特徴抽出装置1は、データ連携基盤2を活用して、性質の異なるモデル間であっても、各モデルの傾向変化を互いにとらえて補正する。特徴抽出装置1の解析エンジン装置3は、複雑なそれぞれの要素や特徴量を、その成分である因子に分解して、ペルソナおよび重要業績評価指標との関係を推定する。これにより、施策考案部5は、重要業績評価指標を向上させるための施策を考案することができる。更に小売業のマーケティング担当者や商品メーカのマーケティング担当者、商品開発者は、特徴抽出装置1によって、購買者の特徴を抽出して商品レコメンド施策の検討や商品開発の参考とすることができる。ここで購買者とは、一般消費者のことであり、小売業側からみるとユーザ、会員等を意味する。
【0032】
例えば、小売業のマーケティング担当者は、自部門自事業のデータのみならず、製造、流通に関わるといったデータを、データ連携基盤2を活用して収集する。このマーケティング担当者は更に、この解析エンジン装置3により、業種を横断した新たな特徴量を発見し、新たな観点で販売促進施策を検討できる。業種を横断した新たな特徴量により、従来では発見できなかった購買者の嗜好を把握することができるので、担当者は効率的な販売促進施策(例えば、商品の推薦、クーポン券の配布、商品の適切な流通施策)を可能とし、よって重要業績評価指標(KPI)を向上させることができる。
【0033】
図2は、特徴抽出装置1のハードウェア構成を示す図である。
特徴抽出装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、補助記憶装置14、通信装置15、表示装置16、入力装置17、メディア読取装置18を備える。
【0034】
CPU11は、各種演算処理を実行するユニットである。CPU11は、例えば、補助記憶装置14に格納された解析エンジンプログラム141をRAM13に読み出して実行することにより、解析エンジン装置3を具現化する。
この解析エンジンプログラム141は、例えば、通信ネットワーク上のコンピュータにダウンロード可能な状態で格納し、BD(Blu-ray Disk)等の可搬性を有する記憶媒体に格納して流通させることができる。また、解析エンジンプログラム141は、通信装置15またはメディア読取装置18を介して、特徴抽出装置1にインストールすることができる。
【0035】
ROM12は、特徴抽出装置1の起動プログラム等を格納する記憶装置である。RAM13は、CPU11により実行されるプログラムや、プログラムの実行に使われるデータ等を格納する記憶装置である。
【0036】
補助記憶装置14は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュROM等を用いたSSD(Solid State Drive)等の記憶装置であり、解析エンジンプログラム141を記憶する。
通信装置15は、外部のコンピュータやデバイスと通信を行う装置である。
表示装置16は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)等の装置である。
入力装置17は、例えば、キーボードやそれに類する装置、マウス、タッチパネル、マイクロフォン等の装置である。
メディア読取装置18は、例えば、BD等の可搬性を有する記録媒体に対して情報を読み書きする装置である。
【0037】
特徴抽出装置1が解析エンジン装置3として機能する場合、データ前処理部31のデータ保存領域は、RAM13または補助記憶装置14により実現される。また、データ前処理部31のデータ保存領域の一部または全部は、例えば、通信装置15を介して接続される通信ネットワーク上のストレージ等に実現してもよい。
各機能部(データ保存部4、解析エンジン装置3、外部システムインタフェース部6)は、例えば、CPU11、RAM13および補助記憶装置14の少なくとも一方により実現される。すなわち、各機能部の処理は、例えば、CPU11が補助記憶装置14に記憶されている解析エンジンプログラム141をRAM13にロードして実行することで実現できる。なお、解析エンジン装置3は、複数のコンピュータが連携することで実現されてもよい。
【0038】
図3は、解析エンジン装置3の処理の一例を示すフローチャートである。
図3に示す処理は、例えば、小売業のマーケティング担当者が指示したタイミング、例えば、周期的または所定スケジュールに従って実行されてもよく、商品メーカのマーケティング担当者・商品開発者が商品開発したタイミングで実行されてもよい。
【0039】
まず、解析エンジン装置3のデータ前処理部31は、データ連携基盤2から分析に必要なデータを取得する(S10)。例えば、データ前処理部31は、各メーカにおける製造実行システムから生産、出荷、在庫などの計画、実績情報を取得し、それぞれ原材料メーカデータ21や製品メーカデータ22とする。次に、データ前処理部31は、流通におけるサプライチェーン・マネジメントから工場、物流倉庫における在庫、流通計画などの情報を取得して商社・卸データ23とする。
【0040】
また、データ前処理部31は、顧客管理としてCRM(Customer Relationship Management)から商品購買情報、マーケティング情報などを取得し、顧客管理データ243とする。データ前処理部31は、ECサイトへのアクセス履歴からページビュー数、ネット回遊履歴などを取得し、消費者データ25とする。
【0041】
次にデータ前処理部31は、データ連携基盤2上の各業務から、集計キーとなるキーワードを決定し、各業務に保存されているデータを主キーごとに集計する(S11)。この場合の集計単位は、例えば1週間や1ヶ月などの単位、それ以外に任意の周期、または任意のスケジュール単位などのうち、いずれでもよい。
【0042】
データ前処理部31は、ステップS12からS16までのループを、変数の組合せだけ繰り返す。
最初、データ前処理部31は、例えば業種ごとに生成した分割テーブル241dから、任意の2つの変数を組み合わせる(S13)。
次に、データ前処理部31は、各業種の全ての変数を2つ組み合わせた変数マトリクスを可視化したヒートマップ画像を作成する(S14)。
【0043】
図4は、メーカへの発注量に係る全変数のうち2つを組み合わせて、ヒートマップ画像を作成する動作を示す図である。
図4に示すように、ここでは変数#1(71a)と変数#4(71d)とを組み合わせてヒートマップを作成している。変数#1(71a)と変数#4(71d)とは、データ連携基盤2に保持された定量的データおよび質的データのうち2つの組合せである。組み合わせた2つの変数は、0.0から1.0までに正規化されてヒートマップ化され、前処理済み画像72b,72c,…が作成される。前処理済み画像72b,72c,…は、業務単位ごとに2つのデータを組み合わせたマトリクス構造である。
以下、各前処理済み画像72b,72c,…を区別しないときには、単に前処理済み画像72と記載する。ここで、メーカへの発注量に係るN個の変数があった場合、
nC
2通りの前処理済み画像72が作成されることになる。
【0044】
このように、特徴抽出装置1は、2つの変数の組合せを正規化したヒートマップ画像を作成しているので、画像の類似度を判定する既存のニューラルネットワークのライブラリを流用することができる。更に、このようなニューラルネットワークでヒートマップ画像を学習することにより、重要業績評価指標(KPI)の向上と共に発火(活性化)する画像を容易に特定可能である。
【0045】
再び
図3に戻り、ステップS15以降の処理を説明する。データ前処理部31は、メーカへの発注量に係る全変数のうち2つを組み合わせた前処理済み画像72と、卸への発注量に係る全変数のうち2つを組み合わせた前処理済み画像74と、小売での購買量に係る全変数のうち2つを組み合わせた前処理済み画像76を作成し、データ保存部4に保存する(S15)。ステップS16において、データ前処理部31は、全ての業種において全変数のうち2つの組合せを繰り返したならば、このループ処理を終了し、ステップS17の処理に進む。
【0046】
ネットワーク構造構築部32は、ペルソナ80と、前処理済み画像72,74,76と、重要業績評価指標84を用いて、ニューラルネットワーク8を構築する(S17)。この際、入力データは、例えば購買者の属性情報であるペルソナ80とし、出力データは、その購買者に対する売上高や出荷数等の重要業績評価指標84とする。
【0047】
図5は、構築されたニューラルネットワーク8の一例を示す図である。
ニューラルネットワーク8は、ペルソナ80と、メーカへの発注量81と、卸への発注量82と、小売での購買量83によって構成されたネットワークである。ペルソナ80は、消費者の属性を示す各要素を備える。例えば性別、年齢、職業、収入、趣味などである。これらの各要素は、メーカへの発注量81を構成する前処理済み画像72a〜72dなどと相互に部分的なネットワークを構成する。また、メーカへの発注量81と、卸への発注量82と、小売での購買量83は、それぞれニューラルネットワーク8の層を構成する。
【0048】
ペルソナ80の各要素は、部分的なネットワークの入力層のニューロンに結び付けられる。前処理済み画像72a〜72dなどは、部分的なネットワークの出力層のニューロンに結び付けられる。入力層と出力層の間には隠れ層があり、その前の層が持つ値で演算した結果を格納する。そして、隠れ層のニューロンが入力層と出力層との関係を学習することで、これらペルソナ80の各要素を入力として前処理済み画像72a〜72dなどを出力する部分的なネットワークを得ることができる。
【0049】
ここで部分的なネットワークの各ノードは、前の層の各ノードからの影響を示す重みと、前の層のノードに影響しない定数であるバイアスとを有している。このネットワークを学習させる際、ネットワーク構造構築部32は、各ノードの重みとバイアスを初期化して、入力データから各層の値を計算し、出力層の計算値と前処理済み画像72a〜72dとの乖離を示す損失関数を計算して、この損失関数に対する各層の重みとバイアスの偏微分を計算する。そして、入力ごとの損失関数に対する偏微分から、全体損失に対する偏微分を計算しつつ、最急降下法を用いて重みとバイアスとを修正する。これにより、ペルソナ80の各要素を入力層に与えたときに、前処理済み画像72a〜72dを出力する部分的なネットワークを得ることができる。
【0050】
同様に、メーカへの発注量81を構成する前処理済み画像72a〜72dなどは、卸への発注量82を構成する前処理済み画像74a〜74eなどと相互に部分的なネットワークを構成する。メーカへの発注量81を構成する前処理済み画像72a〜72dなどは、この部分的なネットワークの入力層のニューロンに結び付けられる。前処理済み画像74a〜74eなどは、この部分的なネットワークの出力層のニューロンに結び付けられる。入力層と出力層の間には隠れ層があり、その前の層が持つ値で演算した結果を格納する。そして、隠れ層のニューロンが入力層と出力層との関係を学習することで、これら前処理済み画像72a〜72dなどを入力として前処理済み画像74a〜74eを出力する部分的なネットワークを得ることができる。
【0051】
卸への発注量82を構成する前処理済み画像74a〜74eなどは、小売での購買量83を構成する前処理済み画像76a〜76eなどと相互に部分的なネットワークを構成する。卸への発注量82を構成する前処理済み画像74a〜74eなどは、この部分的なネットワークの入力層のニューロンに結び付けられる。前処理済み画像76a〜76eなどは、この部分的なネットワークの出力層のニューロンに結び付けられる。入力層と出力層の間には隠れ層があり、その前の層が持つ値で演算した結果を格納する。そして、隠れ層のニューロンが入力層と出力層との関係を学習することで、これら前処理済み画像74a〜74eなどを入力として前処理済み画像76a〜76eを出力する部分的なネットワークを得ることができる。
【0052】
小売での購買量83を構成する前処理済み画像76a〜76eなどは、重要業績評価指標84との間で相互に部分的なネットワークを構成する。小売での購買量83を構成する前処理済み画像76a〜76eなどは、この部分的なネットワークの入力層のニューロンに結び付けられる。重要業績評価指標84は、この部分的なネットワークの出力層のニューロンに結び付けられる。入力層と出力層の間には隠れ層があり、その前の層が持つ値で演算した結果を格納する。そして、隠れ層のニューロンが入力層と出力層との関係を学習することで、これら前処理済み画像76a〜76eなどを入力として重要業績評価指標84を出力する部分的なネットワークを得ることができる。
【0053】
ニューラルネットワーク8は、ノードの全てがいずれかの層に属し、全てのノードは隣接する層のノードとの間にのみ接続を持つ順伝播型のニューラルネットワークである。つまり、ニューラルネットワーク8は、一層どうしの接続や、層をまたいだ接続を有していない。これにより、逆伝播法によって特徴量を求めることができる。
【0054】
ステップS18において、特徴量推定部33は、ニューラルネットワーク8の構造を、逆伝播法などの技術を用いて、重要業績評価指標(KPI)が向上する際に発火(活性化)する特徴量と状態とそのネットワーク関係を発見し、これら特徴量をデータ保存部4に保存する。
【0055】
図6は、構築されたニューラルネットワーク8を探索して特徴量を発見する方法の一例を示す図である。
ここで特徴量推定部33は、重要業績評価指標(KPI)が向上する際に発火する特徴量が、前処理済み画像76aであると推定する。その判定された前処理済み画像76aのニューロンを発火させる前段のニューロンが、前処理済み画像74cであると推定する。前処理済み画像74cのニューロンを発火させる前段のニューロンが、前処理済み画像72bであると推定する。
【0056】
ここで、誤差逆伝播法について説明する。ニューラルネットワーク8において、重要業績評価指標を向上させるための特徴量を推定する際、特徴量推定部33は、ニューラルネットワーク8に学習のためのサンプルを与える。次に特徴量推定部33は、ニューラルネットワーク8が出力する重要業績評価指標を求めて、このニューラルネットワーク8の出力層における誤差を求める。特徴量推定部33は、その誤差を用い、各ニューロンについての誤差を計算する。つまり、特徴量推定部33は、個々のニューロンの期待される出力値と倍率を計算し、要求された出力と実際の出力の差を計算して局所誤差とする。
【0057】
特徴量推定部33は、この局所誤差が小さくなるように各ニューロンの重みを調整する。そして、より大きな重みで接続された前段のニューロンには、局所誤差の責任があると判定する。つまり、局所誤差の責任があると判定された前段のニューロンは、重要業績評価指標の変化に寄与する特徴量である。特徴量推定部33は、そのように判定された前段のニューロンの更に前段のニューロン群について同様の処理を行う。
【0058】
重要業績評価指標(KPI)と前処理済み画像76a〜76eなどとの間には、実際には複数の隠れ層が存在するが、これら隠れ層についての特徴量を順番に推定することにより、前処理済み画像76a〜76eのうちいずれが重要業績評価指標(KPI)に寄与する特徴量であるかを算出可能である。
【0059】
図3に戻り、説明を続ける。ステップS19において、商品レコメンド計画部34は、特徴量推定部33が推定した特徴量に基づく商品のレコメンドを作成し、外部システムインタフェース部6などを介して外部に報知する。
ステップS20において、データ解釈部35は、抽出した特徴量を解釈するために、正規化された変数の組合せを元のデータに逆変換する。これにより、人が施策立案する上で理解し易くなり、好適な目標数値や属性を立案することができる。
【0060】
図7は、特徴量から元の変数に逆変換する動作の一例を示す図である。
図7に示す前処理済み画像72bは、変数#1(71a)と変数#4(71d)とを組み合わせて作成されたヒートマップである。組み合わせた2つの変数は、0.0から1.0までに正規化されているので、これを逆変換して元の変数#1(71a)と変数#4(71d)を得る。
【0061】
図3に戻り説明を続ける。ステップS21において、施策考案部5は、解釈した特徴量をデータ連携基盤2のデータと紐付けて重要業績評価指標(KPI)を向上する施策を考案する。例えば、特徴量推定部33は、前処理済み画像の領域を分割してニューロンとし、各ニューロンについて重要業績評価指標(KPI)の局所誤差が小さくなるように重みを調整する。そして、そして、より大きな重みで接続された前段の前処理済み画像の領域には、局所誤差の責任があると判定する。つまり、局所誤差の責任があると判定された前処理済み画像の領域は、重要業績評価指標の変化に寄与する特徴量である。施策考案部5は、このように推定された前処理済み画像の領域の変化を、施策として考案する。
【0062】
ステップS22において、サプライチェーンに係わる人々は、施策考案部5が考案した施策を業務にフィードバックする。このようにして、サプライチェーンに係わる人々は、特徴抽出装置1を利用して、業務のPDCA(Plan,Do,Check,Action)サイクルを効率的に運用することを可能とする。
【0063】
《本実施形態の効果》
本実施形態の特徴抽出装置1によれば、商品の生産から流通、店舗を介して消費者の手に届くまでの全ての工程を考慮して、重要業績評価指標(KPI)を変化させるための特徴量を発見し、重要業績評価指標(KPI)を向上する施策を立案することが可能となる。
【0064】
また、業界の業務特徴を理解せずとも機械的に分析が可能となり、専門知識を必要とせずにビジネスプロセスを構築できるようになる。また、これまで人では発見することのできなかった特徴量を明らかにし、かつ隠れた前後プロセスの関係性を把握することができ、効果的な施策を実現可能とする。
【0065】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0066】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0067】
本発明の変形例として、例えば、次の(a)〜(f)のようなものがある。
(a) 本発明の特徴抽出装置は、クラウド(データセンタ)上のサーバで構成されてもよく、更にオンプレミス(自社保有)のサーバで構成されてもよく、限定されない。
(b) ニューラルネットワークを構成する各ニューロンは、2つの変数で構成されるヒートマップ画像に限定されず、各変数そのものであってもよい。
(c) 本発明は、繋がりのある複数企業間のサプライチェーンに限定されない。単一の企業における購入および販売に係るデータを分析して、重要業績評価指標(KPI)を向上する施策を考案してもよい。この場合、ペルソナは最終消費者ではなく、その企業の需要者となる。
(d) データ連携基盤2に格納されるデータは、
図1に示したものに限定されず、これ以外のデータを格納してもよい。
(e) 特徴量を求める方法は、誤差逆伝播法に限られず、任意の方法を用いてもよい。
(f) マトリクス構造は2次元画像に限定されず、3次元以上の多次元のオブジェクトであってもよい。例えば、マトリクス構造を3次元物体とすることで、3次元物体を取り扱う既存のニューラルネットワークのライブラリを流用可能である。