特許第6962889号(P6962889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962889自己診断機能付き電圧測定装置、及び、電圧測定装置の自己診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962889
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】自己診断機能付き電圧測定装置、及び、電圧測定装置の自己診断方法
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/10 20060101AFI20211025BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20211025BHJP
   G01R 19/165 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G05F1/10 301A
   G01R19/00 B
   G01R19/165 K
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-176337(P2018-176337)
(22)【出願日】2018年9月20日
(65)【公開番号】特開2020-47092(P2020-47092A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2020年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠一郎
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−70835(JP,A)
【文献】 特開2014−206901(JP,A)
【文献】 特開2018−72860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/10
G01R 19/00
G01R 19/165
H03F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの入力部の間の電圧である入力電圧に応じた出力信号を発生する電圧測定回路部と、
所定範囲の電圧を生成可能な電圧生成回路部と、
前記電圧測定回路部及び前記電圧生成回路部に接続された制御部と、
を備え、
前記制御部は、
電圧測定モード時、
前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて、前記入力電圧の測定結果を出力電圧値として検出するように構成され、
自己診断モード時、
入力電圧範囲の下限電圧を前記2つの入力部の間に前記電圧生成回路部を用いて印加した第1状態で、前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値が、前記入力電圧が前記下限電圧であるときに出力電圧値が採るべき下限規定範囲内にあるか否かを判定する第1判定を行い、
前記第1状態で検出された出力電圧値、及び、前記入力電圧が前記入力電圧範囲の上限電圧であるときに出力電圧値が採るべき上限規定範囲に基づいて、前記入力電圧が前記下限電圧と前記上限電圧との間の中間電圧であるときに出力電圧値が採るべき中間規定範囲を設定し、
前記中間電圧を前記2つの入力部の間に前記電圧生成回路部を用いて印加した第2状態で、前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値が、前記設定された中間規定範囲内にあるか否かを判定する第2判定を行い、
前記第1判定及び前記第2判定の結果に基づいて、前記電圧測定回路部が正常か否かの自己診断を行うように構成された、自己診断機能付き電圧測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自己診断機能付き電圧測定装置において、
前記制御部は、前記第1状態で検出された出力電圧値、並びに、前記上限規定範囲の上限値及び下限値に基づいて、前記中間規定範囲を設定するように構成された、自己診断機能付き電圧測定装置。
【請求項3】
2つの入力部の間の電圧である入力電圧に応じた出力信号を発生する電圧測定回路部と、所定範囲の電圧を生成可能な電圧生成回路部とを備え、前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて前記入力電圧の測定結果を出力電圧値として検出する電圧測定装置の自己診断方法であって、
入力電圧範囲の下限電圧を前記2つの入力部の間に前記電圧生成回路部を用いて印加した第1状態で、前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値が、前記入力電圧が前記下限電圧であるときに出力電圧値が採るべき下限規定範囲内にあるか否かを判定する第1判定を行うステップと、
前記第1状態で検出された出力電圧値、及び、前記入力電圧が前記入力電圧範囲の上限電圧であるときに出力電圧値が採るべき上限規定範囲に基づいて、前記入力電圧が前記下限電圧と前記上限電圧との間の中間電圧であるときに出力電圧値が採るべき中間規定範囲を設定するステップと、
前記中間電圧を前記2つの入力部の間に前記電圧生成回路部を用いて印加した第2状態で、前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値が、前記設定された中間規定範囲内にあるか否かを判定する第2判定を行うステップと、
前記第1判定及び前記第2判定の結果に基づいて、前記電圧測定回路部が正常か否かの自己診断を行うステップと、
を含む、電圧測定装置の自己診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己診断機能付き電圧測定装置、及び、電圧測定装置の自己診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2つの入力部の間の電圧(入力電圧)に応じた出力信号を発生する電圧測定回路部を備え、前記出力信号に基づいて前記入力電圧の測定結果を出力電圧値として検出する電圧測定装置が広く知られている(例えば、特許文献1を参照)。この種の電圧測定装置は、例えば、電動モータを駆動源とする電気自動車に搭載されて、電動モータに電力を供給するバッテリの電圧を測定するために使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−199742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載された電圧測定装置では、出力電圧値の正確性を担保するため、所定のタイミング毎に、電圧測定回路部が正常か否かの診断を行う必要がある。この診断を行う方法として、例えば、予め想定される入力電圧範囲の下限電圧を2つの入力部の間に実際に印加し、そのときの出力電圧値が、入力電圧が下限電圧であるときに出力電圧値が採るべき下限規定範囲内にあるか否かを判定し、且つ、前記入力電圧範囲の上限電圧を2つの入力部の間に実際に印加し、そのときの出力電圧値が、入力電圧が上限電圧であるときに出力電圧値が採るべき上限規定範囲内にあるか否かを判定する方法が考えられる。
【0005】
車両に搭載された電圧測定装置自身に、上記の診断方法を用いた自己診断を行わせるためには、電圧測定装置自身に、下限電圧及び上限電圧を発生可能な電圧生成回路部を搭載する必要がある。しかしながら、このような自己診断機能付き電圧測定装置では、特に、上限電圧が非常に高い場合においては、高耐圧部品を使用したり、電気的絶縁を達成するために比較的長い沿面距離を確保する必要がある。このため、電圧生成回路部を、高電圧に耐え得るように大型化する必要が生じ、この結果、電圧測定装置全体としても大型化するという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電圧生成回路部の大型化を抑制することによって全体としても大型化を抑制可能な自己診断機能付き電圧測定装置、及び、電圧測定装置の自己診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る自己診断機能付き電圧測定装置、及び、電圧測定装置の自己診断方法は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1)
2つの入力部の間の電圧である入力電圧に応じた出力信号を発生する電圧測定回路部と、
所定範囲の電圧を生成可能な電圧生成回路部と、
前記電圧測定回路部及び前記電圧生成回路部に接続された制御部と、
を備え、
前記制御部は、
電圧測定モード時、
前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて、前記入力電圧の測定結果を出力電圧値として検出するように構成され、
自己診断モード時、
入力電圧範囲の下限電圧を前記2つの入力部の間に前記電圧生成回路部を用いて印加した第1状態で、前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値が、前記入力電圧が前記下限電圧であるときに出力電圧値が採るべき下限規定範囲内にあるか否かを判定する第1判定を行い、
前記第1状態で検出された出力電圧値、及び、前記入力電圧が前記入力電圧範囲の上限電圧であるときに出力電圧値が採るべき上限規定範囲に基づいて、前記入力電圧が前記下限電圧と前記上限電圧との間の中間電圧であるときに出力電圧値が採るべき中間規定範囲を設定し、
前記中間電圧を前記2つの入力部の間に前記電圧生成回路部を用いて印加した第2状態で、前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値が、前記設定された中間規定範囲内にあるか否かを判定する第2判定を行い、
前記第1判定及び前記第2判定の結果に基づいて、前記電圧測定回路部が正常か否かの自己診断を行うように構成された、自己診断機能付き電圧測定装置であること。
(2)
上記(1)に記載の自己診断機能付き電圧測定装置において、
前記制御部は、前記第1状態で検出された出力電圧値、並びに、前記上限規定範囲の上限値及び下限値に基づいて、前記中間規定範囲を設定するように構成された、自己診断機能付き電圧測定装置であること。
(3)
2つの入力部の間の電圧である入力電圧に応じた出力信号を発生する電圧測定回路部と、所定範囲の電圧を生成可能な電圧生成回路部とを備え、前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて前記入力電圧の測定結果を出力電圧値として検出する電圧測定装置の自己診断方法であって、
入力電圧範囲の下限電圧を前記2つの入力部の間に前記電圧生成回路部を用いて印加した第1状態で、前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値が、前記入力電圧が前記下限電圧であるときに出力電圧値が採るべき下限規定範囲内にあるか否かを判定する第1判定を行うステップと、
前記第1状態で検出された出力電圧値、及び、前記入力電圧が前記入力電圧範囲の上限電圧であるときに出力電圧値が採るべき上限規定範囲に基づいて、前記入力電圧が前記下限電圧と前記上限電圧との間の中間電圧であるときに出力電圧値が採るべき中間規定範囲を設定するステップと、
前記中間電圧を前記2つの入力部の間に前記電圧生成回路部を用いて印加した第2状態で、前記電圧測定回路部の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値が、前記設定された中間規定範囲内にあるか否かを判定する第2判定を行うステップと、
前記第1判定及び前記第2判定の結果に基づいて、前記電圧測定回路部が正常か否かの自己診断を行うステップと、
を含む、電圧測定装置の自己診断方法であること。
【0008】
上記(1)の構成の自己診断機能付き電圧測定装置によれば、入力電圧として下限電圧が実際に印加されたとき(下限電圧印加時)の出力電圧値が下限規定範囲にあるか否かが判定され(第1判定)、入力電圧として中間電圧が実際に印加されたとき(中間電圧印加時)の出力電圧値が中間規定範囲にあるか否かが判定され(第2判定)、第1判定及び第2判定の結果に基づいて、電圧測定回路部が正常か否かの自己診断が行われる。
【0009】
ここで、中間規定範囲は、下限電圧印加時の実際の出力電圧値と、上限規定範囲と、に基づいて設定される。このことに起因して、中間電圧印加時の出力電圧値が中間規定範囲にあるか否かを判定することにより、入力電圧として上限電圧が実際に印加されたとき(上限電圧印加時)の出力電圧値が上限規定範囲内にあるか否かを精度良く判定することができる(この点については、後に詳述する)。
【0010】
以上より、入力電圧として、下限電圧、及び、上限電圧より低い中間電圧を実際に印加することで、下限電圧印加時の出力電圧値が下限規定範囲内にあるか否か、及び、上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲内にあるか否かを判定し、電圧測定回路部が正常か否かの自己診断を行うことができる。
【0011】
従って、電圧生成回路部が発生しなければならない電圧値の最大値を、上限電圧から中間電圧に下げることができる分だけ、電圧生成回路部を小型化することが可能となる。この結果、上限電圧が非常に高い場合であっても、電圧生成回路部の大型化を抑制することができ、電圧測定装置全体としても大型化を抑制することができる。
【0012】
上記(2)の構成の自己診断機能付き電圧測定装置によれば、中間電圧印加時の出力電圧値が中間規定範囲にあるか否かを判定することによって上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲内にあるか否かを精度良く判定できるようにするために設定されるべき中間規定範囲を、精度良く設定することができる(この点については、後述する)。
【0013】
上記(3)の構成の電圧測定装置の自己診断方法によれば、下限電圧印加時の出力電圧値が下限規定範囲にあるか否かが判定され(第1判定)、中間電圧印加時の出力電圧値が中間規定範囲にあるか否かが判定され(第2判定)、第1判定及び第2判定の結果に基づいて、電圧測定回路部が正常か否かの自己診断が行われる。
【0014】
ここで、中間規定範囲は、下限電圧印加時の実際の出力電圧値と、上限規定範囲と、に基づいて設定される。このことに起因して、中間電圧印加時の出力電圧値が中間規定範囲にあるか否かを判定することにより、上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲内にあるか否かを精度良く判定することができる(この点については、後に詳述する)。
【0015】
以上より、入力電圧として、下限電圧、及び、上限電圧より低い中間電圧を実際に印加することで、下限電圧印加時の出力電圧値が下限規定範囲内にあるか否か、及び、上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲内にあるか否かを判定し、電圧測定回路部が正常か否かの自己診断を行うことができる。
【0016】
従って、電圧生成回路部が発生しなければならない電圧値の最大値を、上限電圧から中間電圧に下げることができる分だけ、電圧生成回路部を小型化することが可能となる。この結果、上限電圧が高い場合であっても、電圧生成回路部の大型化を抑制することができ、電圧測定装置全体としても大型化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電圧生成回路部の大型化を抑制することによって全体としても大型化を抑制可能な自己診断機能付き電圧測定装置、及び、電圧測定装置の自己診断方法を提供できる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態に係る自己診断機能付き電圧測定装置の回路構成図である。
図2図2は、電圧測定回路部の自己診断方法を説明するための第1の図である。
図3図3は、電圧測定回路部の自己診断方法を説明するための第2の図である。
図4図4は、電圧測定回路部の自己診断方法を説明するための第3の図である。
図5図5は、本実施形態の変形例に係る自己診断機能付き電圧測定装置の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る自己診断機能付き電圧測定装置1、及び、電圧測定装置1の自己診断方法について説明する。
【0021】
図1に示すように、電圧測定装置1は、1枚の基板2上に配置された電気回路等で構成されている。電圧測定装置1は、典型的には、電動モータを駆動源とする電気自動車に搭載されて、電動モータに電力を供給するバッテリの電圧を測定するために使用される。
【0022】
図1に示すように、電圧測定装置1は、電圧測定回路部10と、電圧生成回路部20と、スイッチ回路部30と、制御部40と、を含んでいる。
【0023】
電圧測定回路部10は、2つの入力部P1,P2の間の電圧(電位差)(以下、「入力電圧」と呼ぶ)に応じた出力信号を出力部P3に発生する公知の電気回路である。電圧測定回路部10は、抵抗R1〜R8、及び、オペアンプOP1〜OP4を含んで構成されている。オペアンプOP1〜OP4の駆動電圧は、後述する電源回路22から供給されるようになっている。
【0024】
抵抗R1〜R4は、主として、中間部P4,P5間の電圧(電位差)を、所定の減少率で入力電圧(入力部P1,P2の間の電圧)から減圧した値とするために設けられている。オペアンプOP1〜OP3は、主として、中間部P4,P5間の電圧を安定させるために設けられている。
【0025】
抵抗R5〜R8、及び、オペアンプOP4は、所謂差動増幅回路を構成している。即ち、中間部P4,P5間の電圧が、所定の増減率で増減されて出力部P3に出力されるようになっている。以上より、電圧測定回路部10では、入力電圧(入力部P1,P2の間の電圧)に応じた出力信号が出力部P3に発生するようになっている。
【0026】
電圧生成回路部20は、公知の電気回路で構成されており、絶縁電源21が発生する一定電圧を所定範囲内で昇圧・減圧して、後述する2つの接点部P8,P9の間の電圧(電位差)として出力するようになっている。ここでは、電圧生成回路部20の詳細な回路構成についての説明を省略する。電圧生成回路部20の駆動電圧は、後述する電源回路22から供給されるようになっている。
【0027】
スイッチ回路部30は、電圧測定モード時と自己診断モード時とで電気回路を切り替える機能を有する。電圧測定モード及び自己診断モードの詳細については後述する。スイッチ回路部30は、電圧測定モード時、入力部P1,P2をそれぞれ、外部入力端子H1,H2にそれぞれ接続された接点部P6,P7に接続し、自己診断モード時、入力部P1,P2を、電圧生成回路部20の出力側に接続された接点部P8,P9に接続するように作動する。スイッチ回路部30の駆動電圧は、後述する電源回路22から供給されるようになっている。
【0028】
制御部40は、マイクロコンピュータで構成され、電圧生成回路部20及び、スイッチ回路部30を制御するようになっている。制御部40の駆動電圧は、車両のイグニッションIGと、車両のアースGNDとに接続された電源回路22から供給されるようになっている。
【0029】
具体的には、制御部40は、電圧生成回路部20を制御して、電圧生成回路部20の出力電圧を所定範囲内で任意に調整可能となっている。制御部40は、外部からの入力信号等に基づいて電圧測定モード及び自己診断モードの何れかのモードを選択し、スイッチ回路部30を制御して、選択されたモードに対応する電気回路を実現するようになっている。
【0030】
制御部40は、電圧測定回路部10の出力部P3の出力信号を入力して、入力電圧(入力部P1,P2の間の電圧)の測定結果を出力電圧値として検出し、その検出結果を、外部出力端子H3を介して外部の電装機器やメモリ等に出力するようになっている。以上、電圧測定装置1の構成について説明した。次に、電圧測定モード及び自己診断モードについて順に説明する。
【0031】
<電圧測定モード>
電圧測定モードとは、外部入力端子H1,H2に接続された被電圧測定対象(例えば、車両のバッテリ)の電圧(外部入力端子H1,H2の間の電圧)を測定するモードである。電圧測定モードでは、上述したように、制御部40からの指示により、スイッチ回路部30は、電圧測定回路部10の入力部P1,P2をそれぞれ、外部入力端子H1,H2に接続するように作動する。この結果、外部入力端子H1,H2の間の電圧が、入力電圧(入力部P1,P2の間の電圧)として電圧測定回路部10に入力される。
【0032】
電圧測定回路部10は、上述したように、入力電圧に応じた出力信号を出力部P3に発生する。制御部40は、出力部P3の出力信号を入力して、入力電圧(外部入力端子H1,H2の間の電圧)の測定結果を出力電圧値として検出し、その検出結果を、外部出力端子H3を介して外部の電装機器やメモリ等に出力する。
【0033】
<自己診断モード>
自己診断モードとは、出力電圧値の正確性を担保するため、電圧測定回路部10が正常か否かの診断を、制御部40自身が行うモードである。自己診断モードは、例えば、所定の時間が経過する毎、イグニッションIGがオフからオンに変化する毎等に選択される。
【0034】
自己診断モードでは、上述したように、制御部40からの指示により、スイッチ回路部30は、電圧測定回路部10の入力部P1,P2を、電圧生成回路部20の出力側に接続するように作動する。この結果、電圧生成回路部20の出力電圧が、入力電圧(入力部P1,P2の間の電圧)として電圧測定回路部10に印加される。
【0035】
電圧生成回路部20が正常か否かの自己診断を行う方法として、予め想定される入力電圧範囲の下限電圧V1を入力部P1,P2の間に電圧生成回路部20を用いて実際に印加し、そのときの出力電圧値が、入力電圧が下限電圧V1であるときに出力電圧値が採るべき下限規定範囲S1(図2参照)内にあるか否かを判定し、且つ、入力電圧範囲の上限電圧V2を入力部P1,P2の間に電圧生成回路部20を用いて実際に印加し、そのときの出力電圧値が、入力電圧が上限電圧V2であるときに出力電圧値が採るべき上限規定範囲S2(図2参照)内にあるか否かを判定する方法が考えられる。
【0036】
しかしながら、この方法を採用すると、電圧生成回路部20が発生しなければならない電圧値の最大値が上限電圧V2となるため、上限電圧V2が非常に高い場合において、電圧生成回路部20を、高電圧に耐え得るように大型化する必要が生じる。この結果、電圧測定装置1全体としても大型化するという問題がある。
【0037】
この問題に対処するため、制御部40は、以下に示す方法により、電圧生成回路部20が正常か否かの自己診断を行う。なお、制御部40は、下限電圧V1、上限電圧V2、下限規定範囲S1、上限規定範囲S2、及び、後述する中間電圧V3を、予め、自身が有するメモリ等に記憶している。
【0038】
先ず、制御部40は、電圧生成回路部20の出力電圧が下限電圧V1になるように電圧生成回路部20を制御する。この結果、電圧測定回路部10の入力電圧(入力部P1,P2の間の電圧)が下限電圧V1に維持される(下限電圧印加時)。この状態で、図2に示すように、制御部40が電圧測定回路部10の出力信号に基づいて出力電圧値を検出し、検出された出力電圧値v1が下限規定範囲S1内にあるか否かを判定する(第1判定)。
【0039】
この第1判定において、出力電圧値v1が下限規定範囲S1外にあると判定された場合、制御部40は、自己診断を直ちに終了して、電圧測定回路部10が異常であるとの診断結果を、外部出力端子H3を介して外部の電装機器やメモリ等に出力する。
【0040】
一方、第1判定において、出力電圧値v1が下限規定範囲S1内にあると判定された場合、制御部40は、図3に示すように、出力電圧値v1、及び、上限規定範囲S2に基づいて、入力電圧が下限電圧V1と上限電圧V2との間の中間電圧V3であるときに出力電圧値が採るべき中間規定範囲S3を設定する。
【0041】
図3に示す例では、入力電圧に対して出力電圧値がリニア(一次関数的)に推移するとの過程の下、出力電圧値v1と上限規定範囲S2の上限値とを結ぶ線分L1と、中間電圧V3とに基づいて、中間規定範囲S3の上限値が設定され、出力電圧値v1と上限規定範囲S2の下限値とを結ぶ線分L2と、中間電圧V3とに基づいて、中間規定範囲S3の下限値が設定される。この結果、中間規定範囲S3が設定される。
【0042】
次に、制御部40は、電圧生成回路部20の出力電圧が(上限電圧V2ではなく)中間電圧V3になるように電圧生成回路部20を制御する。この結果、電圧測定回路部10の入力電圧(入力部P1,P2の間の電圧)が中間電圧V3に維持される(中間電圧印加時)。この状態で、図4に示すように、制御部40が電圧測定回路部10の出力信号に基づいて出力電圧値を検出し、検出された出力電圧値v3が中間規定範囲S3内にあるか否かを判定する(第2判定)。
【0043】
ここで、入力電圧に対して出力電圧値がリニアに推移するとの過程の下では、図4からも明らかなように、中間電圧印加時の出力電圧値が中間規定範囲S3にあることは、電圧測定回路部10の入力電圧(入力部P1,P2の間の電圧)が上限電圧V2に維持された状態(上限電圧印加時)での出力電圧値が上限規定範囲S2内にあることを意味し、中間電圧印加時の出力電圧値が中間規定範囲S3にないことは、上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲S2内にないことを意味する。即ち、中間電圧印加時の出力電圧値が中間規定範囲S3にあるか否かを判定することにより、上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲S2内にあるか否かを精度良く判定することができる。
【0044】
従って、第2判定では、出力電圧値v3が中間規定範囲S3内にあるか否かを判定することで、実質的に、上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲S2内にあるか否かが判定される。
【0045】
この第2判定において、出力電圧値v3が中間規定範囲S3外にあると判定された場合(即ち、上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲S2外にあると判定された場合)、制御部40は、電圧測定回路部10が異常であるとの診断結果を、外部出力端子H3を介して外部の電装機器やメモリ等に出力する。
【0046】
一方、第2判定において、出力電圧値v3が中間規定範囲S3内にあると判定された場合(即ち、上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲S2内にあると判定された場合)、第1判定において下限電圧印加時の出力電圧値v1が下限規定範囲S1内にあり、且つ、第2判定において上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲S2内にあると判定されたことを意味する。この場合、制御部40は、電圧測定回路部10が正常であるとの診断結果を、外部出力端子H3を介して外部の電装機器やメモリ等に出力する。
【0047】
以上より、入力電圧として、下限電圧V1、及び、上限電圧V2より低い中間電圧V3を実際に印加することで、下限電圧印加時の出力電圧値v1が下限規定範囲S1内にあるか否か、及び、上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲S2内にあるか否かを判定し、電圧測定回路部10が正常か否かの自己診断を行うことができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る本発明の実施形態に係る自己診断機能付き電圧測定装置1、及び、電圧測定装置1の自己診断方法によれば、電圧測定回路部10の入力電圧(入力部P1,P2の間の電圧)として、下限電圧V1、及び、上限電圧V2より低い中間電圧V3を実際に印加することで、下限電圧印加時の出力電圧値v1が下限規定範囲S1内にあるか否か、及び、上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲S2内にあるか否かを判定し、電圧測定回路部10が正常か否かの自己診断を行うことができる。
【0049】
従って、電圧生成回路部20が発生しなければならない電圧値の最大値を、上限電圧V2から中間電圧V3に下げることができる分だけ、電圧生成回路部20を小型化することが可能となる。この結果、上限電圧V2が非常に高い場合であっても、電圧生成回路部20の大型化を抑制することができ、電圧測定装置1全体としても大型化を抑制することができる。
【0050】
なお、中間電圧V3(下限電圧V1より大きく且つ上限電圧V2より小さい)に関し、中間電圧V3が小さい値であるほど、電圧生成回路部20が発生しなければならない電圧値の最大値がより小さくなって電圧生成回路部20をより小型化できる一方で、中間電圧印加時の出力電圧値v3が中間規定範囲S3にあるか否かの判定結果に基づいて行われる「上限電圧印加時の出力電圧値が上限規定範囲S2内にあるか否かの判定」の判定精度がより低下する虞がある。従って、電圧生成回路部20の小型化の要求度合と、電圧測定回路部10が正常か否かの自己診断の要求精度と、を比較考量して、中間電圧V3が決定されることが好ましい。
【0051】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0052】
上記実施形態では、入力電圧に対して出力電圧値がリニアに推移するとの過程の下、出力電圧値v1と、上限規定範囲S2における「上限値」及び「下限値」とに基づいて、中間規定範囲S3が設定されている(図3参照)。これに対し、入力電圧に対して出力電圧値がリニアに推移するとの過程の下、出力電圧値v1と、上限規定範囲S2における「上限値に基づく値」及び「下限値に基づく値」とに基づいて、中間規定範囲S3が設定されていてもよい。「上限値に基づく値」としては、例えば、上限値より僅かに小さい値が挙げられ、「下限値に基づく値」としては、例えば、下限値より僅かに大きい値が挙げられる。
【0053】
更に、上記実施形態(図1参照)では、電圧測定回路部10において、抵抗R3が断線した場合、オペアンプOP2に、外部入力端子H1(入力部P1)の高い電圧が減圧されることなくほぼそのまま入力されることで、オペアンプOP2に過度の負担がかかる場合がある。これに対し、図5に示す例では、1つの抵抗R3に代えて、2つの抵抗R3a及び抵抗R3bが並列的に接続される構成となっている。これにより、仮に、2つの抵抗R3a及び抵抗R3bのうち一方が断線した場合であっても、他方が正常に機能し得るため、オペアンプOP2に、外部入力端子H1(入力部P1)の高い電圧から減圧された電圧が入力される。この結果、オペアンプOP2にかかる負担の程度が小さくなる。
【0054】
ここで、上述した本発明に係る自己診断機能付き電圧測定装置1、及び、電圧測定装置1の自己診断方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
2つの入力部(P1,P2)の間の電圧である入力電圧に応じた出力信号を発生する電圧測定回路部(10)と、
所定範囲の電圧を生成可能な電圧生成回路部(20)と、
前記電圧測定回路部(10)及び前記電圧生成回路部(20)に接続された制御部(40)と、
を備え、
前記制御部(40)は、
電圧測定モード時、
前記電圧測定回路部(10)の前記出力信号に基づいて、前記入力電圧の測定結果を出力電圧値として検出するように構成され、
自己診断モード時、
入力電圧範囲の下限電圧(V1)を前記2つの入力部(P1,P2)の間に前記電圧生成回路部(20)を用いて印加した第1状態で、前記電圧測定回路部(10)の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値(v1)が、前記入力電圧が前記下限電圧(V1)であるときに出力電圧値が採るべき下限規定範囲(S1)内にあるか否かを判定する第1判定を行い、
前記第1状態で検出された出力電圧値(v1)、及び、前記入力電圧が前記入力電圧範囲の上限電圧(V2)であるときに出力電圧値が採るべき上限規定範囲(S2)に基づいて、前記入力電圧が前記下限電圧(V1)と前記上限電圧(V2)との間の中間電圧(V3)であるときに出力電圧値が採るべき中間規定範囲(S3)を設定し、
前記中間電圧(V3)を前記2つの入力部(P1,P2)の間に前記電圧生成回路部(20)を用いて印加した第2状態で、前記電圧測定回路部(10)の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値(v3)が、前記設定された中間規定範囲(S3)内にあるか否かを判定する第2判定を行い、
前記第1判定及び前記第2判定の結果に基づいて、前記電圧測定回路部(10)が正常か否かの自己診断を行うように構成された、自己診断機能付き電圧測定装置(1)。
[2]
上記[1]に記載の自己診断機能付き電圧測定装置(1)において、
前記制御部(40)は、前記第1状態で検出された出力電圧値、並びに、前記上限規定範囲(S2)の上限値及び下限値に基づいて、前記中間規定範囲(S3)を設定するように構成された、自己診断機能付き電圧測定装置(1)。
[3]
2つの入力部(P1,P2)の間の電圧である入力電圧に応じた出力信号を発生する電圧測定回路部(10)と、所定範囲の電圧を生成可能な電圧生成回路部(20)とを備え、前記電圧測定回路部(10)の前記出力信号に基づいて前記入力電圧の測定結果を出力電圧値として検出する電圧測定装置(1)の自己診断方法であって、
入力電圧範囲の下限電圧(V1)を前記2つの入力部(P1,P2)の間に前記電圧生成回路部(20)を用いて印加した第1状態で、前記電圧測定回路部(10)の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値(v1)が、前記入力電圧が前記下限電圧(V1)であるときに出力電圧値が採るべき下限規定範囲(S1)内にあるか否かを判定する第1判定を行うステップと、
前記第1状態で検出された出力電圧値(v1)、及び、前記入力電圧が前記入力電圧範囲の上限電圧(V2)であるときに出力電圧値が採るべき上限規定範囲(S2)に基づいて、前記入力電圧が前記下限電圧(V1)と前記上限電圧(V2)との間の中間電圧(V3)であるときに出力電圧値が採るべき中間規定範囲(S3)を設定するステップと、
前記中間電圧(V3)を前記2つの入力部(P1,P2)の間に前記電圧生成回路部(20)を用いて印加した第2状態で、前記電圧測定回路部(10)の前記出力信号に基づいて検出された出力電圧値(v3)が、前記設定された中間規定範囲(S3)内にあるか否かを判定する第2判定を行うステップと、
前記第1判定及び前記第2判定の結果に基づいて、前記電圧測定回路部(10)が正常か否かの自己診断を行うステップと、
を含む、電圧測定装置(1)の自己診断方法。
【符号の説明】
【0055】
1 電圧測定装置
10 電圧測定回路部
20 電圧生成回路部
40 制御部
P1,P2 入力部
V1 下限電圧
V2 上限電圧
V3 中間電圧
S1 下限規定範囲
S2 上限規定範囲
S3 中間規定範囲
図1
図2
図3
図4
図5