(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
折り畳まれた複数枚のウェットシートが、一のウェットシートの端部が他のウェットシートの折り返し部分に挟み込まれるように積層されたウェットシート積層体であって、
前記ウェットシートは、基材シートに対し、薬液が含浸された含浸部分と、薬液が含浸されていない非含浸部分と、が生じるように薬液が含浸され、
前記含浸部分と前記非含浸部分とは、
前記基材シートが折り畳まれた状態で複数の前記含浸部分と複数の前記非含浸部分とが交互に配置されるストライプ状となるように形成され、
一の前記ウェットシートにおける前記含浸部分と、その一つ上に配置された他の前記ウェットシートにおける前記含浸部分と、が平面視において重ならず、一の前記ウェットシートにおける前記非含浸部分と、その一つ上に配置された他の前記ウェットシートにおける前記非含浸部分と、が平面視において重ならないように配置されていることを特徴とするウェットシート積層体。
前記含浸部分と前記非含浸部分とは、前記ウェットシート積層体の平面視において、前記ウェットシートの折り目と平行なストライプ状となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のウェットシート積層体。
基材シートに薬液を含浸させ、薬液が含浸された複数の含浸部分と、薬液が含浸されていない複数の非含浸部分とを、これらが交互に配置されるストライプ状となるように形成する薬液含浸工程と、
薬液が含浸された前記基材シートを、前記基材シートが折り畳まれた状態で複数の前記含浸部分と複数の前記非含浸部分とが交互に配置されるストライプ状となるように折り畳む折り畳み工程と、
折り畳まれた前記基材シートを、一の前記ウェットシートにおける前記含浸部分と、その一つ上に配置された他の前記ウェットシートにおける前記含浸部分と、が平面視において重ならず、一の前記ウェットシートにおける前記非含浸部分と、その一つ上に配置された他の前記ウェットシートにおける前記非含浸部分と、が平面視において重ならないように積層する積層工程と、
を含むウェットシート積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態であるウェットシート積層体110及びウェットシート積層体110が包装体120に収納されたウェットシート包装体100について、
図1から
図5に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されない。
なお、以下においては、
図1に示すように、前後方向、左右方向及び上下方向並びにX軸、Y軸及びZ軸を定めて説明する。すなわち、ウェットシート包装体100において、袋本体121に取出口121aが形成された側を上、その反対側を下、ウェットシート包装体100の平面視における長辺の一方が位置している側を後、その反対側を前、後を向いた際の右手側を右、後を向いた際の左手側を左とし、前後方向に沿った軸をX軸、左右方向に沿った軸をY軸、上下方向に沿った軸をZ軸とする。
【0017】
[実施形態の構成]
実施形態に係るウェットシート包装体100は、
図1に示すように、ウェットシート111が複数積層されて形成されたウェットシート積層体110が、包装体120に収納されたものである。
【0018】
{ウェットシート積層体}
ウェットシート積層体110は、ウェットシート111が所定の折り方で折り畳まれた上で積層され、これらが所謂ポップアップ式に、最上部のウェットシート111が持ち上げられた際に、次のウェットシート111も持ち上げられるようにし、これを連続して使用することを可能としたものである。
【0019】
(ウェットシートの構成)
ウェットシート111としては、特に限定はなく、一般的な矩形状のウェットティッシュー、トイレクリーナー、キッチンクリーナー等、基材シートに薬液が含浸されて形成された任意のものを用いることができる。
【0020】
具体的には、基材シートは、例えば、ウェットティッシューであれば、所定の繊維を繊維素材として、スパンレース、エアスルー、エアレイド、ポイントボンド、スパンボンド、ニードルパンチ等の周知の技術により製造される不織布であることが好ましい。所定の繊維としては、例えば、レーヨン、リヨセル、テンセル、コットン等のセルロース系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、基材シートは、例えば、ウェットティッシューであれば、目付が30から100gsm、大きさが、MD方向(抄紙機上の紙の進行方向)に100mmから200mm、CD方向(抄紙機上の紙の進行方向と直角する方向)に100mmから200mmに形成されたものが好適である。なお、目付は、JIS P 8124:2011に従って測定した坪量をいう。
【0021】
基材シートに含浸される薬液としては、ウェットシート111の用途に応じて任意のものを用いることができるが、例えば、ウェットティッシューであれば、精製水、防腐剤、pH調整剤等を含有するものが好適である。
また、この場合、薬液含浸率は100質量%以上、400質量%以下であることが好ましい。なお、薬液含浸率とは、薬液含浸前のウェットシート111の基材シートの質量と、含浸させる薬液の質量とを測定し、薬液含浸前の基材シートの質量に対する含浸させる薬液の質量の割合を算出したものをいう。
なお、ウェットシート111における、基材シートに対する薬液の含浸のパターンについては後述する。
【0022】
(ウェットシートの折り畳み方法)
ウェットシート積層体110は、複数の矩形状のウェットシート111のそれぞれが折り畳まれた上で、複数積層されることによって形成されているが、まず、各ウェットシート111の折り畳み方につき、
図2に基づいて説明する。
【0023】
まず、ウェットシート111は、ウェットシート111の一辺(当該辺を第一辺部111aといい、第一辺部111aと対向する辺を第二辺部111bという。)と略平行な第一折り目111eにおいて、ウェットシート111の一面側(当該面を第一面111cといい、これと反対側の面を第二面111dという。)に折り返されている。
さらに、ウェットシート111は、第一折り目111eと、第一辺部111aとの間に形成された、第一辺部111a及び第二辺部111bと略平行な第二折り目111fにおいて、ウェットシート111の第二面111d側に折り返されている。
さらに、ウェットシート111は、第二折り目111fと、第一辺部111aとの間に形成された、第一辺部111a及び第二辺部111bと略平行な第三折り目111gにおいて、第一折り目111eの外周を回り込むように、第二面111d側に折り返されている。
さらに、ウェットシート111は、第三折り目111gと、第一辺部111aとの間に形成された、第一辺部111a及び第二辺部111bと略平行な第四折り目111hにおいて、第一面111c側に折り返されている。
なお、第四折り目111hは、上記のように第一面111c側へと折り返されることが望ましいが、これと反対に第二面111d側へと折り畳まれるようにすることも可能である。
【0024】
なお、第二辺部111bと第一折り目111eとの間の部分を主部111iといい、第一折り目111eと第二折り目111fとの間の部分を第一折り返し部111jといい、第二折り目111fと第三折り目111gとの間の部分を第二折り返し部111kといい、第三折り目111gと第四折り目111hとの間の部分を第三折り返し部111lといい、第四折り目111hと、第一辺部111aとの間の部分を、第四折り返し部111mという。
【0025】
この場合、主部111iの幅(第一辺部111a及び第二辺部111bと直交する方向の長さ)が、ウェットシート111全体の幅の40%から45%であり、第一折り返し部111jの幅が、ウェットシート111全体の幅の14%から20%であり、第二折り返し部111kの幅が、ウェットシート111全体の幅の14%から20%であり、第三折り返し部111lの幅が、ウェットシート111全体の幅の17%から23%であり、第四折り返し部111mの幅が、ウェットシート111全体の幅の1%から5%であることが好ましい。
なお、第三折り目111gを、第一折り目111eの外周を回り込むように形成するため、第二折り返し部111kの幅は、第一折り返し部111jの幅よりも大きいか同一である必要がある。
また、第四折り返し部111mは、上下方向に第一折り返し部111j及び第二折り返し部111kと重なるように形成されていることが好ましい。
【0026】
なお、ウェットシート111における第四折り目111h及び第四折り返し部111mは、これらが備えられていることが好ましいが、必須ではなく、これらを備えず、第一辺部111aに至るまで第三折り返し部111lとされていてもよい。
【0027】
また、第一辺部111a及び第二辺部111bが、矩形状のウェットシート111の短辺であり、第一折り目111e、第二折り目111f、第三折り目111g及び第四折り目111hが、ウェットシート111の短辺と略平行に形成され、ウェットシート111が長手方向に折り返されることで、折り畳まれていない状態におけるウェットシート111の長手方向が、ウェットシート積層体110の平面視における短手方向となるように、ウェットシート積層体110が形成されていることが、ウェットシート積層体110をコンパクトに形成する上で望ましい。
ただし、これに限られず、ウェットシート積層体110をコンパクトに形成する上で望ましくはないものの、第一折り目111e、第二折り目111f、第三折り目111g及び第四折り目111hが、ウェットシート111の長辺と略平行に形成され、ウェットシート111が短手方向に折り返されるようにすることも可能である。
【0028】
(薬液の含浸パターン)
ウェットシート111のそれぞれには、
図2及び
図3に示すように、折り畳まれた状態で、平面視において、薬液が含浸された複数の含浸部分Wと、薬液が含浸されていない複数の非含浸部分Dとが交互に配置されたストライプ状となるように薬液が含浸されている。
含浸部分Wと非含浸部分Dとを合わせたストライプの本数は、折り畳まれた状態のウェットシート111の平面視において、2本から20本であることが好ましく、4本から10本であることがさらに好ましい。また、ウェットシート111を広げた状態において、4本から30本であることが好ましく、10本から20本であることがさらに好ましい。
なお、薬液が一切含まれていない部分のみではなく、積層後に周囲のウェットシート111の含浸部分Wの影響で、僅かに薬液が含まれてしまった部分も、非含浸部分Dに含まれるものとする。
【0029】
具体的には、ウェットシート111には、
図3に示すように、ウェットシート111に形成された各折り目と平行なストライプ状となり、ウェットシート111に形成された各折り目と直交する方向(
図3おけるX方向)において、含浸部分Wと非含浸部分Dとが交互に配置されるようにして、薬液が含浸されている。
また、含浸部分Wは、基材シートに形成された各折り目と直交する方向(
図3におけるX方向)に、2mmから40mmの幅に形成されることが好ましく、5mmから20mmの幅に形成されることがさらに好ましい。
また、非含浸部分Dは、基材シートに形成された各折り目と直交する方向(
図3におけるX方向)に2mmから40mmの幅に形成されることが好ましく、5mmから20mmの幅に形成されることがさらに好ましい。
【0030】
{シートの伸び}
ウェットシート積層体110を構成するウェットシート111は、以下の試験方法によって、1.5Nの力を掛けたときの伸びが100mm以下であることが好ましい。
ウェットシート111の伸びは、薬液が含浸されたウェットシート111の主部111iにつき、含浸部分Wと、非含浸部分Dとで形成されるストライプと直交する方向の幅が50mmとなるように裁断した後、これを、含浸部分Wと、非含浸部分Dとで形成されるストライプに沿った方向に、1.5Nで引っ張った際の伸びを、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製TENSILON RTG1210)を用いて、チャック間距離100mm、速度100mm/minで計測した値である。
【0031】
なお、ウェットシート111の伸びは、基材シートへのバインダーの添加や、基材シートがスパンレース不織布であれば、形成時の水圧を高くし、圧縮率を高めること等によって小さくすることができる。
【0032】
(シートの積層方法)
ウェットシート積層体110は、上記のように折り畳まれ、薬液が含浸されたウェットシート111が、主部111iにおいて第二面111dが上を向くようにして複数積層され、形成されている。
具体的には、
図4に示すように、第一辺部111a側と、第二辺部111b側と、が反対を向くように配置されたウェットシート111が交互に重ねられることで、ウェットシート積層体110が形成されている。
また、それぞれのウェットシート111の主部111iの第二辺部111b近傍は、最上部のウェットシート111を除いて、一つ上部のウェットシート111の第一折り返し部111jと、主部111iとの間に挟まれるように配置されている。
なお、この場合、下方に位置するウェットシート111の主部111iの第二辺部111b近傍が、一つ上部のウェットシート111の第一折り返し部111jと主部111iとの間に挟まれる幅は、下方に位置するウェットシート111の主部111iの幅の5%から35%であることが好ましい。
【0033】
また、
図4に示すように、各ウェットシート111における含浸部分Wが、その一つ上及び一つ下に位置するウェットシート111における含浸部分Wと平面視において重ならず、互い違いに配置されるようにウェットシート111が積層されていることが最も好ましい。
ただし、必ずしもこれに限られず、各ウェットシート111における含浸部分Wが、その一つ上及び一つ下に位置するウェットシート111における含浸部分Wと平面視において略同一の位置となるように積層することもできるし、各ウェットシート111における含浸部分Wが、その一つ上及び一つ下に位置するウェットシート111における含浸部分Wと重なる部分と重ならない部分との両者が生じるように積層することも可能である。
【0034】
ウェットシート111を積層する枚数に特に制限はないが、40枚から80枚であることが好ましい。
【0035】
{包装体}
包装体120は、
図1に示すように、上面にウェットシート111を1枚ずつ取り出す取出口121aが形成された袋本体121と、取出口121aを開閉自在に覆う蓋材122と、から構成され、
図4に示すように、内部にウェットシート積層体110が収納されて使用される。
なお、
図1及び
図4においては、ウェットシート積層体110を形成するウェットシート111の第一辺部111a及び第二辺部111bが、包装体120の平面視における長手方向と略平行となる場合につき図示している。
【0036】
(袋本体)
袋本体121は、シート材により袋状に形成されている。シート材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂シートの単材若しくは複合材、又はこれら合成樹脂シートとアルミフォイル若しくは紙等を貼り合わせた複合シートを使用することができる。
また、シート材の厚みは、40μmから70μmであることが好ましい。
また、袋本体121を構成するシート材は、袋本体121の底面側で袋本体121の長手方向に沿って接合され、センターシール部121bを構成するとともに、袋本体121の長手方向の両端部で接続され、エンドシール部121c、121cを構成している。
【0037】
袋本体121の大きさは、収納されるウェットシート積層体110の大きさに応じて定められるが、包装体120を不必要に大きくすることなく、かつ使用開始時におけるウェットシート111の取り出しが困難とならないように、ウェットシート積層体110を若干の余裕をもって収納できる大きさであることが好ましい。
【0038】
(取出口)
袋本体121の上面に形成された取出口121aの形状は、特に限定されないが、
図1(a)に示すように、楕円形が好ましく、かつ、引き出されるウェットシート111に適切な抵抗を掛けるため、取出口121aの大きさは、取出口121aの長手方向に30mmから50mm、短手方向に10mmから30mmであることが好ましく、長手方向に35mmから45mm、短手方向に13mmから18mmであることがさらに好ましい。
また、長手方向が、内部に収納されたウェットシート111の各折り目の方向と略平行となるように形成されていることが望ましい。
【0039】
また、
図4に示すように、取出口121aは、平面視において、内部のウェットシート積層体110を構成するウェットシート111の、第三折り返し部111l及び第四折り返し部111mと重ならない位置に形成され、平面視において取出口121aから、ウェットシート111の主部111iのみが見えるようになっていることが望ましい。
これによって、使用者が、第三折り返し部111l又は第四折り返し部111mを掴んでウェットシート111を引き出してしまうことを防止できる。
【0040】
(蓋材)
蓋材122は、
図1(a)に示すように、袋本体121とは別体のシート片により、取出口121aを開閉自在に覆うように構成されている。蓋材122を構成するシート片の材質としては、袋本体121を構成するシート材と同様のものを用いることができる。
蓋材122を構成するシート片の厚みは、袋本体121を構成するシート材よりも厚く、60μmから80μmであることが好ましい。
【0041】
蓋材122の形状は、取出口121aを完全に覆うことができれば特に限定されることはなく、例えば、矩形状、楕円形状など任意の形状とすることができる。
また、蓋材122の裏面には、ポリエステル系、アクリル系、ゴム系等の感圧接着剤が塗布されており、蓋材122は、取出口121aを開閉自在に覆うように袋本体121に接着される。
【0042】
また、蓋材122は、一端部が袋本体121に固定され、他端部には、
図1(a)に示すように、当該端部から突出した摘み部122aが設けられ、摘み部122aの下面にのみ前記感圧接着剤が塗布されていない。これによって、摘み部122aを利用して蓋材122を開閉させることが容易となる。
【0043】
{製造方法}
次に、実施形態に係るウェットシート包装体100の製造方法の一例について説明する。
【0044】
(ステップ1:折り畳み工程)
まず、各ウェットシートの基材シートにつき、第一辺部111a近傍を、第一面111c側へと折り畳んで第四折り目111hを形成したのち、第四折り目111hから第二辺部111b方向へと所定の間隔を空けた位置において、第二面111d側へと折り畳むことで、第二折り目111fを形成する。
さらに、第二折り目111fにおいて折り畳まれて基材シートが二重に重なった部分を、重なった状態のままで、第四折り目111hと反対側に折り畳むことによって、第一折り目111e及び第三折り目111gをまとめて形成する。
これによって、各ウェットシート111の基材シートにつき、
図2に示すように折り畳むことができる。
【0045】
(ステップ2:薬液含浸工程)
続いて、ステップ1において折り畳まれた基材シートに、薬液を含浸させる。
この際には、例えば薬液塗布ノズルを用いて、基材シートに薬液を含浸させる。具体的には、基材シートに形成された折り目と直交する方向に延在するように配置された薬液塗布ノズルの下を、薬液塗布ノズルの延在方向と直交する方向(基材シートに形成された折り目と平行な方向)へと移動しつつ通過させることによって、基材シートに薬液を含浸させる。
【0046】
この薬液塗布ノズルには、下方へと薬液を噴出するための微細な噴出孔が複数設けられているが、このような噴出孔が設けられた部分が、基材シートの移動方向と直交する方向において、ウェットシート111の含浸部分Wと一致する位置にのみ形成されていることによって、薬液塗布ノズルの下を通過した基材シートに対し、複数の含浸部分Wと複数の非含浸部分Dとを、これらが交互に配置されるストライプ状となるように形成することができる。
【0047】
なお、薬液の含浸方法は、上記のようにノズルから薬液を噴出する方法に限られず、例えば、ウェットシート111における含浸部分W及び非含浸部分Dと一致するパターンで薬液を塗布するロールを用いて、ロール転写してもよい。
【0048】
(ステップ3:積層工程)
続いて、基材シートが折り畳まれた後に、薬液が含浸されて形成されたウェットシート111につき、主部111iにおいて第二面111dが上を向くようにして複数積層する。
具体的には、
図4に示すように、第一辺部111a側と、第二辺部111b側と、が反対を向くように配置されたウェットシート111が交互に重ねられ、かつ、それぞれのウェットシート111の主部111iの第二辺部111b近傍が、最上部のウェットシート111を除いて、一つ上部のウェットシート111の第一折り返し部111jと、主部111iとの間に挟まれるように、所定枚数のウェットシート111を積層することで、ウェットシート積層体110を形成する。
【0049】
(ステップ4:包装工程)
形成されたウェットシート積層体110につき、包装体120の袋本体121を形成するシート材により包んだ上で、当該シート材を、袋本体121の底面側で袋本体121の長手方向に沿って接合して、センターシール部121bを形成するとともに、袋本体121の長手方向の両端部で接続して、エンドシール部121c、121cを形成することによって、袋本体121内に収納する。
この後、袋本体121の取出口121aを覆うようにして、蓋材122を貼付する。
【0050】
[実施形態の効果]
実施形態に係るウェットシート包装体100によれば、
図2及び
図3に示すように、ウェットシート積層体110を形成する各ウェットシート111につき、ウェットシート積層体110の平面視において複数の含浸部分Wと複数の非含浸部分Dとがストライプ状となるように形成され、これが積層されている。
ウェットシートが積層されている場合、上下のウェットシート間の薬液が水素結合することで、ウェットシート同士を強く貼り付かせ、これがウェットシートが連なって取り出される要因となるが、本実施形態によれば、このような上下のウェットシート間の貼り付きを弱めることができ、ウェットシートが連なって取り出されてしまうおそれを低減することができる。
【0051】
また、同じ面積の非含浸部分を設けても、例えば、ウェットシートを2分するようにして、含浸部分と非含浸部分とを設けた場合等、ウェットシート積層体の平面視において、単一の含浸部分の面積が広くなる場合、当該含浸部分においてウェットシート同士が強く貼り付いてしまい、十分に連なりを防止することができない場合がある。
これに対し、本実施形態によれば、ウェットシート積層体110の平面視において、複数の含浸部分と複数の非含浸部分とがストライプ状となるように配置されていることで、ウェットシート同士の貼り付きを、その全面につき均一に近い形で弱めることができ、ウェットシートの連なりを防止する効果を高めることができる。
【0052】
また、ウェットシートの連なりを防止する効果は、
図4に示すように、各ウェットシート111における含浸部分Wが、その一つ上及び一つ下に位置するウェットシート111における含浸部分Wと平面視において重ならず、互い違いに交互に配置されるように各ウェットシート111が積層されている場合において、一つ上及び一つ下に位置するウェットシート111と、含浸部分W同士が接する部分が生じなくなることから、最も高めることができる。
【0053】
しかし、ウェットシートの連なりを防止する効果が得られるのは互い違いに配置された場合には限られない。
まず、各ウェットシート111における含浸部分Wが、その一つ上及び一つ下に位置するウェットシート111における含浸部分Wとずれた位置に配置され、平面視において重なる部分と重ならない部分の両者が生じるように積層された場合においては、含浸部分W同士が接する部分が生じるものの、その面積は狭く、同時に非含浸部分D同士が接する部分及び非含浸部分Dと含浸部分Wとが接する部分も形成されることから、ウェットシート111の全体に薬液が含浸された場合と比較して、ウェットシート111同士の貼り付きを弱めることができ、含浸部分Wと非含浸部分Dとが互い違いに配置された場合には劣るものの、十分な効果を得ることができる。
【0054】
また、各ウェットシート111における含浸部分Wが、その一つ上及び一つ下に位置するウェットシート111における含浸部分Wと平面視において略同一の位置となるように積層されている場合においても、含浸部分W同士が接する部分が生じるものの、同時に非含浸部分D同士が接する部分も形成されることから、ウェットシート111の全体に薬液が含浸された場合と比較して、ウェットシート111同士の貼り付きを弱めることができ、含浸部分Wが、その一つ上及び一つ下に位置するウェットシート111における含浸部分Wとずれた位置に配置された場合には劣るものの、一定の効果を得ることができる。
【0055】
また、実施形態に係るウェットシート包装体100によれば、
図4に示すように、上下のウェットシート111が重なった部分において、上側のウェットシート111の主部111i、第三折り返し部111l及び第四折り返し部111mと、第一折り返し部111j及び第二折り返し部111kとの間に、下側のウェットシート111の主部111iの第二辺部111b近傍が挟まれる形となり、6層にシートが重なることとなる。
これによって、ウェットシート111を、主部111iを掴んで、第二辺部111b付近から包装体120の取出口121aを用いて引き出す際の抵抗が大きくなり、大きな力が掛からない限りウェットシート111が取り出されなくなることから、一枚のウェットシート111を取り出す際に、その直下のウェットシート111が連なって取り出されてしまうおそれをさらに低減できる。
【0056】
なお、この効果は、第四折り目111h及び第四折り返し部111mが形成されていることによって高められているが、これらが設けられずとも、5層のシート材が重なることから、一定の効果を得ることができる。
【0057】
さらに、一枚のウェットシート111を包装体120の取出口121aから引き出す際には、上記の重なった部分に大きな抵抗が掛かり、第一折り目111e及び第三折り目111gが開かれ、主部111iと第一折り返し部111jとの間隔が開くこととなる。これによって、主部111iと第一折り返し部111jとの間に挟まれていた、次のウェットシート111の主部111iの第二辺部111b近傍が開放され、次のシートが外れやすくなる。
したがって、この点からも、一枚のウェットシート111を取り出す際に、その直下のウェットシート111が連なって取り出されしまうおそれを低減できる。
【0058】
また、実施形態に係るウェットシート包装体100によれば、ウェットシート111を、主部111iを掴んで包装体120の取出口121aから引き出す際に、第二折り目111fが広がり難いことから、第一辺部111a付近が、第二折り目111fにおいて折り畳まれた状態のままで、ウェットシート111が取り出されることとなる。
従来のZ字状に折られたものにおいては、ウェットシート111全体が伸ばされた状態で取り出されることから、ウェットシート111の取り出し時に使用者が掴んだのと反対側の端部付近が、取り出し時の抵抗によって伸びてしまい易いが、本実施形態によれば、当該端部付近が折り畳まれた状態のままで取り出されるため、このようなおそれも低減できる。
【0059】
[変形例]
上記実施形態においては、基材シートを折り畳んだ後に、これに薬液を含浸させ、この後に、ウェットシートを積層させ、ウェットシート積層体とする場合につき説明したが、ウェットシート積層体の製造方法はこれに限られない。
【0060】
まず、基材シートにストライプ状に薬液を含浸させた後に、これを
図2に示す折り方で折り畳み、この後に、
図4に示す積層方法でウェットシートを積層させ、ウェットシート積層体としてもよい。
【0061】
また、基材シートを
図2に示す折り方で折り畳んだ後に、
図4に示す積層方法で積層させ、積層体とした後に、薬液を含浸させウェットシート積層体とすることも可能である。
ただし、この場合、各ウェットシートにおける含浸部分Wが、その一つ上及び一つ下に位置するウェットシートにおける含浸部分Wと平面視において略同一の位置となるように積層されたウェットシート積層体しか形成することができず、かつ、ウェットシート積層体を形成するウェットシートの数が多く、ウェットシート積層体が上下に厚い場合に、薬液が塗布される上面から離れた下方に位置するウェットシートにおいて、含浸部分Wと非含浸部分Dとによって形成されるストライプ状のパターンが明確でなくなるおそれがあることから、望ましくはない。
【0062】
また、上記実施形態においては、ウェットシート111において、含浸部分Wと非含浸部分Dとが、折り目と平行な方向(
図2及び
図3におけるY方向)に沿ったストライプ状となり、折り目と直交する方向(
図2及び
図3におけるX方向)において、交互に配置されるように形成される場合につき説明したが、これに限られず、例えば反対に、含浸部分Wと非含浸部分Dとが、折り目と直交する方向(
図2及び
図3におけるX方向)に沿ったストライプ状となり、折り目と平行な方向(
図2及び
図3におけるY方向)において、交互に配置されるように形成されていてもよい。また、ウェットシートの折り目に対して斜めとなるように形成することも可能である。
ただし、製造の容易性の観点からは、含浸部分Wと非含浸部分Dとが、ウェットシートの折り目と平行な方向(
図2及び
図3におけるY方向)に沿ったストライプ状となることが好ましい。
【0063】
また、上記実施形態においては、各ウェットシート111が
図2に示す折り畳み方で折り畳まれ、これが
図4に示す積層方法で積層された場合につき説明したが、具体的なウェットシートの折り畳み方及びその積層方法はこれに限られない。
例えば、
図5に示すような、従来のようにZ字状に折り畳まれたウェットシート111Aが、一部が重なるように積層されて形成されたウェットシート積層体110Aにおいても、含浸部分Wと非含浸部分Dとを、ウェットシート積層体110Aの平面視においてこれらが交互に配置されるストライプ状となるように設けることによる効果は、同様に得ることができる。
【0064】
この場合も、
図5に示すように、各ウェットシート111Aにおける含浸部分Wが、その一つ上及び一つ下に位置するウェットシート111Aにおける含浸部分Wと平面視において重ならず、互い違いに交互に配置されるように形成されることが好ましく、また、ウェットシート111Aにおける折り目と平行な方向(
図5におけるY方向)に沿ったストライプ状となることが好ましいが、これには限られない。
【0065】
ただし、ウェットシート111が連なって取り出されてしまうことを防止する効果をより高めるためには、各ウェットシート111が
図2に示す折り畳み方で折り畳まれ、これが
図4に示す積層方法で積層されていることが最も好ましい。
【実施例】
【0066】
次に、本発明の実施例及び比較例に係るウェットシート包装体につき、ウェットシート同士の張り付く力の測定及び取り出し時に連なって取り出されてしまう確率に関する試験を行った結果について説明する。
【0067】
[実施例及び比較例の構成]
以下の実施例及び比較例に係るウェットシート包装体を用意した。
【0068】
{実施例1}
(ウェットシート積層体)
<基材シートの構成>
大きさ:MD方向135mm、CD方向175mmの矩形状
繊維材料:レーヨン50質量%、PET(ポリエチレンテレフタレート)50質量%
製法:スパンレース不織布
目付:30gsm
<薬液の構成>
成分:精製水を99質量%以上、防腐剤(安息香酸、フェノキシエタノール等)を1質量%未満
薬液含浸率:230%。
<積層・含浸方法>
基材シートにつき、MD方向と平行な折り目によって、第一折り目111e、第二折り目111f、第三折り目111g及び第四折り目111hを形成し、主部111iがCD方向に75mmの幅、第一折り返し部111jがCD方向に30mmの幅、第二折り返し部111kがCD方向に30mmの幅、第三折り返し部111lがCD方向に35mmの幅、第四折り返し部111mがCD方向に5mmの幅となるように、
図2に示す折り畳み方で折り畳んだ。
このように折り畳まれた基材シートにつき、MD方向と平行となり、CD方向において含浸部分Wと非含浸部分Dとが交互に配置されるストライプ状に、薬液を含浸させた。
具体的には、折り畳まれた状態の基材シートの平面視において、含浸部分WがCD方向に約12.5mm(12〜13mm)の幅で3本、非含浸部分DがCD方向に約12.5mm(12〜13mm)の幅で3本形成されるストライプ状となり、第二辺部111bが形成された側の基材シートの端部が含浸部分Wなるように、薬液を含浸させた。なお、この場合、基材シートを広げた状態とすると、含浸部分WがCD方向に7本、非含浸部分DがCD方向に7本形成されることとなる。
このようなウェットシート111を、下方に位置するウェットシート111の主部111iの第二辺部111b近傍が、一つ上部のウェットシート111の第一折り返し部111jと、主部111iとの間に、CD方向に20mmの幅で挟まれるようにして、
図4に示すように、80枚積層した。
なお、各ウェットシート111における含浸部分Wが、その一つ上及び一つ下に位置するウェットシート111の含浸部分Wとずれた位置に配置され、平面視において含浸部分W同士が重なる部分と重ならない部分の両者が生じるように積層した。
【0069】
<シートの伸び>
段落0030に記載の方法で1.5Nの力を掛けたときのウェットシートの伸びが71.6mmであった。
【0070】
(包装体)
<袋本体>
シート材:材料PET/LLDPE、厚み62μm
形状:
図1に示すピロー包装型。
大きさ:エンドシール部121c、121cを除いた平面視における長手方向の断面(
図1におけるYZ面に沿った断面)において、内面側の周長が360mmとなり、平面視における短手方向の断面(
図1におけるXZ面に沿った断面)において、内面側の周長が260mm
取出口:長径35mm、短径15mmの楕円形。袋本体の上面の中央に形成した。なお、蓋材を剥がして、取出口を開放状態としたものを用いた。
【0071】
{実施例2}
段落0030に記載の方法で1.5Nの力を掛けたときのウェットシートの伸びを101.0mmとした。
なお、ウェットシートの伸びは、基材シートを構成する繊維材料の配合は実施例1と変えることなく、スパンレース不織布形成時の水圧を弱め、基材シートの圧縮を弱めることによって、実施例1よりも大きくした。
その他の構成は、実施例1と同様である。
【0072】
{比較例1}
薬液を基材シートの全体に対し、均一に含浸させたものである。なお、含浸のパターンをストライプ状から全体に均一なものに変更したのみで、薬液含浸率は実施例1と同様に230%である。
その他の構成は、実施例1と同様である。
【0073】
[試験方法]
上記実施例及び比較例に係るウェットシート包装体を用いて、以下の試験を行った。
【0074】
{シート同士の張り付く力の測定}
上記実施例及び比較例のウェットシート包装体について、ウェットシート同士が張り付く力について測定した。
具体的には、ウェットシート積層体を包装体から取り出した上で、デジタルフォースゲージ(IMADA、DS2-200N)を、ウェットシート111の、包装体に包装されていた際に取出口121aと平面視において重なっていた部分に接続し、当該状態でウェットシート111を垂直方向に引っ張って、一つ下のシートから引き剥がす際に掛かった力の最大値を、1〜79枚目まで測定し、その平均値を求めた。
【0075】
{取り出し時に連なって取り出されてしまう確率に関する試験}
上記実施例及び比較例に用いられたウェットシート包装体について、ウェットシートを複数枚連続して取り出し、その際に連なって取り出されてしまう確率を算出した。
具体的には、各シート包装体について、上面を抑えず、平面視における長手方向の一端部近傍を平面視における短手方向の両側から挟み込むようにして片手で押さえた状態(一側面に親指があたり、これと対向する他の側面に中指及び人さし指が当たり、これらで挟み込む状態)で、一枚ずつウェットシートを引き出した。
具体的には、ウェットシートが80枚収納された状態から、1枚ずつ、80枚全てを引き出した。
なお、1枚取り出したときにその下のシートがつながって出てきて、2枚目のシートが、包装体から完全に取り出されてしまった場合に、連なって取り出されたと判断し、このようなシートの数を数えた。
また、2回の試験を行い、その平均を連なって取り出された枚数とした。したがって、例えば1回目が1枚、2回目が0枚であれば、連なって取り出された枚数は、0.5枚ということとなる。
【0076】
[試験結果]
試験の結果を表Iに示す。
【0077】
【表1】
【0078】
[評価]
実施例1と比較例1との比較から、複数の含浸部分Wと複数の非含浸部分Dとが、ウェットシート積層体の平面視において交互に配置されるストライプ状となるように薬液が含浸されたウェットシートによってウェットシート積層体を形成することで、薬液を全体に対して均一に含浸させたウェットシートによってウェットシート積層体を形成した場合と比較して、シート同士の張り付く力が弱くなることが分かる。
したがって、一枚のシートを引き出す際に、引き出すシートによって、その下のシートが張り付いて引っ張られる力が弱くなることから、シートが連なって引き出され難くなる。
また、実際の引き出し試験においても、複数の含浸部分Wと複数の非含浸部分Dとが、ウェットシート積層体の平面視において交互に配置されるストライプ状となるように薬液が含浸されたウェットシートによってウェットシート積層体を形成することで、薬液を全体に対して均一に含浸させたウェットシートによってウェットシート積層体を形成した場合と比較して、連なって取り出される確率を低減できることが分かる。
【0079】
また、実施例1と実施例2との比較から、段落0030に記載の方法で1.5Nの力を掛けたときの伸びが100mm以下となるウェットシートによって、ウェットシート積層体を形成することによって、ウェットシートが連なって取り出される確率を低減できることが分かる。