(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体フレーム(11)に揺動可能に設けられる上アーム(55)及び下アーム(56)からなるスイングアーム(51)と、前記上アーム(55)及び下アーム(56)に揺動可能に連結されるフォークフォルダ(52)と、前記フォークフォルダ(52)に操舵可能に支持されるとともに前輪(14)を支持するフロントフォーク(53)と、前記車体フレーム(11)から前記下アーム(56)に延びる緩衝器(58)とを備えた鞍乗型車両の前輪懸架装置において、
前記フォークフォルダ(52)は、車幅方向に延びる延出部(52c)を備え、前記延出部(52c)に前記上アーム(55)の前端部が取付けられ、
前記フォークフォルダ(52)は上下に延びる円筒状部材であり、前記フロントフォーク(53)の上部を構成する前輪操舵軸(101)は、前記円筒状部材の筒内に回動可能に支持され、
前記延出部(52c)は、前記円筒状部材から車幅方向外側に延出し、
前記フォークフォルダ(52)と前記上アーム(55)とを連結する連結軸(123)は、前記延出部(52c)に結合されるスタッドボルトであり、
前記連結軸(123)は、車両側面視で前輪操舵軸(101)に車幅方向外側から重なることを特徴とする鞍乗型車両の前輪懸架装置。
車両側面視で、前記緩衝器(58)と、前記上アーム(55)及び前記車体フレーム(11)のそれぞれを連結する連結部(121)とが重なることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両の前輪懸架装置。
車両側面視で、前記下アーム(56)と前記緩衝器(58)との連結部(96)は、前記下アーム(56)の前記車体フレーム(11)への連結部(122)よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗型車両の前輪懸架装置。
前記上アーム(55)と前記下アーム(56)とは、上下に隔てて重なるように配置されるとともに前記上アーム(55)は、前記下アーム(56)に沿って配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鞍乗型車両の前輪懸架装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。なお、説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示している。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る前輪懸架装置20を備える自動二輪車10を示す左側面図である。
自動二輪車10は、車体フレーム11の前部に前スイング機構12を介して前輪14が支持され、車体フレーム11の後部に後スイングアーム16を介して後輪17が支持され、車体フレーム11の上部にシート18が支持される。自動二輪車10は、運転者及び同乗者がシート18に跨って着座する鞍乗型車両である。
【0016】
車体フレーム11は、左右一対のアッパーフレーム21、トップフレーム22、左右一対のピボットフレーム23、左右一対のシートフレーム24、左右一対のサブフレーム26、左右一対のダウンフレーム27、左右一対のロアフレーム28を備える。
左右のアッパーフレーム21は、エンジン41の上方に配置され、上方に凸となるように屈曲している。アッパーフレーム21の上部には、燃料タンク43が支持されている。トップフレーム22は、上端を構成するヘッドパイプ31と、左右のアッパーフレーム21に取付けられてヘッドパイプ31を支持する複数のヘッドパイプ支持フレーム32とからなる。ヘッドパイプ31は、ハンドル45が取付けられたハンドル操向軸46(
図3参照)を回動可能に支持する。
【0017】
左右のピボットフレーム23は、アッパーフレーム21の後端部から下方に延び、車幅方向に延びるピボット軸48を支持している。左右のシートフレーム24は、左右のピボットフレーム23の上端部から後方に延びて、シート18を支持している。
左右のサブフレーム26は、それぞれピボットフレーム23とシートフレーム24とを接続している。左右のダウンフレーム27は、それぞれ左右のアッパーフレーム21のそれぞれの前側下端から下方斜め後方に延びている。また、左右のダウンフレーム27は、左右のピボットフレーム23と協働してエンジン41を支持している。左右のロアフレーム28は、左右のダウンフレーム27の下端部からそれぞれ後方に延びて後端部が左右のピボットフレーム23のそれぞれの下端部に接続されている。
【0018】
前スイング機構12は、車体フレーム11の前部に揺動可能に支持された前スイングアーム51と、前スイングアーム51に揺動可能に連結されたフォークフォルダ52と、フォークフォルダ52に回動可能に支持されたフロントフォーク53とから構成される。
前スイングアーム51は、左右のアッパーフレーム21の上部とフォークフォルダ52の上部とを連結する左右一対の上アーム55、及び左右のアッパーフレーム21の下端部とフォークフォルダ52の下部とを連結する左右一対の下アーム56から構成される。
【0019】
フォークフォルダ52は、円筒状の部材であり、上端が下端よりも車両後方に位置するように後傾している。
フロントフォーク53は、上部がフォークフォルダ52内に挿入されてフォークフォルダ52に回動可能に支持されている。フロントフォーク53の上端部は、リンク機構61を介してハンドル45に連結され、フロントフォーク53の下端部には、車軸63を介して前輪14が支持されている。
左右のアッパーフレーム21側と左右の下アーム56側とには、緩衝器であるフロントクッションユニット58が渡されている。
【0020】
上記した前スイング機構12(前スイングアーム51、フォークフォルダ52、フロントフォーク53)及びフロントクッションユニット58は、前輪14を懸架する前輪懸架装置20を構成する。
ピボット軸48には、上下揺動可能に後スイングアーム16の前端部が取付けられ、後スイングアーム16の後端部に車軸65を介して後輪17が支持されている。
後スイングアーム16の左右の後端部と車体フレーム11の後部の左右とには、それぞれ左右一対の緩衝器であるリアクッションユニット66が渡されている。
【0021】
エンジン41は、クランクケース67と、クランクケース67の前部から上方斜め前方に延びるシリンダ部68とを備え、シリンダ部68にシリンダヘッド71を備える。シリンダヘッド71の後面には、エアクリーナ等を含む吸気装置72が接続されている。シリンダヘッド71の前面には、排気装置74が接続されている。排気装置74は、シリンダヘッド71に接続された複数の排気管75と、複数の排気管75の後端部に接続されたマフラ76とを備える。
ハンドル45にはメーター81及び左右一対のバックミラー82が取付けられている。
車体フレーム11の上部及び燃料タンク43の前部は、左右側方から左右一対の前部カバー85で覆われている。
前輪14は、上方からフロントフェンダー87で覆われ、後輪17は、上方からリアフェンダー88で覆われている。
【0022】
図2は、自動二輪車10の車体前部を示す左側面図(第1実施形態)である。
車体フレーム11は、エンジン41を囲むように無端状とされた左右一対のパイプ製のループ状フレーム35を備え、左右のループ状フレーム35の上部にトップフレーム22が取付けられている。
左右のループ状フレーム35は、左右一対のアッパーフレーム21、左右一対のピボットフレーム23、左右一対のダウンフレーム27、左右一対のロアフレーム28から構成される。左右のループ状フレーム35は、車幅方向に延びる複数のクロスパイプ(不図示)で接続されている。
エンジン41は、前部が左右のダウンフレーム27にそれぞれ設けられた左右一対の前エンジンハンガ91で支持され、後部が左右のピボットフレーム23にそれぞれ左右一対設けられた後上エンジンハンガ92、後下エンジンハンガ93で支持されている。
【0023】
左右の上アーム55は、それぞれ直線状に形成され、上アーム55の前端部55aは、フォークフォルダ52の上部に連結され、上アーム55の後端部55bは、アッパーフレーム21の上部に連結されている。
左右の下アーム56は、それぞれ上方に凸となる屈曲した形状に形成され、下アーム56の前端部56aは、フォークフォルダ52の下部に連結され、下アーム56の後端部56bは、アッパーフレーム21の下端部に連結されている。
フロントクッションユニット58の上端部58bは、左右のアッパーフレーム21に渡された上部連結軸95に揺動可能に連結されている。フロントクッションユニット58の下端部58aは、左右の下アーム56に渡された下部連結軸96に揺動可能に連結されている。
【0024】
図3は、車体前部の断面図(第1実施形態)であり、自動二輪車10の車幅方向中央を通って前後方向に延びる車体中心線に沿って上下に切断した断面を示す。
フォークフォルダ52は、上端から下端に向かうにつれて次第に内径が次第に大きくなる中空部52aを備え、中空部52aに前輪操舵軸101が回動可能に挿入されている。
前輪操舵軸101は、上端部から下端部に向かうにつれて次第に外径が大きくなる筒状の部材であり、一対の軸受102,103を介してフォークフォルダ52に回動可能に支持されている。
フロントフォーク53は、前輪操舵軸101と、前輪操舵軸101の下端部に固定されたフォーク下部材105とから構成される。
【0025】
フォーク下部材105は、下端部に車軸63(
図1参照)が取付けられた左右一対のアーム部105aと、左右のアーム部105aのそれぞれの上端部を接続するクロス部105bとから一体に形成されている。
前輪操舵軸101の回転中心軸となる軸線101aの鉛直線100に対する傾斜角は、キャスター角θである。
本実施形態では、上アーム55よりも下アーム56の全長が長いため、前輪14が、車体フレーム11に対して上下動したときに、キャスター角θが変化する。図に示す上アーム55及び下アーム56の傾斜角、キャスター角θ等の状態は、前輪懸架装置20に車体重量が加わり、且つ乗員が乗車していないときの状態(いわゆる「空車1G状態」)を示している(他の図においても同じ。)。
【0026】
ヘッドパイプ31は、中空部31aを備え、上端が下端よりも車両後方に位置するように後傾した筒状の部材であり、中空部31aに後傾したハンドル操舵軸46が回動可能に挿入されている。ハンドル操舵軸46は、一対の軸受107を介してヘッドパイプ31に回動可能に支持され、ハンドル操向軸46にハンドル45が取付けられている。
ハンドル45は、車幅方向中央にハンドル基部45aが設けられ、ハンドル基部45aに、ハンドル操向軸46に嵌合する軸貫通穴45bと、車両前方及び下方に一体に延びるL字状のL字アーム部45cとを備える。
L字アーム部45cは、ヘッドパイプ31の前方に配置され、L字アーム部45cの下端部と前輪操舵軸101の上端部側とにリンク機構61が連結されている。
【0027】
リンク機構61は、一端がL字アーム部45cに揺動可能に連結された上リンク111と、上リンク111の他端及び前輪操舵軸101の上端部側にそれぞれ揺動可能に連結された下リンク112とから構成される。
下リンク112は、詳しくは、前輪操舵軸101の上端部に取付けられたリンク支持部材113の前端部に揺動可能に連結されている。
上リンク111の上端部は、連結軸115を介してL字アーム部45cに揺動可能に連結されている。上リンク111の下端部と下リンク112の上端部とは、連結軸116を介して揺動可能に連結されている。下リンク112の下端部は、連結軸117を介してリンク支持部材113に揺動可能に連結されている。
【0028】
アッパーフレーム21は、最も高く配置された最高部21aから屈曲しつつ前方斜め下方に延びる傾斜部21bを備える。傾斜部21bは、最高部21aから前方斜め下方に延びる上傾斜部21cと、上傾斜部21cの下端から上傾斜部21cよりも急な角度で前方斜め下方に延びる下傾斜部21dとから構成される。上傾斜部21cと下傾斜部21dとの接続部は、屈曲した屈曲部21eである。
下アーム56は、車両前後方向でフォークフォルダ52とアッパーフレーム21との間に、上方に凸状に屈曲する屈曲部56eを備える。
フロントクッションユニット58の上端部58bは、上部連結軸95を介してアッパーフレーム21の最高部21aに連結されている。また、フロントクッションユニット58の下端部58aは、下部連結軸96を介して下アーム56の屈曲部56eに連結されている。
【0029】
フロントクッションユニット58は、アッパーフレーム21の傾斜部21b(詳しくは、上傾斜部21c)に沿って延び、更に、フロントクッションユニット58は、車両側面視で、傾斜部21b(上傾斜部21cと、下傾斜部21dの上部)に重なる。
アッパーフレーム21の屈曲部21eには、上アーム55の後端部55bが連結軸121を介して揺動可能に連結されている。また、下傾斜部21dの下端部には、下アーム56の後端部56bが連結軸122を介して揺動可能に連結されている。連結軸121は、車両側面視でフロントクッションユニット58と重なる。
上アーム55の前端部55aは、連結軸123を介してフォークフォルダ52の上部に揺動可能に連結されている。連結軸123は、車両側面視で前輪操舵軸101と重なる。
【0030】
下アーム56の前端部56aは、連結軸124を介してフォークフォルダ52の下部に一体に形成された前方突出部52bに揺動可能に連結されている。
上アーム55及び下アーム56は、それぞれ前上がりに配置され、連結軸123は、連結軸121よりも上方に配置され、連結軸124は、連結軸122よりも上方に配置されている。
下アーム56の連結軸122,124のそれぞれの軸線122a,124a(黒丸で示した部分である。)を通る直線130よりも下部連結軸96は、上方に配置される。また、下部連結軸96は、連結軸122よりも上方に配置される。
ハンドル45は、左右両端部にそれぞれ運転者が握るグリップ45dを備え、車両側面視でグリップ45dの前端を通って鉛直に延びる鉛直線110によりも前方に、下アーム56の後端部56bの連結軸122が配置される。
【0031】
以上に示したように、車両側面視で、緩衝器としてのフロントクッションユニット58と、上アーム55及び車体フレーム11(詳しくは、アッパーフレーム21)のそれぞれを連結する連結部としての連結軸121とが重なる。
この構成によれば、車体フレーム11の一部(アッパーフレーム21)の側方にフロントクッションユニット58を沿わせて配置でき、フロントクッションユニット58から車体フレーム11に作用する荷重を効果的に車体フレーム11で受けることができる。
【0032】
また、車両側面視で、下アーム56とフロントクッションユニット58との連結部としての下部連結軸96は、下アーム56の車体フレーム11への連結部として連結軸122よりも上方に配置されている。
この構成によれば、フロントクッションユニット58の一端部を下アーム56に対して取付け又は取外しする際に、フロントクッションユニット58を下アーム56に上方から容易に取付け又は取外しでき、作業性を向上させることができる。
【0033】
また、フォークフォルダ52と上アーム55との連結部としての連結軸123は、車両側面視で、フロントフォーク53の上部を構成してフォークフォルダ52に回動可能に支持される前輪操舵軸101と重なる。
この構成によれば、フォークフォルダ52と上アーム55との連結部である連結軸123をより車両後方に配置でき、上アーム55の全長を短縮できる。この結果、上アーム55の剛性を向上でき、ひいては、前輪懸架装置20の剛性を向上できる。
【0034】
図4は、
図2のIV−IV線断面図(第1実施形態)であり、左右の連結軸121,123を通る平面で切断した図である。
フォークフォルダ52は、車幅方向中央部から車幅方向外側に延びる左右一対の側方延出部52cを一体に備え、左右の側方延出部52cにそれぞれめねじ52dが形成されている。
左右の側方延出部52cの各めねじ52dにはスタッドボルトからなる連結軸123がねじ結合され、左右の連結軸123にそれぞれ軸受134を介して上アーム55の前端部55aが揺動可能に連結されている。左右の連結軸123の間には、前輪操舵軸101が配置されている。
【0035】
左右の側方延出部52cは、
図3及び
図4に示されるように、車両側面視で前輪操舵軸101と重なる。更に、連結軸123も、車両側面視で前輪操舵軸101と重なる。
従来は、フォークフォルダに左右の上アームを連結する連結軸が、前輪操舵軸よりも前方に位置していたが、本実施形態では、前輪操舵軸101の車幅方向両側に左右の連結軸123を配置することで、左右の連結軸123を従来よりも車両後方に配置した。
これにより、左右の上アーム55の全長が短縮され、上アーム55の剛性(特に、左右の上アーム55が捩れる際の捩り剛性と、横方向の曲げ剛性)を向上でき、ひいては、前輪懸架装置20の剛性を向上できる。また、左右の上アーム55の全長が短縮されることで、前輪懸架装置20の小型化、コンパクト化を図ることができる。
【0036】
左右の上アーム55及び左右の下アーム56は、それぞれ車両前方に向かうにつれて次第に間隔が狭くなるように前すぼまりに配置されている。また、左右の上アーム55と左右の下アーム56とは、上下に距離を隔てて配置される(
図3も参照)とともに上下に重なり、左右の上アーム55は、左右の下アーム56に沿って配置されている。
左右の上アーム55の各前端部55aは、連結軸123から抜けないように連結軸123の端部にねじ結合されたナット135及びロックナット136で抜け止めされている。
左右のアッパーフレーム21の各傾斜部21b(詳しくは、屈曲部21e)には、中空部21fと、中空部21fの底部から車幅方向外側に延びて傾斜部21bを車幅方向に貫通するボルト挿通穴21gとが形成されている。
【0037】
左右の上アーム55の各後端部55bは、傾斜部21bのボルト挿通穴21gに通されたボルト状の連結軸121と、連結軸121の端部にねじ結合されたナット143及びロックナット144とで傾斜部21bに揺動可能に取付けられている。
左右の下アーム56の各前端部56aは、フォークフォルダ52の前方突出部52bの両側に配置されて、前端部56a、前方突出部52b及び前端部56aを貫通するボルト状の連結軸124により連結されている。連結軸124の端部にはナット146がねじ込まれている。
下アーム56の後端部56bは、左右のアッパーフレーム21の各傾斜部21bにおける下端部の側部にそれぞれ形成されたボス部21hにボルト状の連結軸122を介して連結されている。左右のボス部21hは、左右のアッパーフレーム21に渡された車幅方向に延びる前部クロスパイプ148の延長線上に配置されている。
前部クロスパイプ148の後方には、シリンダヘッド71が配置されている。
【0038】
以上の
図1、
図2及び
図4に示したように、鞍乗型車両としての自動二輪車10は、スイングアームとしての前スイングアーム51、フォークフォルダ52、フロントフォーク53、緩衝器としてのフロントクッションユニット58を備える。
前スイングアーム51は、車体フレーム11に揺動可能に設けられる上アーム55及び下アーム56からなる。フォークフォルダ52は、上アーム55及び下アーム56に揺動可能に連結される。フロントフォーク53は、フォークフォルダ52に操舵可能に支持されるとともに前輪14を支持する。フロントクッションユニット58は、車体フレーム11から下アーム56に延びる。
前輪懸架装置20において、フォークフォルダ52は、車幅方向に延びる延出部としての左右一対の側方延出部52cを備え、左右の側方延出部52cにそれぞれ連結軸123を介して上アーム55の前端部55aが取付けられる。
この構成によれば、従来よりも上アーム55とフォークフォルダ52との連結部(連結軸123)を車両後方に配置でき、上アーム55の全長を短縮できる。この結果、上アーム55の剛性を向上でき、ひいては、前輪懸架装置20の剛性を向上できる。
【0039】
また、
図3及び
図4に示したように、上アーム55と下アーム56とは、上下に隔てて重なるように配置されるとともに上アーム55は、下アーム56に沿って配置される。
この構成によれば、上アーム55及び下アーム56を車体にコンパクトに配置でき、車体前部の小型化、コンパクト化が図れる。
【0040】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の前輪懸架装置160を備える自動二輪車10Aの車体前部を示す斜視図である。第2実施形態において、第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
前輪懸架装置160は、第1実施形態の前輪懸架装置20に対して前スイング機構12Aが異なる。
前スイング機構12Aは、前スイングアーム161、フォークフォルダ162、フロントフォーク53から構成される。また、前スイング機構12A及びフロントクッションユニット58は、前輪懸架装置160を構成する。
前スイングアーム161は、車体フレーム11の前部に揺動可能に支持された上アーム55及び下アーム166からなる。
【0041】
下アーム166は、車幅方向に延びる左右延出部166aと、左右延出部166aの両端部から前方に延びる左右一対の前方延出部166bとから一体に形成されている。
左右の前方延出部166bのそれぞれの前端部166cは、フォークフォルダ162の下部に連結軸124を介して連結されている。左右延出部166aの両側の端部166dは、それぞれ左右のアッパーフレーム21の傾斜部21bの下端部に連結軸122を介して連結されている。
連結軸122は、車両側面視で、エンジン41のシリンダ部68(詳しくは、シリンダヘッド71)の前方に配置されている。
フォークフォルダ162は、後部にフロントクッションユニット58が連結される連結部(不図示)が設けられる。
【0042】
図6は、前輪懸架装置160を示す断面図(第2実施形態)であり、自動二輪車10Aの車幅方向中央を通って前後方向に延びる車体中心線に沿って上下に切断した断面を示す。
フォークフォルダ162は、第1実施形態のフォークフォルダ52(
図3参照)に対して後方突出部162aのみ異なる。
後方突出部162aは、フォークフォルダ162の長手方向中間部の後部から後方に突出した部分であり、後方突出部162aに下部連結軸168を介してフロントクッションユニット58の下端部58aが揺動可能に連結されている。
【0043】
下部連結軸168は、連結軸122よりも上方に配置され、また、直線130よりも上方に配置され、更に、下アーム166よりも上方に配置されている。
フォークフォルダ162の上部には、
図4において、フォークフォルダ52と同じように、車幅方向中央部から車幅方向外側に延びる左右一対の側方延出部52cを一体に備え、左右の側方延出部52cにそれぞれめねじ52dが形成されている。左右のめねじ52dには連結軸123がねじ結合され、左右の連結軸123にそれぞれ軸受134を介して上アーム55の前端部55aが揺動可能に連結されている。
【0044】
上記したように、フォークフォルダ162にフロントクッションユニット58を連結することで、強度・剛性の高いフォークフォルダ162でフロントクッションユニット58を支持でき、前輪懸架装置160の強度・剛性を向上できる。また、フロントクッションユニット58の下端部58aをより車両前方に配置でき、フロントクッションユニット58の全長を長くしてフロントクッションユニット58のストローク量を増やすことができる。この結果、自動二輪車10Aの乗り心地を向上させることができる。
下アーム166は、第1実施形態の下アーム56(
図4参照)に対してフロントクッションユニット58を連結する下部連結軸96(
図3参照)が設けられていない点が異なる。このように、下アーム166に下部連結軸96を通す軸挿通穴が無いので、下アーム166の強度・剛性を高めることができる。
下アーム166の前端部166cは、連結軸124を介してフォークフォルダ162の前方突出部52bに連結され、下アーム166の端部166dは、連結軸122を介してアッパーフレーム21の傾斜部21bの下端部に連結されている。
連結軸122は、車両側面視で、グリップ45dの前端を通る鉛直線110よりも前方に配置されている。
【0045】
図7は、前輪懸架装置160の作用を示す作用図(第2実施形態)である。
なお、アッパーフレーム21、フォークフォルダ162及び下アーム166については、二点鎖線で示し、フロントクッションユニット58については、実線又は破線で模式的に示している。実線は、下端がフォークフォルダ162に連結された実施例(本実施形態)のフロントクッションユニット58を示し、破線は、下端が下アーム166に連結された比較例のフロントクッションユニット58を示す。
【0046】
下アーム166の連結軸122,124間の距離をL1とし、仮に下アーム166にフロントクッションユニット58の下端部を連結した場合の連結軸170と連結軸122との距離をL2とし、連結軸122、下部連結軸168間の距離をL3とする。なお、距離L1,L2,L3は前後方向の距離である。
実施例のように、フロントクッションユニット58の下端をフォークフォルダ162に連結すると、比較例のように、フロントクッションユニット58を下アーム166に連結した場合に比べて、連結軸とフォークフォルダ162との干渉が無いから、L3>L2とすることができる。
【0047】
例えば、アッパーフレーム21に対して前輪の車軸63と共にフォークフォルダ162が上方に移動しようとする場合の作用について以下に説明する。
比較例及び実施例において、車軸63から上方に向けて作用する荷重をFとし、下アーム166の連結軸124に上方に向けて作用する荷重をF1とし、比較例において、連結軸170から下方に向けて作用する荷重をF2とすると、荷重の釣り合いは、
F=F1・・・(1)
F1・L1=F2・L2・・・(2)
また、実施例において、下部連結部168から下方に向けて作用する荷重をF3とすると、上部連結軸95を基点に荷重の釣り合いは、
F1=F3・・・(3)
【0048】
上記(2)式及び(3)式から、
比較例では、F2=F1*(L1/L2)
実施例では、F3=F1
となるため、これらの式から、
F2=F3*(L1/L2)
となる。L1>L2であるから、F2>F3となる。また、クッションレシオについては、(F/F2)<(F/F3)となる。
このように、実施例におけるフロントクッションユニット58のクッション荷重F3は、比較例のフロントクッションユニット58のクッション荷重F2よりも小さくなる。また、実施例のクッションレシオ(F/F3)は、比較例のクッションレシオ(F/F2)よりも大きくなる。
以上から、実施例では、衝撃エネルギーを吸収しやすくなり、比較例に比べて乗り心地を向上させることができる。
【0049】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態において、
図4及び
図6に示したように、フォークフォルダ52,162の上部に車幅方向に延びる左右一対の側方延出部52cを設け、左右の側方延出部52cにそれぞれ連結軸123を介して左右の上アーム55の前端部を連結した。これと同じように、フォークフォルダ52,162の下部に車幅方向に延びる左右一対の側方延出部を設け、これらの側方延出部に左右の下アーム56,166の前端部をそれぞれ連結軸124を介して連結しても良い。この場合、側方延出部及び連結軸124を、車両側面視で前輪操舵軸101に重なるようにしても良い。