(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料に電子線が照射されることで前記試料から放出される電子または前記試料を透過する電子を検出する第1検出器と、前記試料に前記電子線が照射されることで前記試料から放出される信号を検出する第2検出器と、前記試料を移動させる試料ステージと、を含む電子顕微鏡における画像処理方法であって、
前記第1検出器の出力信号に基づいて、電子顕微鏡像を生成する工程と、
前記電子顕微鏡像に基づいて、前記試料の3次元画像を生成する工程と、
前記第2検出器の出力信号に基づいて、前記試料の2次元の元素の分布を示す2次元元素マップを生成する工程と、
前記3次元画像に前記2次元元素マップを投影して、前記試料の3次元の元素の分布を示す3次元元素マップを生成する工程と、
を含み、
前記試料ステージの移動が停止したことを検知し、前記試料の移動の停止を検知した時点から前記2次元元素マップの生成を開始し、生成された前記2次元元素マップを前記3次元画像に投影して前記3次元元素マップを生成し、
前記試料ステージの移動中は、収集した前記第2検出器の出力信号のデータを破棄し、
前記試料ステージの移動が停止した時点から、収集された前記データを用いて前記2次元元素マップの生成を開始する、画像処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0013】
また、以下では、本発明に係る電子顕微鏡として、走査電子顕微鏡を例に挙げて説明するが、本発明に係る電子顕微鏡は透過電子顕微鏡であってもよい。
【0014】
1. 第1実施形態
1.1. 走査電子顕微鏡の構成
まず、第1実施形態に係る走査電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る走査電子顕微鏡100の構成を示す図である。
【0015】
走査電子顕微鏡100は、
図1に示すように、電子源10と、光学系20と、試料ステージ30と、電子検出器40(第1検出器の一例)と、X線検出器50(第2検出器の一例)と、処理部60と、操作部70と、表示部72と、記憶部74と、を含む。
【0016】
電子源10は、電子線を放出する。電子源10は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する電子銃である。
【0017】
光学系20は、電子源10から放出された電子線を試料S上で走査する。光学系20は、コンデンサーレンズ22と、対物レンズ24と、偏向器26と、を含む。
【0018】
コンデンサーレンズ22は、電子源10から放出された電子線を集束させる。コンデンサーレンズ22によって、電子線の径および電子線の電流量を制御することができる。
【0019】
対物レンズ24は、電子線を集束させて、電子プローブを形成する。対物レンズ24は、例えば、コイルと、ヨークと、を含んで構成されている。対物レンズ24では、コイルで作られた磁力線を、鉄などの透磁率の高い材料で作られたヨークに閉じ込め、ヨークの一部に切欠き(レンズギャップ)を作ることで、高密度に分布した磁力線を光軸OA上に漏洩させる。
【0020】
偏向器26は、電子線を二次元的に偏向させる。偏向器26に、不図示の走査信号発生器で発生した走査信号が供給されることによって、電子線で試料S上を走査することができる。
【0021】
試料ステージ30は、試料Sを保持している。試料ステージ30は、試料Sを水平方向に移動させる水平方向移動機構、試料Sを高さ方向に移動させる高さ方向移動機構、および試料Sを傾斜させる傾斜機構を備えている。試料ステージ30によって、試料Sを位置決めすることができる。
【0022】
電子検出器40は、試料Sから放出された二次電子または反射電子を検出する検出器である。電子検出器40は、検出した電子の量に応じた信号を出力する。電子検出器40は、対物レンズ24と試料Sとの間に配置されている。図示の例では、電子検出器40は、対物レンズ24の直下に配置されている。
【0023】
図2は、電子検出器40を模式的に示す平面図である。電子検出器40は、
図2に示すように、検出面が複数の検出領域41に分割されている分割型検出器である。電子検出器40は、円環状の検出面の中心を光軸OAが通るように配置されている。
【0024】
図示の例では、検出領域41の数は、4つである。4つの検出領域41は、それぞれ独立して電子を検出可能である。4つの検出領域41の各々は、検出した電子の量に応じた検出信号を出力する。例えば、4つの検出領域41は、それぞれ第1検出信号、第2検出信号、第3検出信号、および第4検出信号を出力する。すなわち、電子検出器40は、出力信号として、第1検出信号、第2検出信号、第3検出信号、および第4検出信号を出力する。
【0025】
なお、電子検出器40の検出面の形状や、分割数は、
図2に示す例に限定されない。また、電子検出器40として分割型検出器のかわりに、検出領域が1つの電子検出器を複数配置してもよい。
【0026】
また、
図1に示す例では、電子検出器40が対物レンズ24の直下に配置されているが、電子検出器40は、試料Sから放出された電子を検出することができればその位置は特
に限定されない。
【0027】
走査電子顕微鏡100は、
図1に示すように、4つの検出領域41に対応して4つの増幅器42を有している。第1検出信号、第2検出信号、第3検出信号、および第4検出信号は、それぞれ対応する増幅器42で増幅される。
【0028】
信号処理装置44は、第1検出信号、第2検出信号、第3検出信号、および第4検出信号を、処理部60で読み取り可能な信号とする処理を行う。また、信号処理装置44において、第1〜第4検出信号と電子線の照射位置の情報とを関連づける処理が行われてもよい。
【0029】
X線検出器50は、電子線が試料Sに照射されることにより試料Sから放出されるX線を検出する。X線検出器50は、例えば、エネルギー分散型X線検出器である。なお、X線検出器50は、波長分散型X線検出器であってもよい。X線検出器50の出力信号は、アナライザー52に送られる。
【0030】
アナライザー52は、X線検出器50の出力信号に基づいて、X線のエネルギー値を解析し、X線エネルギー信号を生成する。アナライザー52は、例えば、複数のチャンネルを持った多重波高分析器を含み、X線検出器50の出力信号のパルス波高値に基づいて、エネルギー値を解析し、X線エネルギー信号を生成する。X線エネルギー信号は、X線検出器50で検出されたX線のエネルギーの情報を含む。X線エネルギー信号は、処理部60に送られる。
【0031】
操作部70は、ユーザーによる操作に応じた操作信号を取得し、処理部60に送る処理を行う。操作部70は、例えば、ボタン、キー、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどである。
【0032】
表示部72は、処理部60によって生成された画像を表示するものである。表示部72は、LCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイにより実現できる。
【0033】
記憶部74は、処理部60が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部74は、処理部60の作業領域として用いられ、処理部60が各種プログラムに従って実行した算出結果等を一時的に記憶するためにも使用される。記憶部74は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびハードディスクなどにより実現できる。
【0034】
処理部60は、SEM像を生成する処理、試料Sの3次元画像を生成する処理、2次元元素マップを生成する処理などの処理を行う。処理部60は、さらに、電子検出器40の出力信号およびX線検出器50の出力信号に基づいて、3次元元素マップを生成する処理を行う。処理部60の機能は、各種プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)等)でプログラムを実行することにより実現することができる。処理部60は、SEM像生成部62と、3次元画像生成部64と、2次元元素マップ生成部66と、3次元元素マップ生成部68と、を含む。
【0035】
SEM像生成部62は、電子検出器40の出力信号に基づいて、SEM像を生成する。SEM像生成部62は、4つの検出領域41に対応して、4つのSEM像を生成する。例えば、SEM像生成部62は、第1検出信号に基づいて、第1SEM像を生成する。また、SEM像生成部62は、第2検出信号に基づいて、第2SEM像を生成する。また、SEM像生成部62は、第3検出信号に基づいて、第3SEM像を生成する。また、SEM像生成部62は、第4検出信号に基づいて、第4SEM像を生成する。
【0036】
3次元画像生成部64は、第1〜第4SEM像に基づいて、試料Sの3次元画像を再構築する。第1〜第4SEM像は、互いに異なる検出領域41の検出信号に基づく2次元画像である。そのため、第1〜第4SEM像は、電子の検出方向が互いに異なっており、試料Sを互いに異なる方向から見た像といえる。したがって、第1〜第4SEM像を用いて、試料Sの3次元画像を再構築できる。第1〜第4SEM像を用いて試料Sの3次元画像を生成する手法は、特に限定されず、既知の手法を用いることができる。
【0037】
2次元元素マップ生成部66は、X線検出器50の出力信号に基づいて、2次元元素マップを生成する。2次元元素マップは、2次元の元素の分布を示す元素マップである。2次元元素マップ生成部66は、アナライザー52からのX線エネルギー信号に基づいて、所望の元素に特有のエネルギーを持つX線の信号強度(計数率)の情報を取得し、所望の元素の2次元元素マップを生成する。
【0038】
2次元元素マップ生成部66は、1つの元素に対して1つの2次元元素マップを生成する。そのため、分析対象として複数の元素が指定されている場合、2次元元素マップ生成部66は、複数の2次元元素マップを生成する。なお、2次元元素マップ生成部66において、複数の2次元元素マップを重ねて、複数の元素の分布を表す1つの2次元元素マップを生成してもよい。
【0039】
3次元元素マップ生成部68は、3次元画像生成部64で生成された3次元画像に2次元元素マップを投影して、3次元元素マップを生成する。3次元元素マップは、3次元の元素の分布を示す元素マップである。3次元元素マップ生成部68は、例えば、テクスチャマッピングの手法を用いて、試料Sの3次元画像に、2次元元素マップを投影する。なお、3次元画像に、2次元元素マップを投影する手法は、特に限定されない。
【0040】
処理部60は、生成された3次元元素マップを表示部72に表示させる処理を行う。また、処理部60は、生成されたSEM像、3次元画像、および2次元元素マップを表示部72に表示させる処理を行ってもよい。
【0041】
1.2. 走査電子顕微鏡の動作
走査電子顕微鏡100では、電子源10から放出された電子線をコンデンサーレンズ22および対物レンズ24によって電子線を収束し、偏向器26で電子線を偏向させることによって、電子線で試料S上を走査する。これにより、試料Sから二次電子や反射電子などの電子、および特性X線が放出される。
【0042】
試料Sから放出された電子は、電子検出器40で検出される。電子検出器40は、4つの検出領域41を有しているため、SEM像生成部62では、電子検出器40の出力信号に基づいて、4つのSEM像が生成される。
【0043】
3次元画像生成部64は、4つのSEM像に基づいて、試料Sの3次元画像を生成する。
【0044】
図3は、試料Sの3次元画像I3を模式的に示す図である。なお、
図3には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。なお、Z方向は、試料Sの高さ方向である。
【0045】
図3に示すように、電子検出器40を用いて得られた4つのSEM像から、3次元画像I3を生成することができる。
【0046】
試料Sから放出されたX線は、X線検出器50で検出される。2次元元素マップ生成部66では、X線検出器50の出力信号に基づいて、複数の2次元元素マップが生成される。
【0047】
図4は、元素Aの2次元元素マップM
Aを模式的に示す図である。
図5は、元素Bの2次元元素マップM
Bを模式的に示す図である。
図6は、元素Cの2次元元素マップM
Cを模式的に示す図である。
図4〜
図6には、直交する2つの軸として、X軸およびY軸を図示している。
図4〜
図6に示すX軸およびY軸は、
図3に示すX軸およびY軸に対応している。
【0048】
ここでは、分析対象の元素として、元素A、元素B、および元素Cが指定されており、2次元元素マップ生成部66は、
図4〜
図6に示すように、2次元元素マップM
A、2次元元素マップM
B、および2次元元素マップM
Cを生成する。
【0049】
2次元元素マップ生成部66は、元素の種類が色相で表され、元素の信号強度が明度で表されるように、2次元元素マップM
A、2次元元素マップM
B、および2次元元素マップM
Cを生成する。元素の信号強度は、例えば、元素に固有のエネルギーのX線を検出したときの計数率(1秒間にX線検出器50に入射するX線の数)である。計数率は、X線エネルギー信号を計数することで求めることができる。
【0050】
図7は、2次元元素マップM
A、2次元元素マップM
B、および2次元元素マップM
Cを重ねて生成された2次元元素マップM
ABCを模式的に示す図である。
【0051】
2次元元素マップ生成部66は、
図7に示すように、2次元元素マップM
A、2次元元素マップM
B、および2次元元素マップM
Cを重ねて1つの2次元元素マップM
ABCとしてもよい。2次元元素マップM
A、2次元元素マップM
B、および2次元元素マップM
Cは、元素の種類が色相で表され、元素の信号強度が明度で表されている。そのため、2次元元素マップM
ABCでは、同一画素に複数の元素が存在している場合でも、同一画素に複数の元素が存在していることを示すことができる。
【0052】
3次元元素マップ生成部68では、3次元画像生成部64で生成された3次元画像I3に、2次元元素マップM
A、2次元元素マップM
B、および2次元元素マップM
Cを投影して、3次元元素マップを生成する。
【0053】
図8は、3次元元素マップM3を模式的に示す図である。
図8に示すように、3次元画像I3に、2次元元素マップM
A、2次元元素マップM
B、および2次元元素マップM
Cを投影することで、3次元元素マップM3を生成することができる。
【0054】
例えば、3次元画像I3に、Z方向から2次元元素マップM
A、2次元元素マップM
B、および2次元元素マップM
Cを投影することで、3次元元素マップM3を生成することができる。具体的には、
図3に示すように、3次元画像I3において、試料Sの表面を構成する任意の画素の座標(X1,Y1,Z1)とした場合、当該画素の色を、2次元元素マップM
Aの座標(X1,Y1)の色、2次元元素マップM
Aの座標(X1,Y1)の色、および2次元元素マップM
Aの座標(X1,Y1)の色を重ねた色とする。このように、3次元画像I3において、試料Sの表面を構成する画素の色を、対応する2次元元素マップの画素の色とする処理を、試料Sの表面を構成する全ての画素について行う。また、3次元画像において、2次元元素マップに対応する画素がない場合には、画素の色を、周囲の画素の色に基づいて補間してもよい。これにより、3次元画像に2次元元素マップを投影することができる。
【0055】
なお、3次元画像I3に、
図7に示す2次元元素マップM
ABCを投影することで、3次元元素マップM3を生成してもよい。
【0056】
また、走査電子顕微鏡100では、リアルタイム処理により3次元元素マップM3を生成することができる。リアルタイム処理とは、試料ステージ30の移動が停止したことを検知し、試料ステージ30の移動の停止を検知した時点から、2次元元素マップの生成を開始し、生成された2次元元素マップを3次元画像に投影して3次元元素マップを生成する処理をいう。リアルタイム処理では、試料ステージ30の移動中のデータは破棄され、試料ステージ30の移動が停止した時点からデータの収集が行われ、自動で3次元元素マップの生成が行われる。
【0057】
1.3. 処理
次に、処理部60の処理について説明する。
図9は、処理部60の処理の一例を示すフローチャートである。
【0058】
走査電子顕微鏡100では、光学系20によって電子線を試料S上で走査することにより、試料Sから二次電子や反射電子などの電子、および特性X線が放出される。試料Sから放出された電子は電子検出器40で検出され、試料Sから放出された特性X線はX線検出器50で検出される。
【0059】
SEM像生成部62は、電子検出器40の出力信号に基づいて、SEM像を生成する(S10)。電子検出器40は、4つの検出領域41を有するため、4つのSEM像が生成される。
【0060】
3次元画像生成部64は、SEM像生成部62で生成された4つのSEM像に基づいて、試料Sの3次元画像を生成する(S12)。
【0061】
2次元元素マップ生成部66は、X線検出器50の出力信号に基づいて、複数の2次元元素マップを生成する(S14)。
【0062】
3次元元素マップ生成部68は、3次元画像生成部64で生成された試料Sの3次元画像に複数の2次元元素マップを投影して、3次元元素マップを生成する(S16)。生成された3次元元素マップは、例えば、表示部72に表示される。
【0063】
以上の処理により、3次元元素マップを生成することができる。
【0064】
なお、各処理の順序は、特に限定されない。例えば、2次元元素マップを生成した後に、SEM像を生成して3次元画像を生成してもよいし、2次元元素マップを生成する処理とSEM像を生成する処理とが並行して行われてもよい。
【0065】
1.4. 特徴
走査電子顕微鏡100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0066】
走査電子顕微鏡100では、処理部60は、電子検出器40の出力信号に基づいてSEM像を生成する処理と、SEM像に基づいて試料Sの3次元画像を生成する処理と、X線検出器50の出力信号に基づいて2次元元素マップを生成する処理と、3次元画像に2次元元素マップを投影して3次元元素マップを生成する処理と、を行う。
【0067】
そのため、走査電子顕微鏡100では、元素の3次元の分布を示す3次元元素マップを生成することができる。そのため、走査電子顕微鏡100によれば、ユーザーは生成され
た3次元元素マップを見て、元素の3次元の分布を容易に把握することができる。例えば、3次元元素マップでは、突起などの特徴的な部位が見られた場合に、その部位の元素の情報を視覚的に知ることができる。
【0068】
走査電子顕微鏡100において、2次元元素マップを生成する処理では、複数の2次元元素マップを生成し、3次元元素マップを生成する処理では、3次元画像に複数の2次元元素マップを投影する。そのため、走査電子顕微鏡100では、複数の元素の3次元の分布を知ることができる3次元元素マップを生成することができる。
【0069】
走査電子顕微鏡100において、2次元元素マップを生成する処理では、2次元元素マップを構成する画素の色相を元素の種類に対応させ、2次元元素マップを構成する画素の明度を元素の信号強度に対応させる。そのため、3次元元素マップにおいて、同一画素に複数の元素が存在している場合でも、同一画素に複数の元素が存在していることを示すことができる。
【0070】
第1実施形態に係る画像処理方法は、電子検出器40の出力信号に基づいてSEM像を生成する工程と、SEM像に基づいて試料Sの3次元画像を生成する工程と、X線検出器50の出力信号に基づいて試料Sの2次元元素マップを生成する工程と、3次元画像に2次元元素マップを投影して3次元元素マップを生成する工程と、を含む。そのため、第1実施形態に係る画像処理方法によれば、元素の3次元の分布を示す3次元元素マップを生成することができる。
【0071】
2. 第2実施形態
2.1. 走査電子顕微鏡
次に、第2実施形態に係る走査電子顕微鏡について、図面を参照しながら説明する。
図10は、第2実施形態に係る走査電子顕微鏡200の構成を示す図である。以下、第2実施形態に係る走査電子顕微鏡200において、第1実施形態に係る走査電子顕微鏡100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0072】
走査電子顕微鏡200では、
図10に示すように、処理部60は、ラインプロファイル生成部69を含む。ラインプロファイル生成部69は、3次元元素マップにおいて任意の断面が指定された場合に、当該断面における元素の信号強度のプロファイルと、当該断面における試料Sの高さのプロファイルと、を含むグラフを生成する処理を行う。
【0073】
図11は、3次元元素マップにおいて、任意の断面2が指定された様子を模式的に示す図である。
【0074】
走査電子顕微鏡200では、3次元元素マップM3に対して、任意の断面2を指定することができる。例えば、ユーザーは、表示部72に表示された3次元元素マップM3に対して、操作部70を操作して、3次元元素マップM3上に断面2を設定することができる。
【0075】
図示の例では、断面2は、Z方向から見た場合にX軸に平行な直線である。なお、断面2は、Z方向から見た場合に折れ線であってもよいし、曲線であってもよい。
【0076】
3次元元素マップM3において断面2が指定されると、ラインプロファイル生成部69は、指定された断面2における元素の信号強度のプロファイルと、指定された断面2における試料Sの高さのプロファイルと、を含むグラフを生成する。
【0077】
図12は、断面2における元素の信号強度のプロファイルおよび試料Sの高さのプロファイルを示すグラフである。
図12に示すグラフでは、元素AのラインプロファイルL
A、元素BのラインプロファイルL
B、元素CのラインプロファイルL
C、および試料Sの高さのラインプロファイルL
Hが示されている。なお、
図12に示すグラフの横軸は、X座標を表している。また
図12に示すグラフには縦軸が2つあり、ラインプロファイルL
A、ラインプロファイルL
B、ラインプロファイルL
Cの縦軸は、信号強度Iであり、ラインプロファイルL
Hの縦軸は、高さHである。
【0078】
ラインプロファイル生成部69は、例えば、3次元元素マップM3に基づいて、ラインプロファイルL
A、ラインプロファイルL
B、ラインプロファイルL
C、およびラインプロファイルL
Hを生成する。ラインプロファイルL
Aは、断面2における元素Aの信号強度の変化を表したものである。ラインプロファイルL
Bは、断面2における元素Bの信号強度の変化を表したものである。ラインプロファイルL
Cは、断面2における元素Cの信号強度の変化を表したものである。ラインプロファイルL
Hは、断面2における試料Sの高さの変化を表したものである。
【0079】
なお、ラインプロファイルL
Aは、断面2をZ軸方向から見た直線における元素Aの信号強度の変化を表したものともいえる。このことは、ラインプロファイルL
B、ラインプロファイルL
C、ラインプロファイルL
Hにおいても同様である。
【0080】
ラインプロファイル生成部69は、元素Aの2次元元素マップM
Aに基づいてラインプロファイルL
Aを生成し、元素Bの2次元元素マップM
Bに基づいてラインプロファイルL
Bを生成し、元素Cの2次元元素マップM
Cに基づいてラインプロファイルL
Cを生成してもよい。また、ラインプロファイル生成部69は、3次元画像I3に基づいて、ラインプロファイルL
Hを生成してもよい。
【0081】
ラインプロファイル生成部69が生成したグラフは、例えば、表示部72に表示される。
【0082】
走査電子顕微鏡200では、処理部60は、3次元元素マップM3において任意の断面2が指定された場合に、断面2における元素の信号強度のプロファイルと、断面2における試料Sの高さのプロファイルと、を含むグラフを生成する処理を行う。そのため、走査電子顕微鏡200では、試料Sの高さと試料Sの組成との関係を容易に確認することができる。
【0083】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0084】
例えば、上述した第1実施形態および第2実施形態では、
図2に示すように、複数の検出領域41を有する電子検出器40を用いて、複数のSEM像を取得し、試料Sの3次元画像を生成したが、試料Sの3次元画像の生成方法はこれに限定されない。
【0085】
例えば、
図13に示すように、複数の電子検出器40を、試料Sから放出された電子の検出方向が互いに異なるように配置して複数のSEM像を取得し、取得した複数のSEM像に基づいて試料Sの3次元画像を生成してもよい。また、例えば、試料Sの傾斜角を変えて複数のSEM像を取得し、取得した複数のSEM像に基づいて試料Sの3次元画像を生成してもよい。
【0086】
また、上述した第1実施形態に係る走査電子顕微鏡100は、X線検出器50を備えており、X線検出器50を用いて元素マップを取得していたが、元素マップを得るための検
出器は、これに限定されない。例えば、走査電子顕微鏡100は、オージェ電子分光装置を備えており、オージェ電子分光装置を用いて元素マップを取得してもよい。この場合、走査電子顕微鏡100は、電子線を走査して、試料表面の各測定点に電子線を照射し、各測定点から放出されるオージェ電子を検出することで、元素マップを取得することができる。なお、上述した第2実施形態についても同様である。
【0087】
また、上述した第1実施形態および第2実施形態では、本発明に係る電子顕微鏡が走査電子顕微鏡である場合について説明したが、本発明に係る電子顕微鏡は、透過電子顕微鏡であってもよい。
【0088】
透過電子顕微鏡では、トモグラフィー法を用いて3次元画像を生成することができる。トモグラフィー法は、透過電子顕微鏡において試料を連続的に傾斜させて撮影された複数の透過電子顕微鏡像から3次元画像を再構築する手法である。透過電子顕微鏡像は、試料を透過する電子を検出器で検出することで取得することができる。透過電子顕微鏡では、2次元元素マップは、走査電子顕微鏡100と同様に、X線検出器の出力信号に基づき生成することができる。トモグラフィー法で生成された3次元画像に、2次元元素マップを投影することで、3次元元素マップを生成することができる。
【0089】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0090】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。