(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962903
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】車両の走行用前照灯
(51)【国際特許分類】
F21S 41/19 20180101AFI20211025BHJP
F21S 41/141 20180101ALI20211025BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20211025BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20211025BHJP
F21W 102/10 20180101ALN20211025BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20211025BHJP
【FI】
F21S41/19
F21S41/141
F21S41/151
F21V19/00 170
F21W102:10
F21Y115:10
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-244152(P2018-244152)
(22)【出願日】2018年12月27日
(65)【公開番号】特開2020-107453(P2020-107453A)
(43)【公開日】2020年7月9日
【審査請求日】2020年4月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】林田 隆憲
【審査官】
田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−141919(JP,A)
【文献】
特開平8−161905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/19
F21S 41/141
F21S 41/151
F21V 19/00
F21W 102/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源セグメントを車幅方向に配列してなる車両の走行用前照灯であって、前記複数の光源セグメントのうちの少なくとも一つ以上の光源セグメントは、車幅方向に沿って内側に隣接する光源セグメントよりも、その光軸を外側に傾斜する方向に設定されると共に、その後端における車幅方向の端部が前記内側に隣接する光源セグメントの後端と車幅方向において互いに重なるまで光軸に沿って後退する位置に設けられたことを特徴とする車両の走行用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光源セグメントを車幅方向に配列してなる車両の走行用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、夜間に車両の前方にある交通上の障害物を適切に確認でき、かつ照射光線が対向車や先行車の交通を妨げないような、配光可変型前照灯システムが開発されている。配光可変型前照灯システムは、車載のカメラで撮影した画像を解析して対向車や先行車を検出し、当該対向車または先行車の存在する領域以外の領域に向けて照明光を正射する状態を維持しながら、当該対向車または先行車の存在する領域に限って照明光を照射しないようにするものである。配光可変型前照灯システムにより、対向車または先行車の搭乗者を眩惑させずに走行用前照灯(ハイビーム)を使用して安全に夜間走行を行うことができる。
【0003】
前照灯の配光パターンを変化させるための仕組みとして、例えば特許文献1は、複数の光源セグメントを構成要素とし、対向車の出現を認識したときに、その対向車を指向する光源セグメントを消灯し、または当該光源セグメントから放射する光束の量を平常よりも減少させることで、対向車の搭乗者の眩惑を抑止する配光可変型前照灯システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−103904号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、走行用前照灯を上下方向に薄くすることによって意匠性の向上を図ることがあり、特許文献1のような複数の光源セグメントで構成した走行用前照灯を薄くするための手段として、その複数の光源セグメントを車幅方向に配列することが考えられる。
【0006】
しかしながら、複数の光源セグメントを単に車幅方向に配列すると、走行用前照灯の幅が大きくなり、却って意匠性を損なうおそれがある。
【0007】
本発明は、複数の光源セグメントを車幅方向に配列しつつ、その幅を抑えることのできる車両の走行用前照灯の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両の走行用前照灯は、複数の光源セグメントを車幅方向に配列したものであり、複数の光源セグメントのうちの少なくとも一つ以上の光源セグメントについて、車幅方向に沿って内側に隣接する光源セグメントよりも、その光軸を外側に傾斜する方向に設定すると共に、その後端における車幅方向の端部が前記内側に隣接する光源セグメント
の後端と車幅方向において互いに重なるまで光軸に沿って後退する位置に設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のとおり、本発明によると、外側の光源セグメントを内側に隣接する光源セグメントよりも、光軸を外側に傾斜させつつ、その光軸に沿って後退させるので、照射する光を遮ることなく、車両中心線と平行な方向において、外側の光源セグメントの内端部分を内側に隣接する光源セグメントの後方に位置させることができる。
【0010】
これにより、照射する光を遮ることなく、隣接する光源セグメントを車両の正面視で重ねることができ、複数の光源セグメントを車幅方向に配列した車両の走行用前照灯の幅を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る走行用前照灯を備えた車両の正面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両の走行用前照灯を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
図1に示すように、走行用前照灯1は、夜間に車両の前方を照射することによって交通上の障害物を適切に確認するためのものであり、車両2の前端部における左右の側部に設けられる。
【0014】
図2〜
図4に示すように、走行用前照灯1は、複数の光源セグメント3a、3b、3c、3dを車幅方向に配列した構造とされ、その光源セグメント3a、3b、3c、3dは、照明光4を放射する発光ダイオードなどの照明光源5と、照明光源5から放射される照明光4を車両2の前方に向ける凹面状のリフレクタ6とから構成される。
【0015】
図3に示すように、照明光源5は、水平に配置された基板7の下面に設けられて下向きの照明光4を出射し、この下向きの照明光4がリフレクタ6の前面で反射されることにより、車両2の前方に光を照射するようになっている。
【0016】
図4に示すように、各光源セグメント3a、3b、3c、3dは、その照明光源5が出射した照明光4を凹面状のリフレクタ6が広げて反射することにより、それぞれが個別の照射範囲8a、8b、8c、8dを照射する。光源セグメント3a、3b、3c、3dの光軸9a、9b、9c、9dは、車幅方向に沿って外側のものほど、外側に傾斜する方向に設定され、互いに隣接する照射範囲8a、8b、8c、8dの側部を重ねつつ、車両の前方から斜め側方に至る範囲を照射する。
【0017】
この光源セグメント3a、3b、3c、3dは、外側のものほど光軸9a、9b、9c、9dが外側に傾斜することに加えて、外側のものほど光軸9a、9b、9c、9dに沿って後退する位置に設けられている。
【0018】
これにより、光源セグメント3a、3b、3c、3dの複数のリフレクタ6が平面視で略階段状に並べて形成されつつ、その端部が正面視で互いに重ねられ、その総幅を小さくして、走行用前照灯1の幅を小さくすることができるようになっている。具体的に説明すると、例えば、一番外側の光源セグメント3aは、内側に隣接する光源セグメント3bによって照射範囲8aを遮られることなく、内端部分10を光源セグメント3bの後方に位置させ、正面視で光源セグメント3bに重ねている。
【0019】
光源セグメント3a、3b、3c、3dの各照明光源5は、それぞれ独立して点灯及び消灯を可能とされ、例えば車載カメラの画像の解析によって対向車や先行車を検出した際、その対向車や先行車の存在する領域に照明光4を照射することなく、それ以外の領域に向けた照明光4のみを照射することができる。
【0020】
さらに、例えば、照明光源5に印加する平均の電流量をFET(Field Effect Transistor)その他の半導体スイッチング素子を介して増減させるPWM(Pulse Width Modulation)制御により、照明光源5から放たれる光束の量を制御するようにしてもよい。これにより、対向車や先行車の出現を認識した際、その対向車や先行車を指向する光源セグメント3a、3b、3c、3dから放射する光束の量を平常よりも減少させて、対向車や先行車の搭乗者の眩惑を抑止することができる。
【0021】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、光源セグメントは、車幅方向に沿って外側のものほど、その光軸を外側に傾斜する方向に設定するだけでなく、少なくとも一つ以上の光源セグメントについて、車幅方向に沿って内側に隣接する光源セグメントよりも、その光軸を外側に傾斜する方向に設定すると共に、光軸に沿って後退する位置に設けていればよい。
【符号の説明】
【0022】
1 走行用前照灯
2 車両
3a、3b、3c、3d 光源セグメント
4 照明光
5 照明光源
6 リフレクタ
7 基板
8a、8b、8c、8d 照射範囲
9a、9b、9c、9d 光軸
10 内端部分