特許第6962906号(P6962906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962906
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】半導体光検出素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   H01L31/10 A
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-503372(P2018-503372)
(86)(22)【出願日】2017年3月1日
(86)【国際出願番号】JP2017008120
(87)【国際公開番号】WO2017150616
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2019年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-41027(P2016-41027)
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 立城
(72)【発明者】
【氏名】河原 健志
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 康人
(72)【発明者】
【氏名】前田 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 久則
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−296836(JP,A)
【文献】 特開2013−033864(JP,A)
【文献】 実開昭64−011556(JP,U)
【文献】 特開平05−190887(JP,A)
【文献】 特開2012−216760(JP,A)
【文献】 特開2015−050223(JP,A)
【文献】 特開2014−220403(JP,A)
【文献】 特表2015−520939(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0200216(US,A1)
【文献】 特開2000−106453(JP,A)
【文献】 米国特許第04277793(US,A)
【文献】 特開2011−222893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/0392、31/08−31/119
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光検出素子であって、
光入射面と前記光入射面に対向する裏面とを有していると共に、入射光に応じてキャリアが発生するシリコン基板と、
前記光入射面上に配置されており、前記入射光を透過させる酸化物膜と、
前記酸化物膜上に配置されており、前記入射光を透過させると共に所定の電位に接続される電極膜と、を備え、
前記光入射面には、前記シリコン基板の厚み方向に対して傾斜した斜面を有する複数の凸部が形成されており、
前記凸部では、前記斜面として、前記シリコン基板の(111)面が露出し、
前記凸部の高さが、200nm以上であり、
前記シリコン基板の前記裏面側には、前記シリコン基板と異なる導電型を有する半導体領域が設けられ、
前記シリコン基板の前記光入射面側には、アキュムレーション層が設けられており、
前記凸部の斜面が、前記アキュムレーション層の表面に含まれている。
【請求項2】
請求項に記載の半導体光検出素子であって、
前記電極膜が、グラフェンからなる膜である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体光検出素子であって、
前記酸化物膜が、酸化シリコン膜である。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の半導体光検出素子であって、
前記酸化物膜が、酸化アルミニウム膜である。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の半導体光検出素子であって、
前記光入射面上に配置されており、前記入射光を透過させると共にホウ素を含む膜を更に備えている。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体光検出素子であって、
前記複数の凸部のうち、隣り合う二つの凸部の頂点の間隔は、500〜3000nmである。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体光検出素子であって、
紫外及び近赤外の波長帯域での分光感度特性が高められている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光検出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光入射面と光入射面に対向する裏面とを有していると共に、入射光に応じてキャリアが発生するシリコン基板を備えている半導体光検出素子が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】浜松ホトニクス株式会社「光半導体素子ハンドブック」2013年11月6日改訂版発行 5章 1.CCDイメージセンサ 1−1構造、動作原理 p.107−108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載された半導体光検出素子では、紫外の波長帯域での分光感度特性に改善の余地がある。
【0005】
本発明の一態様は、紫外の波長帯域での分光感度特性の向上が図られている半導体光検出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、半導体光検出素子であって、光入射面と前記光入射面に対向する裏面とを有していると共に、入射光に応じてキャリアが発生するシリコン基板を備えている。光入射面には、シリコン基板の厚み方向に対して傾斜した斜面を有する複数の凸部が形成されている。凸部では、斜面として、シリコン基板の(111)面が露出している。凸部の高さが、200nm以上である。
【0007】
本一態様に係る半導体光検出素子では、光入射面に形成されている複数の凸部が、シリコン基板の厚み方向に対して傾斜した斜面を有している。光が光入射面からシリコン基板に入射する場合、一部の光は、半導体光検出素子の光入射面側で反射する。斜面が、シリコン基板の厚み方向に対して傾斜している。このため、たとえば、一つの凸部の斜面側で反射した光は、当該一つの凸部に近接する凸部の斜面側に向けられ、近接する凸部の斜面からシリコン基板に入射する。
【0008】
凸部では、斜面として、シリコン基板の(111)面が露出しているので、斜面からシリコン基板に入射する光は、シリコン基板に取り込まれ易い。凸部の高さが200nm以上であるので、斜面の表面積が大きい。このため、斜面に入射する光がシリコン基板に多く取り込まれる。
【0009】
紫外の波長領域の光は、シリコンによる吸収係数が大きいため、シリコン基板における光入射面に近い領域で吸収される。本一態様に係る半導体光検出素子では、シリコン基板に形成されている凸部において、シリコン基板の(111)面が露出しているので、光入射面に近い領域での光の吸収が阻害されることはない。
【0010】
以上の理由により、本一態様に係る半導体光検出素子では、紫外の波長帯域での分光感度特性の向上が図られる。
【0011】
シリコン基板の裏面側には、シリコン基板と異なる導電型を有する半導体領域が設けられていてもよく、シリコン基板の光入射面側には、アキュムレーション層が設けられていてもよい。この場合、凸部の斜面は、アキュムレーション層の表面に含まれている。本形態では、紫外の波長帯域での分光感度特性の向上が図られている、裏面入射型の半導体光検出素子が実現される。アキュムレーション層によって、光入射面側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流が低減される。アキュムレーション層は、シリコン基板の光入射面付近で光により発生したキャリアが該光入射面でトラップされるのを抑制するので、光により発生したキャリアは、シリコン基板と半導体領域とで形成されるpn接合へ効率的に移動する。この結果、本形態によれば、光検出感度の向上が図られる。
【0012】
シリコン基板の光入射面側には、シリコン基板と異なる導電型を有する半導体領域が設けられていてもよい。この場合、紫外の波長帯域での分光感度特性の向上が図られている、表面入射型の半導体光検出素子が実現される。
【0013】
本一態様に係る半導体光検出素子は、光入射面上に配置されており、入射光を透過させる酸化物膜と、酸化物膜上に配置されており、入射光を透過させると共に所定の電位に接続される電極膜と、を更に備えていてもよい。酸化物膜に紫外光が入射すると、酸化物膜が帯電する現象(チャージアップ現象)が生じるおそれがある。チャージアップ現象が発生すると、紫外の波長帯域での分光感度特性が劣化する。本形態では、所定の電位に接続される電極膜が酸化物膜上に配置されているので、酸化物膜の帯電が抑制される。したがって、本形態では、紫外の波長帯域での分光感度特性の劣化が抑制されている。
【0014】
電極膜が、グラフェンからなる膜であってもよい。この場合、紫外の波長帯域での透過特性の低下が抑制される。この結果、紫外の波長帯域での分光感度特性が、電極膜によって低下するのが抑制されている。
【0015】
酸化物膜が、酸化シリコン膜であってもよい。この場合、酸化物膜が反射防止膜として機能する。したがって、光がシリコン基板により一層取り込まれ易く、紫外の波長帯域での分光感度特性がより一層向上する。
【0016】
酸化物膜が、酸化アルミニウム膜であってもよい。この場合、酸化アルミニウム膜によって、所定の極性の固定電荷がシリコン基板の光入射面側に存在する。所定の極性の固定電荷が存在しているシリコン基板の光入射面側の領域は、アキュムレーション層として機能する。
【0017】
本一態様に係る半導体光検出素子は、光入射面上に配置されており、入射光を透過させると共にホウ素を含む膜を更に備えていてもよい。この場合、半導体光検出素子では、紫外の波長帯域での分光感度特性の劣化が抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、紫外の波長帯域での分光感度特性の向上が図られている半導体光検出素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態に係る半導体光検出素子を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
図3図3は、第1実施形態に係る半導体光検出素子での光の走行を説明するための模式図である。
図4図4は、実施例1に係る半導体光検出素子を観察したSEM画像である。
図5図5は、実施例2に係る半導体光検出素子を観察したSEM画像である。
図6図6は、実施例1及び2並びに比較例1における、波長に対する量子効率の変化を示す線図である。
図7図7は、実施例1及び2並びに比較例1における、波長に対する量子効率の変化を示す線図である。
図8図8は、第2実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
図9図9は、第3実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
図10図10は、第4実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
図11図11は、第5実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
図12図12は、第6実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
図13図13は、第7実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
図14図14は、第8実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
図15図15は、第9実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
図16図16は、第10実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
(第1実施形態)
図1及び図2を参照して、第1実施形態に係る半導体光検出素子SP1の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る半導体光検出素子を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0022】
半導体光検出素子SP1は、図1に示されるように、裏面入射型の固体撮像素子である。半導体光検出素子SP1は、半導体基板SSの裏面側が薄化されたBT−CCD(電荷結合素子)である。半導体基板SSの薄化は、たとえば、エッチングにより実現される。エッチング液には、たとえば、水酸化カリウム溶液又はTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)が用いられる。
【0023】
薄化された半導体基板SSの中央領域には、凹部TDが形成されている。凹部TDの周囲には、厚い枠部が存在している。凹部TDの側面は、底面BFに対して鈍角を成して傾斜している。半導体基板SSの薄化された中央領域は、光感応領域(撮像領域)である。この光感応領域に光Lが、たとえば、Z軸の負方向に沿って入射する。半導体基板SSの凹部TDの底面BFは、光入射面を構成している。枠部は、エッチングによって除去されていてもよい。この場合、全領域が薄化された裏面入射型の固体撮像素子が得られる。
【0024】
半導体光検出素子SP1は、図2に示されるように、半導体基板SSとしてのp型(第一導電型)の半導体基板1を備えている。半導体基板1は、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第一主面1a及び第二主面1bを有している。半導体基板1は、面方位(100)のシリコン基板である。半導体基板1では、入射光に応じてキャリアが発生する。第二主面1bが光入射面であり、第一主面1aが光入射面の裏面である。半導体基板1の厚み方向は、Z軸と平行な方向である。半導体基板1の中央領域における厚みは、たとえば、5〜30μmである。
【0025】
半導体基板1の厚みは、画素ピッチP以下に設定されている。本実施形態では、画素ピッチPは、たとえば、5〜48μmである。半導体基板1の厚みは、たとえば、5〜30μmである。本実施形態では、半導体光検出素子SP1として、2相クロック駆動される固体撮像素子が示されている。各転送電極の下には、電荷が一方向に確実に転送されるために、不純物濃度を異ならせた領域(不図示)が存在している。
【0026】
Siを用いた場合、p型不純物としてはBなどの3族元素が用いられ、n型不純物としてはN、P又はAsなどの5族元素が用いられる。半導体の導電型であるn型とp型は、互いに置換して素子を構成しても、当該素子を機能させることができる。
【0027】
半導体基板1の第一主面1a側には、電荷転送部としてのn型の半導体層(半導体領域)3が設けられている。半導体基板1と半導体層3との間にはpn接合が形成されている。半導体基板1の第一主面1a上には、絶縁層7を介して、転送電極部としての複数の電荷転送電極5が配置されている。半導体基板1の第一主面1a側には、半導体層3を垂直CCD毎に電気的に分離するアイソレーション領域(不図示)が形成されている。半導体層3の厚みは、たとえば、0.1〜1μmである。
【0028】
半導体基板1の第二主面1bには、複数の凸部10が形成されている。本実施形態では、複数の凸部10が、第二主面1bにおける光感応領域9に対応する領域全体に形成されている。各凸部10は、略錐体形状を呈しており、半導体基板1の厚み方向に対して傾斜した斜面10aを有している。凸部10は、たとえば、略四角錐形状を呈する。凸部10の高さは、200nm以上である。隣り合う二つの凸部10の頂点の間隔は、たとえば、500〜3000nmである。
【0029】
凸部10では、斜面10aとして、半導体基板1の(111)面が露出している。斜面10aは、光学的に露出している。斜面10aが光学的に露出しているとは、斜面10aが空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、斜面10a上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。
【0030】
半導体光検出素子SP1では、半導体基板1の第二主面1b側には、アキュムレーション層11が設けられている。凸部10の斜面10aは、アキュムレーション層11の表面に含まれている。アキュムレーション層11は、半導体基板1と同じ導電型(p型)を有している。アキュムレーション層11の不純物濃度は、半導体基板1の不純物濃度よりも大きい。
【0031】
本実施形態では、アキュムレーション層11は、半導体基板1内において第二主面1b側からp型不純物をイオン注入又は拡散させることによって形成されている。アキュムレーション層11は、p型不純物をイオン注入又は拡散させた後に熱処理(アニール)することにより、活性化されている。アキュムレーション層11の厚みは、たとえば、0.1〜1μmである。
【0032】
半導体光検出素子SP1は、第二主面1b上に配置されている反射防止膜AR1を備えている。本実施形態では、反射防止膜AR1は、酸化シリコン(SiO)膜である。反射防止膜AR1は、入射光を透過させる酸化物膜である。反射防止膜AR1は、凸部10の斜面10aを覆うように、斜面10aと接している。反射防止膜AR1の表面には、複数の凸部10に対応する凹凸が形成されている。反射防止膜AR1の厚みは、たとえば、1〜200nmである。反射防止膜AR1は、たとえば、複数の凸部10が形成されている領域全体を覆っている。
【0033】
以上のように、本実施形態では、第二主面1bに形成されている複数の凸部10が、斜面10aを有している。光Lが第二主面1bから半導体基板1に入射する場合、図3に示されるように、一部の光は、第二主面1b側で反射する。斜面10aが半導体基板1の厚み方向に対して傾斜しているので、たとえば、一つの凸部10の斜面10a側で反射した光は、当該一つの凸部10に近接する凸部10の斜面10a側に向けられ、近接する凸部10の斜面10aから半導体基板1に入射する。第二主面1b(斜面10a)側で反射した光が、半導体基板1に再入射する。
【0034】
凸部10では、斜面10aとして、半導体基板1の(111)面が露出しているので、斜面10aから半導体基板1に入射する光は、半導体基板1に取り込まれ易い。凸部10の高さが200nm以上であるので、斜面10aの表面積が大きい。このため、斜面10aに入射する光が半導体基板1に多く取り込まれる。
【0035】
紫外の波長領域の光は、シリコンによる吸収係数が大きいため、半導体基板1における第二主面1b(斜面10a)に近い領域で吸収される。半導体光検出素子SP1では、半導体基板1に形成されている凸部10において、半導体基板1の(111)面が露出しているので、第二主面1bに近い領域での光の吸収が阻害されることはない。
【0036】
これらの結果、半導体光検出素子SP1では、紫外の波長帯域での分光感度特性の向上が図られている。以下の理由により、半導体光検出素子SP1では、近赤外の波長帯域での分光感度特性の向上も図られている。
【0037】
斜面10aから半導体基板1内に入射した光L1は、図3にも示されるように、半導体基板1の厚み方向と交差する方向に進み、第一主面1aに到達することがある。このとき、第一主面1aに到達する光L1は、第一主面1aに到達する角度によっては、第一主面1aで全反射する。このため、半導体光検出素子SP1(半導体基板1)に入射した光の走行距離が長くなる。
【0038】
半導体基板1に再入射した光L2は、半導体基板1の厚み方向と交差する方向に半導体基板1内を進む。このため、半導体光検出素子SP1(半導体基板1)に再入射した光L2の走行距離も長くなる。
【0039】
半導体基板1内を進む光の走行距離が長くなると、光が吸収される距離も長くなる。このため、シリコンによる吸収係数が小さい近赤外の波長帯域の光であっても、半導体基板1で吸収されるので、半導体光検出素子SP1では、近赤外の波長帯域での分光感度特性の向上が図られる。
【0040】
半導体光検出素子SP1では、半導体基板1の第二主面1bに、アキュムレーション層11が設けられている。凸部10の斜面10aは、アキュムレーション層11の表面に含まれている。アキュムレーション層11によって、第二主面1b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流が低減される。アキュムレーション層11は、半導体基板1の第二主面1b付近で光により発生したキャリアが第二主面1bでトラップされるのを抑制するので、光により発生したキャリアは、半導体基板1と半導体層3とで形成されるpn接合へ効率的に移動する。この結果、半導体光検出素子SP1では、光検出感度の向上が図られている。
【0041】
半導体光検出素子SP1は、酸化シリコン膜である反射防止膜AR1を備えている。このため、光が半導体基板1により一層取り込まれ易く、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性がより一層向上する。
【0042】
本発明者らは、第1実施形態による分光感度特性の向上効果を確認するための実験を行なった。
【0043】
本発明者らは、上述した構成を備えた半導体光検出素子(実施例1及び2と称する)と、半導体基板の光入射面に凸部が形成されていない半導体光検出素子(比較例1と称する)と、を作製し、それぞれの分光感度特性を調べた。実施例1及び2並びに比較例1は、凸部の形成の点を除いて、同じ構成を備えている。光感応領域のサイズは、0.5mmφに設定されている。
【0044】
実施例1(図4参照)では、凸部10の高さは、1570nmである。この値は、反射防止膜AR1の厚みを含んでいる。実施例2(図5参照)では、凸部10の高さは、1180nmである。この値も、反射防止膜AR1の厚みを含んでいる。図4及び図5の(a)は、半導体光検出素子の光入射面側の表面(反射防止膜AR1の表面)を、斜め45°から観察したSEM画像である。図4及び図5の(b)は、半導体光検出素子の端面を観察したSEM画像である。
【0045】
実験結果が図6及び図7に示されている。図6及び図7において、実施例1の分光感度特性はT1で示され、実施例1の分光感度特性はT2で示され、比較例1の分光感度特性はT3で示されている。図6において、縦軸は量子効率(Q.E.)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。図7では、真空紫外の波長帯域での分光感度特性が示されている。
【0046】
図6及び図7から分かるように、実施例1及び2では、比較例1に比して、紫外の波長帯域での分光感度が大幅に向上している。実施例1及び2では、比較例1に比して、近赤外の波長帯域での分光感度も向上している。実施例1は、実施例2に比して、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性が向上している。
【0047】
(第2実施形態)
図8を参照して、第2実施形態に係る半導体光検出素子SP2の構成を説明する。図8は、第2実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0048】
半導体光検出素子SP2は、半導体基板1、複数の電荷転送電極5、及び電極膜ELを備えている。半導体光検出素子SP2は、反射防止膜AR1の代わりに、電極膜ELを備えている点で、半導体光検出素子SP1と相違する。
【0049】
電極膜ELは、半導体基板1上に配置されている。本実施形態では、電極膜ELは、半導体基板1と接している。電極膜ELは、半導体光検出素子SP2に入射する光を透過させると共に、所定の電位(たとえば、グラウンド電位又は負の電位)に接続される。電極膜ELは、たとえば、被測定光に対して透明な電極膜(以下、単に「透明電極膜」と称する場合がある)である。透明電極膜の材料としては、たとえば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、グラフェン、及びカーボンナノチューブ(CNT)が挙げられる。透明電極膜は、極めて薄い金属膜であってもよい。この金属膜の材料としては、たとえば、TiPtが挙げられる。電極膜ELの表面には、半導体基板1と同様に、複数の凸部10に対応する凹凸が形成されている。電極膜ELの厚みは、たとえば、0.0003〜3μmである。電極膜ELは、たとえば、複数の凸部10が形成されている領域全体を覆っている。
【0050】
半導体光検出素子SP2では、半導体光検出素子SP1と同様に、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性の向上が図られている。
【0051】
反射防止膜AR1に紫外光が入射すると、反射防止膜AR1が酸化シリコン膜、すなわち酸化物膜であるため、反射防止膜AR1が帯電する現象(チャージアップ現象)が生じるおそれがある。反射防止膜AR1にチャージアップ現象が発生すると、以下の理由により、紫外の波長帯域での分光感度特性が劣化する。
【0052】
酸化シリコン膜などの酸化物膜には、一般に、正極性の電荷が帯電している。紫外光が酸化物膜に照射されると、酸化物膜の電荷量が増加する。アキュムレーション層11がp型の半導体層である場合、正極性に帯電された不純物原子であるアクセプタが、アキュムレーション層11に存在している。酸化物膜に帯電された正極性の電荷により、アキュムレーション層11内に存在する、正極性に荷電された正孔が斥けられる。このため、アキュムレーション層11によって半導体基板1内に形成されるポテンシャルスロープは、第二主面1b近傍で紫外光の入射面側に曲げられる。入射した紫外光は、半導体基板1の表面近傍で光電反応を発生する。光電反応により生じた電子は、電荷転送が行われる第一主面1a側に導かれず、第二主面1b側に導かれる。第二主面1b側に導かれた電子は、再結合により消滅するので、信号出力としては取り出されない。この結果、紫外の波長帯域での感度が低下する。
【0053】
これに対し、半導体光検出素子SP2では、反射防止膜AR1が存在しないので、反射防止膜AR1の帯電により発生する、紫外の波長帯域での感度の低下が抑制される。また、半導体基板1の表面に位置する電極膜ELにより、半導体基板1の表面の電位は常に一定に保たれる。したがって、半導体光検出素子SP2では、紫外の波長帯域での分光感度特性の劣化が抑制されている。電極膜ELによる上記作用・効果は、凸部10が形成されていない半導体光検出素子であっても得られる。
【0054】
(第3実施形態)
図9を参照して、第3実施形態に係る半導体光検出素子SP3の構成を説明する。図9は、第3実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0055】
半導体光検出素子SP3は、半導体基板1、複数の電荷転送電極5、酸化アルミニウム(Al)膜13、及び電極膜ELを備えている。半導体光検出素子SP2は、酸化アルミニウム膜13を備えている点で、半導体光検出素子SP2と相違する。
【0056】
酸化アルミニウム膜13は、第二主面1b上に配置されている。酸化アルミニウム膜13は、入射光を透過させる酸化物膜である。酸化アルミニウム膜13の厚みは、たとえば、0.0003〜3μmである。酸化アルミニウム膜13の表面には、複数の凸部10に対応する凹凸が形成されている。酸化アルミニウム膜13は、たとえば、複数の凸部10が形成されている領域全体を覆っている。
【0057】
酸化アルミニウム膜13は、負極性に帯電している。半導体基板1の導電型がp型であるため、酸化アルミニウム膜13によって、所定の固定電荷(正極性の固定電荷)が半導体基板1の第二主面1b側に存在する。正極性の固定電荷が存在している半導体基板1の第二主面1b側の領域は、アキュムレーション層として機能する。したがって、半導体光検出素子SP3では、半導体基板1にアキュムレーション層11は設けられていない。
【0058】
酸化アルミニウム膜13は、酸化シリコン膜を介して第二主面1b上に配置されていてもよい。この場合でも、酸化アルミニウム膜13によって、正極性の固定電荷が半導体基板1の第二主面1b側に存在する。
【0059】
電極膜ELは、酸化アルミニウム膜13上に配置されている。電極膜ELは、酸化アルミニウム膜13と接している。本実施形態でも、電極膜ELは、たとえば、被測定光に対して透明な電極膜である。透明電極膜の材料としては、たとえば、ITO、グラフェン、及びCNTが挙げられる。透明電極膜は、極めて薄い金属膜であってもよい。この金属膜の材料としては、たとえば、TiPtが挙げられる。電極膜ELは、所定の電位(たとえば、グラウンド電位又は負の電位)に接続される。電極膜ELの厚みは、たとえば、0.0003〜3μmである。電極膜ELは、たとえば、酸化アルミニウム膜13全体を覆っている。
【0060】
半導体光検出素子SP3でも、半導体光検出素子SP1,SP2と同様に、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性の向上が図られている。半導体光検出素子SP3では、半導体基板1にアキュムレーション層11が設けられる必要がないので、半導体光検出素子SP3の製造過程の簡素化が図られる。
【0061】
酸化アルミニウム膜13に紫外光が入射すると、反射防止膜AR1と同様に、酸化アルミニウム膜13が帯電する。この場合、酸化アルミニウム膜13の帯電状態は、負極性から電気的に中和な状態へと移行する。半導体光検出素子SP3では、所定の電位に接続される電極膜ELが酸化アルミニウム膜13上に配置されているので、酸化アルミニウム膜13の帯電が抑制される。したがって、半導体光検出素子SP3でも、紫外の波長帯域での分光感度特性の劣化が抑制されている。電極膜ELによる上記作用・効果は、凸部10が形成されていない半導体光検出素子であっても得られる。
【0062】
電極膜ELが、グラフェン又はCNTからなる膜である場合、たとえばITO膜に比して、紫外の波長帯域の光の透過率が高い、すなわち、紫外の波長帯域での透過特性の低下が抑制される。この結果、紫外の波長帯域での分光感度特性が、電極膜ELによって低下することが抑制されている。
【0063】
(第4実施形態)
図10を参照して、第4実施形態に係る半導体光検出素子SP4の構成を説明する。図10は、第4実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0064】
半導体光検出素子SP4は、半導体基板1、複数の電荷転送電極5、反射防止膜AR1、及び電極膜ELを備えている。半導体光検出素子SP4は、半導体基板1にアキュムレーション層11が設けられていない点で、半導体光検出素子SP2と相違する。
【0065】
本実施形態でも、電極膜ELは、たとえば、被測定光に対して透明な電極膜である。透明電極膜の材料としては、たとえば、ITO、グラフェン、及びCNTが挙げられる。透明電極膜は、極めて薄い金属膜であってもよい。この金属膜の材料としては、たとえば、TiPtが挙げられる。電極膜ELは、所定の電位(たとえば、負の電位)に接続される。電極膜ELは、反射防止膜AR1(酸化シリコン膜)を介して、第二主面1b上に配置されている。電極膜ELは、反射防止膜AR1と接している。電極膜ELの厚みは、たとえば、0.0003〜3μmである。電極膜ELは、たとえば、反射防止膜AR1全体を覆っている。
【0066】
電極膜ELは、負の電位に接続される。半導体基板1の導電型がp型であるため、電極膜ELによって、所定の固定電荷(正極性の固定電荷)が半導体基板1の第二主面1b側に存在する。正極性の固定電荷が存在している半導体基板1の第二主面1b側の領域は、アキュムレーション層として機能する。
【0067】
半導体光検出素子SP4でも、半導体光検出素子SP1,SP2,SP3と同様に、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性の向上が図られている。半導体光検出素子SP4でも、半導体基板1にアキュムレーション層11が設けられる必要がないので、半導体光検出素子SP4の製造過程の簡素化が図られる。
【0068】
半導体光検出素子SP4では、負の電位に接続される電極膜ELが反射防止膜AR1上に配置されているので、反射防止膜AR1の帯電の有無に関わらず、半導体基板1内にはポテンシャルスロープが一定に形成される。したがって、半導体光検出素子SP4では、紫外の波長帯域での分光感度特性の劣化が抑制されている。
【0069】
(第5実施形態)
図11を参照して、第5実施形態に係る半導体光検出素子SP5の構成を説明する。図11は、第5実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0070】
半導体光検出素子SP5は、図11に示されるように、表面入射型のフォトダイオードである。半導体光検出素子SP5は、n型の半導体基板21を備えている。半導体基板21は、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第一主面21a及び第二主面21bを有している。半導体基板21は、面方位(100)のシリコン基板である。第一主面21aが光入射面であり、第二主面21bが光入射面の裏面である。半導体基板21の厚みは、たとえば、200〜500μmである。半導体基板21の厚み方向は、Z軸と平行な方向である。
【0071】
半導体基板21の第一主面21a側には、p型の半導体領域23とn型の半導体領域25が設けられている。半導体基板21と半導体領域23との間にはpn接合が形成されている。半導体領域23の厚みは、たとえば、1.5〜3.0μmである。本実施形態では、半導体領域23は、半導体基板21内において第一主面21a側からp型不純物をイオン注入又は拡散させることによって形成されている。半導体領域25は、半導体基板21内において第一主面21a側からn型不純物をイオン注入又は拡散させることによって形成されている。
【0072】
導電型に付された「+」は、高不純物濃度であることを示し、たとえば、不純物濃度が1×1017cm−3程度以上であることを示す。導電型に付された「−」は、低不純物濃度であることを示し、たとえば、不純物濃度が1×1015cm−3程度以下であることを示す。
【0073】
半導体基板21の第一主面21aには、複数の凸部10が形成されている。本実施形態では、複数の凸部10が、第一主面21aにおける半導体領域23に対応する領域全体に形成されている。凸部10の斜面10aは、半導体領域23の表面に含まれている。各凸部10は、第1実施形態と同じく、略錐体形状を呈しており、半導体基板21の厚み方向に対して傾斜した斜面10aを有している。凸部10では、斜面10aとして、半導体基板21の(111)面が露出している。凸部10は、第一主面21aにおける半導体領域23に対応する領域以外にも形成されていてもよい。すなわち、凸部10は、第一主面21a全体に形成されていてもよい。
【0074】
半導体基板21の第一主面21a上には、絶縁層27が配置されている。絶縁層27は、酸化シリコン(SiO)膜である。すなわち、絶縁層27は、入射光を透過させる酸化物膜である。絶縁層27は、凸部10の斜面10aを覆うように、斜面10aと接している。絶縁層27の表面には、複数の凸部10に対応する凹凸が形成されている。絶縁層27の厚みは、たとえば、1〜200nmである。絶縁層27は、反射防止膜として機能させてもよい。
【0075】
半導体光検出素子SP5は、電極膜ELを備えている。電極膜ELは、絶縁層27上に配置されている。電極膜ELは、絶縁層27と接している。本実施形態でも、電極膜ELは、たとえば、被測定光に対して透明な電極膜である。透明電極膜の材料としては、たとえば、ITO、グラフェン、及びCNTが挙げられる。透明電極膜は、極めて薄い金属膜であってもよい。この金属膜の材料としては、たとえば、TiPtが挙げられる。電極膜ELは、電極31を通して、所定の電位(たとえば、グラウンド電位又は負の電位)に接続される。電極31は、電極膜ELに電気的に接触かつ接続されている。電極膜ELの厚みは、たとえば、0.0003〜3μmである。
【0076】
半導体光検出素子SP5は、電極33,35を備えている。電極33は、絶縁層27に形成されたコンタクトホールH1を通して、半導体領域23に電気的に接触且つ接続されている。電極35は、絶縁層27に形成されたコンタクトホールH2を通して、半導体領域25に電気的に接触且つ接続されている。
【0077】
半導体光検出素子SP5でも、半導体光検出素子SP1,SP2,SP3,SP4と同様に、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性の向上が図られている。
【0078】
半導体光検出素子SP5では、グラウンド電位又は負の電位に接続される電極膜EL(透明電極膜)が絶縁層27上に配置されているので、絶縁層27の帯電が抑制される。したがって、半導体光検出素子SP5では、紫外の波長帯域での分光感度特性の劣化が抑制されている。
【0079】
電極膜ELが、グラフェン又はCNTからなる膜である場合、上述したように、紫外の波長帯域での透過特性の低下が抑制される。この結果、紫外の波長帯域での分光感度特性が、電極膜ELによって低下することが抑制されている。
【0080】
(第6実施形態)
図12を参照して、第6実施形態に係る半導体光検出素子SP6の構成を説明する。図12は、第6実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0081】
半導体光検出素子SP6は、図12に示されるように、裏面入射型のフォトダイオードである。半導体光検出素子SP6は、半導体基板21、反射防止膜AR1(酸化シリコン膜)、及び電極膜ELを備えている。第6実施形態でも、電極膜ELは、たとえば、被測定光に対して透明な電極膜である。透明電極膜の材料としては、たとえば、ITO、グラフェン、及びCNTが挙げられる。透明電極膜は、極めて薄い金属膜であってもよい。この金属膜の材料としては、たとえば、TiPtが挙げられる。第二主面21bが光入射面であり、第一主面21aが光入射面の裏面である。半導体基板21の厚みは、たとえば、100〜200μmである。
【0082】
半導体基板21の第二主面21bには、複数の凸部10が形成されている。本実施形態では、複数の凸部10が、第二主面21b全体に形成されている。各凸部10は、第1実施形態と同じく、略錐体形状を呈しており、半導体基板21の厚み方向に対して傾斜した斜面10aを有している。凸部10では、斜面10aとして、半導体基板21の(111)面が露出している。凸部10は、第二主面21bにおける半導体領域23に対応する領域のみに形成されていてもよい。
【0083】
反射防止膜AR1は、第二主面21b上に配置されている。本実施形態でも、反射防止膜AR1は、凸部10の斜面10aを覆うように、斜面10aと接している。反射防止膜AR1の厚みは、たとえば、1〜200μmである。
【0084】
電極膜EL(透明電極膜)は、所定の電位(たとえば、グラウンド電位又は負の電位)に接続される。電極膜ELは、反射防止膜AR1(酸化シリコン膜)を介して、第二主面1b上に配置されている。電極膜ELの厚みは、たとえば、0.0003〜3μmである。
【0085】
半導体光検出素子SP6でも、半導体光検出素子SP1,SP2,SP3,SP4,SP5と同様に、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性の向上が図られている。
【0086】
半導体光検出素子SP6では、グラウンド電位又は負の電位に接続される電極膜EL(透明電極膜)が反射防止膜AR1上に配置されているので、反射防止膜AR1の帯電が抑制される。したがって、半導体光検出素子SP6では、紫外の波長帯域での分光感度特性の劣化が抑制されている。
【0087】
電極膜ELが、グラフェン又はCNTからなる膜である場合、上述したように、紫外の波長帯域での透過特性の低下が抑制される。この結果、紫外の波長帯域での分光感度特性が、電極膜ELによって低下することが抑制されている。
【0088】
(第7実施形態)
図13を参照して、第7実施形態に係る半導体光検出素子SP7の構成を説明する。図13は、第7実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0089】
半導体光検出素子SP7は、半導体基板1、複数の電荷転送電極5、及びホウ素を含む膜40を備えている。半導体光検出素子SP7は、反射防止膜AR1の代わりに、膜40を備えている点で、半導体光検出素子SP1と相違する。
【0090】
膜40は、第二主面1b上に配置されており、入射光を透過させる。膜40は、第二主面1bと接している。本実施形態では、膜40は、ホウ素からなる膜である。膜40は、凸部10の斜面10aを覆うように、斜面10aと接している。膜40の表面には、複数の凸部10に対応する凹凸が形成されている。膜40の厚みは、たとえば、1〜30nmである。膜40は、たとえば、複数の凸部10が形成されている領域全体を覆っている。
【0091】
半導体光検出素子SP7では、半導体光検出素子SP1,SP2,SP3,SP4,SP5,SP6と同様に、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性の向上が図られている。
【0092】
半導体光検出素子SP7では、第二主面1b(光入射面)上にホウ素を含む膜40が配置されているので、紫外の波長帯域での分光感度特性の劣化が抑制されている。
【0093】
(第8実施形態)
図14を参照して、第8実施形態に係る半導体光検出素子SP8の構成を説明する。図14は、第8実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0094】
半導体光検出素子SP8は、半導体基板1、複数の電荷転送電極5、ホウ素を含む膜40、及び反射防止膜AR2を備えている。半導体光検出素子SP8は、反射防止膜AR2を備えている点で、半導体光検出素子SP7と相違する。
【0095】
反射防止膜AR2は、膜40上に配置されている。反射防止膜AR2は、膜40と接している。本実施形態では、反射防止膜AR2は、酸化アルミニウム(Al)膜である。反射防止膜AR2は、入射光を透過させる酸化物膜である。反射防止膜AR2は、たとえば、膜40全体を覆っている。本実施形態でも、膜40は、ホウ素からなる膜である。反射防止膜AR2の厚みは、たとえば、0.01〜1μmである。
【0096】
半導体光検出素子SP8では、半導体光検出素子SP1,SP2,SP3,SP4,SP5,SP6,SP7と同様に、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性の向上が図られている。半導体光検出素子SP8は、反射防止膜AR2を備えているので、光が半導体基板1により一層取り込まれ易い。この結果、半導体光検出素子SP8では、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性がより一層向上する。
【0097】
半導体光検出素子SP8では、半導体光検出素子SP7と同様に、第二主面1b(光入射面)上にホウ素を含む膜40が配置されているので、紫外の波長帯域での分光感度特性の劣化が抑制されている。
【0098】
(第9実施形態)
図15を参照して、第9実施形態に係る半導体光検出素子SP9の構成を説明する。図15は、第9実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0099】
半導体光検出素子SP9は、半導体光検出素子SP6と同様に、裏面入射型のフォトダイオードである。半導体光検出素子SP9は、半導体基板21、ホウ素を含む膜40、及び反射防止膜AR2(酸化アルミニウム膜)を備えている。半導体光検出素子SP9は、膜40及び反射防止膜AR2を備えている点で、半導体光検出素子SP6と相違する。
【0100】
膜40は、第二主面21b上に配置されている。膜40は、凸部10の斜面10aを覆うように、斜面10aと接している。膜40は、第二主面21bと接している。膜40の厚みは、たとえば、1〜30nmである。本実施形態でも、膜40は、ホウ素からなる膜である。膜40は、たとえば、複数の凸部10が形成されている領域全体を覆っている。
【0101】
反射防止膜AR2は、膜40を介して、第二主面1b上に配置されている。反射防止膜AR2は、膜40と接している。反射防止膜AR2の厚みは、たとえば、0.01〜1μmである。
【0102】
半導体光検出素子SP9でも、半導体光検出素子SP1,SP2,SP3,SP4,SP5,SP6,SP7,SP8と同様に、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性の向上が図られている。半導体光検出素子SP8は、反射防止膜AR2を備えているので、上述したように、半導体光検出素子SP8では、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性がより一層向上する。
【0103】
半導体光検出素子SP9でも、半導体光検出素子SP7,SP8と同様に、第二主面21b(光入射面)上にホウ素を含む膜40が配置されているので、紫外の波長帯域での分光感度特性の劣化が抑制されている。
【0104】
(第10実施形態)
図16を参照して、第10実施形態に係る半導体光検出素子SP10の構成を説明する。図16は、第10実施形態に係る半導体光検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0105】
半導体光検出素子SP10は、半導体光検出素子SP5と同様に、表面入射型のフォトダイオードである。半導体光検出素子SP10は、半導体基板21、ホウ素を含む膜40、及び反射防止膜AR2(酸化アルミニウム膜)を備えている。半導体光検出素子SP9は、膜40及び反射防止膜AR2を備えている点で、半導体光検出素子SP5と相違する。
【0106】
膜40は、第二主面21b上に配置されている。膜40は、半導体光検出素子SP9と同様に、凸部10の斜面10aを覆うように、斜面10aと接している。膜40の厚みは、たとえば、1〜30nmである。本実施形態でも、膜40は、ホウ素からなる膜である。
【0107】
反射防止膜AR2は、半導体光検出素子SP9と同様に、膜40を介して、第二主面1b上に配置されている。反射防止膜AR2の厚みは、たとえば、0.01〜1μmである。本実施形態では、半導体光検出素子SP5と異なり、複数の凸部10が形成されている領域は、絶縁層27から露出している。すなわち、絶縁層27は、複数の凸部10が形成されている領域を覆っていない。絶縁層27は、たとえば、酸化シリコン(SiO)膜である。
【0108】
半導体光検出素子SP10でも、半導体光検出素子SP1,SP2,SP3,SP4,SP5,SP6,SP7,SP8,SP9と同様に、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性の向上が図られている。半導体光検出素子SP10は、反射防止膜AR2を備えているので、上述したように、半導体光検出素子SP10では、紫外及び近赤外の各波長帯域での分光感度特性がより一層向上する。
【0109】
半導体光検出素子SP10でも、半導体光検出素子SP7,SP8,SP9と同様に、第二主面21b(光入射面)上にホウ素を含む膜40が配置されているので、紫外の波長帯域での分光感度特性の劣化が抑制されている。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、シリコン基板を備える半導体光検出素子に利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1,21…半導体基板、1a,21a…第一主面、1b,21b…第二主面、3…半導体層、10…凸部、10a…斜面、11…アキュムレーション層、13…酸化アルミニウム膜、23…半導体領域、27…絶縁層(酸化シリコン膜)、40…ホウ素を含む膜、AR1…反射防止膜(酸化シリコン膜)、EL…電極膜、L…光、SP1,SP2,SP3,SP4,SP5,SP6,SP7,SP8,SP9,SP10…半導体光検出素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16