【実施例】
【0059】
〔ND分散液S1の作製〕
以下のような生成工程、精製工程、pH調整工程、乾燥工程、および修飾工程を経て、表面修飾ナノダイヤモンド分散液ないし表面修飾ナノダイヤモンドを作製した。
【0060】
生成工程では、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において大気組成の常圧の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉した。容器は鉄製で、容器の容積は15m
3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物0.50kgを使用した。当該爆薬におけるTNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、50/50である。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上記爆轟法で生成したナノダイヤモンド粒子の凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ナノダイヤモンド粗生成物を回収した。ナノダイヤモンド粗生成物の回収量は0.025kgであった。
【0061】
上述のような生成工程を複数回行うことによって取得されたナノダイヤモンド粗生成物に対し、次に、精製工程の酸処理を行った。具体的には、当該ナノダイヤモンド粗生成物200gに6Lの10質量%塩酸を加えて得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この酸処理における加熱温度は85〜100℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
【0062】
次に、精製工程の酸化処理を行った。具体的には、まず、デカンテーション後の沈殿液に、5Lの60質量%硫酸水溶液と2Lの60質量%クロム酸水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で5時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は120〜140℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上清液は着色しているところ、上清液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。次に、当該反復過程における最後のデカンテーションによって得られた沈殿液に対し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を1L加えた後、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この処理における加熱温度は70〜150℃である。次に、冷却後、デカンテーションによって沈殿液を得て、当該沈殿液について20質量%塩酸を加えることによってpHを2.5に調整した。この後、当該沈殿液中の固形分について、遠心沈降法により水洗を行った。
【0063】
次に、pH調整工程を行った。具体的には、遠心沈降法による上記の水洗を経て取得された沈殿物に超純水を加えて固形分濃度8質量%の懸濁液を調製した後、水酸化ナトリウムの添加によって当該懸濁液のpHを10に調整した。このようにして、pHの調整されたスラリーを得た。
【0064】
次に、乾燥工程を行った。具体的には、pH調整工程で得られたナノダイヤモンド水分散液からエバポレーターを使用して液分を蒸発させた後、これによって生じた残留固形分を乾燥用オーブン内での加熱乾燥によって乾燥させた。加熱乾燥温度は120℃とした。
【0065】
次に、修飾工程を行った。具体的には、まず、上述の乾燥工程を経て得られたナノダイヤモンド粉体0.15gを50mlサンプル瓶に量り取り、150℃で1時間、当該ナノダイヤモンド粉体を予備乾燥に付した。次に、当該ナノダイヤモンド粉体と、溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)14gと、シランカップリング剤であるアクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(東京化成工業株式会社製)1gとを混合した溶液を、10分間、攪拌した。次に、当該溶液に対し、ジルコニアビーズ(商品名「DZBφ30」,代表粒子径20〜40μm,大研化学工業株式会社製)34gを添加した。次に、超音波発生装置たるホモジナイザー(商品名「超音波分散機 UH−600S」,株式会社エスエムテー製)を使用して、前記の混合溶液を修飾処理に付した。具体的には、超音波発生装置の振動子の先端を反応容器内に挿入して前記の溶液に浸けた状態で当該振動子から超音波を発生させ、反応容器を氷水で冷やしながら当該反応容器内の前記混合溶液を8時間の超音波処理ないし修飾処理に付した。本処理において、当初は灰濁色であった溶液は、次第に、黒色化しつつ透明性を増した。これは、ナノダイヤモンド凝着体から順次にナノダイヤモンド粒子が解かれ(解砕)、解離状態にあるナノダイヤモンド粒子にシランカップリング剤が作用して結合し、そのように表面修飾のなされたナノダイヤモンド粒子がTHF溶媒中で分散安定化したためであると考えられる。8時間の修飾処理後の表面修飾ナノダイヤモンドの粒径D50(メディアン径)を後記のように動的光散乱法によって測定したところ、15nmであった。以上のようにして、表面修飾ナノダイヤモンド分散液(ND分散液S1)ないし表面修飾ナノダイヤモンドを作製した。
【0066】
以上のようにして得られたND分散液S1を一昼夜静置した後、上清液を採取した。次に、トルエン16mlとヘキサン4mlとの混合溶媒に対して当該上清液を滴下した。上清液の総滴下量は10mlである。滴下により、黒色透明であった上清液が混合溶媒中で灰濁色に変化した。この滴下後の混合溶媒を、遠心分離機を使用した遠心分離処理に付し、これによって沈降した固形分(表面修飾ナノダイヤモンド粒子)を回収した。この遠心分離処理において、遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分間とした。回収した固形分について、乾燥した後に後記のICP発光分光分析法によってZr含量を測定したところ、7.1質量%であった。
【0067】
〔ND分散液S2の作製〕
修飾工程で用いたシランカップリング剤を、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルに代えてメタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(東京化成工業株式会社製)1gとした以外は、ND分散液S1の作製に関して上述したのと同様の一連の工程(生成工程,精製工程,pH調整工程,乾燥工程,修飾工程)を経て、別の表面修飾ナノダイヤモンド分散液(ND分散液S2)ないし表面修飾ナノダイヤモンドを作製した。この表面修飾ナノダイヤモンドについて、8時間の修飾処理後の粒径D50(メディアン径)を後記のように動的光散乱法によって測定したところ、19nmであった。また、ND分散液S2中の表面修飾ナノダイヤモンドについて、ND分散液S1中の表面修飾ナノダイヤモンドと同様にしてZr含量を測定したところ、7.5質量%であった。
【0068】
〔ND分散液S3の作製〕
修飾工程でジルコニアビーズを使用しなかった以外は、ND分散液S1の作製に関して上述したのと同様の一連の工程(生成工程,精製工程,pH調整工程,乾燥工程,修飾工程)を経て、別のナノダイヤモンド分散液(ND分散液S3)を作製した。修飾工程において、超音波処理に付された混合溶液(ナノダイヤモンド凝着体およびシランカップリング剤を含有する)は、8時間の超音波処理を経ても当初の灰濁色のままであり、当該混合溶液中には沈降物が存在していた。したがって、ND分散液S3に含有されるナノダイヤモンドにはシランカップリング剤が結合していないと考えられる。前記の沈降物について、乾燥した後に後記のICP発光分光分析法によってZr含量を測定したところ、0.01質量%未満であった。
【0069】
〔ハードコートPETフィルムの作製〕
次のようにして、表面にハードコートを有するPETフィルムを作製した。具体的には、まず、ウレタンアクリレート(商品名「KRM8200」,ダイセルオルネクス株式会社製)30質量部と、メチルエチルケトン70質量部と、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184(Irgacure 184)」,BASF製)2質量部とを、遮光瓶に入れて混合し、ハードコート形成用塗料を調製した。次に、厚さ75μmの易接着PETフィルム(商品名「A-4300」,東洋紡株式会社製)上に、ワイヤーバーを使用して当該ハードコート形成用塗料を流延して塗膜を形成した後、80℃で1分間、乾燥機を使用して当該塗膜を乾燥させた(乾燥後の塗膜の厚さは5μm)。次に、紫外線照射装置(商品名「ECS-4011GX」,光源は高圧水銀ランプ,アイグラフィックス株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下において、PETフィルム上の塗膜に紫外線を照射した。この紫外線照射においては、光源出力を4kWとし、照射対象物を搬送するコンベアの搬送速度を4m/分とした。以上のようにして、ハードコートPETフィルムを作製した。
【0070】
〔実施例1〕
上記のND分散液S1を一昼夜静置した後に採取した上清液を、トルエン16mlとヘキサン4mlとの混合溶媒に滴下し(総滴下量10ml)、滴下後の混合溶媒を遠心分離処理(遠心力20000×g,遠心時間10分間)に付して沈降した固形分(表面修飾ナノダイヤモンド粒子)を回収した。このようにして回収した固形分にテトラヒドロフラン(THF)を加えて表面修飾ナノダイヤモンドのTHF溶液(固形分濃度3質量%)を調製し、当該溶液について、超音波処理装置(商品名「ASU-10」,アズワン株式会社製)を使用して10分間の超音波処理を行った。この超音波処理後のTHF溶液中の表面修飾ナノダイヤモンドについて、粒径D50(メディアン径)を後記のように動的光散乱法によって測定したところ、17nmであった。一方、この超音波処理後のTHF溶液(ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)と、反射防止塗料(商品名「ELCOM P-5062」,中空シリカ微粒子含有,固形分濃度3質量%,日揮触媒化成株式会社製)とを、反射防止塗料の固形分100質量部に対してTHF溶液の固形分が2質量部となる量比で遮光瓶に投入し、振とう機を使用して1時間の混合を行った。このようにして、ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドの分散する反射防止塗料(表面修飾ナノダイヤモンド濃度は約0.06質量%)を調製した。次に、上記のハードコートPETフィルムのハードコート層上に、ワイヤーバーを使用して当該反射防止塗料を流延して塗膜を形成した後、80℃で1分間、乾燥機を使用して当該塗膜を乾燥させた(乾燥後の塗膜の厚さは100nm)。次に、紫外線照射装置(商品名「ECS-4011GX」,光源は高圧水銀ランプ,アイグラフィックス株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下において、ハードコートPETフィルム上の前記塗膜に紫外線を照射した。この紫外線照射においては、光源出力を4kWとし、照射対象物を搬送するコンベアの搬送速度を2m/分とした。以上のようにして、実施例1の反射防止層付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0071】
〔実施例2〕
反射防止塗料(商品名「ELCOM P-5062」,日揮触媒化成株式会社製)とTHF溶液(ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)との量比に関し、反射防止塗料の固形分100質量部に対してTHF溶液の固形分を2質量部に代えて5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、反射防止塗料(表面修飾ナノダイヤモンド濃度は約0.15質量%)を調製し、この反射防止塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の反射防止層付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0072】
〔実施例3〕
上記のND分散液S2を一昼夜静置した後に採取した上清液を、トルエン16mlとヘキサン4mlとの混合溶媒に滴下し(総滴下量10ml)、滴下後の混合溶媒を遠心分離処理(遠心力20000×g,遠心時間10分間)に付して沈降した固形分(表面修飾ナノダイヤモンド粒子)を回収した。このようにして回収した固形分にテトラヒドロフラン(THF)を加えて表面修飾ナノダイヤモンドのTHF溶液(固形分濃度3質量%)を調製し、当該溶液について、超音波処理装置(商品名「ASU-10」,アズワン株式会社製)を使用して10分間の超音波処理を行った。この超音波処理後のTHF溶液(ND分散液S2に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)と、反射防止塗料(商品名「ELCOM P-5062」,中空シリカ微粒子含有,固形分濃度3質量%,日揮触媒化成株式会社製)とを、反射防止塗料の固形分100質量部に対してTHF溶液の固形分が5質量部となる量比で遮光瓶に投入し、振とう機を使用して1時間の混合を行った。このようにして、ND分散液S2に由来する表面修飾ナノダイヤモンドの分散する反射防止塗料(表面修飾ナノダイヤモンド濃度は約0.15質量%)を調製した。次に、上記のハードコートPETフィルムのハードコート層上に、ワイヤーバーを使用して当該反射防止塗料を流延して塗膜を形成した後、80℃で1分間、乾燥機を使用して当該塗膜を乾燥させた(乾燥後の塗膜の厚さは100nm)。次に、紫外線照射装置(商品名「ECS-4011GX」,光源は高圧水銀ランプ,アイグラフィックス株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下において、ハードコートPETフィルム上の前記塗膜に紫外線を照射した。この紫外線照射においては、光源出力を4kWとし、照射対象物を搬送するコンベアの搬送速度を2m/分とした。以上のようにして、実施例3の反射防止層付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0073】
〔比較例1〕
表面修飾ナノダイヤモンド含有反射防止塗料に代えて反射防止塗料(商品名「ELCOM P-5062」,中空シリカ微粒子含有,固形分濃度3質量%,日揮触媒化成株式会社製)を用いたこと以外は実施例1〜3と同様にして、比較例1の反射防止層付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0074】
〔比較例2〕
ND分散液S2の代わりに上記のND分散液S3を用いたこと以外は実施例3と同様にして、反射防止塗料(ND分散液S3に由来するナノダイヤモンドの濃度は約0.06質量%)を調製し、この反射防止塗料を用いたこと以外は実施例3と同様にして、比較例2の反射防止層付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0075】
〔実施例4〕
上記のND分散液S1を一昼夜静置した後に採取した上清液を、トルエン16mlとヘキサン4mlとの混合溶媒に滴下し(総滴下量10ml)、滴下後の混合溶媒を遠心分離処理(遠心力20000×g,遠心時間10分間)に付して沈降した固形分(表面修飾ナノダイヤモンド粒子)を回収した。このようにして回収した固形分にテトラヒドロフラン(THF)を加えて表面修飾ナノダイヤモンドのTHF溶液(固形分濃度3質量%)を調製し、当該溶液について、超音波処理装置(商品名「ASU-10」,アズワン株式会社製)を使用して10分間の超音波処理を行った。この超音波処理後のTHF溶液(ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)、および、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの多官能アクリレート混合物(商品名「PETIA」,酸価10,水酸基価100,ダイセルオルネクス株式会社製)を、多官能アクリレート混合物60質量部に対してTHF溶液の固形分が40質量部となる量比で遮光瓶に投入し、これらの合計100質量部に対して2質量部の光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF製)を更に遮光瓶に投入し、振とう機を使用して1時間の混合を行った。このようにして、ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドの分散する屈折率調整膜形成用の塗料を調製した。次に、上記のハードコートPETフィルムのハードコート層上に、ワイヤーバーを使用して当該屈折率調整膜形成用塗料を流延して塗膜を形成した後、80℃で1分間、乾燥機を使用して当該塗膜を乾燥させた(乾燥後の塗膜の厚さは200nm)。次に、紫外線照射装置(商品名「ECS-4011GX」,光源は高圧水銀ランプ,アイグラフィックス株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下において、ハードコートPETフィルム上の前記塗膜に紫外線を照射した。この紫外線照射においては、光源出力を4kWとし、照射対象物を搬送するコンベアの搬送速度を2m/分とした。以上のようにして、実施例4の屈折率調整膜付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0076】
〔実施例5〕
多官能アクリレート混合物(商品名「PETIA」,ダイセルオルネクス株式会社製)とTHF溶液(ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)との量比に関し、多官能アクリレート混合物40質量部に対してTHF溶液の固形分を60質量部としたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5の屈折率調整膜付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0077】
〔比較例3〕
ND分散液S1の代わりに上記のND分散液S3を用いたこと以外は実施例4と同様にして、THF溶液(ND分散液S3に由来するナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)を調製し、このTHF溶液を用いたこと以外は実施例4と同様にして、比較例3の屈折率調整膜付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0078】
〔実施例6〕
上記のND分散液S1を一昼夜静置した後に採取した上清液を、トルエン16mlとヘキサン4mlとの混合溶媒に滴下し(総滴下量10ml)、滴下後の混合溶媒を遠心分離処理(遠心力20000×g,遠心時間10分間)に付して沈降した固形分(表面修飾ナノダイヤモンド粒子)を回収した。このようにして回収した固形分にテトラヒドロフラン(THF)を加えて表面修飾ナノダイヤモンドのTHF溶液(固形分濃度3質量%)を調製し、当該溶液について、超音波処理装置(商品名「ASU-10」,アズワン株式会社製)を使用して10分間の超音波処理を行った。この超音波処理後のTHF溶液(ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)、および、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの多官能アクリレート混合物(商品名「PETIA」,酸価10,水酸基価100,ダイセルオルネクス株式会社製)を、多官能アクリレート混合物100質量部に対してTHF溶液の固形分が1質量部となる量比で含有し、更にテトラヒドロフラン60質量部と光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF製)2質量部とを含有する混合物について、振とう機を使用して1時間の混合を行った。このようにして、ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドの分散するハードコート形成用塗料を調製した。次に、厚さ75μmの易接着PETフィルム(商品名「A-4300」,東洋紡株式会社製)上に、ワイヤーバーを使用して当該ハードコート形成用塗料を流延して塗膜を形成した後、80℃で1分間、乾燥機を使用して当該塗膜を乾燥させた(乾燥後の塗膜の厚さは5μm)。次に、紫外線照射装置(商品名「ECS-4011GX」,光源は高圧水銀ランプ,アイグラフィックス株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下において、PETフィルム上の塗膜に紫外線を照射した。この紫外線照射においては、光源出力を4kWとし、照射対象物を搬送するコンベアの搬送速度を4m/分とした。以上のようにして、実施例6のハードコートPETフィルムを作製した。
【0079】
〔実施例7〕
ND分散液S1の代わりに上記のND分散液S2を用いたこと以外は実施例6と同様にして、THF溶液(ND分散液S2に由来するナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)を調製し、このTHF溶液を用いたこと以外は実施例6と同様にして、実施例7のハードコートPETフィルムを作製した。
【0080】
〔比較例4〕
ND分散液S1の代わりに上記のND分散液S3を用いたこと以外は実施例6と同様にして、THF溶液(ND分散液S3に由来するナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)を調製し、このTHF溶液を用いたこと以外は実施例6と同様にして、比較例4のハードコートPETフィルムを作製した。
【0081】
〔比較例5〕
表面修飾ナノダイヤモンド含有THF溶液を用いなかったこと以外は実施例6と同様にして、比較例5のハードコートPETフィルムを作製した。
【0082】
以下、参考例として比較例6を説明する。
〔比較例6〕
ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの多官能アクリレート混合物(商品名「PETIA」,酸価10,水酸基価100,ダイセルオルネクス株式会社製)40質量部の代わりに多官能アクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「DPHA」,酸価0.2,水酸基価5,ダイセルオルネクス株式会社製)40質量部を用いたこと以外は実施例6と同様にして、比較例6のハードコートPETフィルムを作製した。
【0083】
〈メディアン径〉
ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子に関する上記のメディアン径(粒径D50)は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した値である。測定に供されたナノダイヤモンド分散液は、ナノダイヤモンド濃度が0.2〜2.0質量%となるように調製した後に、超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。
【0084】
〈ICP発光分光分析法〉
ナノダイヤモンド分散液から加熱によって溶媒を蒸発させた後に残留する乾燥物(粉体)100mgについて、磁性るつぼに入れた状態で電気炉内にて乾式分解を行った。この乾式分解は、450℃で1時間の条件、これに続く550℃で1時間の条件、及びこれに続く650℃で1時間の条件にて、3段階で行った。このような乾式分解の後、磁性るつぼ内の残留物について、磁性るつぼに濃硫酸0.5mlを加えて蒸発乾固させた。そして、得られた乾固物を最終的に20mlの超純水に溶解させた。このようにして分析サンプルを調製した。この分析サンプルを、ICP発光分光分析装置(商品名「CIROS120」,リガク社製)によるICP発光分光分析に供した。本分析の検出下限値が50質量ppmとなるように前記分析サンプルを調製した。また、本分析では、検量線用標準溶液として、SPEX社製の混合標準溶液XSTC−22、および、関東化学社製の原子吸光用標準溶液Zr1000を、分析サンプルの硫酸濃度と同濃度の硫酸水溶液にて適宜希釈調製して用いた。そして、本分析では、空のるつぼで同様に操作および分析して得られた測定値を、測定対象たるナノダイヤモンド分散液試料についての測定値から差し引き、試料中のジルコニウム(Zr)含量を求めた。
【0085】
〈全光線透過率〉
実施例1〜7および比較例1〜6の各フィルムについて、全光線透過率測定装置(商品名:「NDH−5000W」,日本電色工業株式会社製)を使用して、全光線透過率(%)を測定した。本測定は、JIS K 7105に準拠して行った。その結果を表1〜3に掲げる。
【0086】
〈ヘーズ〉
実施例1〜7および比較例1〜6の各フィルムについて、ヘーズ測定装置(商品名:「NDH−5000W」,日本電色工業社製)を使用してヘーズ(%)を測定した。ヘーズの測定は、JIS K 7136に準拠して行った。その結果を表1〜3に掲げる。
【0087】
〈屈折率〉
実施例4,5および比較例3の各フィルムについて、屈折率測定装置(商品名:「NDH−5000W」,日本電色工業社製)を使用して屈折率を測定した。屈折率の測定は、JIS K 7142に準拠して行った。その結果を表2に掲げる。
【0088】
〈耐擦傷性〉
実施例1〜3,6,7および比較例1,2,4〜6の各フィルムの塗膜形成面について、ラビングテスターを使用して、こすり試験を行った。本こすり試験において、試験環境は23℃および50%RHであり、使用したこすり材はスチールウール#0000(日本スチールウール株式会社製)であり、試験対象面上のこすり材の移動距離は10cmであり、試験対象面に対するこすり材の荷重は200g(実施例1〜3と比較例1,2)または2000g(実施例6,7と比較例4〜6)であり、試験対象面に対してこすり材を往復動させる回数は50回(実施例1〜3と比較例1,2)または1000回(実施例6,7と比較例4〜6)である。本こすり試験においては、こすり作業を終えた各フィルムの裏面を黒マジックで塗りつぶした後、反射光を利用して、こすり部分の擦傷の程度を目視で観察した。そして、注意深く観察しても全く傷が確認されなかった場合を優(◎)と評価し、注意深く観察すると傷が5本まで確認された場合を良(○)と評価し、明らかに傷があることが分かった場合を不良(×)と評価した。その結果を表1,3に掲げる。
【0089】
[評価]
反射防止層付ハードコートPETフィルムたる実施例1〜3および比較例1,2のフィルムにおいて、反射防止層にナノダイヤモンドの分散していない比較例1のフィルムおよび反射防止層に表面修飾ナノダイヤモンドの分散していない比較例2のフィルムよりも、反射防止層に表面修飾ナノダイヤモンド(シランカップリング剤付ナノダイヤモンド)の分散している実施例1〜3は、高い耐擦傷性を示した。また、実施例1〜3のフィルムは、比較例2のフィルムよりも、ヘーズが有意に低く、透明性に優れていた。
【0090】
屈折率調整膜付ハードコートPETフィルムたる実施例4,5および比較例3のフィルムにおいて、屈折率調整膜に表面修飾ナノダイヤモンドの分散していない比較例3のフィルムよりも、屈折率調整膜に表面修飾ナノダイヤモンド(シランカップリング剤付ナノダイヤモンド)の分散している実施例4,5は、ヘーズが有意に低く、透明性に優れていた。
【0091】
ハードコートPETフィルムたる実施例6,7および比較例4〜6のフィルムにおいて、ハードコートにナノダイヤモンドの分散していない比較例5のフィルムおよびハードコートに表面修飾ナノダイヤモンドの分散していない比較例4,6のフィルムよりも、ハードコートに表面修飾ナノダイヤモンド(シランカップリング剤付ナノダイヤモンド)の分散している実施例6,7は、高い耐擦傷性を示した。また、実施例6,7のフィルムは、比較例4,6のフィルムよりも、ヘーズが有意に低く、透明性に優れていた。
【0092】
ND分散液S3由来のナノダイヤモンドを含有する塗膜を伴う比較例2〜4の各フィルムについて、ヘーズが高くて透明性が低いのは、ND分散液S3由来のナノダイヤモンドが凝集しているためであると考えられる。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列記する。
【0097】
〔付記1〕硬化性樹脂成分と、
ナノダイヤモンド粒子、および、(メタ)アクリロイル基を含む有機鎖を有し且つ前記ナノダイヤモンド粒子に結合している、シランカップリング剤を含む、表面修飾ナノダイヤモンドと、
有機溶媒と、を含有する、硬化性樹脂組成物。
〔付記2〕前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、付記1に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記3〕前記表面修飾ナノダイヤモンドのメディアン径は50nm以下である、付記1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記4〕前記表面修飾ナノダイヤモンドのメディアン径は30nm以下である、付記1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記5〕前記表面修飾ナノダイヤモンドのメディアン径は20nm以下である、付記1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記6〕前記シランカップリング剤の前記有機鎖は、アクリル酸プロピルおよび/またはメタクリル酸プロピルである、付記1から5のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記7〕前記硬化性樹脂成分は、(メタ)アクリロイル基を有する、付記1から6のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記8〕前記硬化性樹脂成分は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートのオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレートのオリゴマー、および、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとのオリゴマーからなる群より選択される少なくとも一種である、付記1から7のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記9〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が30質量%以上である、付記1から8のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記10〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が40質量%以上である、付記1から8のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記11〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が55質量%以上である、付記1から8のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記12〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が60質量%以上である、付記1から8のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記13〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が99.9質量%以下である、付記1から12のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記14〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が99質量%以下である、付記1から12のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記15〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が95質量%以下である、付記1から12のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記16〕前記有機溶媒はテトラヒドロフランを含む、付記1から15のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記17〕前記表面修飾ナノダイヤモンドとの合計含有量における割合が0.01質量%以上のジルコニウムを含有する、付記1から16のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記18〕中空シリカ粒子を更に含有する、付記1から17のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記19〕前記中空シリカ粒子の粒子径は1nm以上である、付記18に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記20〕前記中空シリカ粒子の粒子径は1000nm以下である、付記18または19に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記21〕前記中空シリカ粒子の粒子径は500nm以下である、付記18または19に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記22〕前記中空シリカ粒子の粒子径は300nm以下である、付記18または19に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記23〕前記中空シリカ粒子の含有割合が0.5質量%以上である、付記18から22のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記24〕前記中空シリカ粒子の含有割合が1質量%以上である、付記18から22のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記25〕前記中空シリカ粒子の含有割合が2質量%以上である、付記18から22のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記26〕前記中空シリカ粒子の含有割合が90質量%以下である、付記18から25のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記27〕前記中空シリカ粒子の含有割合が80質量%以下である、付記18から25のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記28〕前記中空シリカ粒子の含有割合が60質量%以下である、付記18から25のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記29〕付記1から28のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を光透過領域の少なくとも一部に有する、光学部材。
〔付記30〕基材と前記硬化物とを含む積層構造部を有し、当該積層構造部のヘーズは2.0%以下である、付記29に記載の光学部材。
〔付記31〕基材と前記硬化物とを含む積層構造部を有し、当該積層構造部のヘーズは1.0%以下である、付記29に記載の光学部材。