特許第6962907号(P6962907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962907
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物および光学部材
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/00 20060101AFI20211025BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20211025BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08F2/00 C
   C08F292/00
   G02B1/14
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-505385(P2018-505385)
(86)(22)【出願日】2017年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2017006603
(87)【国際公開番号】WO2017159253
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-54663(P2016-54663)
(32)【優先日】2016年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】榊原 隆広
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/098883(WO,A1)
【文献】 特開2015−227260(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0093393(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0089752(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0249229(US,A1)
【文献】 特開2004−051937(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/085359(WO,A1)
【文献】 特開2015−043046(JP,A)
【文献】 特開2012−035536(JP,A)
【文献】 特開平11−343197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08L 1/00−101/14
C08F292/00
G02B 1/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂成分と、
ナノダイヤモンド粒子、および、(メタ)アクリロイル基を含む有機鎖を有し且つ前記ナノダイヤモンド粒子に結合している、シランカップリング剤を含む、表面修飾ナノダイヤモンドと、
有機溶媒と、を含有する、硬化性樹脂組成物であって、
前記表面修飾ナノダイヤモンドのメディアン径は50nm以下であり、
前記硬化性樹脂成分は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートのオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレートのオリゴマー、および、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとのオリゴマーからなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記表面修飾ナノダイヤモンドとの合計含有量における割合が0.01質量%以上のジルコニウムを含有する、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記シランカップリング剤の前記有機鎖は、アクリル酸プロピルおよび/またはメタクリル酸プロピルである、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が30質量%以上である、請求項1からのいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒はテトラヒドロフランを含む、請求項1からのいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
中空シリカ粒子を更に含有する、請求項1からのいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記中空シリカ粒子の含有割合が0.5質量%以上である、請求項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を光透過領域の少なくとも一部に有する、光学部材。
【請求項9】
基材と前記硬化物とを含む積層構造部を有し、当該積層構造部のヘーズは2.0%以下である、請求項に記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機材料と複合化された硬化性の樹脂組成物、および、そのような組成物から形成された硬化樹脂部を有する光学部材に関する。また、本願は、2016年3月18日付の日本出願 特願2016−054663号に基づく優先権を主張し、当該出願に記載されている全ての内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な用途において、透明性に優れ且つ耐擦傷性の高いプラスチック系材料ないし樹脂系材料が求められている。例えば、各種カメラのレンズ、眼鏡レンズ表面の被膜、および、各種光学部材における反射防止膜や、屈折率調整膜、ハードコート層の用途においてである。また、そのような樹脂系材料として、ジルコニア微粒子や酸化チタン微粒子が分散された複合材料等が開発されている(例えば下記の特許文献1,2)。
【0003】
一方、近年、ナノダイヤモンドと呼称される微粒子状のダイヤモンド材料の開発が進められている。ナノダイヤモンドについては、用途によっては、粒径が10nm以下のいわゆる一桁ナノダイヤモンドが求められる場合がある。そのようなナノダイヤモンドに関する技術については、例えば下記の特許文献3,4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−185924号公報
【特許文献2】特開2009−162848号公報
【特許文献3】特開2005−001983号公報
【特許文献4】特開2010−126669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ナノダイヤモンドは、バルクダイヤモンドがそうであるように、高い機械的強度や高い屈折率などを示し得る。微粒子たるナノ粒子は、一般に、表面原子(配位的に不飽和である)の割合が大きいので、隣接粒子の表面原子間で作用し得るファンデルワールス力の総和が大きくて凝集(aggregation)を生じやすい。これに加えて、ナノダイヤモンド粒子の場合、隣接結晶子の結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成する凝着(agglutination)という現象が生じ得る。ナノダイヤモンド粒子は、このように結晶子ないし一次粒子の間が重畳的に相互作用し得る特異な性質を有するところ、ナノダイヤモンド粒子が樹脂材料中で分散した状態を創り出すことには、技術的困難を伴う。ナノダイヤモンド粒子におけるこのような分散性の低さは、ナノダイヤモンド粒子を含有する複合材料の設計上の自由度が低いことの要因であり、特に、有機材料とナノダイヤモンドとを複合化させるうえで障害となる場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであり、高い透明性を有するとともに高い耐擦傷性を有するナノダイヤモンド分散硬化樹脂部を形成するのに適した硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような硬化樹脂部を有する光学部材を提供することを、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によると、硬化性樹脂組成物が提供される。この組成物は、硬化樹脂形成用の成分(硬化性樹脂成分)と、表面修飾ナノダイヤモンドと、有機溶媒とを含有する。表面修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンド粒子と、(メタ)アクリロイル基を含む有機鎖を有し且つナノダイヤモンド粒子に結合しているシランカップリング剤とを含む。本硬化性樹脂組成物は、例えば所定の基材上に塗布された後に乾燥および硬化されることにより、光透過性の硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜を形成するための材料である。硬化性樹脂成分は、硬化樹脂を形成し得る成分であり、例えば、光照射や加熱によって重合反応を進行させる硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマーを含む。表面修飾ナノダイヤモンドのナノダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンドの一次粒子であってもよいし、ナノダイヤモンドの二次粒子であってもよい。ナノダイヤモンド一次粒子とは、粒径10nm以下のナノダイヤモンドをいうものとする。シランカップリング剤とは、無機材料との間で化学結合を生じることとなる、ケイ素を含む反応性基と、当該ケイ素に結合している有機鎖とを併有する有機ケイ素化合物であるところ、本発明における表面修飾ナノダイヤモンドのシランカップリング剤は、その反応性基にてナノダイヤモンド粒子表面との間で共有結合を生じて当該粒子に結合している。また、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味するものとする。
【0008】
このような構成の本硬化性樹脂組成物において、表面修飾ナノダイヤモンドは、(メタ)アクリロイル基を含む有機鎖を有するシランカップリング剤を、上述のように共有結合を介してナノダイヤモンド粒子に結合する表面修飾要素として、有する。当該シランカップリング剤における(メタ)アクリロイル基含有有機鎖は、表面修飾ナノダイヤモンドにおいてその周囲との界面の側に位置する。このような態様での表面修飾を伴うナノダイヤモンド粒子は、表面修飾を伴わないナノダイヤモンド粒子よりも、有機材料に対する親和性が高い。したがって、当該表面修飾ナノダイヤモンドは、それに加えて硬化性樹脂成分および有機溶媒を含有する本硬化性樹脂組成物中での高い分散安定性を実現するのに適する。
【0009】
加えて、表面修飾ナノダイヤモンドにおいては、その周囲との界面に位置する有機鎖中に重合性基たる(メタ)アクリロイル基が存在する。本組成物中の硬化性樹脂成分が重合する過程では、表面修飾ナノダイヤモンドの(メタ)アクリロイル基が硬化性樹脂成分と共重合し得て、形成される硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜においては、硬化樹脂のマトリックスに表面修飾ナノダイヤモンドないしナノダイヤモンド粒子が取り込まれることとなる。上述のように本硬化性樹脂組成物中での高い分散安定性を実現するのに適する表面修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンド粒子を硬化樹脂マトリックスに分散させつつ取り込ませるのに適する。すなわち、本硬化性樹脂組成物中での高い分散安定性を実現するのに適する表面修飾ナノダイヤモンドの表面に、重合性基たる(メタ)アクリロイル基が存在するという構成は、硬化樹脂とそのマトリックス中に分散するナノダイヤモンド粒子とを含むナノコンポジット材料を本硬化性樹脂組成物から形成するのに適するのである。本硬化性樹脂組成物から形成される硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜において、機械的強度の極めて大きなダイヤモンドの微粒子であるナノダイヤモンド粒子が硬化樹脂マトリックス中で分散しているという構成は、当該硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜において高い透明性とともに高い耐擦傷性を実現するのに適する。
【0010】
以上のように、本硬化性樹脂組成物は、高い透明性を有するとともに高い耐擦傷性を有するナノダイヤモンド分散硬化樹脂部を形成するのに適する。
【0011】
好ましくは、ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法によって生成したナノダイヤモンド粒子(爆轟法ナノダイヤモンド粒子)である。爆轟法ナノダイヤモンド粒子の一次粒子径は一桁ナノメートルであるところ、このような構成は、本硬化性樹脂組成物から形成される硬化樹脂部について高い透明性を実現するうえで、好適である。
【0012】
表面修飾ナノダイヤモンドの粒径D50(メディアン径)は、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下である。このような構成は、本硬化性樹脂組成物から形成される硬化樹脂部について高い透明性を実現するうえで、好適である。
【0013】
好ましくは、表面修飾ナノダイヤモンドにおけるシランカップリング剤の有機鎖は、アクリル酸プロピルおよび/またはメタクリル酸プロピルである。このような構成は、本硬化性樹脂組成物から形成される硬化樹脂部について高い透明性を実現するとともに高い耐擦傷性を実現するうえで、好適である。
【0014】
好ましくは、硬化性樹脂成分は、(メタ)アクリロイル基を有する。より好ましくは、硬化性樹脂成分は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートのオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレートのオリゴマー、および、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとのオリゴマーからなる群より選択される少なくとも一種である。このような構成によると、本硬化性樹脂組成物において、表面有機鎖中に(メタ)アクリロイル基を有する表面修飾ナノダイヤモンドの分散安定化を図りやすい。また、本構成によると、本硬化性樹脂組成物中の硬化性樹脂成分が重合する過程において、表面修飾ナノダイヤモンドの表面有機鎖中の(メタ)アクリロイル基を硬化性樹脂成分と共重合させやすい。
【0015】
本硬化性樹脂組成物に含まれる固形分(含有固形分)おける硬化性樹脂成分の割合は、本硬化性樹脂組成物から形成される硬化樹脂部においてその用途に応じて硬化樹脂の特性を充分に発現させるという観点からは、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、より好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。本硬化性樹脂組成物から形成される硬化樹脂部においてその用途に応じて表面修飾ナノダイヤモンド含有の効果を充分に享受するという観点からは、本硬化性樹脂組成物に含まれる固形分における硬化性樹脂成分の割合は、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以上である。
【0016】
好ましくは、有機溶媒はテトラヒドロフランを含む。このような構成によると、本硬化性樹脂組成物において、表面修飾ナノダイヤモンドの分散安定化を図りやすい。
【0017】
本発明の第1側面に係る硬化性樹脂組成物は、好ましくは、表面修飾ナノダイヤモンドとの合計含有量における割合が0.01質量%以上のジルコニウムを含有する。このような構成によると、本硬化性樹脂組成物において、表面修飾ナノダイヤモンドの分散安定化を図りやすいものと考えられる。
【0018】
本発明の第1側面に係る硬化性樹脂組成物は、好ましくは、中空シリカ粒子を更に含有する。本硬化性樹脂組成物における中空シリカ粒子の粒子径は、好ましくは1nm以上であり、且つ、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。本硬化性樹脂組成物における中空シリカ粒子の含有割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。また、本硬化性樹脂組成物における中空シリカ粒子の含有割合は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。これら構成は、本硬化性樹脂組成物から形成される硬化樹脂部において、高い透明性および高い耐擦傷性に加えて良好な反射防止性を実現するうえで好適である。
【0019】
本発明の第2の側面によると、光学部材が提供される。この光学部材は、本発明の第1の側面に係る硬化性樹脂組成物の硬化物を、光透過領域の少なくとも一部に有する。本光学部材は、高い透明性を有するとともに高い耐擦傷性を有する硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜を伴う光学部材を実現するうえで、好適である。本光学部材は、例えば、基材と前記の硬化物とを含む積層構造部を有する。この場合、当該積層構造部のヘーズは、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下である。本発明において、ヘーズとは、JIS K 7136に準拠して測定される値とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一の実施形態に係る硬化性樹脂組成物の拡大模式図である。
図2図1に示す硬化性樹脂組成物に含有される表面修飾ナノダイヤモンドの作製方法の一例の工程図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る光学部材の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一の実施形態に係る硬化性樹脂組成物たる樹脂組成物Xの拡大模式図である。樹脂組成物Xは、硬化性樹脂成分10と、表面修飾ナノダイヤモンド20と、分散媒30とを含有する。また、樹脂組成物Xは、例えば所定の基材上に塗布された後に乾燥および硬化されることによって光透過性の硬化樹脂膜ないし硬化樹脂部を形成するための材料である。
【0022】
樹脂組成物Xに含有される硬化性樹脂成分10は、樹脂組成物Xから形成される硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜の主材たる硬化樹脂を形成するためのものである。本実施形態においては、硬化性樹脂成分10は、光照射や加熱によって重合反応を進行させて硬化型アクリル樹脂を形成するためのモノマーおよび/またはオリゴマーである。
【0023】
硬化性樹脂成分10たるモノマーや、硬化性樹脂成分10たるオリゴマーをなすためのモノマーとしては、複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを用いることができる。「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味する。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。多官能(メタ)アクリレートとしては、二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート、および、四官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキンサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、EO変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、およびトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。三官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、およびEO変性イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。四官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。「EO変性」とは、ポリ(オキシエチレン)鎖を有する化合物であることを意味する。「PO変性」とは、ポリ(オキシプロピレン)鎖を有する化合物であることを意味する。硬化性樹脂成分10たるモノマーや、硬化性樹脂成分10たるオリゴマーをなすためのモノマーとしては、一種類の多官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、二種類以上の多官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。本実施形態においては、後述の表面修飾ナノダイヤモンド20の樹脂組成物X中での分散安定性や形成される硬化樹脂部中での分散性の観点から、硬化性樹脂成分10は、好ましくは、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートのオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレートのオリゴマー、および、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとのオリゴマーからなる群より選択される少なくとも一種である。
【0024】
硬化性樹脂成分10は、モノマーの形態で又はオリゴマー内モノマーユニットの形態で、(メタ)アクリロイル基を一つ有する単官能(メタ)アクリレートを多官能(メタ)アクリレートに加えて含んでもよい。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性ノニフェノール(メタ)アクリレート、およびEO変性2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。硬化性樹脂成分10のための単官能(メタ)アクリレートとしては、一種類の単官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、二種類以上の単官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。樹脂組成物X中の硬化性樹脂成分10における、モノマーの形態にある或いはオリゴマー内モノマーユニットの形態にある単官能(メタ)アクリレートの割合は、例えば50質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0025】
また、硬化性樹脂成分10は、モノマーの形態で又はオリゴマー内モノマーユニットの形態で、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレートを上述の多官能(メタ)アクリレートに加えて含んでもよい。
【0026】
樹脂組成物Xに含まれる固形分における以上のような硬化性樹脂成分10の割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、より好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。また、樹脂組成物Xに含まれる固形分における硬化性樹脂成分10の割合は、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0027】
樹脂組成物Xから硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜を形成するに際して光照射によって硬化性樹脂成分10の重合反応を進行させる構成を採用する場合には、樹脂組成物Xは光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、およびチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、および4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンが挙げられる。α-ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えばベンゾインが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としては、例えばベンジルが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、およびポリビニルベンゾフェノンが挙げられる。ケタール系光重合開始剤としては、例えばベンジルジメチルケタールが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、およびドデシルチオキサントンが挙げられる。樹脂組成物Xにおける光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂成分10の全量(100質量部)に対して例えば0.1〜10質量部である。
【0028】
樹脂組成物Xから硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜を形成するに際して加熱によって硬化性樹脂成分10の重合反応を進行させる構成を採用する場合には、樹脂組成物Xは熱重合開始剤を含有する。熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、およびレドックス系重合開始剤が挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、および4,4'-アゾビス-4-シアノバレリアン酸が挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、および、tert-ブチルペルマレエートが挙げられる。樹脂組成物Xにおける熱重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂成分10の全量(100質量部)に対して例えば0.1〜10質量部である。
【0029】
樹脂組成物Xに含有される表面修飾ナノダイヤモンド20は、ナノダイヤモンドの微粒子たるND粒子21およびこれに結合しているシランカップリング剤22を含む。
【0030】
表面修飾ナノダイヤモンド20におけるND粒子21は、ナノダイヤモンドの一次粒子であってもよいし、ナノダイヤモンドの二次粒子であってもよい。ND粒子21が二次粒子より小さな一次粒子である構成は、樹脂組成物Xから形成される硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜について高い透明性を実現するうえで好適である。ND粒子21は、好ましくは、後述のように爆轟法によって生成したナノダイヤモンド粒子(爆轟法ナノダイヤモンド粒子)である。爆轟法ナノダイヤモンド粒子の一次粒子径は一桁ナノメートルであるところ、このような構成は、樹脂組成物Xから形成される硬化樹脂部について高い透明性を実現するうえで好適である。ND粒子21の粒径D50(メディアン径)は、例えば1〜100nmである。この粒径D50の上限は、好ましくは40nm、より好ましくは20nm、より好ましくは10nmである。ND粒子21の粒径D50が小さいほど、樹脂組成物Xから形成される硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜について高い透明性を実現するのに適する。微粒子の粒径D50は、いわゆる動的光散乱法によって測定される値とする。
【0031】
表面修飾ナノダイヤモンド20におけるシランカップリング剤22は、ND粒子21に結合している。シランカップリング剤とは、無機材料との間で化学結合を生じることとなる、ケイ素を含む反応性基と、当該ケイ素に結合している有機鎖とを併有する有機ケイ素化合物であるところ、シランカップリング剤22は、その反応性基にてND粒子21の表面との間で共有結合を生じてND粒子21に結合している。ND粒子21に結合しているシランカップリング剤22をなすこととなるシランカップリング剤の反応性基としては、シラノール基(-SOH)、および、シラノール基を生じ得る加水分解性基が挙げられる。そのような加水分解性基としては、例えば、ケイ素に結合しているメトキシ基やエトキシ基などアルコキシシリル基、ケイ素に結合している塩素や臭素などハロシリル基、および、ケイ素に結合しているアセトキシ基が挙げられる。これら加水分解性基は、加水分解反応を経てシラノール基を生じ得る。当該シランカップリング剤のシラノール基とND粒子21表面の例えば水酸基との間での脱水縮合反応を経て、当該シランカップリング剤とND粒子21表面との間に化学結合が生じ得る。
【0032】
表面修飾ナノダイヤモンド20におけるシランカップリング剤22は、その有機鎖において、(メタ)アクリロイル基を含む。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味するものとする。シランカップリング剤22における(メタ)アクリロイル基含有有機鎖としては、好ましくは、アクリル酸プロピルおよびメタクリル酸プロピルが挙げられる。このような構成によると、樹脂組成物Xにおいて、表面有機鎖中に(メタ)アクリロイル基を有する表面修飾ナノダイヤモンド20の分散安定化を図りやすい。また、当該構成によると、樹脂組成物X中の上述の硬化性樹脂成分10が重合する過程において、表面修飾ナノダイヤモンド20の表面有機鎖中の(メタ)アクリロイル基を硬化性樹脂成分10と共重合させやすい。このようなシランカップリング剤22をなすためのシランカップリング剤としては、例えば、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3-(メチルジメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3-(メチルジエトキシシリル)プロピル、およびメタクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピルが挙げられる。
【0033】
以上のようなND粒子21およびシランカップリング剤22を含んでなる表面修飾ナノダイヤモンド20の粒径D50(メディアン径)は、例えば10〜120nmである。この粒径D50の上限は、好ましくは50nm、より好ましくは30nm、より好ましくは20nmである。表面修飾ナノダイヤモンド20の粒径D50が小さいほど、樹脂組成物Xから形成される硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜について高い透明性を実現するのに適する。
【0034】
また、樹脂組成物Xにおける表面修飾ナノダイヤモンド20の含有割合は、例えば0.01〜60質量%である。樹脂組成物Xから形成されることとなる硬化樹脂部における例えば透明性と屈折率とのバランスの観点から、樹脂組成物Xにおける表面修飾ナノダイヤモンド20の含有割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、樹脂組成物Xから形成されることとなる硬化樹脂部における例えば透明性と屈折率とのバランスの観点から、樹脂組成物Xに含まれる固形分における表面修飾ナノダイヤモンド20の割合は、例えば0.05〜70質量%である。
【0035】
分散媒30は、樹脂組成物Xにおいて硬化性樹脂成分10および表面修飾ナノダイヤモンド20を適切に分散させるための媒体である。分散媒30は、50質量%以上の有機溶媒を含む有機系分散媒である。当該有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシプロパノール、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、および2-ブタノールが挙げられる。分散媒30のためには、一種類の有機溶媒を用いてもよいし、二種類以上の有機溶媒を用いてもよい。分散媒30は、好ましくはテトラヒドロフランを含む。このような構成によると、樹脂組成物Xにおいて、表面修飾ナノダイヤモンド20の分散安定化を図りやすい。
【0036】
樹脂組成物Xは、更に中空シリカ粒子を含有してもよい。このような構成は、樹脂組成物Xから形成される硬化樹脂部において、反射防止性を発現させるうえで好適である。当該中空シリカ粒子の粒子径は、好ましくは1〜1000nmであり、より好ましくは1〜500nm、より好ましくは1〜300nmである。また、樹脂組成物Xが中空シリカ粒子を含有する場合、その含有割合の下限は、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1質量%、より好ましくは2質量%であり、同含有割合の上限は、好ましくは90質量%、より好ましくは80質量%、より好ましくは60質量%である。
【0037】
樹脂組成物Xは、以上の成分に加えて、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、消泡剤、レベリング剤、フッ素系防汚添加剤、およびシリコーン系防汚添加剤が挙げられる。樹脂組成物Xがフッ素系防汚添加剤を含有する場合、樹脂組成物Xから形成される硬化樹脂部において滑り性が発現する傾向にある。硬化樹脂部において、滑り性の発現は、高い耐擦傷性を実現するのに資する。そのようなフッ素系防汚添加剤の市販品としては、例えば、ダイキン工業株式会社製の「オプツール」、信越化学工業株式会社製の「KY-1200」シリーズ、DIC株式会社社製の「メガファック」、および関東電化工業株式会社製の「エフクリア」が挙げられる。
【0038】
図2は、樹脂組成物Xに含有される表面修飾ナノダイヤモンド20の作製方法の一例の工程図である。本方法は、生成工程S1、精製工程S2、pH調整工程S3、乾燥工程S4、および修飾工程S5を含む。
【0039】
生成工程S1では、爆轟法が行われてナノダイヤモンドが生成する。まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において大気組成の常圧の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉する。容器は例えば鉄製で、容器の容積は例えば0.5〜40m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。TNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、例えば40/60〜60/40の範囲とされる。爆薬の使用量は、例えば0.05〜2.0kgである。
【0040】
生成工程S1では、次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させる。爆轟とは、化学反応に伴う爆発のうち反応の生じる火炎面が音速を超えた高速で移動するものをいう。爆轟の際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によってナノダイヤモンドが生成する。ナノダイヤモンドは、爆轟法により得られる生成物にて先ずは、隣接する一次粒子ないし結晶子の間の非常に強い相互作用、即ち、ファンデルワールス力の作用と結晶面間クーロン相互作用との重畳作用によって、一次粒子どうしが集成し、凝着体をなす。
【0041】
生成工程S1では、次に、室温での例えば24時間の放置により、容器およびその内部を降温させる。この放冷の後、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上述のようにして生成したナノダイヤモンド粒子の凝着体および煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ナノダイヤモンド粗生成物を回収する。以上のような爆轟法によって、ナノダイヤモンド粒子の粗生成物を得ることができる。また、以上のような生成工程S1を必要回数行うことによって、所望量のナノダイヤモンド粗生成物を取得することが可能である。
【0042】
精製工程S2は、本実施形態では、原料たるナノダイヤモンド粗生成物に例えば水溶媒中で強酸を作用させる酸処理を含む。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物には金属酸化物が含まれやすいところ、この金属酸化物は、爆轟法に使用される容器等に由来するFe,Co,Ni等の酸化物である。例えば水溶媒中で所定の強酸を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物から金属酸化物を溶解・除去することができる(酸処理)。この酸処理に用いられる強酸としては、鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、および王水が挙げられる。酸処理では、一種類の強酸を用いてもよいし、二種類以上の強酸を用いてもよい。酸処理で使用される強酸の濃度は例えば1〜50質量%である。酸処理温度は例えば70〜150℃である。酸処理時間は例えば0.1〜24時間である。また、酸処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような酸処理の後、例えばデカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行う。沈殿液のpHが例えば2〜3に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。
【0043】
精製工程S2は、本実施形態では、酸化剤を用いてナノダイヤモンド粗生成物(精製終了前のナノダイヤモンド凝着体)からグラファイトを除去するための酸化処理を含む。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物にはグラファイト(黒鉛)が含まれているところ、このグラファイトは、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちナノダイヤモンド結晶を形成しなかった炭素に由来する。例えば上記の酸処理を経た後に、例えば水溶媒中で所定の酸化剤を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物からグラファイトを除去することができる(酸化処理)。この酸化処理に用いられる酸化剤としては、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、及びこれらの塩が挙げられる。酸化処理では、一種類の酸化剤を用いてもよいし、二種類以上の酸化剤を用いてもよい。酸化処理で使用される酸化剤の濃度は例えば3〜50質量%である。酸化処理における酸化剤の使用量は、酸化処理に付されるナノダイヤモンド粗生成物100質量部に対して例えば300〜500質量部である。酸化処理温度は例えば100〜200℃である。酸化処理時間は例えば1〜24時間である。酸化処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。また、酸化処理は、グラファイトの除去効率向上の観点から、鉱酸の共存下で行うのが好ましい。鉱酸としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、および王水が挙げられる。酸化処理に鉱酸を用いる場合、鉱酸の濃度は例えば5〜80質量%である。このような酸化処理の後、例えばデカンテーションまたは遠心沈降法により、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行う。水洗当初の上清液は着色しているところ、上清液が目視で透明になるまで、当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。水洗を繰り返すことにより、不純物である電解質(NaCl等)が低減ないし除去される。電解質濃度が低いことは、本方法によって得られるナノダイヤモンド粒子について高い分散性および高い分散安定性を実現するうえで好適である。
【0044】
このような酸化処理の後、ナノダイヤモンドをアルカリ溶液で処理してもよい。当該アルカリ処理により、ナノダイヤモンド表面の酸性官能基(例えばカルボキシ基)を塩(例えばカルボン酸塩)に変換することが可能である。使用されるアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液が挙げられる。当該アルカリ処理において、アルカリ溶液濃度は、例えば1〜50重量%であり、処理温度は例えば70〜150℃であり、処理時間は例えば0.1〜24時間である。また、このようなアルカリ処理の後、ナノダイヤモンドを酸溶液で処理してもよい。当該酸処理を経ることにより、ナノダイヤモンド表面の酸性官能基の塩を再び遊離の酸性官能基に戻すことが可能である。使用される酸溶液としては、塩酸が挙げられる。当該酸処理は、室温で行ってもよく、加熱下で行ってもよい。酸化処理後のアルカリ処理や、その後の酸処理を経たナノダイヤモンドについては、例えばデカンテーションまたは遠心沈降法により、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行う。
【0045】
本方法では、次に、pH調整工程S3が行われる。pH調整工程S3は、上述の精製工程S2を経たナノダイヤモンド凝着体を含有する溶液のpHを後述の乾燥工程S4より前に所定のpHに調整するための工程である。本工程では、例えば、精製工程S2を経て取得される沈殿液(ナノダイヤモンド凝着体を含む)に超純水を加えて懸濁液を得た後、当該懸濁液に酸やアルカリを加える。アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウムを用いることができる。本工程では、当該懸濁液のpHについて、好ましくは8〜12、より好ましくは9〜11に、調整する。
【0046】
本方法では、次に、乾燥工程S4が行われる。本工程では、例えば、pH調整工程S3を経て得られる上記の溶液からエバポレーターを使用して液分を蒸発させた後、これによって生じる残留固形分を乾燥用オーブン内での加熱乾燥によって乾燥させる。加熱乾燥温度は、例えば40〜150℃である。このような乾燥工程S4を経ることにより、ナノダイヤモンド凝着体の粉体が得られる。
【0047】
本方法では、次に、修飾工程S5が行われる。修飾工程S5は、例えば以上のようにして得られるナノダイヤモンド凝着体に含まれるナノダイヤモンド粒子について、所定のシランカップリング剤を結合させることによって表面修飾するための工程である。修飾工程S5では、まず、例えば上述のようにして得られる乾燥ナノダイヤモンド(ナノダイヤモンド凝着体)と、シランカップリング剤と、溶媒とを含む混合溶液を、反応容器内で撹拌する。次に、反応容器内の混合溶液に対し、解砕メディアとしてのジルコニアビーズを添加する。ジルコニアビーズの直径は例えば15〜500μmである。次に、超音波を発振し得る振動子を備える超音波発生装置を使用して、当該溶液中のナノダイヤモンドについて修飾処理を行う。具体的には、超音波発生装置の振動子の先端を反応容器内に挿入して前記の溶液に浸け、当該振動子から超音波を発生させる。本修飾処理は、処理に付される溶液を例えば氷水で冷却しつつ行うのが好ましい。本修飾処理の処理時間は例えば4〜10時間である。本処理に供される溶液において、ナノダイヤモンドの含有割合は例えば0.5〜5質量%であり、シランカップリング剤の濃度は例えば5〜40質量%である。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシプロパノール、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、または2-ブタノールが用いられる。また、溶液中のナノダイヤモンドとシランカップリング剤との比率(質量比)は例えば2:1〜1:10である。本修飾処理においては、超音波照射を受ける溶液内に音響効果に基づきキャビテーションが発生し、そのキャビテーションにおける微小気泡崩壊時に生じるジェット噴流によって溶液内のジルコニアビーズが極めて大きな運動エネルギーを獲得する。そして、当該ジルコニアビーズが同一溶液内のナノダイヤモンド凝着体に衝撃エネルギーを与えることにより、ナノダイヤモンド凝着体からナノダイヤモンド粒子が解かれ(解砕)、解離状態にあるナノダイヤモンド粒子にシランカップリング剤が作用して結合する。この結合は、例えば、シランカップリング剤側のシラノール基とナノダイヤモンド粒子側の表面水酸基との間での脱水縮合反応を経て生ずる共有結合である。シランカップリング剤が加水分解性基を有する場合、当該反応系に含まれるわずかな水分によっても当該加水分解性基からシラノール基が生じ得る。以上のような修飾工程S5により、ND粒子21とこれに結合したシランカップリング剤22を含む表面修飾ナノダイヤモンド20を作製することができる。本工程を経た溶液中に未反応ナノダイヤモンド凝着体が存在する場合には、当該溶液を静置した後にその上清液を採取することにより、未反応ナノダイヤモンド凝着体の含有量の低減された表面修飾ナノダイヤモンド分散液を得ることができる。また、表面修飾ナノダイヤモンド分散液については、修飾工程S5で用いた上記の溶媒を他の溶媒に変えるための溶媒置換操作を行ってもよい。
【0048】
樹脂組成物Xは、例えば以上のようにして作製される表面修飾ナノダイヤモンド20を用いて製造することができる。具体的には、例えば上述のようにして得られる表面修飾ナノダイヤモンド分散液(表面修飾ナノダイヤモンド20を含有する)と、別途用意される硬化性樹脂成分10と、分散媒30と、必要に応じて添加される重合開始剤など他の成分とを、混合する。
【0049】
以上のようにして、硬化性樹脂成分10と、表面修飾ナノダイヤモンド20と、分散媒30とを少なくとも含有する樹脂組成物Xを、製造することができる。そして、このような樹脂組成物Xから硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜を形成することができる。硬化樹脂部の形成においては、例えば、樹脂組成物Xを基材上に塗布し、加熱等によって基材上の樹脂組成物Xから分散媒30を蒸散等させ、その後、光照射や加熱等によって基材上の樹脂組成物Xを硬化させる。
【0050】
樹脂組成物Xにおいて、表面修飾ナノダイヤモンド20は、(メタ)アクリロイル基を含む有機鎖を有するシランカップリング剤22を、上述のように共有結合を介してND粒子21に結合する表面修飾要素として、有する。シランカップリング剤22における(メタ)アクリロイル基含有有機鎖は、表面修飾ナノダイヤモンド20においてその周囲との界面の側に位置する。このような態様での表面修飾を伴うND粒子21は、表面修飾を伴わないナノダイヤモンド粒子よりも、有機材料に対する親和性が高い。したがって、表面修飾ナノダイヤモンド20は、それに加えて硬化性樹脂成分10および有機溶媒を含有する樹脂組成物X中での高い分散安定性を実現するのに適する。
【0051】
加えて、表面修飾ナノダイヤモンド20においては、その周囲との界面に位置する有機鎖中に重合性基たる(メタ)アクリロイル基が存在する。樹脂組成物X中の硬化性樹脂成分10が重合する過程では、表面修飾ナノダイヤモンド20の(メタ)アクリロイル基が硬化性樹脂成分10と共重合し得て、形成される硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜においては、硬化樹脂のマトリックスに表面修飾ナノダイヤモンド20ないしND粒子21が取り込まれることとなる。上述のように樹脂組成物X中での高い分散安定性を実現するのに適する表面修飾ナノダイヤモンド20は、ND粒子21を硬化樹脂マトリックスに分散させつつ取り込ませるのに適する。すなわち、樹脂組成物X中での高い分散安定性を実現するのに適する表面修飾ナノダイヤモンド20の表面に、重合性基たる(メタ)アクリロイル基が存在するという構成は、硬化樹脂とそのマトリックス中に分散するND粒子21とを含むナノコンポジット材料を樹脂組成物Xから形成するのに適するのである。樹脂組成物Xから形成される硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜において、機械的強度の極めて大きなダイヤモンドの微粒子であるND粒子21が硬化樹脂マトリックス中で分散しているという構成は、当該硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜において高い透明性とともに高い耐擦傷性を実現するのに適する。
【0052】
以上のように、樹脂組成物Xは、高い透明性を有するとともに高い耐擦傷性を有するナノダイヤモンド分散硬化樹脂部を形成するのに適する。また、樹脂組成物Xは、好ましくは、表面修飾ナノダイヤモンド20との合計含有量における割合が0.01質量%以上のジルコニウムを含有する。このような構成によると、樹脂組成物Xにおいて、表面修飾ナノダイヤモンド20の分散安定化を図りやすいものと考えられる。
【0053】
図3は、本発明の他の実施形態に係る光学部材Yの部分断面図である。光学部材Yは、透明基材40と、ナノダイヤモンド分散硬化樹脂膜たる硬化樹脂膜X'とを備える。光学部材Yは、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、およびプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用の透明基板、レンズ、並びにタッチパネル用透明パネルなど、光が透過することとなる光学部材である。
【0054】
透明基材40は、光学部材Yの主たる構造要素をなす透明部材であって、光が透過することとなる領域を含む。このような透明基材40は、例えば、樹脂系材料またはガラス系材料よりなる。透明基材40のための樹脂系材料としては、セルロースアセテート系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、およびポリノルボルネン系フィルムが挙げられる。セルロースアセテート系フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、およびセルロースアセテートブチレートフィルムが挙げられる。ポリエステル系フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムおよびポリエチレンナフタレートフィルムが挙げられる。光学部材Yにおいて充分な光透過性を実現するという観点からは、透明基材40のヘーズは、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下である。本実施形態において、ヘーズとは、JIS K 7136に準拠して測定される値とする。また、光学部材Yにおいて充分な光透過性を実現するという観点からは、透明基材40の厚さは、好ましくは400μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0055】
硬化樹脂膜X'は、上述の樹脂組成物Xから形成されたものであって(内部構造につき図示略)、透明基材40の光透過領域の少なくとも一部を覆うように設けられている。すなわち、光学部材Yは、樹脂組成物Xから形成された部位を光透過領域の少なくとも一部に有するのである。硬化樹脂膜X'の厚さは例えば0.01〜100μmである。上述のように高い透明性を有するとともに高い耐擦傷性を有する硬化樹脂部を形成するのに適する樹脂組成物Xから形成された硬化樹脂膜X'は、多層ハードコート層の最表層やハードコート層として機能することが可能である。また、透明基材40の例えば屈折率に応じて硬化樹脂膜X'の例えば屈折率および/または厚さが設定されることにより、硬化樹脂膜X'は屈折率調整膜(インデックスマッチングフィルム)や反射防止膜として機能することが可能である。硬化樹脂膜X'が上記の透明基材40とともにハードコート層をなす場合、充分な光透過性および良好な折り曲げ性を実現するという観点から、光学部材Yの厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0056】
光学部材Yにおける上述の透明基材40と硬化樹脂膜X'とを含む積層構造部のヘーズは、光学部材Yにおいて充分な光透過性を実現するという観点から、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下である。
【0057】
このような光学部材Yは、上述の樹脂組成物Xを透明基材40上に塗布して薄膜化した後に乾燥および硬化させることによって、製造することができる。塗布手段としては、例えば、バーコーター、スプレー塗布、スピンコーター、ディップコーター、ダイコーター、コンマコーター、およびグラビアコーターが挙げられる。
【0058】
光学部材Yは、高い透明性を有するとともに高い耐擦傷性を有する硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜を形成するのに適する樹脂組成物Xから形成された硬化樹脂膜X'を有する。したがって、光学部材Yは、高い透明性を有するとともに高い耐擦傷性を有する硬化樹脂部ないし硬化樹脂膜を有する光学部材を実現するのに適する。
【実施例】
【0059】
〔ND分散液S1の作製〕
以下のような生成工程、精製工程、pH調整工程、乾燥工程、および修飾工程を経て、表面修飾ナノダイヤモンド分散液ないし表面修飾ナノダイヤモンドを作製した。
【0060】
生成工程では、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において大気組成の常圧の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉した。容器は鉄製で、容器の容積は15m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物0.50kgを使用した。当該爆薬におけるTNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、50/50である。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上記爆轟法で生成したナノダイヤモンド粒子の凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ナノダイヤモンド粗生成物を回収した。ナノダイヤモンド粗生成物の回収量は0.025kgであった。
【0061】
上述のような生成工程を複数回行うことによって取得されたナノダイヤモンド粗生成物に対し、次に、精製工程の酸処理を行った。具体的には、当該ナノダイヤモンド粗生成物200gに6Lの10質量%塩酸を加えて得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この酸処理における加熱温度は85〜100℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
【0062】
次に、精製工程の酸化処理を行った。具体的には、まず、デカンテーション後の沈殿液に、5Lの60質量%硫酸水溶液と2Lの60質量%クロム酸水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で5時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は120〜140℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上清液は着色しているところ、上清液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。次に、当該反復過程における最後のデカンテーションによって得られた沈殿液に対し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を1L加えた後、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この処理における加熱温度は70〜150℃である。次に、冷却後、デカンテーションによって沈殿液を得て、当該沈殿液について20質量%塩酸を加えることによってpHを2.5に調整した。この後、当該沈殿液中の固形分について、遠心沈降法により水洗を行った。
【0063】
次に、pH調整工程を行った。具体的には、遠心沈降法による上記の水洗を経て取得された沈殿物に超純水を加えて固形分濃度8質量%の懸濁液を調製した後、水酸化ナトリウムの添加によって当該懸濁液のpHを10に調整した。このようにして、pHの調整されたスラリーを得た。
【0064】
次に、乾燥工程を行った。具体的には、pH調整工程で得られたナノダイヤモンド水分散液からエバポレーターを使用して液分を蒸発させた後、これによって生じた残留固形分を乾燥用オーブン内での加熱乾燥によって乾燥させた。加熱乾燥温度は120℃とした。
【0065】
次に、修飾工程を行った。具体的には、まず、上述の乾燥工程を経て得られたナノダイヤモンド粉体0.15gを50mlサンプル瓶に量り取り、150℃で1時間、当該ナノダイヤモンド粉体を予備乾燥に付した。次に、当該ナノダイヤモンド粉体と、溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)14gと、シランカップリング剤であるアクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(東京化成工業株式会社製)1gとを混合した溶液を、10分間、攪拌した。次に、当該溶液に対し、ジルコニアビーズ(商品名「DZBφ30」,代表粒子径20〜40μm,大研化学工業株式会社製)34gを添加した。次に、超音波発生装置たるホモジナイザー(商品名「超音波分散機 UH−600S」,株式会社エスエムテー製)を使用して、前記の混合溶液を修飾処理に付した。具体的には、超音波発生装置の振動子の先端を反応容器内に挿入して前記の溶液に浸けた状態で当該振動子から超音波を発生させ、反応容器を氷水で冷やしながら当該反応容器内の前記混合溶液を8時間の超音波処理ないし修飾処理に付した。本処理において、当初は灰濁色であった溶液は、次第に、黒色化しつつ透明性を増した。これは、ナノダイヤモンド凝着体から順次にナノダイヤモンド粒子が解かれ(解砕)、解離状態にあるナノダイヤモンド粒子にシランカップリング剤が作用して結合し、そのように表面修飾のなされたナノダイヤモンド粒子がTHF溶媒中で分散安定化したためであると考えられる。8時間の修飾処理後の表面修飾ナノダイヤモンドの粒径D50(メディアン径)を後記のように動的光散乱法によって測定したところ、15nmであった。以上のようにして、表面修飾ナノダイヤモンド分散液(ND分散液S1)ないし表面修飾ナノダイヤモンドを作製した。
【0066】
以上のようにして得られたND分散液S1を一昼夜静置した後、上清液を採取した。次に、トルエン16mlとヘキサン4mlとの混合溶媒に対して当該上清液を滴下した。上清液の総滴下量は10mlである。滴下により、黒色透明であった上清液が混合溶媒中で灰濁色に変化した。この滴下後の混合溶媒を、遠心分離機を使用した遠心分離処理に付し、これによって沈降した固形分(表面修飾ナノダイヤモンド粒子)を回収した。この遠心分離処理において、遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分間とした。回収した固形分について、乾燥した後に後記のICP発光分光分析法によってZr含量を測定したところ、7.1質量%であった。
【0067】
〔ND分散液S2の作製〕
修飾工程で用いたシランカップリング剤を、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルに代えてメタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(東京化成工業株式会社製)1gとした以外は、ND分散液S1の作製に関して上述したのと同様の一連の工程(生成工程,精製工程,pH調整工程,乾燥工程,修飾工程)を経て、別の表面修飾ナノダイヤモンド分散液(ND分散液S2)ないし表面修飾ナノダイヤモンドを作製した。この表面修飾ナノダイヤモンドについて、8時間の修飾処理後の粒径D50(メディアン径)を後記のように動的光散乱法によって測定したところ、19nmであった。また、ND分散液S2中の表面修飾ナノダイヤモンドについて、ND分散液S1中の表面修飾ナノダイヤモンドと同様にしてZr含量を測定したところ、7.5質量%であった。
【0068】
〔ND分散液S3の作製〕
修飾工程でジルコニアビーズを使用しなかった以外は、ND分散液S1の作製に関して上述したのと同様の一連の工程(生成工程,精製工程,pH調整工程,乾燥工程,修飾工程)を経て、別のナノダイヤモンド分散液(ND分散液S3)を作製した。修飾工程において、超音波処理に付された混合溶液(ナノダイヤモンド凝着体およびシランカップリング剤を含有する)は、8時間の超音波処理を経ても当初の灰濁色のままであり、当該混合溶液中には沈降物が存在していた。したがって、ND分散液S3に含有されるナノダイヤモンドにはシランカップリング剤が結合していないと考えられる。前記の沈降物について、乾燥した後に後記のICP発光分光分析法によってZr含量を測定したところ、0.01質量%未満であった。
【0069】
〔ハードコートPETフィルムの作製〕
次のようにして、表面にハードコートを有するPETフィルムを作製した。具体的には、まず、ウレタンアクリレート(商品名「KRM8200」,ダイセルオルネクス株式会社製)30質量部と、メチルエチルケトン70質量部と、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184(Irgacure 184)」,BASF製)2質量部とを、遮光瓶に入れて混合し、ハードコート形成用塗料を調製した。次に、厚さ75μmの易接着PETフィルム(商品名「A-4300」,東洋紡株式会社製)上に、ワイヤーバーを使用して当該ハードコート形成用塗料を流延して塗膜を形成した後、80℃で1分間、乾燥機を使用して当該塗膜を乾燥させた(乾燥後の塗膜の厚さは5μm)。次に、紫外線照射装置(商品名「ECS-4011GX」,光源は高圧水銀ランプ,アイグラフィックス株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下において、PETフィルム上の塗膜に紫外線を照射した。この紫外線照射においては、光源出力を4kWとし、照射対象物を搬送するコンベアの搬送速度を4m/分とした。以上のようにして、ハードコートPETフィルムを作製した。
【0070】
〔実施例1〕
上記のND分散液S1を一昼夜静置した後に採取した上清液を、トルエン16mlとヘキサン4mlとの混合溶媒に滴下し(総滴下量10ml)、滴下後の混合溶媒を遠心分離処理(遠心力20000×g,遠心時間10分間)に付して沈降した固形分(表面修飾ナノダイヤモンド粒子)を回収した。このようにして回収した固形分にテトラヒドロフラン(THF)を加えて表面修飾ナノダイヤモンドのTHF溶液(固形分濃度3質量%)を調製し、当該溶液について、超音波処理装置(商品名「ASU-10」,アズワン株式会社製)を使用して10分間の超音波処理を行った。この超音波処理後のTHF溶液中の表面修飾ナノダイヤモンドについて、粒径D50(メディアン径)を後記のように動的光散乱法によって測定したところ、17nmであった。一方、この超音波処理後のTHF溶液(ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)と、反射防止塗料(商品名「ELCOM P-5062」,中空シリカ微粒子含有,固形分濃度3質量%,日揮触媒化成株式会社製)とを、反射防止塗料の固形分100質量部に対してTHF溶液の固形分が2質量部となる量比で遮光瓶に投入し、振とう機を使用して1時間の混合を行った。このようにして、ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドの分散する反射防止塗料(表面修飾ナノダイヤモンド濃度は約0.06質量%)を調製した。次に、上記のハードコートPETフィルムのハードコート層上に、ワイヤーバーを使用して当該反射防止塗料を流延して塗膜を形成した後、80℃で1分間、乾燥機を使用して当該塗膜を乾燥させた(乾燥後の塗膜の厚さは100nm)。次に、紫外線照射装置(商品名「ECS-4011GX」,光源は高圧水銀ランプ,アイグラフィックス株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下において、ハードコートPETフィルム上の前記塗膜に紫外線を照射した。この紫外線照射においては、光源出力を4kWとし、照射対象物を搬送するコンベアの搬送速度を2m/分とした。以上のようにして、実施例1の反射防止層付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0071】
〔実施例2〕
反射防止塗料(商品名「ELCOM P-5062」,日揮触媒化成株式会社製)とTHF溶液(ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)との量比に関し、反射防止塗料の固形分100質量部に対してTHF溶液の固形分を2質量部に代えて5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、反射防止塗料(表面修飾ナノダイヤモンド濃度は約0.15質量%)を調製し、この反射防止塗料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の反射防止層付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0072】
〔実施例3〕
上記のND分散液S2を一昼夜静置した後に採取した上清液を、トルエン16mlとヘキサン4mlとの混合溶媒に滴下し(総滴下量10ml)、滴下後の混合溶媒を遠心分離処理(遠心力20000×g,遠心時間10分間)に付して沈降した固形分(表面修飾ナノダイヤモンド粒子)を回収した。このようにして回収した固形分にテトラヒドロフラン(THF)を加えて表面修飾ナノダイヤモンドのTHF溶液(固形分濃度3質量%)を調製し、当該溶液について、超音波処理装置(商品名「ASU-10」,アズワン株式会社製)を使用して10分間の超音波処理を行った。この超音波処理後のTHF溶液(ND分散液S2に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)と、反射防止塗料(商品名「ELCOM P-5062」,中空シリカ微粒子含有,固形分濃度3質量%,日揮触媒化成株式会社製)とを、反射防止塗料の固形分100質量部に対してTHF溶液の固形分が5質量部となる量比で遮光瓶に投入し、振とう機を使用して1時間の混合を行った。このようにして、ND分散液S2に由来する表面修飾ナノダイヤモンドの分散する反射防止塗料(表面修飾ナノダイヤモンド濃度は約0.15質量%)を調製した。次に、上記のハードコートPETフィルムのハードコート層上に、ワイヤーバーを使用して当該反射防止塗料を流延して塗膜を形成した後、80℃で1分間、乾燥機を使用して当該塗膜を乾燥させた(乾燥後の塗膜の厚さは100nm)。次に、紫外線照射装置(商品名「ECS-4011GX」,光源は高圧水銀ランプ,アイグラフィックス株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下において、ハードコートPETフィルム上の前記塗膜に紫外線を照射した。この紫外線照射においては、光源出力を4kWとし、照射対象物を搬送するコンベアの搬送速度を2m/分とした。以上のようにして、実施例3の反射防止層付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0073】
〔比較例1〕
表面修飾ナノダイヤモンド含有反射防止塗料に代えて反射防止塗料(商品名「ELCOM P-5062」,中空シリカ微粒子含有,固形分濃度3質量%,日揮触媒化成株式会社製)を用いたこと以外は実施例1〜3と同様にして、比較例1の反射防止層付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0074】
〔比較例2〕
ND分散液S2の代わりに上記のND分散液S3を用いたこと以外は実施例3と同様にして、反射防止塗料(ND分散液S3に由来するナノダイヤモンドの濃度は約0.06質量%)を調製し、この反射防止塗料を用いたこと以外は実施例3と同様にして、比較例2の反射防止層付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0075】
〔実施例4〕
上記のND分散液S1を一昼夜静置した後に採取した上清液を、トルエン16mlとヘキサン4mlとの混合溶媒に滴下し(総滴下量10ml)、滴下後の混合溶媒を遠心分離処理(遠心力20000×g,遠心時間10分間)に付して沈降した固形分(表面修飾ナノダイヤモンド粒子)を回収した。このようにして回収した固形分にテトラヒドロフラン(THF)を加えて表面修飾ナノダイヤモンドのTHF溶液(固形分濃度3質量%)を調製し、当該溶液について、超音波処理装置(商品名「ASU-10」,アズワン株式会社製)を使用して10分間の超音波処理を行った。この超音波処理後のTHF溶液(ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)、および、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの多官能アクリレート混合物(商品名「PETIA」,酸価10,水酸基価100,ダイセルオルネクス株式会社製)を、多官能アクリレート混合物60質量部に対してTHF溶液の固形分が40質量部となる量比で遮光瓶に投入し、これらの合計100質量部に対して2質量部の光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF製)を更に遮光瓶に投入し、振とう機を使用して1時間の混合を行った。このようにして、ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドの分散する屈折率調整膜形成用の塗料を調製した。次に、上記のハードコートPETフィルムのハードコート層上に、ワイヤーバーを使用して当該屈折率調整膜形成用塗料を流延して塗膜を形成した後、80℃で1分間、乾燥機を使用して当該塗膜を乾燥させた(乾燥後の塗膜の厚さは200nm)。次に、紫外線照射装置(商品名「ECS-4011GX」,光源は高圧水銀ランプ,アイグラフィックス株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下において、ハードコートPETフィルム上の前記塗膜に紫外線を照射した。この紫外線照射においては、光源出力を4kWとし、照射対象物を搬送するコンベアの搬送速度を2m/分とした。以上のようにして、実施例4の屈折率調整膜付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0076】
〔実施例5〕
多官能アクリレート混合物(商品名「PETIA」,ダイセルオルネクス株式会社製)とTHF溶液(ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)との量比に関し、多官能アクリレート混合物40質量部に対してTHF溶液の固形分を60質量部としたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5の屈折率調整膜付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0077】
〔比較例3〕
ND分散液S1の代わりに上記のND分散液S3を用いたこと以外は実施例4と同様にして、THF溶液(ND分散液S3に由来するナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)を調製し、このTHF溶液を用いたこと以外は実施例4と同様にして、比較例3の屈折率調整膜付ハードコートPETフィルムを作製した。
【0078】
〔実施例6〕
上記のND分散液S1を一昼夜静置した後に採取した上清液を、トルエン16mlとヘキサン4mlとの混合溶媒に滴下し(総滴下量10ml)、滴下後の混合溶媒を遠心分離処理(遠心力20000×g,遠心時間10分間)に付して沈降した固形分(表面修飾ナノダイヤモンド粒子)を回収した。このようにして回収した固形分にテトラヒドロフラン(THF)を加えて表面修飾ナノダイヤモンドのTHF溶液(固形分濃度3質量%)を調製し、当該溶液について、超音波処理装置(商品名「ASU-10」,アズワン株式会社製)を使用して10分間の超音波処理を行った。この超音波処理後のTHF溶液(ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)、および、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの多官能アクリレート混合物(商品名「PETIA」,酸価10,水酸基価100,ダイセルオルネクス株式会社製)を、多官能アクリレート混合物100質量部に対してTHF溶液の固形分が1質量部となる量比で含有し、更にテトラヒドロフラン60質量部と光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF製)2質量部とを含有する混合物について、振とう機を使用して1時間の混合を行った。このようにして、ND分散液S1に由来する表面修飾ナノダイヤモンドの分散するハードコート形成用塗料を調製した。次に、厚さ75μmの易接着PETフィルム(商品名「A-4300」,東洋紡株式会社製)上に、ワイヤーバーを使用して当該ハードコート形成用塗料を流延して塗膜を形成した後、80℃で1分間、乾燥機を使用して当該塗膜を乾燥させた(乾燥後の塗膜の厚さは5μm)。次に、紫外線照射装置(商品名「ECS-4011GX」,光源は高圧水銀ランプ,アイグラフィックス株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下において、PETフィルム上の塗膜に紫外線を照射した。この紫外線照射においては、光源出力を4kWとし、照射対象物を搬送するコンベアの搬送速度を4m/分とした。以上のようにして、実施例6のハードコートPETフィルムを作製した。
【0079】
〔実施例7〕
ND分散液S1の代わりに上記のND分散液S2を用いたこと以外は実施例6と同様にして、THF溶液(ND分散液S2に由来するナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)を調製し、このTHF溶液を用いたこと以外は実施例6と同様にして、実施例7のハードコートPETフィルムを作製した。
【0080】
〔比較例4〕
ND分散液S1の代わりに上記のND分散液S3を用いたこと以外は実施例6と同様にして、THF溶液(ND分散液S3に由来するナノダイヤモンドを含有して固形分濃度は3質量%)を調製し、このTHF溶液を用いたこと以外は実施例6と同様にして、比較例4のハードコートPETフィルムを作製した。
【0081】
〔比較例5〕
表面修飾ナノダイヤモンド含有THF溶液を用いなかったこと以外は実施例6と同様にして、比較例5のハードコートPETフィルムを作製した。
【0082】
以下、参考例として比較例6を説明する。
〔比較例6〕
ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの多官能アクリレート混合物(商品名「PETIA」,酸価10,水酸基価100,ダイセルオルネクス株式会社製)40質量部の代わりに多官能アクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「DPHA」,酸価0.2,水酸基価5,ダイセルオルネクス株式会社製)40質量部を用いたこと以外は実施例6と同様にして、比較例6のハードコートPETフィルムを作製した。
【0083】
〈メディアン径〉
ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子に関する上記のメディアン径(粒径D50)は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した値である。測定に供されたナノダイヤモンド分散液は、ナノダイヤモンド濃度が0.2〜2.0質量%となるように調製した後に、超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。
【0084】
〈ICP発光分光分析法〉
ナノダイヤモンド分散液から加熱によって溶媒を蒸発させた後に残留する乾燥物(粉体)100mgについて、磁性るつぼに入れた状態で電気炉内にて乾式分解を行った。この乾式分解は、450℃で1時間の条件、これに続く550℃で1時間の条件、及びこれに続く650℃で1時間の条件にて、3段階で行った。このような乾式分解の後、磁性るつぼ内の残留物について、磁性るつぼに濃硫酸0.5mlを加えて蒸発乾固させた。そして、得られた乾固物を最終的に20mlの超純水に溶解させた。このようにして分析サンプルを調製した。この分析サンプルを、ICP発光分光分析装置(商品名「CIROS120」,リガク社製)によるICP発光分光分析に供した。本分析の検出下限値が50質量ppmとなるように前記分析サンプルを調製した。また、本分析では、検量線用標準溶液として、SPEX社製の混合標準溶液XSTC−22、および、関東化学社製の原子吸光用標準溶液Zr1000を、分析サンプルの硫酸濃度と同濃度の硫酸水溶液にて適宜希釈調製して用いた。そして、本分析では、空のるつぼで同様に操作および分析して得られた測定値を、測定対象たるナノダイヤモンド分散液試料についての測定値から差し引き、試料中のジルコニウム(Zr)含量を求めた。
【0085】
〈全光線透過率〉
実施例1〜7および比較例1〜6の各フィルムについて、全光線透過率測定装置(商品名:「NDH−5000W」,日本電色工業株式会社製)を使用して、全光線透過率(%)を測定した。本測定は、JIS K 7105に準拠して行った。その結果を表1〜3に掲げる。
【0086】
〈ヘーズ〉
実施例1〜7および比較例1〜6の各フィルムについて、ヘーズ測定装置(商品名:「NDH−5000W」,日本電色工業社製)を使用してヘーズ(%)を測定した。ヘーズの測定は、JIS K 7136に準拠して行った。その結果を表1〜3に掲げる。
【0087】
〈屈折率〉
実施例4,5および比較例3の各フィルムについて、屈折率測定装置(商品名:「NDH−5000W」,日本電色工業社製)を使用して屈折率を測定した。屈折率の測定は、JIS K 7142に準拠して行った。その結果を表2に掲げる。
【0088】
〈耐擦傷性〉
実施例1〜3,6,7および比較例1,2,4〜6の各フィルムの塗膜形成面について、ラビングテスターを使用して、こすり試験を行った。本こすり試験において、試験環境は23℃および50%RHであり、使用したこすり材はスチールウール#0000(日本スチールウール株式会社製)であり、試験対象面上のこすり材の移動距離は10cmであり、試験対象面に対するこすり材の荷重は200g(実施例1〜3と比較例1,2)または2000g(実施例6,7と比較例4〜6)であり、試験対象面に対してこすり材を往復動させる回数は50回(実施例1〜3と比較例1,2)または1000回(実施例6,7と比較例4〜6)である。本こすり試験においては、こすり作業を終えた各フィルムの裏面を黒マジックで塗りつぶした後、反射光を利用して、こすり部分の擦傷の程度を目視で観察した。そして、注意深く観察しても全く傷が確認されなかった場合を優(◎)と評価し、注意深く観察すると傷が5本まで確認された場合を良(○)と評価し、明らかに傷があることが分かった場合を不良(×)と評価した。その結果を表1,3に掲げる。
【0089】
[評価]
反射防止層付ハードコートPETフィルムたる実施例1〜3および比較例1,2のフィルムにおいて、反射防止層にナノダイヤモンドの分散していない比較例1のフィルムおよび反射防止層に表面修飾ナノダイヤモンドの分散していない比較例2のフィルムよりも、反射防止層に表面修飾ナノダイヤモンド(シランカップリング剤付ナノダイヤモンド)の分散している実施例1〜3は、高い耐擦傷性を示した。また、実施例1〜3のフィルムは、比較例2のフィルムよりも、ヘーズが有意に低く、透明性に優れていた。
【0090】
屈折率調整膜付ハードコートPETフィルムたる実施例4,5および比較例3のフィルムにおいて、屈折率調整膜に表面修飾ナノダイヤモンドの分散していない比較例3のフィルムよりも、屈折率調整膜に表面修飾ナノダイヤモンド(シランカップリング剤付ナノダイヤモンド)の分散している実施例4,5は、ヘーズが有意に低く、透明性に優れていた。
【0091】
ハードコートPETフィルムたる実施例6,7および比較例4〜6のフィルムにおいて、ハードコートにナノダイヤモンドの分散していない比較例5のフィルムおよびハードコートに表面修飾ナノダイヤモンドの分散していない比較例4,6のフィルムよりも、ハードコートに表面修飾ナノダイヤモンド(シランカップリング剤付ナノダイヤモンド)の分散している実施例6,7は、高い耐擦傷性を示した。また、実施例6,7のフィルムは、比較例4,6のフィルムよりも、ヘーズが有意に低く、透明性に優れていた。
【0092】
ND分散液S3由来のナノダイヤモンドを含有する塗膜を伴う比較例2〜4の各フィルムについて、ヘーズが高くて透明性が低いのは、ND分散液S3由来のナノダイヤモンドが凝集しているためであると考えられる。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列記する。
【0097】
〔付記1〕硬化性樹脂成分と、
ナノダイヤモンド粒子、および、(メタ)アクリロイル基を含む有機鎖を有し且つ前記ナノダイヤモンド粒子に結合している、シランカップリング剤を含む、表面修飾ナノダイヤモンドと、
有機溶媒と、を含有する、硬化性樹脂組成物。
〔付記2〕前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、付記1に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記3〕前記表面修飾ナノダイヤモンドのメディアン径は50nm以下である、付記1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記4〕前記表面修飾ナノダイヤモンドのメディアン径は30nm以下である、付記1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記5〕前記表面修飾ナノダイヤモンドのメディアン径は20nm以下である、付記1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記6〕前記シランカップリング剤の前記有機鎖は、アクリル酸プロピルおよび/またはメタクリル酸プロピルである、付記1から5のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記7〕前記硬化性樹脂成分は、(メタ)アクリロイル基を有する、付記1から6のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記8〕前記硬化性樹脂成分は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートのオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレートのオリゴマー、および、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとのオリゴマーからなる群より選択される少なくとも一種である、付記1から7のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記9〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が30質量%以上である、付記1から8のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記10〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が40質量%以上である、付記1から8のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記11〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が55質量%以上である、付記1から8のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記12〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が60質量%以上である、付記1から8のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記13〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が99.9質量%以下である、付記1から12のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記14〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が99質量%以下である、付記1から12のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記15〕含有固形分における前記硬化性樹脂成分の割合が95質量%以下である、付記1から12のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記16〕前記有機溶媒はテトラヒドロフランを含む、付記1から15のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記17〕前記表面修飾ナノダイヤモンドとの合計含有量における割合が0.01質量%以上のジルコニウムを含有する、付記1から16のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記18〕中空シリカ粒子を更に含有する、付記1から17のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記19〕前記中空シリカ粒子の粒子径は1nm以上である、付記18に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記20〕前記中空シリカ粒子の粒子径は1000nm以下である、付記18または19に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記21〕前記中空シリカ粒子の粒子径は500nm以下である、付記18または19に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記22〕前記中空シリカ粒子の粒子径は300nm以下である、付記18または19に記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記23〕前記中空シリカ粒子の含有割合が0.5質量%以上である、付記18から22のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記24〕前記中空シリカ粒子の含有割合が1質量%以上である、付記18から22のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記25〕前記中空シリカ粒子の含有割合が2質量%以上である、付記18から22のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記26〕前記中空シリカ粒子の含有割合が90質量%以下である、付記18から25のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記27〕前記中空シリカ粒子の含有割合が80質量%以下である、付記18から25のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記28〕前記中空シリカ粒子の含有割合が60質量%以下である、付記18から25のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔付記29〕付記1から28のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を光透過領域の少なくとも一部に有する、光学部材。
〔付記30〕基材と前記硬化物とを含む積層構造部を有し、当該積層構造部のヘーズは2.0%以下である、付記29に記載の光学部材。
〔付記31〕基材と前記硬化物とを含む積層構造部を有し、当該積層構造部のヘーズは1.0%以下である、付記29に記載の光学部材。
【符号の説明】
【0098】
X 樹脂組成物(硬化性樹脂組成物)
X’ 硬化樹脂膜
Y 光学部材
10 硬化性樹脂成分
20 表面修飾ナノダイヤモンド
21 ND粒子(ナノダイヤモンド粒子)
22 シランカップリング剤
30 分散媒
図1
図2
図3