特許第6962921号(P6962921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962921香料組成物、飲食品及び飲食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962921
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】香料組成物、飲食品及び飲食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/20 20160101AFI20211025BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20211025BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20211025BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   A23L27/20 E
   A23L2/02 B
   A23L2/56
   C11B9/00 P
   !A23L2/02 C
   !A23L2/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-535688(P2018-535688)
(86)(22)【出願日】2017年8月22日
(86)【国際出願番号】JP2017029894
(87)【国際公開番号】WO2018038089
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2020年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-162071(P2016-162071)
(32)【優先日】2016年8月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真吾
(72)【発明者】
【氏名】瓦谷 明宏
【審査官】 二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−310931(JP,A)
【文献】 特開平11−155480(JP,A)
【文献】 特開平08−140640(JP,A)
【文献】 特開2015−012847(JP,A)
【文献】 KOKKALOU, E.,The Constituents of the Essential Oil from Lavandula stoechas Growing Wild in Greece,Planta Med.,1988年,Vol. 54,p. 58-59
【文献】 NIEBLER, J. et al.,Fragrant Sesquiterpene Ketones as Trace Constituents in Frankincense Volatile Oil of Boswellia sacra,J. Nat. Prod.,2016年03月24日,Vol. 79,p. 1160-1164
【文献】 CLERY, R. A. et al.,Constituents of Cypriol Oil (Cyperus scariosus R.Br.): N-Containing Molecules and Key Aroma Components,J. Agric. Food Chem.,2016年05月24日,Vol. 64,p. 4566-4573
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/20
A23L 2/02 − 2/56
C11B 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(−)−ムスタコン、(+)−ムスタコン及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、柑橘類を含む柑橘系飲料に添加するための香料組成物。
【請求項2】
前記柑橘類が、グレープフルーツ、オレンジ及びレモンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の香料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の香料組成物を含む、飲食品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の香料組成物を添加する、飲食品の製造方法。
【請求項5】
(−)−ムスタコン、(+)−ムスタコン及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、柑橘様飲食品。
【請求項6】
(−)−ムスタコン、(+)−ムスタコン及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を添加する、柑橘様飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムスタコンを有効成分として含有する、天然感の高い果汁感や果肉感、熟成感を付与あるいは増強することができる香料組成物、飲食品及び飲食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ムスタコンは、1963年にKapadiaらによりハマスゲCyperus rotundus L.(カヤツリグサ科)の精油から単離・構造決定された化合物である(非特許文献1)。その香気に関する報告はほとんどなく、2016年にNeiblerらが乳香の揮発性成分分析においてスパイシー、ウッディー、ややファッティー、ミートブロス様、バルサミックな香気成分として(非特許文献2)、2016年にCleryらがCyprior oil(Cyperus scariosus R.Br.)の成分分析においてスパイシー、キャロット、ウッディーな香気成分として報告している(非特許文献3)。しかしながら、全体の香気に対する具体的な寄与や効果については知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters(1963),28,1933−1939
【非特許文献2】Journal of Natural Products(2016),79,1160−1164
【非特許文献3】Journal of Agricultural and Food Chemistry(2016),64,4566−4573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、果肉感や果汁感、熟成感の香味を付与又は増強させることのできる飲食品に添加するための香料組成物を提供すること、及びそれを用いて果肉感や果汁感、熟成感の香味が付与又は増強された飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前述の課題を解決するために鋭意検討した結果、飲食品用香料成分として利用されたことのないムスタコンを使用することにより、果肉感や果汁感、熟成感の香味を付与又は増強することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は以下の[1]〜[10]の内容を含むものである。
[1](−)−ムスタコン、(+)−ムスタコン及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、飲食品に添加するための香料組成物。
[2]前記飲食品が飲料類である、[1]に記載の香料組成物。
[3]前記飲料類が柑橘類を含む柑橘系飲料である、[2]に記載の香料組成物。
[4]前記柑橘類が、グレープフルーツ、オレンジ及びレモンからなる群から選択される少なくとも1種である、[3]に記載の香料組成物。
[5][1]〜[4]のいずれか1つに記載の香料組成物を含む、飲食品。
[6][1]〜[4]のいずれか1つに記載の香料組成物を添加する、飲食品の製造方法。
[7](−)−ムスタコン、(+)−ムスタコン及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、飲食品。
[8]前記飲食品が柑橘様飲食品である、[7]に記載の飲食品。
[9](−)−ムスタコン、(+)−ムスタコン及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を添加する、飲食品の製造方法。
[10]前記飲食品が柑橘様飲食品である、[9]に記載の飲食品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、果肉感や果汁感、熟成感の香味を付与又は増強させることのできる飲食品に添加するための香料組成物及び果肉感や果汁感、熟成感の香味が付与又は増強された飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の飲食品に添加するための香料組成物(以下、単に「本発明の香料組成物」ともいう。)は、(−)−ムスタコン、(+)−ムスタコン及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0009】
ムスタコンには2種の光学異性体が存在し、(+)−ムスタコンと(−)−ムスタコンがある。
【0010】
【化1】
【0011】
本発明では、ラセミ体の(±)−ムスタコン、(+)−ムスタコン、(−)−ムスタコン、及び(+)−ムスタコンと(−)−ムスタコンが任意の割合で含まれるムスタコン(以下、単にムスタコンとする。)のいずれも使用できる。ムスタコンは、ハマスゲ精油やCyprior oilなどの天然物から精製して得られたものを用いてもよいし、α−コパエンなどから化学合成して得られたもの(例えば、Tetrahedron(1965),21,607−618に記載の方法により得られたもの)でもよい。または、天然物から得られたものと化学合成により得られたものを併用してもよい。
【0012】
化学合成の出発原料であるα−コパエンは、例えば、ガージャンバルサム油から(−)−α−コパエン、アンジェリカシード油から(+)−α−コパエンが、順相及び逆相カラムクロマトグラフィにより精製することで容易に得ることができる。出発原料として(−)−α−コパエンを使用すると(−)−ムスタコン、(+)−α−コパエンを使用すると(+)−ムスタコンを得ることができる。
【0013】
本発明の香料組成物及びムスタコンは、そのまま飲食品に極微量配合して果肉感や果汁感、熟成感を付与又は増強することができるが、他の成分と混合して飲食品に果肉感や果汁感、熟成感を付与又は増強することもできる。混合し得る他の香料成分としては、各種の合成香料、天然香料、天然精油、植物エキスなどを挙げることができ、例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品香料,P88−131,平成12年1月14日発行」に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。
【0014】
本発明の香料組成物におけるムスタコン含有量は、混合される他の香料成分により異なり一概にはいえないが、通常、飲食品添加用香料組成物の重量を基準として0.000001〜10000ppm、好ましくは0.0001〜1000ppm、より好ましくは0.001〜100ppmの濃度範囲とすることができる。ムスタコンの含有量が0.000001ppm未満だと香味付与効果が得られず、10000ppmを超える含有量だとウッディノートが強くなりすぎて好ましくない。
【0015】
また、ムスタコンを果肉感や果汁感、熟成感を付与又は増強するために飲食品に添加する場合は、飲食品の重量に対して0.000001〜10000ppb、好ましくは0.0001〜1000ppb、より好ましくは0.001〜100ppbの濃度範囲とすることができる。ムスタコンの含有量が飲食品の重量に対して0.000001ppb未満だと香味付与効果が得られず、10000ppbを超える含有量だとウッディノートが強くなりすぎて好ましくない。
【0016】
ムスタコンを含有する本発明の香料組成物には、必要に応じて通常使用されている、例えば、水、エタノール等の溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライド等の保留剤を含有させることができる。
【0017】
本発明の香料組成物及びムスタコン自体の添加により、飲食品の果肉感や果汁感、熟成感の香味を付与又は増強できる。
【0018】
本発明の香料組成物及びムスタコンの添加によって、果肉感や果汁感、熟成感の香味を付与又は増強することができる飲食品の具体例としては、例えば、炭酸飲料、清涼飲料、果汁飲料、果実酒、乳飲料、乳酸菌飲料、ドリンク剤、豆乳、茶飲料などの飲料類;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、デイリーデザートなどのデザート類;キャラメル、キャンディー、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナック、チューインガム、饅頭、羊羹などの菓子類;和風スープ、洋風スープ、中華スープなどのスープ類;パン類;ジャム類;風味調味料類;各種インスタント飲料類;各種インスタント食品類などを挙げることができる。
上記食品の中でも、本発明では、柑橘様飲食品が好ましく用いられる。
【0019】
また、上記飲料類としては、柑橘類を含む柑橘系飲料であることが好ましい。
柑橘類の具体例としては、例えば、グレープフルーツ、オレンジ及びレモン等を挙げることができる。
【0020】
本発明の香料組成物の飲食品への添加量は、製品の種類や形態に応じて異なるが、通常、飲食品の重量を基準として0.1重量%、好ましくは0.01〜5重量%の濃度範囲とすることができる。本発明の香料組成物の含有量が0.01重量%未満であれば柑橘様香味付与増強効果が得られず、5重量%を超える含有量であれば不快臭が強くなり好ましくない。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
(参考例)(−)−ムスタコン及び(+)−ムスタコンの製造
(a)(−)−ムスタコンの製造
ガージャンバルサム油(gurjum balsam)5gを、順相中圧分取クロマトグラフィ(溶離液:ヘキサン)により精製し、1.5gの(−)−α−コパエンを得、文献(Tetrahedron(1965),21, 607−618)に記載の方法に準じて(−)−ムスタコンを得た。
【0023】
(b)(+)−ムスタコンの製造
アンジェリカシード油(angelica seed oil)200gからシリカゲルカラムクロマトグラフィにより炭化水素画分168gを得た。得られた画分のうち100gを用い、逆相中圧分取クロマトグラフィ(溶離液:水及びアセトニトリル)により精製し、0.2gの(+)−α−コパエンを得、上記文献に記載の方法に準じて(+)−ムスタコンを得た。
【0024】
(c)(±)−ムスタコンの調製
前記(a)及び(b)で得られた(−)体及び(+)体を等量混合し、(±)−ムスタコンを調製した。
【0025】
(実施例1)グレープフルーツ食品用香料組成物
下記処方に従って、グレープフルーツ食品用香料組成物(A−1)、(A−2)、(A−3)を調製した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
(比較例1)
比較例1として、下記処方に従いグレープフルーツ食品用香料組成物(B)を調製した。
【0030】
【表4】
【0031】
(比較試験例1)
実施例1及び比較例1で得られたグレープフルーツ食品用香料組成物(A−1)、(A−2)、(A−3)及び(B)をそれぞれ水に0.1重量%添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の香料組成物(A−1)、(A−2)、(A−3)を添加した水のほうが、比較例1の香料組成物(B)を添加した水よりも、自然でみずみずしい果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0032】
(実施例2)市販グレープフルーツ果汁飲料への添加
市販グレープフルーツ果汁飲料に(±)−ムスタコンを5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(±)−ムスタコンを添加することにより、ボリューム感に富んだ自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0033】
(実施例3)市販グレープフルーツ果汁飲料への添加
市販グレープフルーツ果汁飲料に(−)−ムスタコンを5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(−)−ムスタコンを添加することにより、ボリューム感に富んだ自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0034】
(実施例4)市販グレープフルーツ果汁飲料への添加
市販グレープフルーツ果汁飲料に(+)−ムスタコンを5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(+)−ムスタコンを添加することにより、ボリューム感に富んだ自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0035】
(実施例5)グレープフルーツ食品用香料組成物
下記処方に従って、グレープフルーツ食品用香料組成物(C−1)、(C−2)、(C−3)を調製した。
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
(比較例2)
比較例2として、下記処方に従いグレープフルーツ食品用香料組成物(D)を調製した。
【0040】
【表8】
【0041】
(比較試験例2)
実施例5及び比較例2で得られたグレープフルーツ食品用香料組成物(C−1)、(C−2)、(C−3)及び(D)をそれぞれ水に0.1重量%添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例5の香料組成物(C−1)、(C−2)、(C−3)を添加した水のほうが、比較例2の香料組成物(D)を添加した水では感じられない、自然で濃厚な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0042】
(実施例6)オレンジ食品用香料組成物
下記処方に従って、オレンジ食品用香料組成物(E−1)、(E−2)、(E−3)を調製した。
【0043】
【表9】
【0044】
【表10】
【0045】
【表11】
【0046】
(比較例3)
比較例3として、下記処方に従いオレンジ食品用香料組成物(F)を調製した。
【0047】
【表12】
【0048】
(比較試験例3)
実施例6及び比較例3で得られたオレンジ食品用香料組成物(E−1)、(E−2)、(E−3)及び(F)をそれぞれ水に0.1重量%添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例6の香料組成物(E−1)、(E−2)、(E−3)を添加した水のほうが、比較例3の香料組成物(F)を添加した水よりも、自然でみずみずしい果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0049】
(実施例7)市販オレンジ果汁飲料への添加
市販オレンジ果汁飲料に(±)−ムスタコンを5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(±)−ムスタコンを添加することにより、ボリューム感に富んだ自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0050】
(実施例8)市販オレンジ果汁飲料への添加
市販オレンジ果汁飲料に(−)−ムスタコンを5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(−)−ムスタコンを添加することにより、ボリューム感に富んだ自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0051】
(実施例9)市販オレンジ果汁飲料への添加
市販オレンジ果汁飲料に(+)−ムスタコンを5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(+)−ムスタコンを添加することにより、ボリューム感に富んだ自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0052】
(実施例10)オレンジ食品用香料組成物
下記処方に従って、オレンジ食品用香料組成物(G−1)、(G−2)、(G−3)を調製した。
【0053】
【表13】
【0054】
【表14】
【0055】
【表15】
【0056】
(比較例4)
比較例4として、下記処方に従いオレンジ食品用香料組成物(H)を調製した。
【0057】
【表16】
【0058】
(比較試験例4)
実施例10及び比較例4で得られたオレンジ食品用香料組成物(G−1)、(G−2)、(G−3)及び(H)をそれぞれ水に0.1重量%添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例10の香料組成物(G−1)、(G−2)、(G−3)を添加した水のほうが、比較例4の香料組成物(H)を添加した水では感じられない、自然で重厚な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0059】
(実施例11)レモン食品用香料組成物
下記処方に従って、レモン食品用香料組成物(I−1)、(I−2)、(I−3)を調製した。
【0060】
【表17】
【0061】
【表18】
【0062】
【表19】
【0063】
(比較例5)
比較例5として、下記処方に従いレモン食品用香料組成物(J)を調製した。
【0064】
【表20】
【0065】
(比較試験例5)
実施例11及び比較例5で得られたレモン食品用香料組成物(I−1)、(I−2)、(I−3)及び(J)をそれぞれ水に0.1重量%添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例11の香料組成物(I−1)、(I−2)、(I−3)を添加した水のほうが、比較例5の香料組成物(J)を添加した水よりも、自然でみずみずしい果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0066】
(実施例12)市販レモン果汁飲料への添加
市販レモン果汁飲料に(±)−ムスタコンを5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(±)−ムスタコンを添加することにより、ボリューム感に富んだ自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0067】
(実施例13)市販レモン果汁飲料への添加
市販レモン果汁飲料に(−)−ムスタコンを5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(−)−ムスタコンを添加することにより、ボリューム感に富んだ自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0068】
(実施例14)市販レモン果汁飲料への添加
市販レモン果汁飲料に(+)−ムスタコンを5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(+)−ムスタコンを添加することにより、ボリューム感に富んだ自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0069】
(実施例15)レモン食品用香料組成物
下記処方に従って、レモン食品用香料組成物(K−1)、(K−2)、(K−3)を調製した。
【0070】
【表21】
【0071】
【表22】
【0072】
【表23】
【0073】
(比較例6)
比較例6として、下記処方に従いレモン食品用香料組成物(L)を調製した。
【0074】
【表24】
【0075】
(比較試験例6)
実施例15及び比較例6で得られたレモン食品用香料組成物(K−1)、(K−2)、(K−3)及び(L)をそれぞれ水に0.1重量%添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例15の香料組成物(K−1)、(K−2)、(K−3)を添加した水のほうが、比較例6の香料組成物(L)を添加した水では感じられない、自然で重厚な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0076】
(実施例16)市販アップル果汁飲料への添加
市販アップル果汁飲料に(±)−ムスタコンを0.5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(±)−ムスタコンを添加することにより、固い果肉の印象を伴った自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0077】
(実施例17)市販アップル果汁飲料への添加
市販アップル果汁飲料に(−)−ムスタコンを0.5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(−)−ムスタコンを添加することにより、固い果肉の印象を伴った自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0078】
(実施例18)市販アップル果汁飲料への添加
市販アップル果汁飲料に(+)−ムスタコンを0.5ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(+)−ムスタコンを添加することにより、固い果肉の印象を伴った自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0079】
(実施例19)アップル食品用香料組成物
下記処方に従って、アップル食品用香料組成物(M−1)、(M−2)、(M−3)を調製した。
【0080】
【表25】
【0081】
【表26】
【0082】
【表27】
【0083】
(比較例7)
比較例7として、下記処方に従いアップル食品用香料組成物(N)を調製した。
【0084】
【表28】
【0085】
(比較試験例7)
実施例19及び比較例7で得られたアップル食品用香料組成物(M−1)、(M−2)、(M−3)及び(N)をそれぞれ水に0.1重量%添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例19の香料組成物(M−1)、(M−2)、(M−3)を添加した水のほうが、比較例7の香料組成物(N)を添加した水よりも、固い果肉の印象を伴った自然な果肉感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0086】
(実施例20)市販グレープ果汁飲料への添加
市販グレープ果汁飲料に(±)−ムスタコンを1ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(±)−ムスタコンを添加することにより、濃厚で自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0087】
(実施例21)市販グレープ果汁飲料への添加
市販グレープ果汁飲料に(−)−ムスタコンを1ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(−)−ムスタコンを添加することにより、濃厚で自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0088】
(実施例22)市販グレープ果汁飲料への添加
市販グレープ果汁飲料に(+)−ムスタコンを1ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(+)−ムスタコンを添加することにより、濃厚で自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0089】
(実施例23)
下記処方に従って、グレープ食品用香料組成物(O−1)、(O−2)、(O−3)を調製した。
【0090】
【表29】
【0091】
【表30】
【0092】
【表31】
【0093】
(比較例8)
比較例8として、下記処方に従いグレープ食品用香料組成物(P)を調製した。
【0094】
【表32】
【0095】
(比較試験例8)
実施例23及び比較例8で得られたグレープ食品用香料組成物(O−1)、(O−2)、(O−3)及び(P)をそれぞれ水に0.1重量%添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例23の香料組成物(O−1)、(O−2)、(O−3)を添加した水のほうが、比較例8の香料組成物(P)を添加した水よりも、濃厚で自然な果肉感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0096】
(実施例24)市販ピーチ果汁飲料への添加
市販ピーチ果汁飲料に(±)−ムスタコンを1ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(±)−ムスタコンを添加することにより、繊維質のイメージを伴った自然な果肉感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0097】
(実施例25)市販ピーチ果汁飲料への添加
市販ピーチ果汁飲料に(−)−ムスタコンを1ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(−)−ムスタコンを添加することにより、繊維質のイメージを伴った自然な果肉感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0098】
(実施例26)市販ピーチ果汁飲料への添加
市販ピーチ果汁飲料に(+)−ムスタコンを1ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(+)−ムスタコンを添加することにより、繊維質のイメージを伴った自然な果肉感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0099】
(実施例27)
下記処方に従って、ピーチ食品用香料組成物(Q−1)、(Q−2)、(Q−3)を調製した。
【0100】
【表33】
【0101】
【表34】
【0102】
【表35】
【0103】
(比較例9)
比較例9として、下記処方に従いピーチ食品用香料組成物(R)を調製した。
【0104】
【表36】
【0105】
(比較試験例9)
実施例27及び比較例9で得られたピーチ食品用香料組成物(Q−1)、(Q−2)、(Q−3)及び(R)をそれぞれ水に0.1重量%添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例27の香料組成物(Q−1)、(Q−2)、(Q−3)を添加した水のほうが、比較例9の香料組成物(R)を添加した水よりも、繊維質のイメージを伴った自然な果肉感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0106】
(実施例28)市販ワインテイスト飲料への添加
市販ワインテイスト飲料に(±)−ムスタコンを1ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(±)−ムスタコンを添加することにより、自然な樽香及び熟成感が強化され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0107】
(実施例29)市販ワインテイスト飲料への添加
市販ワインテイスト飲料に(−)−ムスタコンを1ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(−)−ムスタコンを添加することにより、自然な樽香及び熟成感が強化され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0108】
(実施例30)市販ワインテイスト飲料への添加
市販ワインテイスト飲料に(+)−ムスタコンを1ppb添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、(+)−ムスタコンを添加することにより、自然な樽香及び熟成感が強化され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0109】
(実施例31)
下記処方に従って、ワイン食品用香料組成物(S−1)、(S−2)、(S−3)を調製した。
【0110】
【表37】
【0111】
【表38】
【0112】
【表39】
【0113】
(比較例10)
比較例10として、下記処方に従いワイン食品用香料組成物(T)を調製した。
【0114】
【表40】
【0115】
(比較試験例10)
実施例31及び比較例10で得られたワイン食品用香料組成物(S−1)、(S−2)、(S−3)及び(T)をそれぞれ水に0.1重量%添加し、5名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例31の香料組成物(S−1)、(S−2)、(S−3)を添加した水のほうが、比較例10の香料組成物(T)を添加した水よりも、自然な樽香及び熟成感が強化され、格段に優れていると全員が指摘した。
【0116】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2016年8月22日出願の日本特許出願(特願2016−162071)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の香料組成物又は(−)−ムスタコン、(+)−ムスタコン及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加により、飲食品の果肉感や果汁感、熟成感の香味を付与又は増強することができる。