特許第6962925号(P6962925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962925
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】流体貯蔵容器脱気システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/36 20060101AFI20211025BHJP
   A61F 9/007 20060101ALN20211025BHJP
【FI】
   A61M5/36
   !A61F9/007 200Z
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-543392(P2018-543392)
(86)(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公表番号】特表2019-509097(P2019-509097A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】IB2017051664
(87)【国際公開番号】WO2017163202
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2020年3月2日
(31)【優先権主張番号】15/077,575
(32)【優先日】2016年3月22日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジョーセフ サンチェス,ジュニア
【審査官】 上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−531651(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0296825(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0289900(US,A1)
【文献】 特表2009−509632(JP,A)
【文献】 特表2012−531968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/36
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体送達システムの圧力源を第1の流体貯蔵容器の圧力入口に接続するステップであって、前記圧力入口は、ガスを通過させるフィルタを含む、ステップと、
前記流体送達システムの流体灌流ラインを前記第1の流体貯蔵容器の流体流出ポートに接続するステップと、
前記第1の流体貯蔵容器の流体流入ポートを前記流体送達システムの流体源に接続するステップと、
前記第1の流体貯蔵容器に前記流体源から灌流流体を充填するステップと、
前記第1の流体貯蔵容器に負圧を加えて前記第1の流体貯蔵容器内の液体を脱気するステップと、
前記第1の流体貯蔵容器に充填している間、及び前記第1の流体貯蔵容器内の流体を脱気している間の両方において、第2の流体貯蔵容器から流体を押し出すステップと、
前記圧力源によって、前記第1の流体貯蔵容器に正圧を加えて流体を前記第1の流体貯蔵容器から前記流体流出ポートを通じて押し出し、前記流体灌流ラインに押し入れるステップと、
前記第1の流体貯蔵容器から流体を押し出している間、前記第2の流体貯蔵容器を充填し、前記第2の流体貯蔵容器内の流体を脱気するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
正の流体圧力及び負の流体圧力の両方を生成することができる圧力源と、
流体灌流ラインと、
流体源と、
第1の流体貯蔵容器であって、
第1の流体貯蔵チャンバと、
前記流体灌流ラインに接続可能な第1の灌流流出ポートと、
前記流体源に接続可能な第1の流体流入ポートと、
前記圧力源に接続可能な第1の圧力入口であって、第1のフィルタを含む、第1の圧力入口と、
を含む、第1の流体貯蔵容器と、
第1の時間の間、前記第1の流体貯蔵チャンバに灌流流体を充填し、前記第1の時間に続く第2の時間の間、前記圧力源に、前記第1の流体貯蔵容器に負圧を加えさせるように構成されている制御システムと、
第2の流体貯蔵容器であって、
第2の流体貯蔵チャンバと、
前記流体灌流ラインに接続可能な第2の灌流流出ポートと、
前記流体源に接続可能な第2の流体流入ポートと、
前記圧力源に接続可能な第2の圧力入口であって、第2のフィルタを含む、第2の圧力入口と、
を含む、第2の流体貯蔵容器と、
を含み、
前記制御システムは更に、前記第1の時間及び前記第2の時間の両方の間、前記第2の流体貯蔵容器に正圧を加えるように構成されている、流体送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科手術処置を実施するための方法及びシステムに関し、特に、灌流のために患者の眼に加圧流体を供給するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、眼の手術中、眼の眼圧を許容可能なレベルに維持するために、患者の眼に流体が注入される。一部の眼科手術システムではこのような流体を、アクチュエータ機構により物理的圧力下に置かれたバッグから供給する。アクチュエータ機構はバッグを押しつぶして流体をバッグから押し出し、灌流ラインに押し入れる。灌流ラインは、バッグと患者の眼に流体を注入する眼科手術ツールとの間に流体連通を設ける。一部の眼科手術システムは、このような流体を瓶の使用により提供する。典型的には、瓶は、流体灌流ラインに接続され得る灌流流出ポートを瓶の底部に有する。瓶は、また、瓶の上部に圧力入口を有する。圧力入口は、加圧ガスなどの加圧流体源に接続されている。加圧ガスが瓶に注入されると、加圧ガスは灌流流出ポートから流体を押し出す。一部の例では、流体はカセットチャンバに押し入れられる。一部の例では、流体は流体灌流ラインに押し入れられる。
【0003】
数ある機能の中でもとりわけ流体灌流を提供する眼科手術システムは、典型的には、コンソールと統合された流体送達システムの使用によって流体灌流を提供する。例えば、眼科手術システムの流体送達システムは、バッグ又は瓶が流体送達システムに接続されている間にバッグ又は瓶を配置するための空間を含んでもよい。一部の場合では、バッグ又は瓶は、その中に灌流流体を入れた状態で入手してもよい。しかしながら、このような流体は、通常、脱気されていない。換言すると、灌流流体又はガス内に、灌流流体中に溶解した気泡がある可能性がある。灌流プロセス中、脱気されていない灌流流体は患者の眼に気泡を導入する可能性がある。眼科外科手術が行われている間、このような気泡は術者の視覚を不明瞭にする可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一例によれば、流体送達システムは、正の流体圧力及び負の流体圧力の両方を生成することができる圧力源と、流体灌流ラインと、第1の流体貯蔵容器と、を含む。第1の流体貯蔵容器は、チャンバと、チャンバと流体灌流ラインとの間に流体連通を設けるために流体灌流ラインと接続可能な流体流出ポートと、圧力源に接続可能な圧力入口と、圧力入口とチャンバとの間に配置されたフィルタと、を含む。流体送達システムは、流体圧力源によって負圧及び正圧の両方を加えるように構成されている制御システムを更に含む。
【0005】
方法は、流体送達システムの圧力源を流体貯蔵容器の圧力入口に接続するステップであって、圧力入口は、ガスを通過させるフィルタを含む、ステップと、流体送達システムの流体灌流ラインを流体貯蔵容器の流体流出ポートに接続するステップと、流体貯蔵容器に負圧を加えて流体貯蔵容器内の液体を脱気するステップと、を含む。
【0006】
流体送達システムは、正の流体圧力及び負の流体圧力の両方を生成することができる圧力源と、流体灌流ラインと、流体源と、第1の流体貯蔵容器と、を含む。第1の流体貯蔵容器は、第1の流体貯蔵チャンバと、流体灌流ラインに接続可能な第1の灌流流出ポートと、流体源に接続可能な第1の流体流入ポートと、流体圧力源に接続可能な第1の圧力入口であって、第1のフィルタを含む、第1の圧力入口と、を含む。流体送達システムは、第1の時間の間、流体貯蔵チャンバに灌流流体を充填し、第1の時間に続く第2の時間の間、流体圧力源によって第1の流体貯蔵容器に負圧を加えるように構成されている制御システムを更に含む。
【0007】
前述の概要及び以下の詳細な説明の両方は、本質的に例示的及び説明的であり、本開示の範囲を限定することなく本開示の理解を提供することを目的としていることは理解すべきである。この点に関し、当業者には、本開示の更なる態様、特徴、及び利点が以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0008】
添付の図面は、本明細書中に開示されるデバイス及び方法の実施形態を示し、明細書とともに、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】流体送達システムを含む例証的な眼科手術システムを示す図である。
図2】流体貯蔵容器を有する例証的な流体送達システムを示す図である。
図3】2つの流体貯蔵容器を有する例証的な流体送達システムを示す図である。
図4】2つの流体貯蔵容器を有する流体送達システムを通じて流体を供給するための例証的なプロセスを示す流れ図である。
図5A】灌流前に脱気させることができる例証的な流体送達バッグを示す図である。
図5B】灌流前に脱気させることができる別の例証的な流体送達バッグを示す図である。
図6】患者の眼に灌流する前に流体を脱気するための例証的な方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本開示の原理の理解を促す目的で、図面に示す実施形態について述べ、これを説明するために特定の言語を用いる。しかし、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことは理解されよう。記載されるデバイス、器具、方法の任意の変更及び更なる改良、並びに本開示の原理の任意の更なる適用は、本開示に関係する当業者には通常想起されるものと十分に考えられる。特に、1つの実施形態に関して記載される特徴、構成要素、及び/又は工程は、本開示の他の実施形態に関して記載される特徴、構成要素、及び/又は工程と組み合わせてもよいと十分に考えられる。簡略化のため、場合によっては、同一の又は同様の部品を参照するために図面の全体を通して同じ参照番号を使用する。簡略化のため、いくつかの場合では、同じ又は同一部品を参照するために図面の全体を通して同じ参照符号を使用する。
【0011】
本開示は、流体貯蔵容器内の流体を、その流体が患者の眼に灌流される前に脱気するように適合された、流体送達システム及び流体貯蔵容器に関する。いくつかの例によれば、流体貯蔵容器は、灌流流出ポート及び圧力入口を含む。圧力入口は半透膜などのフィルタを含む。流体が患者の眼に灌流される前に、フィルタを介して真空が加えられる。フィルタは、気泡をフィルタに通過させている間、液体灌流流体がバッグから出るのを防ぐ。このように、灌流流体は患者の眼に灌流される前に脱気され得る。流体送達システム及び流体貯蔵容器については以下で更に詳細に記載する。
【0012】
図1は、例証的な眼科手術システム100を示す図である。本例によれば、眼科手術システム100は、手術用コンソール102及び眼科手術ツール112を含む。眼科手術ツール112は、流体灌流ライン114を通じてコンソール102と流体連通している。手術用コンソール102は、ディスプレイスクリーン104及び流体送達システム110を含む。一実装形態では、手術用コンソール102は可動であるように構成されており、眼科手術処置を実施するために医療提供者などのユーザにより使用されてもよい。手術用コンソール102は、また、制御システム108を含んでもよく、制御システム108は、眼科手術ツール112に関連する種々の機能を実施するためのデータを処理し、受信し、記憶するように構成されていてもよい。
【0013】
ディスプレイスクリーン104はユーザに対し情報を通信してもよく、一部の実装形態では、外科的処置中、システムの動作及び性能に関するデータを示してもよい。一部の例では、ディスプレイスクリーン104は、術者がグラフィカルユーザインタフェースによって手術用コンソール102と対話することを可能にするタッチスクリーンである。
【0014】
流体送達システム110は、流体送達システム100に着脱可能に挿入可能なカセット106を含んでもよい。一部の例では、カセット106は、患者の流体及び組織に接触する可能性のある流体送達システム110の構成要素を含んでもよい。特に、カセット106は、流体貯蔵容器及び流体灌流ライン114を含んでもよい。一部の例では、カセット106は、吸引システム(図示せず)などの他のシステムの構成要素を含んでもよい。
【0015】
図2は、流体貯蔵容器202を有する例証的な流体送達システム200を示す図である。流体送達システム200は、上述の流体送達システム110に対応してもよい。本例によれば、流体送達システム200は、ポンプ226を有する圧力源212と、流体源214と、流体灌流ライン224と、を含む。流体貯蔵容器202は、灌流流体206を貯蔵するための流体チャンバ204と、フィルタ220を有する圧力入口208と、流体流入ポート210と、流体流出ポート222と、を含む。
【0016】
上述のように、流体送達システム200は、手術用コンソール(例えば、参照番号102、図1)に挿入可能なカセット(例えば、参照番号106、図1)を用いてもよい。カセットは、流体貯蔵容器202及び流体灌流ライン224を含んでもよい。カセットは、コンソールに挿入されたとき、流体流入ポート210及び圧力入口208がそれぞれ流体源214及び圧力源212に適切に接続されるように構造的に構成されていてもよい。
【0017】
圧力源212は、手術用コンソール(例えば、参照番号102、図1)に組み込まれた圧縮機又はポンプであってもよい。一部の例では、圧力源212は、コンソールとは別個の、圧力ラインを通じて手術用コンソールに接続可能な機械(例えば、ポンプ)によって提供されてもよい。いずれの場合においても、圧力源212は、導管などの圧力ライン216を通じて流体貯蔵容器202の圧力入口208に接続可能である。圧力ライン216は、圧力入口208と圧力源212との間に流体連通を設ける。
【0018】
圧力源212は、圧力入口208を通じて流体貯蔵容器202に、大気圧に対し正圧及び負圧の両方を加えるように構成されている。特に、圧力源212は、流体貯蔵容器202に負圧(即ち、真空)を加え、流体貯蔵容器202内に貯蔵された灌流流体206を脱気するように適合されている。圧力源212は、また、正圧を加え、灌流流体206を流体貯蔵容器202から流体灌流ライン224を通じて押し出し、患者の眼に押し入れるように適合されている。
【0019】
図2の例示的な実装形態を含む一部の例では、圧力源212はベンチュリポンプ226を用いて流体貯蔵容器に負圧を加える。一部の例では、圧力入口208に真空を加えるために、圧力源は、圧力源212からベンチュリポンプ226を通ってマフラー228へと流体を流す。ベンチュリポンプ226は、管のより狭い部分を含む。狭い部分では速度が増すため圧力が低下し、それにより真空を生成する。このように、圧力源212は圧力入口208に負圧を加えることができる。真空を提供するための他の種類のポンプも使用してよい。
【0020】
図2の例示的な実装形態では容器202と圧力源212との間に1つのインターフェースを使用しているが、他の実装形態は2つの別個の圧力インターフェースを含み、その1つは正圧を加えるためのものであり、1つは負圧を加えるためのものである。このような場合では、2つの別個の圧力ラインは圧力源212に2つの圧力インターフェースを接続してもよい。一部の場合では、正圧を与える圧力源は、負圧を与える圧力源とは別個の機械であってもよい。換言すると、1つが正圧を与えるためのものであり、1つが負圧を与えるためのものである2つの別個の圧力源があってもよい。例えば、ポンプは真空又は負圧を与えてもよく、圧縮機は正圧を与えてもよい。
【0021】
流体源214は流体貯蔵容器202に灌流流体を供給する。灌流流体は、例えば、平衡塩溶液(BSS)であってもよい。灌流流体は流体貯蔵容器202に種々の手法のいずれかで供給されてもよい。一例では、流体源214は、流体貯蔵容器202よりも実質的に多い量の流体を保持するような大きさの流体タンクを含んでもよい。このような流体タンクは、その後、必要に応じて、流体貯蔵容器202に灌流流体を充填するために使用されてもよい。一部の例では、流体源214は、手術用コンソール102の外部にある流体タンクであってもよい。いずれの場合においても、流体貯蔵容器202は流体ライン218を介して流体源214に接続可能である。流体ライン218は、したがって、流体源214と流体貯蔵容器202の流体流入インターフェース210との間に流体連通を設ける。
【0022】
なお図2を参照すると、流体貯蔵容器202のチャンバ204には灌流流体206が充填されている。一部の例では、チャンバ204は、チャンバ206内の流体の量は1回の外科的処置に概ね十分であるような大きさにされてもよい。一部の例では、しかしながら、チャンバ204はより少量の灌流流体を保持するような大きさにされてもよい。このような場合では、チャンバ204は外科的処置中に補充されてもよい。
【0023】
圧力入口208は、流体密封が形成されるように圧力入口208が圧力ライン216と接続することを可能にする圧力インターフェース207を含んでもよい。圧力インターフェース207は、クイックディスコネクトフィッティング又は他のインターフェースなどの選択的に取り付け可能なインターフェースであってもよい。いくつかの実施形態では、圧力インターフェース207はルアーフィッティングである。圧力入口208はチャンバ204と圧力源212との間の流体連通を可能にする。本例によれば、圧力入口208はフィルタ220を含む。フィルタ220は、ガス状流体がフィルタ220を通過するのを可能にし、液体流体がフィルタ220を通過するのを妨げるように構造的に構成されている。したがって、圧力入口208に負圧などの真空が加えられると、チャンバ204内のガス及び灌流流体206内の気泡はフィルタ220を通じて引かれ得る。しかし、灌流流体206(即ち、BSS)は流体貯蔵容器内に維持され、フィルタ220を通じて引かれない。
【0024】
流体流入ポート210は、流体密封が形成されるように流体流入ポート210が流体ライン218に接続することを可能にするインターフェース209を含む。インターフェース209はクイックディスコネクトフィッティング又は他のインターフェースなどの選択的に取り付け可能なインターフェースであってもよい。いくつかの実施形態では、インターフェース209はルアーフィッティングである。流体ライン218は流体源214と流体流入ポート210との間に流体連通を設ける。流体流入ポート210は、チャンバ204と流体ライン218との間の流体連通を可能にする。一部の例では、流体流入ポート210は、流体がチャンバ204に流れ込むことは可能にするが、流体がチャンバ204から流出することは妨げる一方向弁を含んでもよい。
【0025】
流体流出ポート222は、流体密封が形成されるように流体流出ポート222を流体灌流ライン224に接続することを可能にするインターフェース211を含む。流体流出ポート222は、したがって、チャンバ204と流体灌流ライン224との間に流体連通を設ける。流体灌流ライン224は、流体流出ポート222と患者の眼に灌流流体を注入する眼科手術ツール112との間に流体連通を設ける。一部の例では、流体流出ポート222は、流体がチャンバ204から流出することは可能にするが、流体がチャンバ204に流れ込むことは妨げる一方向弁を含んでもよい。流体流出ポート222は、また、流体が流体流出ポート222を通って流れることを選択的に妨げる又は可能にするために、停止弁223又は逆止弁を含んでもよい。
【0026】
流体送達システムの動作中、制御システム(例えば、参照番号108、図1)は種々の構成要素を、所望のように流体を導くように管理してもよい。例えば、カセットが手術用コンソール102に挿入された後、チャンバ204は空であってもよい。したがって、制御システム108は流体源214からの流体をチャンバ204に圧送してチャンバを充填するために、ポンプ230を動作してもよい。この時間の間、流体が流体流出ポート222から流出するのを防ぐために、流体流出ポート222の停止弁223は閉鎖されていてもよい。一部の例では、灌流流体206は、流体レベルがチャンバ204上部よりも低い特定の閾値レベル225に達するまでチャンバ204に圧送されてもよい。
【0027】
チャンバ204に灌流流体206が適切に充填された後、制御システム108は、圧力源212及びポンプ226の使用によって圧力入口208に負圧を加えてもよい。加えられる負圧又は真空により、チャンバ204内に貯蔵された灌流流体206を脱気することができる。換言すると、灌流流体溶液内の気泡は灌流流体溶液から除去されてもよい。
【0028】
灌流流体206が脱気された後、溶液を患者の眼に灌流させる準備が整ってもよい。したがって、制御システム108は圧力入口208に正圧を加えてもよい。この時間の間、流体が停止弁223を流れることを可能にするために、流体流出ポート222の停止弁223は開放されていてもよい。圧力入口208における正圧によって、灌流流体をチャンバ204から押し出し、流体灌流ライン224に押し入れ、眼科手術ツール112を通して患者の眼に入れる。正圧の大きさは、灌流流体206の所望の流量を患者の眼に提供するように制御されてもよい。
【0029】
制御システム108はプロセッサ及びメモリを含んでもよい。メモリは、プロセッサによって実行されたときに制御システム108に種々のタスクを実行させる機械可読命令を記憶してもよい。例えば、制御システム108は圧力源212及び流体源214に制御信号を送信してもよい。このような制御信号は、圧力源212又は流体源214のいずれかを、指定された時点に所望のように挙動するよう作動させてもよい。例えば、制御システム108は流体源214に、流体貯蔵容器202に流体206を充填させてもよい。その後、制御システム108は圧力源212に負圧を加えさせ、流体貯蔵容器202内の流体206を脱気してもよい。制御システム108は、その後、流体206を流体貯蔵容器202から押し出すために、圧力源212に、流体貯蔵容器202に正圧を加えさせてもよい。
【0030】
図3は、2つの流体貯蔵容器202、302を有する例証的な流体送達システム300を示す図である。第1の流体貯蔵容器202と同様に、第2の流体貯蔵容器302は、一定量の流体306を保持するように適合されたチャンバ304と、フィルタ320を有する圧力入口308と、流体流入ポート310と、流体流出ポート322と、を含む。この例では、しかしながら、流体ライン218は、流体源214からの流体を第1の流体貯蔵容器202又は第2の流体貯蔵容器302のいずれかに導くことを可能にする切換弁318を含む。同様に、流体灌流ライン224は、流体を第1の流体貯蔵容器202又は第2の流体貯蔵容器302のいずれかから眼科手術ツール112に導くことを可能にする切換弁324を含む。
【0031】
本例によれば、圧力ライン301、303は切換弁316を介して圧力源を流体貯蔵容器202、302の圧力入口208、308に接続している。第1の圧力ライン301は正圧を加えるために使用してもよく、第2の圧力ライン303は負圧を加えるために使用してもよい。したがって、正圧は1つの流体貯蔵容器に加えてもよい一方で、負圧はもう一方の流体貯蔵容器に加えられ、この逆の場合もある。
【0032】
図4は、2つの流体貯蔵容器202、302を含む流体送達システム300を通じて流体を供給するための例証的なプロセス400を示す流れ図である。第1の流体貯蔵容器202で実施されるステップを左の列402に示し、第2の流体貯蔵容器302で実施されるステップを右の列404に示す。参照番号406は、第1の流体貯蔵容器202に灌流流体が充填されており、第2の流体貯蔵容器302が空である場合の開始時点を示す。
【0033】
参照番号406により示される時点と参照番号408により示される時点との間のステップ412において、灌流流体は第1の流体貯蔵容器202の圧力入口208に正圧を加えることにより第1の流体貯蔵容器202から押し出される。一方、第2の流体貯蔵容器302ではステップ414及びステップ416が実施される。ステップ414では、第2の流体貯蔵容器302に灌流流体が充填される。第2の流体貯蔵容器302が適切に充填された後、ステップ416において、第2の流体貯蔵容器302内の灌流流体溶液は第2の流体貯蔵容器302の圧力入口308に負圧を加えることによって脱気される。
【0034】
参照番号408の時点において、第1の流体貯蔵容器202内の流体が最小流体レベルを下回った後、プロセス400は切り換えられる。特に、時点408と時点410との間のステップ422において、灌流流体は圧力入口308に正圧を加えることにより第2の流体貯蔵容器302から押し出される。一方、第1の流体貯蔵容器202ではステップ418及びステップ420が実施される。ステップ418において、第1の流体貯蔵容器202に灌流流体が充填される。第1の流体貯蔵容器202が適切に充填された後、ステップ420において、第1の流体貯蔵容器202の圧力入口208に負圧を加えることにより第1の流体貯蔵容器202内の灌流流体溶液は脱気される。
【0035】
時点410において、脱気された流体が第1の流体貯蔵容器202に充填され、第2の流体貯蔵容器302は空である。プロセス400は上述のように流体貯蔵容器202と流体貯蔵容器302との間で切り換えることにより継続してもよい。特に、1つの流体貯蔵容器の灌流流体が加圧されている間、もう一方の流体貯蔵容器は充填され、脱気される。したがって、脱気された灌流流体の安定的な流れを患者の眼に供給することができる。
【0036】
図5A及び図5Bは、灌流前に脱気させることができる例証的な流体送達バッグを示す図である。流体送達バッグは灌流流体を貯蔵してもよい。バッグは、押しつぶされたときに内部の灌流流体がバッグから患者の眼へと押し出されるように可撓性でもよい。例えば、一部の手術用コンソール(例えば、参照番号102、図1)は、加圧灌流流体を患者の眼に供給するために、流体が充填されたバッグを押しつぶすアクチュエータ機構を含んでもよい。
【0037】
図5Aは、脱気インターフェース504がバッグ500の上部501にある例を示す。本例では、バッグ500は、フィルタ506を有する脱気インターフェース504と、内部チャンバ502と、流出インターフェース508を有する流体流出ポート510と、を含む。流出インターフェース508は流体灌流ライン(例えば、参照番号224、図2)に接続可能であってもよい。脱気インターフェース504は圧力ラインを通じて圧力源(例えば、参照番号212、図2)に接続可能であってもよい。この例では、脱気インターフェース504は、ガス状流体を通過させ、液体流体の通過を妨げてもよいフィルタ506を含む。フィルタ506は、例えば、半透膜であってもよい。したがって、脱気インターフェース504に負圧が加えられると、灌流流体溶液内の気泡は溶液から引き出されてもよい。しかし、灌流流体はフィルタ506を通過しない。このため、チャンバ502内の灌流流体溶液を脱気することができる。
【0038】
図5Bは、脱気インターフェース512がバッグ520の底部503にある例を示す。本例では、バッグ520は、フィルタ514を有する脱気インターフェース512と、流出インターフェース508を有する流体流出ポート510と、を含む。バッグは、また、チャンバ502の中央部に延びる浸漬管516を含む。流体流出ポート510は、浸漬管516を囲む環状路518を含んでもよい。流出インターフェース508は流体灌流ライン(例えば、参照番号224、図2)に接続可能であってもよい。したがって、チャンバ502から流出する流体は環状路518を通過し、流出インターフェース508を通過し、流体灌流ラインに入る。脱気インターフェース512は圧力ラインを介して圧力源(例えば、参照番号212、図2)に接続可能であってもよい。脱気インターフェース504はフィルタ514を含み、フィルタ514はガス状流体を通過させてもよく、液体流体の通過を妨げる。フィルタ514は、例えば、半透膜であってもよい。したがって、脱気インターフェース504に負圧が加えられると、灌流流体溶液内の気泡は溶液から引き出されてもよい。特に、チャンバ502内の灌流流体は浸漬管516を通り、フィルタ514に対して引かれる。しかし、灌流流体は脱気フィルタ514を通して引かれない。したがって、チャンバ502内の灌流流体溶液は脱気され得る。
【0039】
浸漬管516は任意の適切な長さであってもよい。例えば、浸漬管516は比較的短く、バッグ520の底部503からわずかな距離のみ延びてもよい。一部の例では、浸漬管516は比較的長く、バッグ520の上部501の近傍の箇所まで延びてもよい。一部の例では、図5Aに示される脱気インターフェース504及び図5Bに示される脱気インターフェース512の両方は、1つのバッグ内に含まれてもよい。
【0040】
図6は、患者の眼に灌流する前に流体を脱気するための方法600を示す流れ図である。本例によれば、当該方法は、流体貯蔵容器の流体流出ポートを流体灌流ラインに接続するステップ602を含む。流体灌流ラインは、流体貯蔵容器と眼科手術ツールとの間に流体連通を設ける。
【0041】
ステップ604において、流体貯蔵容器の圧力入口は圧力源に接続される。圧力源は流体貯蔵容器に正圧及び負圧の両方を加えることができる。加えて、圧力入口は、ガスは通過させるが、液体が圧力入口を流れることは妨げる半透膜などのフィルタを含む。
【0042】
ステップ606において、圧力源は圧力入口に負圧を加える。圧力入口に負圧を加えることによって、流体貯蔵容器のチャンバ内のガスは膜を通ってチャンバを出る。加えて、灌流流体溶液内の気泡はチャンバを出る。換言すると、灌流流体溶液は脱気される。本明細書中に記載される原理の使用によって、灌流流体は患者の眼にこの注入される前に脱気される。このことは、外科的処置中、術者の視認性の向上を助けることができる。
【0043】
当業者であれば、本開示により包含される実施形態は上述の特定の例示的な実施形態に限定されないことを理解するであろう。この点に関し、例証的な実施形態を示し、記載してきたが、前述の開示において、広範な修正、変更、及び置換は考えられる。本開示の範囲から逸脱することなく前述のものに対してこのような変化を施してもよいと理解される。したがって、添付の特許請求の範囲は広く且つ本開示に合致する状態で解釈されることが適切である。
なお、本願発明には、以下の実施形態も含まれる。
[実施形態1]
正の流体圧力及び負の流体圧力の両方を生成することができる圧力源と、
流体灌流ラインと、
第1の流体貯蔵容器であって、
チャンバと、
前記流体灌流ラインと連通し、前記チャンバと前記流体灌流ラインとの間に流体連通を設ける流体流出ポートと、
前記圧力源と連通する圧力入口と、
前記圧力入口と前記チャンバとの間に配置されたフィルタと、
を含む、第1の流体貯蔵容器と、
前記圧力源に負圧及び正圧の両方を選択的に加えさせるように構成された制御システムと、
を含む、流体送達システム。
[実施形態2]
前記第1の流体貯蔵容器と連通する流体源を更に含む、実施形態1に記載の流体送達システム。
[実施形態3]
前記第1の流体貯蔵容器は前記流体源に接続可能な流体流入ポートを更に含む、実施形態2に記載の流体送達システム。
[実施形態4]
前記制御システムは、前記圧力源によって負圧を加える前に、前記第1の流体貯蔵容器に前記流体源から灌流流体を充填するように構成されている、実施形態3に記載の流体送達システム。
[実施形態5]
第2の流体貯蔵容器を更に含み、前記第2の流体貯蔵容器は、
チャンバと、
前記チャンバと前記流体灌流ラインとの間に流体連通を設けるために前記流体灌流ラインと接続可能な流体流出ポートと、
前記流体源に接続可能な流体流入ポートと、
前記圧力源に接続可能な圧力入口と、
前記第2の流体貯蔵容器の前記圧力入口と前記第2の流体貯蔵容器の前記チャンバとの間に配置されたフィルタと、
を含む、実施形態2に記載の流体送達システム。
[実施形態6]
前記制御システムは、ある時間の間、前記第1の流体貯蔵容器に正圧を加えるように構成されており、前記時間の間、順次、前記第2の流体貯蔵容器に灌流流体を充填し、前記第2の流体貯蔵容器に負圧を加える、実施形態5に記載の流体送達システム。
[実施形態7]
前記フィルタは半透膜を含む、実施形態1に記載の流体送達システム。
[実施形態8]
前記第1の流体貯蔵容器は、手術用コンソールに挿入可能なカセット内にある、実施形態1に記載の流体送達システム。
[実施形態9]
前記圧力源の一部分を形成しているベンチュリポンプと、
前記ベンチュリポンプと流体連通しているマフラーと、
を更に含む、実施形態1に記載の流体送達システム。
[実施形態10]
前記第1の流体貯蔵容器はバッグを含む、実施形態1に記載の流体送達システム。
[実施形態11]
前記圧力入口は前記バッグの上部に配置されている、実施形態10に記載の流体送達システム。
[実施形態12]
前記圧力入口は前記バッグの底部に配置されている、実施形態10に記載の流体送達システム。
[実施形態13]
前記圧力入口から前記圧力入口上方の前記バッグの一部分まで延びる浸漬管を更に含む、実施形態12に記載の流体送達システム。
[実施形態14]
流体送達システムの圧力源を第1の流体貯蔵容器の圧力入口に接続するステップであって、前記圧力入口は、ガスを通過させるフィルタを含む、ステップと、
前記流体送達システムの流体灌流ラインを前記第1の流体貯蔵容器の流体流出ポートに接続するステップと、
前記第1の流体貯蔵容器に負圧を加えて前記流体貯蔵容器内の液体を脱気するステップと、
を含む、方法。
[実施形態15]
前記圧力源によって、前記第1の流体貯蔵容器に正圧を加えて流体を前記第1の流体貯蔵容器から前記流体流出ポートを通じて押し出し、前記流体灌流ラインに押し入れるステップを更に含む、実施形態14に記載の方法。
[実施形態16]
前記第1の流体貯蔵容器の流体流入ポートを前記流体送達システムの流体源に接続するステップと、
前記負圧を加える前に、前記第1の流体貯蔵容器に前記流体源から灌流流体を充填するステップと、
を更に含む、実施形態14に記載の方法。
[実施形態17]
前記第1の流体貯蔵容器に充填している間、及び前記第1の流体貯蔵容器内の前記流体を脱気している間の両方において、第2の流体貯蔵容器から流体を押し出すステップを更に含む、実施形態14に記載の方法。
[実施形態18]
正の流体圧力及び負の流体圧力の両方を生成することができる圧力源と、
流体灌流ラインと、
流体源と、
第1の流体貯蔵容器であって、
第1の流体貯蔵チャンバと、
前記流体灌流ラインに接続可能な第1の灌流流出ポートと、
前記流体源に接続可能な第1の流体流入ポートと、
前記圧力源に接続可能な第1の圧力入口であって、第1のフィルタを含む、第1の圧力入口と、
を含む、第1の流体貯蔵容器と、
第1の時間の間、前記第1の流体貯蔵チャンバに灌流流体を充填し、前記第1の時間に続く第2の時間の間、前記流体圧力源に、前記第1の流体貯蔵容器に負圧を加えさせるように構成されている制御システムと、
を含む、流体送達システム。
[実施形態19]
第2の流体貯蔵チャンバと、
前記流体灌流ラインに接続可能な第2の灌流流出ポートと、
前記流体源に接続可能な第2の流体流入ポートと、
前記圧力源に接続可能な第2の圧力入口であって、第2のフィルタを含む第2の圧力入口と、
を含む第2の流体貯蔵容器を更に含む、実施形態18に記載の流体送達システム。
[実施形態20]
前記制御システムは更に、前記第1の時間及び前記第2の時間の両方の間、前記第2の流体貯蔵容器に正圧を加えるように構成されている、実施形態19に記載の流体送達システム。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6