(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、蓄熱室を2つ有する蓄熱装置(ダブルパス蓄熱装置)の場合には、蓄熱室を一つしか有さない蓄熱装置(シングルパス蓄熱装置)の場合に比べ、熱交換可能な流路を長くすることができるため、排気ガスの排熱を効率的に利用することができる場合がある。蓄熱室を2つ有する蓄熱装置としては、
図7に示したような蓄熱装置が考えられる。この蓄熱装置50は、内部に蓄熱体51aが配置された第1の蓄熱室51と、第1の蓄熱室51と隣接し、内部に蓄熱体52aが配置された第2の蓄熱室52と、を有する。ここで、第1の蓄熱室51にはガラス溶解窯と接続するための接続ポート53が上方に設けられ、第2の蓄熱室52には外部雰囲気と接続するための接続ダクト54が上方に設けられている。また、第1の蓄熱室51と第2の蓄熱室52とは、それぞれ互いに下方で流通路55により接続されている。
【0008】
この蓄熱装置50は、ガラス溶解窯内で生じた排気ガスを排出する際には、ガラス溶解窯と接続された接続ポート53から排気ガスを第1の蓄熱室51に導入し、次いで、導入した排気ガスを、流通路55を介して第2の蓄熱室52に移送する。移送された排気ガスは第2の蓄熱室52内を流れて、そのまま接続ダクト54から外部雰囲気に排出される。
【0009】
このとき、排気ガスはガラス溶解窯内で高温に加熱されており、この高温の排気ガスを蓄熱体51a,52aを流通させることで、熱移動により蓄熱体に蓄熱する。ところで、排気ガスは高温であるため蓄熱室内において浮力により上昇しやすい。したがって、第1の蓄熱室51では、上方から排気ガスが溜まっていき、流通路55の開口上端部よりも低い位置まで溜まったときに第2の蓄熱室52への移送が始まる。
【0010】
第2の蓄熱室52へ導入された排気ガスは、第1の蓄熱体51aとの接触により温度が低下しているが、依然として高温であるため、第2の蓄熱室52へ移動してすぐに上昇し、第2の蓄熱室52の天井付近に到達するとそのまま接続ダクト54を介して排出される。
【0011】
このとき、排気ガスは、第1の蓄熱室51から第2の蓄熱室52に移動した瞬間に上方への移動が開始されるため、第2の蓄熱室52の中でも、第1の蓄熱室51寄りを上方に流通する。したがって、その反対側の、流通口55から離れた接続ダクト54寄りにはあまり流通しない。
【0012】
一方、燃焼用空気をガラス溶解窯内へ導入する場合、外部雰囲気から接続ダクト54を介して燃焼用空気を第2の蓄熱室52に取込む。このとき、上記とは逆に、燃焼用空気は導入当初は常温程度であり、第2の蓄熱室52に取り込まれたとき、すぐに下降する傾向がある。したがって、第2の蓄熱室の中でも、接続ダクト54寄りを燃焼用空気が下方に流通するが、第1の蓄熱室51寄りにはあまり流通しない。
【0013】
そのため第2の蓄熱室52において、専ら排気ガスが流通する部分と、専ら燃焼用空気が流通する部分と、が分かれてしまう偏流が生じていた。この偏流により、蓄熱した熱を効率的に利用できず、エネルギー効率が思ったほど向上しないという問題がある。
【0014】
また、上記のように排気ガスと燃焼用空気の流通路がずれてしまっている場合、第2の蓄熱室52において、排気ガスが流通する第1の蓄熱室51側の温度が高くなりやすく、燃焼用空気が流通する接続ダクト54側の温度が低くなりやすい。この場合、蓄熱体52aにおいて温度分布が生じてしまう。
【0015】
このとき、880℃以下となる部分では、排気ガス中に含まれるナトリウムイオン及び硫酸イオンから硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)が析出し、蓄熱部材に付着し析出することで、チェッカーブリックのガスの流路を閉塞してしまうことがある。また、析出した硫酸ナトリウムは、蓄熱体52aの脆化を誘発する。よって、硫酸ナトリウムの蓄熱体51a及び52aでの析出範囲を小さくすることが炉材構成上好ましい。しかし、880℃以上の高温域が蓄熱室51側の蓄熱体52aに広範囲に発生するので、この硫酸ナトリウムの析出域が広範囲にわたってしまう。
【0016】
このように蓄熱体が脆化(蓄熱部材が脆化)すると、その部分の蓄熱能が低下するのに加え、脆化した蓄熱部材がその積層構造を維持できなくなり崩れる等により、蓄熱体そのものを所定の配置位置に保持できず、蓄熱作用そのものを奏し得なくなる場合もある。
【0017】
そこで、本発明は、これらの問題を解決すべくなされたものであり、排気ガスによる蓄熱体への蓄熱及び蓄熱体による燃焼用空気の加熱を効率的に行うことができ、かつ、蓄熱体の劣化を防止し使用寿命の長い蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の蓄熱装置は、ガラス溶解窯と接続するための接続ポートが上方に設けられ、内部に蓄熱体が配置された第1の蓄熱室と、前記第1の蓄熱室と隣接し、外部雰囲気と接続するための接続ダクトが上方に設けられ、内部に蓄熱体が配置された第2の蓄熱室と、前記第1の蓄熱室と前記第2の蓄熱室とを、互いに下方で接続する流通路と、を有するガラス溶解窯用の蓄熱装置であって、前記第1の蓄熱室の平断面における断面積(S1)と前記第2の蓄熱室の平断面における断面積(S2)との比(S2/S1)が、0.2〜0.62であることを特徴とする。
【0019】
本発明のガラス溶解装置は、ガラス溶解窯と、前記ガラス溶解窯に接続され、燃焼用空気と排気ガスとを交互に流通可能にする一対の、本発明の蓄熱装置と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明のガラス物品の製造方法は、本発明のガラス溶解装置を用い、前記一対の蓄熱装置により前記燃焼用空気と前記排気ガスとを交互に流通させながら、前記ガラス溶解窯内でガラス原料を溶解し、溶解したガラス原料を冷却により固化させてガラス物品とする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の蓄熱装置によれば、排気ガスによる蓄熱体への蓄熱及び蓄熱体による燃焼用空気の加熱を効率的に行うことができ、かつ、蓄熱体の劣化を抑制することにより蓄熱装置自体の使用寿命を向上させることができる。
【0022】
本発明のガラス溶解装置及びガラス物品の製造方法によれば、上記蓄熱装置を用いているため、上記蓄熱及び加熱を効率的に行うことができ、ガラス溶解及びガラス物品製造における使用エネルギーをより低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
<蓄熱装置>
本発明に係る蓄熱装置は、従来用いられている蓄熱装置と同様に、ガラス溶解窯と接続して用いられ、燃焼用空気及び排気ガスを交互に流通可能としたものである。この蓄熱装置は、ガラス溶解窯から外部雰囲気へ排気ガスを流通させる際、高温の排気ガスの熱を蓄熱体に蓄熱し、次いで、外部雰囲気からガラス溶解窯へ燃焼用空気を流通させる際、蓄熱した熱により燃焼用空気を加熱できるようになっている。
【0025】
この排気ガスの流通と燃焼用空気の流通を交互に行うことで、蓄熱装置内部に設けられた蓄熱体により、蓄熱及び放熱を繰り返し行い、熱エネルギーを効率的に利用できる。これによって、ガラス溶解窯内での燃焼操作を低コストで効率的に行うことができる。
【0026】
本発明の一実施形態である蓄熱装置の概略構成を
図1に示した。この
図1に示した蓄熱装置10は、第1の蓄熱室11と、第2の蓄熱室12と、第1の蓄熱室11に設けられたガラス溶解窯と接続するための接続ポート13と、第2の蓄熱室12に設けられた外部雰囲気と接続するための接続ダクト14と、第1の蓄熱室11と第2の蓄熱室12とを接続する流通路15と、を有して構成されている。以下、本発明の一実施形態を構成する各要素について詳細に説明する。
【0027】
第1の蓄熱室11は、内部に蓄熱体11aが配置されており、その内部を流通する気体が該蓄熱体11aと接触するように区画された空間である。すなわち、第1の蓄熱室11は、上記したように燃焼用空気と排気ガスを流通させるように設けられ、その内部空間が流通路となっており、この第1の蓄熱室11を通過する燃焼用空気及び排気ガスは、第1の蓄熱室11を通過する際、蓄熱体11aと接触し熱交換が可能となっている。
【0028】
したがって、蓄熱体11aは、第1の蓄熱室11内を流通する気体の流通方向に対して垂直方向に横断的に設けられ、流通する気体の大部分が蓄熱体11aと接触するようにして熱交換を効率的に行えるようになっている。
【0029】
また、この第1の蓄熱室11には、ガラス溶解窯に接続するための接続口として接続ポート13が設けられている。接続ポート13は、第1の蓄熱室11とガラス溶解窯の内部とを接続するもので、ガラス溶解窯から第1の蓄熱室11内への排気ガスの移動、第1の蓄熱室11内からガラス溶解窯への加熱された燃焼用空気の移動、を可能とする開口である。
【0030】
この接続ポート13は、第1の蓄熱室の上方に設けられる。ここで上方とは、第1の蓄熱室11において、例えば、第1の蓄熱室11の内部に配置された蓄熱体11aよりも高い位置であることを意味する。
さらに、接続ポート13の配置位置は、流通させる気体が第1の蓄熱室11の内部に滞留しないように第1の蓄熱室11の天井に近い位置又は天井が好ましい。
【0031】
第2の蓄熱室12は、内部に蓄熱体12aが配置されており、その内部を流通する気体が該蓄熱体12aと接触するように区画された空間である。すなわち、第2の蓄熱室12は、上記したように燃焼用空気と排気ガスを流通させるように設けられ、その内部空間が流通路となっており、この第2の蓄熱室12を通過する燃焼用空気及び排気ガスは、第1の蓄熱室12を通過する際、蓄熱体12aと接触し熱交換が可能となっている。
【0032】
したがって、蓄熱体12aは、第2の蓄熱室12内を流通する気体の流通方向に対して垂直方向に横断的に設けられ、流通する気体の大部分が蓄熱体12aと接触するようにして熱交換を効率的に行えるようになっている。
【0033】
また、この第2の蓄熱室12には、外部雰囲気と接続するための接続口として接続ダクト14が設けられている。接続ダクト14は、第2の蓄熱室12と外部雰囲気とを接続するもので、外部雰囲気から第2の蓄熱室12内への燃焼用空気の移動、第2の蓄熱室12内から外部雰囲気への排気ガスの移動、を可能とする開口である。
【0034】
この接続ダクト14は、第2の蓄熱室12の上方に設けられる。ここで上方とは、第2の蓄熱室12において、例えば、第2の蓄熱室12の内部に配置された蓄熱体12aよりも高い位置であればよい。さらに、接続ダクト14の配置位置は、流通させる気体が第2の蓄熱室12の内部に滞留しないように第2の蓄熱室12の側壁の天井に近い位置が好ましく、天井に設けてもよい。天井に設ける場合は、鉛直方向に流路が形成されるように煙突状に設ければよい。
【0035】
上記した蓄熱体11a,12aは、ガラス溶解窯の蓄熱装置に用いられる従来公知の蓄熱体であればよく、特に限定されるものではない。この蓄熱体11a,12aは、一般に、蓄熱用レンガ(チェッカーブリック)等の蓄熱部材を積層して形成されている。その積層にあたっては、内部を気体が流通可能なように(蓄熱効率を高めるように)蓄熱用レンガ同士の間隔を調整して積み上げる。このとき、典型的には、格子状に配列されるように蓄熱用レンガを重ねて並べ、その格子状の配列をさらに複数組積層すればよい。このとき、一般には段数によって向きを交互に重ねており、奇数段と偶数段とで、その配置位置が異なっている。このように積層した蓄熱体は、正面(側面)及び平面から見たときにいずれも格子状に積み重ねて蓄熱体が形成されている。しかしながら、積み重ねる手法は蓄熱機能を発揮できるものであれば特に限定されるものではない。
【0036】
ここで用いられる蓄熱用レンガとしては、高温かつアルカリ耐性を有するものが用いられ、塩基性の結合レンガ、アルミナまたはアルミナ・ジルコニア・シリカ(AZS)質の電鋳レンガ等が挙げられる。電鋳レンガは、蓄熱室において全体的にどの部位でも使用可能であるが、結合レンガの場合には、蓄熱室における使用部位に応じて以下のように材質を選択することが好ましい。
【0037】
第1の蓄熱室11に形成される蓄熱体11aの上段域においては、特に高温でガラス原料粉末が飛散してくることから、高純度のアルミナまたはマグネシア質の結合レンガを使用するのが好ましい。
【0038】
蓄熱体11aの中段域においては、ボウ晶の析出が原因となる劣化に強いスピネルレンガ、またはマグネシアレンガ等を使用するのが好ましい。蓄熱体11aの下段域においては、上段、中段の蓄熱体の重量を支える強度が必要なため、緻密で低気孔率の粘土質レンガまたはマグネシアレンガを使用するのが好ましい。
【0039】
また、第2の蓄熱室12に形成される蓄熱体12aの下段域においては、上記第1の蓄熱室における蓄熱体11aの下段域と同様に、上段、中段の蓄熱体の重量を支える強度が必要なため、緻密で低気孔率な粘土質レンガまたはマグネシアレンガを使用するのが好ましい。
【0040】
第2の蓄熱室12の中段〜上段域においては、通常の粘土質レンガまたは低気孔率の粘土質レンガを使用するのが好ましい。
【0041】
また、第1の蓄熱室に形成される蓄熱体11aは、蓄熱用レンガが格子状になるように積層して得られるものが好ましい。このとき、厚みが30〜60mmのレンガが積層され、ガス流路となる各開口部分が140〜160mm角となるように区切られることが好ましい。一般的にはロの字型や十字型等のレンガが使用される。
【0042】
第2の蓄熱室に形成される蓄熱体12aは、第1の蓄熱室で用いられる蓄熱用レンガとは形状が異なるが、平面的に見たときに、ガラス流路とレンガ部分が存在することは同等であり、ガス流路となる開口部が140〜190mmであって、レンガ厚みが30〜90mm(好ましくは、60〜90mm)、となるように積層して得られるものが好ましい。
なお、第2の蓄熱室の蓄熱体12aは、さらに、後述する
図4Aや
図4Bで説明する積層配置とすることもできる。
【0043】
また、第1の蓄熱室11と第2の蓄熱室12とは、互いに下方に設けられた流通路15により接続されている。この流通路15は、第1の蓄熱室11から第2の蓄熱室12へ、および第2の蓄熱室12から第1の蓄熱室11へ、気体の流通を可能とする開口である。
【0044】
この流通路15は、第1の蓄熱室11及び第2の蓄熱室12のいずれにおいても下方に設けられている。ここで、下方とは、第1の蓄熱室11及び第2の蓄熱室12において、例えば、それぞれの蓄熱室の内部に配置された蓄熱体11a,12aよりも低い位置であればよい。さらに、流通路15の配置位置は、流通させる気体が第1の蓄熱室11及び第2の蓄熱室12内部に滞留しないようにそれぞれの蓄熱室の底面に近い位置が好ましい。ここで、流通路15は、第1の蓄熱室11と第2の蓄熱室12との間で気体の流通を円滑に行うことができる大きさであればよく、特に限定されるものではない。
【0045】
上記したように、接続ポート13及び接続ダクト14を上方に、流通路15を下方に設けている。そのため、例えば、排気ガスは、ガラス溶解窯から第1の蓄熱室11の上方に導入され、第1の蓄熱室11内部を蓄熱体11aと接触しながら下方に移動し流通路15を通って第2の蓄熱室12に移動する。さらに、第2の蓄熱室12に移動した排気ガスは、第2の蓄熱室12内部を蓄熱体12aと接触しながら上方に移動し接続ダクト14から外部雰囲気に排出される。
【0046】
そして、この蓄熱装置10は、上記した第1の蓄熱室11と第2の蓄熱室12とを所定の関係とする点に特徴を有する。
図2は、
図1に示した蓄熱装置10のA−A断面図を示しており、この
図2において、第1の蓄熱室11の平断面における面積をS1、第2の蓄熱室12の平断面の面積をS2としている。ここで、本発明の一実施形態においては、これらの面積S1に対する面積S2との比(S2/S1)が0.2〜0.62であり、0.3〜0.58が好ましく、0.3〜0.52がさらに好ましい。なお、
図2において、面積S1は斜線、面積S2は斜め格子、のハッチングパターンで表している。
【0047】
この比(S2/S1)を0.62以下とすることで、従来課題としていた偏流による熱交換の効率低下を抑制し、熱エネルギーの利用効率を向上させることができる。すなわち、第2の蓄熱室12における排気ガスの流路と燃焼用空気の流路とを重ねることで、蓄熱による熱利用の効率を向上させることができる。さらに、これにより、蓄熱体の脆化を抑制し、装置寿命を長くすることができる。
【0048】
また、上記比(S2/S1)を0.2以上とすることで、第1の蓄熱室11から第2の蓄熱室12へ、また、第2の蓄熱室12から第1の蓄熱室11へ、と流通可能な気体の流量の変化量を良好な範囲に抑制でき、気体の流速が速くなりすぎることによる、蓄熱体の損傷を防止したり、摩耗を低減したりすることが可能になり、蓄熱装置内の気体の流通を円滑なものとできる。
【0049】
なお、一般に、蓄熱体11a,12aは、第1の蓄熱室11及び第2の蓄熱室12にそれぞれ平断面(流路の横断面)の全領域に配置されるように形成されるため、上記面積の比はそのまま蓄熱体11a,12aが形成された面積と同じ関係となる。
【0050】
さらに、
図2に示したように、第1の蓄熱室の平断面における縦(奥行)をL1、横(幅)をW1、第2の蓄熱室の平断面における縦(奥行)をL2、横(幅)をW2、としたとき、第2の蓄熱室の縦横比(L2/W2)は0.3〜0.7が好ましい。このような縦横比とすることで、第2の蓄熱室14を流通する燃焼用空気及び排気ガスが円滑に流通でき、上記した排気ガスによる蓄熱、燃焼用空気の加熱をそれぞれより効率的にできる。
【0051】
また、流通路15の開口面積(S3)は、上記した第1の蓄熱室11の平断面の面積(S1)に対する比(S3/S1)が0.1〜0.4であることが好ましい。この比(S3/S1)を0.4以下とすることで、排気ガスが第1の蓄熱室11から第2の蓄熱室12に移動する際、流通路15を通過する流速を高めることができ、排気ガスを流通路15から離れた蓄熱体12a(接続ダクト14側の蓄熱体12a)まで届けることができる。また、比(S3/S1)を0.1以上とすることで、排気ガスの流通路15の通過における流速が高くなりすぎず、蓄熱体12aの全体に排気ガスを接触させることができる。すなわち、排気ガスが主に第1の蓄熱室11寄りの蓄熱体12aに接触するような偏流を抑制できる。
【0052】
また、この流通路15の開口上端部15aは、第2の蓄熱室12に配置された蓄熱体12aの下端よりも鉛直方向に50〜100cm低い位置に設けられることが好ましく、80〜100cm低い位置がより好ましい。
また、この流通路15の開口上端部15aは、第2の蓄熱室12の床面から、鉛直方向に50〜150cm上方に設けられることが好ましく、80〜120cm上方に設けられることがより好ましい。
【0053】
また、第2の蓄熱室12の床面から蓄熱体12aの下端との距離をH1としたとき(
図1参照)、流通路15の開口上端部15aは、第2の蓄熱室12の床面から、H1の2/3より低い位置に設けられることが好ましく、1/2より低い位置に設けられることがより好ましい。
これにより、第1の蓄熱室11から第2の蓄熱室12に移動した排気ガスが、蓄熱体12aに接触するまでの時間を若干遅くでき、これにより第2の蓄熱室12に流入した排気ガスが拡散されるため、これも偏流抑制の一つの方法となる。
【0054】
また、第1の蓄熱室11の床面と第2の蓄熱室12の床面は段差が設けられてもよい。このとき、第2の蓄熱室12の床面が、第1の蓄熱室11の床面よりも15〜50cm高いことが好ましく、20〜30cm高いことがさらに好ましい。なお、床面に段差がある場合、流通路15の開口面積(S3)は、第1の蓄熱室11の床面と第2の蓄熱室12の床面のうち高い方の床面を流通路の下面として開口部が定まる。
【0055】
<ガラス溶解装置>
本発明の一実施形態のガラス溶解装置は、ガラス溶解窯と、該ガラス溶解窯と接続された一対の上記蓄熱装置と、を有する。ここで用いるガラス溶解窯は、従来公知のガラス溶解窯が用いられ特に限定されるものではない。
【0056】
また、ここで用いる蓄熱装置は、本発明の蓄熱装置であり、例えば、上記説明した蓄熱装置が挙げられる。この蓄熱装置は、燃焼用空気と排気ガスとを交互に流通可能するものであり、さらに、ガラス溶解窯に対して一対となるように設けられる。この一対に設けられた蓄熱装置により、一方に燃焼用空気を流通させている場合、他方には排気ガスを流通させるようにしてガラス溶解窯内の雰囲気を常に燃焼可能な状態とできる。これによりガラス溶解窯内において、高温状態を安定して維持できるようにしている。
【0057】
<ガラス物品の製造方法>
本発明のガラス物品の製造方法は、上記ガラス溶解装置を用いてガラス物品を製造することを特徴とする。
【0058】
このガラス物品の製造方法においては、従来公知の方法と同様の操作により、ガラス溶解窯内でガラス原料を溶解し、溶解したガラス原料を冷却により固化させてガラス物品とする。このとき、ガラス溶解装置として上記ガラス溶解装置を用いる点が特徴である。
【0059】
すなわち、まず、ガラス溶解装置のガラス溶解窯内に、燃焼用空気と燃料とを導入し、燃焼させてガラス溶解窯内を所望の温度に加熱する。ガラス溶解窯内を所定の温度に維持したまま、公知の方法によりガラス原料を十分に溶解し、溶解したガラス原料は、ガラス溶解窯から移送して、冷却して固化させ、所望の形状のガラス物品を製造する。
【0060】
このガラス物品の製造において、ガラス溶解窯内の温度をガラス原料が溶解状態を保つように高温に維持するのに、上記一対の蓄熱装置を使用する。すなわち、ガラス溶解窯内での燃焼により生じた排気ガスを、一方の蓄熱装置に流通させて外部雰囲気に排出するのと同時に、他方の蓄熱装置には外部雰囲気から燃焼用空気を流通させ、該燃焼用空気をガラス溶解窯内へ導入する。ここで導入された燃焼用空気は燃料と混合され、ガラス溶解窯内で燃焼され、所定の高温状態を維持できるようになっている。
【0061】
この流れを所定時間行った後、今度は、各蓄熱装置において流通させる気体及び気体の流通方向を変更する。すなわち、排気ガスを流通させていた蓄熱装置においては燃焼用ガスを、燃焼用ガスを流通させていた蓄熱装置においては排気ガスを、それぞれ流通させるようにする。このように流通させる気体及び気体の流通方向を、所定のタイミングで交互に変更する操作を繰り返し行う。これによって、ガラス溶解窯の内部は、常に所望の高温状態を維持できる。
【0062】
この操作を行うことで、高温の排気ガスと蓄熱体が接触すると、熱移動により蓄熱体に蓄熱され、次いで、この蓄熱された蓄熱体に燃焼用空気を接触させると、熱移動により常温である燃焼用空気が加熱される。この熱移動が、第1の蓄熱室11及び第2の蓄熱室12で行われる。
【0063】
このように、排気ガスの排熱を、蓄熱体11a,12aを介して燃焼用空気の加熱に利用することで、熱エネルギーを有効活用して、ガラス物品の製造において省エネルギー化、低コスト化、を図ることができる。
【0064】
(蓄熱装置の変形例)
また、上記した蓄熱装置は、次に説明するような構成とすることもできる。
接続ダクト14には、
図3A及び3Bに示したように、燃焼用空気の流通方向を変更できるダンパー21を設けてもよい。このダンパー21は、第2の蓄熱室12と接続ダクト14の接続口付近に設けられる。このダンパー21は、燃焼用空気を接続ダクト14から第2の蓄熱室12に取り込む際に、燃焼用空気の流通方向(取込み方向)を変えられるようにできればよい。
【0065】
例えば、
図3Aに示したダンパー21は両端部が上下動可能なように中央部が固定された板状の部材であり、この板状部材の向きによって第2の蓄熱室内に送り込まれる燃焼用空気の方向が変化する。燃焼用空気が接続ダクト14から下斜め方向に取り込まれるときは、第2の蓄熱室12の内部に配置された蓄熱体12aのうち接続ダクト14の接続口寄りの蓄熱体と接触して下方に流通し、燃焼用空気が接続ダクト14から上斜め方向に取り込まれるときは、第2の蓄熱室12の内部に配置された蓄熱体12aのうち接続ダクト14の接続口から離れた蓄熱体と接触して下方に流通するようになる。
【0066】
このように燃焼用空気を第2の蓄熱室12に取り込む際に流通方向を変えることで、燃焼用空気の流路を偏在させないようにでき、蓄熱体の温度も均一なものとできる。
【0067】
また、
図3Bには、接続ダクト14を第2の蓄熱室12の天井に設けた例を示した。このように接続ダクト14を天井に設けると、燃焼用空気の取り込む平面位置を任意に設定でき好ましい。例えば、排気ガスの上昇流の強弱に応じて設けることもできる。また、
図3Bでは
図3Aと同様に、ダンパー21を設けているが、このときダンパー21は両端部が水平方向に可動できるように中央部が固定された板状の部材であり、この板状部材の向きによって第2の蓄熱室12内に送り込まれる燃焼用空気の方向が変化する。
【0068】
したがって、燃焼用空気が接続ダクト14から第1の蓄熱室11寄りに取り込まれるときは、第2の蓄熱室12の内部に配置された蓄熱体12aのうち第1の蓄熱室11寄りの蓄熱体と接触しながら下方に流通し、燃焼用空気が接続ダクト14の第1の蓄熱室11から離れた側に取り込まれるときは、第2の蓄熱室12の内部に配置された蓄熱体のうち第1の蓄熱室11から離れた側の蓄熱体と接触しながら下方に流通するようになる。
【0069】
このように燃焼用空気を第2の蓄熱室12に取り込む際に流通方向を変えることで、燃焼用空気の流路を偏在させることなく、蓄熱体の温度も均一なものとできる。
【0070】
次に、蓄熱体12aの蓄熱部材の積層構造について説明する。
【0071】
上記した蓄熱体12aは、高温ガスを流通させることで蓄熱し、次いで低温ガスを流通させることで放熱できるように積層されるものであり、一般的には側面から見たときに格子状に積み重ねられる(
図4A)。この
図4Aでは、蓄熱部材として直方体の耐熱レンガを使用し、この蓄熱部材を13段積み重ねた場合の、一構成例を概略的に示している。この
図4Aでは、奇数段の蓄熱部材を121a、偶数段の蓄熱部材を121bとして示したが、蓄熱部材121aと蓄熱部材121bは同一の蓄熱部材である。
【0072】
また、蓄熱部材の他の積層構造としては、
図4Bに示したように、蓄熱部材の積層位置が互い違いとなるような千鳥配置として積層してもよい。なお、千鳥配置は、奇数段、偶数段を分けて考える。すなわち、ある奇数段における積層位置が、隣の奇数段(段数で言えば±2段)の蓄熱部材の積層位置とは、平面視したときに重ならないように互い違いに積層されている状態である。
【0073】
千鳥配置とする場合、奇数段における蓄熱部材の配置位置及び偶数段における蓄熱部材の配置位置の少なくとも一方を千鳥配置とすればよい。このとき、蓄熱体12aの外周部分においては、積層構造の強度等を考慮し、外表面の配置位置は揃うようにすることが好ましい。
【0074】
この千鳥配置のように、平面視における蓄熱部材の配置位置をずらすことで、流通する気体が蓄熱体の内部を流通する流路長を長くすることができ、蓄熱及び放熱の熱移動を効率的に行うことができる。例えば、
図4A及び
図4Bに示した蓄熱体12aにおける排気ガスの主な流れの一例を、それぞれ破線で示した。
図4Aでは、流路fl1がそのまま鉛直方向上方に直線的に形成されるのに対し、
図4Bでは、流路fl2が上段の蓄熱部材により妨げられて直線状に形成できないため、例えば、波状に形成される。したがって、排気ガスの蓄熱体12a内の流路を長くでき、それだけ蓄熱の機会を増やすことができ熱移動の効率を向上させることができる。
【0075】
なお、
図4Bでは簡略的に流路fl2を示しており、実際にはきれいに波状になるわけではない。すなわち、蓄熱部材との衝突で分岐し、さらにその上段の蓄熱部材との衝突で分岐し、というのを繰り返すと同時に、他の流路の分岐流と合流する等もあるため、実際の流れは複雑なものとなる。
【0076】
また、このような互い違いとなる配置とする部分は蓄熱体の一部分でもよいが、設ける場合には、流路長を長くできるように鉛直方向に配置パターンが繰り返されるようにして設けることが好ましい。
【0077】
上記では互い違いとなる配置を説明したが、流路長を長くできるものであればこれに限られるものではない。すなわち、この配置は、奇数段又は偶数段において、蓄熱部材が互い違いに積層されている構造であり、これは、言い換えれば、起点となる段における蓄熱部材の配置に対し、1つ上の段(奇数偶数合わせると、実際には2つ上の段)の配置が、起点となる段における蓄熱部材間のピッチの真ん中(平面視したときの配置位置)であり、2つ上の段(奇数偶数合わせると、実際には4つ上の段)の配置が、起点となる段における蓄熱部材と同一(平面視した時の配置位置)となるものである。さらに、3つ上の段(奇数偶数合わせると、実際には6つ上の段)の配置が、1つ上の段と同一(平面視した時の配置位置)となるものであり、このような配置が以降繰り返される。すなわち、これは2段の周期で繰り返し積層されている積層構造と言える。
【0078】
そして、本実施形態においては、さらに、2段の周期で繰り返し積層する以外にも、3段以上の周期、例えば、3〜20段の周期として繰り返し構造を設けてもよい。このとき、周期の形成の方法は、周期を階段状に設けてもよいし、周期を波状に設けてもよい。ここで、例えば、3段の周期で階段状に設ける場合を例に考えると、奇数段の1段目、奇数段の2段目、奇数段の3段目、はそれぞれ平面視したときに重ならない配置であり、奇数段の4段目は1段目と同一、5段目は2段目と同一、6段目は3段目と同一、というように階段状に設ける例が挙げられる。
【0079】
また、上記3段の周期で階段状に設ける構造と類似するものとしては、1〜3段は上記と同一であるが、4段目を2段目と同一とし、5段目を1段目と同一とし、この5段目以降を1〜4段目を繰り返す波状に設ける例が挙げられる。この場合、繰り返し単位は4段となる。
【0080】
また、蓄熱体を構成する蓄熱部材は、一般的には直方体の蓄熱部材を用いればよいが、例えば、
図5A及び5Bに示したように、側面において上方の幅が狭く、下方の幅が広くなるような傾斜を有する蓄熱部材を用いてもよい。このような形状の蓄熱部材を用いると、蓄熱部材の清掃が容易となる。すなわち、上記した蓄熱装置を用いたガラス物品の製造を行うと、排気ガス中には燃焼に伴い生成した燃焼カスや、排気ガス中に含まれる化合物等がダストとして蓄熱部材に付着する。このような付着物は使用時間に応じて増大し、長時間の使用によっては気体の流通路が狭くなりすぎて、ついには閉塞し、蓄熱装置が十分に機能し得なくなる場合がある。
【0081】
このような事態を生じさせないために、上記のような側面に傾斜を有する蓄熱部材を使用すると、ダストの蓄熱部材自体への堆積を抑制することができる。また、このようなダストを定期的な清掃によりメンテナンスする場合もあり、この場合には、通常第2の蓄熱室の接続ダストや、途中に設けた開閉可能な清掃用の窓等から、清掃用具を差し入れてダストを第2の蓄熱室の底部に落下させる。この清掃において、通常は上方から下方に向けて差し入れるため、清掃のしやすさ等においても有利である。
【0082】
また、蓄熱部材としては、
図5C及び5Dに示したように、側断面において上方の幅が狭く、下方の幅が広くなるような傾斜を有する蓄熱部材であるが、部分的に傾斜のない蓄熱部材としてもよい。
図5C及び5Dの蓄熱部材は、幅方向において両端と中央部の傾斜がなく(高さ方向に奥行が同一)、その間の部分に傾斜を設けた特殊形状の蓄熱用レンガである。このような形状とすることで、ダストの堆積を防止しつつ、蓄熱部材の強度も確保できる。この蓄熱部材を使用する場合、傾斜のない部分を他の蓄熱部材と積層するのが好ましい。
【実施例】
【0083】
以下に、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって何ら限定されるものではない。
【0084】
(実施例1〜2)
ガラス溶解窯に、接続ポートを介して
図1に示した構成の第1の蓄熱室及び第2の蓄熱室を有する蓄熱装置を設けたガラス溶解装置を得た。これらの蓄熱装置における、各パラメータの関係について表1に示した。ここで、ガラス溶解窯は、表2に示した各例所定の生産量のものを用いた。
【0085】
(比較例1〜2)
表2に示した各例所定の生産量のガラス溶解窯に、接続ポートを介して
図7に示した構成の第1の蓄熱室及び第2の蓄熱室を有する蓄熱装置を設けたガラス溶解装置を得た。これらの蓄熱装置における、各パラメータの関係について表1に併せて示した。
【0086】
(比較例3〜4)
表2に示した各例所定の生産量のガラス溶解窯に、接続ポートを介して第1の蓄熱室を有する蓄熱装置(第2の蓄熱室を有しないシングルパスのもの)を設けたガラス溶解装置を得た。
【0087】
なお、第2の蓄熱室における接続ダクトの接続位置は実施例1〜2が上(天井)、比較例1〜2が横(上方)、である。
これら実施例1〜2及び比較例1〜4で得られたガラス溶解装置を用いて、ガラス原料を溶解してガラス物品を製造した。表1は実施例1〜2、比較例1〜2の蓄熱装置における、各パラメータの関係を示している。このとき、各例におけるガラス溶解窯の生産量と使用した燃料の関係から単位生産量当たりの燃料原単位を算出し、表2及び
図6にまとめて示した。
【0088】
表2及び
図6からわかるように、比較例1〜4のガラス溶解装置は、生産量が増え大型化するほど効率が向上し燃料原単位(y)を低減できる。比較例の燃料原単位は、一日当たりの生産量であるPull(T/Day)をx、ガラス1トンを溶かすのに必要な燃料である燃料原単位(GJ/T)をyとしたとき、以下の式(1)で近似することができる。
y=9.5038x
−0.16 ・・・(1)
【0089】
これに対して実施例1〜2のガラス溶解装置は、同一の生産量(x1)における燃料原単位が比較例よりも優れていることがわかる。このとき、比較例の近似線に対して実施例は、5%以上燃料原単位が低いといえる。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
以上の結果から、第1の蓄熱室と第2の蓄熱室との関係としてS2/S1を実施例のように0.62以下とすれば、比較例に比べて同一生産量(x1)における燃料原単位が向上する傾向にある。同様に、第2の蓄熱室の平断面における縦横比(L2/W2)を0.3〜0.7、第1の蓄熱室の断面積(S1)と流通路の開口面積(S3)との比(S3/S1)を0.1〜0.4、とすれば、比較例に比べて同一生産量(x1)における燃料原単位が向上する傾向にある。
このように本願発明の一態様の蓄熱装置を用いた場合、エネルギーの効率が低下しやすい生産量の比較的小さい生産設備においても、排気ガスによる蓄熱体への蓄熱及び蓄熱体による燃焼用空気の加熱を効率的に行うことを実現できる。すなわち、本実施態様における蓄熱装置は、熱交換の効率が向上し省エネルギーに有用であることがわかった。