特許第6962944号(P6962944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962944
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータの動作量検出装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/28 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   F15B15/28 H
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-1002(P2019-1002)
(22)【出願日】2019年1月8日
(65)【公開番号】特開2020-112166(P2020-112166A)
(43)【公開日】2020年7月27日
【審査請求日】2020年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健元
【審査官】 小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0167700(US,A1)
【文献】 特開2018−059549(JP,A)
【文献】 特開2002−061610(JP,A)
【文献】 特表2006−515409(JP,A)
【文献】 特開2001−082417(JP,A)
【文献】 特開昭49−068174(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/187934(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0096440(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0106381(US,A1)
【文献】 米国特許第6357132(US,B1)
【文献】 中国特許出願公開第103790894(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンにより内部が第1圧力作用室と第2圧力作用室とに区画された複動型シリンダを備え、前記第1圧力作用室または前記第2圧力作用室において、流体の流入および流出が行われることで前記ピストンの移動が行われる流体圧アクチュエータの、前記ピストンの位置を検出する流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、
前記第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値を検出する圧力検出器と、前記圧力検出器により検出された圧力値に基づき、前記ピストンの移動量を算出するピストン位置検出プログラムを備える制御部と、を備えること、
前記ピストン位置検出プログラムは、
前記圧力検出器により検出された前記第1圧力作用室または前記第2圧力作用室の圧力値の、時間経過に伴う圧力値の変動量を算出し、前記圧力値の変動量を、前記制御部が備える記憶部に予め記憶された所定の補正値に基づいて、前記ピストンの移動量に変換することで、前記ピストンの移動量を算出すること、
前記補正値は、前記複動型シリンダの径と前記ピストンのストロークにより定まること、
を特徴とする流体圧アクチュエータの動作量検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、
前記流体圧アクチュエータは、前記第1圧力作用室または前記第2圧力作用室に流入する流体の流量を調整することにより前記ピストンの移動速度を制御するメータイン制御が行われること、
前記ピストン位置検出プログラムは、前記第1圧力作用室と前記第2圧力作用室とのうち、流体が流入する側の圧力値に基づき、前記ピストンの移動量を算出すること、
を特徴とする流体圧アクチュエータの動作量検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、
前記流体圧アクチュエータは、前記第1圧力作用室または前記第2圧力作用室から流出する流体の流量を調整することにより前記ピストンの移動速度を制御するメータアウト制御が行われること、
前記ピストン位置検出プログラムは、前記第1圧力作用室と前記第2圧力作用室とのうち、流体が流出される側の圧力値に基づき、前記ピストンの移動量を算出すること、
を特徴とする流体圧アクチュエータの動作量検出装置。
【請求項4】
ピストンにより内部が第1圧力作用室と第2圧力作用室とに区画された複動型シリンダを備え、前記第1圧力作用室または前記第2圧力作用室において、流体の流入および流出が行われることで前記ピストンの移動が行われる流体圧アクチュエータの、前記ピストンの位置を検出する流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、
前記第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値を検出する圧力検出器と、前記圧力検出器により検出された圧力値に基づき、前記ピストンの移動量を算出するピストン位置検出プログラムを備える制御部と、を備えること、
前記ピストン位置検出プログラムは、
前記圧力検出器により検出された前記第1圧力作用室または前記第2圧力作用室の圧力値の、時間経過に伴う圧力値の変動量を算出し、前記圧力値の変動量を、前記制御部が備える記憶部に予め記憶された所定の補正値に基づいて、前記ピストンの移動量に変換することで、前記ピストンの移動量を算出すること、
前記補正値とは、前記複動型シリンダの径と前記ピストンのストロークおよび移動時間とにより定まる第1補正値と、前記ピストンの所定のストロークと前記複動型シリンダの径により定まる第2補正圧力値との比により定まる第2補正値と、を備えること、
前記第1補正値は、圧力値であり、前記ピストンの移動開始時点をゼロとし、前記ピストンの移動完了時点の第1補正圧力値まで、時間経過に比例して増大する値であること、
前記第1補正圧力値は、前記第2補正圧力値から、前記所定のストロークをもつ前記ピストンを、所定の移動時間で動作させた際の、第1圧力作用室または第2圧力作用室の、前記ピストンの移動開始時点の圧力値と前記ピストンの移動完了時点の圧力値との差分を減じた値であること、
前記ピストン位置検出プログラムは、
前記圧力検出器により検出された、前記第1圧力作用室または前記第2圧力作用室の圧力値に基づき、前記ピストンの移動開始時点の圧力値を基準として、時間経過に伴う圧力値の変動量を算出し、
対応する時間の、前記第1補正値と、前記圧力値の変動量と、の和を算出し、
算出した前記和に前記第2補正値を乗じることで、前記ピストンの移動量を算出すること、
を特徴とする流体圧アクチュエータの動作量検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、
前記流体圧アクチュエータは、前記第1圧力作用室に通じ、流体を流入または流出させる第1配管と、前記第2圧力作用室に通じ、流体を流入または流出させる第2配管と、を備え、
前記圧力検出器は、前記第1配管上と、前記第2配管上と、にそれぞれ配設されていること、
を特徴とする流体圧アクチュエータの動作量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンにより内部が第1圧力作用室と第2圧力作用室とに区画された複動型シリンダを備え、第1圧力作用室または第2圧力作用室において、流体の流入および流出が行われることでピストンの移動が行われる流体圧アクチュエータの、ピストンの位置を検出する流体圧アクチュエータの動作量検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品工場などで使用されるロボットアームやエアハンドの制御には、複動型シリンダを有する流体圧アクチュエータが用いられる。
複動型シリンダの内部は、ピストンにより、第1圧力作用室と第2圧力作用室とに区画され、第1圧力作用室と第2圧力作用室のそれぞれに、圧縮空気を給気または排気する配管の一端が接続されている。該配管のもう一端には切換弁を介して圧縮空気供給源が接続され、第1圧力作用室への給気と、第2圧力作用室への給気を切換弁によって切り換えることで、ピストンがシリンダ内を往復運動する。
【0003】
上記のような複動型シリンダにおいては、特許文献1に開示されるような磁歪センサにより、ピストンの位置を検出することが行われている。
例えば、ピストンに永久磁石を組み込み、さらに複動型シリンダのシリンダチューブ外周面に、軸心方向に沿って磁歪線を配設する。磁歪線は、電流パルスが与えられると軸方向全域に円周向の磁場が生じ、そこにピストンに組み込まれた永久磁石が近接すると、永久磁石の磁場と磁歪センサの円周方向の磁場とが合成された磁場が発生し、磁歪線の、当該合成された磁場が発生した部位には、ねじり歪が発生する。発生したねじり歪が、振動として磁歪線上を伝播するため、この伝播時間を計測することで、永久磁石の位置を検出することが可能となり、永久磁石が組み込まれているピストンの位置を検出することが可能となるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−329409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術には次のような問題があった。
上記の磁歪センサは、棒状の磁歪線を備えているため、例えばロボットハンドのような直線運動をしない流体圧アクチュエータに取り付けることが困難であるなど、磁歪センサの形状により流体圧アクチュエータの形状に制約がかかってしまい、例えば、食品工場などで使用されるロボットアームやエアハンド等の設備設計の自由度が損なわれていた。
また、磁歪線の長さを流体圧アクチュエータのピストンの動作ストロークに合わせた長さとしなければならないため、ストロークが異なる複数の流体圧アクチュエータを用いる場合には、それぞれのストロークに合わせた磁歪線を用意しなければならないため、製造コストの増大につながるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためのものであり、流体圧アクチュエータの形状に制約がかからず、設備設計の自由度を向上することができるとともに、安価な流体圧アクチュエータの動作量検出装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のアクチュエータの動作検出装置は、次のような構成を有している。
(1)ピストンにより内部が第1圧力作用室と第2圧力作用室とに区画された複動型シリンダを備え、第1圧力作用室または第2圧力作用室において、流体の流入および流出が行われることでピストンの移動が行われる流体圧アクチュエータの、ピストンの位置を検出する流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値を検出する圧力検出器と、圧力検出器により検出された圧力値に基づき、ピストンの移動量を算出するピストン位置検出プログラムを備える制御部と、を備えること、ピストン位置検出プログラムは、圧力検出器により検出された第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値の、時間経過に伴う圧力値の変動量を算出し、圧力値の変動量を、制御部が備える記憶部に予め記憶された所定の補正値に基づいて、ピストンの移動量に変換することで、ピストンの移動量を算出すること、補正値は、複動型シリンダの径とピストンのストロークにより定まること、を特徴とする。
【0008】
(2)(1)に記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、流体圧アクチュエータは、第1圧力作用室または第2圧力作用室に流入する流体の流量を調整することによりピストンの移動速度を制御するメータイン制御が行われること、ピストン位置検出プログラムは、第1圧力作用室と第2圧力作用室とのうち、流体が流入する側の圧力値に基づき、ピストンの移動量を算出すること、を特徴とする。
【0009】
(3)(1)に記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、流体圧アクチュエータは、第1圧力作用室または第2圧力作用室から流出する流体の流量を調整することによりピストンの移動速度を制御するメータアウト制御が行われること、ピストン位置検出プログラムは、第1圧力作用室と第2圧力作用室とのうち、流体が流出される側の圧力値に基づき、ピストンの移動量を算出すること、を特徴とする。
【0011】
(5)ピストンにより内部が第1圧力作用室と第2圧力作用室とに区画された複動型シリンダを備え、第1圧力作用室または第2圧力作用室において、流体の流入および流出が行われることでピストンの移動が行われる流体圧アクチュエータの、ピストンの位置を検出する流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値を検出する圧力検出器と、圧力検出器により検出された圧力値に基づき、ピストンの移動量を算出するピストン位置検出プログラムを備える制御部と、を備えること、ピストン位置検出プログラムは、圧力検出器により検出された第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値の、時間経過に伴う圧力値の変動量を算出し、圧力値の変動量を、制御部が備える記憶部に予め記憶された所定の補正値に基づいて、ピストンの移動量に変換することで、ピストンの移動量を算出すること、補正値とは、複動型シリンダの径とピストンのストロークおよび移動時間とにより定まる第1補正値と、ピストンの所定のストロークと複動型シリンダの径により定まる第2補正圧力値との比により定まる第2補正値と、を備えること、第1補正値は、圧力値であり、ピストンの移動開始時点をゼロとし、ピストンの移動完了時点の第1補正圧力値まで、時間経過に比例して増大する値であること、第1補正圧力値は、第2補正圧力値から、所定のストロークをもつピストンを、所定の移動時間で動作させた際の、第1圧力作用室または第2圧力作用室の、ピストンの移動開始時点の圧力値とピストンの移動完了時点の圧力値との差分を減じた値であること、ピストン位置検出プログラムは、圧力検出器により検出された、第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値に基づき、ピストンの移動開始時点の圧力値を基準として、時間経過に伴う圧力値の変動量を算出し、対応する時間の、第1補正値と、圧力値の変動量と、の和を算出し、算出した和に第2補正値を乗じることで、ピストンの移動量を算出すること、を特徴とする。
【0012】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、流体圧アクチュエータは、第1圧力作用室に通じ、流体を流入または流出させる第1配管と、第2圧力作用室に通じ、流体を流入または流出させる第2配管と、を備え、圧力検出器は、第1配管上と、第2配管上と、にそれぞれ配設されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアクチュエータの動作検出装置は、上記構成を有することにより次のような作用・効果を有する。
(1)ピストンにより内部が第1圧力作用室と第2圧力作用室とに区画された複動型シリンダを備え、第1圧力作用室または第2圧力作用室において、流体の流入および流出が行われることでピストンの移動が行われる流体圧アクチュエータの、ピストンの位置を検出する流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値を検出する圧力検出器と、圧力検出器により検出された圧力値に基づき、ピストンの移動量を算出するピストン位置検出プログラムを備える制御部と、を備えること、を特徴とするので、流体圧アクチュエータの形状に制約がかからず、設備設計の自由度を向上することができるとともに、安価な流体圧アクチュエータの動作量検出装置とすることができる。
【0014】
すなわち、制御部は、ピストン位置検出プログラムを実行することで、圧力検出器により検出した、第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値に基づいてピストン位置を算出することができるため、例えば磁歪センサを流体圧アクチュエータに取り付けるというように、ピストン位置を検出するための特別なセンサを用いる必要がない。センサを用いる必要がないため、センサの形状により、流体圧アクチュエータの形状に制約がかからず、例えば食品工場で使用されるロボットアームやエアハンド等の設備設計の自由度が向上する。
【0015】
また、圧力検出器は汎用性があり、ストロークが異なる複数の流体圧アクチュエータを用いる場合でも、磁歪センサのようにそれぞれの流体圧アクチュエータのストロークに合わせた複数の磁歪センサを用意しなければならないということはなく、製造コストが増大するおそれがない。
【0016】
(2,3)(1)に記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、流体圧アクチュエータは、第1圧力作用室または第2圧力作用室に流入する流体の流量を調整することによりピストンの移動速度を制御するメータイン制御が行われること、ピストン位置検出プログラムは、第1圧力作用室と第2圧力作用室とのうち、流体が流入する側の圧力値に基づき、ピストンの移動量を算出すること、または、流体圧アクチュエータは、第1圧力作用室または第2圧力作用室から流出する流体の流量を調整することによりピストンの移動速度を制御するメータアウト制御が行われること、ピストン位置検出プログラムは、第1圧力作用室と第2圧力作用室とのうち、流体が流出される側の圧力値に基づき、ピストンの移動量を算出すること、を特徴とするので、流体圧アクチュエータで、メータイン制御が行われる場合、または、メータアウト制御が行われる場合において、第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値に基づき、ピストンの位置を算出することができる。メータイン制御が行われる場合、または、メータアウト制御が行われる場合の双方において、ピストン位置の検出が可能であれば、メータイン制御と、メータアウト制御と、それぞれの特徴を考慮して、自由に使い分けることができるため、例えば、食品工場で使用されるロボットアームやエアハンド等の設備設計の自由度が向上する。
【0017】
ここで、ピストン位置を検出するためには、メータイン制御が行われる場合、メータアウト制御が行われる場合、ともに第1圧力作用室または第2圧力作用室のうち、流入または流出する流体の流量が制御される側の圧力値を検出することが必要である。その理由を以下に述べる。
メータイン制御の場合は、第1圧力作用室または第2圧力作用室に流入する流体の流量が調整されることで、第1圧力作用室と第2圧力作用室とのうち、流体が流入する側の圧力値が制御される。また、メータアウト制御の場合は、第1圧力作用室または第2圧力作用室から流出する流体の流量が調整されることで、第1圧力作用室と第2圧力作用室とのうち、流体が流出される側の圧力値が制御される。圧力値が制御されることによって、ピストンの移動速度が制御されるため、第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値のうち、制御される側の圧力値を検出し、ピストン位置を算出することで、精度よくピストンの位置を検出することが可能となるからである。
【0018】
(4,5)(1)乃至(3)いずれか1つに記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、ピストン位置検出プログラムは、圧力検出器により検出された第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値の、時間経過に伴う圧力値の変動量を算出し、圧力値の変動量を、制御部が備える記憶部に予め記憶された所定の補正値に基づいて、ピストンの移動量に変換することで、ピストンの移動量を算出すること、を特徴とし、補正値とは、複動型シリンダの径とピストンのストロークおよび移動時間とにより定まる第1補正値と、ピストンの所定のストロークと複動型シリンダの径により定まる第2補正圧力値との比により定まる第2補正値と、を備えること、第1補正値は、圧力値であり、ピストンの移動開始時点をゼロとし、ピストンの移動完了時点の第1補正圧力値まで、時間経過に比例して増大する値であること、第1補正圧力値は、第2補正圧力値から、所定のストロークをもつピストンを、所定の移動時間で動作させた際の、第1圧力作用室または第2圧力作用室の、ピストンの移動開始時点の圧力値とピストンの移動完了時点の圧力値との差分を減じた値であること、ピストン位置検出プログラムは、圧力検出器により検出された、第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値に基づき、ピストンの移動開始時点の圧力値を基準として、時間経過に伴う圧力値の変動量を算出し、対応する時間の、第1補正値と、圧力値の変動量と、の和を算出し、算出した和に第2補正値を乗じることで、ピストンの移動量を算出すること、を特徴とするので、第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値により、ピストンの移動量を精度よく検出することが可能である。従来から、第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値と、ピストンの位置との間には、何らかの関係があると想定されていたものの、圧力値からピストンの位置を精度良く検出できるものとは考えられていなかった。そのような中、出願人は、第1圧力作用室または第2圧力作用室の圧力値を、上記のように補正値に基づいて変換することで得られる値によって、精度よくピストン位置を検出できることを実験により導き出した。
【0019】
また、上記のような変換を行うことで、流体圧アクチュエータの動作量検出装置に内蔵されるCPUの情報処理遅延の発生を防ぐことができる。
磁歪センサを用いずにピストンの位置を検出する装置として、出願人は、特願2017−235074の流体圧アクチュエータの動作量検出装置を提案している。当該装置は、第1圧力作用室の圧力値または第2圧力作用室の圧力値の変化量の微分により、ピストンの速度変化量を算出し、当該速度変化量の積分によりピストンの移動量を算出するものである。
しかし、ピストンの移動に伴う圧力値の変化量は微少であるため、ノイズにより計算精度が悪化するおそれがあることから、実際の計算処理においては、移動平均等のフィルタ処理が必要となり、流体圧アクチュエータの動作量検出装置に内蔵されるCPUに処理遅延が生じるおそれがあった。
そこで、本発明のように、予め記憶されている補正値を用いて、圧力値の和算、除算、乗算を行うのみで、ピストンの移動量に変換することが可能なものとすれば、外乱ノイズの影響を受けにくく、従来生じていたフィルタ処理によるCPUの情報処理遅延の発生を防止することができる。
【0020】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置において、流体圧アクチュエータは、第1圧力作用室に通じ、流体を流入または流出させる第1配管と、第2圧力作用室に通じ、流体を流入または流出させる第2配管と、を備え、圧力検出器は、第1配管上と、第2配管上と、にそれぞれ配設されていること、を特徴とするので、圧力検出器の配設位置の自由度が高く、設備設計の自由度が高くなる。
すなわち、パスカルの原理により、第1圧力作用室の内壁と、第1圧力作用室に通じる第1配管の内壁に加わる圧力は均一であり、第2圧力作用室の内壁と、第2圧力作用室に通じる第2配管の内壁に加わる圧力は均一である。したがって、第1圧力作用室に通じる第1配管上に配設された圧力検出器は、第1配管の長短に関わらず、第1圧力作用室の圧力値を検出可能であり、第2圧力作用室に通じる第2配管上に配設された圧力検出器は、第2配管の長短に関わらず、第2圧力作用室の圧力値を検出可能である。よって、圧力検出器は、流体圧アクチュエータの近傍に配設する必要がないため、圧力検出器の配設の自由度が高く、設備設計の自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】流体圧アクチュエータの動作量検出装置を用いた流体圧アクチュエータ監視システムの回路図である。
図2】流体圧アクチュエータの動作量検出装置の制御構成を示すブロック図である。
図3】メータアウト制御を行う場合の第1補正値の求め方を表す図である。
図4】第1圧力作用室または第2圧力作用室のうち、排気側の圧力値の変動量からピストンの移動量に変換する方法を表す図である。
図5】ピストンの駆動中に異常が発生した場合のピストンの移動量を表す参考図である。
図6】メータイン制御を行う場合の第1補正値の求め方を表す図である。
図7】第1圧力作用室または第2圧力作用室のうち、給気側の圧力値の変動量からピストンの移動量に変換する方法を表す図である。
図8】流体圧アクチュエータ監視システムの回路図の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の流体圧アクチュエータの動作量検出装置20の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は流体圧アクチュエータの動作量検出装置20を用いた流体圧アクチュエータ監視システム1の回路図である。流体圧アクチュエータの動作量検出装置20は、流体圧アクチュエータ10を構成する複動型シリンダ101の内部に摺動可能に保持されるピストン102の、複動型シリンダ101内での位置を検出する装置として機能する。
【0023】
複動型シリンダ101の内部は、ピストン102により、第1圧力作用室103と、第2圧力作用室104とに区画されている。また、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bには、操作ロッド105が接続されており、操作ロッド105は、複動型シリンダ101の第2圧力作用室側端面101bの挿通孔を貫通し、複動型シリンダ101の外部に延出している。
【0024】
第1圧力作用室103には、圧縮空気を給気または排気する第1配管11の一端が接続されており、第1配管11のもう一端は、切換弁13の第1接続ポート131に接続されている。
そして、第2圧力作用室104には、圧縮空気を給気または排気する第2配管12の一端が接続されており、第2配管12のもう一端は、切換弁13の第2接続ポート132に接続されている。
また、第1配管11上には、逆止弁141Aと流量調整弁142Aとからなる流量調整部14Aが設けられ、かつ、第2配管12上には、逆止弁141Bと流量調整弁142Bとからなる流量調整部14Bが設けられている。
【0025】
切換弁13は、圧縮空気を入力する入力ポート133を有し、入力ポート133には給気配管15の一端が接続され、給気配管15のもう一端は、圧縮空気供給源16に接続されている。
【0026】
切換弁13は、ダブルソレノイド型電磁弁であり、外部からソレノイド134A、134Bに電気信号が与えられることで、内部の弁体(図示せず)が駆動する。
ソレノイド134Aに電気信号が与えられると、切換弁13の弁体が、ソレノイド134A側に引き寄せられ、入力ポート133と、第1接続ポート131が連通するとともに、第2接続ポート132が外部に開放される。
入力ポート133と、第1接続ポート131が連通することで、圧縮空気供給源16から供給される圧縮空気が、入力ポート133から切換弁13に入力され、第1接続ポート131から出力される。第1接続ポート131から出力された圧縮空気は、第1配管11を流れ、複動型シリンダ101の第1圧力作用室103に給気される。
【0027】
第1圧力作用室103に圧縮空気が給気されることで、第1圧力作用室103内部の圧力が上昇し、ピストン102の第1圧力作用室側端面102aが押圧され、ピストン102が前進方向(図1中右方向)に移動する。ピストン102が前進方向に移動するとともに、第2圧力作用室104の排気が始まり、第2配管12、第2接続ポート132、切換弁13およびサイレンサ17Bを介して、第2圧力作用室104に給気されていた圧縮空気が外部に排出される。
【0028】
一方、ソレノイド134Bに電気信号が与えられると、切換弁13の弁体が、ソレノイド134B側に引き寄せられ、入力ポート133と、第2接続ポート132が連通するとともに、第1接続ポート131が外部に開放される。
入力ポート133と、第2接続ポート132が連通することで、圧縮空気供給源16から供給される圧縮空気が、入力ポート133から切換弁13に入力され、第2接続ポート132から出力される。第2接続ポート132から出力された圧縮空気は、第2配管12を流れ、複動型シリンダ101の第2圧力作用室104に給気される。
【0029】
第2圧力作用室104に圧縮空気が給気されることで、第2圧力作用室104内部の圧力が上昇し、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bが押圧され、ピストン102が後進方向(図1中左方向)に移動する。ピストン102が後進方向に移動するとともに、第1圧力作用室103の排気が始まり、第1配管11、第1接続ポート131、切換弁13およびサイレンサ17Aを介して、第1圧力作用室103に給気されていた圧縮空気が外部に排出される。
【0030】
以上のように、切換弁13のソレノイド134A、134Bへの通電によって弁体を駆動させることで、第1圧力作用室103への圧縮空気の給気と、第2圧力作用室104への圧縮空気の給気とを切り換えることができ、該切り換えの繰り返しによりピストン102が往復運動を行うことができる。そして、ピストン102の往復運動に伴い、ピストン102の第2圧力作用室側端面102bに接続された操作ロッド105が往復運動を行う。
【0031】
ピストン102の往復運動の動作速度の制御は、流量調整部14A,14Bにおいて、圧縮空気の流量を調整することで行われる。
図1は、ピストン102の駆動時に、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104から排気される圧縮空気の流量を調整することで、ピストン102の動作速度の制御(以下、メータアウト制御)を行うための回路である。
詳しく説明すると、流量調整部14A,14Bの逆止弁141A,141Bは、切換弁13側から流体圧アクチュエータ10側への一方向のみ圧縮空気を流すことが可能であり、逆方向の圧縮空気の流れは、弁体(図示せず)によりせき止めるようになっている。
【0032】
例えば、第1配管11から第1圧力作用室103に圧縮空気を給気しようとする場合、第1配管11上の流量調整部14Aの逆止弁141Aは、第1圧力作用室103へ向かう圧縮空気の流れを許容するため、圧縮空気が第1圧力作用室103へ給気される。圧縮空気が第1圧力作用室103へ給気され、ピストン102が移動するに伴い、第2圧力作用室104から第2配管12へ圧縮空気が排気される。このとき、第2配管12上の流量調整部14Bの逆止弁141Bは、第2圧力作用室104から排気される圧縮空気をせき止めるため、圧縮空気は、流量調整弁142Bを通過する。したがって、流量調整弁142Bを絞っておくことで、その弁開度に応じて圧縮空気の流量が制限され、ピストン102の移動速度が制御されるのである。
【0033】
逆に、第2配管12から第2圧力作用室104に圧縮空気を給気しようとする場合、第2配管12上の流量調整部14Bの逆止弁141Bは、第2圧力作用室104へ向かう圧縮空気の流れを許容するため、圧縮空気が第2圧力作用室104へ給気される。圧縮空気が第2圧力作用室104へ給気され、ピストン102が移動するに伴い、第1圧力作用室103から第1配管11へ圧縮空気が排気される。このとき、第1配管11上の流量調整部14Aの逆止弁141Aは、第1圧力作用室103から排気される圧縮空気をせき止めるため、圧縮空気は、流量調整弁142Aを通過する。したがって、流量調整弁142Aを絞っておくことで、その弁開度に応じて圧縮空気の流量が制限され、ピストン102の移動速度が制御されるのである。
【0034】
第1配管11および第2配管12上であって、流量調整部14A,14Bと流体圧アクチュエータ10との間には、ピストン102の、複動型シリンダ101内での位置を検出する流体圧アクチュエータの動作量検出装置20が接続されている。
【0035】
図2は、流体圧アクチュエータの動作量検出装置20の構成を示すブロック図である。流体圧アクチュエータの動作量検出装置20は、制御部201と、圧力検出器としての第1圧力変換器202および第2圧力変換器203と、AD変換部204と、表示部205と、設定部206と、記憶部207と、信号回路208と、通信回路209と、を備えている。そして、制御部201は、CPU2011と、メモリ2012とを備え、メモリ2012には、ピストン102の複動型シリンダ101内での移動量を算出するためのピストン位置検出プログラム2012aが記憶されている。
【0036】
第1圧力変換器202は、第1配管11に接続され、第1配管11の圧力値を検出する。そして、第2圧力変換器203は、第2配管12に接続され、第2配管12の圧力値を検出する。パスカルの原理により、第1圧力作用室103の内壁と、第1圧力作用室103に通じる第1配管11の内壁に加わる圧力は均一であり、第2圧力作用室104の内壁と、第2圧力作用室104に通じる第2配管12の内壁に加わる圧力は均一である。したがって、第1配管11および第2配管12において圧力値を検出することは、第1圧力作用室103および第2圧力作用室104の圧力値を検出するのと同義である。また、第1配管11,第2配管12の長短に関わらず、第1圧力変換器202,第2圧力変換器203は、第1圧力作用室103,第2圧力作用室104の圧力値を検出可能である。よって、第1圧力変換器202,第2圧力変換器203は、流体圧アクチュエータ10の近傍に配設する必要がないため、第1圧力変換器202,第2圧力変換器203の配設の自由度が高く、設備設計の自由度が高くなる。
【0037】
第1圧力変換器202および第2圧力変換器203は、AD変換部204を介し制御部201に接続されている。
第1圧力変換器202および第2圧力変換器203が検出した圧力値は、電気信号に変換され、出力される。当該電気信号は、アナログ信号であるため、AD変換部204によりデジタル信号に変換された後、制御部201に出力される。
【0038】
圧力値が制御部201に入力されると、CPU2011が、メモリ2012からピストン位置検出プログラム2012aを読み出し、ピストン位置検出プログラム2012aを実行することで、入力された圧力値に基づいて、ピストン102の複動型シリンダ101内での移動量を算出する。
【0039】
制御部201には、表示部205と、設定部206と、記憶部207と、信号回路208と、通信回路209と、が接続されており、記憶部207には、圧力値からピストン102の移動量を算出するための所定の補正値(詳細は後述)が予め記憶されており、CPU2011が、圧力値からピストン102の移動量を算出するに際し、記憶部207から所定の補正値を読み出してくる。所定の補正値は、複動型シリンダ101の径と、ピストン102のストロークおよび移動時間(動作タクト)と、に応じて定まるものであり、作業者が設定部206により、複動型シリンダ101の径と、ピストン102のストロークおよび移動時間の情報を入力することで、ピストン位置検出プログラム2012aの実行時に、入力された情報に応じた補正値が選択され、ピストン102の移動量の算出に用いられる。
【0040】
表示部205には、CPU2011が算出したピストン102の移動量や、駆動するピストン102が複動型シリンダ101内部の第1圧力作用室側端面101a、または、第2圧力作用室側端面101bに、ピストン102が到達したこと等を表示することが可能である。また、通信回路209を通じて、設定部206により入力した内容、表示部205に表示される内容、ピストン102の移動量の波形データ等を外部に出力することも可能である。
【0041】
また、信号回路208は、流体圧アクチュエータの動作量検出装置20の外部との信号の授受を行う。例えば、信号回路208が、外部から流体圧アクチュエータ10の始動または停止のトリガ信号を受信することで、制御部201は、ピストン102の移動量の波形データ取り込みの開始や停止を制御する。その他、作業者がピストン102の移動量を予め定めている場合には、駆動するピストン102が予め定められた移動量に達したときに、外部に信号出力することで、作業者に通知することも可能である。
【0042】
次に、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値に基づき、ピストン102の移動量を算出する方法について、図3および図4を用いて説明する。
なお、図3および図4中の時点t0は、圧縮空気供給源16から圧縮空気の給気が開始された時点であり、時点t1は、ピストン102が移動を開始した時点であり、時点t2は、ピストン102が、複動型シリンダ101の、第1圧力作用室側端面101aまたは第2圧力作用室側端面101bに到達し、移動が完了した時点である。
【0043】
本実施例においては、メータアウト制御を行っており、ピストン102の移動量の算出は、第1圧力作用室103と第2圧力作用室104のうち、排気される側の圧力値を、記憶部207に予め記憶されている所定の補正値に基づき、移動量に変換することで行われる。
【0044】
ここで、所定の補正値とは、複動型シリンダ101の径,ピストン102のストロークおよび移動時間により定まる第1補正値CV11と、ピストン102のストロークおよび移動時間と、の比により定まる第2補正値CV12と、を指す。第1補正値CV11と、第2補正値CV12とは、予め記憶部207に記憶されており、ピストン位置検出プログラム2012aの実行時に、読み出されて計算に用いられる。
【0045】
まず、第1補正値CV11について説明する。
第1補正値CV11は、圧力値であり、図3(b)に示すように、ピストン102の移動を開始する時点t1を0MPaとし、ピストン102の移動が完了する時点t2の第1補正圧力値CP11まで、時間経過に比例して増大する値である。
【0046】
第1補正値CV11は、以下のようにして求められる。
所定のストロークをもつピストン102を、所定の移動時間で動作させた場合の、第1圧力作用室103と、第2圧力作用室104とのうち、ピストン102の駆動により圧縮空気が排気される側の圧力作用室の圧力値波形P11を検出する。
圧力値波形P11を検出した後、時点t1での圧力値と、時点t2での圧力値の差分ΔP11を算出する。
そして、予め記憶部207に記憶されている第2補正圧力値CP12から差分ΔP11を減じ、第1補正圧力値CP11を算出する。第2補正圧力値CP12とは、複動型シリンダ101の径により定まる値であり、出願人が実験により導き出した値である。例えば、Φ25のシリンダ径であれば、0.35Mpaであり、シリンダ径毎に個別の値が設定されている。そして、作業者が、設定部206により、使用する流体圧アクチュエータ10のシリンダ径を入力することで、入力されたシリンダ径に対応する第2補正圧力値CP12が読み出され、計算に用いられる。
算出された第1補正圧力値CP11を時点t2における圧力値として、時点t1の0MPaから時点t2の第1補正圧力値CP11まで、時間経過に比例して増大する値が第1補正値CV11となる。ここで、第1補正値CV11は、時点t1から時間経過に伴い変動する値であるため、時点t1以後の所定の時間における第1補正値CV11をΔCV11とする。
【0047】
次に、第2補正値CV12について説明する。
第2補正値CV12は、ピストン102のストロークと、複動型シリンダ101の径により定まる第2補正圧力値CP12と、の比により定まる値である。
作業者が、設定部206により、使用する流体圧アクチュエータ10のシリンダ径や、ピストン102のストロークを入力することで、入力されたシリンダ径や、ピストン102のストローク応じた第2補正値CV12が算出され、記憶部207に記憶される。
【0048】
次に、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値から、どのようにピストン102の移動量へ変換が行われるのか説明する。
図4(a)に示す圧力値波形P11は、第1補正値CV11,第2補正値CV12を求めた所定のストローク、所定の移動時間と同一のストローク、移動時間で作動する流体圧アクチュエータ10の、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104のうち、排気が行われている側の圧力値の波形である。
【0049】
まず、図4(a)に示すように、t1時点での圧力値P1を基準とした、時間経過に伴い変動する圧力値の変動量ΔP111を算出する。
なお、圧力値波形P11の示す値が圧力値P1を上回るときの変動量ΔP111は正の値であり、下回るときの変動量ΔP111は負の値となる。
【0050】
次に、予め求めておいた第1補正値CV11を記憶部207より読み出し、図4(b)に示すように、所定の時間におけるΔCV11に、対応する時間の圧力値波形P11の変動量ΔP111を加え、圧力値波形P12を求める(例えば、t1の10秒後のΔCV11の値には、t1の10秒後のΔP111の値を加える)。
圧力値波形P12の示す値が、ΔP111が正の値であるときには、第1補正値CV11を上回る値となり、ΔP111が負の値であるときには、第1補正値CV11を下回る値となる。
【0051】
最後に、移動量の単位mmから、圧力値の単位MPaに変換を行う。予め求めておいた第2補正値CV12を記憶部207より読み出し、圧力値波形P12に第2補正値CV12を乗じることで、図4(c)に示すピストン102の移動量PD11に変換される。例えば、図4(b)における最大の圧力値P2に第2補正値CV12を乗じた値が、ピストン102の移動量に変換された値である。
【0052】
なぜこのように第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値から、ピストン102の移動量に変換が可能であるのか、以下に説明する。
まず、圧力値波形P11が表す圧力値の変化率(dP/dt)は、下記の数1のように表される。
【0053】
【数1】
【0054】
【数2】
【0055】
【数3】
【0056】
ここで、「M」は圧縮空気の質量(kg)を、「R」はガス定数を、「T」は温度(K)を、「P」は第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値(Pa)を、「V」は第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の容積(m)を、「A」はピストン102の押圧面積(m)を、「L」はピストン102のストローク(m)を、「Y」はピストン102の移動量(m)を意味する。
数1は、気体の状態方程式M=PV/RTの両辺を時間微分したものである数2に、ピストン102の移動量と圧力作用室の体積との関係を表すV=A(L−Y)の両辺を時間微分したものである数3を代入し、整理したものである。数1の右辺の第1項は、負の値であり、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104のうち排気される側の圧力値が、排気が進むにつれ、低下しようとすることを表している。例えば、図4(a)において破線で示されるような、時点t1の圧力値P1から低下していく値を指す。
一方で、数1の右辺の第2項は、正の値であり、ピストン102が移動するに伴い、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104のうち、排気される側の圧力作用室の空間は圧縮されるため、圧力値が上昇しようすることを表している。これら、低下しようとする圧力値と、上昇しようとする圧力値を合成したものが、圧力値波形P11と考えられる。
【0057】
第1補正値CV11により行われる、圧力値波形P11から圧力値波形P12への変換は、圧力値波形P11の傾きを矯正する意味をもっており、圧力値波形P11の傾きが矯正されることで、排気が進むにつれ低下しようとする圧力値、すなわち数1の右辺の第1項が相殺される。すると、圧力値の変化率(dP/dt)は、下記の数4のように表すことができると考えられる。
【0058】
【数4】
【0059】
数4の右辺は、ピストン102の移動量Yの時間微分値とその係数により表されていると言え、ピストン102の移動量Yの時間微分値に当該係数を乗じた値が圧力値Pの時間微分値と等しいことを意味する。
当該係数が、第2補正値CV12の逆数に相当するものと考えれば、上述のように、圧力値波形P11から変換された圧力値波形P12に第2補正値CV12を乗じることで、図4(c)に示すピストン102の移動量PD11に変換されることとなる。
【0060】
以上のように算出された移動量PD11の波形は、時点t1から時点t2の間において、磁歪センサで同ストローク、同移動時間で駆動するピストン102の移動量を表した波形D11と、ほぼ同一となる。
このことから、従来のように、磁歪センサを用いずとも、第1圧力変換器202により検出する第1圧力作用室103の圧力値、または、第2圧力変換器203により検出する第2圧力作用室104の圧力値によって、ピストン102の位置を検出することが可能であることが分かる。磁歪センサを用いる必要がないため、従来のように、磁歪センサの形状により、流体圧アクチュエータ10の形状に制約がかからず、例えば食品工場で使用されるロボットアームやエアハンド等の設備設計の自由度が向上する。
また、第1圧力変換器202および第2圧力変換器203は汎用性があり、ストロークが異なる複数の流体圧アクチュエータ10を用いる場合でも、磁歪センサのようにそれぞれの流体圧アクチュエータ10のストロークに合わせた複数の磁歪センサを用意しなければならないということはなく、製造コストが増大するおそれがない。
【0061】
また、予め記憶されている第1補正値CV11や第2補正値CV12を用いて、圧力値の和算、除算、乗算を行うのみで、ピストン102の移動量に変換することが可能なものとすれば、外乱ノイズの影響を受けにくく、従来生じていたフィルタ処理によるCPU2011の情報処理遅延の発生を防止することができる。
【0062】
さらに、このピストン位置検出プログラム2012aによれば、ピストン102の駆動中に、ピストン102と複動型シリンダ101の内面との摩擦力が過剰となったり、ピストン102に接続された操作ロッド105が障害物に衝突したり等、ピストン102の駆動に異常が生じた場合であっても、ピストン102の位置を正確に検出することが可能である。
例えば、図5は、出願人が行った実験結果を表すグラフである。波形D12は、ピストン102が、第1圧力作用室側端面101aから第2圧力作用室側端面101bに向かって移動する場合、すなわち、操作ロッド105が複動型シリンダ101から突出する方向に駆動する場合において、ピストン102が駆動を開始した時点t1から、ピストン102が駆動を完了した時点t2までの間の時点t3で、故意に操作ロッド105を障害物に衝突させた場合を表すものである。時点t3で、操作ロッド105が障害物に衝突し、ピストン102の移動速度が落ちたため、時点t3以降の波形D12の傾きが、時点t3以前と比べてなだらかになっている。
これに対し、図5に示す波形PD12は、波形D12を検出すると同時に検出した第2圧力作用室104の圧力値の変動量を、第1補正値CV11と、第2補正値CV12とに基づいて、ピストン102の移動量に変換した波形である。波形PD12が、波形D12とほぼ同一の挙動を見せていることが分かる。したがって、ピストン位置検出プログラム2012aによれば、ピストン102が正常に駆動している場合のみならず、その駆動に異常が発生した場合であっても、ピストン102の位置を正確に検出することが可能であることが分かる。
【0063】
なお、メータアウト制御を行う場合、流量調整部14A,14Bは、流体圧アクチュエータの動作量検出装置20と、切換弁13との間に配設する必要はない。図8に示すように、サイレンサ17A,17Bと、切換弁13との間に配設しても良い。このような配置であっても、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104から排気される圧縮空気の流量を調整可能である。
【0064】
以上は、流体圧アクチュエータ10のメータアウト制御を行う場合を説明しているが、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104に給気される圧縮空気の流量を調整することで、ピストン102の動作速度の制御(以下、メータイン制御)を行う場合においても、同様にピストン102の移動量の算出が可能である。
メータイン制御を行う場合、流量調整部14A,14Bの逆止弁141A,141Bは、流体圧アクチュエータ10側から、切換え弁側への一方向のみ圧縮空気を流すことが可能であり、逆方向の圧縮空気の流れは、弁体(図示せず)によりせき止められるようになっている。
【0065】
例えば、第1配管11から第1圧力作用室103に圧縮空気を給気しようとする場合、第1配管11上の流量調整部14Aの逆止弁141Aは、第1圧力作用室103へ向かう圧縮空気の流れをせき止めるため、圧縮空気は、流量調整弁142Aを通過し、第1圧力作用室103に給気される。したがって、流量調整弁142Aを絞っておくことで、その弁開度に応じて圧縮空気の流量が制限され、ピストン102の移動速度が制御されるのである。圧縮空気が第1圧力作用室103へ給気され、ピストン102が移動するに伴い、第2圧力作用室104から第2配管12へ圧縮空気が排気される。このとき、第2配管12上の流量調整部14Bの逆止弁141Bは、切換弁13に向かう圧縮空気の流れを許容する。
【0066】
逆に、第2配管12から第2圧力作用室104に圧縮空気を給気しようとする場合、第2配管12上の流量調整部14Bの逆止弁141Bは、第2圧力作用室104へ向かう圧縮空気の流れをせき止めるため、圧縮空気は、流量調整弁142Bを通過し、第2圧力作用室104に給気される。したがって、流量調整弁142Bを絞っておくことで、その弁開度に応じて圧縮空気の流量が制限され、ピストン102の移動速度が制御されるのである。圧縮空気が第2圧力作用室104へ給気され、ピストン102が移動するに伴い、第1圧力作用室103から第1配管11へ圧縮空気が排気される。このとき、第1配管11上の流量調整部14Aの逆止弁141Aは、切換弁13に向かう圧縮空気の流れを許容する。
その他の回路構成および流体圧アクチュエータの動作量検出装置20の構成は、図1に示すメータアウト制御の場合と同様である。
【0067】
次に、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値に基づき、ピストン102の移動量を算出する方法について、図6および図7を用いて説明する。
なお、図6および図7中の時点t0は、圧縮空気供給源16から圧縮空気の給気が開始された時点であり、時点t1は、ピストン102が移動を開始した時点であり、時点t2は、ピストン102が、複動型シリンダ101の、第1圧力作用室側端面101aまたは第2圧力作用室側端面101bに到達し、移動が完了した時点である。
【0068】
メータイン制御を行う場合、ピストン102の移動量の算出は、第1圧力作用室103と第2圧力作用室104のうち、給気される側の圧力値を、記憶部207に予め記憶されている所定の補正値に基づき、移動量に変換することで行われる。
【0069】
ここで、所定の補正値とは、複動型シリンダ101の径,ピストン102のストロークおよび移動時間により定まる第1補正値CV21と、ピストン102のストロークおよび移動時間と、の比により定まる第2補正値CV22と、を指す。
第1補正値CV21と、第2補正値CV22とは、予め記憶部207に記憶されており、ピストン位置検出プログラム2012aの実行時に、読み出されて計算に用いられる。
【0070】
まず、第1補正値CV21について説明する。
第1補正値CV21は、圧力値であり、図6(b)に示すように、ピストン102の移動を開始する時点t1を0MPaとし、ピストン102の移動が完了する時点t2の第1補正圧力値CP21まで、時間経過に比例して増大する値である。
【0071】
第1補正値CV21は、以下のようにして求められる。
所定のストロークをもつピストン102を、所定の移動時間で動作させた場合の、第1圧力作用室103と、第2圧力作用室104とのうち、ピストン102の駆動により圧縮空気が給気される側の圧力作用室の圧力値波形P21を検出する。
圧力値波形P21を検出した後、時点t1での圧力値と、時点t2での圧力値の差分ΔP21を算出する(図6(a)参照)。
そして、予め記憶部207に記憶されている第2補正圧力値CP22から差分ΔP21を減じ、第1補正圧力値CP21を算出する。第2補正圧力値CP22とは、複動型シリンダ101の径により定まる値であり、出願人が実験により導き出した値である。例えば、Φ25のシリンダ径であれば、0.35Mpaであり、シリンダ径毎に個別の値が設定されている。そして、作業者が、設定部206により、使用する流体圧アクチュエータ10のシリンダ径を入力することで、入力されたシリンダ径に対応する第2補正圧力値CP22が読み出され、計算に用いられる。
算出された第1補正圧力値CP21を時点t2における圧力値として、時点t1の0MPaから時点t2の第1補正圧力値CP21まで、時間経過に比例して増大する値が第1補正値CV21となる。ここで、第1補正値CV21は、時点t1から時間経過に伴い変動する値であるため、時点t1以後の所定の時間における第1補正値CV21をΔCV21とする。
【0072】
次に、第2補正値CV22について説明する。
第2補正値CV22は、ピストン102のストロークと、複動型シリンダ101の径により定まる第2補正圧力値CP12と、の比により定まる値である。
作業者が、設定部206により、使用する流体圧アクチュエータ10のシリンダ径や、ピストン102のストロークを入力することで、入力されたシリンダ径や、ピストン102のストローク応じた第2補正値CV22が算出され、記憶部207に記憶される。
【0073】
次に、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値から、どのようにピストン102の移動量へ変換が行われるのか説明する。
図7(a)に示す圧力値波形P21は、第1補正値CV21,第2補正値CV22を求めた所定のストローク、所定の移動時間と同一のストローク、移動時間で作動する流体圧アクチュエータ10の、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104のうち、給気が行われている側の圧力値の波形である。
【0074】
まず、図7(a)に示すように、t1時点での圧力値P3を基準とした、時間経過に伴い変動する圧力値の変動量ΔP211を算出する。
なお、圧力値波形P21の示す値が圧力値P1を上回るときの変動量ΔP211は正の値であり、下回るときの変動量ΔP211は負の値となる。
【0075】
次に、予め求めておいた第1補正値CV21を記憶部207より読み出し、図7(b)に示すように、所定の時間におけるΔCV21に、対応する時間の圧力値の変動量ΔP211を加え、圧力値波形P22を求める(例えば、t1の10秒後のΔCV21の値には、t1の10秒後のΔP211の値を加える)。ここで、メータアウト制御を行う場合と異なる点は、圧力値波形P12の示す値が、ΔP211が負の値であるときには、第1補正値CV11を上回る値となり、ΔP111が負の値であるときには、第1補正値CV11を下回る値となる点である。後述の数5に示す通り、ピストン102の移動に伴う圧力の上昇・低下の極性が、メータアウト制御を行う場合の数1と異なるためである。
【0076】
最後に、移動量の単位mmから、圧力値の単位MPaに変換を行う。予め求めておいた第2補正値CV22を記憶部207より読み出し、圧力値波形P22に第2補正値CV22を乗じることで、図7(c)に示すピストン102の移動量PD21に変換される。例えば、図7(b)における時点t2における圧力値P4に第2補正値CV22を乗じた値が、ピストン102の移動量に変換された値である。
【0077】
なぜこのように第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値から、ピストン102の移動量に変換が可能であるのか、以下に説明する。
まず、圧力値波形P21が表す圧力値の変化率(dP/dt)は、下記の数5のように表される。
【0078】
【数5】
【0079】
数5の導き方は、数1と同様であるが、メータイン制御を行う場合、ピストン102の移動に伴う圧力の上昇・低下の極性が、メータアウト制御を行う場合と判定するため、右辺に示すそれぞれの項の符号が数1とは異なっている。
すなわち、数5の右辺の第1項は、正の値であり、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104に給気されるにつれ、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の給気される側の圧力値が上昇しようとすることを表している。例えば、図7(a)において破線で示されるような、時点t1の圧力値P3から上昇していく値を指す。
一方で、数5の右辺の第2項は、負の値であり、ピストン102が移動するに伴い、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104のうち、給気される側の圧力作用室の空間が拡大し、圧力値が低下しようすることを表している。これら、上昇しようとする圧力値と、低下しようとする圧力値を合成したものが、圧力値波形P21と考えられる。
【0080】
第1補正値CV21により行われる、圧力値波形P21から圧力値波形P22への変換は、圧力値波形P21の傾きを矯正する意味をもっており、圧力値波形P21の傾きが矯正されることで、排気が進むにつれ上昇しようとする圧力値、すなわち数1の右辺の第1項が相殺される。すると、圧力値の変化率(dP/dt)は、上記の数4のように表すことができると考えられる。
【0081】
数4の右辺は、ピストン102の移動量Yの時間微分値とその係数により表されていると言え、ピストン102の移動量Yの時間微分値に当該係数を乗じた値が圧力値Pの時間微分値と等しいことを意味する。
当該係数が、第2補正値CV22に相当するものと考えれば、上述のように、圧力値波形P21から変換された圧力値波形P22に第2補正値CV22を乗じることで、図7(c)に示すピストン102の移動量PD21に変換されることとなる。
【0082】
このように算出された移動量PD21の波形は、時点t1から時点t2の間において、磁歪センサで同ストローク、同移動時間で駆動するピストン102の移動量を表した波形D21と、ほぼ同一となる。
よって、メータイン制御を行う場合であっても、従来のように、磁歪センサを用いずとも、ピストン102の位置を検出することが可能である。メータイン制御が行われる場合、または、メータアウト制御が行われる場合の双方において、ピストン102の位置の検出が可能であるため、メータイン制御と、メータアウト制御と、それぞれの特徴を考慮して、自由に使い分けることができるため、例えば、食品工場で使用されるロボットアームやエアハンド等の設備設計の自由度が向上する。
【0083】
ここで、ピストン102の位置を検出するためには、メータイン制御が行われる場合、メータアウト制御が行われる場合、ともに第1圧力作用室103または第2圧力作用室104のうち、流入または流出する流体の流量が制御される側の圧力値を検出することが必要である。その理由を以下に述べる。
メータイン制御の場合は、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104に流入する流体の流量が調整されることで、第1圧力作用室103と第2圧力作用室104とのうち、流体が流入する側の圧力値が制御される。また、メータアウト制御の場合は、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104から流出する流体の流量が調整されることで、第1圧力作用室103と第2圧力作用室104とのうち、流体が流出される側の圧力値が制御される。圧力値が制御されることによって、ピストン102の移動速度が制御されるため、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値のうち、制御される側の圧力値を検出し、ピストン102の位置を算出することで、精度よくピストン102の位置を検出することが可能となるからである。
【0084】
また、このピストン位置検出プログラム2012aによれば、メータアウト制御を行う場合と同様に、ピストン102の駆動中に、ピストン102と複動型シリンダ101の内面との摩擦力が過剰となったり、ピストン102に接続された操作ロッド105が障害物に衝突したり等、ピストン102の駆動に異常が生じた場合であっても、ピストン102の位置を正確に検出することが可能である。
【0085】
以上説明したように、本実施形態のアクチュエータの動作検出装置20によれば、
(1)ピストン102により内部が第1圧力作用室103と第2圧力作用室104とに区画された複動型シリンダ101を備え、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104において、流体の流入および流出が行われることでピストン102の移動が行われる流体圧アクチュエータ10の、ピストン102の位置を検出する流体圧アクチュエータの動作量検出装置20において、第1圧力作用室103の圧力値を検出する第1圧力変換器202と、第2圧力作用室104の圧力値を検出する第2圧力変換器203と、第1・第2圧力変換器202,203により検出された圧力値に基づき、ピストン102の移動量を算出するピストン位置検出プログラム2012aを備える制御部201と、を備えること、を特徴とするので、流体圧アクチュエータ10の形状に制約がかからず、設備設計の自由度を向上することができるともに、安価な流体圧アクチュエータの動作量検出装置20とすることができる。
【0086】
すなわち、制御部201は、ピストン位置検出プログラム2012aを実行することで、第1・第2圧力変換器202,203により検出した、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値に基づいてピストン102の位置を算出することができるため、例えば磁歪センサを流体圧アクチュエータ10に取り付けるというように、ピストン102の位置を検出するための特別なセンサを用いる必要がない。センサを用いる必要がないため、センサの形状により、流体圧アクチュエータ10の形状に制約がかからず、例えば食品工場で使用されるロボットアームやエアハンド等の設備設計の自由度が向上する。
【0087】
また、圧力変換器は汎用性があり、ストロークが異なる複数の流体圧アクチュエータ10を用いる場合でも、磁歪センサのようにそれぞれの流体圧アクチュエータのストロークに合わせた複数の磁歪センサを用意しなければならないということはなく、製造コストが増大するおそれがない。
【0088】
(2,3)(1)に記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置20において、流体圧アクチュエータ10は、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104に流入する流体の流量を調整することによりピストン102の移動速度を制御するメータイン制御が行われること、ピストン位置検出プログラム2012aは、第1圧力作用室103と第2圧力作用室104とのうち、流体が流入する側の圧力値に基づき、ピストン102の移動量を算出すること、または、流体圧アクチュエータ10は、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104から流出する流体の流量を調整することによりピストン102の移動速度を制御するメータアウト制御が行われること、ピストン位置検出プログラム2012aは、第1圧力作用室103と第2圧力作用室104とのうち、流体が排出される側の圧力値に基づき、ピストン102の移動量を算出すること、を特徴とするので、流体圧アクチュエータ10で、メータイン制御が行われる場合、または、メータアウト制御が行われる場合において、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値に基づき、ピストン102の位置を算出することができる。メータイン制御が行われる場合、または、メータアウト制御が行われる場合の双方において、ピストン102の位置の検出が可能であれば、メータイン制御と、メータアウト制御と、それぞれの特徴を考慮して、自由に使い分けることができるため、例えば、食品工場で使用されるロボットアームやエアハンド等の設備設計の自由度が向上する。
【0089】
ここで、ピストン102の位置を検出するためには、メータイン制御が行われる場合、メータアウト制御が行われる場合、ともに第1圧力作用室103または第2圧力作用室104のうち、流入または流出する流体の流量が制御される側の圧力値を検出することが必要である。その理由を以下に述べる。
メータイン制御の場合は、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104に流入する流体の流量が調整されることで、第1圧力作用室103と第2圧力作用室104とのうち、流体が流入する側の圧力値が制御される。また、メータアウト制御の場合は、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104から流出する流体の流量が調整されることで、第1圧力作用室103と第2圧力作用室104とのうち、流体が流出される側の圧力値が制御される。圧力値が制御されることによって、ピストン102の移動速度が制御されるため、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値のうち、制御される側の圧力値を検出し、ピストン102の位置を算出することで、精度よくピストン102の位置を検出することが可能となるからである。
【0090】
(4,5)(1)乃至(3)いずれか1つに記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置20において、ピストン位置検出プログラム2012aは、第1・第2圧力変換器202,203により検出された第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値の、時間経過に伴う圧力値の変動量を算出し、圧力値の変動量を、制御部201が備える記憶部207に予め記憶された所定の補正値に基づいて、ピストン102の移動量に変換することで、ピストン102の移動量を算出すること、を特徴とし、補正値とは、複動型シリンダ101の径とピストン102のストロークおよび移動時間とにより定まる第1補正値CV11,CV21と、ピストン102の所定のストロークと複動型シリンダ101の径により定まる第2補正圧力値CP12,CP22との比により定まる第2補正値CV12,CV22と、を備えること、第1補正値CV11,CV21は、圧力値であり、ピストン102の移動開始時点をゼロとし、ピストン102の移動完了時点の第1補正圧力値CP11,CP21まで、時間経過に比例して増大する値であること、第1補正圧力値CP11,CP21は、第2補正圧力値CP12,CP22から、所定のストロークをもつピストン102を、所定の移動時間で動作させた際の、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の、ピストン102の移動開始時点の圧力値とピストン102の移動完了時点の圧力値との差分を減じた値であること、ピストン位置検出プログラム2012aは、第1・第2圧力変換器202,203により検出された、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値に基づき、ピストン102の移動開始時点の圧力値を基準として、時間経過に伴う圧力値の変動量ΔP111,ΔP211を算出し、対応する時間の、第1補正値CV11,CV21と、圧力値の変動量ΔP111,ΔP211と、の和を算出し、算出した和に第2補正値CV12,CV22を乗じることで、ピストン102の移動量を算出すること、を特徴とするので、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値により、ピストン102の移動量を精度よく検出することが可能である。従来から、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値と、ピストン102の位置との間には、何らかの関係があると想定されていたものの、圧力値からピストン102の位置を精度良く検出できるものとは考えられていなかった。そのような中、出願人は、第1圧力作用室103または第2圧力作用室104の圧力値を、上記のように補正値に基づいて変換することで得られる値によって、精度よくピストン102の位置を検出できることを実験により導き出した。
【0091】
また、上記のような変換を行うことで、流体圧アクチュエータの動作量検出装置20に内蔵されるCPU2011の情報処理遅延の発生を防ぐことができる。
磁歪センサを用いずにピストン102の位置を検出する装置として、出願人は、特願2017−235074の流体圧アクチュエータの動作量検出装置を提案している。当該装置は、第1圧力作用室の圧力値または第2圧力作用室の圧力値の変化量の微分により、ピストンの速度変化量を算出し、当該速度変化量の積分によりピストンの移動量を算出するものである。
しかし、ピストンの移動に伴う圧力値の変化量は微少であるため、ノイズにより計算精度が悪化するおそれがあることから、実際の計算処理においては、移動平均等のフィルタ処理が必要となり、流体圧アクチュエータの動作量検出装置に内蔵されるCPUに処理遅延が生じるおそれがあった。
そこで、本発明のように、予め記憶されている補正値を用いて、圧力値の和算、除算、乗算を行うのみで、ピストン102の移動量に変換することが可能なものとすれば、外乱ノイズの影響を受けにくく、従来生じていたフィルタ処理によるCPU2011の情報処理遅延の発生を防止することができる。
【0092】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の流体圧アクチュエータの動作量検出装置20において、流体圧アクチュエータ10は、第1圧力作用室103に通じ、流体を流入または流出させる第1配管11と、第2圧力作用室104に通じ、流体を流入または流出させる第2配管12と、を備え、第1・第2圧力変換器202,203は、第1配管11上と、第2配管12上と、にそれぞれ配設されていること、を特徴とするので、第1・第2圧力変換器202,203の配設位置の自由度が高く、設備設計の自由度が高くなる。
すなわち、パスカルの原理により、第1圧力作用室103の内壁と、第1圧力作用室103に通じる第1配管11の内壁に加わる圧力は均一であり、第2圧力作用室104の内壁と、第2圧力作用室104に通じる第2配管12の内壁に加わる圧力は均一である。したがって、第1圧力作用室103に通じる第1配管11上に配設された、第1圧力変換器202は、第1配管11の長短に関わらず、第1圧力作用室103の圧力値を検出可能であり、第2圧力作用室104に通じる第2配管12上に配設された、第2圧力変換器203は、第2配管12の長短に関わらず、第2圧力作用室104の圧力値を検出可能である。よって、第1・第2圧力変換器202,203は、流体圧アクチュエータ10の近傍に配設する必要がないため、第1・第2圧力変換器202,203の配設の自由度が高く、設備設計の自由度が高くなる。
【0093】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、本実施例においては、流体圧アクチュエータ10として、圧縮空気により作動する空気圧アクチュエータを例として挙げているが、油圧アクチュエータとしても良い。そのほか、流体圧アクチュエータ10は必ずしも操作ロッド105を有している必要もなく、平行ハンド等の複動型シリンダを有するアクチュエータへの応用が可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 流体圧アクチュエータ
20 流体圧アクチュエータの動作量検出装置
101 複動型シリンダ
102 ピストン
103 第1圧力作用室
104 第2圧力作用室
201 制御部
202 第1圧力変換器
203 第2圧力変換器
2012a ピストン位置検出プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8