特許第6962947号(P6962947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧

<>
  • 特許6962947-放射線検出器 図000002
  • 特許6962947-放射線検出器 図000003
  • 特許6962947-放射線検出器 図000004
  • 特許6962947-放射線検出器 図000005
  • 特許6962947-放射線検出器 図000006
  • 特許6962947-放射線検出器 図000007
  • 特許6962947-放射線検出器 図000008
  • 特許6962947-放射線検出器 図000009
  • 特許6962947-放射線検出器 図000010
  • 特許6962947-放射線検出器 図000011
  • 特許6962947-放射線検出器 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962947
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/08 20060101AFI20211025BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20211025BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20211025BHJP
   H01L 27/30 20060101ALI20211025BHJP
   H01L 51/42 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H01L31/00 A
   H01L21/28 301B
   H01L21/28 301R
   H01L27/144 K
   H01L27/30
   H01L31/08 T
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-30387(P2019-30387)
(22)【出願日】2019年2月22日
(65)【公開番号】特開2020-136561(P2020-136561A)
(43)【公開日】2020年8月31日
【審査請求日】2020年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】和田 淳
(72)【発明者】
【氏名】高須 勲
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 励
(72)【発明者】
【氏名】相賀 史彦
【審査官】 桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−142467(JP,A)
【文献】 特表2013−541837(JP,A)
【文献】 特開2017−175108(JP,A)
【文献】 特開2016−225456(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0125427(US,A1)
【文献】 特開2010−067642(JP,A)
【文献】 特開2009−054936(JP,A)
【文献】 特表2010−510657(JP,A)
【文献】 特開2018−157170(JP,A)
【文献】 特表2010−503978(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103180289(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/119
H01L 31/18−31/20
H01L 51/42−51/48
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電層と、
第2導電層と、
前記第1導電層と前記第2導電層との間に設けられた第1層であって、前記第1層は、第1金属元素を含む金属錯体を含む第1領域と、有機半導体材料を含む第2領域と、を含み、前記第1金属元素は、Ir、Pt及びbよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、前記第1層と、
を備え
前記第2導電層から前記第1導電層への第1方向に沿う前記第1層の厚さは、10μm以上であり、
前記有機半導体材料は、p形領域及びn形領域を含み、
前記金属錯体は、第1部分及び第2部分を含み、前記第1金属元素は、前記第1部分及び第2部分の間にあり、
前記第1部分はフッ素を含み、
前記第2部分は酸素を含み、
前記第1領域の少なくとも一部は、前記p形領域と前記n形領域との間にあり
前記p形領域及び前記n形領域の一方は前記第1部分に吸着し、
前記p形領域及び前記n形領域の他方は前記第2部分に吸着する、放射線検出器。
【請求項2】
前記p形領域は、P3HT(Poly(3-hexylthiophene))を含む、請求項記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記n形領域は、フラーレンを含む、請求項1または2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記n形領域は、PC61BM([6,6]-phenyl C61 butyric acid methyl ester)を含む、請求項のいずれか1つに記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記第1層における前記金属錯体の濃度は、6.4wt%以上である、請求項1〜のいずれか1つに記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機半導体材料を用いた放射線検出器がある。放射線検出器において、感度の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5258037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、感度の向上が可能な放射線検出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、放射線検出器は、第1導電層、第2導電層及び第1層を含む。前記第1層は、前記第1導電層と前記第2導電層との間に設けられる。前記第1層は、第1金属元素を含む金属錯体を含む第1領域と、有機半導体材料を含む第2領域と、を含む。前記第1金属元素は、Ir、Pt、Pb及びCuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る放射線検出器に含まれる材料を例示する化学式である。
図3図3は、第1実施形態に係る放射線検出器に含まれる材料を例示する化学式である。
図4図4は、第1実施形態に係る放射線検出器に含まれる材料を例示する化学式である。
図5図5は、放射線検出器の特性を例示するグラフ図である。
図6図6は、放射線検出器の特性を例示するグラフ図である。
図7図7は、放射線検出器の特性を例示するグラフ図である。
図8図8は、放射線検出器の一部を例示する模式図である。
図9図9は、放射線検出器におけるバンドギャップを例示する模式図である。
図10図10は、第1実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的斜視図である。
図11図11は、第2実施形態に係る光電変換装置を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る放射線検出器110は、第1導電層10、第2導電層20、及び、第1層30を含む。
【0009】
第1層30は、第1導電層10と第2導電層20との間に設けられる。第1層30は、第1領域31及び第2領域32を含む。第1領域31は、金属錯体を含む。金属錯体は、第1金属元素を含む。
【0010】
第1金属元素は、例えば、Ir、Pt、Pb及びCuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。例えば、第1金属元素の原子番号は、29以上である。第1金属元素は、例えば、重元素である。
【0011】
第2領域32は、有機半導体材料を含む。
【0012】
以下、第1層30に含まれる材料の例について説明する。
図2図4は、第1実施形態に係る放射線検出器に含まれる材料を例示する化学式である。
図2に示すように、第1領域31に含まれる金属錯体31MCは、例えば、FIrpic(Bis(4,6- difluorophenylpyridinato-N,C2))を含む。金属錯体31MCに含まれる第1金属元素31Mは、例えば、イリジウムを含む。
【0013】
第2領域32に含まれる有機半導体材料は、p形領域及びn形領域を含む。図3に示すように、p形領域32pは、例えば、P3HT(Poly(3-hexylthiophene))を含む。図4に示すように、n形領域32nは、フラーレンを含む。n形領域32nは、例えば、PC61BM([6,6]-phenyl C61 butyric acid methyl ester)を含む。
【0014】
第1層30は、このような材料を含む有機層である。
【0015】
図1に示すように、中間層25が設けられても良い。中間層25は、第2導電層20と第1層30との間に設けられる。中間層25は必要に応じて設けられ、省略されても良い。
【0016】
例えば、基体50の上に第2導電層20が設けられる。第2導電層20の上に中間層25が設けられる。中間層25の上に第1層30が設けられる。第1層30の上に第1導電層10が設けられる。第2導電層20、中間層25、第1層30及び第1導電層10は、積層体SBに含まれる。
【0017】
図1に示すように、第2導電層20から第1導電層10への第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。第1方向は、積層方向である。
【0018】
例えば、第1導電層10及び第2導電層20は、X−Y平面に沿って広がる。第1層30及び中間層25、X−Y平面に沿って広がる。
【0019】
1つの例において、第1方向に沿う第1層30の厚さt1(図1参照)は、10μm以上である。実施形態において、厚さt1は、40μm以上でも良い。
【0020】
この例では、検出回路70が設けられる。検出回路70は、第1導電層10及び第2導電層20と電気的に接続される。例えば、第1配線71により、検出回路70と第1導電層10とが電気的に接続される。例えば、第2配線72により、検出回路70と第2導電層20とが電気的に接続される。検出回路70は、積層体SBに入射する放射線81の強度に応じた信号OSを出力する。
【0021】
放射線81は、例えば、β線を含む。放射線は、例えば、γ線を含んでも良い。放射線81は、第1導電層10の側から積層体SBに入射して良い。放射線81は、第2導電層20の側から積層体SBに入射して良い。
【0022】
放射線81が積層体SBの第1層30に入射すると、第1層30において、移動可能な電荷が生じる。検出回路70により、第1導電層10と第2導電層20との間に電圧が印加される。これにより、生じた電荷が第1導電層10または第2導電層20に向けて移動する。移動した電荷が検出回路70により検出される。これにより、検出対象の放射線81が検出できる。
【0023】
発明者の実験により、第1層30が、金属錯体31MCを含む第1領域31を含むことで、高い検出感度が得られることが分かった。以下、実験結果の例について説明する。
【0024】
実験の試料において、基体50は、ガラス基板である。第2導電層20は、厚さが50nmのITO(Indium Tin Oxide)層である。中間層25は、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)及びポリ(スチレンスルホン酸)の混合物(PEDOT:PSS)を含む。中間層25の厚さは、30nmである。第1導電層10は、厚さが300nmのアルミニウム層である
【0025】
第1試料においては、第1層30において、第2領域32が設けられ、第1領域31が設けられない。第2領域32は、P3HT及びPC61BMを含む。これらの材料のモル比(P3HT:PC61BM)は、1:1である。
【0026】
第2〜第4試料においては、第1層30において、第2領域32に加えて、第1領域31が設けられる。第2領域32の材料は、第1料における第2領域32の材料と同じである。第1領域31は、FIrpicを含む。第2〜第4試料において、第1層30における金属錯体31MC(第1領域31)の濃度が互いに異なる。すなわち、第2試料において、第1層30における金属錯体31MCの濃度は、12.8wt%である。第3試料において、第1層30における金属錯体31MCの濃度は、6.4wt%ある。第4試料において、第1層30における金属錯体31MCの濃度は、25.1wt%である。第1領域31及び第2領域32のモル比は、1:1である。
【0027】
第1実験においては、試料に放射線81を照射せずに、光が照射される。光の波長は、530nmである。検出回路70により、照射された光に応じた信号が検出される。得られた信号に基づいて、変換効率が算出される。
【0028】
図5は、放射線検出器の特性を例示するグラフ図である。
図5の横軸は、第1導電層10と第2導電層20との間に印加される電圧Va(V)である。縦軸は、変換効率EQE(%)である。図5には、第1〜第4試料SP1〜SP4の結果が示されている。図5には、第1層30の厚さt1が50μmのときの結果が示されている。
【0029】
図5からわかるように、第2〜第4試料SP2〜SP4における変換効率EQEは、第1試料SP1における変換効率EQEに比べて著しく高い。第2〜第4試料SP2〜SP4においては、電圧Vaの絶対値が小さいときにおいても、高い変換効率EQEが得られる。
【0030】
図6は、放射線検出器の特性を例示するグラフ図である。
図6の横軸は、電圧Va(V)である。縦軸は、変換効率EQE(%)である。図6には、第1層30の厚さt1が1.3μmのときの結果が示されている。図6には、上記の第1試料SP1(金属錯体31MC無し)、及び、第3試料SP3(金属錯体31MCの濃度が6.4wt%)の結果が例示されている。
【0031】
図6から分かるように、第1層30の厚さt1が1.3μmのように薄い場合は、第1試料SP1における変換効率EQEは、第3試料SP3における変換効率EQEと実質的に同じである。第1層30の厚さt1が厚い場合(図5)と、第1層30の厚さt1が薄い場合(図6)と、で変換効率の挙動が大きく異なる。このような現象は、一般には予想されない。
【0032】
上記の実験において、金属錯体31MCとして用いられたFIrpicは、例えば、有機発光素子の材料として用いられる。有機発光素子においては、駆動電圧を低くするために、FIrpicを含む有機層の厚さは、5μm以下程度と薄い。このため、従来は、図6に例示したような結果が得られると考えられていた。しかしながら、本願の発明者が行った厚い第1層30に関する実験により、FIrpicの有無が変換効率EQEに大きな影響を与えることが分かった。
【0033】
変換効率EQEが大きく向上することは、例えば、金属錯体31MC(例えばFIrpicなど)の導入により、厚いときに特に問題となる電荷の取り出し易さが向上することと関係すると考えられる。さらに、後述するように、金属錯体31MCの導入により、p形領域32p及びn形領域32nが均一に混合された状態が形成され易くなる可能性がある。均一な混合状態が、第1層30の厚さt1が厚いときに、高い感度に有効に作用する可能性がある。
【0034】
図7は、放射線検出器の特性を例示するグラフ図である。
これらの図は、試料にβ線を照射したときの結果を例示している。これらの図の横軸は、検出された信号の大きさのADC値ADCv(単位は任意)である。縦軸は、検出された信号のカウント数Cn(単位は個)である。図7には、第1層30の厚さt1が50μmの第2試料SP2(金属錯体31MCの濃度が12.8wt%)にβ線が照射されたときの特性SP2(β)と、β線が入射しないバックグランドの特性BGが示されている。図7に示すように、入射するβ線に応じた信号(カウント数Cn)が得られる。実施形態によれば、β線などの放射線を高い感度で検出することができる。
【0035】
例えば、重元素の第1金属元素31Mを含む金属錯体31MCにおいて、放射線81が効率的に吸収されると考えられる。これにより、高い効率が得られると考えられる。
【0036】
金属錯体31MCを含む第1領域31を含まない参考例(例えば上記の第1試料SP1など)においては、放射線81を吸収するために、第2領域32だけを含む第1層30が厚くされる。第1層30が厚いと、生じた電荷が取り出し難くなる。
【0037】
これに対して、実施形態においては、金属錯体31MCを含む第1領域31を設けることで、第1層30が薄い場合でも、放射線81が効率的に吸収できる。そして、金属錯体31MCのバンドギャップを適切にすることで、第1層30の厚さによらず、生じた電荷を取り出し易くできる。これにより、放射線81が高い感度で検出できると考えられる。
【0038】
このように、実施形態によれば、感度の向上が可能な放射線検出器を提供することができる。
【0039】
実施形態において、第1層30における金属錯体31MCの濃度は、6.4wt%以上であることが好ましい。これにより、例えば、高い感度が安定して得られる。
【0040】
実施形態において、金属錯体31MCに含まれる第1金属元素31Mは、例えば、IrPt、Pb及びCuよりなる群から選択された少なくとも1つを含むことが好ましい。例えば、第1金属元素31Mの原子番号は、29以上であることが好ましい。第1金属元素31Mは、重元素である。このような第1金属元素31Mを用いることで、放射線が効率的に信号に変換される。金属錯体31MCは、例えば、イリジウムを含む。
【0041】
図8は、放射線検出器の一部を例示する模式図である。
図8に示すように、第1層30は、第1領域31及び第2領域32を含む。第1領域31は、金属錯体31MCを含む。第2領域32に含まれる有機半導体材料は、p形領域32p及びn形領域32nを含む。第1領域31の少なくとも一部は、p形領域32pとn形領域32nとの間にある。
【0042】
第1領域31がp形領域32pとn形領域32nとの間にあることで、例えば、第1領域31に放射線81が入射したときに生じる電子32eがn形領域32nに移動し易くなる。例えば、第1領域31に放射線81が入射したときに生じるホール32hがp形領域32pに移動し易くなる。これにより、より高い効率が得られる。
【0043】
第1領域31がp形領域32pとn形領域32nとの間にあることで、例えば、p形領域32p及びn形領域32nが均一に混合され易くなる。これにより、第1層30の厚さの均一性が高くなる。
【0044】
このような構成は、例えば、金属錯体31MCの構造を非対称にすることで得やすくできると考えられる。
【0045】
例えば、図2に示すように、金属錯体31MCは、第1部分p1及び第2部分p2を含む。第1金属元素31Mは、第1部分p1及び第2部分p2の間にある。第1部分p1は、フッ素を含む。第2部分p2は、酸素を含む。第2部分p2は、窒素を含んでも良い。第1部分p1に相当する領域において、例えば、極性が低く、表面エネルギーが小さい。第2部分p2に相当する領域において、例えば、極性が高く、表面エネルギーが大きい。
【0046】
このように、金属錯体31MCは、互いに異なる性質を有する複数の部分(第1部分p1及び第2部分p2)を含む。例えば、p形領域32p及びn形領域32nの一方は、第1部分p1に相対的に吸着し易い。一方、例えば、p形領域32p及びn形領域32nの他方は、第2部分p2に相対的に吸着し易い。このような構成により、第1領域31が、p形領域32pとn形領域32nとの間に位置し易くなる。例えば、第1領域31は、p形領域32pとn形領域32nとの間に偏析する。
【0047】
第1領域31がp形領域32pとn形領域32nとの間に位置することで、エネルギーの移動が容易になる。例えば、電荷(電子32e及びホール32h)の移動が容易になる。
【0048】
図9は、放射線検出器におけるバンドギャップを例示する模式図である。
p形領域32pとしてP3HTが用いられる。P3HTにおいて、HOMO準位L2は5.1eVであり、LUMO準位L1は、2.9eVである。P3HTのバンドギャップは、2.2eVである。
【0049】
n形領域32nとしてPC61BMが用いられる。PC61BMにおいて、HOMO準位L2は6.1eVであり、LUMO準位L1は3.7eVである。PC61BMのバンドギャップは2.4eVである。
【0050】
金属錯体31MCとしてFIrpicが用いられる。FIrpicにおいて、HOMO準位L2は、5.8eVであり、LUMO準位L1は、3.1eVである。FIrpicのバンドギャップは2.7eVである。
【0051】
このように、金属錯体31MCのバンドギャップは、有機半導体材料のバンドギャップよりも大きい。金属錯体31MCのバンドギャップは、p形領域32pのバンドギャップよりも大きい。金属錯体31MCのバンドギャップは、n形領域32nのバンドギャップよりも大きい。
【0052】
このようなバンドギャップの関係により、例えば、金属錯体31MCで生じたエネルギーが、p形領域32pへ、移動し易い。例えば、金属錯体31MCで生じたエネルギーが、n形領域32へ、移動し易い。これにより、生じたエネルギーを効率的に取り出すことができる。
【0053】
金属錯体31MCのHOMO準位L2は、過度に低くない(絶対値が過度に大きくない)ことが好ましい。これにより、金属錯体31MCがホール・電子トラップになることが抑制できる。高い効率が得やすくなる。
【0054】
図10は、第1実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的斜視図である。
図10に示すように、放射線検出器111は、積層体SBを含む。図10において、中間層25は省略されている。図10においては、図の見やすさのために、放射線検出器111に含まれる要素の一部が互いに離されて描かれている。
【0055】
放射線検出器111においては、複数の第2導電層20が設けられる。複数の第2導電層20は、Z軸方向に対して交差する面(例えばX−Y平面)に沿って並ぶ。複数の第2導電層20は、例えば、X軸方向及びY軸方向に沿って、マトリクス状に並ぶ。この例では、第1導電層10及び第1層30は、連続的に設けられる。
【0056】
(第2実施形態)
図5に関して説明したように、第1実施形態に関して説明した積層体SBにおいて、光(例えば、530nmのような可視光)に対して、高い変換効率が得られる。積層体SBは、光電変換装置として用いることができる。
【0057】
図11は、第2実施形態に係る光電変換装置を例示する模式的斜視図である。
図11に示すように、光電変換装置120は、積層体SBを含む。光電変換装置120は、例えば、第1導電層10、第2導電層20、及び、第1層30を含む。第1層30は、第1導電層10と第2導電層20との間に設けられる。第1層30は、第1領域31及び第2領域32を含む(図1参照)。第1領域31は、金属錯体31MCを含む(図2参照)。金属錯体31MCは、第1金属元素31Mを含む(図2参照)。第1金属元素31Mは、例えば、Ir、Pt、Pb及びCuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。例えば、第1金属元素31Mの原子番号は、29以上である。第1金属元素31Mは、例えば、重元素である。第2領域32は、有機半導体材料を含む。有機半導体材料(第2領域32)は、p形領域32p及びn形領域32nを含む(図8参照)。積層体SBには、第1実施形態に関して説明した構成が適用できる。第2実施形態により、感度の向上が可能な光電変換装置が提供できる。
【0058】
実施形態において、基体50は、例えば、光透過性の材料を含む。基体50は、例えば、ガラス及び樹脂よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。基体50は、例えば、放射線81を透過させる。基体50は、例えば、可視光を透過させる。
【0059】
第2導電層20は、例えば、金属酸化物膜を含む。金属酸化物膜、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及び、ITOよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0060】
中間層25は、例えば、平坦化として機能する。中間層25は、例えば、PEDOT:PSSを含む。中間層25は、ポリチオフェン系ポリマーを含む。中間層25は、例えば、導電性インクを含む。
【0061】
第1導電層10は、例えば、導電性の金属酸化物を含む。第1導電層10は、例えば、金属薄膜を含む。第1導電層10は、例えば、合金を含む膜を含む。第1導電層10は、例えば、放射線81を透過させる。第1導電層10は、例えば、可視光を透過させる。
【0062】
第1領域31の材料は、例えば、Ir、Pt、Pb及びCuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む金属を含む金属錯体を含む。
【0063】
第2領域32に含まれるp形領域32pの材料は、チオフェン、および、チオフェン誘導体の少なくともいずれかを含む。
【0064】
第2領域32に含まれるn形領域32nの材料は、フラーレン、および、フラーレン誘導体の少なくともいずれかを含む。
【0065】
実施形態によれば、感度の向上が可能な放射線検出器が提供できる。
【0066】
本願明細書において、「電気的に接続される状態」は、複数の導電体が物理的に接してこれら複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。「電気的に接続される状態」は、複数の導電体の間に、別の導電体が挿入されて、これらの複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。
【0067】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0068】
以上、例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの例に限定されるものではない。例えば、放射線検出器に含まれる導電層、第1層、有機半導体材料及び金属錯体などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0069】
各例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0070】
本発明の実施の形態として上述した放射線検出器を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての放射線検出器も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0071】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
10、20…第1、第2導電層、 25…中間層、 30…第1層、 31…第1領域、 31M…第1金属元素、 31MC…金属錯体、 32…第2領域、 32e…電子、 32h…ホール、 32n…n形領域、 32p…p形領域、 50…基体、 70…検出回路、 71、72…第1、第2配線、 81…放射線、 110、111…放射線検出器、 120…光電変換装置、 ADCv…ADC値、 BG…バックグランドの特性、 Cn…カウント数、 EQE…変換効率、 L1…LUMO準位、 L2…HOMO準位、 OS…信号、 SB…積層体、 SP1〜SP2…第1〜第4試料、 SP2(β)…特性、 Va…電圧、 p1、p2…第1、第2部分、 t1…厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11