(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のサンプルビーム及び前記第2のサンプルビームを前記共焦点的な方法で前記サンプルに伝搬することが、共通の光路に沿って前記第1のサンプルビーム及び前記第2のサンプルビームを伝搬することを含む、請求項1に記載の方法。
前記第1のサンプルビーム及び前記第2のサンプルビームを前記共焦点的な方法で前記サンプルに伝搬することが、前記第1のサンプルビーム及び前記第2のサンプルビームと平行な第1の軸に沿って、前記生物組織サンプル内の前記焦点位置の軸方向位置を変更することを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記第1のサンプルビーム及び前記第2のサンプルビームを前記共焦点的な方法で前記サンプルに伝搬することが、前記第1の軸に垂直な第2の軸及び第3の軸の少なくとも1つに沿って、前記生物組織サンプル内の前記焦点位置の横方向位置を変更することを含む、請求項5に記載の方法。
前記第1のサンプルビーム及び前記第2のサンプルビームを前記共焦点的な方法で前記サンプルに伝搬することが、前記第2の信号ビームを用いて画像データを生成するために前記生物組織サンプルを走査することであって、前記第1のサンプルビーム及び前記第2のサンプルビームの両方が前記生物組織サンプルにおける異なる共通位置に導かれ、前記走査が、前記焦点位置の前記軸方向位置及び前記焦点位置の前記横方向位置の少なくとも1つを変更することを含む、走査することを含む、請求項6に記載の方法。
前記組み合わせサンプルビームと平行な第1の軸に沿って、前記生物組織サンプルにおける前記焦点位置の軸方向位置を共焦点的な方法で変更する集束要素を更に含む、請求項8に記載の光学機器。
前記第1の軸に垂直な第2の軸及び第3の軸の少なくとも1つに沿って、前記生物組織サンプルにおける前記焦点位置の横方向位置を共焦点的な方法で変更する走査要素を更に含む、請求項9に記載の光学機器。
前記集束要素及び前記走査要素の少なくとも1つが、前記焦点位置の前記軸方向位置及び前記焦点位置の前記横方向位置の少なくとも1つを変更することを含む、前記第2の信号ビームを用いて画像データを生成するために前記生物組織サンプルを走査することであって、前記第1のサンプルビーム及び前記第2のサンプルビームの両方が前記生物組織サンプルにおける異なる共通位置に導かれる、走査することを行うためのものである、請求項10に記載の光学機器。
前記第1の信号ビームが前記焦点位置からのレイリー散乱光子及びブリルアン散乱光子を含み、及び前記第2の信号ビームが前記第2のサンプルビームの波長の半波長における光子を含む、請求項8〜12のいずれか一項に記載の光学機器。
【背景技術】
【0002】
様々な診断及び医療機器が、生物学的問題の生体内撮像のために、且つヒトの目における構造を撮像するために開発されてきた。特に、光学機器は、ヒトの目の異なる部分の幾何学的及び光学的特徴を測定するために用いられる。かかる解析によって提供される幾何学的及び光学的特徴は、眼科的な健康状態を診断するための、且つ適切な治療計画を立てるための努力において、患者の個別の目の様々な程度の生体力学的又は生理学的なモデリングを可能にし得る。
【0003】
円錐角膜は、ヒトの目の変性疾患であり、それは、中心又は中心傍角膜における非炎症性の菲薄化及び曲率の急峻化によって特徴付けられ、疾患を特徴付ける円錐角膜に帰着する。円錐角膜が進行するときの角膜における構造変化は、患者の視力の著しい障害を引き起こす。円錐角膜によって引き起こされた角膜の構造変化は、手術後の角膜拡張(又は菲薄化)から起こり得るリスクの増加のために、レーザ角膜切削形成術(LASIK)又は光学的角膜屈折矯正(PRK)手術などの特定のレーザ視力矯正手術を更に複雑にする可能性がある。
【0004】
円錐角膜によって引き起こされる視力障害は、特に適合された眼鏡又は角鞏膜コンタクトレンズを用いてある程度は矯正され得る。しかしながら、かかる手段は、円錐角膜が病因の後期段階に進んでいる場合、有効ではない可能性がある。進行期の円錐角膜に対して角膜架橋治療が実行される。それは、完全な視力回復が現在は予測されないが、病因を阻止するか又は少なくとも減速させる可能性がある。
【0005】
円錐角膜に加えて、他のタイプの角膜変性がヒト角膜の生体力学的安定性に影響を与える可能性がある。例えば、角膜突出としても知られているペルシード角膜辺縁変性(PMD)は、変性的な非炎症性の角膜状態であり、それは、典型的には、角膜の下方及び周辺領域における明確な両側の拡張によって特徴付けられる。特に、PMDを伴う患者は、健全な中央上皮を備えた角膜の中心に正常な厚さを示し得る一方で、下方角膜に菲薄化の周辺帯を示す可能性がある。縁部に直接隣接する角膜部分は、PMDを免れる場合があり、典型的には、数ミリメートルの細片を含む。PMDの更なる結果として、角膜のボーマン膜は、欠如しているか、不規則であるか、又は断裂された領域を有する可能性がある。
【0006】
角膜及び眼水晶体などの眼組織の粘弾性特性の光学検査は、ブリルアン散乱(BS)を用いて実行され、ブリルアン散乱は、光子対光子の相互作用によって入射コヒーレント光を散乱させるために、サンプリング材料内部の位置依存性の質量密度変化に依存する。眼組織からのブリルアン散乱光ビームを分光学的に解析することにより、解析された眼組織の粘弾性特性など、眼組織の特定の生体力学的特性が決定され得る。ブリルアン散乱を用いる眼組織の粘弾性の決定は、硬さ及び剛性などの角膜の適切な生体力学的特性に対する架橋治療の実際の質的影響を調査し文書化するために、紫外線(UV)光を用いた角膜の円錐角膜架橋治療に関連して特に有用になり得る。
【0007】
更に、角膜の微細な生物学的構造は、眼組織の特定の画像を生成するための多光子顕微鏡を用いて検査されてもよい。多光子撮像中、角膜における異なる構造が多光子吸収を介して励起され、自己蛍光を経験し得る。代替として、角膜におけるコラーゲン原繊維などの特定の非等方性構造は、非線形相互作用を介してサンプルビームの波長の第二高調波発生(SHG)又は第三高調波発生(THG)用に用いられ得る。このように、SHG又はTHG信号は、角膜における様々な構造の位置及び分布を示し得る。
【0008】
特に、SHG信号は、角膜における原繊維の位置及び分布に関連付けられている。角膜原繊維の配置及び方位は、それらの位置及び密度と同様に、SHG信号を用いて解析された領域における角膜の光学的及び機械的特性と相関関係にあり得る。光学的特性は、透明性及び散乱を含んでもよく、一方で機械的特性は、強度などの弾性力学的特性を含んでもよい。円錐角膜及び角膜変性症などの眼疾患の進行期において、影響を受けた眼組織における光学及び機械的特性の変化が角膜の粗構造において検出可能であることが知られている。従って、SHG信号を用いる解析は、角膜の微細構造を検査するための適切な方法であり得、且つ眼疾患の病因の早期発見を可能にし得る。加えて、SHG信号は、フェムト秒(fs)レーザを用いる特定のLASIK手術中に角膜原繊維から生体内で生成され、且つLASIKの切開部の方向及び位置に対する洞察を提供し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、眼疾患の生体力学的診断を実行するための開示される方法は、光学的出発点を共有する第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームを生成することと、生物組織サンプルにおける焦点位置に対して共焦点的な方法で、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームを生物組織サンプルに伝搬することとを含む。方法は、第1のサンプルビームによって焦点位置から後方散乱された第1の光子を含む第1の信号ビームを検出することを含む。第1の信号ビームは、ブリルアン散乱検出器を用いて検出される。方法はまた、第2のサンプルビームによって焦点位置から後方散乱された第2の光子を含む第2の信号ビームを検出することを含む。第2の信号ビームは、第二高調波発生(SHG)検出器を用いて検出される。
【0010】
開示される実施形態のいずれかにおいて、方法は、第1の信号ビームから、焦点位置における生物組織サンプルの弾性力学的特性を決定することと、第1の信号ビームから、焦点位置における生物組織サンプルの粘弾性特性を決定することと、第2の信号ビームから、焦点位置における生物組織サンプルの形態構造の指標を決定することとを更に含んでもよい。
【0011】
方法における開示される実施形態のいずれかにおいて、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームを共焦点的な方法でサンプルに伝搬することは、共通の光路に沿って第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームを伝搬することを含んでもよい。
【0012】
方法における開示される実施形態のいずれかにおいて、第1のサンプルビームは、狭帯域連続波レーザを用いて生成されてもよく、第2のサンプルビームは、フェムト秒ファイバレーザを用いて生成されてもよく、ブリルアン散乱検出器は、分光計を含んでもよく、及びSHG検出器は、第2の信号ビームに敏感な光電陰極を含んでもよい。
【0013】
方法における開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の信号ビームは、焦点位置からのレイリー散乱光子及びブリルアン散乱光子を含んでもよく、一方で第2の信号ビームは、第2のサンプルビームの波長の半波長における光子を含んでもよい。方法における開示される実施形態のいずれかにおいて、生物組織サンプルは、ヒトの目の一部を含む生体内の生物組織であってもよい。
【0014】
方法における開示される実施形態のいずれかにおいて、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームを共焦点的な方法でサンプルに伝搬することは、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームと平行な第1の軸に沿って、生物組織サンプル内の焦点位置の軸方向位置を変更することを含んでもよい。方法における開示される実施形態のいずれかにおいて、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームを共焦点的な方法でサンプルに伝搬することは、第1の軸に垂直な第2の軸及び第3の軸の少なくとも1つに沿って、生物組織サンプル内の焦点位置の横方向位置を変更することを含んでもよい。方法における開示される実施形態のいずれかにおいて、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームを共焦点的な方法でサンプルに伝搬することは、第2の信号ビームを用いて画像データを生成するために生物組織サンプルを走査することを含んでもよい。方法において、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームは、生物組織サンプルにおける異なる共通位置に導かれてもよい。方法において、走査は、焦点位置の軸方向位置及び焦点位置の横方向位置の少なくとも1つを変更することを含んでもよい。
【0015】
別の開示される態様において、眼疾患の生体力学的診断を実行するための光学機器は、第1のサンプルビームを生成する第1の光源及び第2のサンプルビームを生成する第2の光源を含む。光学機器は、組み合わせサンプルビームを生成するために、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームを重ね合わせる第1の部分ミラーを更に含む。光学機器はまた、生物組織サンプルにおける焦点位置から第1のサンプルビームによって後方散乱された第1の光子を含む第1の信号ビームを受信する分光計を含むブリルアン散乱検出器を含む。光学機器は、第2のサンプルビームによって焦点位置から後方散乱された第2の光子を含む第2の信号ビームに敏感な光電陰極を含む第二高調波発生(SHG)検出器を更に含む。
【0016】
開示される実施形態のいずれかにおいて、光学機器は、組み合わせサンプルビームを焦点位置に共焦点的な方法で伝搬し、且つ第1の信号ビーム及び第2の信号ビームを含む組み合わせ信号ビームを焦点位置から共焦点的な方法で伝搬する第2の部分ミラーを更に含む。
【0017】
開示される実施形態のいずれかにおいて、光学機器は、組み合わせサンプルビームと平行な第1の軸に沿って、生物組織サンプルにおける焦点位置の軸方向位置を共焦点的な方法で変更する集束要素を更に含んでもよい。開示される実施形態のいずれかにおいて、光学機器は、第1の軸に垂直な第2の軸及び第3の軸の少なくとも1つに沿って、生物組織サンプルにおける焦点位置の横方向位置を共焦点的な方法で変更する走査要素を更に含んでもよい。光学機器において、集束要素及び走査要素の少なくとも1つは、第2の信号ビームを用いて画像データを生成するために生物組織サンプルを走査するためのものであってもよい。光学機器において、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームの両方が生物組織サンプルにおける異なる共通位置に導かれてもよい。光学機器において、集束要素及び走査要素の少なくとも1つは、焦点位置の軸方向位置及び焦点位置の横方向位置の少なくとも1つを変更するためのものであってもよい。
【0018】
光学機器における開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の光源は、狭帯域連続波レーザを含んでもよく、第2の光源は、フェムト秒ファイバレーザを含んでもよく、ブリルアン散乱検出器は、分光計を含んでもよく、及びSHG検出器は、第2の信号ビームに敏感な光電陰極を含んでもよい。
【0019】
光学機器における開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の信号ビームは、焦点位置からのレイリー散乱光子及びブリルアン散乱光子を含んでもよく、一方で第2の信号ビームは、第2のサンプルビームの波長の半波長における光子を含んでもよい。光学機器において、生物組織サンプルは、ヒトの目の一部を含む生体内の生物組織であってもよい。
【0020】
光学機器における開示される実施形態のいずれかにおいて、ブリルアン散乱検出器は、第1の信号ビームから、焦点位置における生物組織の弾性力学的特性を決定し、且つ第1の信号ビームから、焦点位置における生物組織の粘弾性特性を決定するためのものであってもよい。光学機器における開示される実施形態のいずれかにおいて、SHG検出器は、第2の信号ビームから、焦点位置における生物組織サンプルの形態構造の指標を決定するためのものであってもよい。
【0021】
本発明並びにその特徴及び利点のより詳細な理解のために、ここで、添付の図面に関連して記載された以下の説明を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明において、詳細は、開示される主題の議論を促進するために例として述べられる。しかしながら、開示される実施形態が例であり、全ての可能な実施形態を網羅するものではないことが当業者には明らかとなるはずである。
【0024】
本明細書で用いられるとき、参照数字のハイフンで結んだ形式は、要素の特定の例を指し、参照数字のハイフンで結んでいない形式は、集合的な要素を指す。従って、例えば、装置「12−1」は、装置クラスの例を指し、それらは、装置「12」と集合的に呼ばれてもよく、それらのいずれか1つが装置「12」と一般的に呼ばれてもよい。
【0025】
円錐角膜など、ヒト角膜の生体力学的安定性に影響を及ぼす角膜変性に帰着する眼疾患の早期発見のために、様々な眼疾患の発症の信頼できる診断に適した光学的検査方法を用いて、角膜を物理的に解析することが望ましいことができる。望ましい光学的検査方法は、角膜の臨床的に明示される肉眼で見える構造変化が出現する前に角膜変性の検出を可能にし得る。
【0026】
典型的には、ブリルアン散乱及び多光子撮像など、眼組織の光学的検査用の異なる方法が、眼組織における構造に対して空間的に相関しない方法で別々に実行される。別個の光学的検査方法は、多くの診断及び臨床応用における眼組織の物理的特性をよりよく理解し特徴付ける際における制約要因になり得る。
【0027】
従って、異なり空間的に相関しない光学的検査方法は、多くの診断及び臨床応用において、眼組織における構造の解析及び特徴付けを制限する可能性がある。以下の説明において、ヒト角膜を含む眼組織からのブリルアン散乱信号及びSHG信号の空間的に正確な相関を達成し得る、生体力学的眼疾患用の光学システムが開示される。
【0028】
角膜又は角膜の個別の構造部分は、線形弾性、均質又は等方性材料として見なされてもよい。角膜の生物学的構造は、角膜上皮、ボーマン層(前境界膜としても周知)、角膜基質(固有質としても周知)、デュア層、デスメ膜(また後境界膜としても周知)及び角膜内皮を含む。角膜の眼疾患の病因に関し且つ発病中、角膜の生体力学的特性の変化は眼疾患の検出に非常に関係があると考えられ得る。
【0029】
ヒト角膜などの材料の生体力学的特性は、弾性力学的特性、粘弾性特性、又はそれらの組み合わせによって表されてもよく、且つ材料の剛性と関連付けられてもよい。生体力学的特性は、異なる弾性係数を用いて特徴付けられてもよい。
【0030】
応力は、復原力が一面に印加される面積によって割られた、変形によって引き起こされた材料の復原力として定義されてもよい。歪みは、材料の常態に対して、応力によって引き起こされた材料の機械的寸法の変化率として定義されてもよい。
【0031】
縦弾性係数M(P波弾性係数又は拘束弾性係数としても周知)が、等方性均質材料を説明するために用いられる。縦弾性係数Mは、全ての他の非軸方向歪みがゼロである一軸歪み状態、即ちゼロの横方向歪みとも呼ばれる状態における軸方向歪みに対する軸方向応力の比率として定義される。
【0032】
ヤング率E(単に弾性係数とも呼ばれる)は、引っ張り弾性係数を説明するために用いられる。材料の引っ張り弾性係数は、反力が軸に沿って印加される場合の軸方向変形応答である。ヤング率Eは、引っ張り歪みに対する引っ張り応力の比率として定義される。
【0033】
ラメの第1のパラメータλ
Lame(ギリシャ語:ラムダ−ラメ)も引っ張り弾性係数を説明するために用いられる。
【0034】
剪断弾性係数G(剛性率μ、ギリシャ語:ミュー、又はラメの第2のパラメータとしても周知である)は、反力が印加される場合に定容積における材料の剪断変形応答を説明するために用いられる。剪断弾性係数Gは、剪断歪みに対する剪断応力として定義され、材料の粘性を導き出すために用いられてもよい。
【0035】
体積弾性係数Kは、ガス圧力などの等方性力に対する材料の体積弾性又は等方性変形応答を説明するために用いられる。体積弾性係数Kは、体積歪みに対する体積応力、又は圧縮率κ(ギリシャ語:カッパ)の逆数として定義される。体積弾性係数Kは、三次元へのヤング率Eの拡張である。
【0036】
ポアソン比ν(ギリシャ語:ニュー、ポアソン数としても周知)は、第1の軸に沿って圧縮された場合に第1の軸に垂直な第2の軸及び第3の軸の両方に延びる材料の変形応答を説明するために用いられる。ポアソン比νは、軸方向歪みに対する横方向歪みの負の比率として、又は圧縮割合で割られた拡張割合として定義される。
【0037】
均質な等方性線形弾性材料に関して、上記の様々な弾性係数間の関係を説明するために特定の式が用いられる。例えば、式1で与えられるように、体積弾性係数K、ヤング率E及び剪断弾性係数Gは、ポアソン比νと関連付けられる。
【数1】
また、体積弾性係数K、剪断弾性係数G及び縦弾性係数Mは、式2で与えられるように関連付けられる。
【数2】
【0038】
前に触れたように、ブリルアン散乱は、眼組織の生体力学的特性を測定するために用いられてもよい。ブリルアン散乱において、フォノンとも呼ばれる音波は、材料内の位置依存の質量密度変化を示し得る。質量密度変化に起因する局所的圧縮のために、屈折率としても周知の材料の光学密度は、局所的に変化する可能性がある。光学密度における局所的変化nは、空間周期的な光学密度変化に帰着する可能性があり、それは、材料に入射するコヒーレント光用の回折要素として動作する。ブリルアン散乱は、コヒーレント光が材料から偏向又は反射されることにより、かかる回折要素と相互作用する場合に発生する。フォノンが所与の速度で材料内を移動しているため、フォノンから偏向又は反射された光は、周波数(又は波長)におけるドップラーシフトにさらされる。換言すれば、ブリルアン散乱光子は、非弾性散乱プロセスのために入射光子と異なるエネルギを有する。光子エネルギにおける変化は、周波数f(又は波長λ)における変化として表現されてもよく、それは、式3で与えられる。
【数3】
式3において、cは、真空における光の速度であり、nは、乱されていない材料の光学密度である。ブリルアン散乱は、入射光子の周波数f(又は波長λ)に対して正又は負になり得る周波数シフトf
B(又は波長シフトλ
B)に帰着する。従って、非弾性ブリルアン散乱光子は、f±f
Bによって与えられる可能な周波数(又はλ±λ
Bによって与えられる可能な波長)を有する。ブリルアン散乱光のスペクトルは、少なくとも1つの追加のサイドピーク(サイドバンドとも呼ばれる)を形成する非弾性ブリルアン散乱光と共に、周波数f(又は波長λ)におけるレイリーピークを形成する弾性偏向光又は反射光を含む。サイドピークが入射光子より高いエネルギを備えた散乱光子に起因する場合、f+f
B(又はλ−λ
B)におけるストークピークが観察され得る。サイドピークが入射光子より低いエネルギを備えた散乱光子に起因する場合、f−f
B(又はλ+λ
B)における反ストークピークが観察され得る。
【0039】
一般に、式4で与えられるように、ブリルアン散乱光子は、ブリルアン散乱光の周波数シフトf
Bが入射光子とブリルアン散乱光子との間の散乱角θに依存するように伝搬方向を変更する。
【数4】
式4において、nは、乱されていない材料の光学密度であり、Vは、材料におけるフォノンの速度であり、λは、真空における入射光子の波長であり、θは、散乱角である。定義により、入射光子の伝搬方向は、入射光子が材料の表面に垂直であるようにθがゼロである場合、ブリルアン散乱光子の伝搬方向と逆平行である。式4において、正(+)の結果は、反ストークブリルアンピークに対応し、一方で負の結果(−)は、ストークブリルアンピークに対応する。波長|λ
B|<<λに関し、式5は、f
Bとλ
Bとの間の関係を説明する。
【数5】
【0040】
周波数シフトf
Bが散乱角θに依存するため、各散乱角θは、特定の周波数シフトf
Bに関連付けられる。周波数シフトの最大値又は最小値は、式3においてθ=0°を設定することによって得られ、ブリルアン散乱材料への垂直入射光ビームに対応する式6に帰着する。
【数6】
θ=0°の特定の事例において、周波数シフトf
Bは、長手方向のブリルアンシフトと呼ばれてもよい。
【0041】
ブリルアン散乱光ビームを分光学的に解析することにより、散乱材料の特定の生体力学的特性が決定され得る。例えば、複素値縦弾性係数Mは、式7から与えられるようなフォノンの速度Vに依存する。
【数7】
式7において、ρは、フォノンが伝搬する材料の質量密度であり、Δf
Bは、ブリルアン散乱サイドバンドの線幅である。
【0042】
線幅Δf
Bは、フォノンの寿命の逆数に対応し、且つ材料を通る伝搬中のフォノン(音波)の減衰を特徴付ける。一実施形態において、線幅Δf
Bは、ストーク又は反ストークブリルアンピークの半値全幅(FWHM)として測定されてもよい。他の実施形態において、周波数間隔Δf
Bを特徴付けるスペクトル幅の別の適切な定義が用いられてもよい。例えば、全てのスペクトル成分の振幅が、最大振幅を有するスペクトル成分の指定された割合以上であると仮定されてもよい。
【0043】
式2から明らかなように、ブリルアン散乱光子が、θ=0°の場合など、入射光子と逆平行方向に現れる場合、剪断弾性係数Gはゼロであり、縦弾性係数Mは体積弾性係数と等しい。この場合、複素値縦弾性係数M用の値M
1及びM
2は、式8及び9によってそれぞれ与えられる。
【数8】
【0044】
式8において、M
1は、材料の弾性力学的特性を示し、一方で式9において、M
2は、材料の粘弾性特性を示す。従って、入射ビーム(ブリルアンサンプルビームとも呼ばれる)に応じて、材料から後方散乱されたブリルアン散乱光ビーム(ブリルアン信号ビームとも呼ばれる)のサイドバンドの1つ(ストーク又は反ストークのいずれか)における周波数シフトf
Bを測定することにより、材料の弾性力学的特性が決定され得る。更に、サイドバンドの線幅Δf
Bも測定することにより、材料の粘弾性特性が決定され得る。
【0045】
ブリルアン散乱に加えて、ヒト角膜からのSHG信号が角膜における原繊維の位置及び分布に関連付けられた。SHGは、式10によって与えられるように、全波長における励起に応じた、材料による半波長における光子の二次非線形放射を指す。
【数9】
式10において、λ
SHGは、SHG信号ビームにおけるSHG信号の波長であり、λ
1は、励起ビーム(SHGサンプルビームとも呼ばれる)の波長である。
【0046】
ヒト角膜からのSHG信号用の励起は、角膜の生物学的構造物の画像を生成するために用いることができるSHG信号の正確な空間的集束用に、所望のサンプリング位置で集束されるfsファイバレーザを用いて実行されてもよい。幾つかの実施形態において、励起領域は、ヒト角膜からSHG信号を集束する場合、数マイクロメートル程度であってもよい。角膜における原繊維は、コラーゲンで構成され、コラーゲンは、高効率な非線形SHG信号源であることが周知である。更に、角膜のコラーゲン原繊維と励起ビームとの非線形相互作用は、コラーゲン原繊維の位置、方位、密度及び配列に依存し、それは、様々な角膜組織の生物学的構造状態に対する重要な洞察を提供するSHG信号に帰着し得る。
【0047】
生体内撮像のために、後方SHG信号(B−SHG)がヒト角膜から取得されてもよい。B−SHG信号ビームは、入射SHGサンプルビームに対しておおむね逆平行方向に放射され、且つ任意の適切な光検出システムによって検出され得る。幾つかの実施形態において、光電子増倍管(PMT)が、B−SHG信号を用いる撮像の高感度用途のためのSHG検出器として用いられてもよい。幾つかの実施形態において、マルチチャネルプレート検出器、即ち、PMTに類似しているが、しかし複数の別個のチャネルを用いて更なる空間分解能を提供するマルチチャネルプレート検出器がSHG検出器として用いられてもよい。SHG検出器は、サンプリング材料から戻る測定ビームからλ
SHG波長を区別するために、光学フィルタを装備されてもよい。PMT又は類似の光検出器が用いられる場合、光電陰極材料が、λ
SHG波長に対する所望の感度用に選択されてもよい。更に、幾つかの例において、SHGサンプルビームの偏光は、サンプリング材料の特定の放射モードに対する追加の選択性のために用いられてもよい。高偏光感度放射モードは、サンプリング材料がヒト角膜組織である場合、コラーゲン原繊維の形態的特徴と関連付けられてもよい。SHGサンプルビームが偏光される場合、SHG検出器はまた、SHG信号ビームにおける様々な偏光方位を区別するために偏光フィルタを含んでもよい。
【0048】
ここで図面を参照すると、
図1は、眼疾患の生体力学的診断用の光学機器100を示すブロック図である。光学機器100は、一定の比率で縮小されて描かれているのではなく、概略表現である。図示のように、光学機器100は、ヒトの目を表し得るサンプル112を解析し、且つ特にヒトの目の角膜114を解析するために用いられる。また、光学機器100において、座標系120は、Zにおける軸方向、並びにX及びYにおける横方向を定義し、それらは、SHGサンプルビーム130及びブリルアンサンプルビーム131が軸方向Zにおいてサンプル112の方へ伝搬するようにサンプル112に関係する。従って、光学機器100は、空間的に相関される測定プロセスを用いて、サンプル112からブリルアン信号及びSHG信号の両方の同時捕捉を可能にする。このように、光学機器100は、多くの診断及び臨床応用において、サンプル112における眼組織の特定の物理的特性の改善された解析及び測定を可能にし得る。
【0049】
図示のように、光学機器100は、SHGサンプルビーム130が生成される元となるSHG光源102を含む。SHG光源102がfsファイバレーザである場合、λ
1波長は、特定の実施形態において1030ナノメートル(nm)であってもよく、λ
SHG波長は、それに応じて515nmであってもよい。光学機器100は、ブリルアンサンプルビーム132が生成される元となるブリルアン光源104を更に含む。ブリルアン光源104は、眼組織におけるブリルアン散乱に適した任意の狭帯域光源であってもよい。幾つかの実施形態において、ブリルアン光源104は、532nmの波長及び約1MHzの線幅を有する単一モード連続波レーザである。SHG光源102及びブリルアン光源104は、焦点位置116におけるサンプル112に対して共焦点になるように配置されてもよく、焦点位置116は、集束レンズ124を用いて調整されてもよい。
【0050】
図1において、SHGサンプルビーム130及びブリルアンサンプルビーム132は、部分ミラー110−1において単一の光路に組み合わされる。SHGサンプルビーム130及びブリルアンサンプルビーム132の組み合わせビームは、サンプル112における様々な位置を走査するために、スキャナ118を用いてX−Y平面において空間的に変調されてもよい。従って、スキャナ118は、角膜114における異なる関心領域など、サンプル112における様々な位置をサンプリングするために、X−Y平面における焦点位置116を変調してもよい。スキャナ118から、SHGサンプルビーム130及びブリルアンサンプルビーム132の組み合わせビームは、集束レンズ124を介し、部分ミラー110−2においてサンプル112に伝搬してもよい。集束レンズ124は、Z軸に沿って焦点位置116を変更するために、任意の適切な機構を用いてZ軸において調整可能であってもよい。従って、
図1に示されている実施形態において、SHGサンプルビーム130及びブリルアンサンプルビーム132は、部分ミラー110−1から共通の光路に沿ってサンプル112に伝搬され、部分ミラー110−1は、SHGサンプルビーム130及びブリルアンサンプルビーム132の両方のための共通の光学的出発点としての役割を果たす。
【0051】
部分ミラー110−2からサンプル112へ、SHGサンプルビーム130及びブリルアンサンプルビーム132の組み合わせビームは、サンプル112の表面に対して垂直又はほぼ垂直な方向でサンプル112に伝搬してもよい。組み合わせビームが特定のビーム幅を有する点で、集束レンズ124は、焦点位置116における所望のサンプル領域へとSHGサンプルビーム130及びブリルアンサンプルビーム132を束ね得る。次に、SHG信号ビーム131及びブリルアン信号ビーム133の組み合わせビームは、部分ミラー110−2の方へサンプル112から逆に散乱されてもよい。光学機器100に示されているサンプリングジオメトリは例示的であり、異なる実施形態において修正されてもよいことに留意されたい。
【0052】
部分ミラー110−2から部分ミラー110−3へ、SHG信号ビーム131及びブリルアン信号ビーム133の組み合わせビームは、アパーチャ122を通って伝搬してもよい。アパーチャ122は、SHG信号ビーム131及びブリルアン信号ビーム133に対して共焦点的な方法で配置されてもよい。アパーチャ122は、例えば、スキャナ118に依存して、SHG信号ビーム131及びブリルアン信号ビーム133における光子を特定の走査角に制限するために用いられてもよい。従って、アパーチャ122は、スキャナ118によって用いられる走査角に依存して機械的に調整可能であり得る。他の実施形態において、集束レンズ124は、例えばアパーチャ122が固定されている場合、SHG信号ビーム131及びブリルアン信号ビーム133がアパーチャ122と位置合わせされるように、SHGサンプルビーム130及びブリルアンサンプルビーム132を中心に置くか又は位置合わせするために用いられてもよい。
【0053】
部分ミラー110−3において、SHG信号ビーム131は、検出レンズ126を介してSHG検出器106に導かれてもよく、一方でブリルアン信号ビーム133は、検出レンズ128を介してブリルアン検出器108に導かれてもよい。両方の検出レンズ126及び128は、SHG信号ビーム131及びブリルアン信号ビーム133に対して共焦点的な方法で配置されてもよい。SHG検出器106は、上記のように、PMT又はマルチチャネルプレート検出器など、SHG信号ビーム131用の任意の適切な検出器であってもよい。
【0054】
ブリルアン検出器108は、ブリルアン散乱からレイリー散乱を区別するのに適した高分解能分光計を含んでもよい。レイリー散乱ビームがブリルアン散乱ビームより著しく大きい振幅を有し得、且つ両方の散乱ビームがスペクトル的に比較的一緒に近く位置し得るため、ブリルアン検出器108は、高スペクトル分解能及びまた高スペクトルコントラストを有してもよい。特定の実施形態において、ブリルアン検出器108は、光センサとして電荷結合素子(CCD)アレイを含んでもよい。
【0055】
光学機器100の動作において、SHGサンプルビーム130及びブリルアンサンプルビーム132の組み合わせビームは、焦点位置116に共焦点的な方法で伝搬されてもよく、焦点位置116は、スキャナ118を用いてX−Y平面において変調されてもよい。焦点位置116は、集束レンズ124を用いてZにおいて変調されてもよい。このように、サンプル112における様々なポイント、ライン、領域及び体積が光学機器100を用いて走査及び解析され得る。
【0056】
焦点位置116において、ブリルアン信号ビーム133は、ブリルアン検出器108によって測定されてもよい。具体的には、ブリルアン検出器108は、ブリルアン信号ビーム133におけるサイドバンドの1つ(又は両方)(ストーク又は反ストークのいずれか)における周波数シフトf
Bを測定してもよい。ブリルアン検出器108はまた、サイドバンドの1つ又は両方における線幅Δf
Bを測定してもよい。式8及び9に関連して上記で説明したように、測定された周波数シフトf
B及び測定された線幅Δf
Bを用いて、焦点位置116における弾性力学的特性及び粘弾性特性が決定され得る。
【0057】
同時に同じ焦点位置116から、SHG信号ビーム131は、SHG検出器106によって測定されてもよい。具体的には、SHG検出器106は、SHG信号ビーム131におけるλ
SHG波長の信号振幅を記録してもよい。特に、SHG検出器106は、λ
SHG波長の小さい振幅に敏感であってもよい。λ
SHG波長の信号振幅が焦点位置116におけるコラーゲン原繊維の形態構造を示すため、SHG検出器106によって記録される信号振幅は、サンプル112における眼組織の特定の画像を生成するために用いられてもよい。このように、SHG検出器106によって生成された画像情報は、焦点位置116における弾性力学的特性及び粘弾性特性と空間的に正確に相関され得る。光学機器100によって生成された結果のデータは、焦点位置116におけるサンプル112の状態のより詳細な理解及び解析を提供し、且つ様々な眼疾患の初期の生体力学的診断を可能にし得る。
【0058】
光学機器100の様々な実施形態又は配置において、異なる実装形態、レイアウト及びビームの方向転換が用いられてもよいことに留意されたい。例えば、光学機器100において用いられる光路の特定の部分は、光ファイバを含んでもよい。幾つかの実施形態において、光学機器100において用いられる光路の特定の部分は、光導波路を含んでもよい。光学機器100において用いられる光路の特定の部分は、真空、自由空間、ガス環境又は大気などの媒体内の光路を表してもよい。所与の実施形態において、偏光要素がSHGサンプルビーム130及びブリルアンサンプルビーム132の少なくとも1つと共に用いられてもよく、偏光フィルタがSHG信号ビーム131及びブリルアン信号ビーム133の少なくとも1つを検出する場合に用いられてもよい。別の配置において、スキャナ118は省略されてもよく、対物レンズなどの別の走査要素が用いられてもよい。特定の実施形態において、光学機器100に含まれる光学コンポーネントの少なくとも一部は、小型ユニット全体が外部走査要素によって保持されサンプル112に対して移動されるように、比較的小さい質量及び外形寸法を有するコンパクトユニットへと小型化され組み合わされてもよい。また、座標系120の異なる方位が光学機器100の特定の実施形態において用いられてもよい。
【0059】
様々な実施形態において、光学機器100は、ヒト角膜基質における原繊維又は微小繊維などの角膜層間の生物学的構造物を特徴付けるか又は解析するために用いられてもよい。
【0060】
光学機器100が、一定の比率で縮小されて描かれているのではなく、概略表現であることに留意されたい。光学機器100に対する修正形態、追加形態又は省略形態が本開示の範囲から逸脱せずになされ得る。本明細書で説明されるように、光学機器100のコンポーネント及び要素は、特定の用途に従って統合又は分離されてもよい。更に、光学機器100の動作は、より多数の、より少数の又は他のコンポーネントによって実行されてもよい。
【0061】
ここで
図2を参照すると、本明細書で説明されるように、眼疾患の生体力学的診断を実行するための方法200の実施形態における選択された要素のブロック図がフローチャート形式で示されている。方法200は、光学機器100(
図1を参照)によって実行されてもよい。方法200において説明される特定の動作が、任意選択であってもよく、又は異なる実施形態において再配置されてもよいことに留意されたい。
【0062】
方法200は、光学的出発点を共有する第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームを生成することにより、ステップ202で始まる。ステップ204において、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームは、生物組織サンプルにおける焦点位置に対して共焦点的な方法で生物組織サンプルに伝搬される。ステップ206において、第1のサンプルビームによって焦点位置から後方散乱された第1の光子を含む第1の信号ビームは、ブリルアン散乱検出器を用いて検出される。ステップ208において、第2のサンプルビームによって焦点位置から後方散乱された第2の光子を含む第2の信号ビームは、第二高調波発生(SHG)検出器を用いて検出される。ステップ210において、焦点位置における生物組織サンプルの弾性力学的特性及び粘弾性特性は、第1の信号ビームから決定される。ステップ212において、焦点位置における生物組織サンプルの形態構造の指標は、第2の信号ビームから決定される。
【0063】
ここで
図3を参照すると、本明細書で説明されるように、眼疾患の生体力学的診断を実行するための方法300の実施形態における選択された要素のブロック図がフローチャート形式で示されている。方法300は、光学機器100(
図1を参照)によって実行されてもよい。特定の実施形態において、方法300は、方法200のステップ204に関する更なる詳細を含んでもよい。方法300において説明される特定の動作が、任意選択であってもよく、又は異なる実施形態において再配置されてもよいことに留意されたい。
【0064】
方法300は、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームと平行な第1の軸に沿って、生物組織サンプル内の焦点位置の軸方向位置を変更することにより、ステップ302で始まる。ステップ304において、焦点位置の横方向位置は、第1の軸に垂直な第2の軸及び第3の軸の少なくとも1つに沿って生物組織サンプル内で変更される。ステップ306において、生物組織サンプルは、第1のサンプルビーム及び第2のサンプルビームの両方が生物組織サンプルにおける異なる共通位置に導かれるように第2の信号ビームを用い、且つ焦点位置の軸方向位置及び焦点位置の横方向位置の少なくとも1つを変更することを含んで、画像データを生成するために走査される。
【0065】
本明細書で開示されるように、眼疾患の生体力学的診断を実行するための方法及びシステムは、ブリルアンサンプルビームを生成するブリルアン光源及びSHGサンプルビームを生成する第二高調波発生(SHG)光源を含んでもよい。ブリルアンサンプルビーム及びSHGサンプルの両方は、生物組織サンプルへと焦点位置まで共焦点的な方法で同時に導かれてもよい。ブリルアンサンプルビームに起因するブリルアン散乱は、サンプルの弾性力学的特性及び粘弾性特性を決定するために検出されてもよい。SHGビームに起因するSHG散乱は、サンプルの形態構造の指標を決定するために検出されてもよい。サンプルは、生体内のヒト角膜であってもよい。
【0066】
図2の方法200及び
図3の方法300は、サンプルビームの位置、強度又は他の特性を生成又は制御するように、且つ検出された信号ビームを処理するようにプログラムされたコンピュータを用いて実行されてもよい。幾つかの実施形態において、かかるプログラムされたコンピュータは、
図1に示されている光学機器100の一部であってもよい。幾つかの実施形態において、プログラムされたコンピュータは、方法200又は300の少なくとも特定の部分を実行するために有線又は無線で光学機器100に接続されてもよい。プログラムされたコンピュータは、SHG光源102、ブリルアン光源104、集束レンズ124、部分ミラー110、スキャナ118、SHG検出器106、ブリルアン検出器108及びアパーチャ122と一体のコンポーネントなどの専用コンポーネントを含んでもよい。例えば、プログラムされたコンピュータは、検出された信号ビームに応じて、上記のコンポーネントの1つ又は複数における状態を変化させる1つ又は複数のスイッチを含むか又はそれを制御してもよい。例えば、信号ビームの焦点が合っていない場合、プログラムされたコンピュータは、1つ又は複数のスイッチを用いるか、そうでなければ集束レンズ124、部分ミラー110又はアパーチャ122の位置若しくはサイズの変化を引き起こしてもよい。第1の例と両立しないわけではない別の例において、信号ビームが正確な強度でない場合、プログラムされたコンピュータは、1つ又は複数のスイッチを用いるか、そうでなければSHG光源102又はブリルアン光源104における変化を引き起こしてもよい。
【0067】
検出された信号ビームの処理は、サンプルビームの位置、強度又は他の特性を生成又は制御することに向けられた態様、及び生物組織サンプルの生体力学的特性に関する情報を生成することに向けられた態様を含んでもよい。例えば、特定の処理は、信号ビームの1つ又は複数の態様が良好でない場合に警告を発生してもよい。特定の処理は、生体力学的特性を反映する視覚表示を生成してもよい。かかる表示は、特に生物組織サンプルにおける異なる位置からの生体力学的特性が含まれる場合、実時間において又は幾らかの遅延後に生成されてもよい。
【0068】
プログラムされたコンピュータは、互いに通信してもしなくてもよい2つ以上のコンピュータを含んでもよい。例えば、1つのコンピュータは、検出された信号ビームに関するデータを受信し、且つサンプルビームの位置、強度又は他の特性を生成又は制御するためにデータを用いてもよく、一方で別個のコンピュータは、検出された信号ビームに関するデータを受信し、且つその情報を用いて、生物組織サンプルの生体力学的特性に関する情報を生成してもよい。
【0069】
ここで
図4を参照すると、信号処理システム400の実施形態における選択された要素を示すブロック図が示されている。
図4に示されている実施形態において、信号処理システム400は、計算装置402を含み、計算装置402は、ブリルアン検出器108及びSHG検出器106に結合され、一方で計算装置402は、共有バス406を介して、メモリ410と集合的に識別される記憶媒体に結合されたプロセッサ404を含む。図示のように、信号処理システム400は、本明細書で開示されるように、眼疾患の生体力学的診断用に、
図1における光学機器100に含まれてもよい。
【0070】
様々な実施形態において、計算装置402は、ネットワークにインタフェースするためのネットワークアダプタを含んでもよい。計算装置402は、様々な入力及び出力装置に接続する周辺アダプタを含んでもよい。例えば、計算装置402は、本明細書で説明されるように、眼疾患の生体力学的診断用の出力信号を受信するために、入力装置を介してブリルアン検出器108及びSHG検出器106と通信してもよい。計算装置402はまた、光学機器100の様々な態様を制御するために、出力装置を介してブリルアン検出器108、SHG検出器106又は他のコンポーネントと通信してもよい。
【0071】
メモリ410は、数ある中で、様々な持続性記憶媒体、揮発性メモリ媒体、固定メモリ媒体及び着脱可能なメモリ媒体のいずれかを表してもよい。メモリ410は、命令、データ又はその両方を格納するように動作可能であってもよい。図示のように、メモリ410は、プロセッサ404によって実行可能な命令又はコード、即ちオペレーティングシステム(OS)412及び眼疾患診断アプリケーション414を格納する。オペレーティングシステム412は、UNIX(登録商標)又はUNIX(登録商標)系のオペレーティングシステム、Windows(登録商標)ファミリーオペレーティングシステム、埋め込みオペレーティングシステム、又は別の適切なオペレーティングシステムであってもよい。眼疾患診断アプリケーション414は、上記のように、方法200及び300並びに関連する機能の少なくとも特定の部分を実行するために、プロセッサ404によって実行可能な命令又はコードを表してもよい。
【0072】
上記で開示された主題は、実例であり限定ではないと考えられるべきであり、添付の請求項は、本開示の真の趣旨及び範囲内に入る全ての修正形態、改善形態及び他の実施形態を含むように意図されている。従って、法律によって可能とされる最大限の程度まで、本開示の範囲は、次の請求項及びそれらの均等物の最も広い許容可能な解釈によって決定されるべきであり、且つ前述の詳細な説明によって制限も限定もされないものとする。