(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
〈空気調和装置の全体構成〉
図1に示すように、空気調和装置(100)は、空気を調和することによって環境試験室(200)の室内の温度及び相対湿度を一定に保つものである。
【0021】
空気調和装置(100)は、主として0℃以下を含む所定の範囲で空気の温度を調節する温度調節部(10)と、空気を加湿する加湿装置(20)と、温度調節部(10)及び加湿装置(20)を通過した空気の温度及び湿度を測定する温湿度センサ(42)とを備える。また、空気調和装置(100)の各構成要素、及び、空気調和装置(100)によって処理された空気が導入される環境試験室(200)は、ダクト等である風路(101)によって互いに接続されている。なお、本開示において「上流」及び「下流」とは、風路(101)における空気の流れを示す。
【0022】
〈温度調節部〉
温度調節部(10)は、主として、吸込ファン(12)、ブラインクーラ(13)及び電気ヒータ(14)を備えている。
【0023】
吸込ファン(12)は、温度調節部(10)に設けられた空気吸込口(11)の近傍に設けられる。吸込ファン(12)は、空気吸込口(11)から吸い込んだ空気を下流側に送風する。ブラインクーラ(13)は、図示しないチラ−装置から供給されたブラインを空気と熱交換させる熱交換器である。ブラインクーラ(13)は吸込ファン(12)の下流側に設置される。電気ヒータ(14)は、ブラインクーラ(13)の下流側に配置されている。温度調節部(10)は、電気ヒータ(14)の下流側に、空気の温度及び湿度を測定する温湿度センサ(15)を備えてもよい。
【0024】
温度調節部(10)の内部で、風路(101)は、加湿装置(20)へ通じる加湿風路(102)と、加湿装置(20)をバイパスするバイパス風路(103)とに分岐する。温度調節部(10)は、加湿風路(102)を流れる空気の速さを調整するファン(16)を備えてもよい。温度調節部(10)には、加湿側空気吹出口(17)及びバイパス側空気吹出口(18)が設けられる。
【0025】
〈加湿装置〉
加湿装置(20)は、風路(101)内を通過する空気を加湿する。加湿装置(20)は、水が貯留される加湿パン(21)を有する。加湿装置(20)には、空気吸込口(24)と空気吹出口(25)とが設けられる。加湿側空気吹出口(17)を通過した空気は、空気吸込口(24)から加湿装置(20)内に流入する。この空気は、加湿パン(21)内の水から蒸発される水蒸気により加湿された後、空気吹出口(25)へ流出する。加湿装置(20)の詳細は後述する。
【0026】
〈流量調節部〉
空気調和装置(100)は、加湿風路(102)へ流入する空気流量と、バイパス風路(103)へ流入する空気流量との比率を調節する流量調節部(30)をさらに備える。流量調節部(30)は、温度調節部(10)の下流側に配置される。流量調節部(30)は、加湿風路(102)に設けられた開度可変の加湿ダンパ(31)と、バイパス風路(103)に設けられた開度可変のバイパスダンパ(32)とを有する。
【0027】
また、空気調和装置(100)は、加湿風路(102)を通過した空気と、バイパス風路(103)を通過した空気とを混合する混合ボックス(33)を有する。混合ボックス(33)は、加湿装置(20)の下流側に配置される。混合ボックス(33)には、加湿風路(102)と接続する加湿側空気吸込口(34)と、バイパス風路(103)と接続するバイパス側空気吸込口(35)と、混合空気を温湿度センサ(42)の方へ吹き出す混合空気吹出口(36)とが設けられている。
【0028】
〈温湿度センサ〉
温湿度センサ(42)は、センサ取付チャンバ(41)に配置される。センサ取付チャンバ(41)は、混合ボックス(33)と環境試験室(200)との間に配置される。
【0029】
〈制御部〉
空気調和装置(100)において、加湿装置(20)による加湿量は、制御部である湿度指示調節計(53)、パン水位制御部(54)及び空気流量制御部(55)によって制御される。また、加湿パン(21)の水温は、パン水温制御部(51)によって制御される。各制御については後述する。
【0030】
以上のように、温度調節部(10)内へ流入した空気は、所定の温度に調節された後、流量調節部(30)によって、バイパス風路(103)と加湿風路(102)とに分配される。加湿風路(102)を通過する空気は、加湿装置(20)によって、所定量加湿された後、混合ボックス(33)にて、バイパス風路(103)を通過した空気と混合される。この空気は、温湿度センサ(42)を経由して、環境試験室(200)内に供給される。その後、環境試験室(200)内の空気は、温度調節部(10)に還気される。このように、空気調和装置(100)は、環境試験室(200)内の空気の温湿度を調節している。
【0031】
−加湿装置−
図2〜
図4に示すように、加湿装置(20)は、加湿パン(21)、加湿風路形成部(107)、水位調節機構(120)、温度センサ(26)、仕切り板(99)ヒータ(23)、タンク(91)、第1連通管(92a)、第2連通管(92b)及び水位センサ(27)を備える。
【0032】
〈加湿パン〉
図2及び
図3に示すように、加湿パン(21)は、水が貯留される貯留部である。加湿パン(21)は、底部(71)、側壁部(75)及び枠部(74)を備える。加湿パン(21)は、上面が開口したトレイ状である。加湿パン(21)は、前記開口が加湿装置(20)内の加湿風路(102)に面するように配置される。
【0033】
底部(71)は、傾斜面(72)と凹部(73)とで構成される。
【0034】
傾斜面(72)は、加湿パン(21)の水位に応じて、水面の面積を変化させる面積変化部(72)を構成する。傾斜面(72)は、矩形状である。傾斜面(72)は、加湿パン(21)における空気の下流側(以下、単に下流側ともいう)から、加湿パン(21)における空気の上流側(以下、単に上流側ともいう)に向かって下方に傾斜している。このような構成により、傾斜面(72)は、水位が上昇するにつれて水面の面積が次第に増加する形状となる。
【0035】
凹部(73)は、傾斜面(72)の下端から下方に凹むように形成される。凹部(73)の底面は、矩形である。凹部(73)は、加湿パン(21)の幅方向に亘って形成される。
【0036】
側壁部(75)は、第1側壁(75a)、第2側壁(75b)、第3側壁(75c)及び第4側壁(75d)から構成される。
【0037】
第1側壁(75a)は、加湿パン(21)の上流側に配置される。凹部(73)の上流側の端部から立設している。第1側壁(75a)は、矩形である。第1側壁(75a)には、給水口(81)、第1排水口(82)、温度センサ取付口(83)、第2排水口(84)、及びオーバーフロー口(85)が開口されている。
【0038】
給水口(81)は、第1側壁(75a)の下端寄りに設けられている。給水口(81)は凹部(73)の内部と連通する。給水口(81)は、給水管(104)に接続される。
【0039】
第1排水口(82)は、傾斜面(72)の下端と同じ高さ位置に設けられている。厳密には、第1排水口(82)の軸心と、傾斜面(72)の下端の高さ位置とが概ね一致している。第1排水口(82)は、第1排水管(105)に接続される。第1排水口(82)は、後述の水位調節機構(120)が、加湿パン(21)内の水位を下げる方向に調節するために使用される。
【0040】
温度センサ取付口(83)は、温度センサ(26)が取付けられる孔である。温度センサ取付口(83)は、第1側壁(75a)の下端寄りに設けられている。温度センサ取付口(83)は、凹部(73)の内部と連通する。
【0041】
第2排水口(84)は、第1排水口(82)の直下にあり、凹部(73)の最も低い位置に設けられている。第2排水口(84)は、排水弁(図示省略)を備える第2排水管(図示省略)に接続されている。第2排水口(84)は、加湿パン(21)内の水をすべて排水するときに使用される。
【0042】
オーバーフロー口(85)は、第1側壁(75a)の上端付近に設けられている。オーバーフロー口(85)は、外部のオーバーフロー用排水管(図示省略)と接続される。加湿パン(21)内に過剰に給水されても、余剰の水はオーバーフロー口(85)から排水される。このことにより、加湿パン(21)から水が溢れることを抑制できる。
【0043】
第2側壁(75b)は、加湿パン(21)の下流側に配置される。第2側壁(75b)は、傾斜面(72)の上端から立設している。第2側壁(75b)は矩形状である。第2側壁(75b)の上端の高さ位置は、第1側壁(75a)の上端の高さ位置と同じである。第2側壁(75b)には、下端から設置面(F)まで延びる脚部(86)が設けられている。
【0044】
図2に示すように、第3側壁(75c)は、加湿パン(21)を上流側から見て、加湿パン(21)の右端に設けられる。第3側壁(75c)は、底部(71)から立設する。
【0045】
第3側壁(75c)には、第1連通孔(98a)及び第2連通孔(98b)が形成される。第1連通孔(98a)及び第2連通孔(98b)は、それぞれ第1連通管(92a)及び第2連通管(92b)が取付けられる孔である。第1連通孔(98a)は、凹部(73)に対応する位置、より厳密には、第2水位の高さ位置よりも低い位置に形成される。第2連通孔(98b)は、第1連通孔(98a)の上方、かつ第1水位の高さ位置よりも高い位置に形成される。
【0046】
第4側壁(75d)は、加湿パン(21)を上流側から見て、加湿パン(21)の左端に設けられる。第4側壁(75d)は、底部(71)から立設する。第4側壁(75d)には、取付口(89)が形成される。取付口(89)はヒータ(23)が取付けられる孔である。取付口(89)は、傾斜面(72)の下端よりも低い位置、具体的には凹部(73)に対応する高さ位置に形成される。
【0047】
枠部(74)は、矩形に形成されており、加湿パン(21)の開口した上面に設けられる。枠部(74)の内側の4隅には、枠部を補強するための板部材(74a)が取り付けられている。
【0048】
〈加湿風路形成部〉
加湿風路形成部(107)は、加湿対象となる空気が通る空気通路である。加湿風路形成部(107)は、下面が開口した直方体に形成される。加湿風路形成部(107)は、加湿パン(21)の上面を覆うように設けられる。
【0049】
加湿風路形成部(107)は、空気吸込口(24)及び空気吹出口(25)を備える。空気吸込口(24)は、加湿風路形成部(107)の上流側の側面に形成される。空気吹出口(25)は、加湿風路形成部(107)の下流側の側面に形成される。
【0050】
加湿風路形成部(107)の下面は、枠部(74)の上面に取付けられる。空気吸込口(24)から流入する空気は、加湿パン(21)の水面の上側を通過する間に加湿されて、空気吹出口(25)へ流出する。
【0051】
〈水位調節機構〉
図1に示すように、水位調節機構(120)は、加湿パン(21)内の水位を調節する。水位調節機構(120)は、第1排水口(82)、第1調節弁(29)、第1排水管(105)、給水口(81)、第2調節弁(28)、及び給水管(104)を有する。
【0052】
第1調節弁(29)は、第1排水管(105)に設けられ、加湿パン(21)からの排水量を調節する。第2調節弁(28)は、給水管(104)に設けられ、加湿パン(21)内への給水量を調節する。第1調節弁(29)及び第2調節弁(28)の開度は、パン水位制御部(54)により制御される。水位調節機構(120)は、第1水位と第2水位との間を調節する。第1水位は、傾斜面(72)の上端の高さ位置(H1)である。第2水位は、傾斜面(72)の下端の高さ位置(H2)である。
【0053】
〈仕切り板〉
図4に示すように、仕切り板(99)は、凹部(73)の下流側の上端から立設している。仕切り板(99)は、複数の貫通孔(90,90,…)が形成されたパンチングメタルからなる板状の部材である。給水口(81)から給水された水は、貫通孔(90,90,…)を通って下流側に移動する。このような構成により、給水速度が上昇しても、給水された水は、仕切り板(99)によって整流される。そのため、加湿パン(21)内の水面が乱れることを抑制できる。このことにより、水面の面積の僅かな変化を抑えることができる。
【0054】
〈温度センサ〉
温度センサ(26)は、加湿パン(21)内の水温を検知する。温度センサ(26)は、温度センサ取付口(83)から凹部(73)内に配置される。温度センサ(26)が検知した加湿パン(21)内の水温データは、パン水温制御部(51)へ出力される。
【0055】
〈ヒータ〉
ヒータ(23)は、プラグヒータである。
図4に示すように、ヒータ(23)は、取付口(89)に固定される。ヒータ(23)は凹部(73)内へ貫通している。ヒータ(23)が、取付口(89)に固定された状態において、ヒータ(23)の上端の高さ位置は、凹部(73)の上端の高さ位置よりも低い。
【0056】
〈タンク〉
図2及び
図4に示すように、タンク(91)は、加湿パン(21)と水平方向に離れて配置される。具体的に、タンク(91)は、第3側壁(75c)の前方、かつ、上流側において、設置面(F)から起立している。
【0057】
タンク(91)は、筒状の胴部(95)と、胴部(95)の下側の開口を閉塞する底板(96)と、胴部(95)の上側の開口を閉塞する上蓋(97)とを有する。胴部(95)は、上下に延びる縦長の円筒状に形成される。底板(96)は、円板状に形成され、設置面(F)に設置される。上蓋(97)は、タンク(91)の上端部分に形成される。
【0058】
胴部(95)には、第3連通孔(98c)及び第4連通孔(98d)が形成される。第3連通孔(98c)及び第4連通孔(98d)は、それぞれ第1連通管(92a)及び第2連通管(92b)が取付けられる孔である。第3連通孔(98c)は、第1連通孔(98a)と同じ高さ位置に形成される。第4連通孔(98d)は、第2連通孔(98b)と同じ高さ位置に形成されている。
【0059】
〈第1連通管〉
第1連通管(92a)は、加湿パン(21)とタンク(91)とを連通する円筒管である。第1連通管(92a)は、第1連通孔(98a)と第3連通孔(98c)とに接続している。第1連通管(92a)は、第1連通孔(98a)から第3連通孔(98c)まで水平に延びている。
【0060】
第1連通管(92a)の内部には、第1連通路(93a)が形成される。第1連通路(93a)は、加湿パン(21)とタンク(91)との間を水が流出入する通路である。
【0061】
〈第2連通管〉
第2連通管(92b)は、加湿パン(21)とタンク(91)とを連通する円筒管である。第2連通管(92b)は、第1連通管(92a)と同一形状である。第2連通管(92b)は、第2連通孔(98b)と第4連通孔(98d)とに接続している。第2連通管(92b)は、第2連通孔(98b)から第4連通孔(98d)まで水平に延びている。
【0062】
第2連通管(92b)の内部には、第2連通路(93b)が形成される。第2連通路(93b)は、加湿パン(21)とタンク(91)との間を空気が流出入する通路である。
【0063】
〈水位センサ〉
水位センサ(27)は、タンク(91)内の水位を検知する水位検知部である。水位センサ(27)は、ガイドパルス式のレベルセンサである。水位センサ(27)は、本体(27a)とプローブ(27b)とを備える。プローブ(27b)は、本体(27a)から下方に延びる棒状の部品である。本体(27a)はタンク(91)の上蓋(97)に設置される。プローブ(27b)は、上蓋(97)を貫通するようにタンク(91)内に設置される。この状態で、プローブ(27b)の下端は、第1連通路(93a)よりも低い高さ位置まで延びている。水位センサ(27)は、タンク(91)内の水位を第1水位と第2水位との間で検知する。
【0064】
水位センサ(27)は、プローブ(27b)がタンク(91)内の水に浸かった状態で、本体(27a)からプローブ(27b)にパルス信号を送信する。水位センサ(27)は、パルス信号を送信してから、このパルス信号が液面を反射して本体(27a)に受信されるまでの時間を測定することにより、タンク(91)内の液面高さを検知する。
送信したパルス信号が液面を反射した後、本体(27a)が当該パルス信号を受信するまでの時間を測定することによって、タンク(91)内の液面高さを検知する。
【0065】
−空気調和装置の制御−
次に各制御について説明する。
図1に示すように、空気調和装置(100)において、加湿装置(20)による加湿量は、制御部である湿度指示調節計(53)、空気流量制御部(55)及びパン水位制御部(54)によって制御される。
【0066】
〈空気流量制御〉
空気流量制御部(55)は、流量調節部(30)を制御する。具体的には、空気流量制御部(55)は、予め設定された湿度の目標設定値、及び、湿度指示調節計(53)から出力された目標水位(出力値より換算される)に基づいて、加湿風路(102)に設けられた加湿ダンパ(31)及びバイパス風路(103)に設けられたバイパスダンパ(32)のそれぞれの開度を制御する。ここで、加湿ダンパ(31)の開度を大きくすること、及び/又は、バイパスダンパ(32)の開度を小さくすることによって、バイパス風路(103)へ流入する空気の流量に対する加湿風路(102)へ流入する空気の流量の比率が増大して加湿量が増大する。一方、加湿ダンパ(31)の開度を小さくすること、及び/又は、バイパスダンパ(32)の開度を大きくすることによって、バイパス風路(103)へ流入する空気の流量に対する加湿風路(102)へ流入する空気の流量の比率が減少して加湿量が減少する。
【0067】
尚、空気を除湿するために、環境試験室(200)と温度調節部(10)との間に混合ボックス(61)を介して除湿機(62)を配置してもよい。
【0068】
〈水温制御〉
空気調和装置(100)において、加湿パン(21)に貯留された水の温度を調整するヒータ(加熱部)(23)は、パン水温制御部(51)によって制御される。パン水温制御部(51)は、予め設定された目標温度、及び温度センサ(26)によって測定された水の水温に基づいて、ヒータ(23)の出力を制御する。
【0069】
〈水位制御〉
湿度指示調節計(53)は、予め設定された目標湿度、及び、温湿度センサ(42)によって測定された空気の湿度に基づき、パン水位制御部(54)の目標水位を出力する。
【0070】
パン水位制御部(54)は、湿度指示調節計(53)から出力された目標水位、及び加湿パン(21)の水位に基づいて、水位調節機構(120)を制御する。
【0071】
空気への加湿量を増加させるときは、水位調節機構(120)は加湿パン(21)内の水位を上昇させる第1動作を行う。具体的には、水位調節機構(120)は、第1調節弁(29)を閉じた状態で第2調節弁(28)を開放する。加湿パン(21)は、給水口(81)から加湿パン(21)内に給水される。加湿パン(21)内の水位が上昇すると共に、水面の面積が拡大する。このことにより、第1動作では、加湿風路(102)内の空気への加湿量が増大する。
【0072】
空気への加湿量を減少させるときは、水位調節機構(120)は、加湿パン(21)内の水位を下降させる第2動作を行う。具体的には、水位調節機構(120)は、第2調節弁(28)を閉じた状態で第1調節弁(29)を開放する。このことにより、第1排水口(82)から加湿パン(21)内の水が排水される。加湿パン(21)内の水位が下降すると共に、水面の面積が縮小する。このことにより、第2動作では、加湿風路(102)内の空気への加湿量が減少する。
【0073】
−水位制御に係る課題−
本実施形態の加湿装置(20)は、加湿パン(21)の水位を調節することで、加湿パン(21)の水面の面積を変化させ、ひいては空気の加湿量を調節している。この加湿量の調節は、上述したように、水位センサ(27)で検出した水位を目標水位に収束させることで実現される。ところが、加湿パン(21)の水面は、加湿風路形成部(107)を流れる空気によって乱れる。このため、仮に加湿パン(21)の内部に水位センサ(27)を設け、加湿パン(21)の水位を検知しようとすると、水面の乱れに起因して加湿パン(21)の水位を正確に検知できない。
【0074】
加湿パン(21)の水位を正確に検知できなくなると、この水位を目標水位に収束させたとしても、空気の加湿量に誤差が生じる。従って、加湿装置(20)による空気の加湿量の精度が低下してしまうという問題があった。
【0075】
−タンクの作用−
本実施形態では、上記のような課題を考慮し、上述した構成を採用している。具体的には、タンク(91)は、加湿装置(20)から水平方向に離れて配置される。タンク(91)の上部には上蓋(97)が取付けられている。そのため、タンク(91)内の水面は加湿風路形成部(107)の空気流れの影響を受けない。
【0076】
タンク(91)と加湿パン(21)とは、第2水位の高さ位置(H2)よりも低い高さ位置で、第1連通管(92a)により連通している。そのため、水は、第1連通管(92a)を通って、加湿パン(21)内とタンク(91)内との間を流出入する。タンク(91)は、第1水位の高さ位置(H1)よりも高い高さ位置で、第2連通管(92b)によって加湿パン(21)に連通している。そのため、加湿パン(21)内の水の水面に作用する圧力と、タンク(91)内の水の水面に作用する圧力は等しくなる。そのため、加湿パン(21)内の水位とタンク(91)の水位の高さ位置は等しくなる。
【0077】
第1動作では、水位調節機構(120)は、加湿パン(21)の水位を目標水位にまで上昇させる。加湿パン(21)内に給水されている間、加湿パン(21)内の水は第1連通路(93a)を通って、タンク(91)内に流入する。このとき、タンク(91)内の水位は、加湿パン(21)の水位と同じ高さ位置を保った状態で上昇する。タンク(91)内の水位が目標水位まで上昇したことを水位センサ(27)が検知したとき、水位調節機構(120)は、第1動作を停止する。第1動作が停止すると、タンク(91)内の水位は、加湿パン(21)の水位と同じ高さ位置を維持した状態で停止する。
【0078】
第2動作では、水位調節機構(120)は、加湿パン(21)の水位を目標水位にまで下降させる。加湿パン(21)内から排水されている間、タンク(91)内の水は、第1連通路(93a)を通って、加湿パン(21)内に流入する。このとき、タンク(91)内の水位は、加湿パン(21)の水位と同じ高さ位置を保った状態で下降する。タンク(91)内の水位が目標水位まで下降したことを水位センサ(27)が検知したとき、水位調節機構(120)は、第2動作を停止する。第2動作が停止すると、タンク(91)内の水位は、加湿パン(21)内の水位と同じ高さ位置を維持した状態で停止する。
【0079】
以上のように、水位センサ(27)は、空気流れの影響を受けないタンク(91)内に設けられ、タンク(91)内の水位を検出することで加湿パン(21)の水位を間接的に検出する。このため、水面の乱れに起因して水位の検出精度が低下することを抑制でき、ひいては空気の加湿量の精度を向上できる。
【0080】
−実施形態の効果−
本実施形態では、水が貯留されるとともに上側が開放される加湿パン(21)(貯留部)と、加湿パン(21)の少なくとも上側に形成される加湿風路形成部(107)(空気通路)とを備え、加湿パン(21)の水面から加湿風路形成部(107)を流れる空気に水蒸気を供給する加湿装置(20)であって、タンク(91)(補助貯留部)と、加湿パン(21)とタンク(91)とを連通する少なくとも1つの連通路(93a,93b)とを備える。タンク(91)は、タンク(91)の水面が加湿風路形成部(107)に露出しないように構成され、タンク(91)の水位を検知する水位センサ(27)(水位検知部)をさらに備える。
【0081】
本形態では、加湿パン(21)とタンク(91)と間で連通路(93a,93b)を介して水が流出入する。このため、水位検知部(27)によりタンク(91)の水位を検知することで、加湿パン(21)の水位を間接的に検知できる。タンク(91)の水面は、加湿風路形成部(107)に露出しないため、その水面が空気流れの影響により乱れることを抑制できる。したがって、タンク(91)の水面を水位センサ(27)で検出することにより、加湿パン(21)の水位の検知精度を向上できる。
【0082】
加えて、加湿風路形成部(107)を流れる空気の流量(厳密には流速)が変化すると、加湿パン(21)の水面の乱れも変化する。このため、水位センサ(27)により加湿パン(21)の水位を検出すると、空気の流速の変化に起因して検出水位にバラツキが生じる。これに対し、本実施形態では、空気流れの影響を受けないタンク(91)内の水位を検出している。このため、加湿風路形成部(107)を流れる空気の流速の影響により、加湿パン(21)の検知水位にバラツキが生じることも抑制できる。
【0083】
本実施形態では、前記貯留部(21)は、該貯留部(21)の水位に応じて前記空気通路(107)に露出する水面の面積を変化させる面積変化部(72)を有し、前記水位検知部(27)が検知した水位に応じて、前記貯留部(21)の水位を第1水位と前記第1水位よりも低い第2水位との間で変化させる水位調節機構(120)を備え、前記少なくとも1つの連通路(93a,93b)は、前記第2水位以下の高さ位置に設けられる第1連通路(93a)を含んでいる。
【0084】
本形態では、水位調節機構(120)により、水位検知部(27)が検知した水位に応じて加湿パン(21)の水位が変化する。面積変化部(72)により、加湿風路形成部(107)内に露出する水面の面積は変化する。従って、加湿パン(21)内の水位を変化させることによって、空気への加湿量を調節できる。特に、水位センサ(27)により加湿パン(21)の水位の検知精度が向上すると、加湿パン(21)内の水位を目標水位に収束させることができる。このことにより、空気への加湿量に誤差が生じることを抑制でき、ひいては、空気への加湿量の調節の精度も向上できる。
【0085】
加えて、第1連通路(93a)は、第2水位以下の高さ位置に設けられるため、加湿パン(21)の水位が第2水位以上であれば、加湿パン(21)の水は必ずタンク(91)内に送られる。このため、タンク(91)内において、第2水位から第1水位までの間の水位を水位センサ(27)により検知できる。
【0086】
加えて、面積変化部(72)によって容易に加湿パン(21)の水面の面積を変化させることができる。このことにより空気への加湿量を容易に調節できる。
【0087】
本実施形態では、前記補助貯留部(91)は、上部が閉塞されたタンク(91)で構成される。
【0088】
本形態では、タンク(91)の水面からの蒸発を抑制できる。このため、加湿パン(21)に供給された水を空気の加湿のみに利用できる。
【0089】
本実施形態では、前記少なくとも1つの連通路(93a,93b)は、前記貯留部(21)と前記タンク(91)とを連通すると共に、前記第1水位以上の高さ位置に設けられる第2連通路(93b)を含んでいる。
【0090】
本形態では、第2連通路(93b)により、タンク(91)内の水面に作用する圧力と加湿パン(21)内の水面に作用する圧力とを等しくできる。そのため、加湿パン(21)内の水位と、タンク(91)の水位の高さ位置を等しくできる。このことにより、加湿パン(21)内の水位の検知精度を向上できる。
【0091】
本実施形態では、前記貯留部(21)と、前記補助貯留部(91)とは水平方向に離れて配置され、前記連通路(93a,93b)は、連通管(92a,92b)で構成されている。
【0092】
本形態では、タンク(91)と加湿パン(21)とを別体とし、これらを離して配置できる。そのため、例えばタンク(91)の故障により加湿装置(20)が正常に作動しなくなっても、タンク(91)のみを修理及び交換できる。
【0093】
本実施形態では、前記補助貯留部(91)は、縦長の筒状に形成されている。
【0094】
タンク(91)の水面の面積を小さくできる。そのことにより、加湿パン(21)の水位変化に伴うタンク(91)の水位の応答性を向上できる。特に、給排水に伴って加湿パン(21)の水位は上下移動する。このとき、加湿パン(21)の水位移動に応じて、タンク(91)の水位も移動する。このことにより、加湿パン(21)の水位の検知精度をさらに向上できる。
【0095】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0096】
上記実施形態の加湿パン(21)とタンク(91)との間の連通管(92a,92b)を省略した構成としてもよい。具体的に、加湿パン(21)とタンク(91)とが一体化される。加湿パン(21)の内部とタンク(91)の内部とは、1つの側壁によって仕切られる。側壁には、加湿パン(21)とタンク(91)とを連通する第1連通路(93a)及び第2連通路(93b)が形成される。第1連通路(93a)は、第2水位以下の高さ位置に設けられる。第2連通路(93b)は、第1水位以上の高さ位置に設けられる。
【0097】
上記実施形態の補助貯留部(91)は、縦長の筒状であれば水平断面が多角形でもよい。
【0098】
上記実施形態の加湿パン(21)において、面積変化部(72)は曲面であってもよい。また、加湿パン(21)の底部(71)は、複数の面積変化部(72)を有していてもよい。
【0099】
水位検知部(27)は、静電容量式、超音波式、電極式、レーザ式、光式、振動式、又は差圧式のレベルセンサであってもよい。
【0100】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。