特許第6962984号(P6962984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962984
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】液体医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20211025BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20211025BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20211025BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20211025BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20211025BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20211025BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20211025BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20211025BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20211025BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20211025BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20211025BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   A61K39/395 U
   A61K47/22
   A61K47/26
   A61K9/08
   A61K47/14
   A61K47/02
   A61K47/12
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P17/06
   A61P19/00
   A61P1/04
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2019-187090(P2019-187090)
(22)【出願日】2019年10月10日
(62)【分割の表示】特願2017-513323(P2017-513323)の分割
【原出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2020-33361(P2020-33361A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年11月11日
(31)【優先権主張番号】14169754.0
(32)【優先日】2014年5月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504022456
【氏名又は名称】フレゼニウス カビ ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ リナルディ
(72)【発明者】
【氏名】シルビア フラタルカンジェリ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドラ デル リオ
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/039903(WO,A2)
【文献】 国際公開第2013/164837(WO,A1)
【文献】 特開昭63−088197(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/068026(WO,A1)
【文献】 特表2008−507554(JP,A)
【文献】 特表2007−524602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00−39/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性医薬組成物であって、以下:
(a)50mg/mLのアダリムマブ;
(b)ヒスチジン緩衝剤、ヒスチジンを、そのイミダゾリウム型との平衡状態で含有するヒスチジン緩衝系、当該ヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤とアダリムマブのモル比14:1〜40:1で存在する
(c)100mM〜150mMのトレハロース、スクロース、ソルビトール、マルトース、ラクトース、キシリトール、アラビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、イノシトールからなる群から選択される糖安定化剤;及び
(d)ポリソルベート20又はポリソルベート80から選択される0.05〜1.5mg/mLの界面活性剤;
を含有し、
・pHが5.0〜6.7であり;
・ヒスチジン以外のアミノ酸を含有せず;
・リン酸緩衝剤を含有せず;かつ
・最大で1つの糖安定化剤を含有する;
水性医薬組成物。
【請求項2】
最大で10mMの濃度のヒスチジン緩衝剤を含有する、請求項1に記載の水性医薬組成物。
【請求項3】
0.5〜1.5mg/mLの濃度の界面活性剤を含有する、請求項1又は2のいずれかに記載の水性医薬組成物。
【請求項4】
前記糖安定化剤が、ソルビトール、キシリトール、アラビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール及びイノシトールからなる群から選択される糖アルコールである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性医薬組成物。
【請求項5】
前記糖安定化剤がソルビトールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性医薬組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤がポリソルベート20である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性医薬組成物。
【請求項7】
更にクエン酸緩衝剤を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性医薬組成物。
【請求項8】
等張化剤として25〜75mMの塩化ナトリウムを含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性医薬組成物。
【請求項9】
糖安定化剤である単一の非緩衝等張化剤を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性医薬組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性医薬組成物であって、以下:
(a)50mg/mLのアダリムマブ;
(b)ヒスチジン緩衝剤、ヒスチジンを、そのイミダゾリウム型との平衡状態で含有するヒスチジン緩衝系、当該ヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤とアダリムマブのモル比14:1〜40:1で存在する
(c)100〜150mMのソルビトール;及び
(d)0.05〜1.5mg/mLのポリソルベート20;
を含有し、
・ヒスチジン以外のアミノ酸を含有せず;かつ
・リン酸緩衝剤を含有しない;
水性医薬組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の水性医薬組成物であって、以下:
(a)50mg/mLのアダリムマブ;
(b)単独又は更なる緩衝系と組み合わせられたヒスチジン緩衝系、当該ヒスチジン緩衝系は、ヒスチジン緩衝剤、ヒスチジンを、そのイミダゾリウム型との平衡状態で含有し、当該ヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤とアダリムマブのモル比14:1〜40:1で存在する
(c)100〜150mMの糖ポリオールである糖安定化剤、ここで当該糖ポリオールは、ソルビトール、キシリトール、アラビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール及びイノシトールからなる群から選択される;
(d)0.05〜1.5mg/mLのポリソルベート20;及び
(e)水;
からなる、水性医薬組成物。
【請求項12】
請求項に記載の水性医薬組成物であって、以下:
(a)50mg/mLのアダリムマブ;
(b)単独又は更なる緩衝系と組み合わせられたヒスチジン緩衝系、当該ヒスチジン緩衝系は、ヒスチジン緩衝剤、ヒスチジンを、そのイミダゾリウム型との平衡状態で含有し、当該ヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤とアダリムマブのモル比14:1〜40:1で存在する
(c)100〜150mMのソルビトール;
(d)0.05〜1.5mg/mLのポリソルベート20;及び
(e)水;
からなる、水性医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜1のいずれか1項に記載の水性医薬組成物を含有する薬物送達デバイス。
【請求項14】
関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、中度から重度の慢性乾癬及び/又は若年性特発性関節炎の治療に用いる、請求項1〜1のいずれか1項に記載の水性医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規タンパク質製剤に関する。特に、本発明は、アダリムマブの液体医薬組成物、当該組成物の製造方法、当該組成物を含有するキット、当該組成物を含むパッケージ、当該パッケージを製造する方法、及び当該組成物及び/又はパッケージを使用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子−α(TNF−α)関連自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、乾癬及び他の自己免疫疾患の治療は、FDA認可薬物、例えばアダリムマブ(Adalimumab)(HUMIRA(登録商標)、Abbott Corporation)を用いて達成されている。アダリムマブは、ヒトTNF−α活性を阻害することによりTNF受容体の活性化を阻害して自己免疫疾患に関与する炎症性応答を下方制御する、ヒトモノクローナル抗体である。アダリムマブの認可された医学的適応は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、中度から重度の慢性乾癬及び若年性特発性関節炎を含む。
【0003】
アダリムマブは、一般に皮下注射によって患者に投与されるため、液体形態で、典型的にはバイアル、装填済みシリンジ、又は装填済み「ペンデバイス」等のパッケージで提供される。市販のペンデバイス(HUMIRA(登録商標)ペン)は、一般に、0.8mlの40mgアダリムマブ滅菌製剤が装填された1ml充填済みガラスシリンジ(下記)、固定された針(灰色の天然ゴム又はラテックスフリー版)及び針カバーを備える。アダリムマブの市販の製剤(HUMIRA(登録商標))は、以下の成分を含有する。
【表1】
【0004】
アダリムマブ及びその製造方法は、WO97/29131 (BASF)にD2E7として、又は本分野の何処かに記載されている。
【0005】
上記アダリムマブの市販の製剤は安定である(少なくともある程度は)が、関連する抗体は長期間又はストレス条件下で不安定であり得るため、当該製剤の長期間の保存を妨げる。そのような製剤の分解は、以下のような様々な要因によるものであり得る。
・物理的作用、例えば:
・関連するタンパク質分子の凝集阻害(Tween−80による機能)の不十分;
・沈殿阻害の不十分;
・水と空気の境界、又は何らかのパッケージ材料の接触表面における関連するタンパク質分子の吸着阻害(Tween−80による機能)の不十分;
・浸透圧の制御(マンニトールによる機能)の不十分;
・化学的作用、例えば:
・酸化の制御(マンニトールによる機能で、潜在的にTween−80により抑制され、二重結合の酸化を促進し得る)の不十分;
・光酸化の阻害の不十分;
・酸、アルデヒド及びペルオキシド産物の形成をもたらして抗体の安定性に影響するエステル結合の加水分解の阻害の不十分;
・pHの維持及び安定化の不十分;
・タンパク質断片化の阻害の不十分;
・タンパク質アンフォールディングの阻害の不十分;
【0006】
上記の全て又は一部の要因が、利用出来ない薬物産物(医学的治療における使用において安全性を欠く)、又はその利用可能性が、特に異なるバッチの薬物が製造、輸送及び保存の過程で晒され得る様々なストレス(振動、熱、光等)の観点において、変化して予測出来ない薬物産物をもたらし得る。
【0007】
アダリムマブの物理的及び化学的安定性に関して、上記の市販製剤内の成分が、特に多数の成分の観点において、期待を下回っているように見える。この特定の助剤の組み合わせが明確に「微妙なバランス」(様々な技術的要素の間での相互作用によりもたらされる)を表し、発展的な研究開発の結果であったが、明らかな低調な成績のリスクの観点において、そのような多数の異なる助剤が正当化されるか否かは疑問であり、これは、不可避的に、加工、コスト負荷、毒性リスク、及び製剤の機能を損ない得る成分間の有害な相互作用を増大させる。市販製剤の全体の成績を上回れないとしても、同等の成績を有しつつも構成成分がより少ない代替製剤は、少なくとも上記の理由により、市販の製剤の代替として高度な需要が有る。
【0008】
タンパク質ベースの医薬品の臨床成績を保証するためには、そのような製品は一定期間に渡り安定かつ定常的な状態を維持しなければならない。最終製品の製造の過程及び保存の過程を含む製造プロセスのあらゆる段階の過程で、分子の変化は起こり得ることは周知である。分子の変化は、バイオ医薬品の品質特性を変化させ、製品の同一性、強度又は純度の望ましくない変化をもたらす。そのような問題の幾つかを以下に紹介する。
【0009】
薬剤開発の主要なゴールは、その生産、保存、輸送及び使用の全ての段階でバイオ医薬タンパク質の安定性を支持し得る医薬組成物を提供することである。革新的なバイオ医薬タンパク質、又はバイオシミラーモノクローナル抗体(mAb)における製剤開発は、その安全性、臨床効率及び商業的成功において必須である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、アダリムマブの改善された又は代替の液体製剤の提供には需要が存在する。何らかの新規製剤が、1つ以上の上記問題及び/又は1つ以上の当該技術分野で内在する問題を解決するのが望ましく、それらの問題を1つ以上解決するのが適切であり得る。望ましくは、本分野の問題は、製剤の複雑性を低下しながら解決され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の側面において、液体医薬組成物が提供され、当該組成物は、アダリムマブ(適切にはその任意のバイオシミラーを含む);ヒスチジン緩衝剤(又はヒスチジン緩衝系);及び糖安定化剤;を含有し、任意で、液体医薬組成物に関連して本明細書中で規定する任意の1つ以上の追加の成分(例えば等張化剤(tonicifier)を含み、アルギニンを除く、等)を、本明細書中に示す任意の量、濃度又は形態で含有し(又は除き);及び任意で、液体医薬組成物に関連して本明細書中に記載の1つ以上のパラメーター又は特性(例えばpH、浸透圧、凝集性、断片化、タンパク質アンフォールディング、濁度(turbity)等)を呈する。
【0012】
本発明の第二の側面において、液体医薬組成物が提供され、当該組成物は、アダリムマブ;ヒスチジン緩衝剤(又はヒスチジン緩衝系);及び糖安定化剤;を含有し、pHは6.30以上である。
【0013】
本発明の第三の側面において、液体医薬組成物が提供され、当該組成物は、アダリムマブ;ヒスチジン緩衝剤(又はヒスチジン緩衝系);及び糖安定化剤;を含有し、アルギニン(適切にはL−アルギニン)を(実質的に又は完全に)含有しない、又はアルギニンを最大0.1mM含有する。
【0014】
本発明の第四の側面において、液体医薬組成物が提供され、当該組成物は、アダリムマブ;ヒスチジン緩衝剤(又はヒスチジン緩衝系);及び糖安定化剤;を含有し、ヒスチジン以外のアミノ酸を(実質的に又は完全に)含有しない、又はヒスチジン以外の1つ以上のアミノ酸を(総)濃度で最大0.1mM含有する。
【0015】
本発明の第五の側面において、本発明の液体医薬組成物を含むパッケージ(例えば充填済みシリンジ、ペン、静脈内バッグ、又は上記のいずれかを含むパッケージ/容器)が提供される。
【0016】
本発明の第六の側面において、本発明の液体医薬組成物を含む薬物送達デバイス(例えば充填済みシリンジ若しくはペン、又は静脈内バッグ)が提供される。
【0017】
本発明の第七の側面において、薬物送達デバイス、本発明の液体医薬組成物(任意でパッケージ又は容器に納められる)、及び任意で液体医薬組成物の投与(例えば皮下投与)に関する指示の説明、を含む部分のキットが提供される。
【0018】
本発明の第八の側面において、液体医薬組成物の製造方法が提供され、当該方法は、アダリムマブ;ヒスチジン緩衝剤(又はヒスチジン緩衝系);糖安定化剤;及び任意で本明細書中で液体医薬組成物に関連して規定する1つ以上の成分を、任意の量、濃度、又は規定される形態で共に混合する工程;及び任意で液体医薬組成物に関連して本明細書中に示す1つ以上の任意のパラメーター(例えばpH、浸透圧)を調整する工程、を含む。
【0019】
本発明の第九の側面において、本明細書中に規定する液体医薬組成物の製造方法によって取得可能な、取得される、又は直接取得される、液体医薬組成物が提供される。
【0020】
本発明の第十の側面において、パッケージ又は薬物送達デバイスの製造方法が提供され、当該方法は、パッケージ又は薬物送達デバイス内に本明細書中に規定する液体医薬組成物を納める工程を含む。
【0021】
本発明の第十一の側面において、本明細書中に規定するパッケージ又は薬物送達デバイスの製造方法によって取得可能な、取得される、又は直接取得される、パッケージ又は薬物送達デバイスが提供される。
【0022】
本発明の第十二の側面において、疾患又は医学的障害の治療を要する患者の疾患又は医学的障害を治療する方法が提供され、当該方法は、本明細書中に規定する治療有効量の液体医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
【0023】
本発明の第十三の側面において、治療に使用する本明細書中に規定する液体医薬組成物が提供される。
【0024】
本発明の第十四の側面において、疾患又は障害の治療のための医薬の製造における本明細書中に規定する液体医薬組成物の使用が提供される。
【0025】
本発明の第十五の側面において、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)関連自己免疫疾患の治療を要する患者の当該疾患を治療する方法が提供され、当該方法は、本明細書中に規定する治療有効量の液体医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
【0026】
本発明の第十六の側面において、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)関連自己免疫疾患の治療に用いる本明細書中に規定する液体医薬組成物が提供される。
【0027】
本発明の第十七の側面において、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)関連自己免疫疾患の治療のための医薬の製造における本明細書中に規定する液体医薬組成物の使用が提供される。
【0028】
本発明の第十八の側面において、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、中度から重度の慢性乾癬及び/又は若年性特発性関節炎の治療を要する患者におけるそれらの疾患を治療する方法が提供され、当該方法は、本明細書中に規定する治療有効量の液体医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
【0029】
本発明の第十九の側面において、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、中度から重度の慢性乾癬及び/又は若年性特発性関節炎の治療に用いる本明細書中に規定する液体医薬組成物が提供される。
【0030】
本発明の第二十の側面において、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、中度から重度の慢性乾癬及び/又は若年性特発性関節炎の治療のための医薬の製造における本明細書中に規定する液体医薬組成物の使用が提供される。
【0031】
更なる側面において、本発明は、液体医薬組成物、パッケージ、薬物送達デバイス、部分のキット、液体医薬組成物を製造する方法、使用のための液体医薬組成物、及び医薬の製造のための液体医薬組成物の使用を提供し、本質的には本明細書中に規定されている(上記二十個の側面のいずれかに含まれる)が、「アダリムマブ」(及びそのバイオシミラー)に固有であるというよりも、本発明は、任意のTNF−α阻害抗体(抗TNF−α抗体)が利用され得て(従って関連すると規定される)、但し適切には、当該抗体は、ヒトTNF−α活性を阻害し、最も適切にはヒトTNF−α活性を阻害するヒトモノクローナル抗体である。適切には、当該抗TNF−α抗体は、治療的に有効な医薬であり(少なくとも治療を要する患者に適切な量が投与されたとき)(又はそのバイオシミラー−下記アダリムマブに関連するバイオシミラーの定義を参照されたい。全ての抗TNF−α抗体を等しく利用している)、適切には、FDAの認可を受けたものである。このように、本願における「アダリムマブ」の言及は、それと適合しない限り、本発明のこれらの追加の側面の目的で、任意の抗TNF−α抗体についての言及と解釈され得る(これが相対量又は絶対量、濃度、パラメーター、又は特性に関連するか否か、又はこれが特定の定義、例えば何がバイオシミラーを構成するか等に関連するか否か)。
【0032】
本発明のこれらの更なる側面の一つは、抗TNF−α抗体(適切にはその任意のバイオシミラーを含む);ヒスチジン緩衝剤(又はヒスチジン緩衝系);及び糖安定化剤;を含有する液体医薬組成物を提供し、当該組成物は、任意で、本明細書中で液体医薬組成物に関連して規定される1つ以上の任意の追加の成分を、任意で、本明細書中で言及する任意の量、濃度又は形態で含み(又は除き)(例えば界面活性剤を含みアルギニンを除く);そして当該組成物は、任意で、本明細書中で液体医薬組成物に関連して示す任意の1つ以上のパラメーター又は特性(例えばpH、浸透圧、凝集性、断片化、タンパク質アンフォールディング、濁度)を呈する。
【0033】
特定の態様において、抗TNF−α抗体は、アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブからなる群から選択される。
【0034】
本発明のいずれかの特定の側面に関連して記載される、任意の、適切な、及び好ましい特徴を含むいずれかの特徴は、本発明のいずれかの他の側面の、任意の、適切な、及び好ましい特徴を含む特徴でもあり得る。
【0035】
本発明をより良く理解するために、そして本発明のいかなる態様が実施されるかを示すために、例示として、下記図面を参考に示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、実施例1のDoE1製剤のODにより決定されるタンパク質濃度(mg/mL)を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)及び40℃加熱後4週(網掛け無し)に行われた。
【0037】
図2図2は、実施例1のDoE1製剤のSE−HPLCにより決定される凝集性%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0038】
図3図3は、実施例1のDoE1製剤のバイオアナライザーにより決定される断片化%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0039】
図4図4は、実施例1のDoE1製剤のDSFにより決定されるアンフォールディング温度(℃)を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定された。
【0040】
図5図5は、実施例2のDoE2製剤のSE−HPLCにより決定される凝集性%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0041】
図6図6は、実施例2のDoE2製剤のバイオアナライザーにより決定される断片化%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0042】
図7図7は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される主要ピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0043】
図8図8は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される酸クラスターピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0044】
図9図9は、実施例2のDoE2製剤のネフェロメトリーにより決定される濁度を示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0045】
図10図10は、実施例2のDoE2製剤のSE−HPLCにより決定される凝集性%を示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、機械的撹拌(振盪)後24時間(薄い斜線網掛け)及び48時間(網掛け無し)に行われた。
【0046】
図11図11は、実施例2のDoE2製剤のバイオアナライザーにより決定される断片化%を示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、機械的撹拌(振盪)後24時間(薄い斜線網掛け)及び48時間(網掛け無し)に行われた。
【0047】
図12図12は、実施例2のDoE2製剤のネフェロメトリーにより決定される濁度を示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、機械的撹拌(振盪)後24時間(薄い斜線網掛け)及び48時間(網掛け無し)に行われた。
【0048】
図13図13は、実施例2のDoE2製剤のSE−HPLCにより決定される凝集性%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、光暴露前(濃い斜線網掛け、時間=0)、765W/mの光暴露後7時間(網掛け無し)に行われた。
【0049】
図14図14は、実施例2のDoE2製剤のバイオアナライザーにより決定される断片化%を示す棒グラフであり、測定は、光暴露前(濃い斜線網掛け、時間=0)、765W/mの光暴露後7時間(網掛け無し)に行われた。
【0050】
図15図15は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される主要ピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、光暴露前(濃い斜線網掛け、時間=0)、765W/mの光暴露後7時間(網掛け無し)に行われた。
【0051】
図16図16は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される酸クラスターピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、光暴露前(濃い斜線網掛け、時間=0)、765W/mの光暴露後7時間(網掛け無し)に行われた。
【0052】
図17図17は、実施例2のDoE2製剤のネフェロメトリーにより決定される濁度を示す棒グラフであり、測定は、光暴露前(濃い斜線網掛け、時間=0)、765W/mの光暴露後7時間(網掛け無し)に行われた。
【0053】
図18図18は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される主要ピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、測定は、5回の凍結融解サイクル(−80℃→室温)を行う前(濃い斜線網掛け、時間=0)、及び後(網掛け無し)に行われた。
【0054】
図19図19は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される酸クラスターピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、測定は、5回の凍結融解サイクル(−80℃→室温)を行う前(濃い斜線網掛け、時間=0)、及び後(網掛け無し)に行われた。
【0055】
図20図20は、実施例2のDoE2製剤のSE−HPLCにより決定される凝集性%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、5回の凍結融解サイクル(−80℃→室温)を行う前(濃い斜線網掛け、時間=0)、及び後(網掛け無し)に行われた。
【0056】
図21図21は、実施例2のDoE2製剤の、可視下粒子カウント解析によって決定される、10ミクロン以下の粒径の可視下粒子の個数濃度(#/mg)を示す棒グラフであり、測定は、5回の凍結融解サイクル(−80℃→室温)を行う前(濃い斜線網掛け、時間=0)、及び後(網掛け無し)に行われた。
【0057】
図22図22は、実施例2のDoE2製剤の、可視下粒子カウント解析によって決定される、25ミクロン以下の粒径の可視下粒子の個数濃度(#/mg)を示す棒グラフであり、測定は、5回の凍結融解サイクル(−80℃→室温)を行う前(濃い斜線網掛け、時間=0)、及び後(網掛け無し)に行われた。
【発明を実施するための形態】
【0058】
定義
他の言及が無い限り、本明細書等で用いる下記の用語は、下記に示す意味で用いられている。
【0059】
本明細書中、「アダリムマブ」は、オリジナルの薬剤物質(市販のもの)、WO97/29131(BASF)(特にその中のD2E7)に規定のアダリムマブ及びその他の本分野で知られているもの、並びにそれらのバイオシミラーを含む。WO97/29131のD2E7は、「配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン」を有する。好ましくは、D2E7抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(CLVR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を有する。WO97/29131は、これらの配列表のそれぞれの詳細を示す。「アダリムマブ」は、バイオシミラー、例えばWO97/29131に開示のタンパク質配列(特にD2E7に関連するもの)又はその他「アダリムマブ」に関連するもののいずれか1つと、75%以上、80%以上、適切には85%以上、適切には90%以上、適切には95%以上、適切には96%以上、適切には97%以上、適切には98%以上、又は最も適切には99%以上のタンパク質配列同一性を共有し得る、バイオシミラーを含み得る。あるいは、又は加えて、「アダリムマブ」は、バイオシミラー、例えばWO97/29131に開示のタンパク質配列(特にD2E7に関連するもの)又はその他「アダリムマブ」に関連するもののいずれか1つと、75%以上、80%以上、適切には85%以上、適切には90%以上、適切には95%以上、適切には96%以上、適切には97%以上、適切には98%以上、又は最も適切には99%以上のタンパク質配列相同性を呈する、バイオシミラーを含み得る。あるいは、又は加えて、バイオシミラーは、タンパク質配列が実質的に同一、又は上記で特定した範囲で異なるものであるとしても、(僅かに)異なる糖化プロフィールを有し得る。
【0060】
「バイオシミラー」(別名バイオ後続品)は本分野で周知であり、当業者は、如何なる場合に薬剤物質がアダリムマブのバイオシミラーと見做され得るかを容易に理解し得る。更に、そのような「バイオシミラー」は、そのような「バイオシミラー」が公開市場で販売される前に、販売のために「バイオシミラー」として公的に認可される必要が有り得る。「バイオシミラー」は、一般に、製造承認によって既に公的に許可された「革新者バイオ医薬製品(innovator biopharmaceutical product)」(「生物製剤」は、生きている生物によって生産される、又は生きている生物に由来する、又は組換えDNA又はコントロールされた遺伝子発現手段を通じて生産された薬剤物質を意味する)の後続版(一般に供給元が異なる)を記載するのに用いられる。生物製剤は高度な分子的複雑性を有しており、一般に製造プロセスの変化(例えば異なる細胞系統を生産に用いる等)に敏感で、後続品の製造者が、先行者の分子クローン、細胞バンク、発酵及び精製プロセスに関するノウハウへの、又は活性な薬剤物質自体(革新者の市販の薬物製品のみ)へのアクセスを有しないため、「バイオシミラー」が、革新者の薬物製品と全く同一である可能性は低い。
【0061】
様々なモル計算(例えばアダリムマブと本発明の液体医薬組成物の他の成分との間のモル比)のため、CASデータベースのCAS # 331731−18−1, Adalimumabに開示された詳細に基づいて、分子式はC642899121694198746としてアダリムマブの分子量が144190.3 g/molと求められた(参照分子量)。従って、50mg/mLのアダリムマブを含有する液体医薬組成物は、アダリムマブの0.347mM(又は347μM)とみなされる。これは、実際の分子量に影響し得る、本発明の範囲内に含まれるアダリムマブのバイオシミラーの性質や糖化のレベルに関して、何らかの限定を意図するものではない。しかしながら、バイオシミラーが異なる分子量を有する場合に、上記参照分子量は、適切には、本明細書中で言及される何らかのモルの規定の範囲内にそのようなバイオシミラーが納まるかどうかを評価する目的で使用されるべきである。従って、当該バイオシミラーの既知の重量におけるモルの数が、上記参照分子量を用いて、本発明の目的の為だけに計算されるべきである。
【0062】
ここで、「緩衝剤」又は「緩衝溶液」は、酸(通常は弱酸、例えば酢酸、クエン酸、ヒスチジンのイミダゾリウム型)及びその共役塩基(例えば酢酸塩又はクエン酸塩、例えば酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム又はヒスチジン)の混合物、又は塩基(通常は弱塩基、例えばヒスチジン)及びその共役酸(例えば水素化ヒスチジン塩)の混合物を含有する、一般に水性の溶液を意味する。「緩衝溶液」のpHは、「緩衝剤」によって付与される「緩衝作用」のため、少量の強酸又は塩基の添加によって非常に僅かに変化し得る。
【0063】
「緩衝系」は、1つ以上の緩衝剤及び/又はその共役酸/塩基を含有し、より適切には、1つ以上の緩衝剤及びその共役酸/塩基を含有し、最も適切には、1つの緩衝剤その共役酸/塩基を含有する。他に言及が無い限り、本明細書中で「緩衝系」に関連して言及する濃度は、適切には、緩衝剤及び/又はその共役酸/塩基の組み合わせの濃度を意味する。言い換えると、本明細書中で「緩衝系」に関連して言及する濃度は、適切には、関連する全ての緩衝種(即ち互いに動的平衡状態にある種、例えばクエン酸塩/クエン酸)の組み合わせの濃度を意味する。ヒスチジン緩衝系の濃度は、一般に、ヒスチジンとヒスチジンのイミダゾリウム形態との組み合わせ濃度に関する。しかしながら、ヒスチジンの場合、通常、そのような濃度は、ヒスチジン又はその塩のインプット量を参照して直接計算される。関連する緩衝系を含有する組成物の総pHは、一般に、関連する緩衝種のそれぞれの平衡濃度の反映である(即ち緩衝剤とその共役酸/塩基とのバランス)。
【0064】
「緩衝剤」は、緩衝剤又は緩衝溶液の酸又は塩基成分(通常は弱酸又は弱塩基)を意味する。緩衝剤は、溶液のpHを所定の値に又はその付近に維持するのを助け、緩衝剤は、一般に、所定の値を補うように選択される。緩衝剤は、適切には、特に、緩衝剤が適切な量(所望の所定のpHに依存する)のその対応する「共役酸/塩基」と混合される(そして適切にはプロトンを交換することが出来る)とき、又は所望の量のその対応する「共役酸/塩基」がin situで形成される場合(これは所望のpHに達するまで強酸又は塩基を添加することにより達成される)、所望の緩衝効果をもたらす、単一の化合物である。以下に例を示す。
・ヒスチジン「緩衝剤」は、遊離アミノ酸のヒスチジンである。ヒスチジン等のアミノ酸は両性であり、酸及び塩基のいずれとして振る舞うことも可能であるため、「緩衝剤」は、単純に両性化合物自体(適切には両性イオン形態)である。しかしながら、ヒスチジン緩衝系又は緩衝溶液は、任意で、ヒスチジンに加えて、所望のpHに達するまで一定量の酸(適切には強酸、例えば塩酸)又は塩基(適切には強塩基、例えば水酸化ナトリウム)が添加され得る。存在するヒスチジンの幾つかは、両性イオンアミノ酸とは異なるプロトン化状態を呈し得る。ここで、異なる言及の無い限り、ヒスチジン緩衝系に関連して示す濃度は、緩衝剤(例えばヒスチジン)及び/又はその共役酸/塩基(例えばヒスチジンのイミダゾリウム形態)の組み合わせ濃度を意味する。当業者は、そのような濃度を容易に計算出来、ヒスチジン又はその共役酸/塩基(例えば塩酸ヒスチジン)のインプット量を単純に参照することにより、そうすることが出来る。そのような濃度は、緩衝系が緩衝剤と共役酸/塩基とを単純に混合して形成されている場合、組み合わせられた緩衝剤と共役酸/塩基の濃度を参照することにより計算できる。あるいは、緩衝系が、緩衝剤又は共役酸/塩基のいずれかと、それぞれの混合物を作製するためのpH調整剤(例えば強酸又は強塩基)とを混合することによって形成される場合、適切には、そのような濃度は、緩衝剤又は共役酸/塩基のそれぞれの出発量/濃度を参照して計算され得る。例えば、緩衝系が、所望のpHに達するまでpH調整剤(例えば水酸化ナトリウム)と混合される既知の量/濃度のヒスチジンを使用して形成される場合、緩衝系の濃度は、ヒスチジンの初期量を参照することによって計算され得る。同様に、緩衝系が、所望のpHに達するまでpH調整剤(例えば水酸化ナトリウム)と混合される既知の量/濃度のヒスチジンイミダゾリウム塩(例えば塩酸ヒスチジン)を用いて形成される場合も同様で、この場合、緩衝系の濃度は、ヒスチジンイミダゾリウム塩の初期量を参照して計算され得る。
【0065】
「共役酸/塩基」は、特定の「緩衝剤」の共役酸又は共役塩基(特定のpHで関連する方−本発明の背景において典型的には共役酸である)を意味する。ヒスチジン緩衝剤(例えばヒスチジン)の共役酸/塩基は、適切には、ヒスチジンのイミダゾリウム型、適切にはヒスチジンのイミダゾリウム塩である。ヒスチジンのイミダゾリウム型は、本願において「イミダゾリウム−ヒスチジン」と称する場合があり、以下の構造を有する。
【化1】
ヒスチジンのイミダゾリウム塩は、ヒスチジン−イミダゾリウム塩と表記されてもよく、関連する対作用は別として、上記に示したのと本質的に同一の構造を有する。
【0066】
「緩衝種」は、互いに動的平衡状態にある(プロトンを交換している)所定の緩衝系の特定の種を意味する(関連する対アニオン又は対カチオンを除く−即ちヒスチジン/イミダゾリウム−ヒスチジン系における塩化物又は水酸化物対イオンを無視する)。例えば、ヒスチジン及びイミダゾリウム−ヒスチジンは、共に「ヒスチジン緩衝系」の「ヒスチジン緩衝種」を構成する。
【0067】
重量を参照することによって緩衝系の量(絶対量又は相対量)を規定することはしばしば困難であるため(総重量が存在する対イオンの量に影響し得る所望のpH次第であるため)、本願において、重量に基づく定量は、関連する「緩衝種」の理論上の重量を参照して代替的に決定され得る。2つ以上の種は、それぞれ異なる分子量で(通常は1程度異なる)所定の「緩衝種」のセットにおいて(pHを参照してのみ決定され得る相対量で)一般に存在する。従って、実行可能な重量計算及び参照を可能とするために、この明細書の目的で、「緩衝種」のセットの重量は、1つだけの緩衝種に基づく理論上の重量として、即ち緩衝種の最も塩基性のもの(即ちあるpHで最もプロトン化されていない型)として与えられる。従って、「緩衝種」のセットの重量は、塩基種の同等物の重量として表記される。例えば、ヒスチジン緩衝系において、ヒスチジン緩衝種は、ヒスチジン及びイミダゾリウム−ヒスチジンカチオンからなり得る。この「緩衝種」の重量は、緩衝系中に存在する唯一の種がヒスチジンであると仮定して(ヒスチジンと共にイミダゾリウム−ヒスチジンが存在するとしても)計算される。従って、適切には、「ヒスチジン緩衝種」を含む重量又は重量比の言及は、緩衝系内のヒスチジン同等物の理論上の重量を言及している。このように、固定された量のイミダゾリウムヒスチジン、又は実際は固定された量のヒスチジン(適切には希釈剤中に溶解すると幾らかのイミダゾリウム−ヒスチジンを形成し得る)に、pH調整剤(例えば水酸化ナトリウム)を添加することによって、組成物が形成される場合、ヒスチジンの元の重量は、最終的なpHに拘らず「緩衝種」の重量であると見做され得る。あるいは、緩衝系の濃度(即ちモル濃度)が既知である場合、これは、関連する緩衝種(例えばヒスチジン)の最も塩基性の型の分子量を参照することによって「緩衝種」の重量に変換されてもよく、イミダゾリウム−ヒスチジンカチオンも存在するという事実は無視される。
【0068】
他の言及が無い限り、「アミノ酸」は、特定のもの(例えばアルギニン、ヒスチジン)も一般的なもの(例えば任意のアミノ酸)も、それらの存在又はさもなければ組成物内(特に本発明の液体医薬組成物)の文脈において、対応する「遊離アミノ酸」に関する(そのプロトン化状態及び/又は塩形態に拘らず一貫量(consistency amount)は適切には遊離アミノ酸自体を参照して計算される)。これは、適切には天然及び/又は人工アミノ酸を含む。反対の言及が無い限り、そのような言及は、アミノ酸残基がより長い化合物(複数の化合物を含有する組成物ではない)、例えばペプチド又はタンパク質の部分として共有結合で組み込まれるアミノ酸残基(そのようなアミノ酸残基はペプチド結合によって連結される)に関するものであることと意図されない。アダリムマブはタンパク質としてアミノ酸残基を含んでいるが、このことは「遊離アミノ酸」を含有するとはみなされない。例えば、「アルギニンを含有しない」と規定される組成物は遊離アルギニンを含まないが、アルギニン残基を有するタンパク質(例えばアダリムマブ)を1つ以上含んでも良い。
【0069】
他に言及の無い限り、本明細書中の「アミノ酸」の記載は、特定のものも一般的なものも、適切には、L−立体異性体又はそのラセミ体に関し、最も適切にはL−アミノ酸である。
【0070】
「実質的に含有しない」とは、組成物のある成分に関連して用いている場合(例えば「アルギニンを実質的に含有しない液体医薬組成物」)、その成分が組成物に実質的に添加されなかったことを意味する。上記のように、そのような言及は、タンパク質構造内のアミノ酸残基の存在に影響しない。組成物がある成分を「実質的に含有しない」場合、当該組成物は、適切には、当該成分を0.001重量%を超えて含有せず、適切には、当該成分を0.0001重量%を超えて含有せず、適切には、当該成分を0.00001重量%を超えて含有せず、適切には、当該成分を0.000001重量%を超えて含有せず、適切には、当該成分を0.0000001重量%を超えて含有せず、最も適切には、当該成分を0.0001パーツパービリオン(重量)を超えて含有しない。
【0071】
「全く含有しない」は、組成物のある成分に関連して使用される場合(例えば「アルギニンを全く含有しない液体医薬組成物」)、組成物がその成分を全く含有しないことを意味する。上記のように、そのような言及は、タンパク質構造内のアミノ酸残基の存在に影響しない。
【0072】
ここで、本明細書の背景において、「強酸」は、適切にはpKが−1.0以下の酸を意味し、「弱酸」は、適切にはpKが2.0以上のものを意味する。ここで、本明細書の背景において、「強塩基」は、適切にはその共役酸のpKが12以上(適切には14以上)の塩基を意味し、「弱塩基」は、適切にはその共役酸のpKが10以下の塩基を意味する。
【0073】
「安定化剤」は、特に凍結及び/又は凍結乾燥及び/又は保存の過程で(特にストレスに晒される場合)生物製剤薬物の構造的完全性の維持を促進する成分を意味する。この安定化効果は、様々な理由によってもたらされ得るが、典型的には、そのような安定化剤は、タンパク質の変性を緩和するオスモライトとして作用する。典型的な安定化剤は、アミノ酸(即ちペプチド又はタンパク質の部分ではない遊離アミノ酸、例えばグリシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、リジン等)、及び糖安定化剤、例えば糖ポリオール(例えばマンニトール、ソルビトール)、及び/又は二糖類(例えばトレハロース、スクロース、マルトース、ラクトース)を含むが、本発明の液体医薬組成物は、1つ以上が糖安定化剤(即ち糖ポリオール又は二糖類のいずれか)である安定化剤を含有する。最も適切には、1つ以上の糖安定化剤は、非還元糖(糖ポリオールであろうと二糖類であろうと)である。
【0074】
「非還元糖」は、一般に、アルデヒド部分を有しない、又はアルデヒド部分を形成する(例えば異性化により)能力を有しない糖である。
【0075】
「浸透圧調整剤」又は「等張化剤」は、それが組成物内に含有されていることが全体の浸透圧及び組成物の浸透圧に貢献する(又は増大する)薬剤を意味する。適切には、等張化剤は、溶液の浸透圧特性を生体液に似せるように機能する薬剤を含む。
【0076】
本明細書中、組成物のある成分、特に緩衝剤、安定化剤、アミノ酸、界面活性剤又は等張化剤の具体的な量の言及は、その成分(又は当該量の純粋な無水物を使用して構成される組成物)の純粋な無水物の量に関するが、そのような成分は、その組成物を形成するときに非無水形態で用いられても良い。非無水形態(例えば一水和物、二水和物等)に対応する量は、適切な乗数を用いて容易に求められる。例えば、他に言及の無い限り(実施例ではトレハロース二水和物に関する量が記載されている)、トレハロースに関して規定される量は、分子量が342.296g/molであるトレハロースの無水形態(又は規定の量/濃度の無水トレハロースを使用して形成される組成物)の量を意味する。従って、同一の組成物を形成するのに必要なトレハロース二水和物の対応する量を計算するためには(添加する水の量がより少なくなる)、規定された量に378.33/342.296を掛ける必要がある。378.33はトレハロース二水和物の分子量だからである。当業者は、所望の濃度を達成するために使用する成分の形態に応じて希釈剤/水の量をどのように調整すべきかを容易に理解し得る。
【0077】
「医薬組成物」は、医薬的に活性な製剤であり、治療的に効果的な有効成分の生理活性をもたらすが、その製剤の投与が想定される対象に明らかに毒性である他の成分を含有しないものを意味する。
【0078】
本明細書中、「安定」は、一般に、保存、保管の過程で、成分の、典型的にはその活性又は組成物の、物理的、化学的、生物的安定性を意味する。
【0079】
「治療する」又は「治療」は、症状の予防や既存の兆候の緩和を含む。症状、障害又は状態を「治療する」又は「治療」は、以下を含む:(1)症状、障害又は状態に苦しむ又はその素因を有するが未だ症状、障害又は状態の臨床的又は無症状の兆候を経験していない又は示していない人間に発症する症状、障害又は状態の臨床的兆候の出現の防止又は遅延、(2)症状、障害又は状態の阻害、即ち疾患又はその再発(維持治療の場合)、又は1つ以上の臨床的又は無症状の兆候の、停止、減少又は発症の遅延、(3)疾患の緩和又は無害化、即ち症状、障害又は状態又は臨床的又は無症状の兆候の減退を引き起こすこと。
【0080】
本発明の背景において、抗体の「治療有効量」又は「有効量」は、疾患又は障害を治療するために哺乳類に投与されるときに予防的及び治療的側面で有効であり、抗体が所望の疾患の治療に有効である量を意味する。
【0081】
「治療有効量」は、化合物、疾患及びその重症度、並びに治療する哺乳類の年齢、体重等に依存して変化し得る。
【0082】
「ヒトTNF−α」は、17kD分泌型及び26kD膜連結型、及び生理活性型で存在するヒトサイトカインで、TNF−αは、共有結合した17kD分子の三量体として観察され得る。その具体的な構造は、Pennica, D. et al. (1984) Nature 312: 724−729; Davis, J. M. et al. (1987) Biochemistry 26, 1322−1326;及びJones, E. Y. et al. (1989) Nature 338: 225−228に見られる。
【0083】
「組換えヒト抗体」は、組換え技術を用いて調製、発現、生産又は単離されたヒト抗体を含むと意図される。
【0084】
ここで、成分において規定される量が、「部」、ppm(パーツパーミリオン)、パーセンテージ(%、例えばwt%)、又は比率のいずれによって特定されていても、他に言及の無い限りは重量によるものであることが意図される。
【0085】
ある組成物の特定の成分の量又は濃度が重量パーセンテージ(wt%又は%w/w)として特定されている場合、重量パーセンテージは、組成物全体の総重量に対する成分の重量のパーセンテージを意味する。当業者は、組成物の全ての成分の重量パーセントの合計が100wt%となることを理解している。しかしながら、全ての成分が列挙されていない場合(例えば組成物が1つ以上の特定の組成物を「含有する」と述べている場合)、重量パーセンテージバランスは、任意で、不特定の成分(例えば希釈剤、例えば水、又は他の必須ではないが適切な添加物)を加えることによって100wt%になる。
【0086】
本明細書中、他に言及の無い限り、「部」(例えば重量部、pbw)は、複数の成分に関連して使用される場合、それらの複数の成分の間の相対比を意味する。2つ、3つ又はそれ以上の成分のモル又は重量比の表現は、同一の効果をもたらす(例えばx、y及びzのモル比はそれぞれx:y:z、又は範囲x−x:y−y:z−zである)。多くの態様において、組成物内の個々の成分の量は「wt%」の値として示されているが、別の態様において、一部の又は全てのそのようなwt%値は、複数の成分からなる組成物を規定するために、重量部(又は相対比)に変換されてもよい。成分間の相対比は、しばしば、本発明の液体医薬組成物において、絶対濃度よりも重要だからである。複数の成分を含有する組成物が重量部によってのみ記載されている場合(即ち成分の相対比のみ示されている)、成分の絶対量又は濃度の規定(全体も個別も)は必要ではない。本発明の利点は各成分の絶対量や濃度よりもむしろ各成分の相対比に基づくものであるからである。しかしながら、幾つかの態様において、そのような組成物は、規定される成分及び希釈剤(例えば水)からなり、又は本質的にそれらからなる。
【0087】
組成物が複数の規定された成分を(任意で規定された量の濃度で)含有する場合、組成物は、任意で、規定されたもの以外の追加の成分を含有してもよい。しかしながら、幾つかの態様において、複数の規定された成分を含有するという組成物は、実際は、全ての規定された成分からなり、又は本質的にそれらからなり得る。
【0088】
本明細書中、組成物が特定の成分から「本質的になる」という場合、当該組成物は、適切には、当該成分を70wt%以上、適切には90wt%以上、適切には95wt%以上、最も適切には99wt%以上含有する。適切には、特定の成分から「本質的になる」組成物は、1つ以上の微量不純物は別として、当該成分からなる。
【0089】
本明細書中、「粒径」又は「孔径」は、粒子又は孔の最長の直径の長さを意味する。いずれかのサイズも、レーザー粒径解析機及び/又は電子顕微鏡(例えばトンネル電子顕微鏡、TEM、又は走査型電子顕微鏡、SEM)を使用して測定され得る。
【0090】
液体医薬組成物
本発明は、適切には本明細書中で規定する液体医薬組成物を提供する。適切には、当該組成物は、適切にはTNF受容体の活性化を阻害する、適切にはヒトTNF−α活性を阻害するものである、適切にはヒトモノクローナル抗体、を含有する。最も適切には、液体医薬組成物は、適切にはその任意のバイオシミラーを含むアダリムマブを含有する。適切には、当該組成物は、ヒスチジン緩衝剤(又はヒスチジン緩衝系)を含有する。当該組成物は、適切には、糖安定化剤を含有する。当該組成物は、適切には、pHが6.30以上である。当該組成物は、適切には、アルギニンを(実質的に又は全く)含有しないか、又はアルギニンを濃度で最大0.1mM、アルギニンとヒスチジン緩衝剤(又はヒスチジン緩衝系)とのモル比で最大1:150、又はアルギニンとアダリムマブの重量比で最大1:3000(即ち3000重量部のヒスチジン緩衝剤あたり1重量部以下のヒスチジンが存在する)含有する。あるいは、又は加えて、当該組成物は、適切には、任意の1つ以上の本明細書中で液体医薬組成物に関連して規定する追加の成分(例えば等張化剤を含み、アルギニンを除く等)を、任意の量、濃度又は形態で含有し、任意で本明細書中で液体組成物に関連して示される1つ以上のパラメーター(例えばpH、浸透圧)を呈する。
【0091】
有利な場合、本発明は、代替の及び改善された液体医薬組成物を提供し、それは一般に従来のものよりも良好な安定性及び保存性を呈する。本明細書中で例示するように(実施例参照)、本発明の液体医薬組成物は、様々なストレス条件(熱、機械及び光ストレス)に晒されたとき、市販の製剤Humira(登録商標)等のアダリムマブの既存の製剤と比較して、同等又はより改善された特性を有する。それらの性能は、一般に、同一のストレス試験に晒された他の同等の多くの製剤と同等、又はより良好でもある。これらのストレス条件は、製造、輸送及び保存の過程でそのような製剤が晒されるストレスの種類を高度に代表するもので、それらは、本発明の長所の優れた指標である。そのような良好な安定性性能は、多くの助剤や複雑な製剤プロセスを用いずに達成され得るもので、これは、従来の一般的技術に基づいて驚異的なものと見做された。
【0092】
アダリムマブ
アダリムマブはHUMIRA(登録商標)製剤として市販されており、アダリムマブ及びその製造方法は、WO97/29131(BASF)や本分野の他の文献に記載されている。WO97/29131において、アダリムマブに相当するD2E7は、「配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン及び配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン」を有すると記載されている。更に、D2E7抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(CLVR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を有すると記載されている。
【0093】
アダリムマブの医学的適応及び機能は、本明細書中の上記で挙げている。
【0094】
本発明の背景において、「アダリムマブ」は、本明細書中で規定するバイオシミラーを含み、当業者は、本発明の背景における「アダリムマブ」の範囲を容易に理解し得る。
【0095】
一つの態様において、液体医薬組成物は、約5〜150mg/ml、適切には約25〜75mg/mlの濃度のアダリムマブを含有する。例えば製剤中のアダリムマブの濃度は、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70又は約75 mg/mlであってもよい。一つの態様において、アダリムマブ濃度は、約45〜55mg/mlであってもよい。一つの態様において、アダリムマブ濃度は、約50mg/mlである。
【0096】
緩衝、緩衝剤及びpH
適切には、液体医薬組成物は緩衝された溶液であり、そのpHは緩衝剤(又は緩衝系)によって安定化されており、適切には、緩衝剤の共役酸/塩基と組み合わせられる。また、適切には、液体医薬組成物は、本明細書中に規定する緩衝剤を含有する。好ましくは、液体医薬組成物は、追加で共役酸/塩基を含有し、ここで共役酸/塩基は、緩衝剤がそれ自体塩基又は酸であるかに依存して、緩衝剤の共役酸又は共役塩基に対応する。まとめると、緩衝剤及びその共役酸/塩基は、「緩衝系」と見做され得る。従って、液体医薬組成物は、適切には、「緩衝系」(適切には緩衝剤及びその共役酸/塩基を含有する)を含有し、当該緩衝系に関連して規定される任意の濃度は、緩衝剤及びその任意の共役酸/塩基の組み合わせ濃度に一般に関連する。「緩衝系」は、適切には、弱酸及び弱塩基(上記定義参照)を含有する。
【0097】
適切には、緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤である。適切には、ヒスチジン緩衝剤はヒスチジン(又はその塩)、最も適切には遊離ヒスチジン(例えば双性イオンヒスチジン)である。
【0098】
適切には、液体医薬組成物は、緩衝剤の共役酸/塩基を含有する。これは、多くの他の通常のカルボン酸/カルボン酸緩衝系よりもヒスチジン緩衝剤にとって簡単ではない。ヒスチジンのイミダゾール部分は、ヒスチジンが通常水溶液中でプロトン化(イミダゾリウム)と脱プロトン化(遊離イミダゾール)の平衡混合物として存在してpH6〜7を形成することを意味するからである。ヒスチジンのプロトン化(イミダゾリウム)形態は、医薬として許容されるアニオン(水酸化又は塩化等のアニオンを含む)と関連し得るが、イミダゾリウム型は、希釈剤(例えば水)中で溶媒和カチオンとして追加的に又は代替的に存在し得る。ヒスチジンのプロトン化(イミダゾリウム)形態は、ヒスチジンの共役酸を表すため、ヒスチジンの共役酸/塩基と見做され得る。このヒスチジンの共役酸は、適切には、プロトン化したアミノ及びイミダゾール基のいずれも有するが、脱プロトン化したカルボン酸基も有し、これで全体では+1の電荷を有する。緩衝剤及びその共役酸/塩基の組み合わせは、緩衝系を構成する。適切には、液体医薬組成物は、緩衝剤及びその対応する共役酸/塩基を含有し、適切には、当該緩衝剤及びその共役酸/塩基は、組成物が所望のpHとなるのに十分なレベル(即ち絶対値又は濃度)及び相対量(又は濃度)で存在する。緩衝系は、適切には所望のpHの組成物を得るのに適した量で、緩衝剤(例えばヒスチジン)とその共役酸/塩基(例えばヒスチジンのイミダゾリウム塩形態、例えばヒスチジン一塩酸)とを単純に混合することによって形成されてもよい。あるいは、緩衝系は、酸又は塩基を緩衝剤又はその共役酸/塩基と混合してin situで所望の緩衝剤と共役酸/塩基の混合物を形成することによって形成されてもよい。例えば、緩衝系は、適切には所望のpHを達成するのに適した量の緩衝剤(例えばヒスチジン、水に溶解すると即座に自己平衡化してヒスチジンとその共役酸を生じる)及び当該緩衝剤(例えばヒスチジン)と対応する共役酸/塩基(即ちヒスチジンのイミダゾリウム塩)に、塩基(例えば水酸化ナトリウム)を添加することによって形成され得る。あるいは、緩衝系を形成するいずれかの方法が採用され得て、そしてpHは、更なる酸(適切には強酸、例えばHCl)又は更なる塩基(適切には強塩基、例えば水酸化ナトリウム)のいずれかが所望のpHに達するまで添加することによって賢明に調整され得る。
【0099】
上記のように、「pH調整剤」は、所望のpHにするためにヒスチジン(又はイミダゾリウムヒスチジン塩、例えば塩酸ヒスチジン)と組み合わせて使用され得る。pH調整剤は強酸又は強塩基であり得るが、好ましくは強塩基、例えば水酸化ナトリウムである。
【0100】
最も適切には、緩衝系はヒスチジン緩衝系であり、適切にはヒスチジンとそのイミダゾリウム型が平衡状態で存在する。
【0101】
適切には、液体医薬組成物は、最大で1つの緩衝剤を含有する。適切には、液体医薬組成物は、最大で1つの緩衝系を含有する。
【0102】
適切には、液体医薬組成物のpHは5.0以上である。適切には、液体医薬組成物のpHは6.3以上である。適切には、液体医薬組成物のpHは6.7以下である。
【0103】
特定の態様において、特に緩衝剤がヒスチジン緩衝剤である場合、液体医薬組成物のpHは6.0〜6.6である。特定の態様において、液体医薬組成物のpHは6.3〜6.5である。特定の態様において、液体医薬組成物のpHは約6.4である。
【0104】
適切には、液体医薬組成物は、約2〜50mMの濃度の緩衝系(適切にはヒスチジン緩衝剤を含有するヒスチジン緩衝系)を含む。一つの態様において、緩衝系の濃度は5〜14mM、最も適切には約10mMである。一つの態様において、緩衝系/緩衝剤の濃度は10mMである。一つの態様において、液体医薬組成物は、10mMの濃度のヒスチジン(及び/又はその塩)を含有する。これは、適切には、「緩衝剤」(例えばヒスチジン)が緩衝剤(例えばヒスチジンのイミダゾリウム型)の共役酸に強塩基(例えば水酸化ナトリウム)を添加することによって形成される場合を含む。
【0105】
適切には、液体医薬組成物は、約0.31mg/mL〜約7.8mg/mLの濃度の緩衝種(適切にはヒスチジン緩衝種、例えばヒスチジン自体)を含有する。一つの態様において、緩衝種は、0.77mg/mL〜2.2 mg/mL、最も好ましくは1.55 mg/mLの濃度で存在する。一つの態様において、緩衝系/緩衝剤は、1.55mg/mlの濃度で存在する。これは、「緩衝剤」(例えばヒスチジン)が、緩衝剤(例えばヒスチジンのイミダゾリウム型)の共役酸に強塩基(例えば水酸化ナトリウム)を添加することによって形成される場合を含む。
【0106】
適切には、液体医薬組成物は、緩衝系とアダリムマブとのモル比が約5:1〜145:1となる量の緩衝系(適切にはヒスチジン緩衝系)を含有する。一つの態様において、緩衝系とアダリムマブとのモル比は約14:1〜40:1、最も好ましくは約29:1である。一つの態様において、緩衝系/緩衝剤は、29:1の濃度で存在する。これは、「緩衝剤」(例えばヒスチジン)が、緩衝剤(例えばヒスチジンのイミダゾリウム型、例えばヒスチジン一塩酸)の共役酸に強塩基(例えば水酸化ナトリウム)を添加することによって形成される場合を含む。
【0107】
実施例の項目で例示するように、ヒスチジン緩衝剤/緩衝系を含有する本発明の液体医薬組成物は、特に安定性及び薬物製品の保存性の重要な指標である断片化及びタンパク質アンフォールディングに関して、ストレス試験が実施されている。更に、ヒスチジン緩衝系によってpH6.4が定常的に維持されている液体医薬組成物は、執拗に試験が実施されている。
【0108】
糖安定化剤
適切には、液体医薬組成物は、安定化剤、最も適切には糖安定化剤を含有する。適切には、そのような組成物は、特に凍結及び/又は凍結乾燥及び/又は保存の過程で(特にストレスに晒されたとき)、生物製剤の構造的完全性の維持を促進する。
【0109】
液体医薬組成物は、1つ以上の糖安定化剤を含有し得るが、好ましい態様において、単一の糖安定化剤のみ存在する。
【0110】
適切には、糖安定化剤は、糖ピオール(糖アルコールを含む)及び/又は二糖類である。
【0111】
糖安定化剤は、適切には、トレハロース、マンニトール、スクロース、ソルビトール、マルトース、ラクトース、キシリトール、アラビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、イノシトールを含む群から選択される。
【0112】
特定の態様において、糖安定化剤は、トレハロース、マンニトール、スクロース、マルトース、ラクトース、キシリトール、アラビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、イノシトールを含む群から選択される。
【0113】
特定の態様において、糖安定化剤は非還元糖、任意で本明細書中に列挙している非還元糖である。
【0114】
特定の態様において、糖安定化剤は、トレハロース及びマンニトールを含む群から選択される。
【0115】
特定の態様において、糖安定化剤はトレハロースである。トレハロースは、液体アダリムマブ製剤においてヒスチジン緩衝剤/緩衝系と共に使用されるのに特に有利な安定化剤である。
【0116】
適切には、液体医薬組成物は最大で1つの糖安定化剤、適切には最大で1つの糖ピオール及び/又は二糖類を含有する。
【0117】
適切には、液体医薬組成物を形成するのに使用するトレハロースは、トレハロース二水和物であるが、適切には、トレハロースに関連して規定される量は、(他に言及の無い限り−実施例では言及が有る)純粋な無水トレハロースに関連する。そのような量は、適切な乗数を適用することによって、トレハロース二水和物の量に変換され得る。更に、ある製剤が本明細書中に記載のトレハロース量の規定のいずれかの範囲内に納まるかどうかを評価するために、トレハロース二水和物の量は、乗数を逆に適用することによって、純粋なトレハロース二水和物の対応する量(モル数に等しい)に容易に変換され得る。この原則は、いかなる糖安定化剤成分にも適用され得る。モル濃度として示される場合、濃度は、当然に、糖安定化剤の水和状態に関わらず同一である。
【0118】
適切には、液体医薬組成物は、約50〜400mM、より適切には約100〜300mM、より適切には約150〜250mMの濃度の糖安定化剤(最も適切にはトレハロース)を含有する。一つの態様において、糖安定化剤の濃度は190〜210mM、最も適切には約200mMである。一つの態様において、トレハロースの濃度は200mMである。
【0119】
適切には、液体医薬組成物は、約15mg/mL〜約140mg/mL、より適切には約35mg/mL〜約100mg/mL、より適切には約45mg/mL〜約80mg/mLの濃度の糖安定化剤(最も適切にはトレハロース)を含有する。一つの態様において、糖安定化剤の濃度は、65 mg/mL〜72 mg/mL、最も適切には約68 mg/mLである。特定の態様において、トレハロースの濃度は約68mg/mL(トレハロース二水和物約75.7mg/mLに相当する)である。
【0120】
適切には、液体医薬組成物は、糖安定化剤(最も適切にはトレハロース)を含有し、糖安定化剤とアダリムマブのモル比は、約145:1〜約1150:1、より適切には約290:1〜約860:1、より適切には430:1〜約720:1である。一つの態様において、糖安定化剤とアダリムマブのモル比は、約550:1〜約605:1、最も適切には約576:1である。一つの態様において、糖安定化剤とアダリムマブのモル比は約576:1である。
【0121】
実施例の項目で例示するように、本明細書中に規定のように糖安定化剤を含有する本発明の液体医薬組成物は、安定性及び薬物製品の保存性の重要な指標であり得る凝集性、断片化及びタンパク質アンフォールディングに関して、ストレス試験が実施されている。更に、糖安定化剤としてトレハロースを含有する液体医薬組成物は、執拗に試験が実施されている。
【0122】
希釈剤
本発明の液体医薬組成物は、1つ以上の医薬として許容される希釈剤又はその混合物を含有し得る。しかしながら、最も適切には、液体医薬組成物は、水性医薬組成物である。最も適切には、希釈剤が水であり、適切には水のみである。水は、適切には注射用水(WFI)である。
【0123】
適切には、希釈剤は、例えば重量パーセンテージが合計で100%となるように、液体医薬組成物中の成分のバランスをとり得る。適切には、液体医薬組成物の成分に関連して示される濃度は、他の成分と混合された希釈剤中の(適切には溶解した)当該成分の濃度を表す。
【0124】
本発明の液体医薬組成物は、適切には液体であり、適切には粒子又は沈殿物を(実質的に又は全く)有しない。
【0125】
低レベルの又は含有しない成分
アルギニン
適切には、液体医薬組成物は、アルギニン(適切にはL−アルギニン)を(実質的に又は全く)含有しないか、又は0.1mM以下、より適切には0.01mM以下、最も適切には0.001mM以下の濃度のアルギニンを含有する。
【0126】
適切には、液体医薬組成物は、アルギニンを(実質的に又は全く)含有しないか、又はアルギニンと緩衝剤(又は緩衝系)とのモル比が1:150以下(即ち緩衝剤又は緩衝系150モルに対してアルギニンが1モル以下)、より適切には1:1500以下、最も適切には1:15000以下のアルギニンを含有する。
【0127】
適切には、液体医薬組成物は、アルギニンを(実質的に又は全く)含有しないか、又はアルギニンとアダリムマブとの重量比が1:3000以下(即ちアダリムマブ3000重量部に対してアルギニンが1重量部以下)、より適切には1:30000以下、最も適切には1:300000以下のアルギニンを含有する。
【0128】
適切には、液体医薬組成物は、アルギニンを(実質的に又は全く)含有しないか、又はアルギニンとアダリムマブとのモル比が1:3.75以下(即ちアダリムマブ3.75モルに対してアルギニンが1モル以下)、より適切には1:37.5以下、最も適切には1:375以下のアルギニンを含有する。
【0129】
本明細書中、液体医薬組成物の背景における「アルギニン」に関する言及は、対応する「遊離アミノ酸」に関連し、ペプチドやタンパク質等のより大きい化合物の部分として共有結合的に組み込まれたアミノ酸残基に関連しない。
【0130】
実施例の項目で例示するように、アルギニンを(実質的に又は全く)含有しない本発明の液体医薬組成物は、特に凝集性、断片化及びタンパク質アンフォールディングに関して、ストレス試験が実施されている。
【0131】
アミノ酸
適切には、液体医薬組成物は、ヒスチジン(適切には緩衝剤である)以外の遊離アミノ酸を(実質的に又は全く)含有しないか、又は0.1mM以下、より適切には0.01mM以下、最も適切には0.001mM以下の合計濃度の1つ以上のヒスチジン以外のアミノ酸を含有する。
【0132】
適切には、液体医薬組成物は、ヒスチジン以外の遊離アミノ酸を(実質的に又は全く)含有しないか、又はアミノ酸と緩衝剤(又は緩衝系)との合計のモル比が1:150以下(即ち緩衝剤又は緩衝系150モルに対してヒスチジン以外のアミノ酸が1モル以下)、より適切には1:1500以下、最も適切には1:15000以下の1つ以上のヒスチジン以外のアミノ酸を含有する。
【0133】
適切には、液体医薬組成物は、ヒスチジン以外の遊離アミノ酸を(実質的に又は全く)含有しないか、又はアミノ酸とアダリムマブとの合計の重量比が1:3000以下(即ちアダリムマブ3000重量部に対してヒスチジン以外のアミノ酸が1重量部以下)、より適切には1:30000以下、最も適切には1:300000以下の1つ以上のヒスチジン以外のアミノ酸を含有する。
【0134】
適切には、液体医薬組成物は、ヒスチジン以外の遊離アミノ酸を(実質的に又は全く)含有しないか、又はアミノ酸とアダリムマブとの合計のモル比が1:3.75以下(即ちアダリムマブ3.75モルに対してヒスチジン以外のアミノ酸が1モル以下)、より適切には1:37.5以下、最も適切には1:375以下の1つ以上のヒスチジン以外のアミノ酸を含有する。
【0135】
本明細書中で説明するように、液体医薬組成物の背景における「アミノ酸」に関する言及は、対応する「遊離アミノ酸」に関連し、ペプチドやタンパク質等のより大きい化合物の部分として共有結合的に組み込まれたアミノ酸残基に関連しない。
【0136】
適切には、この項目で言及される(そして含有しないか微量存在すると見做される)アミノ酸は、天然及び/又は人工アミノ酸であり得るが、それらは好ましくは天然アミノ酸である。特に、液体医薬組成物は、アルギニン、リジン及びアスパラギン酸を含む群から選択されるアミノ酸を(実質的に又は全く)含まず、又は1つ以上の上記アミノ酸を、「ヒスチジン以外のアミノ酸」に関連して上記で規定する量、濃度、モル比又は重量比で含有する。
【0137】
実施例の項目で例示するように、ヒスチジン以外のアミノ酸又は上記の幾つかのアミノ酸を(実質的に又は全く)含有しない本発明の液体医薬組成物は、特に凝集性、断片化及びタンパク質アンフォールディングに関して、ストレス試験が実施されている。
【0138】
界面活性剤
適切には、液体医薬組成物は、任意でポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)を除く界面活性剤(カチオン性、アニオン性、両性、又は非イオン性)を(実質的に又は全く)含有しないか、又は0.1mM以下、より適切には0.01mM以下、より適切には0.001mM以下、最も適切には0.0001mM以下の合計濃度の1つ以上の界面活性剤(任意でポリソルベート80を除く)を含有する。液体医薬組成物は、そのような状況下、任意で本明細書中で規定するポリソルベート80を含有する。しかしながら、好ましい態様において、液体医薬組成物は、ポリソルベート80を(実質的に又は全く)含有しないか、又は適切には他のいずれかの界面活性剤と合わせて、上記の限定した量/濃度でのみ含有する。
【0139】
適切には、液体医薬組成物は、任意でポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)を除く界面活性剤(カチオン性、アニオン性、両性、又は非イオン性)を(実質的に又は全く)含有しないか、又は界面活性剤と緩衝剤(又は緩衝系)の合計モル比が最大で1:10、より適切には最大で1:100、最も適切には最大で1:1000、より適切には最大で1:10000、適切には最大で1:100000の1つ以上の界面活性剤(任意でポリソルベート80を除く)を含有する。液体医薬組成物は、そのような状況下、任意で本明細書中で規定するポリソルベート80を含有する。しかしながら、好ましい態様において、液体医薬組成物は、ポリソルベート80を(実質的に又は全く)含有しないか、又は適切には他のいずれかの界面活性剤と合わせて、上記の限定した量/濃度でのみ含有する。
【0140】
適切には、液体医薬組成物は、任意でポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)を除く界面活性剤(カチオン性、アニオン性、両性、又は非イオン性)を(実質的に又は全く)含有しないか、又は界面活性剤とアダリムマブの重量比が最大で1:50(即ちアダリムマブ50重量部に対して界面活性剤1重量部以下)、より適切には最大で1:500、より適切には最大で1:5000、より適切には最大で1:50000、適切には最大で1:500000の1つ以上の界面活性剤(任意でポリソルベート80を除く)を含有する。液体医薬組成物は、そのような状況下、任意で本明細書中で規定するポリソルベート80を含有する。しかしながら、好ましい態様において、液体医薬組成物は、ポリソルベート80を(実質的に又は全く)含有しないか、又は適切には他のいずれかの界面活性剤と合わせて、上記の限定した量/濃度でのみ含有する。
【0141】
適切には、液体医薬組成物は、任意でポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)を除く界面活性剤(カチオン性、アニオン性、両性、又は非イオン性)を(実質的に又は全く)含有しないか、又は界面活性剤とアダリムマブのモル比が最大で3:1、より適切には最大で0.3:1、より適切には最大で0.03:1、より適切には0.0003:1、適切には0.00003:1の1つ以上の界面活性剤(任意でポリソルベート80を除く)を含有する。液体医薬組成物は、そのような状況下、任意で本明細書中で規定するポリソルベート80を含有する。しかしながら、好ましい態様において、液体医薬組成物は、ポリソルベート80を(実質的に又は全く)含有しないか、又は適切には他のいずれかの界面活性剤と合わせて、上記の限定した量/濃度でのみ含有する。
【0142】
適切には、この項目で言及する(そして含有しないか微量含有すると見做される)界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、両性又は非イオン性界面活性剤であり得る。適切には、この項目で言及する(そして含有しないか微量含有すると見做される)界面活性剤は、カチオン性、アニオン性及び両性界面活性剤を含むが、任意で非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート又はスパン)を含まないか、又は少なくとも任意でポリソルベート80を除外し得る。従って、液体医薬組成物は、カチオン性、アニオン性又は両性界面活性剤を(実質的に又は全く)含有しないか、1つ以上の当該界面活性剤を、「界面活性剤」に関連してこの項目の段落でより一般的に規定している量、濃度、モル比又は重量比を最大値として含有する。
【0143】
液体医薬組成物は、任意でポリソルベート80を除く比イオン性界面活性剤を(実質的に又は全く)含有しないか、1つ以上の当該界面活性剤を、「界面活性剤」に関連してこの項目の段落でより一般的に規定している量、濃度、モル比又は重量比を最大値として含有する。
【0144】
液体医薬組成物は、任意でポリソルベート80を除くポリソルベート界面活性剤を(実質的に又は全く)含有しないか、1つ以上の当該界面活性剤を、「界面活性剤」に関連してこの項目の段落でより一般的に規定している量、濃度、モル比又は重量比を最大値として含有する。液体医薬組成物は、そのような状況下、任意で本明細書中で規定するポリソルベート80を含有する。しかしながら、好ましい態様において、液体医薬組成物は、ポリソルベート80を(実質的に又は全く)含有しないか、又は適切には他のいずれかの界面活性剤と合わせて、上記の限定した量/濃度でのみ含有する。
【0145】
液体医薬組成物は、ポリソルベート20(別名Tween20−ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)界面活性剤を(実質的に又は全く)含有しないか、1つ以上の当該界面活性剤を、「界面活性剤」に関連してこの項目の段落でより一般的に規定している量、濃度、モル比又は重量比を最大値として含有する。
【0146】
液体医薬組成物は、ポリソルベート80界面活性剤を(実質的に又は全く)含有しないか、1つ以上の当該界面活性剤を、「界面活性剤」に関連して上記で規定している量、濃度、モル比又は重量比で含有する。液体医薬組成物は、そのような状況下、任意で本明細書中で規定するポリソルベート80を含有する。ポリソルベート80界面活性剤を(実質的に又は全く)含有しないか、1つ以上の当該界面活性剤を、「界面活性剤」に関連してこの項目の段落でより一般的に規定している量、濃度、モル比又は重量比を最大値として含有する。
【0147】
実施例の項目で例示するように、上記の界面活性剤を(実質的に又は全く)含有しない本発明の液体医薬組成物は、特に凝集性、断片化及びタンパク質アンフォールディングに関して、ストレス試験が実施されている。
【0148】
リン酸塩
適切には、液体医薬組成物は、リン酸緩衝剤(例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)を(実質的に又は全く)含有しないか、又は0.1mM以下、より適切には0.01mM以下、最も適切には0.001mM以下のリン酸緩衝系を含有する。
【0149】
適切には、液体医薬組成物は、リン酸緩衝剤(例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)を(実質的に又は全く)含有しないか、又はリン酸緩衝系と任意の非リン酸緩衝系とのモル比が1:150以下(即ち非リン酸緩衝系150モルに対してリン酸緩衝系1モル以下)、より適切には1:1500以下、最も適切には1:15000以下のリン酸緩衝系を含有する。
【0150】
適切には、液体医薬組成物は、リン酸緩衝剤を(実質的に又は全く)含有しないか、又はリン酸緩衝系とアダリムマブとのモル比が1:3.75以下(即ちアダリムマブ3.75モルに対してリン酸緩衝系1モル以下)、より適切には1:37.5以下、最も適切には1:375以下のリン酸緩衝系を含有する。
【0151】
液体医薬組成物の背景における「リン酸緩衝剤」の言及は、リン酸塩、一水素リン酸塩、及び二水素リン酸塩を含む、任意の形態又はプロトン化状態の、任意のリン酸塩に関する。しかしながら、適切には、リン酸化又は糖化ペプチド又はタンパク質等のより大きい化合物の部分として共有結合的に組み込まれているリン酸部分又は残基は除外される。
【0152】
実施例の項目で例示するように、リン酸緩衝剤を(実質的に又は全く)含有しない本発明の液体医薬組成物は、特に凝集性、断片化及びタンパク質アンフォールディングに関して、ストレス試験が実施されている。
【0153】
任意の追加成分
等張化剤(Tonicifier)
本発明の液体医薬組成物は、適切には、本明細書中で規定する「浸透圧調整剤」(又は「等張化剤」)又は1つ以上の等張化剤を含有する。
【0154】
等張化剤の存在は、適切には、正味の浸透圧及び組成物の浸透圧に貢献する(又は浸透圧が増大する)。適切には、等張化剤は、組成物が体液と(実質的に)等張となるのに十分な量又は濃度で組成物中に存在する。適切には、等張化剤は、組成物が一定の浸透圧又は本明細書中に規定の浸透圧となるのに十分な量又は濃度で組成物中に存在する。
【0155】
任意の適切な等張化剤が使用されてもよい。しかしながら、適切には、等張化剤は、水溶性金属塩(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム)、水溶性等張化糖/糖アルコール(例えばグルコース、スクロース、マンニトール)、及び/又は他の水溶性ポリオールを含む群から選択される。
【0156】
液体医薬組成物は、1つ以上の等張化剤を含有し得るが、好ましくは、単一のそのような「等張化剤」のみ存在する(他の機能をもたらすことが意図される本明細書中に規定の成分により組成物に与えられる等張化作用は考慮しない)。
【0157】
最も好ましくは、等張化剤は、金属塩(好ましくは非緩衝水溶性金属塩)であるかこれを含む。適切には、当該金属塩は、ハロゲン化金属、適切にはハロゲン化アルカリ若しくはアルカリ土類金属、適切にはハロゲン化アルカリ金属であるかこれを含む。
【0158】
好ましい態様において、等張化剤は塩化ナトリウムであるかこれを含む。特定の態様において、等張化剤は塩化ナトリウムである。塩化ナトリウムは、液体アダリムマブ製剤中でヒスチジン緩衝剤/緩衝系と共に使用されるのに特に有利な安定化剤である。
【0159】
適切には、液体医薬組成物は、約10〜200mM、より適切には約20〜100mM、より適切には約25〜75mMの濃度の等張化剤(最も適切には塩化ナトリウム)を含有する。一つの態様において、等張化剤の濃度は40〜60mM、最も適切には約50mMである。一つの態様において、塩化ナトリウムの濃度は50mMである。
【0160】
適切には、液体医薬組成物は、約0.5〜12mg/mL、より適切には約1.2〜5mg/mL、より適切には約1.5〜4.4mg/mLの濃度の等張化剤(最も適切には塩化ナトリウム)を含有する。一つの態様において、等張化剤の濃度は2.7〜3.1mg/mL、最も適切には約2.9mg/mLである。特定の態様において、塩化ナトリウムの濃度は約2.9mMである。
【0161】
適切には、液体医薬組成物は、等張化剤とアダリムマブのモル比が約30:1〜580:1、より適切には約60:1〜290:1、より適切には約70:1〜約220:1の等張化剤(最も適切には塩化ナトリウム)を含有する。一つの態様において、等張化剤とアダリムマブのモル比は、約115:1〜175:1、最も適切には約145:1である。一つの態様において、塩化ナトリウムとアダリムマブのモル比は約145:1である。
【0162】
実施例の項目で例示するように、本明細書中に規定の等張化剤を含有する本発明の液体医薬組成物は、安定性及び薬物製品の保存性の重要な指標であり得る凝集性、断片化及びタンパク質アンフォールディングに関して、ストレス試験が実施されている。更に、塩化ナトリウムを含有する液体医薬組成物は、執拗に試験が実施されている。
【0163】
界面活性剤
本発明の液体医薬組成物は、適切には本明細書中に記載の界面活性剤又は1つ以上の界面活性剤を含有し得る。
【0164】
任意の適切な界面活性剤が用いられ得る。しかしながら、適切には、当該界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、最も適切にはポリソルベート(ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル)又はスパン(ソルビタンアルキルエステル)界面活性剤である。
【0165】
本発明の液体医薬組成物中に1つ以上の界面活性剤が含有され得るが、最も適切には、界面活性剤は1つだけ存在し、最も適切には、1つの非イオン性界面活性剤(適切には本明細書中に規定のもの)が存在する。
【0166】
界面活性剤は、適切には、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(29)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、及び/又はソルビタンモノオレエートから選択される。
【0167】
特定の態様において、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60及び/又はポリソルベート80から選択される。特定の態様において、液体医薬組成物は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60及びポリソルベート80から選択される単一の界面活性剤を含有する。
【0168】
特定の態様において、界面活性剤はポリソルベート80又はポリソルベート20である。特定の態様において、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0169】
適切には、液体医薬組成物は、約0.0001〜5mM(即ち0.1μM〜5mM)、より適切には約0.001〜2mM、より適切には、約0.01〜1.0mMの濃度の界面活性剤(最も好ましくはポリソルベート80)を含有する。一つの態様において、界面活性剤の濃度は、0.72〜0.80mM、最も適切には約0.76mMである。一つの態様において、ポリソルベート80の濃度は、0.76mMである。
【0170】
適切には、液体医薬組成物は、約0.001〜5mg/mL、より適切には約0.01〜2mg/mL、より適切には約0.05〜1.5mg/mLの濃度の界面活性剤(最も好ましくはポリソルベート80)を含有する。一つの態様において、界面活性剤の濃度は、0.9〜1.1mg/mL、最も適切には約1.0mg/mLである。一つの態様において、ポリソルベート80の濃度は、約1.0mg/mLである。
【0171】
適切には、液体医薬組成物は、界面活性剤とアダリムマブのモル比が約1:3500〜15:1、より好ましくは約1:350〜6:1、より適切には約1:35〜3:1の界面活性剤(最も好ましくはポリソルベート80)を含有する。一つの態様において、界面活性剤とアダリムマブのモル比は、約2.1:1〜2.3:1、最も適切には2.2:1である。一つの態様において、ポリソルベート80とアダリムマブのモル比は、約2.2:1である。
【0172】
しかしながら、好ましい態様において、液体医薬組成物は、ポリソルベート80を(実質的に又は全く)含有せず、より適切には、いかなる界面活性剤も(実質的に又は全く)含有しない。
【0173】
本発明に関する他のパラメーター
浸透圧
適切には、液体医薬組成物の浸透圧は200〜400mOsm/kg、より適切には220〜390mOsm/kg、より適切には230〜350mOsm/kg、より適切には240〜340mOsm/kg、より適切には260〜320mOsm/kg、最も適切には280〜310mOsm/kgである。適切には、組成物の様々な成分の相対量及び濃度は、所望の浸透圧を達成するように賢明に調整され得て、特定の成分の新規な組み合わせにより、他の重要なパラメーターを損なわずに、これが達成され得る。しかしながら、適切には、組成物の様々な成分の相対量及び濃度は、他のパラメーターを最適化するように選択され得て、明細書中に記載されている実施例やプロトコルを含む本発明は、当業者がその目的を達成し、本発明の利益の全てを実現することを可能とする。
【0174】
タンパク質アンフォールディング温度
適切には、本発明の液体医薬組成物中のアダリムマブのタンパク質アンフォールディング温度(適切には本明細書中に規定のDSFプロトコルによって測定される)は、65℃以上、より適切には70℃以上である。本発明の組成物中に存在する成分の新規な組み合わせは、当業者が、熱安定性の観点から望ましいと見做され得る高いアンフォールディング温度を達成することを可能とする。
【0175】
熱ストレスに晒されたときのパラメーター
適切には、液体医薬組成物中に存在する凝集物(適切にはアダリムマブに由来するもので、適切には本明細書中に規定のSE−HPLCプロトコルによって決定される)の量(又は濃度)は、組成物に対する熱ストレスが28日間40℃である(即ち組成物の温度が40℃に維持される)場合、4倍(即ち任意の開始時間での量の4倍)未満、適切には3倍未満、適切には2.5倍未満、適切には2.2倍未満に増大する。
【0176】
適切には、液体医薬組成物中に存在する断片(適切にはアダリムマブに由来するもので、適切には本明細書中に規定のバイオアナライザープロトコールによって測定される)の量(又は濃度)は、組成物に対する熱ストレスが28日間40℃である(即ち組成物の温度が40℃に維持される)場合、4倍(即ち任意の開始時間での量の4倍)未満、適切には3倍未満、適切には2.5倍未満、適切には2.2倍未満に増大する。
【0177】
適切には、液体医薬組成物の濁度(適切には、本明細書中に記載のプロトコールに従って比濁法によって測定される)は、組成物に対する熱ストレスが28日間40℃である(即ち組成物の温度が40℃に維持される)場合、2倍(即ち任意の開始時間での量の2倍)未満、適切には1.5倍未満、適切には1.2倍未満増大し、適切には、濁度は全く増大しない。
【0178】
適切には、液体医薬組成物のpHは、組成物に対する熱ストレスが28日間40℃である(即ち組成物の温度が40℃に維持される)場合、0.5pH単位未満、適切には0.2pH単位未満、適切には0.1pH単位未満変化し(増大又は低下であるが一般にpHの低下)、最も適切にはpHは全く変化しない(少数第二位で四捨五入する)。
【0179】
機械的ストレスに晒されたときのパラメーター
適切には、液体医薬組成物中に存在する凝集物(適切にはアダリムマブに由来するもので、適切には本明細書中に規定のSE−HPLCプロトコルによって決定される)の量(又は濃度)は、組成物に対して48時間機械的ストレスを与えた(本明細書中に概説するように撹拌する)場合、2倍(即ち任意の開始時間での量の2倍)未満、適切には1.5倍未満、適切には1.2倍未満、適切には1.1倍未満に増大する。
【0180】
適切には、液体医薬組成物中に存在する断片(適切にはアダリムマブに由来するもので、適切には本明細書中に規定のバイオアナライザープロトコルによって決定される)の量(又は濃度)は、組成物に対して48時間機械的ストレスを与えた(本明細書中に概説するように撹拌する)場合、2倍(即ち任意の開始時間での量の2倍)未満、適切には1.5倍未満、適切には1.2倍未満、適切には1.1倍未満に増大する。
【0181】
適切には、液体医薬組成物中に存在する濁度(適切には、本明細書中に記載のプロトコールに従って比濁法によって測定される)は、組成物に対して48時間機械的ストレスを与えた(本明細書中に概説するように撹拌する)場合、2倍(即ち任意の開始時間での量の2倍)未満、適切には1.5倍未満、適切には1.2倍未満、適切には1.1倍未満に増大し、適切には、濁度は全く増大しない。
【0182】
適切には、液体医薬組成物のpHは、組成物に対して48時間機械的ストレスを与えた(本明細書中に概説するように撹拌する)場合、0.5pH単位未満、適切には0.2pH単位未満、適切には0.1pH単位未満変化し(増大又は低下であるが一般にpHの低下)、最も適切にはpHは全く変化しない(少数第二位で四捨五入する)。
【0183】
光ストレスに晒されたときのパラメーター
適切には、液体医薬組成物中に存在する凝集物(適切にはアダリムマブに由来するもので、適切には本明細書中に規定のSE−HPLCプロトコルによって決定される)の量(又は濃度)は、組成物に対して光ストレスを与えた(即ち、本明細書中に開示のプロトコルに従い、当該組成物を7時間765W/mの光に暴露する)場合、50倍(即ち任意の開始時間での量の50倍)未満、適切には45倍未満、適切には35倍未満、適切には30倍未満に増大する。
【0184】
適切には、液体医薬組成物中に存在する断片(適切にはアダリムマブに由来するもので、適切には本明細書中に規定のバイオアナライザープロトコルによって決定される)の量(又は濃度)は、組成物に対して光ストレスを与えた(即ち、本明細書中に開示のプロトコルに従い、当該組成物を7時間765W/mの光に暴露する)場合、4倍(即ち任意の開始時間での量の4倍)未満、適切には3倍未満、適切には2.5倍未満、適切には2倍未満に増大する。
【0185】
適切には、液体医薬組成物中に存在する濁度(適切には、本明細書中に記載のプロトコールに従って比濁法によって測定される)は、組成物に対して光ストレスを与えた(即ち、本明細書中に開示のプロトコルに従い、当該組成物を7時間765W/mの光に暴露する)場合、2倍(即ち任意の開始時間での量の2倍)未満、適切には1.5倍未満、適切には1.2倍未満、適切には1.1倍未満に増大し、適切には、濁度は全く増大しない。
【0186】
適切には、液体医薬組成物のpHは、組成物に対して光ストレスを与えた(即ち、本明細書中に開示のプロトコルに従い、当該組成物を7時間765W/mの光に暴露する)場合、0.5pH単位未満、適切には0.2pH単位未満、適切には0.1pH単位未満変化し(増大又は低下であるが一般にpHの低下)、最も適切にはpHは全く変化しない(少数第二位で四捨五入する)。
【0187】
凍結融解サイクルに晒されたときのパラメーター
適切には、液体医薬組成物中に存在する凝集物(適切にはアダリムマブに由来するもので、適切には本明細書中に規定のSE−HPLCプロトコルによって決定される)の量(又は濃度)は、組成物を5回の凍結/融解サイクルに供した(即ち、当該組成物を本明細書中のプロトコールに従い5回凍結及び融解した、即ち温度を−80℃〜20℃に変化させた)場合、1.5倍(即ち任意の開始時間での量の1.5倍)未満、適切には1.2倍未満、適切には1.1倍未満増大し、適切には凝集物の量(濃度)は(実質的に)全く変化しない。
【0188】
適切には、液体医薬組成物中に存在する、25ミクロン以下の粒径の可視下粒子又は沈殿物の量(又は濃度)は、組成物を5回の凍結/融解サイクルに供した(即ち、当該組成物を本明細書中のプロトコールに従い5回凍結及び融解した、即ち温度を−80℃〜20℃に変化させた)場合、4倍(即ち任意の開始時間での量の4倍)未満、適切には3倍未満、適切には2.5倍未満、適切には2.2倍未満増大する。適切には、液体医薬組成物中に存在する、10ミクロン以下の粒径の可視下粒子又は沈殿物の量(又は濃度)は、組成物を5回の凍結/融解サイクルに供した(即ち、当該組成物を本明細書中のプロトコールに従い5回凍結及び融解した、即ち温度を−80℃〜20℃に変化させた)場合、4倍(即ち任意の開始時間での量の4倍)未満、適切には3倍未満、適切には2.5倍未満、適切には2.2倍未満増大する。
【0189】
適切には、液体医薬組成物中に存在する、25ミクロン以下の粒径の可視下粒子又は沈殿物の量(又は濃度)は、組成物を5回の凍結/融解サイクルに供した場合、4倍(即ち任意の開始時間での量の4倍)未満、適切には3倍未満、適切には2.5倍未満、適切には2.2倍未満増大する。適切には、液体医薬組成物中に存在する、10ミクロン以下の粒径の可視下粒子又は沈殿物の量(又は濃度)は、組成物を5回の凍結/融解サイクルに供した場合、4倍(即ち任意の開始時間での量の4倍)未満、適切には3倍未満、適切には2.5倍未満、適切には2.2倍未満増大する。
【0190】
抗体を安定化する方法
この項目における上記の点及び実施例を参照して、本発明は、液体アダリムマブ組成物を安定化する方法(化学的及び/又は物理的に任意で上記1つ以上のパラメーター/特性に関連して)を提供し当該方法は、アダリムマブを、本明細書中に規定の医薬組成物を形成するのに必要な関連する1つ以上のいずれかの成分と混合する工程を含む。様々な態様に応じて、適切には、様々な量の様々な混合されるべき成分の組み合わせが必要となり、当業者は、液体組成物に関する上記開示を参照することによって、そのような組み合わせや量を容易に推定することが出来る。そのような様々な成分の組み合わせは、様々な仕組みで液体アダリムマブを安定化し得る。例えば、アダリムマブを、本明細書中に規定の医薬組成物を形成するのに必要な上記成分と混合する工程は、以下のようにしてアダリムマブを安定化する:
i)アダリムマブのタンパク質アンフォールディング温度の増大;
ii)凝集物の形成の阻害;
iii)断片の形成の阻害;
iv)可視下粒子(25ミクロン以下又は10ミクロン以下)の形成の阻害;
v)濁り(turbidification)の阻害;
vi)pH変化の阻害;
vii)光酸化の阻害;及び/又は
viii)凍結/融解サイクルによる不安定性の低下。
【0191】
従って、本発明は、以下の利益の1つ、幾つか又は全てを達成する方法を提供し:
i)アダリムマブのタンパク質アンフォールディング温度の増大;
ii)凝集物の形成の阻害;
iii)断片の形成の阻害;
iv)可視下粒子(25ミクロン以下又は10ミクロン以下)の形成の阻害;
v)濁りの阻害;
vi)pH変化の阻害;
vii)光酸化の阻害;及び/又は
viii)凍結/融解サイクルによる不安定性の低下;
当該方法は、本明細書中に規定するようにアダリムマブの液体医薬組成物を製造する工程を含む。
【0192】
適切には、本発明の液体医薬組成物は、6ヶ月以上、適切には12ヶ月以上、適切には18ヶ月以上、より適切には24ヶ月以上の棚寿命を有する。適切には、本発明の液体医薬組成物の棚寿命は、温度2〜8℃で、6ヶ月以上、適切には12ヶ月以上、適切には18ヶ月以上、より適切には24ヶ月以上である。
【0193】
当業者による重要な安定性特性の最適化
本発明の液体医薬組成物に用いるために開示された成分の新規組み合わせは、当業者が、従来技術の組成物と比較して同等又はより優れた特性を呈する組成物を生産する(そして賢明に微調整する)ことを可能とする。特に、本開示は、当業者に、製剤の安定性を最適化する、特に:凝集、断片化、タンパク質アンフォールディング、沈殿、pH変動及び酸化(特に光酸化)の1つ以上を最適化するのに必要な全てのツールを提供する。更に、当業者は、そのような最適化(成分組成を賢明に変化させることにより)をどのようにして達成するか、及び当該プロセスにおいて何らかの有害な副作用をどのようにして最小化するかについて、手引きが与えられる。本開示は、当業者が、本発明の範囲内でそれを実施して、従来技術の組成物と比較して同等又は改善した特性を呈する様々な特定の組成物を生産することを可能とし、これは、より少ない成分を用いて達成され得る。
【0194】
特定の態様
一つの態様において、液体医薬組成物は:
−アダリムマブ;
−ヒスチジン緩衝剤(例えばヒスチジン)(又はヒスチジン緩衝系);
−糖安定化剤(例えばトレハロース);及び
−界面活性剤(例えばポリソルベート80);
を含有する。
【0195】
一つの態様において、液体医薬組成物は:
−アダリムマブ;
−ヒスチジン緩衝剤(例えばヒスチジン)(又はヒスチジン緩衝系);
−糖安定化剤(例えばトレハロース);
−等張化剤(例えば塩化ナトリウム);及び
−界面活性剤(例えばポリソルベート80);
を含有する。
【0196】
一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン緩衝剤(又は緩衝系)、及び糖安定化剤を、それぞれ1:14〜40:288〜865のモル比で含有する。一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン緩衝剤(又は緩衝系)、糖安定化剤、及び等張化剤を、それぞれ1:14〜40:288〜865:28〜576のモル比で含有する。
【0197】
一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン緩衝剤(又は緩衝系)、及び糖安定化剤を、それぞれ1:14〜40:548〜605のモル比で含有する。一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン緩衝剤(又は緩衝系)、糖安定化剤、及び等張化剤を、それぞれ1:14〜40:548〜605:115〜173のモル比で含有する。
【0198】
一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)、及びトレハロースを、それぞれ1:5.7〜145:288〜865のモル比で含有する。一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)、トレハロース、及び塩化ナトリウムを、それぞれ1:5.7〜145:288〜865:28〜576のモル比で含有する。
【0199】
一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)、及びトレハロースを、それぞれ1:14〜40:548〜605のモル比で含有する。一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)、トレハロース、及び塩化ナトリウムを、それぞれ1:14〜40:548〜605:115〜173のモル比で含有する。
【0200】
一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)、及びトレハロースを、それぞれ1:28.8:576のモル比で含有する。一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)、トレハロース、及び塩化ナトリウムを、それぞれ1:28.8:576:144のモル比で含有する。
【0201】
一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝種)、及びトレハロースを、それぞれ25〜75:0.31〜7.8:15〜140の重量比で含有する。一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝種)、トレハロース、及び塩化ナトリウムを、それぞれ25〜75:0.31〜7.8:15〜140:0.5〜12の重量比で含有する。
【0202】
一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝種)、及びトレハロースを、それぞれ45〜55:0.77〜2.2:65〜72の重量比で含有する。一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝種)、トレハロース、及び塩化ナトリウムを、それぞれ45〜55:0.77〜2.2:65〜72:2.7〜3.1の重量比で含有する。
【0203】
一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝種)、及びトレハロースを、それぞれ50:1.55:68の重量比で含有する。一つの態様において、液体医薬組成物は、アダリムマブ、ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝種)、トレハロース、及び塩化ナトリウムを、それぞれ50:1.55:68:2.9の重量比で含有する。
【0204】
様々な成分のモル及び/又は重量比に関する上記態様のいずれかは、本明細書中に規定される、ヒスチジン以外のアミノ酸、アルギニン、界面活性剤(任意でポリソルベート80を除く)、及び/又はリン酸緩衝剤/系等の、(実質的に又は完全に)含有しない又は低レベルの成分を参照することにより、追加的に規定される場合もある。
【0205】
上記態様のいずれかの緩衝剤(例えばヒスチジン)又は緩衝系(例えばヒスチジン/イミダゾリウム−ヒスチジン)は、組成物中に直接組み込まれ、又はin situで、例えば酸塩基反応により、適切には緩衝剤の共役酸(例えばヒスチジンのイミダゾリウム型、塩酸ヒスチジン等の形成済の塩又は遊離ヒスチジンの溶解時に発生するイミダゾリウム型)と塩基(例えば水酸化ナトリウム)とを反応させることにより、生産されてもよい。緩衝剤又は緩衝系を提供又は生産するのに用いる方法に拘らず、適切には、得られる組成物は最終的には適切なバランスの所望のpHを達成する緩衝剤及び任意の共役酸/塩基を含有する。当業者は、過剰な労力を要さずに、緩衝剤と共役酸/塩基との適切なバランス、及び/又は適切な量の緩衝剤を生産して所望のpHを達成するために共役酸に添加すべき塩基の量を、計算し、実験的に決定することが容易に出来る。
【0206】
一つの態様において、液体医薬組成物は:
−アダリムマブ;
−ヒスチジン緩衝剤(例えばヒスチジン)(又はヒスチジン緩衝系);
−糖安定化剤(例えばトレハロース);
−等張化剤(例えば塩化ナトリウム);
−任意で界面活性剤(例えばポリソルベート80);及び
−水(注射用);
を含有し、当該組成物は:
・アルギニン(適切にはL−アルギニン)を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.1mMの濃度のアルギニンを含有する;
・ヒスチジン以外のアミノ酸を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.1mMの(合計)濃度のヒスチジン以外の1つ以上のアミノ酸を含有する;
・任意でポリソルベート80を除く界面活性剤を(実質的に又は全く)含有しないか;最大1mMの(合計)濃度の1つ以上の当該界面活性剤(任意でポリソルベート80を除く)を含有する;及び/又は
・リン酸緩衝剤(例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.1mMの濃度のリン酸緩衝系を含有する。
【0207】
一つの態様において、液体医薬組成物は:
−アダリムマブ(適切には本明細書中に規定の濃度);
−ヒスチジン緩衝剤(例えばヒスチジン)(又はヒスチジン緩衝系)5〜14mM;
−糖安定化剤(例えばトレハロース)100〜約300mM;
−等張化剤(例えば塩化ナトリウム)10〜約200mM;及び
−水(注射用);
を含有し、当該組成物は:
・pHが6.3〜6.7(例えばpH6.4)である;
・アルギニン(適切にはL−アルギニン)を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.1mMの濃度のアルギニンを含有する;
・ヒスチジン以外のアミノ酸を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.1mMの(合計)濃度のヒスチジン以外の1つ以上のアミノ酸を含有する;
・任意でポリソルベート80を除く界面活性剤を(実質的に又は全く)含有しないか;最大1mMの(合計)濃度の1つ以上の当該界面活性剤(任意でポリソルベート80を除く)を含有する;及び/又は
・リン酸緩衝剤(例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.1mMの濃度のリン酸緩衝系を含有する。
【0208】
一つの態様において、液体医薬組成物は:
−アダリムマブ25〜約75mg/mL;
−ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)2〜約50mM;
−トレハロース100〜約300mM;
−塩化ナトリウム10〜約200mM;及び
−水(注射用);
を含有し、当該組成物は:
・pHが6.3〜6.5である;
・アルギニン(適切にはL−アルギニン)を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.1mMの濃度のアルギニンを含有する;
・ヒスチジン以外のアミノ酸を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.1mMの(合計)濃度のヒスチジン以外の1つ以上のアミノ酸を含有する;
・界面活性剤を(実質的に又は全く)含有しないか最大1mMの(合計)濃度の1つ以上の当該界面活性剤を含有する;及び/又は
・リン酸緩衝剤(例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.1mMの濃度のリン酸緩衝系を含有する。
【0209】
一つの態様において、液体医薬組成物は:
−アダリムマブ45〜約55mg/mL;
−ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)5〜14mM;
−トレハロース190〜210mM;
−塩化ナトリウム40〜60mM;及び
−水(注射用);
を含有し、当該組成物は:
・pHが6.3〜6.5である;
・アルギニン(適切にはL−アルギニン)を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.001mMの濃度のアルギニンを含有する;
・ヒスチジン以外のアミノ酸を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.001mMの(合計)濃度のヒスチジン以外の1つ以上のアミノ酸を含有する;
・界面活性剤を(実質的に又は全く)含有しないか最大0.0001mMの(合計)濃度の1つ以上の当該界面活性剤を含有する;及び/又は
・リン酸緩衝剤(例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)を(実質的に又は全く)含有しないか;最大0.001mMの濃度のリン酸緩衝系を含有する。
【0210】
一つの態様において、液体医薬組成物は:
−アダリムマブ50mg/mL;
−ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)10mM;
−トレハロース200mM;
−塩化ナトリウム50mM;
−1.0mg/mLポリソルベート80;及び
−水(注射用);
を含有し、当該組成物は:
・pHが6.4である;
・アルギニンを含有しない;
・ヒスチジン以外のアミノ酸を含有しない;
・界面活性剤を含有しない;及び
・リン酸緩衝剤/緩衝系を含有しない。
【0211】
好ましくは、液体医薬組成物は:
−アダリムマブ25〜約75mg/mL;
−ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)2〜約50mM;
−トレハロース100〜約300mM;
−塩化ナトリウム10〜約200mM;及び
−水(注射用);
から本質的に成り、当該組成物は:
・pHが6.3〜6.5である。
【0212】
好ましくは、液体医薬組成物は:
−アダリムマブ40〜約60mg/mL;
−ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)5〜約15mM;
−トレハロース175〜約225mM;
−塩化ナトリウム25〜約75mM;及び
−水(注射用);
から本質的に成り、当該組成物は:
・pHが6.3〜6.5である。
【0213】
好ましくは、液体医薬組成物は:
−アダリムマブ50mg/mL;
−ヒスチジン(又はヒスチジン緩衝系)10mM;
−トレハロース200mM;
−塩化ナトリウム50mM;及び
−水(注射用);
から本質的に成り、当該組成物は:
・pHが6.4である。
【0214】
適切には、液体医薬組成物は、上記態様のいずれかに記載の通りであり得るが、但し、不含又は低レベルの成分、例えばアルギニン、アミノ酸、界面活性剤(任意でポリソルベート80を除く)、及びリン酸緩衝剤/系は、濃度(即ちモル)に関連して規定されず、代りに当該成分と緩衝剤/緩衝系との対応するモル比;当該成分とアダリムマブとの対応する重量比;又は当該成分とアダリムマブとの対応するモル比、を参照することによって、規定されてもよい。本明細書中には関連するモル及び重量比がそれぞれ所定の濃度に関連して列挙されているため、当業者は、特定の成分に関連する明細書中の関連する項目から、各成分において、いずれのモル及び重量比がいずれの濃度に対応するかを、容易に推定できる。例えば、アルギニンの場合、任意の濃度「最大で0.1mM、より適切には最大で0.01mM、最も適切には最大で0.001mM」は、それぞれ、アルギニンと緩衝剤とのモル比「最大で1:150・・・より適切には最大で1:1500、最も適切には最大で1:15000」に、アルギニンとアダリムマブとの重量比「最大で1:3000・・・より適切には最大で1:30000、最も適切には最大で1:300000」に、そしてアルギニンとアダリムマブとのモル比「最大で1:3.75・・・より適切には最大で1:37.5、最も適切には最大で1:375」に、対応する。アミノ酸、界面活性剤、及びリン酸緩衝剤/系にも同一の対応が適用される。
【0215】
液体医薬組成物を製造する方法
本発明は、適切には本明細書中で規定する液体医薬組成物を製造する方法を提供する。当該方法は、適切には、適当と認められる任意の特定の順番で、本明細書中に規定の液体医薬組成物を形成するのに必要な任意の関連する成分を、混合する工程を含む。当業者は、実施例、又は本分野で液体医薬組成物(特にシリンジにより注射するもの)を形成するのに周知の技術を参照し得る。適切には、様々な態様が、混合すべき成分を潜在的に様々な量かつ様々な組み合わせで必要とし得る。当業者は、液体医薬組成物に関する上記開示を参照して、そのような組み合わせ及び量を容易に推定し得る。
【0216】
適切には、前記方法は、関連する成分を、適切には希釈剤(例えば水)中で、適切には全ての成分が希釈物中に(実質的に又は完全に)溶解するように、混合することを含む。
【0217】
前記方法は、アダリムマブを除く幾つかの又は全ての成分の(任意で一部の又は全ての希釈剤と共に)前混合物(又は前溶液)を最初に調製することを含んでもよく、アダリムマブは、それ自体が(任意で一部の希釈剤と共に、又はこれに溶解させて)、当該前混合物(又は前溶液)と混合することにより、液体医薬組成物が、又は最終的な液体医薬組成物を得るために最終成分が加えられる組成物が、取得される。最も適切には、前混合物は、アダリムマブ以外の全ての成分及び任意で一部の希釈剤(アダリムマブを予め溶解するのに用いられ得る)を含有し、適切には、アダリムマブは、最適なアダリムマブの安定性をもたらす混合物に添加される。適切には、上記前混合物は、最終的な液体医薬製剤が所望のpHとなるように調整される。
【0218】
適切には、前記方法は、緩衝系、適切には本明細書中に規定の緩衝剤を含有する緩衝系を形成する工程を含む。当該緩衝系は、適切には、アダリムマブを添加する前に前混合物中で形成されるが、任意で、アダリムマブ存在下で形成されてもよい。緩衝系は、緩衝剤(供給される既製品)をその共役酸/塩基と(適切には、所望のpHを提供するのに適した相対量で−これは、当業者によって理論的に又は実験的に決定され得る)単純に混合することによって形成されてもよい。ヒスチジン緩衝系の場合、これは、ヒスチジンをヒスチジンのイミダゾリウム型(例えば塩酸ヒスチジン)と混合することを意味する。あるいは、緩衝系は、緩衝剤(例えばヒスチジン)に強酸(例えばHCl)を添加して、in situで緩衝剤(適切には、所望のpHを提供するのに適した相対量で)との共役酸/塩基(例えばヒスチジンのイミダゾリウム型)を形成する。あるいは、緩衝系は、緩衝剤の共役酸/塩基に(又は緩衝剤自体に、この場合溶解時等の動的平衡状態で当該共役酸/塩基を形成する)強塩基(例えば水酸化ナトリウム)を添加することにより、in situで緩衝剤(適切には、所望のpHを提供するのに適した相対量で)を形成し得る。最終的な液体医薬組成物の前混合物のpHは、必要な強塩基又は強酸の添加、又は緩衝剤若しくは共役酸/塩基の量により、賢明に調整され得る。
【0219】
幾つかの態様において、緩衝剤及び/又は緩衝系は、別個の混合物として予め形成され、緩衝系は、緩衝剤交換(例えば関連する濃度又は浸透圧に達するまで透析濾過を用いて)により、医薬組成物の前駆物(緩衝剤及び/又は緩衝系以外の一部又は全ての成分を含有し、適切にはアダリムマブを含有し、潜在的にはアダリムマブのみを含有する)に移される。必要に応じて、最終的な液体医薬組成物を生産するために、追加の助剤がその後添加されてもよい。pHは、全ての成分が存在する時点又はその前に調整されてもよい。
【0220】
いずれかの、幾つかの又は全ての成分が、他の成分と混合される前に希釈剤に予め溶解又は混合されてもよい。
【0221】
最終的な液体医薬組成物は、適切には沈殿物を除去するために、濾過されてもよい。適切には、濾過は、1μm以下、適切には0.22μm以下のサイズのフィルターを用いて行われる。適切には、濾過は、PESフィルター又はPVDFフィルターを用いて、適切には0.22μmのPESフィルターを用いて行われる。
【0222】
本発明は、本明細書中に記載の製造方法によって取得可能な、取得された、又は直接取得される、液体医薬組成物を提供する。
【0223】
薬物送達デバイス
本発明は、本明細書中に規定の液体医薬組成物を含有する薬物送達デバイスを提供する。適切には、薬物送達デバイスは、内部に医薬組成物が納められた容器を備える。適切には、薬物送達デバイスは滅菌されている。
【0224】
薬物送達デバイスは、バイアル、アンプル、シリンジ、インジェクションペン(例えば本質的にシリンジを組み込む)、又は静脈内バッグであり得る。最も適切には、薬物送達デバイスは、シリンジ、適切にはインジェクションペンである。適切には、シリンジはガラス製である。適切には、シリンジは、針、適切には29G1/2”の針を備える。
【0225】
本発明は、適切には本明細書中に規定の薬物送達デバイスを製造する方法を提供し、当該方法は、薬物送達デバイス内に本明細書中に規定の液体医薬組成物を組み込む工程を含む。そのような製造は、典型的には、本明細書中に規定の液体医薬組成物を、シリンジに、適切にはそれに取り付けられた針を通じて、充填する工程を含む。当該針は、その後に除去され、取り替えられ、又はそのまま残置されてもよい。
【0226】
本発明の第十一の側面において、本明細書中に規定の製造方法により取得可能な、取得された、又は直接取得された、薬物送達デバイスが提供される。
【0227】
パッケージ
本発明は、本明細書中に規定の液体医薬組成物を含有するパッケージを提供する。適切には、当該パッケージは、本明細書中に規定の薬物送達デバイス、適切には複数の薬物送達デバイスを備える。当該パッケージは、1つ以上の薬物送達デバイスを備えるための任意の適切な容器を備え得る。
【0228】
本発明は、パッケージを製造する方法を提供し、当該方法は、パッケージ内に本明細書中で規定の液体医薬組成物を組み込む工程を含む。適切には、これは、液体医薬組成物を1つ以上の薬物送達デバイス内に組み込み、その後、1つ以上の充填済み薬物送達デバイスを、パッケージ内に存在する容器中に組み込むことにより、達成される。
【0229】
本発明は、本明細書中に規定の製造方法により取得可能な、取得された、又は直接取得された、パッケージを提供する。
【0230】
部分のキット
本発明は、薬物送達デバイス(内部に充填される液体医薬組成物無し)、本明細書中に規定の液体医薬組成物(任意で個別の包装又は容器中に納められる)、及び任意で液体医薬組成物の投与(例えば皮下)に関する指示を含む一揃いの説明書を備える、部分のキットを提供する。使用者は、投与の前に、薬物送達デバイスに液体医薬組成物(バイアルやアンプルのようなものに入れて提供され得る)を充填する。
【0231】
本発明の第十二の側面において、疾患又は医学的障害を治療する方法;治療における使用のための液体医薬組成物;疾患又は障害の治療のための医薬の製造における液体医薬組成物の使用;腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)−関連自己免疫疾患を治療する方法;腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)−関連自己免疫疾患の治療における使用のための液体医薬組成物;腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)−関連自己免疫疾患の治療のための医薬の製造における液体医薬組成物の使用;関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、中度から重度の慢性乾癬及び/又は若年性特発性関節炎を治療する方法;関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、中度から重度の慢性乾癬及び/又は若年性特発性関節炎の治療における使用のための医薬組成物;及び関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、中度から重度の慢性乾癬及び/又は若年性特発性関節炎の治療のための医薬の製造における液体医薬組成物の使用;を提供する。
【0232】
液体医薬組成物の使用及び治療方法
本明細書中に規定の液体医薬組成物は、1つ以上の上記疾患又は医学的障害を治療するのに使用され得る。好ましい態様において、液体医薬組成物は、関節リウマチ、適切にはクローン病及び乾癬を治療するのに使用される。
【0233】
液体医薬組成物は、適切には非経口投与され、適切には皮下注射される。
【実施例】
【0234】
材料及び機材
実施例に記載の製剤の調製において、以下の材料が使用された:
【表2】
【0235】
実施例及びスクリーン実験において、以下の使い捨て機材及び材料が使用された:
【表3】
【0236】
実施例及びスクリーン実験において、以下のパッケージングが使用された:
【表4】
【0237】
実施例及びスクリーン実験において、以下の機材が使用された:
【表5】
【0238】
解析技術及びプロトコール
下記表に示す理由で、実施例及びスクリーン実験において、以下のプロトコールの方法が採用された:
【表6】
【0239】
上記各解析方法における個別のプロトコールは下記に記載されており、そのような解析方法に対する実施例及びスクリーニング実験における参照はこれらのプロトコールを使用した。
【0240】
1.純度−バイオアナライザー
A2100バイオアナライザーが使用された。プロトコールは、関連する説明書中に記載されている。しかしながら、当該プロトコールは、下記のように追加で調整された。
【0241】
溶液
ゲル−色素混合物(染色溶液):
プロテイン230プラスゲルマトリックスチューブに、25μlの230プラス色素濃縮物を添加した。良く撹拌し、チューブを15秒間スピンダウンした。内容物をスピンフィルターに写し、これを20分以上2500rpmで遠心分離した。当該溶液はすぐに使用できる。当該溶液は、4週間以内、5±3℃で保存された。
【0242】
脱染色溶液:
スピンフィルターにピペットで650μlのゲルマトリックスを入れた。25分間以上2500rpmで遠心分離した。当該溶液は、4週間以内、5±3℃で保存された。
Destaining Solution:
【0243】
試料緩衝剤:
200μlの試料緩衝剤を25μlのアリコートに分けて、各チップにおいてアリコートを解凍することを推奨する。当該試料緩衝剤ストック溶液及びアリコートを、供給者によって提供された有効期限より短い期間、−20℃で保存した。
【0244】
マレイミドストック溶液:
1mLのMilliQ水に、23.4mgのマレイミドを溶解した(0.24M)。この溶液を良く撹拌した。続いてこの溶液をMilliQ水で1:4に希釈した(例えばストック溶液50μL+MilliQ150μL)。希釈されたマレイミド溶液の最終濃度は、60mMである(この溶液の安定性について利用出来るデータはまだ無いため、各解析試験を開始する前に新しく調整されなければならない)。
【0245】
OTf−溶液:
アダリムマブ試料の解析のため、DTT1Mを用いて還元溶液を調製しなければならないので、MilliQ水1mLにDTT154.0mgを溶解した。
OTf−Solution:
【0246】
非還元溶液:
試料緩衝剤アリコート(25μL)にMilliQ水1μlを添加し、5秒間撹拌した。当該非還元溶液は、調製した日のうちに使用した。
【0247】
還元溶液:
試料緩衝剤アリコート(25μL)に上記DTf−溶液1μlを添加し、5秒間撹拌した。当該還元溶液は、調製した日のうちに使用した。
試料調製:
・試料は、2.4〜3mg/mlの濃度範囲で解析される。
・必要な場合、試料は、MilliQ水を用いて目標濃度に希釈され得る。
【0248】
試料は、Reagent Kit Guide中の説明及び上記の事項に従い、還元及び非還元試料緩衝剤を使用してReagent Kit Guideに従って調製される。当該ガイドとは異なるが、再現可能で正確な結果を達成するために、より大きい体積を使用することを強く推奨する。ラダー及び試料を調製する一例を以下に示す:
【表7】
【0249】
補足1:濃度が2.4〜3.0mg/mlであるIPCにおいて、試料の調製は上記表に従うが、試料加熱後のMilliQ水の体積は、最終タンパク質濃度が0.1mg/mLに達するように計算される。
【0250】
濃度2.4〜3.0mg/mLの試料の試料調製の例を下記に示す:
【表8】
【0251】
補足2:全てのウェルは充填されなければならない。試料数が利用可能なウェルを下回る場合、空のウェルは、追加の複製又はブランク試料の為に使用できる。
系及びチップの調製
−解析の前及び後に系を洗浄するために、MilliQ水600IILで「電極クリーナー」を満たし、それをAgilent 2100 Bioanalyzer内に置き、蓋を閉め、当該系を停止させる。更なる動作を要しない。
−チッププライミングステーションのベースプレートを位置「A」に、シリンジクリップをその中間の位置に調整した。
【表9】
ラダー及び試料の充填:
−各試料6μlを試料ウェルに移し、同様に6μlのラダーを、ラダーシンボルで明確に表示してある専用のウェルに移した。
【0252】
チップをAgilent 2100 Bioanalyzerに写し、5分以内に解析を開始する。
【表10】
【0253】
データ解析及び結果の評価:
結果を取得するために、以下の最小の動作を遂行しなければならない。
・チップを特定のスポットに置き蓋を閉める。
・装置の文脈中でAssay − Electrophoresis− Protein− Protein 230 Plusを選択する。
・STARTをクリックして解析を開始する。解析は30分以内に終了する。
・「Data Analysis」をクリックすると生データが表示され、その日に実施された全ての実験が列挙される。関心の有る実験をクリックしてそれを選択する。
・選択された実験から生じたゲルが自動で開く。
・データが電気泳動図又はゲル状の画像として示され得る。
【0254】
電気泳動図中のピークの統合に関する詳細な情報(純度データを得るため)は、ソフトウエアのマニュアルに含まれている。試料の純度は、自動の統合によってシステムにより自動で与えられるが、必要な場合、手動統合が利用され得る。
【0255】
結果:
非還元条件中、結果は%純度及び%LMW(モノマーの前のピークの合計)として示される。
【0256】
還元条件において、結果は%純度として、重鎖及び軽鎖の合計として示される。
【0257】
指標的な分子量の値を、以下の表に示す:
【表11】
【0258】
2.アンフォールディング温度−DSF
DSF(差走査蛍光定量)は、以下のように実施された。
2. Unfolding Temperature - DSF
【0259】
2マイクロリットルのSypro Orange (橙色タンパク質ゲル染料、cod. S6650, Life Technologies)を注射用水で500倍に予め希釈し、これを20マイクロリットルの薬物製品溶液に添加した。Sypo Orangeの添加後、DP溶液(3つ調製する)を96ウェルプレート(MicroAmp Fast 96−W Reaction Plate 0.1 mL, cod. 4346907)に充填した。プレートを透明な保護カバーで密封し(MicroAmp Optical Adhesive Film, cod. 4311971)、遠心分離して空気の泡を除去した。プレートをシステムに挿入し、室温から90〜100℃の温度での発光プロフィールを走査した。蛍光発光強度の温度への依存は、典型的には変性温度での反転点/中止を示し、異なる組成物を比較するのに使用するパラメーターである。
【0260】
3.アイソフォームプロフィール−iCE280
iCE280(アイソフォームプロフィール)によるcIEF:Amicon Ultra−4遠心分離デバイス(カットオフ10kDa)中での遠心分離による精製及び塩類の除去後、試料を純水で5.0mg/mLの濃度に予め希釈した。そして、メチルセルロース、Pharmalyte 5−8 (GE Healthcare)、Pharmalyte 8−10.5 (GE Healthcare)、低pIマーカー7.05 (Protein Simple)、高pIマーカー9.50 (Protein Simple)及び純水からなる溶液で、1.0mg/mLとなるように2回目の希釈を行った。希釈後、試料を10000rpmで3分間遠心分離した。追加の遠心分離工程(7000rpm2分間)が、ガラスインサート中に移された150マイクロリットルの各試料に対して行われる。cIEF(キャピラリー等電点電気泳動)は、Protein Simple社製iCE280システムにより、100ミクロンIDコーティング及び全長50nmのキャピラリーカートリッジFC(Cat. No. 101700/101701 by Protein Simple)を使用して実施された。様々なアイソフォームの分離は、カソード溶液として100mM水酸化ナトリウム(0.1%メチルセルロース中)及びアノード溶液として80mMo−リン酸(0.1%メチルセルロース中)を用いて実施される。電気泳動図は、1500V(収束前)及び3000v(収束)の電圧で、それぞれ1分間及び6分間の収束前及び収束時間に渡り、280nmで取得される。
【0261】
4−タンパク質量−OD
OD(タンパク質量)測定は、約10mg/mLの関連する緩衝剤又は偽薬でまず重量測定法で希釈された試料について実行された(3つの独立した希釈物が作製された)。希釈された溶液は、0.1cmパス長水晶キュベット中、室温で、280及び320nmの吸光度を、ダブルビーム分光光度計(Lambda35 by Perkin Elmer)で測定された。アダリムマブのモル吸光係数として数値1.35を用いた。
【0262】
5.凝集性の判定−SE−HPLC
試料を、DPBS 1xで、0.5mLの濃度まで希釈し、等張条件を維持して、Column TSK gel Super SW3000 4.6mm ID X30.0cm cod.18675 by Tosoh(泳動層:50mMリン酸ナトリウム+0.4M過塩素酸ナトリウム、pH6.3±0.1)中に注入した(注入体積20マイクロL)。UV検出は、0.35mLの流速で214nmで行った。各解析ランの時間は15分であった。解析の前に、この試験に用いるWaters Alliance HPLCシステムのオートサンプラー中で2〜8℃で試料を維持した。
【0263】
6.濁度−ネフェロメトリー
濁度は、室温で、濁度計2100AN IS Turbidimeter by Hachを用いて実施される、ネフェロメトリー(典型的には1ミクロン未満の直径の粒子により起こる光分散効果に基づく効果)測定により評価された。最小量の3mlの溶液を減体積ガラスキュベット中に入れ、一揃いの標準溶液(0.1〜7500NTU)で装置を校正した後、分散効果を試験した。
【0264】
7.浸透圧の決定−浸透圧
浸透圧は、溶液の凝固点効果特性に基づき測定された。当該試験は、試料50マイクロリットルを凍結に供するOsmomat 030−D by Gonotechを用いて実施された。凍結温度は溶液の浸透圧(即ち塩、糖、他のイオン性及び非イオン性種等の溶解している成分の存在)に依存する。
【0265】
8.pHの決定−pH
pHは、室温でMettler Toledo Seven Multi pHメーターを用いて実施される電位差測定を使用して決定された。
【0266】
9.粒子計数−可視下粒子
試料を純水で5倍に希釈して最終体積25mLとした。粒子の数は、PAMAS SVSS by Aminstrumentsにより室温で決定され、4回の独立したランを回収し、所望の各フラクションにおいて結果を平均化した。
【0267】
実施例1−第一の製剤スクリーニングにおける製剤
第一の製剤のセット(本明細書中ではしばしばDoE1製剤と表記する)を、下記表1に示す。
【表12】
【0268】
表1の製剤は、製剤前の界面活性剤不含DS材料から出発して製造された。
【0269】
DSのアリコートは、緩衝剤と三倍体積の交換が達成されるまで、pH6.0の10mMヒスチジン緩衝剤で透析濾過された。そして、所望の助剤が緩衝剤交換されたDS材料に添加され、pHが、水酸化ナトリウムの希釈溶液の添加によって、目的の値に調整された。各製剤は、0.22μmPESフィルターで濾過された。
【0270】
表2に、2つの緩衝剤交換したDS材料における材料の回収率及び浸透圧に関する結果を示す。
【表13】
【0271】
ヒスチジン緩衝系において回収率が良好であった(90%以下)。浸透圧の値は、元のDSに由来する種の最小の残留物で達成した緩衝剤交換の満足度を示す。
【0272】
実施例2−第二の製剤スクリーニングの製剤
第二の製剤のセット(本明細書中ではしばしばDoE2製剤と表記する)を、下記表3に示す(その下の表4に由来する)。
【表14】
【表15】
【0273】
DoE2製剤(表3)は、製剤前の界面活性剤不含DS材料から出発して製造された。
【0274】
DSの3つのアリコートは、三倍体積の交換が達成されるまで透析濾過された。そして、所望の助剤が緩衝剤交換されたDS材料に添加され、pHが、水酸化ナトリウムの希釈溶液の添加によって、目的の値に調整された。各製剤は、0.22μmPESフィルターで濾過された。
【0275】
表5において、緩衝剤交換したDS材料における材料の浸透圧及び濁度に関する結果を示す。
【0276】
これらの浸透圧の値は(40mOsm/kg)、元のDSに由来する種の最小の残留物で達成した緩衝剤交換の満足度を示す。
【表16】
【0277】
実施例3−両第一及び第二のスクリーニングの製剤の比較
比較及びコントロールの為、3つの参照製剤が調製又は取得され、それらはRef−1 (Humira(登録商標)、出願人により製造された);Ref−2 (RMP US - Humira(登録商標)、米国製市販薬物製品);及びRef−3 (RMP EU - Humira(登録商標)、欧州製市販薬物製品)を含む。これらの全ての参照製剤は、表6に示す組成を有していた。
【表17】
【0278】
スクリーニング
第一の製剤のスクリーニング(DoE1)は、タンパク質安定性に関与する様々な要因(例えばpH、NaClの存在、助剤の種類)の同定をもたらし、最終的に、製剤を微調整し、界面活性剤、例えばポリソルベート80が、タンパク質の安定性にどうやって影響するかを評価する、第二のスクリーニング(DoE2)において追求すべき製剤の選択をもたらした。
【0279】
各2つのスクリーニングは、上記に規定のように、また後述のように、長期間に渡る(例えば1ヶ月)、様々なレベルの熱、機械的、及び光ストレスに晒された様々な異なる製剤に対する、様々な解析試験を含む。これらの製剤のスクリーニングは、夥しい量のデータの収集を可能とし、それは、新しい有利な製剤の開発を可能とする驚異的かつ有益な洞察を提供した。
【0280】
2つの製剤のスクリーニングの結果を下記に示す。
【0281】
スクリーニング実験1−実施例3の比較製剤に対する実施例1の製剤の解析及びスクリーニング
予備的なDoEスクリーニング(工程1)は、イオン強度(NaClにより与えられる)、pH及び異なる安定化剤がタンパク質に対してもたらす効果を、短期間の安定性試験の過程で評価した。
【0282】
反応表面D−最適統計デザインが適用された。3つの要素が考慮された:
−イオン強度(NaCl濃度により駆動され、25mM〜100mMの範囲内で変化し、数因子として設定された)、
−ヒスチジンにより緩衝されるpH(4.6〜6.4)が調査された;
−安定化剤/助剤(幾つかのレベルを含む分類要素:塩酸リジン、アルギニン+アスパラギン酸、マンニトール、トレハロース二水和物)。
【0283】
これらの製剤は、上記実施例1に記載のように、ポリソルベート80無し、故に界面活性剤不含のDSから出発して製造された。
【0284】
下記表7は、このスクリーニング内で試験された製剤を要約したものである。提示された8つの製剤に加えて、2つの対象も、比較物として解析されている:
・Humira市販薬物製品DP(上記実施例3の通りに製剤化された)
・Humira市販DPとして製剤化されたMS薬物基質DS(上記実施例3の通りに製剤化された)
【表18】
【0285】
製剤は、表8に示す計画に従って試験された。熱ストレスは、最長で1ヶ月40℃が考慮された。DSF技術(タンパク質アンフォールディング温度の決定に基づく急速スクリーニングに向けられる)を用いて高効率の評価がT0で実施された。
【表19】
【0286】
1.1浸透圧スクリーニング
緩衝剤交換DS材料(par. 5.1.1)から出発して作製されたDoE1製剤の浸透圧を図9に示す。
【0287】
殆どの製剤の浸透圧は250〜400mOsm/kgの範囲に見られたが、塩化ナトリウム濃度が最も高い場合に僅かに高い値が観察された。
【表20】
【0288】
1.2タンパク質量(OD)
DoE1製剤のタンパク質量は時間0及び40℃1ヶ月後に測定された。
【0289】
図1は、実施例1のDoE1製剤のタンパク質濃度(mg/mL)を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)及び40℃加熱後4週(網掛け無し)に行われた。
【0290】
図1に表す結果は、経時的に起こる顕著な変化は無いことを示した。全ての濃度は、50mg/mLの目標の範囲内に見出された。
【0291】
1.3 凝集(SE−HPLC)
図2は、実施例1のDoE1製剤のSE−HPLCにより決定される凝集性%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。40℃での安定性に関するSE−HPLCにより観察された全凝集物は、図2中にグラフで表されている。凝集性の僅かな増大が全ての製剤で観察された。しかしながら、1ヶ月経過しても、全ての凝集レベルは1%未満であった。
【0292】
1.4断片化(バイオアナライザー)
図3は、実施例1のDoE1製剤のバイオアナライザーにより決定される断片化%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0293】
図3において、バイオアナライザーにより決定される時間に対する断片の変化が示されている。より酸性のpHでの製剤は、より急速な断片化速度をもたらす傾向がある。更に、このpH範囲でのアミノ酸の存在は、安定性プロフィールを顕著に悪化させ得る。
【0294】
pH>6.0かつ糖/ポリオールの存在下、参照を含む全ての製剤は、同等である(40℃1ヶ月後の断片化が1%未満)。
【0295】
塩化ナトリウムは、25〜100mMの範囲内で、安定性に重要な要素とは認められなかった。
【0296】
1.5pHスクリーニング
表10は、実施例1のDoE1製剤のpHを示し、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、任意の出発点(時間=0)、40℃加熱後2週及び4週に行われた。
【0297】
表10から見られるように、目標pHからの逸脱は見られなかった。
【表21】
【0298】
1.6アンフォールディング温度(DSF)
DSFは、温度上昇が試料に適用されたとき蛍光プローブとの相互作用が増大することに基づくタンパク質のアンフォールディング温度の決定を目的とする高効率の方法である。タンパク質がアンフォールディングを開始するとき、タンパク質は、疎水性パッチを蛍光プローブを誘引する溶媒に進行的に露出し、蛍光プローブが溶液中の遊離状態(無蛍光)からタンパク質との結合状態(疎水性相互作用による)に移行することにより、蛍光シグナルが増大する。
【0299】
蛍光シグナルの評価から、各製剤の転移点を示すシグモイド曲線の中点を決定することができた。転移点が高い程、熱ストレスに対する製剤の耐性が高いことを意味する。
【0300】
DoE1スクリーニング製剤に対して実施された評価の結果を図4に示す。図4は、実施例1のDoE1製剤のDSFにより決定されるアンフォールディング温度(℃)を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定された。
【0301】
3つの参照製剤のアンフォールディング温度は、71〜72℃であった。参照製剤以外の製剤でアンフォールディング温度が70℃を超えるものは殆ど無かったが、以下のものを含んでいた:
・製剤23、24及び25(異なる塩化ナトリウム濃度でトレハロース二水和物又はD−マンニトールの何れかの存在下、pH6.2〜6.4のヒスチジン緩衝剤中の製剤)。
【0302】
従って、この試験により、ポリオール/糖が特にpH6.2以上でタンパク質の熱安定性に正の影響を与える一方、塩化ナトリウムはその挙動に顕著に影響しないという、バイオアナライザーによって断片化に関して既に得られた結果が確認された。
【0303】
1.7アイソフォームプロフィールの変化対RMP
DoEスクリーニング製剤25のアイソフォームプロフィールは、40℃で10〜11週間後に試験され、参照試料と比較された。
【0304】
主要ピーク及び酸クラスター変動におけるデータを表11に示す。
【0305】
試験された4つの試料において同等の変動が得られ、製剤25(ヒスチジン)によって僅かに良好な成績が示された。
【表22】
【0306】
スクリーニング実験1の結論
バイオアナライザー及びDSF試験で得られた結果は、タンパク質に対する最高の熱安定性を保証し得る最良の組成物を決定するための反応表面におけるANOVAモデルにより組み合わせて評価された。
【0307】
推奨される組成物の一覧を表12に示す。これは、1ヶ月40℃でのアンフォールディング温度及び断片化の変化に関して、得られた試作製剤の性能をHumira RMPと比較もする。
【0308】
製剤CはDoE1製剤25に対応し、真のデータが示された。
【0309】
これらの製剤をRMPと比較して、熱応答に対するこれらの試作製剤の挙動は、RMPにおいて認められるのと同等であると結論付けられる。
【表23】
【0310】
些か予想外なことに、単一の安定化剤としてトレハロース二水和物を含有する製剤が、特に断片化阻害、アンフォールディング阻害及びpH維持に関して、非常に良好な成績を示した。そのようなトレハロースベースの製剤は、凝集及び沈殿に関しても良好な成績を呈した。トレハロースが安定化剤としてそのような強力な候補であったことは、アダリムマブ製剤に対する更なる長期間の化学的安定性(特に酸化及び/又は光酸化に対して)をもたらし得る抗酸化特性に関して極めて有望であった。更に、トレハロースが単独で使用されながらも優れた性能を呈することは、より少ない成分を採用するより複雑でない製剤を特に促進し、道を開くと考えられた。これは、アダリムマブ薬物製品の生産に関するプロセスやコストを減少し得る。こうして、これらのトレハロースベースの製剤は、製剤を微調整するためのスクリーニング実験の第二段階に持ち込まれた。
【0311】
スクリーニング実験2−実施例3の比較製剤に対する実施例2の製剤の解析及びスクリーニング
これまでのスクリーニングで、製剤試作品が同定された(表12)。これまでの工程は界面活性剤を添加せずに行われたため、第二の工程は、良好なタンパク質安定性に界面活性剤の添加が必要か否かを評価するために、一揃いのレベルのポリソルベート80界面活性剤(範囲:0〜1mg/mL)のスクリーニングを目的とした。
【0312】
表3(実施例2)は、本研究のこの第二の工程の設計をまとめ、この第二のスクリーニングにおいて試験された製剤(DoE2製剤)を列挙している。
【0313】
典型的には、界面活性剤は、機械的ストレスが誘導する凝集を対比するために観察され、撹拌ストレス試験は、ポリソルベート80がどのようにタンパク質安定性に影響し、撹拌に応答するかを評価するために実施された。
【0314】
工程1と同様に、実施例3に記載の参照組成物も、新しい製剤の開発のためのベースラインを提供するために評価されている。
【0315】
この製剤のブロックに対して実施された解析の完全なリストを表13に示す。この第二のスクリーニングにおいて、各製剤は、熱、機械及び光の3つの異なる種類のストレスに晒された。
【表24】
【0316】
熱ストレス試験は、関連する製剤の試料を所定の温度で所定の期間(典型的には2週間又は4週間/1ヶ月)加熱することによって実施された。
【0317】
機械的ストレス試験は、関連する製剤の試料を室温で所定の時間(典型的には24時間又は48時間)200rpmで機械的に撹拌することによって実施された。
【0318】
光ストレス試験は、関連する製剤の試料を7時間765W/mの光に暴露することにより実施された(新しい活性基質及び医薬製品の光安定性試験に関するEuropean Medicines AgencyのICH Q1Bガイドラインに従う)。
【0319】
2.1.浸透圧
DoE2スクリーニング製剤の浸透圧を表14に示す。378〜401mOsm/kgに含まれる値は、恐らく、溶液の凝固点及びそれ故に浸透圧に影響する粘性の幾らかの増大をもたらし得るトレハロース二水和物の存在のため過大評価されている。これは、粘性の減少のために浸透圧試験の前にWFIで3倍に希釈した他の試験製剤に関する測定によって確認されており:これら全ての製剤の実際の浸透圧は350mOsm/kg未満である。
【表25】
【0320】
2.2.タンパク質含有量(OD)
時間0での全てのDoE2製剤のタンパク質含有量は、目標タンパク質濃度の50mg/mLと一致した(表15)。
【表26】
【0321】
2.3.熱ストレスによる凝集(SE−HPLC)
SE−HPLCによる全凝集物の変動を、図5に示す。図5は、実施例2のDoE2製剤のSE−HPLCにより決定される凝集性%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0322】
全ての製剤において観察された変化は僅かであり、40℃で1ヶ月後の全凝集物量は1%未満であった。
【0323】
DoE2スクリーニング製剤の性能は、RMP材料と比較して同等/僅かに良好であった。
【0324】
2.4.熱ストレスによる断片化(バイオアナライザー)
バイオアナライザーによる断片の変化を、図6に示す。図6は、実施例2のDoE2製剤のバイオアナライザーにより決定される断片化%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0325】
製剤DoE2−7(ポリソルベート80無し)は、他の2つが界面活性剤の存在下RMP材料と同等と認められたのに対して、断片の定常的な増大を示す。製剤#25(DoE2のフォーム7と同等)に対するDoE1実験から得られるデータを考慮して、DoE2−7の分解の増大は、試料の汚染が原因の可能性が有ると結論付けられる。
【0326】
2.5.熱ストレスによるアイソフォームプロフィール(iCE280)
1ヶ月40℃での3つの製剤の主要ピーク及び酸クラスターの変化を、それぞれ図7及び8に示す。
【0327】
図7は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される主要ピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0328】
図8は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される酸クラスターピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0329】
最高の変化はDoE2−7で見られた(主要ピークにおいて−15%)が、これは、上記で言及したように、試料の汚染に由来する可能性がある。
【0330】
これらの結果は、試作製剤(第一のスクリーニングから得た)に対するiCE280により既に示された実験的証拠を確認するもので、ヒスチジンを含有する製剤は、アイソフォームプロフィールに関して、RMPと同等の分解速度を示す。
【0331】
酸クラスターに関して、これらの結果は、主要ピークで得られた結果と一致する。
【0332】
2.6.熱ストレスによるpHスクリーニング
製剤を一定期間40℃で加熱した場合のDoE2製剤(実施例2の)のpHの変化を表16に示す。
【0333】
表16に示すように、DoE2−7においてpHの低下が観察された。これは、試料の汚染/細菌増殖によるものと思われる。
【表27】
【0334】
2.7.熱ストレスによる濁度(ネフェロメトリー)
図9は、実施例2のDoE2製剤のネフェロメトリーにより決定される濁度を示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、40℃加熱後2週(薄い斜線網掛け)及び4週(網掛け無し)に行われた。
【0335】
3つの製剤の濁度は、時間0において、典型的に乳白色の溶液(6〜18NTU)の範囲内である。DS材料由来のものに関して、典型的な濁度は19〜52NTUであったが、無菌濾過後のDP溶液は顕著に清澄化される。
【0336】
重要なことに、Humira RMPの値は、通常、我々の製剤と同様に、10NTU周辺である。
【0337】
2.8.機械的ストレスによる凝集(SE−HPLC)
図10は、実施例2のDoE2製剤のSE−HPLCにより決定される凝集性%を示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、機械的撹拌(振盪)後24時間(薄い斜線網掛け)及び48時間(網掛け無し)に行われた。
【0338】
SE−HPLCによる全凝集物の変化を図10に示す。
【0339】
全てのヒスチジン緩衝剤中の製剤において、観察された変化は僅かであった(+0.1%)。
【0340】
2.9.機械的ストレスによる断片化(バイオアナライザー)
図11は、実施例2のDoE2製剤のバイオアナライザーにより決定される断片化%を示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、機械的撹拌(振盪)後24時間(薄い斜線網掛け)及び48時間(網掛け無し)に行われた。
【0341】
バイオアナライザーによる断片の変化を図11に示す。観察された変化は僅かで、記録された値は変化無しか又は0.5%未満であった。
【0342】
室温で48時間撹拌した後、全ての試料において、0.2〜0.4%の断片化が認められた。機械的撹拌の場合、断片化の増大に向かう傾向が見られなかった。
【0343】
2.10.機械的ストレスによるpHスクリーニング
製剤を一定時間機械的に撹拌(振盪)した場合のDoE2製剤(実施例2の)の変化を表17に示す。変化は観察されなかった。
【表28】
【0344】
2.11.機械的ストレスによる濁度(ネフェロメトリー)
図12は、実施例2のDoE2製剤のネフェロメトリーにより決定される濁度を示す棒グラフであり、測定は、任意の出発点(濃い斜線網掛け、時間=0)、機械的撹拌(振盪)後24時間(薄い斜線網掛け)及び48時間(網掛け無し)に行われた。変化は観察されなかった。
【0345】
2.12.光ストレスによる凝集物(SE−HPLC)
図13は、実施例2のDoE2製剤のSE−HPLCにより決定される凝集性%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、光暴露前(濃い斜線網掛け、時間=0)、765W/mの光暴露後7時間(網掛け無し)に行われた。
【0346】
比較は、同一の条件で処理されたHumira試料(米国製及び欧州製)とも行われた。RMPにおいて、凝集の増大は光暴露後に9〜15%に上る(時間0では凝集は1%未満)。全てのDoE2製剤における増大はそれを下回るか同等であり、故に、熱ストレスに対する良好な/同等の耐性を呈する。より詳細には:
・ヒスチジン緩衝剤中の製剤:5.8→9.8%(光暴露後の全凝集物)
【0347】
2.13.光ストレスによる断片化(バイオアナライザー)
図14は、実施例2のDoE2製剤のバイオアナライザーにより決定される断片化%を示す棒グラフであり、測定は、光暴露前(濃い斜線網掛け、時間=0)、765W/mの光暴露後7時間(網掛け無し)に行われた。
【0348】
増大は僅かであった(暴露後最大で+0.3%)。全ての断片化の量は、7時間の暴露後、1%を大きく下回る(図14)。
【0349】
2.14.光ストレスによるアイソフォームプロフィール(iCE280)
図15は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される主要ピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、光暴露前(濃い斜線網掛け、時間=0)、765W/mの光暴露後7時間(網掛け無し)に行われた。
【0350】
図16は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される酸クラスターピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、光暴露前(濃い斜線網掛け、時間=0)、765W/mの光暴露後7時間(網掛け無し)に行われた。
【0351】
Humira RMPにおいて、光暴露は、顕著な効果を決定する:もっとも重要なことに、光毒性現象に関連して、主要ピークの存在度の減少(−9%付近)及び酸クラスターの増大(最大+9%)が観察される。
【0352】
ヒスチジン中の製剤は、光暴露による分解に対してRMPよりも感受性が高かった:主要ピークの存在度の減少は−11.4%(DoE2−7)又はそれ以上(他のもので−18%付近)に、酸クラスターの増大は+27%に達した。
【0353】
ヒスチジンは、多量の光暴露と、ストレス条件下でポリソルベートにより放出される分解産物(典型的にはペルオキシド)との両方に由来する酸化に感受性である。従って、ポリソルベート80+ヒスチジンは、光ストレス下で不安定性の増大をもたらし得る組み合わせである。
【0354】
界面活性剤の影響を更に解明し、それが、凍結融解サイクルによるタンパク質の分解/粒子形成を阻止するのに必要かどうかを決定するために、専用の実験が実施され、ポリソルベート80により付加価値はもたらされないことが示された。これは、最終的に、ヒスチジン中の界面活性剤不含バックアップ製剤をもたらし得る。
【0355】
2.15.光ストレスによる濁度(ネフェロメトリー)
図17は、実施例2のDoE2製剤のネフェロメトリーにより決定される濁度を示す棒グラフであり、測定は、光暴露前(濃い斜線網掛け、時間=0)、765W/mの光暴露後7時間(網掛け無し)に行われた。
【0356】
2.16.光ストレスによるpHスクリーニング
製剤を765W/mの光に7時間暴露した期間に渡る実施例2のDoE2製剤のpHの変化を図18に示す。変化は観察されなかった。
【表29】
【0357】
2.17.凍結融解サイクルに対する界面活性剤の効果
3つのDoE2製剤のアイソフォームプロフィール、凝集物及び可視下粒子が、5回の凍結融解サイクル(−80℃→室温)前及び後に決定されて、界面活性剤が何らかの影響を呈するかが評価された。
【0358】
図18は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される主要ピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、測定は、5回の凍結融解サイクル(−80℃→室温)を行う前(濃い斜線網掛け、時間=0)、及び後(網掛け無し)に行われた。
【0359】
図19は、実施例2のDoE2製剤のiCE280により決定される酸クラスターピークアイソフォームプロフィールを示す棒グラフであり、測定は、5回の凍結融解サイクル(−80℃→室温)を行う前(濃い斜線網掛け、時間=0)、及び後(網掛け無し)に行われた。
【0360】
図20は、実施例2のDoE2製剤のSE−HPLCにより決定される凝集性%を示す棒グラフであり、参照標準(比較物HUMIRA(登録商標)製剤)と共に測定され、測定は、5回の凍結融解サイクル(−80℃→室温)を行う前(濃い斜線網掛け、時間=0)、及び後(網掛け無し)に行われた。
【0361】
図21は、実施例2のDoE2製剤の、可視下粒子カウント解析によって決定される、10ミクロン以下の粒径の可視下粒子の個数濃度(#/mg)を示す棒グラフであり、測定は、5回の凍結融解サイクル(−80℃→室温)を行う前(濃い斜線網掛け、時間=0)、及び後(網掛け無し)に行われた。
【0362】
図22は、実施例2のDoE2製剤の、可視下粒子カウント解析によって決定される、25ミクロン以下の粒径の可視下粒子の個数濃度(#/mg)を示す棒グラフであり、測定は、5回の凍結融解サイクル(−80℃→室温)を行う前(濃い斜線網掛け、時間=0)、及び後(網掛け無し)に行われた。
【0363】
凍結融解において、アイソフォームと凝集物において変化は見られなかった(図18〜20)。一方、僅かな顕著でない変化が可視下粒子において見られ(図21〜22)、これは、界面活性剤の存在と関連しないと見出された。DoE2−8において粒子のカウントが高かったのは、試料の汚染によるものと思われる。
【0364】
従って、凍結融解サイクルにおいて、粒子及び凝集物形成/タンパク質分解を阻止という目的で界面活性剤の添加における付加価値は無い。これは、新規製剤の有効性が界面活性剤に拘らないことを示す。
【0365】
スクリーニング実験2の結果
熱、機械的及び光ストレスに関して回収されたデータに基づき、下記の結果が導き出される。
pH6.4の10mMヒスチジン緩衝剤中の製剤(DoE2−7、DoE2−8、DoE2−9)
−熱ストレスを与えた後、Humiraと同等の性能が示された。
−機械的撹拌御の凝集物の増大は僅かであった。
−分解の増大及びアイソフォームプロフィールのHumiraに関する変化は、光及びポリソルベート80の分解産物に対するヒスチジンの感受性による。このグループ中のポリソルベート80を含有しない製剤(Doe2−7)は、RMPよりも尚も僅かに悪化しているが、ヒスチジン+ポリソルベート80(0.5又は1.0mg/mL)の他のものよりは顕著に良好である。
【0366】
ポリソルベート80の存在のタンパク質の保護剤(凍結融解に対する保護)としての有効性及び機能が評価された。凍結融解サイクル(80℃→室温)を5回行った後、界面活性剤によって付加価値は与えられないことが観察され、界面活性剤不含のDoE2−7(50mg/mLアダリムマブ、200mMトレハロース二水和物、10mMヒスチジンpH6.4中塩化ナトリウム50mM)を更に発展させることが推奨される。
【0367】
緩衝剤/pH、安定化剤、等張化剤(NaCl)量及び界面活性剤(ポリソルベート80)レベルの異なる様々な製剤に対して実施されたスクリーニング作業に基づいて、複数のストレス条件(熱、機械、光)に対して同等又は改善された特性を示す最良の組成物は、以下のように同定された。
【表30】
【0368】
このような製剤は、29G 1/2”針を有する充填済みガラスシリンジ内に容易に組み込める。
【0369】
略語
DoE 実験のデザイン
DP 薬物製剤
DS 薬物基質
DSF 差走査蛍光定量
OD 光学密度
PES ポリエチレンスルホン
rpm ラウンドパーミニット
RT 室温
SE−HPLCサイズ排除高性能液体クロマトグラフィー
SMI 要約製造指示
SOP 標準操作手順
WI 動作指示
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22